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平成19(ワ)21818損害賠償請求事件

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裁判所 請求棄却 東京地方裁判所
裁判年月日 平成19年12月5日
事件種別 民事
当事者 被告グンゼ株式会社
原告
法令 特許権
キーワード 損害賠償3回
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事件の概要 1 原告の主張 ⑴ 請求原因(訴状,平成19年8月31日付け「補正」と題する書面,同年 9月4日付け補正命令に対する同月6日付け書面,同年10月5日付け「証 拠準備書面」と題する書面,同年11月2日付け「回答書」と題する書面及 び同月21日付け「証拠準備書面」と題する書面を善解したところによ る。) 被告は,原告との間で,秘密保持に関する契約(以下「秘密保持契約」と いう。)を締結するに至らなかったのに,原告の出願に係る,特願2005 −95989号(以下「特願989号」という。)及び特願2006−13 8267号(以下「特願267号」という。)に係る発明で,出願公開前の 未公開の技術事項を勝手に使用して,パンツを試作又は製造した。

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判決文

平成19年12月5日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
平成19年(ワ)第21818号 損害賠償請求事件
口頭弁論終結日 平成19年11月21日
判 決
東京都港区<以下略>
原 告 A
京都府綾部市<以下略>
被 告 グ ン ゼ 株 式 会 社
同 訴 訟 代 理 人 弁 護 士 石 川 正
同 金 井 美 智 子
同 重 冨 貴 光
同 佐 藤 俊
主 文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
原告の所有の未公開特許願2005−95989号及び特願2006年13
8 2 6 7 号 で 秘 密 保 持 契 約 書 無 し で 本 品 パ ン ツ ( Pants) を 第 3 条 ( 秘 密 保
持)の義務を伴わず第4条(目的外使用の禁止)の本情報及びサンプル及び製
品製造の違反をした損害賠償金は第2条(経費実費)300万円也を請求する。
第2 当事者の主張
1 原告の主張
⑴ 請求原因(訴状,平成19年8月31日付け「補正」と題する書面,同年
9月4日付け補正命令に対する同月6日付け書面,同年10月5日付け「証
拠準備書面」と題する書面,同年11月2日付け「回答書」と題する書面及
び同月21日付け「証拠準備書面」と題する書面を善解したところによ
る。)
被告は,原告との間で,秘密保持に関する契約(以下「秘密保持契約」と
いう。)を締結するに至らなかったのに,原告の出願に係る,特願2005
−95989号(以下「特願989号」という。)及び特願2006−13
8267号(以下「特願267号」という。)に係る発明で,出願公開前の
未公開の技術事項を勝手に使用して,パンツを試作又は製造した。
出願公開前の出願に係る発明は,未公開であるから,それを用いるために
は,あらかじめ秘密保持契約を締結する必要があるのに,被告は,同契約の
締結をすることなく,上記秘密を使用したパンツを試作又は製造したのであ
るから,被告のこの行為は,原告に対する不法行為を構成する。
これらのことは,被告従業員であるBから原告に対する,平成17年8月
29日付けの書簡(以下「本件B書簡」という。)により裏付けられる。
これにより原告が受けた損害は,経費の300万円である。
よって,原告は,被告に対し,300万円を請求する。
⑵ 被告の主張に対する反論
被告は,被告から原告に対して試作品の製作を依頼したことはない旨主張
するが,事実に反する。被告従業員であるCは,平成17年1月13日付け
の書簡(以下「本件C書簡」という。)で,被告製品に関して,「ご試着し
ていただきご意見など頂戴できれば幸いでございます。」と記載しており,
また,これと共に,被告製品及びその製品用布地等が送付されてきたのであ
り,これらからすれば,被告は,原告に対し,先地で試作品の注文をしたこ
とになる。さらに,CとBからも,電話で試作品製作を依頼されたものであ
る。
2 被告の主張
⑴ 請求原因に対する認否
請求原因事実のうち,被告が原告との間で秘密保持に関する何らかの契約
を締結していない事実及び被告が,原告に対し,平成17年8月29日付け
の本件B書簡を郵送した事実は認めるが,その余は否認ないし争う。
⑵ 背景事情
被告は,平成17年,原告から,原告が製作したバイアス(布を布目又は
織り目に対して斜めに裁断したものをいう。)を用いたサンプル( T シャツ
の首周りにバイアスを縫い付けたもの。以下「原告サンプル」という。)の
送付を受け,原告サンプルを被告において評価するように持ちかけられた。
これを受けて,C及びBは,同年6月17日,原告と面談し,原告から,
原告サンプルの仕様について,バイアスを T シャツの首周りに縫い付ける
ことで,複数回の使用や洗濯後も,首周りのいわゆる「だれ」を防止できる
との説明を受けた。そして,その際,原告から,原告サンプルを評価した上
