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平成18(ワ)4490謝罪広告等請求事件

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裁判所 請求棄却 大阪地方裁判所
裁判年月日 平成19年7月26日
事件種別 民事
当事者 被告株式会社TOPLASERJAPAN
原告株式会社UnitJAPAN X ら訴訟代理人弁護士姜永守
法令 不正競争
不正競争防止法2条1項14号5回
民法709条1回
民法723条1回
不正競争防止法4条1回
民法719条1項1回
キーワード 侵害15回
ライセンス5回
許諾3回
損害賠償2回
主文 1 被告は,原告株式会社Unit JAPANに対し,20万円及びこれに対する平成18年5月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告は,原告Xに対し,40万円及びこれに対する平成18年5月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
4 訴訟費用は,原告株式会社Unit JAPANと被告との間においては,被告に生じた費用の20分の1を同原告の負担とし,その余は各自の負担とし,原告Xと被告との間においては,被告に生じた費用の10分の1を同原告の負担とし,その余は各自の負担とする。
5 この判決の第1項及び第2項は,仮に執行することができる。
事件の概要 本件は,中国法人の日本語版ウェブサイトのウェブページに,原告らが同法 人の代理店であるかのような表示がなされ,さらに同ページに原告会社が開設 するウェブサイトにリンクを設定された原告らが,上記中国法人及び被告によ る上記行為は原告らの名誉及び信用を毀損する共同不法行為を構成するととも に,原告会社との関係では不正競争防止法2条1項14号所定の不正競争行為 に該当し,原告Xとの関係では氏名権侵害の不法行為も構成すると主張して, 原告会社は民法709条の不法行為又は不正競争防止法4条に基づき,原告X は民法709条の不法行為に基づき損害賠償(訴状送達の日の翌日から支払済 みまでの民法所定の年5分の割合による遅延損害金を含む )を請求し,併せ。 て民法723条又は不正競争防止法14条に基づき被告ウェブサイトのトップ ぺージへの謝罪広告の掲載を求めた事案である。

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判決文

平成19年7月26日判決言渡 同日原本交付 裁判所書記官
平成18年(ワ)第4490号 謝罪広告等請求事件
口頭弁論終結日 平成19年5月22日
判 決
原 告 株式会社Unit JAPAN
原 告 X
原告ら訴訟代理人弁護士 姜 永 守
被 告 株式会社TOPLASER JAPAN
訴訟代理人弁護士 中 川 澄
主 文
1 被告は,原告株式会社Unit JAPANに対し,20万円及びこ
れに対する平成18年5月19日から支払済みまで年5分の割合による
金員を支払え。
2 被告は,原告Xに対し,40万円及びこれに対する平成18年5月1
9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
4 訴訟費用は,原告株式会社Unit JAPANと被告との間におい
ては,被告に生じた費用の20分の1を同原告の負担とし,その余は各
自の負担とし,原告Xと被告との間においては,被告に生じた費用の1
0分の1を同原告の負担とし,その余は各自の負担とする。
5 この判決の第1項及び第2項は,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1 請求
1 被告は,原告株式会社Unit JAPAN(以下「原告会社」という 。)
に対し,300万円及びこれに対する平成18年5月19日(訴状送達の日の
翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告は,原告Xに対し,300万円及びこれに対する平成18年5月19日
(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 被告は,自ら開設するウェブサイト(http://www.toplaserjp.com/info.htm
l)(以下「被告ウェブサイト」という 。)のトップページに,別紙1記載の謝
罪文を投稿して,これを3か月間掲載せよ。
第2 事案の概要
本件は,中国法人の日本語版ウェブサイトのウェブページに,原告らが同法
人の代理店であるかのような表示がなされ,さらに同ページに原告会社が開設
するウェブサイトにリンクを設定された原告らが,上記中国法人及び被告によ
る上記行為は原告らの名誉及び信用を毀損する共同不法行為を構成するととも
に,原告会社との関係では不正競争防止法2条1項14号所定の不正競争行為
に該当し,原告Xとの関係では氏名権侵害の不法行為も構成すると主張して,
原告会社は民法709条の不法行為又は不正競争防止法4条に基づき,原告X
は民法709条の不法行為に基づき損害賠償(訴状送達の日の翌日から支払済
みまでの民法所定の年5分の割合による遅延損害金を含む 。)を請求し,併せ
て民法723条又は不正競争防止法14条に基づき被告ウェブサイトのトップ
ぺージへの謝罪広告の掲載を求めた事案である。
1 当事者間に争いのない事実等(末尾に証拠の掲記のない事実は当事者間に争
いがない 。)
( 1) 当事者
原告会社は,美容機器の販売及びエステティックサロンの経営等を目的と
し,「エステクリス」の屋号(なお,後に「エフシーエスクリス」という屋
号に変更した。原告会社代表者尋問の結果)でエステティックサロン及びメ
イクスクールを経営する株式会社である(以下,原告会社の経営する上記エ
ステティックサロン及びメイクスクールを併せて エステクリス 」
「 という 。 。

原告Xは,原告会社の取締役であり,エステクリスにおいて,美容技術講
師として美容業者へのメイク技術指導を行っている者である(甲4,弁論の
全趣旨 )。
被告は,美容機器の販売,美容室の経営等を目的とする株式会社であり,
原告会社と競争関係にある。
( 2) ウェブページの表示内容
中国法人北京泰富集団有限公司 国内では 北京トップレーザー有限公司 」
( 「
と称している。甲18。以下「北京泰富」という 。)のウェブサイトのトッ
プページから 日本語 」
「 の項目をクリックして表示されるトップページの 日

