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平成18(ワ)4029商標権侵害差止等請求事件

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裁判所 一部認容 東京地方裁判所
裁判年月日 平成19年5月16日
事件種別 民事
当事者 被告株式会社グローイングアップ
原告アシェットフィリパキプレスソシエテアノニム
法令 商標権
不正競争防止法3条4回
商標法26条1項1号1回
キーワード 商標権41回
侵害9回
差止7回
許諾6回
ライセンス1回
主文 (以下,別紙被告標章目録記載の各被告標章を「被告標章( )」のようにいい,それ1らを併せて「被告標章」といい,別紙被告標章使用態様目録記載の各使用態様を「使用態様( )」のようにいい,別紙被告ウェブサイト目録記載のウェブサイトを1「被告ウェブサイト」という。)1( ) 被告は,被告標章( )を シャツに付し,同被告標章を付した同商品を1 3 T販売し,若しくは販売のために展示し,又は同被告標章を付した同商品の広告を被告ウェブサイトに表示してはならない。( ) 被告は,被告が所有する シャツから,被告標章( )を抹消せよ。2 T 3( ) 被告は,被告ウェブサイトから,被告標章( )を付した シャツの広告の3 3 T表示を削除せよ。2( ) 被告は,被告標章( )を シャツに付し,同被告標章を付した同商品を1 4 T販売し,若しくは販売のために展示し,又は同被告標章を付した同商品の広告を被告ウェブサイトに表示してはならない。( ) 被告は,被告が所有する シャツから,被告標章( )を抹消せよ。2 T 4( ) 被告は,被告ウェブサイトから,被告標章( )を付した シャツの広告の3 4 T表示を削除せよ。3( ) 被告は,被告標章( )を シャツに付し,同被告標章を付した同商品を1 7 T販売し,若しくは販売のために展示し,又は同被告標章を付した同商品の広告を被告ウェブサイトに表示してはならない。( ) 被告は,被告が所有する シャツから,被告標章( )を抹消せよ。2 T 7( ) 被告は,被告ウェブサイトから,被告標章( )を付した シャツの広告の3 7 T表示を削除せよ。4( ) 被告は,被告標章( )を シャツに付し,同被告標章を付した同商品を1 8 T販売し,若しくは販売のために展示し,又は同被告標章を付した同商品の広告を被告ウェブサイトに表示してはならない。( ) 被告は,被告が所有する シャツから,被告標章( )を抹消せよ。2 T 8( ) 被告は,被告ウェブサイトから,被告標章( )を付した シャツの広告の3 8 T表示を削除せよ。5( ) 被告は,被告標章( )をリストバンドに付し,同被告標章を付した同商品1 2を販売し,若しくは販売のために展示し,又は同被告標章を付した同商品の広告を被告ウェブサイトに表示してはならない。( ) 被告は,被告が所有するリストバンドから,被告標章( )を抹消せよ。2 2( ) 被告は,被告ウェブサイトから,被告標章( )を付したリストバンドの広告3 2の表示を削除せよ。6( ) 被告は,被告標章( ),( )又は( )をステッカーに付し,同被告標章を付1 2 4 5した同商品を販売し,若しくは販売のために展示し,又は同被告標章を付した同商品の広告を被告ウェブサイトに表示してはならない。( ) 被告は,被告が所有するステッカーから,被告標章( ),( )及び( )を抹消2 2 4 5せよ。( ) 被告は,被告ウェブサイトから,被告標章( ),( )又は( )を付したステッ3 2 4 5カーの広告の表示を削除せよ。7( ) 被告は,使用態様( )−7のものを除き,被告標章( )をタオルに付し,1 2 2同被告標章を付した同商品を販売し,若しくは販売のために展示し,又は同被告標章を付した同商品の広告を被告ウェブサイトに表示してはならない。( ) 被告は,使用態様( )−7のものを除き,被告が所有するタオルから,被告2 2標章( )を抹消せよ。2( ) 被告は,使用態様( )−7のものを除き,被告ウェブサイトから,被告標章3 2( )を付したタオルの広告の表示を削除せよ。28( ) 被告は,被告標章( )を帽子に付し,同被告標章を付した同商品を販売し,1 2若しくは販売のために展示し,又は同被告標章を付した同商品の広告を被告ウェブサイトに表示してはならない。( ) 被告は,被告が所有する帽子から,被告標章( )を抹消せよ。2 2( ) 被告は,被告ウェブサイトから,被告標章( )を付した帽子の広告の表示を3 2削除せよ。9( ) 被告は,被告標章( )を音楽 に付し,同被告標章を付した同商品を1 10 CD販売し,若しくは販売のために展示し,又は同被告標章を付した同商品の広告を被告ウェブサイトに表示してはならない。( ) 被告は,被告が所有する音楽 から,被告標章( )を抹消せよ。2 CD 10
10 原告のその余の請求を棄却する。
11 訴訟費用はこれを2分し,その1を被告の負担とし,その余を原告の負担とする。
事件の概要 本件は 「 」等の商標につき商標権を有するとともに 「 」等の商標を, ,ELLE ELLE 周知又は著名商標として使用する原告が,「 」との被告標章を付したELLEGARDEN 被告商品を販売する被告に対し,①上記商標権,②不正競争防止法3条及び2条1 項1号又は③同法3条及び2条1項2号に基づき(ただし,被告標章( )について10 は,不正競争防止法3条及び2条1項1号又は2号のみに基づく。),①被告商品 への被告標章の使用等の差止め,並びに②被告商品からの被告標章の抹消及び③被 告ウェブサイトからの被告標章を付した被告商品の広告表示の削除を求めた事案で ある。

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判決文

平成19年5月16日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
平成18年(ワ)第4029号 商標権侵害差止等請求事件
口頭弁論終結日 平成19年3月2日
判 決
フランス国 ルヴァロア ペレ セデックス <以下略>
原告 アシェット フィリパキ プレス ソシエテ アノニム
同訴訟代理人弁護士 関根秀太
同 達野大輔
同 白石絢子
同 佐藤玲
東京都世田谷区<以下略>
被告 株式会社グローイングアップ
同訴訟代理人弁護士 関根修一
同 山田徹
同 髙橋史記
主 文
(以下,別紙被告標章目録記載の各被告標章を「被告標章( 1)」のようにいい,それ
らを併せて「被告標章」といい,別紙被告標章使用態様目録記載の各使用態様を
「使用態様(1)」のようにいい,別紙被告ウェブサイト目録記載のウェブサイトを
「被告ウェブサイト」という。)
1(1) 被告は,被告標章(3)を T シャツに付し,同被告標章を付した同商品を
販売し,若しくは販売のために展示し,又は同被告標章を付した同商品の広告を被
告ウェブサイトに表示してはならない。
(2) 被告は,被告が所有する T シャツから,被告標章( 3)を抹消せよ。
( 3) 被告は,被告ウェブサイトから,被告標章(3)を付した T シャツの広告の
表示を削除せよ。
2(1) 被告は,被告標章(4)を T シャツに付し,同被告標章を付した同商品を
販売し,若しくは販売のために展示し,又は同被告標章を付した同商品の広告を被
告ウェブサイトに表示してはならない。
(2) 被告は,被告が所有する T シャツから,被告標章( 4)を抹消せよ。
( 3) 被告は,被告ウェブサイトから,被告標章(4)を付した T シャツの広告の
表示を削除せよ。
3(1) 被告は,被告標章(7)を T シャツに付し,同被告標章を付した同商品を
販売し,若しくは販売のために展示し,又は同被告標章を付した同商品の広告を被
告ウェブサイトに表示してはならない。
(2) 被告は,被告が所有する T シャツから,被告標章( 7)を抹消せよ。
( 3) 被告は,被告ウェブサイトから,被告標章(7)を付した T シャツの広告の
表示を削除せよ。
4(1) 被告は,被告標章(8)を T シャツに付し,同被告標章を付した同商品を
販売し,若しくは販売のために展示し,又は同被告標章を付した同商品の広告を被
告ウェブサイトに表示してはならない。
(2) 被告は,被告が所有する T シャツから,被告標章( 8)を抹消せよ。
( 3) 被告は,被告ウェブサイトから,被告標章(8)を付した T シャツの広告の
表示を削除せよ。
5(1) 被告は,被告標章( 2)をリストバンドに付し,同被告標章を付した同商品
を販売し,若しくは販売のために展示し,又は同被告標章を付した同商品の広告を
被告ウェブサイトに表示してはならない。
(2) 被告は,被告が所有するリストバンドから,被告標章( 2)を抹消せよ。
(3) 被告は,被告ウェブサイトから,被告標章(2)を付したリストバンドの広告
の表示を削除せよ。
6(1) 被告は,被告標章( 2),(4)又は( 5)をステッカーに付し,同被告標章を付
した同商品を販売し,若しくは販売のために展示し,又は同被告標章を付した同商
品の広告を被告ウェブサイトに表示してはならない。
(2) 被告は,被告が所有するステッカーから,被告標章(2),(4)及び(5)を抹消
せよ。
(3) 被告は,被告ウェブサイトから,被告標章(2),(4)又は( 5)を付したステッ
カーの広告の表示を削除せよ。
7( 1) 被告は,使用態様( 2)−7のものを除き,被告標章( 2)をタオルに付し,
同被告標章を付した同商品を販売し,若しくは販売のために展示し,又は同被告標
章を付した同商品の広告を被告ウェブサイトに表示してはならない。
(2) 被告は,使用態様(2)−7のものを除き,被告が所有するタオルから,被告
標章(2)を抹消せよ。
(3) 被告は,使用態様(2)−7のものを除き,被告ウェブサイトから,被告標章
(2)を付したタオルの広告の表示を削除せよ。
8(1) 被告は,被告標章( 2)を帽子に付し,同被告標章を付した同商品を販売し,
若しくは販売のために展示し,又は同被告標章を付した同商品の広告を被告ウェブ
サイトに表示してはならない。
(2) 被告は,被告が所有する帽子から,被告標章( 2)を抹消せよ。
(3) 被告は,被告ウェブサイトから,被告標章(2)を付した帽子の広告の表示を
削除せよ。
9(1) 被告は,被告標章(10)を音楽 CD に付し,同被告標章を付した同商品を
販売し,若しくは販売のために展示し,又は同被告標章を付した同商品の広告を被
告ウェブサイトに表示してはならない。
(2) 被告は,被告が所有する音楽 CD から,被告標章( 10)を抹消せよ。
10 原告のその余の請求を棄却する。
11 訴訟費用はこれを2分し,その1を被告の負担とし,その余を原告の負担
とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
1 T シャツ
( 1) 被告は,被告標章( 1),(2),(3),( 4),(5),( 7),( 8),( 9),( 11),(12)
又は(13)を T シャツに付し,同被告標章を付した同商品を販売し,若しくは販売
のために展示し,又は同被告標章を付した同商品の広告を被告ウェブサイトに表示
してはならない。
( 2) 被告は,被告が所有する T シャツから,被告標章(1)ないし( 5),( 7)ない
し( 9)及び( 11)ないし(13)を抹消せよ。
(3) 被告は,被告ウェブサイトから,被告標章(1),(2),(3),(4),(5),(7),
(8),(9),(11),(12)又は( 13)を付した T シャツの広告の表示を削除せよ。
2 リストバンド
主文第5項と同旨
3 ステッカー
主文第6項と同旨
4 タオル
(1) 被告は,被告標章(2)をタオルに付し,同被告標章を付した同商品を販売し,
若しくは販売のために展示し,又は同被告標章を付した同商品の広告を被告ウェブ
サイトに表示してはならない。
(2) 被告は,被告が所有するタオルから,被告標章(2)を抹消せよ。
(3) 被告は,被告ウェブサイトから,被告標章(2)を付したタオルの広告の表示
を削除せよ。
5 帽子
( 1) 被告は,被告標章( 2)又は( 6)を帽子に付し,同被告標章を付した同商品を
販売し,若しくは販売のために展示し,又は同被告標章を付した同商品の広告を被
告ウェブサイトに表示してはならない。
(2) 被告は,被告が所有する帽子から,被告標章( 2)及び(6)を抹消せよ。
( 3) 被告は,被告ウェブサイトから,被告標章( 2)又は(6)を付した帽子の広告
の表示を削除せよ。
6 スコアブック
(1) 被告は,被告標章(2)をスコアブックに付し,同被告標章を付した同商品を
販売し,若しくは販売のために展示し,又は同被告標章を付した同商品の広告を被
告ウェブサイトに表示してはならない。
(2) 被告は,被告が所有するスコアブックから,被告標章( 2)を抹消せよ。
(3) 被告は,被告ウェブサイトから,被告標章(2)を付したスコアブックの広告
の表示を削除せよ。
7 音楽 CD
(1) 主文第9項( 1)及び( 2)と同旨
( 2) 被告は,被告ウェブサイトから,被告標章(10)を付した音楽 CD の広告の
表示を削除せよ。
第2 事案の概要
本件は, ELLE」等の商標につき商標権を有するとともに , ELLE」等の商標を
「 「
周知又は著名商標として使用する原告が,「 ELLEGARDEN 」との被告標章を付した
被告商品を販売する被告に対し,①上記商標権,②不正競争防止法3条及び2条1
項1号又は③同法3条及び2条1項2号に基づき(ただし,被告標章( 10)について
は,不正競争防止法3条及び2条1項1号又は2号のみに基づく。),①被告商品
への被告標章の使用等の差止め,並びに②被告商品からの被告標章の抹消及び③被
告ウェブサイトからの被告標章を付した被告商品の広告表示の削除を求めた事案で
ある。
1 前提事実
(1) 当事者
ア 原告
原告は,1945年12月14日,フランス法に基づき設立された会社であり,
女性向けファッション雑誌「 ELLE 」(以下「原告雑誌」という。)の発行を世界各国に
おいて行っている。
また,原告は,世界各国において商標「 ELLE 」を管理し,商標登録を受け,当該
商標を付した各種商品の製造,販売及び各種役務の提供を展開している。
イ 被告
被告は,音楽録音物・映像物の原盤の企画制作・製造・宣伝・頒布・販売・利
用・開発及び歌手・音楽実演家・芸能タレントのマネージメント等を目的とする株
式会社である。
ロックバンド「 ELLEGARDEN 」(以下「本件ロックバンド」という。)は,被告に所
属する。
(以上,争いのない事実)
(2) 当事者の有する商標権
ア 原告の商標権
原告は,以下の商標権を有する(以下,各商標権を「原告商標権1」のようにいい ,
各登録商標を「原告登録商標1」のようにいう。また,原告商標権1∼5を併せて
「原告商標権」といい,原告登録商標1∼5を併せて「原告登録商標」という。)。
(ア) 原告商標権1
商標登録 第1978528号(甲3)
登録商標 別紙原告登録商標目録1のとおり
商品の区分 第26類(旧々々類)
指定商品 雑誌,その他本類に属する商品
登録日 昭和62年8月19日
更新登録日 平成9年5月27日
(イ) 原告商標権2
商標登録 第633578号(甲1)
登録商標 別紙原告登録商標目録2のとおり
商品の区分 第16類,第20類,第21類,第22類,第24類及び第25類
指定商品 紙製幼児用おしめ,クッション,座布団,まくら,マットレス,家
事用手袋,衣服綿,ハンモック,布団袋,布団綿,布製身の回り品,かや,敷布,
布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布,被服
登録日 昭和39年1月10日
更新登録日 平成15年12月9日