で試作品を製作するよう要請された。そこで,被告においては,原告サンプ
ルを検討しつつ,工業用大量生産に適する方法で試作品を製作し,その試作
品の仕様評価を行うこととした。なお,これに先立って,被告が,原告に対
し,試作品の製作を依頼したことはない。
被告は,上記の原告との面談後,Bを中心として,原告サンプルを踏まえ
た試作品を製作し,これを複数回洗濯した後に首周りの「だれ」を防止し得
るか否かについて評価を行った。その結果,「だれ」の防止効果を十分に認
めることができず,その他,バイアス縫継ぎ部のごろつき,生地の歩留まり,
縫製加工賃や製品原価のアップ等の課題も存在したことから,原告サンプル
を契機とする新製品開発はしない旨を決定して,その旨を,同年8月29日
付けの本件B書簡において,原告に通知し,その際,被告製作に係る試作品
を1枚送付したものである。
原告は,特願989号が出願公開された平成18年8月31日より前(未
公開段階)に作成された本件B書簡に,被告が試作品を製作することに関す
る協議がされていることをもって,原告の秘密を承諾なしに第三者に開示又
は漏洩した旨主張するようであるが,本件B書簡の文面からも,あらかじめ,
原告及び被告間で試作品製作に関する協議がされていること及び原告が被告
による試作品製作を承諾していることがうかがえるのであり,原告の主張は
失当である。
第3 当裁判所の判断
1⑴ 原告の主張は,上記第2,1のとおりであり,原告と被告との間で,秘密
保持契約を締結するに至らなかったのに,平成17年8月29日までに,原
告が秘密と考えている技術事項である,特願989号及び特願267号に係
る技術情報(以下「本件情報」という。)を,被告が勝手に使用して,パン
ツを試作又は製造したことについて,被告に損害賠償を請求するというもの
である。そして,原告は,上記主張は,被告による試作品製作の事実が記載
されている,本件B書簡(甲2)によって裏付けられる旨主張する。
⑵ そこで,検討するに,本件B書簡(甲2)は,平成17年8月29日付け
の,Bから原告あての書簡であるところ,そこには,「バイアス製品の件で
すが,弊社にて再度試作品を作成してみました。」,「試作品について,C
課長と相談し,販売サイドとも慎重に検討した結果,今回のバイアス仕様に
ついては,残念ながら企画・販売をしない方向で結論付けました。」,「い
ろいろと御相談やアドバイスなど頂戴し,大変お世話になり誠にありがとう
ございました。」等が記載されており,これらの記載によれば,原告が提供
したバイアス仕様に関する情報及びアドバイスに基づいて,被告が試作品を
製作したこと,試作品に用いられているバイアス仕様について,被告におけ
る商品化はしないこと,同書簡を送付する以前から原告と被告との間にやり
とりがされたことが認められ,被告が試作品を製作したものの,被告におい
て商品化の方針は採用しなかったことが推認される。
しかしながら,本件B書簡によっても,原告から被告に対し,本件情報の
内容が伝えられたこと,被告において,その内容を知っていたこと,被告が
試作品の製作に当たり,同情報を使用したことを認めることはできないし,
仮に,被告において原告の提供に係る上記情報を用いたと認定できるとして
も,その点について原告が承諾していたことがうかがえるところである。
したがって,原告の上記主張を認めることはできない。
2 また,原告は,本件情報は,当時未公開であり,それを用いるためには,あ
らかじめ秘密保持契約を締結する必要があるのに,同契約の締結をすることな
く本件情報を使用して試作品を製造したから,被告のこの行為が原告に対する
不法行為を構成する旨主張する。
しかしながら,被告が試作品の製作に当たり,本件情報を使用したと認めら
れないことは上記のとおりである。また,本件情報が未公開であるからといっ
て,直ちに秘密保持契約を締結すべき義務が被告に生ずるものでないことは明
らかであり,他に,被告において秘密保持契約を締結すべき義務を負っていた
と認めるに足りる主張及び立証もない。
したがって,いずれにしても原告の上記主張を採用する余地はない。
3 さらに,原告は,平成17年1月13日付けの本件C書簡に,被告製品に関
して,「ご試着していただきご意見など頂戴できれば幸いでございます。」と
記載されており,また,これと共に,被告製品及びその製品用布地等が送付さ
れてきたのであり,これらからすれば,被告は,原告に対し,先地で試作品の
発注をしたことになる旨主張するが,原告が主張する事実のみで,被告の原告
に対する試作品発注を認めることはできない。また,C及びBが電話で試作品
製作を依頼した事実を認めるに足りる証拠もない(なお,本件C書簡が,特願
989号及び特願267号のいずれの特許出願もされていない時期に出された
ものであることなども考慮すれば,原告の指摘する上記事実と,被告による本
件情報の使用との関連は明らかではない。)。
4 したがって,原告の請求は,その余の点を検討するまでもなく,認めること
はできない。
第4 結論
以上の次第で,原告の請求は理由がないから棄却することとし,主文のとお
り判決する。
東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 清 水 節
裁判官 山 田 真 紀
裁判官 國 分 隆 文

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