本大阪子会社と代理店……アドレスと連絡方法」の項をクリックすると更に
表示されるウェブページ(URL http://www.toplaser.com.cn/japanese/
display.asp?id=42。以下「本件ウェブページ」という 。)に,別紙2(甲
3)のとおり ,「日本大阪子会社と代理店……アドレスと連絡方法 」 「トッ

プグルプの子会社と代理店」との表示がなされ,この表示の下部に,被告の
社名,連絡先住所及び電話番号等と,エステクリスの名称,連絡先住所及び
電話番号等が並べて掲載され,エステクリスの名称上部に原告Xの氏名を一
部誤記した「Y」との氏名も表示され,この氏名の表示にエステクリスのウ
ェブサイトへのリンクが設定されていた(以下,本件ウェブページ上にこれ
らの表示をする行為及びリンクを設定する行為を併せて「本件表示行為」と
いう 。 。

2 争点
( 1) 原告会社の被告に対する請求について
ア 本件表示行為は,原告会社の名誉及び信用を毀損する不法行為を構成し
又は不正競争防止法2条1項14号所定の営業誹謗行為となるか否か。
イ 共同不法行為の成否
ウ 原告会社の損害
( 2) 原告Xの被告に対する請求について
ア 本件表示行為は,原告Xの名誉及び信用を毀損し氏名権を侵害する不法
行為を構成するか否か。
イ 共同不法行為の成否
ウ 原告Xの損害
第3 争点に関する当事者の主張
1 原告会社の被告に対する請求について(争点( 1))
【原告会社の主張】
( 1) 本件表示行為は,原告会社に対する名誉及び信用毀損の不法行為を構成
し又は不正競争防止法2条1項14号所定の営業誹謗行為となるか否かにつ
いて
本件表示行為は,本件ウェブページを見た一般の美容機器需要者及び美容
技術講習受講者をして,エステクリス及びこれを経営する原告会社が北京泰
富以外の製造業者の美容機器も数多く取り扱っているにもかかわらず,北京
泰富及び被告らグループの傘下代理店であると誤認させるものである。これ
により原告会社の名誉及び信用は毀損された。
また,本件表示行為は,エステクリスが北京泰富及び被告らグループの代
理店であるという虚偽の事実を流布して競争関係にある原告会社の営業上の
信用を害するものであり,虚偽の事実の流布に該当する。
( 2) 共同不法行為の成否について
被告は,以下のとおり北京泰富と共同して本件表示行為を行った。
ア 日本で脱毛,タトゥー除去などの美容機器の販売が盛んになってきたの
はここ10年ほどの間のことであり,原告会社が美容機器の販売を開始し
たころは,これらの美容機器の製造元として国内で知名度の高い会社は,
原告会社が調べた限りではなかった。
こうした状況で美容機器の販売を促進するため,原告会社は,法人化す
る前の平成11年ころ ,アートメイクの技術者として国際的に有名であり ,
高度の美容技術を有する原告Xを講師に招いて ,エステクリスを開設した 。
そして,原告会社は,同店で美容技術スクールを営むと同時に,美容機器
購入者である美容サロン業者に対して,原告Xによる技術指導を行い,受
講者である美容サロン業者が同原告の推奨する原告会社取扱いの美容機器
を購入するという方法で,美容機器のいわば実演販売を行ってきた。
被告は,原告会社が資本や労力を投下したエステクリスという販売戦略
に北京泰富の社名を通じてただ乗りすることを意図し,本件ウェブページ
を掲載した。また,本件ウェブページを北京泰富の日本語版ウェブサイト
に掲載したのは,被告ウェブサイトに同様の掲載をすれば,被告が法的責
任を問われるのは目に見えていたからである。
日本で北京泰富製の美容機器を販売するのは被告であって,北京泰富で
はないのであるから,本件ウェブページに原告X及びエステクリスの名を
宣伝に利用することによる利益は,北京泰富と被告の双方に生じる。
被告は,北京泰富側に本件ウェブページ上の原告らに関する情報の削除
を求めたが,原告らから原告らの宣伝を頼まれていることを理由に削除を
拒絶された旨主張するが,原告らは,北京泰富に宣伝を頼んだことなどな
いし,頼む理由もない。そもそも,原告らは北京泰富にエステクリスのこ
とを教えたこともない。
イ 被告は,北京泰富から製品を日本に輸入し,販売するとともに,輸入販
売に当たり北京泰富の名称の一部「トップレーザー」及び別紙3記載の商
標(以下「トップレーザー商標」という 。)を北京泰富の許諾を受けて使
用し,かつ,北京泰富の代表者Aに被告の株式の3割を保有させ,被告の
取締役に就任させている。このように,北京泰富と被告の間には,相当に
強い人的,資本的,取引的な結びつきがある。
被告は,被告が北京泰富と別法人であることを強調するが,被告は自ら
のウェブサイトにおいて自社を北京泰富の日本支社であると宣伝してきた
のであって,かかる主張は,被告自身の従来の態度と矛盾している。
さらに,原告らが代理人を通じて被告あてに本件ウェブページの削除を
求める旨通知したところ,同通知が被告に到達した平成18年3月1日の
翌日である同月2日には,早くも本件ウェブページは削除されていた。こ