(ウ) 原告商標権3
商標登録 第2131069号(甲4)
登録商標 別紙原告登録商標目録3のとおり
商品の区分 第17類(旧々々類)
指定商品 被服(運動用特殊被服を除く),布製身回品(他の類に属するものを
除く ),寝具類(寝台を除く)
登録日 平成元年4月28日
更新登録日 平成10年12月1日
(エ) 原告商標権4
商標登録 第1008267号(甲2)
登録商標 別紙原告登録商標目録4のとおり
商品の区分 第9類,第25類及び第28類
指定商品 ウエイトベルト,ウエットスーツ,浮袋,運動用保護ヘルメット,
エアタンク,水泳用浮き板,レギュレーター,運動用特殊衣服,運動用特殊靴(「乗
馬靴」を除く。),乗馬靴,運動用具,釣り具
登録日 昭和48年4月9日
更新登録日 平成15年3月18日
(オ) 原告商標権5
商標登録 第4053601号(甲5)
登録商標 別紙原告登録商標目録5のとおり
商品の区分 第24類
指定商品 織物,メリヤス生地,フェルト及び不織布,オイルクロス,ゴム引
防水布,ビニルクロス,ラバークロス,レザークロス,ろ過布,布製身の回り品,
ふきん,かや,敷き布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布,織物製
壁掛け,織物製ブラインド,カーテン,テーブル掛け,どん帳,シャワーカーテン,
遺体覆い,経かたびら,黒白幕,紅白幕,布製ラベル,ビリヤードクロス,のぼり
及び旗(紙製のものを除く。)
登録日 平成9年9月5日
(争いのない事実)
イ 被告の商標権
被告は,次の商標権を有する。
商標登録 第4582074号
登録商標 別紙被告商標目録のとおり
商品及び役務の区分 第9類,第41類
指定商品 録音済みの磁気テープ・コンパクトディスク・光ディスクその他の
レコード,録画済みのビデオディスク・ビデオテープ・コンパクトディスク・光デ
ィスク
指定役務 音楽の演奏
登録日 平成14年7月5日
(乙19)
(3) 原告登録商標の沿革及び原告の活動状況等
ア 本件 ELLE 商標の沿革
別紙本件商標目録記載1の商標(以下「本件 ELLE 商標」という。)は,原告雑誌の
創刊に当たって,原告雑誌の表題用に創作された。
また,原告は,本件 ELLE 商標を付した各種商品の製造,販売及び各種役務の提
供を全世界で展開し,多数の商標登録を有しており,日本においても,原告登録商
標のほか,各種商品及び役務に関して,「 ELLE 」及び「エル」の文字を含む多数の商
標に関して,400を超える商標登録を有している。
(争いのない事実,甲6∼8,弁論の全趣旨)
イ 原告の原告雑誌発行を通じての活動
(ア) 世界における原告雑誌の発行状況
a 原告雑誌は,フランスにおいて1945年から2006年1月16日号ま
でで,3133号を発行した。その発行部数は,フランス語版だけで毎号35万部
に達する。
b 原告雑誌は,被服,布製身の回り品,化粧品,バッグ類,履き物,装身具,
時計,眼鏡,傘,寝具類,家具,テーブルウェア,食器などファッション性のある
商品に関する記事を掲載する女性向けファッション雑誌である。
c 原告雑誌は,以下の各企業等により,各国において発行されている。
アメリカ合衆国 Hachette Filipacchi Magazines 発行 発行部数97.5万部
イギリス Hachette Emap 発行 発行部数20万部
スペイン Hachette Filipacchi S.A.発行 発行部数13万部
d これらのうち,フランス版,アメリカ版及びイギリス版は,日本国内にお
いても販売されている。
e 以上のほか,現在では,イタリア版,スウェーデン版,ギリシャ版,オラ
ンダ版,ポルトガル版,ルーマニア版,ドイツ版,ロシア版,カナダ版,オースト
ラリア版,香港版,中国版,台湾版,韓国版,タイ版,シンガポール版,インド版,
ブラジル版及び南アフリカ版等31か国版が発行され,その年間発行部数は600
0万部を超えており,全世界で8000万人以上が購読している。
(甲6∼9,弁論の全趣旨)
(イ) 日本国内における原告雑誌の発行状況
a 我が国においては,昭和45年3月,平凡出版株式会社(以下「平凡出版」
という。)が,原告の許諾の下に,雑誌「アンアン( an an)」を日本版原告雑誌と位置
づけて創刊し(当初の雑誌名称は「アンアン・エル・ジャポン(an an ELLE JAPON)」
であった。),以来昭和57年に至るまで,雑誌「アンアン」にフランス語版原告雑
誌の記事を多数掲載するなど,「 ELLE 」ファッションの紹介・普及を図り,その表
紙には必ず本件 ELLE 商標を付してきた。
また,平凡出版は,雑誌「アンアン」だけでなく,同社の発行に係る雑誌「クロワ
ッサン」等他の出版物にも,原告雑誌の記事を本件 ELLE 商標の下に多数掲載した 。
b 昭和57年4月,株式会社マガジンハウスが,原告の許諾の下に,日本版
女性雑誌「 ELLE 」を創刊した。当該雑誌は,月2回刊行された時期を経て,現在月
1回刊行されているところ,その発行部数は毎号約23万部に達する。現在は原告
の子会社である株式会社アシェット婦人画報社がその出版業務を引き継いでいる。
c これらの雑誌に掲載される内容は,被服,布製身の回り品,化粧品,バッ
グ類,履き物,装身具,時計,眼鏡,傘,寝具類,家具,テーブルウェア,食品そ
の他のファッションの紹介記事又はこれに関連する広告の掲載である。
(争いのない事実)
ウ 原告の商品販売を通じての活動
(ア) 世界における商品販売状況
原告は,原告雑誌の表紙等に表示していた本件 ELLE 商標を婦人服等の商品に付
して販売したのを始めとして,その後,商品及び役務の種類を増加するとともに,
本件 ELLE 商標を使用して積極的な広告宣伝活動を継続した。
現在,原告のライセンシーは,全世界で100社に上り,250種類以上のライ
センス商品を販売している。また,販売拠点の数は1万4000か所に及び,売上
げは年間5億米ドル以上である。
(甲6,弁論の全趣旨)
(イ) 日本国内における商品販売状況
a 原告は,我が国においては,本件 ELLE 商標及びその称呼をカタカナで表
記した別紙本件商標目録記載2の商標(以下「本件エル商標」という 。)を商標登録
したのに続き,「 ELLE Petite 」や「 ELLE PARIS 」のような,本件 ELLE 商標に他の
文字を付したいくつかのバリエーションの結合商標を始めとする多数の関連商標を
登録した。
b また,原告は,昭和39年以来,帝人株式会社(以下「帝人」という。)に対
し,本件 ELLE 商標等の独占的使用を許諾するとともに,「 ELLE 」ファッションの
販売・普及活動を推進した。
帝人は,自ら「 ELLE 」ファッションに係る洋服を製造・販売する一方,その再許
諾権限に基づき,婦人服につき株式会社イトキン,スカーフ・ハンカチ類につき川
辺株式会社,水着につき株式会社岸田,エプロンにつき中西縫製株式会社,寝装寝
具類につき西川産業株式会社,手袋につき株式会社三大の各社に対し,その再使用
権を許諾した。
帝人及びこれらサブライセンシーは,共同して「 ELLE 」ファッションの宣伝・販
売・普及に努め,その製造・販売に係る商品に本件 ELLE 商標等を使用した。
c 昭和59年7月に至り,原告は,帝人との独占的使用許諾関係を解消し,
自ら東洋ファッション株式会社(現在は「株式会社エルパリス」に商号変更。)を設
立し,「 ELLE 」ファッションの市場開発,市場調査,企画,利用を図り,帝人のサ
ブライセンシーを引き続き使用権者として本件 ELLE 商標の普及に努めた。また,
その間,新たなサブライセンシーも加わった。
その結果,我が国における原告のライセンシーの数は,平成17年11月現在で
33社に上り,その業種も,被服,布製身の回り品,バッグ類,履き物,装身具,
眼鏡,傘,寝具類,家具,テーブルウェア,食器等に及んでいる。
(争いのない事実,甲21∼62(枝番を含む。))
エ 原告のインターネットにおける広告宣伝活動
原告は,その運営するウェブサイト「 ELLE Online 」( http://www.elle.co.jp)におい
て,原告雑誌の広告宣伝,ファッション情報及び化粧品情報の発信,並びに
「 ELLE 」ブランド全体についての広告宣伝及び情報の発信を行っている。
(争いのない事実)
オ 服飾辞典等への掲載
(ア) 石山彰編「服飾辞典」(甲10。昭和47年2月1日初版,株式会社ダヴ
ィッド社発行)には,「エル」の語が登載され,「フランスのファッション・ブックを
兼ねた大型女性週刊誌の名。…」との解説がされている。
(イ) 文化出版局編「服飾辞典」(甲11。昭和54年3月5日第1刷,文化出
版局発 行)には,「エル・ファッション」の語が登載され,「フランスの女性雑誌
『ELLE』によって生み出されたファッションということ。」との解説がされている。
(ウ) 被服文化協会編「服装大百科事典下巻」(甲12。昭和44年3月20日
初版,文化服装学院出版局発行)には,「エル Elle 」の語が登載され,「フランスの
若い女性向き週刊誌。…最近では『エル・ファッション』といわれて,全世界の若
い女性たちの間に支持者を持つようになっている。…」との解説がされている。
(甲10∼12)
カ 日本国周知・著名商標リスト
本件 ELLE 商標は,防護標章として登録され,特許庁の日本国周知・著名商標リ
ストにも掲載されている。
(争いのない事実)
(4) 被告商品の販売
ア T シャツ等
被告は,以下のとおり,被告標章のいずれかを使用した別紙被告商品目録記載の
商品(以下,これらを併せて「被告商品」ともいう。)を製作し,自己がマネージメン
トを行っている本件ロックバンドに関する被告ウェブサイトにおいてそれらの商品
の写真を掲載して広告を行い,それらの商品を販売している。
(ア) T シャツ
a 被告が被告ウェブサイト上で販売しているTシャツの品番は,E-002, 003,
007,008, 010,011,015, 016,020, 021, 027, 028, 029, 030, 031,032 である
(以下これらを併せて「本件 T シャツ」ともいう。)。
b 被告標章,使用態様及び品番の対応関係は,次のとおりである。
( a) 被告標章( 1)
使用態様( 1)(T シャツの前面。後記使用態様( 2)−13はこれの背面)
E-020,021
(b) 被告標章( 2)
ⅰ 使用態様( 2)−11及び12( T シャツの前面及び背面)
E-002,003
ⅱ 使用態様( 2)−13(T シャツの背面)
E-020,021
( c) 被告標章( 3)
使用態様( 3)(T シャツの背面)
E-010,011
(d) 被告標章( 4)
使用態様( 4)(T シャツの前面)
E-007,008
( e) 被告標章( 5)
使用態様( 5)−1及び2( T シャツの前面及び背面)
E-015,016
( f) 被告標章(7)
使用態様( 7)(T シャツの前面のうち最上部。後記使用態様(8)はこれの背
面。後記使用態様( 13)は同じ前面にある。)
E-031,032
(g) 被告標章( 8)
使用態様( 8)(T シャツの背面)
E-031,032
(h) 被告標章( 9)
使用態様( 9)(T シャツの前面。後記使用態様( 12)はこれの背面)
E-029,030
(i) 被告標章( 11)
使用態様( 11)−1及び2( T シャツの前面及び背面)
E-027,028
(j) 被告標章( 12)
使用態様( 12)(T シャツの背面)
E-029,030
(k) 被告標章( 13)
使用態様( 13)(T シャツの前面の中央左側部分にある3列の白抜き欧文字
の2列目)
E-031,032
(争いのない事実)
(イ) リストバンド
a 被告が被告ウェブサイト上で販売しているリストバンドの品番は,E-004,
017,022, 033 である(以下これらを併せて「本件リストバンド」ともいう。)。
b 被告標章,使用態様及び品番の対応関係は,次のとおりである。
被告標章(2)
( a) 使用態様( 2)−2
E-004,017
(b) 使用態様( 2)−3
E-022
( c) 使用態様( 2)−4
E-033
(争いのない事実)
(ウ) ステッカー
a 被告が被告ウェブサイト上で販売しているステッカーの品番は, E-005,
009,026 である(以下,これらを併せて「本件ステッカー」ともいう。)。
b 被告標章,使用態様及び品番の対応関係は,次のとおりである。
( a) 被告標章( 2)
使用態様( 2)−1
E-005
(b) 被告標章( 4)
使用態様( 4)と同様
E-009
( c) 被告標章( 5)
使用態様( 5)−3
E-026
(争いのない事実)
(エ) タオル
a 被告が被告ウェブサイト上で販売しているタオルの品番は, E-006,014,
018,023, 025,034 である(以下これらを併せて「本件タオル」ともいう。)。
b 被告標章,使用態様及び品番の対応関係は,次のとおりである。
被告標章(2)
( a) 使用態様( 2)−1と同様
E-006,014
( b) 使 用 態 様 ( 2) − 1 に 類 似 ( 甲 7 0 の 5 の 上 段 右 か ら 2 つ 目。
「 ELLEGARDEN 」の下に「 Bad For Education 」と表示されたもの)
E-018
( c) 使用態様( 2)−6
E-023,025
(d) 使用態様( 2)−7
E-034
(争いのない事実)
(オ) 帽子
a 被告が被告ウェブサイト上で販売している帽子の品番は, E-019, 024 で
ある(以下,これらを併せて「本件帽子」ともいう。)。
b 被告標章,使用態様及び品番の対応関係は,次のとおりである。
( a) 被告標章( 2)
使用態様( 2)−5
E-019
(b) 被告標章( 6)
使用態様( 6)
E-024
(争いのない事実)
(カ) スコアブック
被告が被告ウェブサイト上で販売しているスコアブック(以下「本件スコアブッ
ク」ともいう。)は,使用態様(2)−10のとおりであり,被告標章( 2)を使用してい
る(品番の主張はない。)。
(争いのない事実)
イ 音楽 CD
被告が製造・販売している音楽 CD(以下「本件 CD 」ともいう。)は,使用態様
(10)のとおりであり,被告標章(10)を使用している(品番の主張はない。)。
(争いのない事実)
2 争点
(以下,商標権に基づく請求を「商標権請求 」,不正競争防止法3条及び2条1項
1号に基づく請求を「1号請求 」,同法3条及び2条1項2号に基づく請求を「2
号請求」とそれぞれいう。)
(1) 商標権請求(被告標章(10)を除く。)
ア 商標としての使用
イ 商品の類似性
ウ 商標の類似性
エ 自己の名称等の使用
(2) 1号請求及び2号請求
ア 商品等表示としての使用
イ 本件 ELLE 商標及び原告登録商標の周知性・著名性
ウ 商品等表示の類似性
エ 混同のおそれ(1号請求のみ)
オ 営業上の利益の侵害
3 争点に関する当事者の主張
(1) 商標権請求音楽CD
ア 商標としての使用
(原告の主張)
(ア)a 判断方法
商標としての使用であるか否かを判断するためには,主観的意図を推測させる客
観的諸事実として,
①通常の状態である表示が外部から見えるかどうか,
②それ自体が単独で使用されているか,肩書として使用されているか,文章中の一
部として使用されているか,
③使用されている活字の種類,大きさ,隣接する文字との間隔,一連に表示されて
いるか,
④他の文章と密接に関係する内容を持つか,
⑤他の商品・役務の出所表示と認められるか
といった点を考慮するとともに,当該表示に関する客観的事実を考慮すべきである。
b 検討
( a) ①について
商標としての使用を目的としている場合であれば,標章は通常の状態で外部から
見えるように付されるはずである。被告商品においては,いずれも,被告標章(被