のように,被告に通知しただけで即座に本件ウェブページが削除されたこ
とは,被告自らが本件ウェブページの作成,掲載を行っていたことを如実
に示すものである。
( 3) 原告会社に生じた損害について
被告の不法行為又は不正競争行為によって,原告会社は名誉及び信用を毀
損され,無形の損害が生じた。その損害額は,少なくとも300万円を下ら
ない。
【被告の主張】
( 1) 本件表示行為は,被告の原告会社に対する名誉及び信用毀損あるいは営
業誹謗行為となるか否かについて
争う。
( 2) 本件表示行為について被告は共同不法行為責任を負わないことについて
ア 本件表示行為をしたのは北京泰富であり,被告は同行為に何ら関与して
いない。被告は北京泰富とは別法人であり,同社の行為に責任を負うもの
ではない。
すなわち,被告は,北京泰富から日本に美容機器を輸入することを主要
な目的として設立されたものであり,設立の際,北京泰富の代表者である
Aから一部の出資を受けるとともに北京泰富の名称の一部及びロゴマーク
を使用することを許された。しかし,被告は,北京泰富の日本支社ではな
く,同社の子会社でもない。本件ウェブページにおいて,北京泰富は,被
告を「日本大阪子会社」として紹介しているが,これは北京泰富が独断で
行ったものである。
被告が被告ウェブサイトにおいてトップレーザー商標やトップレーザー
の名称を使用したり,被告を北京泰富と混同させるような表示をしている
のは,美容機器業界における北京泰富の知名度や信用を利用したいと考え
たためである。なお,被告がいう北京泰富の知名度や信用とは,日本以外
の国の美容機器製造・販売業界においてとの意である。
原告会社と被告は競争関係にあることになるので,被告がウェブサイト
上で原告会社の宣伝を行うことは,かえって被告の利益を損なうことにな
るから,被告が本件表示行為に関与する理由はない。他方,北京泰富は,
複数の日本企業を通じて美容機器を販売している旨宣伝することにより,
信頼できる企業であるとの印象を与えることができるし,また美容機器の
販売機会も増加することによれば,北京泰富が被告とは無関係に本件表示
行為を行ったと考えるのが自然である。
イ 被告が本件ウェブページの存在を知ったのは ,平成17年夏ころである 。
その際,被告は,日本における北京泰富の代理店は被告だけのはずである
から,北京泰富に対し原告らに関する情報を削除するよう求めたが,北京
泰富は,原告らとも取引をしており,原告らから原告らの宣伝をしてほし
いと頼まれていることを理由に削除を拒絶した。
ウ 原告会社が従前使用していた「TOPFAITH」の字体デザイン(乙
2の2)は,北京泰富の関係会社である北京泰富众城科技有限公司(Beij
in Topfaith Technology Co.,Ltd)が使用していたものと同一であり,こ
れが単なる偶然であるとは考え難い 。乙第2号証の2において原告会社が ,
自社が「イースネイザーマシン正規輸入元」であることを誇示宣伝してい
ることを併せ考えれば,原告会社が北京泰富と代理店契約を締結していた
可能性は極めて高い。
( 3) 原告会社に生じた損害について
争う。
2 原告Xの被告に対する請求について(争点( 2))
【原告Xの主張】
( 1) 本件表示行為は,原告Xに対する名誉及び信用毀損並びに氏名権侵害行
為の不法行為を構成するか否かについて
本件表示行為は,本件ウェブページを見た一般の美容技術受講者をして,
原告Xが北京泰富及び被告らグループの傘下代理店の講師として美容技術指
導を行っていると誤認させるものであり,これにより原告Xの名誉及び信用
は毀損された。
また,本件表示行為は,原告Xの氏名と酷似する「Y」との氏名を無断で
表示するものであって,原告Xの氏名権の侵害行為である。
上記「Y」をインターネットの大手検索サイトの検索にかけると,検索結
果において,エステクリスのウェブサイトのすぐ下に本件ウェブページが現
れる。原告Xは,美容業界で技術者として名前が知られているが,そもそも
日本では馴染みがない名前のため,日本の大抵の美容業者は,わずかな名前
の誤りには注意しない。被告は,原告Xの変名である「Y」の検索結果を利
用して,方々の営業先で,原告Xに象徴されるエステクリスが北京泰富及び
被告らグループの代理店であると触れ回っていたと推測される。
以上によれば,本件表示行為は,原告Xの名誉・信用毀損行為であるとと
もに,氏名権を侵害する行為であって,民法709条,710条の不法行為
に該当する。
( 2) 共同不法行為の成否
前記2( 2)における主張を援用する。
( 3) 原告Xに生じた損害
被告らの共同不法行為によって,原告Xは名誉及び信用を毀損し,さらに
氏名権を侵害され,同原告に無形の損害が生じた。その損害額は少なくとも
300万円を下らない。
【被告の主張】
争う。
第4 当裁判所の判断
1 原告会社の被告に対する請求について(争点( 1))
( 1) 本件表示行為が原告会社に対する営業誹謗行為に該当するか否かについ