告標章( 10)を除く。以下,この項で同じ。)が外部から見えるように付されている。
(b) ②について
被告標章は,肩書として使用されているわけではなく,また,文章中の一部とし
て使用されているわけでもない。また,被告標章は,常に他の言葉と組み合わされ
ることなく,単独で使用されている。
(c) ③について
被告標章に使われている活字の種類はいくつかあるが,そもそも単独で使用され
ているため隣接する文字はなく,他の文字と一連に表示されているわけではない。
(d) ④について
被告商品において,被告標章は文章の一部分として使用されているわけではない。
また,単独で表示されても,題号やある事実を説明するために記述的に用いられる
場合は商標的使用ではないともいえるが,被告標章は何らかの事実を説明するため
の記述として用いられているものでもない。
( e) ⑤について
被告商品は,無償で配布される他の商品・役務の広告媒体であるといった事情は
ない。また,被告標章が他の商品又は役務の出所を表すものと認められる状況にも
ない。
( f) 当該表示に関する客観的事実について
T シャツについては,胸部など目立つ位置に被告標章が付されている。また,被
告標章は,その付された商品の大きさに比して小さな表示ではない。
(g) まとめ
したがって,被告標章は,商標として使用されている。
(イ) 被告標章が出所表示でないことについて
後記被告の主張(イ)のうち,a(まとめ)は否認する。
同b(被告商品の販売態様)は不知。
同c(ライブ会場で販売される場合)は否認する。
同d(被告ウェブサイトで販売される場合)(a)(被告ウェブサイトの構成)のうち ,
ⅰのうち,(ⅰ)は不知,(ⅱ)は否認し,ⅱのうち,(ⅰ)∼(ⅲ)は不知,(ⅳ)は否認
し,ⅲのうち,(ⅰ)及び(ⅱ)は不知,(ⅲ)は否認し,ⅳのうち,(ⅰ)及び(ⅳ)は不
知,(ⅱ)及び(ⅲ)は否認し,ⅴは否認する。
同(b)(支払方法)は不知。
同(c)(利用者の認識)は否認する。
(ウ) T シャツ(品番 E-002,003)についての被告標章(2)の使用について
a 同(ウ)のうち,a( a)及び( c)(構成)は認め,( b)及び( d)(需要者の理解)は
否認し,(e)(襟ネーム)は不知,b(色違い)は認め,c(まとめ)は否認する。
b( a) T シャツ(品番 E-002,003)の前面には,最も注目される箇所である胸
部に,被告標章(2)と「 BRING YOUR BOARD!!」という表示があるのみである。こ
れをもって,客観的に見て本件ロックバンドのツアー記念Tシャツであることを表
示するものとは解し得ない。
(b) 背面についても,「 BRING YOUR BOARD!!」という表示並びに日時及び
場所 の表示は,被告標 章( 2)との明らかな記述的なつながりはない。しか も,
「 BRING YOUR BOARD!!」の下の「 TOUR 」との記載は極めて小さいから,記述的な
つながりを認めることは更に困難である。
(エ) T シャツについての被告標章(1)及び( 2)の使用について
a 同(エ)のうち,a( a)及び( c)(構成)は認め,( b)及び( d)(需要者の理解)は
否認し,b(色違い)は認め,c(まとめ)は否認する。
b これらの T シャツにある「 RIOT ON THE GRILL TOUR 」という表示並び
に日時及び地名等の表示は,被告標章( 1)及び(2)との記述的なつながりはない。
(オ) T シャツについての被告標章(3)の使用について
同(オ)は否認する。
(カ) T シャツについての被告標章(4)の使用について
同(カ)は否認する。
(キ) T シャツについての被告標章(5)の使用について
a 同(キ)のうち,a( a)及び( c)(構成)は認め,( b)及び( d)(需要者の理解)は
否認し,b(色違い)は認め,c(まとめ)は否認する。
b これらの T シャツにある「 Bad For Education Tour 」という表示並びに日時
及び地名等の表示は,被告標章(5)との記述的なつながりはない。
(ク) T シャツについての被告標章(7)の使用について
同(ク)は否認する。
(ケ) T シャツについての被告標章(8)の使用について
同(ケ)は否認する。
(コ) T シャツについての被告標章(9)の使用について
同(コ)は否認する。
(サ) T シャツについての被告標章(11)の使用について
a 同(サ)のうち,a( a)及び( c)(構成)は認め,( b)及び( d)(需要者の理解)は
否認し,b(色違い)は認め,c(まとめ)は否認する。
b これらの T シャツにある「 SPACE SONIC TOUR 2005-2006 」という表示並
びに日時及び地名等の表示は,被告標章(11)との記述的なつながりはない。
(シ) T シャツについての被告標章(12)の使用について
同(シ)は否認する。
(ス) T シャツについての被告標章(13)の使用について
同(ス)のうち,a(使用態様)は認め,b(まとめ)は否認する。
(セ) リストバンドについての被告標章( 2)の使用について
同(セ)は否認する。
(ソ) ステッカーについての被告標章(2)の使用について
同(ソ)は否認する。
(タ) ステッカーについての被告標章(4)の使用について
同(タ)は否認する。
(チ) ステッカーについての被告標章(5)の使用について
a 同(チ)のうち,a(a)(構成)は認め,( b)(需要者の理解)は否認し,b(ステ
ッカーの性質)及びc(まとめ)は否認する。
b ステッカー(品番 E-026)中には,「 Bad For Education 」がツアー名の記載で
あることを推認させる記載はないから,被告標章( 5)は,需要者によって,商標と
して使用されたものと理解される。
(ツ) タオルについての被告標章(2)の使用について
a タオル(E-006, 014)
同(ツ)aは否認する。
b タオル(E-018,023, 025, 034)
(a ) 同(ツ)bのうち,( a)ⅰ(構成)は認め,( a)ⅱ(需要者の理解),(b)(応援グ
ッズの形態)及び(c)(まとめ)は否認する。
(b) これらのタオルでは,いずれも被告標章(2)が右中央部又は中央部に大き
く表示され,ツアー名の記載は,当該文字の下又は右下に,その5分の1程度の大
きさで記載されているにすぎない。
また,被告標章( 2)とツアー名の記載は,外観的に一連に表示されているもので
はなく,互いに密接に関係する内容を持つものでもない。
特に,「 TOUR 」との記載がない品番 E-018,023 及び 025 については,これがツ
アー記念タオルであると理解することはできない。
(テ) 帽子についての被告標章( 2)の使用について
同(テ)は否認する。
(ト) 帽子についての被告標章( 6)の使用について
a 同(ト)のうち,a(a)(構成)は認め,( b)(需要者の理解)は否認し,b(まと
め)は否認する。
b 被告標章(6),「 US 」,「 BR 」及び「 RIOT ON THE GRILL TOUR ’05 」は ,
それぞれ離れて記載されており,これらが外観的にも内容的にも相互に一連の記載
とはいいえない。
(ナ) スコアブックについての被告標章( 2)の使用について
a 同(ナ)のうち,a及びb(構成)は認め,c(需要者の理解)及びd(まとめ)
は否認する。
b 本件スコアブックにおいて使用された被告標章( 2)は,デザイン化された
文字から成り, T シャツ,リストバンド,タオル等の他の被告商品にも統一的に使
用されている。このような統一的使用は,単にバンド名としての「 ELLEGARDEN 」
を表示するだけではなく,統一した出所の表示を需要者に示すことを目的として,
商標として使用していることを示す。被告標章(2)が本件マークと並んで表記され
ていることも,このことを裏付けている。
(被告の主張)
(ア) 認否
原告の主張はいずれも否認する。
(イ) 被告標章が出所表示でないこと
a まとめ
被告商品における「 ELLEGARDEN 」の表示は,ツアー名,ライブ会場,骸骨の図
柄又は炎のイメージや欧文字「 E 」をモチーフとした,1点から斜め上,真横及び
斜め下に向かう3本の線から成るマーク(使用態様( 2)−1の左部分参照。以下「本
件マーク」という。)と共に用いられることによって,本件ロックバンドの応援グッ
ズ,ツアー記念グッズであることを示すデザインの一部となっており,被告商品の
製造・販売元を示すものではない。
b 被告商品の販売態様
被告は,被告商品を,本件ロックバンドのライブ会場において展示・販売すると
ともに,音楽 CD を除く被告商品を被告ウェブサイト内で展示し,同サイトを通じ
て販売している。
c ライブ会場で販売される場合
( a) 被告商品が本件ロックバンドのライブ会場において販売される場合,ラ
イブ会場を訪れる人は本件ロックバンドのファンであるから,需要者が被告商品に
つき本件ロックバンドとの関わり合いのみを認識することは明らかである。
(b) この場合,「 ELLEGARDEN 」の表示は,本件ロックバンドの名称の表示
であり,被告商品の製造・販売元を示すものではない。
d 被告ウェブサイトで販売される場合
( a) 被告ウェブサイトの構成
ⅰ(ⅰ) 被告ウェブサイトのトップページには,本件ロックバンドの音楽
CD 「 Space Sonic 」のジャケット画像が大きく表示されるとともに,「 GROWING
UP Dynamord Label 」として,ウェブサイトの開設者が被告であることが表示され
ている。
(ⅱ) したがって,被告ウェブサイトが本件ロックバンドのサイトであるこ
とは,同サイトを訪れた者にとって一目瞭然であり,本件ロックバンドに興味のな
いサイト来訪者が次ページ以降に進むことは考えにくい。
ⅱ(ⅰ) 被告ウェブサイトのトップページにおいて「 Japanese 」をクリックす
る こ と に よ り 表 示 さ れ る ペ ー ジ に は , 上 側 に 「 ELLEGARDEN OFFICIAL
WEBSITE 」として,本件ロックバンドのオフィシャルウェブサイトであることが明
示されるとともに,4人のメンバーの写真が表示されている。
(ⅱ) また,同ページの下側には,「 GROWING UP Dynamord Label 」として ,
ウェブサイトの開設者が被告であることが表示されている。
(ⅲ) さ ら に , 同 ペ ー ジ の 左 側 に は , 「 NEW TOPICS 」 , 「 LIVE 」,
「 PROFILE 」,「 DISCOGRAPHY 」,「 MEDIA 」,「 GOODS 」,「 BBS 」,「 DIARY 」,
「 MOBILE & DOWNLOADS 」,「 LINK 」及び「 MAIL 」のメニューが表示されている。
(ⅳ) 以上のとおり,同ページは,本件ロックバンドのウェブページである
ことを明示しており,前ページより進んで同ページを訪れた利用者は,当然に本件
ロックバンドのページであることを認識している。
ⅲ(ⅰ) 次に,左側のメニューの「 GOODS 」をクリックすることにより表示
されるページでは,上側,下側,左側の表示は上記ⅱと同様であり,本件ロックバ
ンドのウェブページであることが明示されている。
(ⅱ) 中央部分は,商品画像とともに,「 VHS」,「 T シャツ」,「リストバン
ド」,「ステッカー」,「タオル」,「キャップ」及び「スコアブック」という文字が表示
されている。
(ⅲ) 以上の表示態様から,同ページの来訪者は,これらの商品が本件ロッ
クバンドの関連グッズとして販売されていることを一目瞭然のものとして認識して
いる。
ⅳ(ⅰ) 次に,中央部分の「 T シャツ」のアイコンをクリックすることにより
表示されるページでは,上側,下側,左側の表示は上記ⅱと同様であり,本件ロッ
クバンドのウェブページであることが明示されている。
(ⅱ) このページの「 E-032 ELLEGARDEN × SABBAT13 COLLABORATE T
シャツ Color:黒」のアイコンをクリックすることにより表示されるページでは,
上側,下側,左側の表示は上記ⅱと同様であり,本件ロックバンドのウェブページ
であることが明示されるとともに,当該商品が「 SABBAT13 」とのコラボレートT
シャツであることが明示されている。
(ⅲ) 被告商品の一部には,その商品名において本件ロックバンドのライブ
ツアー活動との関わりがある商品であることが明記され,又はドクロをメインイメ
ージとするパンクファッションブランドの「 SKULLSHIT 」や「 SABBAT13 」と本件
ロックバンドのコラボレートTシャツであることが明記されている。
(ⅳ) 上記(ⅱ)及び(ⅲ)以外の被告商品も,上記(ⅱ)及び(ⅲ)の被告商品と
一緒に表示され,しかも本件マークと共に「 ELLEGARDEN 」の10文字が表示され
ている。
ⅴ 以上のとおり,音楽 CD を除く被告商品における被告標章の表示は,い
ずれも本件ロックバンドとの関わりのみ(コラボレートブランドとの関わりを含
む。)を示すものである。
(b) 支払方法
さらに,被告は,ウェブページを通じて購入しようとする利用者から,被告ウェ
ブサイトにおいてオンラインで同被告商品の注文を受けるものではない。被告商品
を購入しようとする利用者は,加入者名「 ELLEGARDEN 」の口座に代金を前払いで
払い込まなければならず,その際,払込取扱表に「 ELLEGARDEN 」と記入する仕組
みとなっている。
また,各お問合せ先として被告名が明示されており,同被告商品が被告の責任の
下に販売されていることも明示されている。
( c) 利用者の認識
したがって,被告ウェブサイトにアクセスし,同被告商品にたどり着く利用者は,
同被告商品が本件ロックバンドのグッズであることを十分に認識している。
したがって,被告標章は,客観的に製造・販売元を示す識別表示として利用され
ていないから,商標法における商標として使用されたものではない。
(ウ) T シャツ(品番 E-002,003)についての被告標章(2)の使用
a( a) T シャツ(品番 E-002)の前面(使用態様( 2)−11)には,本件マークを
左に表示した被告標章(2)が白地に青字で表示され,その下に,「 ELLEGARDEN 」
の文字よりも大きく,「 BRING YOUR BOARD!!」と青地に白抜き文字で表示されて
いる。
(b) 前面の上記「 BRING YOUR BOARD!!」は,需要者によって,ライブツア
ー名として理解され,前面全体だけでも,本件ロックバンドのツアー記念グッズで
あると理解される。
( c) その背面(使用態様( 2)−12)には,白地に青字で「 BRING YOUR
BOARD!! Tour 2003 」との表示と共に,「 7.31 渋谷 CLUB QUATTRO 」など25の
日時及び地名等が表示され,右下には,本件マークを左に表示した被告標章( 2)が
白地に青字で表示されている。
(d) 背面の上記「 BRING YOUR BOARD!! Tour 2003 」は,需要者によって,
ライブツアー名として理解され,「 7.31 渋谷 CLUB QUATTRO 」等は,ライブツ
アーの日時及び会場として理解され,背面全体として,本件ロックバンドのライブ
ツアーの日程等を表示したものと理解される。
( e) T シャツ(品番 E-002)の襟ネームには,「 United Athle 」という T シャツ自
体の製造・販売者の商標が表示されている。この点は,その余の T シャツについ
ても,同様である。
b E-003 は,E-002 の色違いであり,白地に青が黒地に黄色となっている。
c 以上のとおり, T シャツ(品番 E-002,003)は,本件ロックバンドがこのよ
うなツアーをこのような日時及び場所で行おうとしていること又は行ったことを示
すものであり,被告標章( 2)の使用は,一種の説明的使用であって,商標としての
使用ではない。
(エ) T シャツについての被告標章(1)及び( 2)の使用
a(a) T シャツ(品番 E-020)の前面(使用態様( 1))は,被告標章( 1)が表示され,
「 G 」の文字の上に骸骨のコック,「 EL 」の文字の辺りにはコックの持つ包丁が描か
れるとともに,被告標章(1)の下には,「 RIOT ON THE GRILL TOUR 」が表示され
ている。
(b) 「 RIOT ON THE GRILL TOUR 」は,需要者によって,ライブツアー名と
して理解され,前面全体だけでも,本件ロックバンドのツアー記念グッズであると
理解される。
( c) その背面(使用態様( 2)−13)には,被告標章( 2)と共に,「 RIOT ON
THE GRILL TOUR 」と表示され,さらに,「 7.18(mon) TOKYO SHIBUYA-AX 」な
ど39の日時,曜日及び地名等が表示されている。
(d) 背面の上記「 RIOT ON THE GRILL TOUR 」は,需要者によって,ライブ
ツアー名として理解され,「 7.18(mon) TOKYO SHIBUYA-AX 」等は,ライブツア
ーの日時,曜日及び会場として理解され,背面全体として,本件ロックバンドのラ
イブツアーの日程等を表示したものと理解される。
b E-021 は, E-020 の色違いである。
c これらの T シャツは,本件ロックバンドがこのようなツアーをこのよう
な日時及び場所で行おうとしていること又は行ったことを示すものであり,これら
の被告標章( 1)及び( 2)の使用は,一種の説明的使用であって,商標としての使用で
はない。
(オ) T シャツについての被告標章(3)の使用
a T シャツについての被告標章(3)の使用(使用態様(3))は,いずれも本件ロッ
クバンドのグッズであることを示すために表示されたものである。
b よって,この被告標章(3)の使用は,商標としての使用ではない。
(カ) T シャツについての被告標章(4)の使用
a T シャツについての被告標章(4)の使用(使用態様(4))は,いずれも本件ロッ
クバンドのグッズであることを示すために表示されたものである。
b よって,この被告標章(4)の使用は,商標としての使用ではない。
(キ) T シャツについての被告標章(5)の使用
a( a) T シャツ(品番 E-015)の前面(使用態様( 5)−1)には,「 Bad For
Education Tour 」と大きく表示され,炎を背景とした骸骨の図柄の下に,「 Bad For
Education Tour 」の4分の1ほどの大きさの字で,本件マークと共に被告標章( 5)が
表示されている。
(b) 「Bad For Education Tour 」は,需要者によって,ライブツアー名として
理解され,前面全体だけでも,本件ロックバンドのツアー記念グッズであると理解
される。
( c) その背面(使用態様( 5)−2)には,「 Bad For Education Tour 2004 」との表
示と共に , 11/2(Tue)-Osaka Big Cat」など15の日時,曜日及び地名等が表示され,

その下に,本件マークと共に被告標章(5)が表示され,更に「 SKULLSHIT 」の表示
がされている。
(d) 背面の上記「 Bad For Education Tour 2004 」は,需要者によって,ライブ
ツアー名として理解され , 11/2(Tue)-Osaka Big Cat」等は,ライブツアーの日時,

曜日及び会場として理解され,「 SKULLSHIT 」はブランド名と理解され,背面全体
として,本件ロックバンドのライブツアーの日程等を表示したものと理解される。
b E-016 は, E-015 の色違いである。
c これらの T シャツは,本件ロックバンドがこのようなツアーを行おうと
していること又は行ったことを示すものであり,これらの被告標章( 5)の使用は,
一種の説明的使用であって,商標としての使用ではない。
(ク) T シャツについての被告標章(7)の使用
a T シャツについての被告標章(7)の使用(使用態様(7))は,いずれも本件ロッ
クバンドのグッズであることを示すために表示されたものである。
b よって,この被告標章(7)の使用は,商標としての使用ではない。
(ケ) T シャツについての被告標章(8)の使用
a T シャツについての被告標章(8)の使用(使用態様(8))は,いずれも本件ロッ
クバンドのグッズであることを示すために表示されたものである。
b よって,この被告標章(8)の使用は,商標としての使用ではない。
(コ) T シャツについての被告標章(9)の使用
a T シャツについての被告標章(9)の使用(使用態様(9))は,いずれも本件ロッ
クバンドのグッズであることを示すために表示されたものである。
b よって,この被告標章(9)の使用は,商標としての使用ではない。
(サ) T シャツについての被告標章(11)の使用
a ( a) T シャ ツ (品 番 E-027)の前面 (使 用態 様( 11)−1)には ,縦書 き で
「 ROCK 」と表示された上で,その横上部に「 DEVILISHLY DELIGHTFUL TALES
OF 」の文字があり,その下部に被告標章( 11)が表示され,被告標章(11)のすぐ下部
に「 SPACE SONIC TOUR 2005-2006 」と表示されている。
(b) 上記「 SPACE SONIC TOUR 2005-2006 」は,需要者によって,ライブツア
ー名として理解され,前面全体だけでも,本件ロックバンドのツアー記念グッズで
あると理解される。
( c) その背面(使用態様( 11)−2)には,本件マークと共に,被告標章(11)が
表示され,そのすぐ下に「 SPACE SONIC TOUR 2005-2006 」が表示され,更にその
下に,日時及び地名等が数多く表示されている。
(d) 背面の上記「 SPACE SONIC TOUR 2005-2006 」は,需要者によって,ライ
ブツアー名として理解され,日時及び地名等は,ライブツアーの日時及び会場とし
て理解され,背面全体として,本件ロックバンドのライブツアーの日程等を表示し
たものと理解される。
b E-028 は, E-027 の色違いである。
c これらのTシャツは,本件ロックバンドがこのようなツアーを行おうとし
ていること又は行ったことを示すものであり,これらの被告標章( 11)の使用は,一
種の説明的使用であって,商標としての使用ではない。
(シ) T シャツについての被告標章(12)の使用
a T シャツについての被告標章(12)の使用(使用態様( 12))は,いずれも本件ロ
ックバンドのグッズであることを示すために表示されたものである。
b よって,この被告標章(12)の使用は,商標としての使用ではない。
(ス) T シャツについての被告標章(13)の使用
a 被告標章(13)は,「 ENJOY ELLEGARDEN TiL YOUR...DEAD!!!」という文
章の中で,使用されている。
b よって,この被告標章(13)の使用は,商標としての使用ではない。
(セ) リストバンドについての被告標章( 2)の使用
a リストバンドに表示された被告標章(2)(使用態様( 2)−2∼4)は,いずれ
も本件ロックバンドのグッズであることを示すために表示されたものである。
b よって,この被告標章(2)の使用は,商標としての使用ではない。
(ソ) ステッカーについての被告標章(2)の使用
a ステッカーについての被告標章(2)の使用(使用態様(2)−1)は,本件ロッ
クバンドのグッズであることを示すために表示されたものである。
b ステッカーという商品の性質自体,ミュージシャン等の応援グッズとして
用いられるものであることを示している。
c よって,この被告標章(2)の使用は,商標としての使用ではない。
(タ) ステッカーについての被告標章(4)の使用
a ステッカーについての被告標章(4)の使用(使用態様(4)と同様)は,本件ロ
ックバンドのグッズであることを示すために表示されたものである。
b ステッカーという商品の性質自体,ミュージシャン等の応援グッズとして
用いられるものであることを示している。
c よって,この被告標章(4)の使用は,商標としての使用ではない。
(チ) ステッカーについての被告標章(5)の使用
a(a) 本件ステッカーのうち品番 E-026(使用態様(5)−3)には,「 Bad For
Education 」と表示されている。
(b) 上記「 Bad For Education 」は,需要者によって,ライブツアー名と理解さ
れる。
b ステッカーという商品の性質自体,ミュージシャン等の応援グッズとして
用いられるものであることを示している。
c 本件ステッカーのうち品番 E-026 は,本件ロックバンドがこのようなツア
ーを行おうとしていること,又はこれを行ったことを示すものであり,一種の説明
的使用であって,被告標章( 5)の使用は,商標としての使用ではない。
(ツ) タオルについての被告標章(2)の使用
a タオル(E-006, 014)
( a) 本件タオルのうち品番 E-006,014(使用態様( 2)−1と同様)は,いずれも
本件ロックバンドのグッズであることを示すために表示されたものである。
(b) その客観的形態も,ミュージシャン等の応援グッズとして用いられる,
いわゆるタオルマフラーである。
(c) よって,これらの被告標章(2)の使用は,商標としての使用ではない。
b タオル(E-018, 023, 025, 034)
(a)ⅰ 被告標章(2)のすぐ下に,本件タオルのうち品番 E-018 には「 Bad For
Education 」(使用態様(2)−1に類似),同 E-023 及び E-025 には「 RIOT ON THE
GRILL 」(使用態様(2)−6),同 E-034 には「 SPACE SONIC TOUR 2005-2006 」(使用
態様(2)−7)とそれぞれ表示されている。
ⅱ これらの表示は,需要者によって,ライブツアー名として理解される。
( b) その客観的形態も,ミュージシャン等の応援グッズとして用いられる,
いわゆるタオルマフラーである。
( c) このように,本件タオルのうちツアー名の表示のあるものは,本件ロッ
クバンドがこのようなツアーを行おうとしていること,又はこれを行ったことを示
すものであり,これらの被告標章( 2)の使用は,一種の説明的使用であって,商標
としての使用ではない。
(テ) 帽子についての被告標章( 2)の使用
a 本件帽子のうち品番 E-019 に表示された被告標章(2)(使用態様(2)−5)は,
いずれも本件ロックバンドのグッズであることを示すために表示されたものである。
b よって,この被告標章(2)の使用は,商標としての使用ではない。
(ト) 帽子についての被告標章( 6)の使用
a( a) 本件帽子のうち品番 E-024(使用態様( 6))には,最上部に本件標章( 6)
が大きく表示され,人の顔を挟んだ下に,「 RIOT ON THE GRILL TOUR '05 」と表
示されている。
(b) 上記「 RIOT ON THE GRILL TOUR '05 」は,需要者によって,ライブツア
ー名として理解される。
b このようにツアー名の表示のあるものは,本件ロックバンドがこのような
ツアーを行おうとしていること又は行ったことを示すものであり,一種の説明的使
用であって,商標としての使用ではない。
(ナ) スコアブックについての被告標章( 2)の使用
a 本件スコアブックは,最上部左側に小さく「 BAND SCORE 」との表記があ
り,その下の赤帯部分に黄色の文字で被告標章(2)と表示され,その下の写真が表
示されている部分に「 Pepperoni Quattro 」の文字及び被告標章( 2)が記載されている 。
b また,表紙左下には,「 SHINKO MUSIC PUB. CO., LTD 」と表示されてい
る。
c 以 上 の 使 用 態 様 に よ れ ば , 被 告 標 章 ( 2) の 表 示 は , 需 要 者 に よ り,
「 Pepperoni Quattro 」という音楽アルバム作品の作者の表示であるとともに,タイト
ルの一部であると理解される。
d したがって,この被告標章( 2)は,商標として使用されたものではない。
イ 商品の類似性
(原告の主張)
(ア) 本件 T シャツ及び本件帽子は,商品及び役務の区分第25類の「ワイシャ
ツ類」及び「帽子」に分類されるものであり,原告登録商標2及び3の指定商品の範
囲に含まれる。
(イ) 本件リストバンドは,商品及び役務の区分第25類の「運動用特殊衣服」に
分類されるものであり,原告登録商標4の指定商品の範囲に含まれる。
(ウ) 本件ステッカーは,商品及び役務の区分第16類の「文房具類」に分類され
るものであり,原告登録商標5の指定商品の範囲に含まれる。
(エ) 本件タオルは,商品及び役務の区分第24類の「布製身の回り品」に分類さ
れるものであり,原告登録商標2の指定商品の範囲に含まれる。
(オ) 本件スコアブックは,商品及び役務の区分第16類の「印刷物」に分類され
るものであり,原告登録商標1の指定商品の範囲に含まれる。
(被告の主張)
原告の主張は,いずれも否認する。
ウ 商標の類似性
(原告の主張)
(ア) 被告標章の要部
a 原告商標の著名性
前提事実( 3)のとおり,本件 ELLE 商標は,我が国において,遅くとも「アンア
ン・エル・ジャポン(an an ELLE JAPON)」が創刊された昭和45年3月ころまでに
周知となり,また,新雑誌「 ELLE 」が創刊された昭和57年4月ころまでには著名
なものとなり,現在に至っている。
b 要部
被 告 標 章 は , い ず れ も 「 ELLEGARDEN 」 の 欧 文 字 か ら 成 る が , 後 半 の
「 GARDEN 」の部分は「庭,庭園」等の意味を有する普通名詞であることが一般に
浸透しているため,「 ELLE 」及び「 GARDEN 」の2つの単語から構成されることが
容易に読み取れる。
そして,著名商標は,その著名性故に看者の強い注意を惹き,結合商標の中に著
名商標と同じ綴りが含まれる場合,当該著名商標と同じ綴りの部分に看者の注意が
向くところ,「 ELLEGARDEN 」のうち「 ELLE 」の部分は,著名な本件 ELLE 商標と
同じ綴りから成るから,当該部分は極めて強い出所表示機能を有する。
したがって,被告標章のうち,「 ELLE 」の部分が要部となる。
c 本件ロックバンドの著名性について
被告は,本件ロックバンドは著名である旨主張する。しかしながら,本件ロック
バンドは,大手企業に所属せずに自主制作をしているいわゆるインディーズの音楽
グループであり,その歴史,規模を考えれば,本件ロックバンドの名称を知る者は
極めて少ないといわざるを得ない。
(イ) 外観
a 原告登録商標1の外観は「エル」であり,原告登録商標2∼5の外観は
「 ELLE 」である。
b 被告標章の外観の要部は,欧文字で「 ELLE 」と記載された部分である。
c したがって,原告登録商標と被告標章とは,外観において類似する。
(ウ) 称呼
a 原告登録商標からは,「エル」との称呼が生じる。
b 被告標章の要部は「 ELLE 」であるから,その部分から,「エル」との称呼が
生じる。
c したがって,原告登録商標と被告標章とは,称呼において類似する。
(エ) 観念
a 原告登録商標から,「彼女」との観念が生じる。
b 被告標章の要部である「 ELLE 」からは,「彼女」との観念を生じる。
c したがって,原告登録商標と被告標章とは,観念において類似する。
(オ) 取引の実情
a ウェブ検索