ア 被告が本件ウェブページの作成ひいては本件表示行為に関与しているか
どうかはともかく(この点は,後記( 2)で判断する 。 ,少なくとも北京泰

富が本件ウェブページの作成に関与していることは当事者間に争いがな
い。また,北京泰富が原告会社の販売する美容機器の製造メーカーである
ことは当事者間に争いがなく,北京泰富と原告会社とは競争関係にあるも
のである。
イ 本件表示行為によって作成されたウェブページの表示及びリンク設定
は ,別紙2のとおり , 日本大阪子会社と代理店……アドレスと連絡方法 」

「トップグルプの子会社と代理店」と2行にわたる表示がなされ,その下
部に , 被告の社名 ( TOPLASER
「 JAPAN CO . LTD 」 ,
, )
その連絡先住所及び電話番号等が表示され,その下部に「Y」の表示,さ
らにその下部にエステクリスを指す「エステクリス アートメイクスクー
ル」の名称,連絡先住所及び電話番号等が並べて掲載されているものであ
って,とりわけ被告が上部に,エステクリス及び原告Xがその下部に記載
されている上記のようなページレイアウトは,これを閲覧した者をして,
被告が北京泰富の子会社であり,また,原告会社の運営するエステクリス
とその講師である原告Xが被告を含む北京泰富グループの代理店であるか
のように認識させるような表示となっていることが認められる。
不正競争防止法2条1項14号にいう「虚偽」とは客観的な真実に反す
ることをいうところ,告知又は流布された事実が虚偽であるか否かは,そ
の事実について,受け手が真実と反するような誤解をするかどうかを,受
け手の普通の注意と読み方を基準として判断すべきである。
これを本件にあてはめれば,本件ウェブページが,美容サロン向けの美
容機器を製造する中国のメーカーである北京泰富の日本語版ウェブサイト
に掲載されているウェブページであることによれば,本件ウェブページを
閲覧するのは,主として日本国内の美容業者であると推認されるところ,
上記のとおり,本件ウェブページは,エステクリスと原告Xが北京泰富グ
ループの「代理店」であるかのように認識させるような表示をしているの
であるから,本件ウェブページに掲載された上記表示を閲覧した日本国内
の美容業者が,同事実について,真実と反するような誤解をするか否かが
問題となる。
そこで検討するに,一般に,代理店とは,製造業者や卸売商など特定の
商品供給者のために,取引の代理又は媒介をする商人(代理商)の営業す
る店を意味するものと解され,その態様は一様ではないものの,その多く
は,ブランド等一定の信用力を有する商品供給者との間で,商標等の使用
許諾 ,販売地域の指定 ,競業避止義務の合意等を内容とする代理店契約 特

約店契約)を締結し,上記代理店契約上の種々の拘束を受け,経済的には
商品供給者の系列下に置かれ,これに従属する地位にある場合が多く,通
常はそのように認識されているものと解される。したがって,本件ウェブ
ページを閲覧した日本国内の美容業者の普通の注意と読み方を基準とすれ
ば,エステクリス及び原告Xが,被告を含む北京泰富グループの系列下に
あり ,これに従属する地位にあると認識するのが通常であると認められる 。
しかしながら,エステクリス及びこれを経営する原告会社が北京泰富グ
ループの代理店であると認めるに足りる証拠はない。被告は,原告会社は
北京泰富の代理店である可能性が高いと主張し,その根拠として乙第2号
証の2(平成17年6月25日発行月刊エステティック新聞)の存在を指
摘する。同号証の原告会社の広告には,原告会社を「イースネイザーマシ
ン正規輸入元」とする表示がされていることが認められるところ,弁論の
全趣旨によれば,イースネイザーマシンとは北京泰富製の美容機器である
ことが認められる。しかし,同号証によっても,原告会社が,エステクリ
スを通じて北京泰富製の同美容機器を販売していることは認められるもの
の,北京泰富との間で上記のような内容の代理店契約を締結していると認
めることはできない。
このように,原告会社と北京泰富との関係は,単なる製造メーカー(売
主)と購買者の関係にあると認められるに止まり,原告会社が被告を含む
北京泰富グループとの間で代理店契約を締結しているという意味での代理
店と認めることはできないし,原告会社が北京泰富グループの系列下にあ
ってこれに従属する地位にあるということもできない。しかるに,本件表
示行為は,エステクリス及びこれを経営する原告会社が北京泰富グループ
の代理店であって,その系列下にあり,これに従属する地位にあるとの認
識を生じさせ得るものであって,受け手に真実と反するような誤解をさせ
るものであるから,虚偽の事実の流布に該当するというべきである。
ウ そして,後記( 2)イ(イ)のとおり,原告Xやエステクリスが日本国内の
一定の範囲の美容業者の間では知られた存在であるのに対し,北京泰富が
被告設立時において日本国内で特に知名度を有していたわけではないこと
は,被告の自認するところである。これによれば,少なくとも原告Xやエ
ステクリスの方が日本国内における認知度,ひいては信用度が高いものと
認められる。それにもかかわらず,本件表示行為は,これを閲覧した日本
国内の美容業者をして,原告X及びエステクリスが,相対的に信用度の低
い北京泰富グループの代理店としてその系列下にあり,被告を含む北京泰
富グループの信用を利用する立場であるとの認識を生じさせ得るものであ
るから,本件表示行為は,原告会社の営業上の信用を低下させるおそれが
あるということができる。
エ 以上によれば,本件表示行為は,競争関係にある原告会社の経済面にお
ける社会的信用を害する虚偽の事実を流布するものであり,不正競争防止
法2条1項14号の不正競争行為に該当する。
( 2) 本件表示行為について被告が共同不法行為責任を負うか否かについて
ア 前記争いのない事実等及び証拠(甲4,7ないし9,10の1・2,1
1ないし13,14の1・2,16,18,24,29,32,33,4
4ないし47,乙3,7,証人B,原告X,原告会社代表者,被告代表者
の各尋問結果)並びに弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められ,証
人Bの証言中同認定に反する部分は採用しない。
(ア) エステクリスは,原告会社が法人化する前の平成10年4月に開業
した,原告Xを講師とし,美容業者を受講者とするアートメイクスクー
ルである(なお,原告会社は平成12年4月18日に株式会社TOPF
AITH・Unit JAPANの商号で設立した。弁論の全趣旨 )。
原告会社は,エステクリスに関して,日本にいながらアートメイクに
関する国際ライセンスを取得できることを宣伝している。エステクリス
において上記国際ライセンスを取得できるのは ,原告Xが台湾のR . .