( a) 現在のようにウェブページが氾濫する状況にあっては,消費者が目的の
ウェブサイトを発見するためには,検索サイトにおいて自己が興味を有する単語を
キーワードとして検索し,検索結果として表示されたウェブサイトを訪れる。
このため,原告の著名な商標「 ELLE 」に関連した商品を探す需要者が,「 ELLE 」
をキーワードとしてウェブサイトを検索した場合,被告ウェブサイトが原告の正規
のウェブサイトや原告の商品を扱うウェブサイトと並列的に表示される。
( b) このように,被告商品の需要者は,本件ロックバンドのファンに限られ
ず,全国の一般消費者である。
( c) その結果,このような一般消費者が需要者として被告ウェブサイトに到
達し,被告商品を原告の商品と混同するおそれが生じる。
b ポスト・セールス・コンフュージョン
仮に被告商品を購入する際に,購入者は当該商品を本件ロックバンドに関連する
ものであると認識できたとしても,この商品を身に付けた者を更に見る他の者は,
このような情報は全く与えられていないから,かかる2次的な観察者は,当該商品
を原告の商品であると誤認混同するおそれが高い。
これにより,市場における商標の誤認混同が間接的に助長されるおそれがある。
c まとめ
したがって,取引の実情を考慮しても,なお被告商品と原告の商品との間には,
誤認混同のおそれがある。
d 打ち消し表示について
後記被告の主張(オ)dは否認する。
e 被告商品の個別的検討について
同(オ)eは否認する。
(カ) 結論
以上より,原告登録商標と被告標章とは類似し,原告は,被告に対し,原告商標
権に基づき,被告標章の使用差止請求権及び侵害の予防に必要な措置の請求権を有
する。
(被告の主張)
(ア) 被告標章の要部
a 原告の主張(ア)a及びbは否認する。
b 本件ロックバンドは,結成以来一貫して,「 ELLEGARDEN 」との表示並び
に「エルレガーデン」及び「エルレ」の称呼を用いて音楽活動及びメディア活動を行っ
てきたところ,その音楽 CD の販売実績等の音楽活動やテレビ,ラジオへの出演等
のメディア活動の実績から明らかなように,我が国において極めて有名なロックバ
ンドとなっており,「 ELLEGARDEN 」との表示並びに「エルレガーデン」及び「エル
レ」との称呼は,周知となっている。
c 「 ELLEGARDEN 」は,ドイツ語の長さの単位である「 ELLE(エルレ)」と英
語で庭を意味する「 GARDEN 」とから成る造語である。「 GARDEN 」は,特に音楽
や被服等の商標の世界では,他の語と結びつくことによって強い独自の識別力を獲
得する語である。さらに,「 ELLEGARDEN 」は,10の欧文字から成り,まとまり
よく一体不可分に結合している。したがって,「 ELLEGARDEN 」は,本件 ELLE 商
標の特殊な字体とは異なる独自の創作的字体とも相まって,本件 ELLE 商標とは異
なる高い識別力を有している。
d よって,被告標章においては,これを構成する一連一体の欧文字
「 ELLEGARDEN 」のすべてが要部である。
(イ) 外観
a 同(イ)a(原告登録商標の外観)は認め,b(被告標章の外観)及びc(外観の
類似)は否認する。
b 原告登録商標1の「エル」との外観は,被告標章とは明らかに異なる。
c 原告登録商標2∼5と被告標章とは,次のとおり,外観において著しく異
なっている。
( a) 原告登録商標2∼5の外観は,次のとおりである。
① 「 ELLE 」の4つの欧文字から成る。
② 商標を構成する欧文字は,各文字が離れており,文字の間が各文字の横幅よ
りも大幅に長く(各文字間に文字幅の1.4倍程度のスペースがある 。 ,各文字の

大きさ及び各文字間のスペースは,それぞれほぼ同一である。
③ 商標を構成する欧文字は,顕著な縦長である。
④ 商標を構成する欧文字の横線が縦線に比べて著しく細い。
⑤ 商標を構成する欧文字の右端にひげがある特徴的な字体である。
⑥ 商標全体の上下と左右の長さの比は,約1:3.8である。
(b) これに対し,被告標章の外観は,次のとおりである。
① 「 ELLEGARDEN 」の10の欧文字から成る。
② 標章を構成する欧文字は,各文字が密接しており,文字の間が各文字の横幅
よりも大幅に短く(各文字間のスペースは,長くとも文字幅の0.3倍程度であ
る。),各文字の大きさ及び各文字間のスペースはそれぞれほぼ同一である。
③ 標章を構成する欧文字は,顕著な縦長ではない。
④ 標章を構成する欧文字の縦線と横線はほぼ同じ太さの太字である(被告標章
(4)を除く。)。
⑤ 被告標章(1),(2)及び( 5)の欧文字の「 L 」の文字の右側には, L の左側の縦
線の半分以上の高さまで上がる特徴的な線がある。
⑥ 標章全体の上下と左右の長さの比は,約1:6.6である。
(ウ) 称呼
a 同(ウ)のうち,a(原告登録商標の称呼)は認め,b(被告標章の称呼)及び
c(称呼の類似)は否認する。
b 被告標章から生じる称呼は,「エルレガーデン」であり,その略称は,「エ
ルレ」として周知である。
被告標章から「エレガーデン」ないし「エルガーデン」との称呼が生じることもあり
得ないではないが,「エル」との称呼が生じることはない。
(エ) 観念
a 同(エ)a(原告登録商標の観念),b(被告標章の観念)及びc(観念の類似)
は否認する。
b 被告標章からは,本件ロックバンドとの観念が生じる。
(オ) 取引の実情
a ウェブ検索
(a ) 同(オ)a(a)(被告ウェブサイトへの到達)は不知,( b)(需要者)及び(c)(混
同のおそれ)は否認する。
(b) 本件ロックバンドが極めて著名な存在であることは,上記(ア)bのとおり
である。被告商品の販売態様は,前記ア(被告の主張)(イ)のとおりであり,被告商
品における被告標章の表示は,その外観上本件ロックバンドの活動の一環として利
用されている。したがって,被告製品と原告の商品との間に,誤認混同のおそれは
ない。
b ポスト・セールス・コンフュージョン
( a) 同(オ)bは否認する。
( b) 被告商品は,それを着用した者を更に見た第三者が原告の商品だと誤認
混同するような外観を有しないし,本件ロックバンドは著名な存在であるから,被
告商品が原告の商品と誤認混同されるおそれは全くない。
c まとめ
同(オ)cは否認する。
d 打ち消し表示
原告は,ライブツアーを含む音楽活動に何ら関係していない。したがって,被告
商品の一部におけるツアー名,ツアー日程及びライブ会場の記載は,それらの被告
商品が原告商標と関わりがないことを示すものであり,打ち消し表示としての機能
を有する。
e 被告商品の個別的検討
前記ア(被告の主張)(ウ)∼(タ)で述べたことは,取引の実情としても考慮されるべ
きであり,これらの事情も考慮すれば,被告商品が原告の商品と誤認混同されるお
それは全くない。
エ 自己の名称等の使用
(被告の主張)
(ア) 名称又は著名な略称
「ELLEGARDEN」は,本件ロックバンドの名称又は著名な略称である。
(イ) 普通に用いられる方法
被告標章の表示は,いずれも普通に用いられる方法でされている。
(ウ) まとめ
よって,被告商品への被告標章の表示には,原告登録商標の効力は及ばない(商
標法26条1項1号)。
(原告の主張)
(ア) 名称又は著名な略称
被告の主張(ア)は否認する。
(イ) 普通に用いられる方法
a 同(イ)は否認する。
b 被告標章は,いずれもデザイン化されたフォントによって構成されている。
また,被告標章は,他の図形商標と結合して使用されたり,商品の中央に大きく表
示されている。
したがって,被告標章は,いずれも普通に用いられる方法で表示されていない。
(ウ) まとめ
同(ウ)は否認する。
(2) 1号請求及び2号請求
ア 商品等表示としての使用
(原告の主張)
(ア) 被告標章(10)を除く被告標章
a 前記(1)ア(原告の主張)に同じ。
b 上記事実によれば,被告標章(10)を除く被告標章は,商品等表示として使
用されている。
(イ) 被告標章(10)
a 被告標章(10)の使用態様は,使用態様(10)のとおりであり,本件 CD のパ
ッケージ表面の左上部及び右下部で使用されている。
b 上記使用態様によれば,被告標章(10)は,商品等表示として使用されてい
る。
(被告の主張)
(ア) 被告標章(10)を除く被告標章
a 前記(1)ア(被告の主張)に同じ。
b 原告の主張(ア)bは否認する。
(イ) 被告標章(10)
a 同(イ)aは認める。
b 同(イ)bは否認する。
( a) 音楽 CD において,その商品表面に小さいロゴ等ではなく表示されるも
のは,そのタイトル及びミュージシャン名であることが通常である。
( b) 本件 CD は,被告標章(10)と共に,カタカナで「エルレガーデン」と大き
な文字を付した帯を需要者の目に付きやすい位置に付して,販売されている。
( c) また,本件 CD のパッケージ裏面には,「 Dynamord Label 」,「 DISCUS
CO.,LTD 」などと,通常の音楽用コンパクトディスクにおけるものと同程度の表示
の大きさで,製造・販売元が表示されている。
(d) したがって,被告標章(10)は,商品等表示として使用されていない。
イ 本件 ELLE 商標及び原告登録商標の周知性及び著名性
(原告の主張)
前記(1)ウ(原告の主張)(ア)a(原告商標の著名性)に同じ。
(被告の主張)
原告の主張は否認する。
ウ 商品等表示の類似性
(原告の主張)
(ア) 被告標章(10)を除く被告標章
前記(1)ウ(原告の主張)に同じ。
(イ) 被告標章(10)
a 外観以外の点
前記(1)ウ(原告の主張)に同じ((イ)を除く。)。
b 外観
( a) 本件 ELLE 商標及び原告登録商標の外観は,「 ELLE 」又は「エル」であ
る。
( b) 被告標章( 10)は,「 ELLE 」と「 GARDEN 」が二段書きにされ,かつ,
「 ELLE 」が「 GARDEN 」よりも大きい字体で,本件 ELLE 商標の字体に似た字体で
表示されていることから,「 ELLE 」が要部としてより容易に認識される。したがっ
て,その外観の要部は,「 ELLE 」の部分である。
( c) したがって,本件 ELLE 商標及び原告登録商標と被告標章(10)とは,外
観において類似する。
(被告の主張)
(ア) 被告標章(10)を除く被告標章
前記(1)ウ(被告の主張)に同じ。
(イ) 被告標章(10)
a 外観以外の点
前記(1)ウ(被告の主張)に同じ((イ)を除く。)。
b 外観
原告の主張(イ)b( a)(本件 ELLE 商標等の外観)は認め,( b)(被告標章( 10)の外
観)及び(c)(外観の類似)は否認する。
エ 混同のおそれ(1号請求のみ)
(原告の主張)
被告標章は,いずれも本件 ELLE 商標及び原告登録商標と類似し,しかも被告商
品は,原告から使用の許諾を受けた多数のライセンシーが本件 ELLE 商標及び原告
登録商標を付して販売している商品と同一又は類似であるため,被告標章の使用行
為は,需要者をして,被告商品が原告と系列関係など緊密な営業上の関係にある者
の商品であると誤認混同させるおそれがある。
(被告の主張)
(ア) 原告の主張は否認する。
(イ) 特に,音楽作品である音楽 CD に被告標章(10)が付されても,需要者が,
当該商品の製造・販売に原告が何らかの形で関わっていると認識するおそれはない。
オ 営業上の利益の侵害
(原告の主張)
(ア) 原告は,長年にわたり継続的に営業活動及び広告・宣伝活動を行い,原告
雑誌において常に最先端のファッション情報を発信するとともに,本件 ELLE 商標
及び原告登録商標の下,需要者のその時々のニーズに合致した高い品質の商品を提
供することにより,世界中の需要者から高い評価を受けてきた。かかる原告の活動
の結果,本件 ELLE 商標及び原告登録商標は,非常に高いグッドウィルを獲得する
とともに,強力な顧客吸引力を備えるに至っている。
ところが,被告商品は,ファッション性の高い T シャツを始めとする被服,運
動用衣服及び身の回り品等であり,被告が被告商品の販売活動に当たって被告標章
を使用する行為は,需要者に対し,被告商品が原告の商品であるかのごとく誤認さ
せるおそれが極めて高い行為である。このような被告の行為は,原告が長年にわた
る多大な努力を通じて確立した本件 ELLE 商標及び原告登録商標の著名商標として
の価値,グッドウィル及び顧客吸引力に不当にただ乗りする行為であるとともに,
誤認の結果,本件 ELLE 商標及び原告登録商標の識別力及び信用力のダイリューシ
ョンがもたらされる。
(イ) したがって,原告及び関連企業の営業上の利益が害されることは明らかで
あり,原告は,被告に対し,不正競争防止法3条及び2条1項1号,又は同法3条
及び2条1項2号に基づき,被告標章の使用等の差止請求権及び侵害の予防に必要
な措置の請求権を有する。
(被告の主張)
原告の主張は否認する。
第3 当裁判所の判断
1 商標権請求について
(1) 商標としての使用の有無
ア T シャツ(品番 E-002,003)についての被告標章( 2)の使用
(ア)a T シャツ(品番 E-002)の前面(使用態様( 2)−11)には,本件マークを左
に表示した被告標章(2)が白地に青字で表示され,その下に,「 ELLEGARDEN 」の
文字よりも大きく,「 BRING YOUR BOARD!!」と青地に白抜き文字で表示されてい
る。
b そ の 背 面 ( 使 用 態 様 ( 2) − 1 2 ) に は , 白 地 に 青 字 で 「 BRING YOUR
BOARD!! Tour 2003 」との表示と共に,「 7.31 渋谷 CLUB QUATTRO 」など25の
日時及び地名等が表示され,右下には,本件マークを左に表示した被告標章( 2)が
白地に青字で表示されている。
(以上,争いのない事実)
c T シャツ(品番 E-002)の襟ネームには,「 United Athle 」という T シャツ自
体の製造・販売者の商標が表示されている。この点は,その余の T シャツについ
ても,同様である。
(乙65⑤,○22,弁論の全趣旨)
d E-003 は,E-002 の色違いであり,白地に青が黒地に黄色となっている。
(争いのない事実)
(イ)a これらの事実によれば,被告標章(2)は,使用態様( 2)−11及び12に
おいて,商標として使用されているとは認められない。
b すなわち, T シャツの前面や背面に表示された文字及び模様は,商標とし
て使用される場合も,メッセージとして表示される場合もあり得るが,いずれに当
たるか又は双方を兼ねているかは,その使用態様を全体として観察して判断すべき
である。
c その際,商標としての使用であるか否かは,T シャツの需要者である一般
消費者の立場から判断されるべきである。
後記(3)オ(イ)のとおり,T シャツ等の販売方法が被告主張のとおりであるとして
も,ネットでの検索が発達した現在においては,本件ロックバンドを知らない一般
消費者も,被告ウェブサイトに到達し得るし,後記(3)ア(ウ)のとおり,本件ロック
バンドは,ロックを好む若者の間においてはある程度有名であるとしても,上記一
般消費者の間で広く知られていると認めることはできない。
d T シャツ(品番 E-002)の背面の表示は,「 BRING YOUR BOARD!!」の下に
小さくではあるが「 TOUR 2003」と記載され,さらに,コンサートの日時及び会場
と理解される表示があり,被告標章(2)は,上記「 BRING YOUR BOARD!! TOUR
2003」とは離れた右下部に,「 BRING YOUR BOARD!!」より小さく表示されている
とはいえ,「 BRING YOUR BOARD!! TOUR 2003」と同様に白地に青字で表示さ
れているから,これらの間に記述的なつながりを認めることができる。したがって,
被告標章(2)は,使用態様(2)−12において,商標として使用されているとは認め
られない。
e T シャツ(品番 E-002)の前面には,被告標章(2)と , TOUR」とは記載さ

れていない「 BRING YOUR BOARD!!」という表示があるのみであるから,これだけ
では,客観的に見て本件ロックバンドのツアー記念Tシャツであることを表示する
ものと認めることは困難である。しかしながら,T シャツは前面及び背面を含めた
全体のデザインを観察した上で購入されると考えられるところ,上記背面の表示を
併せ考慮すれば,前面の被告標章( 2)も,「 BRING YOUR BOARD!! TOUR 2003」
のミュージシャンを表示しているものと認識されるものと認められる。したがって,
被告標章(2)は,使用態様(2)−11において,商標として使用されていると認める
ことはできない。
f これらの点は,色違いの T シャツ(品番 E-003)についても同様である。
イ T シャツについての被告標章(1)及び( 2)の使用
(ア)a T シャツ(品番 E-020)の前面(使用態様( 1))は,被告標章(1)が表示され ,
「 G 」の文字の上に骸骨のコック,「 EL 」の文字の辺りにはコックの持つ包丁が描か
れるとともに,被告標章(1)の下には,「 RIOT ON THE GRILL TOUR 」が表示され
ている。
b その背面(使用態様(2)−13)には,被告標章(2)と共に,「 RIOT ON THE
GRILL TOUR 」と表示され,さらに,「 7.18(mon) TOKYO SHIBUYA-AX 」など39
の日時,曜日及び地名等が表示されている。
c E-021 は, E-020 の色違いである。
(以上,争いのない事実)
(イ)a 使用態様(1)において,被告標章( 1)が「 RIOT ON THE GRILL TOUR 」よ
りも大きく表示され,かつ両者が近接して表示されていることを考慮すると,両者
の間に記述的なつながりを認めることができる。したがって,被告標章( 1)は,使
用態様( 1)において,商標として使用されていると認めることはできない。
b その背面(使用態様( 2)−13)には,被告標章( 2)が「 RIOT ON THE
GRILL TOUR 」よりも大きく表示され,かつ両者が近接して表示され,さらに,コ
ンサートの日時及び会場と理解される表示があるから,これらの間に記述的なつな
がりを認めることができる。したがって,被告標章(2)は,使用態様(2)−13にお
いて,商標として使用されていると認めることはできない。
ウ T シャツについての被告標章(3)の使用
前提事実(4)ア(ア)b( c)の使用態様によれば,被告標章( 3)は,使用態様( 3)にお
いて,商標として使用されていると認められる。
エ T シャツについての被告標章(4)の使用
前提事実( 4)ア(ア)b( d)の使用態様によれば,被告標章( 4)は,使用態様( 4)にお
いて,商標として使用されていると認められる。
オ T シャツについての被告標章(5)の使用
(ア) a T シ ャ ツ (品 番 E-015)の 前 面 (使 用態 様( 5)− 1 )に は ,「 Bad For
Education Tour 」と大きく表示され,炎を背景とした骸骨の図柄の下に,「 Bad For
Education Tour 」の4分の1ほどの大きさの字で,本件マークと共に被告標章( 5)が
表示されている。
b その背面(使用態様(5)−2)には,「 Bad For Education Tour 2004 」との表
示と共に , 11/2(Tue)-Osaka Big Cat」など15の日時,曜日及び地名等が表示され,

その下に,本件マークと共に被告標章(5)が表示され,更に「 SKULLSHIT 」の表示
がされている。
c E-016 は, E-015 の色違いである。
(以上,争いのない事実)
(イ)a T シャツ(品番 E-015, 016)の背面(使用態様( 5)−2)には,「 Bad For
Education Tour 2004 」との表示と共に,コンサートの日時及び会場と理解される表
示があり,その下に,被告標章(5)が表示されているから,これらの間に記述的な
つながりを認めることができる。したがって,被告標章(5)は,使用態様(5)−2に
おいて,商標として使用されていると認めることはできない。
b その前面(使用態様(5)−1)は,「 Bad For Education Tour 」と大きく表示さ
れ,被告標章(5)が,炎を背景とした骸骨の図柄を挟んだ「 Bad For Education Tour 」
から離れた位置に,「 Bad For Education Tour 」より小さな字で表示されているもの
であるから,「 Bad For Education Tour 」と被告標章( 5)との間に記述的なつながりを
認めることには多少疑問の余地がある。しかしながら, T シャツは前面及び背面を
含めた全体のデザインを観察した上で購入されると考えられるところ,上記背面の
表示を併せ考慮すれば,前面の被告標章(5)も,「 Bad For Education Tour 」のミュー
ジシャンを表示しているものと認識されるものと認められる。したがって,被告標
章( 5)は,使用態様( 5)−1において,商標として使用されているとは認められない。
カ T シャツについての被告標章(7)の使用
前提事実( 4)ア(ア)b( f)の使用態様によれば,被告標章( 7)は,使用態様( 7)にお
いて,商標として使用されていると認められる。
キ T シャツについての被告標章(8)の使用
前提事実( 4)ア(ア)b( g)の使用態様によれば,被告標章( 8)は,使用態様( 8)にお
いて,商標として使用されていると認められる。
ク T シャツについての被告標章(9)の使用
前提事実( 4)ア(ア)b( h)の使用態様によれば,被告標章( 9)は,使用態様( 9)にお
いて,商標として使用されていると認められる。
ケ T シャツについての被告標章(11)の使用
( ア )a T シ ャ ツ ( 品 番 E-027) の 前 面 (使 用 態 様 ( 11) − 1 ) に は , 縦 書 き で
「 ROCK 」と表示された上で,その横上部に「 DEVILISHLY DELIGHTFUL TALES
OF 」の文字があり,その下部に被告標章( 11)が表示され,被告標章(11)のすぐ下部
に「 SPACE SONIC TOUR 2005-2006 」と表示されている。
b その背面(使用態様(11)−2)には,本件マークと共に,被告標章(11)が表
示され,そのすぐ下に「 SPACE SONIC TOUR 2005-2006 」が表示され,更にその下
に,日時及び地名等が数多く表示されている。
c E-028 は, E-027 の色違いである。
(以上,争いのない事実)
(イ)a T シャツの前面(使用態様(11)−1)に,被告標章(11)の横に「 ROCK 」
と表示された上,被告標章( 11)のすぐ下部に「 SPACE SONIC TOUR 2005-2006 」と
表示されていることからすると,これらの間に記述的なつながりを認めることがで
きる。したがって,被告標章(11)は,使用態様(11)−1において,商標として使用
されていると認めることはできない。
b T シャツの背面(使用態様(11)−2)に,被告標章(11)が表示され,そのす
ぐ下に「 SPACE SONIC TOUR 2005-2006 」が表示され,更にその下に,コンサート
の日時及び会場と理解される表示があることからすると,これらの間に記述的なつ
ながりを認めることができる。したがって,被告標章( 11)は,使用態様( 11)−2に
おいて,商標として使用されていると認めることはできない。
コ T シャツについての被告標章(12)の使用
前提事実( 4)ア(ア)b( j)の使用態様によれば,被告標章( 12)は,使用態様( 12)に
おいて,商標として使用されていると認められる。
サ T シャツについての被告標章(13)の使用
(ア) 被告標章(13)は,「 ENJOY ELLEGARDEN TiL YOUR...DEAD!!!」という文
章の中で,使用されている。
(争いのない事実)
(イ) 上記使用態様によれば,被告標章(13)は,一定の意味を示す英文の一部と
して使用されているものと理解され,出所識別標識として表示されているとは認め
られない。
したがって,被告標章(13)は,使用態様(13)において,商標として使用されてい
ると認めることはできない。
シ リストバンドについての被告標章(2)の使用
前提事実(4)ア(イ)bの使用態様によれば,被告標章( 2)は,使用態様( 2)−2∼4
において,商標として使用されていると認められる。
ス ステッカーについての被告標章( 2)の使用
前提事実(4)ア(ウ)b( a)の使用態様によれば,ステッカーという商品の性質自体
からステッカーに何らかのメッセージが記載されることが多いことを考慮しても,
被告標章(2)は,使用態様(2)−1において,商標として使用されていると認められ
る。
セ ステッカーについての被告標章( 4)の使用
前提事実( 4)ア(ウ)b( b)の使用態様によれば,ステッカーという商品の性質自体
からステッカーに何らかのメッセージが記載されることが多いことを考慮しても,
被告標章(4)は,使用態様(4)と同様の使用態様において,商標として使用されてい
ると認められる。
ソ ステッカーについての被告標章( 5)の使用
(ア) 本件ステッカーのうち品番 E-026(使用態様( 5)−3)には,「 Bad For
Education 」と表示されている。
(争いのない事実)
(イ) 上記「 Bad For Education 」がライブツアー名であることを窺わせる表示は
ないから,ステッカーという商品の性質自体からステッカーに何らかのメッセージ
が記載されることが多いことを考慮しても,被告標章( 5)は,使用態様( 5)−3にお
いて,商標として使用されていると認められる。
タ タオルについての被告標章( 2)の使用
(ア) 使用態様(2)−1と同様
前提事実(4)ア(エ)b(a)の使用態様によれば,被告標章(2)は,タオルの形態を併
せ考慮しても,使用態様( 2)−1と同様の使用態様において,商標として使用され
ていると認められる。
(イ) 使用態様(2)−1に類似
a 本件タオルのうち品番 E-018(使用態様(2)−1に類似)には,被告標章( 2)
のすぐ下に,「 Bad For Education 」と表示されている。
(争いのない事実)
b 上記使用態様によれば,被告標章( 2)と「 Tour 」等の記載のない「 Bad For
Education 」との間に記述的なつながりを認めることができないから,タオルの形態
を併せ考慮しても,被告標章(2)は,使用態様(2)−1に類似の使用態様において,
商標として使用されていると認められる。
(ウ) 使用態様(2)−6
a 本件タオルのうち品番 E-023,025(使用態様( 2)−6)には,被告標章(2)の
すぐ下に,「 RIOT ON THE GRILL 」と表示されている。
(争いのない事実)
b 上記使用態様によれば,被告標章( 2)と「 Tour 」等の記載のない「 RIOT ON
THE GRILL 」との間に記述的なつながりを認めることができないから,タオルの形
態を併せ考慮しても,被告標章(2)は,使用態様( 2)−6において,商標として使用
されていると認められる。
(エ) 使用態様(2)−7
a 本件タオルのうち品番 E-034(使用態様(2)−7)には,被告標章(2)のすぐ
下に,「 SPACE SONIC TOUR 2005-2006 」と表示されている。
(争いのない事実)
b 上記使用態様によれば,被告標章( 2)と「 SPACE SONIC TOUR 2005-2006 」
との間に記述的なつながりを認めることができるから,被告標章( 2)は,使用態様
(2)−7において,商標として使用されていると認めることはできない。
チ 帽子についての被告標章(2)の使用
前提事実(4)ア(オ)b( a)の使用態様によれば,被告標章( 2)は,使用態様( 2)−5
において,商標として使用されていると認められる。
ツ 帽子についての被告標章(6)の使用
(ア) 本件帽子のうち品番 E-024(使用態様( 6))には,最上部に本件標章( 6)が大
きく表示され,人の顔を挟んだ下に,「 RIOT ON THE GRILL TOUR '05 」と表示さ
れている。
(争いのない事実)
(イ) 上記使用態様によれば,被告標章( 6)と「 RIOT ON THE GRILL TOUR '05 」
との間に記述的なつながりを認めることができるから,被告標章( 6)は,使用態様
(6)において,商標として使用されていると認めることはできない。
テ スコアブックについての被告標章( 2)の使用
(ア)a 本件スコアブックは,最上部左側に小さく「 BAND SCORE 」との表記が
あり,その下の赤帯部分に黄色の文字で被告標章( 2)と表示され,その下の写真が
表示されている部分に「 Pepperoni Quattro 」の文字及び被告標章(2)が記載されてい
る。
b また,表紙左下には,「 SHINKO MUSIC PUB. CO., LTD 」と表示されてい
る。
(以上,争いのない事実)
(イ) 上 記使用態様に よれば,被告標章( 2)は,需要者により,「 Pepperoni
Quattro 」という音楽アルバム作品の作者の表示であるとともに,タイトルの一部で
あると理解されるものと認められ,使用態様( 2)−10において,商標として使用
されていると認めることはできない。
(2) 商品の類似性の有無
ア 本件 T シャツ及び本件帽子は,商品及び役務の区分第25類の「ワイシャ
ツ類」及び「帽子」に分類されるものであり,原告登録商標2及び3の指定商品の範
囲に含まれると認められる。
イ 本件リストバンドは,商品及び役務の区分第25類の「運動用特殊衣服」に
分類されるものであり,原告登録商標4の指定商品の範囲に含まれると認められる。
ウ 本件ステッカーは,商品及び役務の区分第16類の「文房具類」に分類され
るものであり,原告登録商標5の指定商品中の布製ラベルに類似すると認められる。
エ 本件タオルは,商品及び役務の区分第24類の「布製身の回り品」に分類さ
れるものであり,原告登録商標2の指定商品の範囲に含まれる。
オ なお,本件スコアブックについては,被告標章(2)は商標として使用されて
いないと判断したため,以下,本件スコアブックについてのみ関係する原告登録商
標1に関する判断は行わない。
(3) 商標の類似性の有無
ア 被告標章の要部
(ア) 前提事実( 3)の各事実によれば,本件 ELLE 商標及び原告登録商標は,遅
くとも本件ロックバンドが結成された平成10年以前には,我が国において周知を
超え,著名な商標となっていたと認められる。
(イ) 被告標章は,それぞれ具体的なデザインに相違はあるものの,いずれも
「 ELLEGARDEN 」の10文字の欧文字から成る。このうち,「 ELLE 」の部分は,上
記のとおり我が国において著名な商標である本件 ELLE 商標と同じ綴りから成る。
また,「 GARDEN 」の部分は,我が国における英語教育の水準からすると,それに
接した需要者により,「庭,庭園」等の意味を有する普通名詞であると理解されるた
め,被告標章は,同需要者により,「 ELLE 」と「 GARDEN 」の2つの単語より成る
ものとして理解されるものと認められる。なお,我が国におけるドイツ語教育の水
準からすると,同需要者により,「 ELLE 」がドイツ語において長さの単位を意味す