C彩藝協会認定国際顧問を務めており,同原告がその国際ライセンス取
得のための試験を課すことができるためである。原告会社は,美容業界
新聞に原告会社の宣伝とは別にエステクリスの広告を定期的に掲載し,
エステクリスの広告においては必ず原告Xの写真を掲載し,同原告が各
種の国際ライセンスを取得していることを強調している。エステクリス
の売上げは年間約1億円にのぼり,その経営は順調である。
エステクリスでは,原告Xの指導するスクールを受講する美容業者に
対して,原告Xが推奨する美容機器の販売も行っており,原告会社にと
ってエステクリスは美容機器の販売促進手段となっている。
(イ) 現在,被告の顧問を務めるBは,中国国籍を有していたが,昭和6
3年前後に来日し,その後日本国籍を取得した。Bは,平成15年12
月,エステクリスで原告Xのセミナーを受け,その際,エステクリスが
扱っている美容機器(アートメイク除去機)に興味を持ち,その製造会
社を尋ね,エステクリス関係者からそれが北京泰富製の機器であるとの
説明を受けるなどした。
Bは,平成16年1月ころ,北京泰富の代表者Aに働きかけて北京泰
富製の美容機器を日本で販売することの承諾を得,さらに,北京泰富の
商号の一部である「TOPLASER」及びトップレーザー商標の使用
についても同意を得て,後に設立する有限会社ティー・エル・ティージ
ャパン(以下「TLT」という 。)において使用することとした。
Bの関与の下,TLTは,平成16年4月19日,美容機器の輸入,
販売,修理などを目的として設立され,北京泰富の製造する美容機器の
輸入販売を行うことを主たる営業の内容としていた。
BとAは,平成16年5月には美容機器の展示会であるビューティー
ワールドショーで「トップレーザージャパン」の名称を用いてエステク
リスが取り扱っていた北京泰富製の美容機器を展示した。同展示会に視
察に来た原告X及び原告会社代表者は,BとAが上記美容機器を展示し
ているのを認め,同人らに対して北京泰富製の美容機器を取り扱うこと
になったいきさつを尋ねたところ ,Aから ,Bより商談を持ちかけられ ,
同人と取引を始めた旨の説明を受けた。なお,その際,原告らは,Bか
ら「C」の氏名が表示された名刺を受け取り,さらに,ブースにあった
「有限会社トップレーザージャパン 日本市場部本部長 D」及び「北
京トップレーザー有限公司 日本市場部部長 D」の氏名が表示された
名刺(甲17,18)も持ち帰った。
TLTの当初の代表取締役は,Cであったが,同人は平成16年8月
30日に退任し,同日,同社の取締役に,北京泰富の代表者であるAが
就任した。このころ,TLTは,自社のウェブサイト(甲29)を開設
することとし,その際,商号については本来のTLTの商号とは異なる
「有限会社トップレーザージャパン」と表示し ,「主な概要」に「IS
O9000取得 」 「中国国家特許博覧会金賞受賞 」 「世界各国数十カ
, ,
国への輸出 」 「海外法人(2社 )
, 」など,TLTではなく北京泰富に関
する概要を掲載していた。また ,「FAQ」のウェブページ(甲31)
においては ,「本社は中国にあり,創業十数年。中国本土の美容機器の
約60%のシェアを占めております 。」などと表示していた。
また,北京泰富も,自らのウェブサイトの日本語版ウェブサイト(甲
24)において ,「会社製造工場の写真と子会社の写真」のウェブペー
ジにトップグループの子会社(大阪)として,被告の受付を撮影した写
真を掲載していた。
被告は,TLTの営業資産を引き継いで平成17年4月28日に設立
されたものであり,その際,Aは,被告の株式の3割を引き受け,被告
の取締役に就任した。そして,平成17年7月1日,Eが被告の代表取
締役を退任し,現在の代表取締役であるFが就任した。しかし,被告の
日本人従業員には中国語を十分に話すことができる者がおらず,北京泰
富との交渉は,Bが行っており,本件表示行為当時も,Eが,被告の経
営を実質的に掌握していた。
(ウ) 原告会社が販売した製品の修理は,エステクリスではない別の原告
会社の事務所が窓口となっていたところ,平成17年12月以降,被告
から北京泰富製の美容機器を購入した顧客からの問合せがエステクリス
に対して直接入るようになった。さらに,平成18年2月中旬以降,原
告会社代表者は,エステサロン業者から,被告が,その業者に対して,
ウェブサイトを見せながらエステクリス又は原告会社は被告の代理店で
あるから,被告から直接美容機器を購入した方が安価であり,メンテナ
ンスの態勢もよいと言っていたとの話を聞いた。また,原告会社代表者
は,その他の複数のエステサロン業者から,BがCの氏名を名乗り,北
京泰富の代表者であり被告の取締役でもあるAの弟であると称して営業
しているとの話を聞いた。
その後,本件ウェブページの存在が原告らの知るところとなった。な
お,北京泰富のウェブサイト中の日本語版ウェブサイトには,本件ウェ
ブページのほかに ,「アートメイク除去機美容の原理 」 「IBE豊胸機