る単語であると理解されることはないと認められる。
著名商標は,その著名性故に看者の強い注意を惹き,結合商標の中に著名商標と
同じ綴りが含まれる場合,当該著名商標と同じ綴りの部分に看者の注意が向くと考
えられるところ,「 ELLEGARDEN 」のうち「 ELLE 」の部分は,著名な本件 ELLE 商
標と同じ綴りから成るから,当該部分は極めて強い出所表示機能を有すると認めら
れる。他方,「 GARDEN 」の部分は,著名商標と同じ綴りの「 ELLE 」部分に比し,
出所表示機能が弱いというべきである。したがって,被告標章の要部は,「 ELLE 」
の部分であると認められる。
(ウ) これに対し,被告は,本件ロックバンドが極めて有名であり,その表示及
び称呼も周知となっていること,並びに被告標章は10文字の欧文字のまとまりの
よい一体不可分の結合により成る識別力の高い造語であることなどを挙げて,
「 ELLEGARDEN 」全体が要部である旨主張する。
確かに,証拠(乙1∼16,67,68)及び弁論の全趣旨によれば,本件ロック
バンドが音楽 CD の販売やメディアにおける活動において一定の実績を挙げており,
相当の知名度を獲得したことが認められる。しかし,弁論の全趣旨によれば,ロッ
クバンドに関心を持つ人は若者等一部の年代の者に限られると認められるところ,
本件ロックバンドが,被告商品の需要者であると考えられる一般消費者の多くが本
件ロックバンドを想起するといえるほどの知名度を有するに至ったとまで認めるに
足りる証拠はない。
また,被告標章がまとまりよく構成されているといっても,単語として固有の意
味を有しないことを考慮すると,上記のとおり「 ELLE 」の部分と「 GARDEN 」の部
分とに分離して把握されると認めざるを得ない。実際に,証拠(甲94,乙2)によ
れば,本件ロックバンドは「 ELLE 」又は「エルレ」と「 GARDEN 」の部分を除く形で
略称されることがあることが認められる。
よって,被告の上記主張は採用することができない。
イ 外観について
(ア) 原告登録商標2∼5の外観は「 ELLE 」であることは,当事者間に争いがな
い。
(イ) 被告標章( 9),( 10)及び( 12)を除く被告標章の要部は,上記アのとおり
「 ELLE 」という4文字の欧文字により表記された部分である。
しかしながら,被告標章( 9)及び(12)は,二段の文字全体が本来のアルファベッ
トの字から相当デザイン化されているため,その需要者が二段の文字中上段左側の
部分を「 ELLE 」であると認識することは,相当困難である。
(ウ) したがって,被告標章( 9),(10)及び( 12)を除く被告標章は,被告が主張
する外観の相違(第2,3( 1)ウ(被告の主張)(イ)c)を考慮しても,原告登録商標2
∼5と外観において類似すると認められるが,被告標章( 9)及び( 12)は原告登録商
標2∼5と外観において類似すると認めることはできない。
ウ 称呼について
(ア) 原告登録商標2∼5からは,「エル」との称呼が生じることは,当事者間に
争いがない。
(イ) 被告標章( 9),( 10)及び( 12)を除く被告標章の要部は,前記アのとおり
「 ELLE 」という4文字の欧文字により表記された部分であるから,「エル」又は「エ
レ」の称呼を生じるものと認められる。
しかしながら,被告標章( 9)及び(12)は,二段の文字全体が本来のアルファベッ
トの字から相当デザイン化されているため,その需要者が二段の文字中上段左側の
部分を「 ELLE 」であると認識することは,相当困難である。
(ウ) したがって,被告標章( 9),(10)及び( 12)を除く被告標章は,原告登録商
標2∼5と称呼において類似するが,被告標章( 9)及び( 12)は原告登録商標2∼5
と称呼において類似すると認めることはできない。
エ 観念について
被告標章(9),(10)及び( 12)を除く被告標章の要部は,前記アのとおり「 ELLE 」
という4文字の欧文字により表記された部分であるから,被告標章( 9),( 10)及び
(12)を除く被告標章は,原告登録商標2∼5と観念において類似する。
しかしながら,被告標章( 9)及び(12)は,二段の文字全体が本来のアルファベッ
トの字から相当デザイン化されており,その需要者が二段の文字中上段左側の部分
を「 ELLE 」であると認識することは,相当困難であるため,被告標章( 9)及び(12)
は原告登録商標2∼5と観念において類似すると認めることはできない。
オ 取引の実情について
(ア) 被告の販売方法
証拠(甲70の1∼5,乙39)及び弁論の全趣旨によれば,被告商品の販売態様
は,第2,3(1)ア(被告の主張)(イ)b(被告商品の販売態様),c(ライブ会場で販
売される場合)並びにd(被告ウェブサイトで販売される場合)( a)(被告ウェブサイ
トの構成)及び同(b)(支払方法)のとおりであることが認められる。
(イ) 需要者
a ウェブ検索
証拠(甲86の1∼3,87の1∼4)及び弁論の全趣旨によれば,現在のように
ウェブページが氾濫する状況にあっては,消費者が目的のウェブサイトを発見する
ためには,検索サイトにおいて,自己が興味を有する単語をキーワードとして検索
し,検索結果として表示されたウェブサイトを訪れるところ,原告の著名な商標
「 ELLE 」に関連した商品を探す需要者が,「 ELLE 」をキーワードとしてウェブサイ
トを検索した場合,被告ウェブサイトが,原告の正規のウェブサイトや原告の商品
を扱うウェブサイトと並列的に表示されること,その結果,原告の商品を探してい
る消費者であっても,被告ウェブサイトに容易に到達し得ることが認められる。ま
た,上記(ア)に認定の事実によれば,被告は,誰もがアクセス可能な被告ウェブサ
イトにおいて,被告商品の広告等を行っており,被告商品の購入申込みは誰でも行
うことができるものである。
b ポスト・セールス・コンフュージョン
さらに,仮に購入者自身は,被告ウェブサイト中の説明内容により,被告商品を
本件ロックバンドに関連するものであるということを認識できたとしても,当該商
品を身に付けた者を更に他の第三者が見ることも当然あり得るところであり,その
ような第三者は,当該商品が本件ロックバンドに関連するものであるとの認識を有
することができず,当該商品の出所が原告であると誤認するおそれがあると認めら
れる。
c 現在の販売方法の永続性
また,弁論の全趣旨によれば,被告商品が本件ロックバンドの人気上昇等に従い,
デパートや衣料品の通販チャネルで販売されることも十分あり得ると認められるか
ら,ライブ会場や被告ウェブサイトを通じて販売されるとの現在の販売方法が今後
とも永続する販売方法であるとまで認めることはできない。
d まとめ
以上の事情にかんがみると,被告商品については,広く一般消費者がその需要者
であると考えるのが相当である。
(ウ) 原告の営業内容
a 前提事実( 3)のとおり,原告は,雑誌の発行のほか,物品の販売も行って
いるが,雑誌で取り上げる記事等及び販売する物品は,いずれも被服,布製身の回
り品,バッグ類,履き物,装身具,眼鏡,傘,寝具類,家具,テーブルウェア,食
器等のファッション関連の記事等及び物品であり,原告からのライセンシーも,こ
れらの商品の製造,販売を行っている。
b 原告が音楽関連事業その他エンタテインメント関連事業を行い,又はこれ
に関与していることを認めるに足りる証拠はない。
(エ) 被告商品の態様
被告商品の態様は,前記( 1)に説示したとおりである。
(オ) 検討
以上の事情を総合的に考慮して,以下検討する。
a 商標的使用ではないとされた T シャツについて
( a) 前記(1)において,当裁判所は, T シャツの使用態様(1)及び( 2)−13,
(2)−11及び12,(5)−1及び2,並びに( 11)−1及び2につき,商標として使
用されたものではないと判断した。
(b) 仮にこれらが商標として使用されたものだとしても,これらの T シャツ
には,いずれも,その前面及び/又は背面に,被告標章のほか,ツアー名及び/又
はライブ会場・ライブ日程と理解される表示がされており,このような表示が存在
する場合,これに接した需要者は,被告標章によって当該商品に表示される主体の
音楽活動を想起すると考えられること,被告標章( 10)を除く被告標章は,本件
ELLE 商標の特徴的な字体を有するものではないこと等の事情にかんがみると,こ
れらの T シャツに接した需要者が,これらを原告又は原告と経済的若しくは組織
的に何らかの関係がある者の業務に係る商品ではないかとその出所について誤認混
同するおそれがあるとは認められない。
b T シャツの使用態様( 9)及び( 12)について
T シャツの使用態様(9)及び(12)と原告登録商標2及び3とは,外観,称呼及び
観念で類似しないから,これらの T シャツに接した需要者が,これらの T シャツ
を原告又は原告と経済的若しくは組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品
ではないかとその出所について誤認混同するおそれがあるとは認められない。
c T シャツのその余の使用態様について
T シャツの使用態様( 3),(4),(7)及び( 8)と原告登録商標2及び3とは,外観,
称呼及び観念で類似し,取引の実情を考慮しても,被告標章( 3)等が音楽活動の主
体を意味していることを需要者に想起させるものはないから,これらの T シャツ
に接した需要者がこれを原告又は原告と経済的若しくは組織的に何らかの関係があ
る者の業務に係る商品ではないかとその出所について誤認混同するおそれがあると
認められる。
d リストバンド
本件リストバンドの使用態様(2)−2∼4と原告登録商標4とは,外観,称呼及
び観念で類似し,取引の実情を考慮しても,被告標章(2)が音楽活動の主体を意味
していることを需要者に想起させるものはないから,これらのリストバンドに接し
た需要者がこれを原告又は原告と経済的若しくは組織的に何らかの関係がある者の
業務に係る商品ではないかとその出所について誤認混同するおそれがあると認めら
れる。
e ステッカー
本件ステッカーの使用態様( 2)−1,使用態様( 4)と同様の使用態様及び使用態
様(5)−3と原告登録商標2,4及び5とは,外観,称呼及び観念で類似し,取引
の実情を考慮しても,被告標章(2)等が音楽活動の主体を意味していることを需要
者に想起させるものはないから,これらのステッカーに接した需要者がこれを原告
又は原告と経済的若しくは組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品ではな
いかとその出所について誤認混同するおそれがあると認められる。
f タオルの使用態様( 2)−1と同様について
タオルの使用態様( 2)−1と同様の使用態様と原告登録商標2とは,外観,称呼
及び観念で類似し,取引の実情を考慮しても,これらのタオルには被告標章( 2)が
音楽活動の主体を意味していることを需要者に想起させるものは全くないから,こ
れらのタオルに接した需要者がこれらを原告又は原告と経済的若しくは組織的に何
らかの関係がある者の業務に係る商品ではないかとその出所について誤認混同する
おそれがあると認められる。
g タオルの使用態様( 2)−1に類似及び(2)−6について
タオルの使用態様(2)−1に類似の使用態様及び(2)−6と原告登録商標2とは ,
外観,称呼及び観念で類似し,取引の実情を考慮しても,これらのタオルには
「 RIOT ON THE GRILL 」等と表示されているが「 TOUR 」等の表示がないため,被
告標章( 2)が音楽活動の主体を意味していることを需要者に想起させるものはない
から,これらのタオルに接した需要者がこれらを原告又は原告と経済的若しくは組
織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品ではないかとその出所について誤認
混同するおそれがあると認められる。
h タオルの使用態様( 2)−7について
( a) 前記( 1)において,当裁判所は,タオルについての使用態様( 2)−7につ
き,商標としての使用ではないと判断した。
( b) 仮にこれが商標として使用されたものだとしても,タオル(品番 E-034)
には,被告標章( 2)のほか,ライブツアー名と理解される表示がされており,この
ような表示が存在する場合,これに接した需要者は,被告標章( 2)によって当該商
品に表示される主体の音楽活動を想起すると考えられること,被告標章( 2)は,本
件 ELLE 商標の特徴的な字体を有するものではないこと等の事情にかんがみると,
このタオルに接した需要者がこれを原告又は原告と経済的若しくは組織的に何らか
の関係がある者の業務に係る商品ではないかとその出所について誤認混同するおそ
れがあるとは認められない。
i 帽子の使用態様(2)−5について
帽子の使用態様( 2)−5と原告登録商標2及び3とは,外観,称呼及び観念で類
似し,取引の実情を考慮しても,この帽子には被告標章( 2)が音楽活動の主体を意
味していることを需要者に想起させるものは全くないから,この帽子に接した需要
者がこれを原告又は原告と経済的若しくは組織的に何らかの関係がある者の業務に
係る商品ではないかとその出所について誤認混同するおそれがあると認められる。
j 帽子の使用態様(6)について
( a) 前記( 1)において,当裁判所は,帽子についての使用態様( 6)につき,商
標としての使用ではないと判断した。
( b) 仮にこれが商標として使用されたものだとしても,この帽子には,被告
標章( 6)のほか,ライブツアー名と理解される表示がされており,このような表示
が存在する場合,これに接した需要者は,被告標章( 6)によって当該商品に表示さ
れる主体の音楽活動を想起すると考えられること,被告標章(6)は,本件 ELLE 商
標の特徴的な字体を有するものではないこと等の事情にかんがみると,この帽子に
接した需要者がこれを原告又は原告と経済的若しくは組織的に何らかの関係がある
者の業務に係る商品ではないかとその出所について誤認混同するおそれがあるとは
認められない。
(4) 自己の名称等の使用について
被告は,被告標章( 10)を除く被告標章の使用は自己の名称等の使用である旨主張
する。
しかし,同被告標章の表示方法は,いずれも文字はデザイン上の配慮が窺われる
構成を採用しており,また,それが付される T シャツ,タオル等に比して相当大
きく,需要者の注意を惹きやすい場所に表示されていることを考慮すると,普通に
用いられる方法で表示しているとは到底いえない。
よって,被告の上記主張は,理由がない。
(5) まとめ
商標権請求につき,以上をまとめると,次のとおりである。
商標権請求は,○が3つそろったものにつき,それらの使用等の差止め,並びに
予防のために必要な措置請求としてそれらの被告商品からの被告標章の抹消,及び
被告ウェブサイトからのそれらの被告標章を付した被告商品の広告表示の削除を求
める限度で理由がある。
商標的使用 商品類似 商標類似
a T シャツ
( a) 被告標章(1)
使用態様(1) × ○ ×
(b) 被告標章(2)
使用態様(2)−11及び12 × ○ ×
使用態様(2)−13 × ○ ×
( c) 被告標章(3)
使用態様(3) ○ ○ ○
(d) 被告標章(4)
使用態様(4) ○ ○ ○
( e) 被告標章(5)
使用態様(5)−1及び2 × ○ ×
( f) 被告標章(7)
使用態様(7) ○ ○ ○
(g) 被告標章(8)
使用態様(8) ○ ○ ○
(h) 被告標章(9)
使用態様(9) ○ ○ ×
(i) 被告標章(11)
使用態様(11)−1及び2 × ○ ×
(j) 被告標章(12)
使用態様(12) ○ ○ ×
(k) 被告標章(13)