の原理」などの美容知識を紹介するウェブページもあり,そこにはIB
E豊胸機に関する被告の作成したパンフレットと同じ絵や,ほぼ同一の
説明文が掲載されていた 。さらに 会社製造工場の写真と子会社の写真 」

として,北京泰富の製造工場の写真のほか,前記のとおり ,「トップグ
ルプの子会社(大阪 )」という説明文とともに,被告の受付を撮影した
写真が掲載されていた。
(エ) 被告代表者Fは,平成18年3月1日,原告ら代理人名義の本件ウ
ェブページの掲載及びエステクリスのウェブサイトへのリンクの削除を
求める旨の通知書を受け取り,同日,同代理人に対して電話で,本件表
示行為は北京泰富がやったことであって被告は関係がないとの回答をし
た。Fは,原告ら代理人の依頼により,回答内容を書面化し,ファック
スで原告ら代理人事務所に送信した。この書面には,原告Xの氏名が
「Y」と,本件ウェブページと同様の誤字を用いて表示されていた。本
件ウェブページは,翌日の同月2日午前中には削除された。また,北京
泰富のウェブサイトは,平成19年1月には刷新されているところ,そ
の日本語版ウェブサイトほとんどにいわゆる文字化けが生じているた
め,判読できない状態になっている。
イ 検討
上記認定事実によれば,次のようにいうことができる。
(ア) まず,Bは,被告設立前に北京泰富代表者のAから北京泰富製の美
容機器を輸入販売することの承諾を得てTLTを設立し,その後TLT
から被告に営業が引き継がれた後も自ら北京泰富と直接商談し,北京泰
富製の美容機器の販売に関与していたものであって ,本件表示行為当時 ,
被告の経営を実質的に掌握していたものである。そして,被告ウェブサ
イトは,TLTの開設したウェブサイトの表示をほぼそのまま引き継い
だものであるところ ,北京泰富に関する概要を自らの概要として掲載し ,
実際には直接の資本関係もないのに本社(北京泰富)が中国にあると表
示するなど,対外的には被告が北京泰富の子会社あるいは支店であるか
のような表示をして北京泰富と資本関係があることを示唆している。さ
らに ,被告は ,北京泰富からトップレーザー商標の使用許諾を得るなど ,
国内における信用を得るために北京泰富の信用に依存してきたものとい
える(上記ア(イ) )。
また,Bは,営業の際に「北京トップレーザー有限公司 日本市場部
部長 D」との肩書の名刺を使用していたものであり,被告設立時には
北京泰富の代表者Aが被告の取締役に就任し,同人からの出資も得てお
り,さらにBは,営業の際に「C」の氏名をも名乗り,Aとの親族関係
がある旨を話していたものである(上記ア(イ)(ウ) )。
上記各事実によれば,被告は,本件訴訟において北京泰富とは別法人
であることを強調しているのとは異なり,実際の営業上は,北京泰富と
深く関わっており,むしろ対外的には北京泰富の子会社あるいは支店で
あるかのように振る舞っていたことが明らかである。
そうすると,被告は,北京泰富とは経営上ないし営業上深いつながり
があり,被告ないし北京泰富の宣伝広告に当たっては,相互に資料や情
報を提供し合うなどの協力関係があったものと推認することができる。
(イ) 次に,原告Xは,美容業界ではアートメイクに関する国際的なライ
センス取得のための指導及び試験を課すことのできる高度の技術を有す
る者として日本国内における一定の範囲の美容業界では周知の存在であ
り,原告会社は,そのように周知の存在である原告Xが直接指導するセ
ミナーを受講する美容技術者に対し原告Xが推奨する美容機器を販売す
る方法によって,順調に美容機器の売上げを伸ばしていたものであって
(上記ア(ア) ),原告らは,いずれも日本国内の美容業界において相当
程度の知名度及び信用力を勝ち得ていたものということができる。
他方,被告の経営を実質的に掌握しているBは,TLT設立前からエ
ステクリスの存在を知り,原告Xのセミナーを受講していたものであっ
て,エステクリスの日本の美容業界における地位などについて十分な知
識を有していた(上記ア(イ) )。そうすると,Bが,日本国内の美容業
界におけるエステクリスの知名度及び信用力を被告の営業のために利用
しようと考えることも決して不自然ではなく,むしろ十分にあり得るこ
とといえる。
したがって,被告(B)には,北京泰富と同様に,原告らが被告を含
む北京泰富の代理店であるかのように表示する本件ウェブぺージを掲載
する十分な動機があったと考えられる。
(ウ) 次に,原告ら代理人が被告代表者Fに対し本件ウェブページの掲載
等の削除を求めた際,Fから被告はこれに無関係である旨の回答をした
ものの,早くもその翌日には被告ウェブページ等が削除され,Fから原
告ら代理人あてに送付された回答書(甲13)に記載された原告Xの氏
名の表示に本件ウェブページと同様の誤記があった(上記ア(エ) )。こ
れらの事実は,被告が,本件ウェブページの作成に関与しているととも
に,その掲載の可否に関して一定の決定権を有していることを窺わせる
事実というべきである。
また,北京泰富のウェブサイトにおける日本語版ウェブサイトには,
本件ウェブページが削除されるまでは日本にあるパソコンから閲覧して