使用態様(13) × ○
b リストバンド(被告標章( 2))
( a) 使用態様(2)−2 ○ ○ ○
(b) 使用態様(2)−3 ○ ○ ○
( c) 使用態様(2)−4 ○ ○ ○
c ステッカー
( a) 被告標章(2)
使用態様(2)−1 ○ ○ ○
(b) 被告標章(4)
使用態様(4)同様 ○ ○ ○
( c) 被告標章(5)
使用態様(5)−3 ○ ○ ○
d タオル(被告標章( 2))
( a) 使用態様(2)−1と同様 ○ ○ ○
(b) 使用態様(2)−1に類似 ○ ○ ○
( c) 使用態様(2)−6 ○ ○ ○
(d) 使用態様(2)−7 × ○ ×
e 帽子
( a) 被告標章(2)
使用態様(2)−5 ○ ○ ○
(b) 被告標章(6)
使用態様(6) × ○ ×
f スコアブック(被告標章( 2))
使用態様(2)−10 ×
2 1号請求について
以下,商標権請求が認められなかったものについて,順に判断する。
(1) 商品等表示としての使用の有無
ア T シャツ(品番 E-002,003)についての被告標章( 2)の使用
前記1(1)アにおける判断と同様に,被告標章(2)は,使用態様( 2)−11及び1
2において,商品等表示として使用されているとは認められない。
イ T シャツについての被告標章(1)及び( 2)の使用
前記1( 1)イにおける判断と同様に,被告標章( 1)及び( 2)は,使用態様( 1)及び
(2)−13において,商品等表示として使用されているとは認められない。
ウ T シャツについての被告標章(5)の使用
前記1(1)オにおける判断と同様に,被告標章(5)は,使用態様( 5)−1及び2に
おいて,商品等表示として使用されているとは認められない。
エ T シャツについての被告標章(9)の使用
前記1(1)クにおける判断と同様に,被告標章(9)は,使用態様( 9)において,商
品等表示として使用されていると認められる。
オ T シャツについての被告標章(11)の使用
前記1(1)ケにおける判断と同様に,被告標章(11)は,使用態様(11)−1及び2
において,商品等表示として使用されているとは認められない。
カ T シャツについての被告標章(12)の使用
前記1(1)コにおける判断と同様に,被告標章( 12)は,使用態様( 12)において,
商品等表示として使用されていると認められる。
キ T シャツについての被告標章(13)の使用
前記1(1)サにおける判断と同様に,被告標章( 13)は,使用態様( 13)において,
商品等表示として使用されているとは認められない。
ク タオルについての被告標章( 2)の使用(使用態様( 2)−7)
前記1(1)タ(エ)における判断と同様に,被告標章(2)は,使用態様(2)−7におい
て,商品等表示として使用されているとは認められない。
ケ 帽子についての被告標章(6)の使用
前記1(1)ツにおける判断と同様に,被告標章(6)は,使用態様( 6)において,商
品等表示として使用されているとは認められない。
コ スコアブックについての被告標章(2)の使用
前記1(1)テにおける判断と同様に,被告標章(2)は,使用態様( 2)−10におい
て,商品等表示として使用されているとは認められない。
サ 音楽 CD についての被告標章( 10)の使用
前提事実( 4)イに,証拠(甲96の1∼8)及び弁論の全趣旨によれば,本件 CD
は,カタカナで大きく「エルレガーデン」と表示された帯を左側に重ねて販売されて
いる こ と , 本 件 CD の パ ッ ケー ジ 裏面 に は, 「 Dynamord Label 」, 「 DISCUS
CO.,LTD 」などと,通常の音楽用コンパクトディスクにおけるものと同程度の表示
の大きさで,製造・販売元としての商品等表示が示されていること,被告標章( 10)
は,「 ELLEGARDEN 」を「 ELLE 」と「 GARDEN 」の二段に重ね,「 ELLE 」を大きく,
「 GARDEN 」をその3分の1程度の大きさで表示し,しかも「 ELLE 」につき本件
ELLE 商標に極めて類似したデザインの字体を採用したため,容易に原告を想起さ
せるものであること,パッケージ表面の右下部の被告標章(10)は,風景の一部とし
て描かれているが,上記のとおり被告標章(10)は容易に原告を想起させるデザイン
であるため,音楽 CD の需要者によって,風景の一部ではなく,商標として使用さ
れていると理解されること,同左上部の被告標章( 10)も,容易に原告を想起させる
デザインであるため,帯に大きく書かれた「エルレガーデン」とは異なり,音楽 CD
の需要者によって,商標として使用されていると理解されることが認められ,この
ような被告標章(10)の使用態様によると,被告標章(10)は,使用態様(10)において,
商品等表示として使用されていると認められる。
(2) 商品等表示の周知性,類似性及び混同のおそれ
ア 本件 ELLE 商標等の周知性
前記1(3)ア(ア)のとおり,本件 ELLE 商標及び原告登録商標は,遅くとも本件ロ
ックバンドが結成されたとされる平成10年以前には,我が国において,原告を表
すものとして周知の商品等表示となっていたものと認められる。
イ 商品等表示の類似性及び混同のおそれの有無
(ア) T シャツ(品番 E-002,003)についての被告標章(2)の使用
前記1(3)オ(オ)aにおける判断と同様に,被告標章( 2)を使用態様(2)−11及び
12で使用した被告商品が原告又は原告と経済的若しくは組織的に何らかの関係が
ある者の業務に係る商品であると誤認混同されるおそれがあるとは認められない。
(イ) T シャツについての被告標章(1)及び( 2)の使用
前記1(3)オ(オ)aにおける判断と同様に,被告標章(1)及び( 2)を使用態様( 1)及
び(2)−13で使用した被告商品が原告又は原告と経済的若しくは組織的に何らか
の関係がある者の業務に係る商品であると誤認混同されるおそれがあるとは認めら
れない。
(ウ) T シャツについての被告標章(5)の使用
前記1(3)オ(オ)aにおける判断と同様に,被告標章( 5)を使用態様(5)−1及び2
で使用した被告商品が原告又は原告と経済的若しくは組織的に何らかの関係がある
者の業務に係る商品であると誤認混同されるおそれがあるとは認められない。
(エ) T シャツについての被告標章(9)の使用
前記1(3)オ(オ)bにおける判断と同様に,被告標章( 9)を使用態様(9)で使用した
被告商品が原告又は原告と経済的若しくは組織的に何らかの関係がある者の業務に
係る商品であると誤認混同されるおそれがあるとは認められない。
(オ) T シャツについての被告標章(11)の使用
前記1( 3)オ(オ)aにおける判断と同様に,被告標章( 11)を使用態様(11)−1及び
2で使用した被告商品が原告又は原告と経済的若しくは組織的に何らかの関係があ
る者の業務に係る商品であると誤認混同されるおそれがあるとは認められない。
(カ) T シャツについての被告標章(12)の使用
前記1( 3)オ(オ)bにおける判断と同様に,被告標章( 12)を使用態様(12)で使用し
た被告商品が原告又は原告と経済的若しくは組織的に何らかの関係がある者の業務
に係る商品であると誤認混同されるおそれがあるとは認められない。
(キ) タオルについての被告標章(2)の使用(使用態様( 2)−7)
前記1(3)オ(オ)hにおける判断と同様に,被告標章( 2)を使用態様(2)−7で使用
した被告商品が原告又は原告と経済的若しくは組織的に何らかの関係がある者の業
務に係る商品であると誤認混同されるおそれがあるとは認められない。
(ク) 帽子についての被告標章( 6)の使用
前記1(3)オ(オ)jにおける判断と同様に,被告標章( 6)を使用態様(6)で使用した
被告商品が原告又は原告と経済的若しくは組織的に何らかの関係がある者の業務に
係る商品であると誤認混同されるおそれがあるとは認められない。
(ケ) 音楽 CD についての被告標章( 10)の使用
a 前記1(3)アに述べたことに加え,被告標章(10)が本件 ELLE 商標に極め
て 類 似 し た デ ザ イ ン を 採 用 し て い る こ と か ら す る と , 被 告 標 章 ( 10)の 要 部 は
「 ELLE 」の部分であると認められる。
このため,前記1(3)イ∼エで述べたと同様に,本件 ELLE 商標と被告標章(10)
とは,外観,称呼及び観念において類似する。
b 前記1( 3)オで述べたとおり,原告はファッション関係の事業を行うもの
であり,音楽関連事業その他のエンタテインメント関連事業を行っていないが,弁
論の全趣旨によれば,音楽はファッションに関心のある人々が現代における生活の
一部として関心を持つ分野であると認められるから,ファッションと音楽とは,商
品又は役務の類似性の観点から見ても,類似性のある分野であると認められる。
c しかも,前記( 1)セ(ア)のとおり,その使用態様及び本件 ELLE 商標に極め
て類似した本件標章( 10)の字体等から,使用態様( 10)に接した需要者が被告標章
(10)から本件 CD のミュージシャンを想起するものではない。
d よって,被告標章( 10)を使用態様(10)で使用した被告商品が原告又は原告
と経済的若しくは組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であると誤認混
同されるおそれがあると認められる。
(3) 営業上の利益の侵害の有無
上記のとおり,被告標章を使用した被告商品が原告又は原告と経済的若しくは組
織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であると誤認混同されるおそれがあ
ると認められる以上,不正競争防止法3条の営業上の利益の侵害のおそれも認めら
れる。
(4) まとめ
ア 1号請求につき,以上をまとめると,次のとおりである。
商品等表示的使用 1号侵害
a T シャツ
( a) 被告標章(1)
使用態様( 1) × ×
(b) 被告標章(2)
使用態様( 2)−11及び12 × ×
使用態様( 2)−13 × ×
( c) 被告標章(5)
使用態様( 5)−1及び2 × ×
(d) 被告標章(9)
使用態様( 9) ○ ×
( e) 被告標章(11)
使用態様( 11)−1及び2 × ×
( f) 被告標章(12)
使用態様( 12) ○ ×
(g) 被告標章(13)
使用態様( 13) ×
b タオル(被告標章(2))
使用態様(2)−7 × ×
c 帽子(被告標章( 6))
使用態様( 6) × ×
d スコアブック(被告標章( 2))
使用態様( 2)−10 ×
e 音楽 CD(被告標章( 10))
使用態様( 10) ○ ○
イ 1号請求は,音楽CDについての被告標章(10)の使用について,その使用
等の差止め(被告標章(10)を付した音楽CDの被告ウェブサイトにおける広告表示
の差止めは,予防請求として認める。),及び予防のために必要な措置請求として
音楽CDからの被告標章(10)の抹消を求める限度で理由がある。
被告が被告ウェブサイトにおいて被告標章( 10)を付した音楽CDの広告表示を行
っている旨の主張はないから,被告ウェブサイトから被告標章(10)を付した音楽C
Dの広告表示の削除を求める部分は理由がない。
3 2号請求について
以下,商標権請求及び1号請求が認められなかったものについて,順に判断する。
(1) 商品等表示としての使用の有無
以下の使用が商品等表示としての使用に当たらないことは,前記2( 1)ア∼ウ,
オ,キ及びサ∼スのとおりである。
ア T シャツ(品番 E-002, 003)についての被告標章( 2)の使用,
イ T シャツについての被告標章(1)及び( 2)の使用,
ウ T シャツについての被告標章(5)の使用,
エ T シャツについての被告標章(11)の使用,
オ T シャツについての被告標章(13)の使用,
カ タオルについての被告標章( 2)の使用(使用態様( 2)−7),
キ 帽子についての被告標章(6)の使用,
ク スコアブックについての被告標章(2)の使用
(2) 本件 ELLE 商標等の著名性の有無
前記1(3)ア(ア)のとおり,本件 ELLE 商標及び原告登録商標は,遅くとも本件ロ
ックバンドが結成されたとされる平成10年以前には,我が国において,原告を表
すものとして著名な商品等表示となっていたものと認められる。
(3) 商品等表示の類似性の有無
前記1(3)オ(オ)bにおける判断と同様に,被告標章(9)及び( 12)が本件 ELLE 商
標及び原告登録商標と類似したものと認めることはできない。
(4) まとめ
よって,2号請求により,新たに請求が認められるものはない。
商品等表示的使用 2号侵害
a T シャツ
( a) 被告標章(1)
使用態様( 1) ×
(b) 被告標章(2)
使用態様( 2)−11及び12 ×
使用態様( 2)−13 ×
( c) 被告標章(5)
使用態様( 5)−1及び2 ×
(d) 被告標章(9)
使用態様( 9) ○ ×
( e) 被告標章(11)
使用態様( 11)−1及び2 ×
( f) 被告標章(12)
使用態様( 12) ○ ×
(g) 被告標章(13)
使用態様( 13) ×
b タオル(被告標章(2))
使用態様(2)−7 ×
c 帽子(被告標章( 6))
使用態様( 6) ×
d スコアブック(被告標章( 2))
使用態様( 2)−10 ×
4 結論
(1) 以上をまとめると,次のとおりである。
a T シャツ
( a) 被告標章(1)
使用態様( 1) 棄却
(b) 被告標章(2)
使用態様( 2)−11及び12 棄却
使用態様( 2)−13 棄却
( c) 被告標章(3)
使用態様( 3) 商標権請求認容
(d) 被告標章(4)
使用態様( 4) 商標権請求認容
( e) 被告標章(5)
使用態様( 5)−1及び2 棄却
( f) 被告標章(7)
使用態様( 7) 商標権請求認容
(g) 被告標章(8)
使用態様( 8) 商標権請求認容
(h) 被告標章(9)
使用態様( 9) 棄却
(i) 被告標章(11)
使用態様( 11)−1及び2 棄却
(j) 被告標章(12)
使用態様( 12) 棄却
(k) 被告標章(13)
使用態様( 13) 棄却
b リストバンド(被告標章( 2))
( a) 使用態様(2)−2 商標権請求認容
(b) 使用態様(2)−3 商標権請求認容
( c) 使用態様(2)−4 商標権請求認容
c ステッカー
( a) 被告標章(2)
使用態様( 2)−1 商標権請求認容
(b) 被告標章(4)
使用態様( 4)と同様 商標権請求認容
( c) 被告標章(5)
使用態様( 5)−3 商標権請求認容
d タオル(被告標章(2))
( a) 使用態様(2)−1と同様 商標権請求認容
(b) 使用態様(2)−1に類似 商標権請求認容
( c) 使用態様(2)−6 商標権請求認容
(d) 使用態様(2)−7 棄却
e 帽子
( a) 被告標章(2)
使用態様( 2)−5 商標権請求認容
(b) 被告標章(6)
使用態様( 6) 棄却
f スコアブック(被告標章( 2))
使用態様( 2)−10 棄却
g 音楽 CD(被告標章( 10))
使用態様( 10) 1号請求認容
( 2) 以上より,原告の請求は,主文掲記第1項∼第9項に掲記の限度で理由が
あるから,その限度で認容することとし,仮執行宣言については,相当でないから
これを付さないこととする。
東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官
市 川 正 巳
裁判官杉浦正樹及び同賴晋一は,転勤のため署名押印することができない。
裁判長裁判官
市 川 正 巳

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