日本語が問題なく表記されていたが,本件ウェブページ削除後に刷新し
た北京泰富のウェブサイトにおける日本語版ウェブサイトでは,文字化
けが発生しており,日本にあるパソコン上は正確に表示されなくなった
ところ,被告が主張するように,北京泰富が本件表示行為を単独で行っ
ていたのであれば,被告からの連絡を受けて北京泰富が本件ウェブペー
ジを削除したとしても,その後もそれまでと同様に日本のパソコンにお
いて正常に閲覧できる環境の下において新たに日本語版ウェブサイトを
作成すれば,上記のような文字化けが発生することはないはずである。
すなわち,北京泰富が従前から単独で本件ウェブページを作成していた
とすれば,北京泰富は,本件ウェブページを刷新した後のウェブページ
において ,従前は正確に表示されていた環境を敢えて変更し ,その結果 ,
文字化けが発生したまま放置していることになるが,そのようなことは
およそ不自然である。この事実は,刷新前のウェブページすなわち本件
ウェブページは北京泰富が単独で作成したものではないことを推認させ
る。
以上のほか,上記ア(ウ)の認定事実のとおり,北京泰富の日本語版ウ
ェブサイトに被告が作成した豊胸機の資料と同じ絵や類似の説明文が掲
載されていたことも併せ考えると,被告は,北京泰富に対し,北京泰富
の日本語版ウェブサイトに掲載するためのデータや資料を提供していた
と推認するのが自然である。
ウ 以上の事実を総合すれば,被告は,北京泰富において本件ウェブページ
を作成するに当たり,少なくともそのためのデータや資料を提供するなど
して,これに関与していたものであり,ひいては北京泰富が本件表示行為
をするに当たって関与したものと認めるのが相当である。
エ この点に関し,被告は,本件表示行為は北京泰富にとっては複数の日本
企業を通じて美容機器を販売している旨を宣伝することにより信用を高め
る点で利益になるが,被告にとっては,同じ美容機器の販売を行う競争相
手である原告らを宣伝することとなる点で利益を損なうこととなり,北京
泰富と被告の利害は一致しないとして,被告が本件表示行為に関与する理
由はない旨主張する。
しかしながら,被告設立時点で,北京泰富が日本においてさほど知名度
を有していなかったことは,被告の自認するところである。他方,被告か
らみれば,原告会社は,原告Xがエステクリスでアートメイクの指導をす
ることを宣伝して成功している美容機器販売の先行業者であり,そのエス
テクリスが取り扱っている美容機器を製造している中国メーカーの子会社
であると表示することは,国内における北京泰富製の美容機器の信頼性を
高めることが期待できる。さらに,原告会社(が運営するエステクリス)
及び原告Xを被告を含む北京泰富グループの代理店と称することにより,
製造メーカーである北京泰富の子会社である被告の方がより製造メーカー
に近い存在として,原告らに対し価格面などで優位に立つことを強調する
ことが可能であり,現に前記ア(ウ)の認定事実のとおり,被告の営業担当
従業員が,北京泰富製の美容機器について,本件ウェブページに表示され
たように,被告の代理店であるエステクリスから購入するよりも,被告か
ら直接購入する方がより安価であると宣伝していたものである。
したがって,本件ウェブページにエステクリスや原告Xの屋号・氏名を
掲載することは,北京泰富のみならず,被告にとっても利益となるもので
ある。よって,被告の上記主張は採用できない。
オ 以上によれば,被告は,本件表示行為について,北京泰富と共同不法行
為責任(民法719条1項前段)を負うものというべきである。
( 3) 原告会社に生じた損害について
被告は,前記のとおり,本件表示行為により原告会社の名誉・信用を毀損
し,その営業上の利益を侵害したものであるから,不正競争防止法4条,民
法719条1項前段に基づき ,原告会社に対しこれを賠償すべき義務がある 。
そして,本件表示行為の内容,態様,それが表示されていた本件ウェブペ
ージの掲載期間その他本件において顕れた一切の事情を考慮すると,原告会
社に生じた無形損害に対する賠償額は20万円と認めるのが相当である。
2 争点( 2)(原告Xの被告に対する請求)について
( 1) 本件表示行為が原告Xの名誉及び信用毀損行為及び氏名権侵害行為に該
当するか否かについて
ア 本件表示行為における原告Xの名の表記には誤字があるものの,そのリ
ンク先であるエステクリスのウェブサイトと併せて見れば,読み手は原告
Xの氏名を表記しているものと理解するものと認められる。
そして,本件表示行為が原告Xの名誉・信用を毀損するものであるかを
検討するに,原告Xは,アートメイク指導の専門家として,エステクリス
において自ら指導に当たりながら,セミナーの受講生に対して原告会社が
輸入する美容機器を販売する業務にも携わっており,その際,受講生は指
導を担当した原告Xが推奨しセミナーで使用した美容機器であることを主
たる動機として原告会社から美容機器を購入するものである 。このように ,
原告Xは ,自らが有する信用を利用して美容機器の販売に携わっている な

お,美容業界新聞における原告会社及びエステクリスの広告には,美容機
器の製造メーカー名を表示していない 。 。それにもかかわらず,本件表

示行為によって,あたかも原告Xが北京泰富グループの代理店であるかの
ように本件ウェブページに表示されたものであり,既に一定の信用を得て
いる原告Xが,同原告よりも知名度や信用力において劣る北京泰富グルー
プの系列下に入りその従属的地位にあるような印象を与えることになる。
かかる意味で,本件表示行為は,原告Xの経済面における社会的信用を低
下させる行為であるということができる。
したがって,本件表示行為は,原告Xに対する名誉・信用毀損の不法行
為に該当する。
イ さらに,原告Xは,本件表示行為により,誤った字を用いて氏名が無断
で表示されたことをもって ,氏名権の侵害であると主張するので検討する 。
氏名は,社会的にみれば,個人を他人から識別し特定する機能を有する
ものであるが,同時に,その個人からみれば,人が個人として尊重される
基礎であり,その個人の人格の象徴であって,人格権の一内容を構成する
ものというべきである(最高裁昭和63年2月16日第三小法廷判決・民
集42巻2号27頁 )。したがって,他人の氏名を無断で使用し,真実に
反する記載をすることは,日記等の他人の閲覧を予定しない個人的なもの
において使用される場合を除き,原則として,それ自体で人格権の一内容
を構成する氏名権を侵害するものと解するのが相当である。
本件表示行為は,原告Xの氏名を無断で使用し,かつ,原告Xが北京泰
富グループの代理店であるという虚偽の事実を記載するものであるから,
原告Xの氏名権を侵害するものというべきである。なお,原告Xの氏名の
一部を誤記している点については,被告及び北京泰富が害意をもって不正
確な表記をしたとまで認めることはできず,単なる誤記であると認められ
るに止まることによれば,それ自体を氏名権を侵害する違法な行為である
までいうことはできない。
ウ 以上によれば,本件表示行為は,原告Xの名誉・信用を毀損し,かつ,
氏名権を侵害する不法行為に該当する。
( 2) 共同不法行為の成否
被告は,北京泰富と共に本件表示行為をしたものであり,原告Xに対し共
同不法行為責任を負う。その理由は,前記1( 2)と同一である。
( 3) 原告Xに生じた損害について
被告は,前記のとおり,本件ウェブページに本件表示行為をすることによ
って,原告Xが北京泰富グループの代理店であると誤認されるおそれを生じ
させるとともに,原告Xの氏名権を侵害したものである。
本件表示行為は,あたかも原告Xが北京泰富グループの代理店としてその
系列下にあり ,これに従属する地位にあるかのように表示するものであって ,
原告Xの名誉・信用を毀損する一方で,いわば原告Xが北京泰富製の美容機
器にお墨付きを与えたような印象を与えるものであって,原告Xの信用を利
用するものということが可能である。しかし,原告Xは,メイクスクールで
使用する機器については慎重に試験した上で使用する機器を選定しているこ
と(原告X本人尋問の結果)によれば,同原告が北京泰富製の美容機器一般
に関してかかる表示をされることを許容することは到底想定できない。以上
のほか,原告Xが一部の美容業者には知られた存在であること,本件ウェブ
ページは誰でも閲覧できるものであり,被告が営業活動をする際に顧客に見
せていたこと,その他本件に顕れた一切の事情を考慮すると,原告Xがその
名誉・信用を毀損され,かつ氏名権を侵害された無形損害に対する賠償額と
しては,40万円をもって相当とするべきである。
3 なお,原告らは,被告に対し,被告ウェブサイトのトップページに,別紙1
記載の謝罪文を投稿する旨の謝罪広告掲載請求をする。しかし,本件ウェブペ
ージが平成18年3月2日には削除されており,その後相当程度の時間が経過
していること,現時点においては原告X及びエステクリスが北京泰富の代理店
であると問い合わせる者もいないこと(弁論の全趣旨)などの事情によれば,
現時点(口頭弁論終結時点)において原告らに無形損害に対する賠償のみでは
填補できない名誉・信用の低下があるとはいい難い。よって,原告らの名誉を
回復する処分として,被告に謝罪広告の掲載を命ずる必要はない。
第5 結論
以上によれば,原告会社の請求は,原告会社の名誉及び信用を毀損したこと
による損害賠償金20万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日であることが
記録上明らかな平成18年5月19日から支払済みまで民法所定の年5分の割
合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり,原告Xの請求は,40
万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日であることが記録上明らかな平成1
8年5月19日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の
請求を求める限度で理由があり,原告らのその余の請求はいずれも理由がない
からこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。
大阪地方裁判所第21民事部
裁判長裁判官 田 中 俊 次
裁判官 西 森 み ゆ き
裁判官西理香は,海外出張のため署名押印することができない。
裁判長裁判官 田 中 俊 次

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