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平成18(ワ)20126損害賠償等請求事件

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裁判所 一部認容 東京地方裁判所
裁判年月日 平成18年12月26日
事件種別 民事
当事者 被告STEILAR
原告バーバリーリミテッド
法令 商標権
民法709条2回
商標法38条2項2回
商標法39条1回
商標法37条1号1回
商標法2条3項1回
キーワード 商標権37回
侵害14回
許諾3回
損害賠償3回
差止2回
優先権1回
主文 1 被告は,原告に対し,金47万3250円及びこれに対する平成18年9月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告は,別紙被告標章目録記載1又は2の標章を付したバッグを販売し,販売のために展示してはならない。
3 被告は,別紙被告標章目録記載1又は2の標章を付したバッグを廃棄せよ。
4 原告のその余の請求を棄却する。
5 訴訟費用は,これを2分し,その1を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。
6 この判決第1項は,仮に執行することができる。
事件の概要 1 争いのない事実 (1) 当事者 原告は,英国法人であり,「バーバリー」の呼称によるトータルファッシ ョンブランドとして,我が国を含む全世界で周知著名である。

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判決文

平成18年12月26日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
平成18年(ワ)第20126号 損害賠償等請求事件
口頭弁論終結日 平成18年11月21日
判 決
グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国
ロンドン(以下略)
原 告 バーバリー リミテッド
同訴訟代理人弁護士 松 尾 眞
同 兼 松 由 理 子
同 岩 波 修
同 鈴 木 毅
同 大 堀 徳 人
同 森 口 倫
同 杉 本 亘 雄
東京都新宿区(以下略)
被 告 STEILAR
C.K.M株式会社
同訴訟代理人弁護士 宮 岡 孝 之
同 二 宮 麻 里 子
同 南 淵 聡
主 文
1 被告は,原告に対し,金47万3250円及びこれに対
する平成18年9月20日から支払済みまで年5分の割合
による金員を支払え。
2 被告は,別紙被告標章目録記載1又は2の標章を付した
バッグを販売し,販売のために展示してはならない。
3 被告は,別紙被告標章目録記載1又は2の標章を付した
バッグを廃棄せよ。
4 原告のその余の請求を棄却する。
5 訴訟費用は,これを2分し,その1を原告の負担とし,
その余を被告の負担とする。
6 この判決第1項は,仮に執行することができる。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
1 被告は,原告に対し,金550万円及びこれに対する平成18年9月20日
(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 主文2項及び3項と同旨
第2 事案の概要等
1 争いのない事実
(1) 当事者
原告は,英国法人であり,「バーバリー」の呼称によるトータルファッシ
ョンブランドとして,我が国を含む全世界で周知著名である。
被告は,カタログ通信販売及び生活情報の収集,提供に関する業務等を業
とする株式会社である。
(2) 原告の権利
原告は,次の各商標権を有している(以下,各商標権を「本件商標権1」,
各登録商標を「本件商標1」などという。また,各商標権を併せて「本件各
商標権」といい,各登録商標を併せて「本件各商標」という。)。
ア 本件商標権1
商 標 登 録 第1524062号
出願年月日 昭和53年2月10日
商品の区分 第14類,第18類,第21類,第25類及び第26類
指 定 商 品 カフスボタン,その他の身飾品,貴金属製のがま口及び財布,
宝玉及びその模造品,貴金属製コンパクト〔以上,第14
類〕,かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ〔以上,第18
類〕,化粧用具(電気式歯ブラシを除く。)〔以上,第21
類〕,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト
〔以上,第25類〕,腕止め,衣服用き章(貴金属製のもの
を除く。),衣服用バッジ(貴金属製のものを除く。),衣
服用バックル,衣服用ブローチ,帯留,ボンネットピン(貴
金属製のものを除く。),ワッペン,腕章,頭飾品,ボタン
類,造花(造花の花輪を除く。),つけあごひげ,つけ口ひ
げ,ヘアカーラー(電気式のものを除く。)〔以上,第26
類〕
登録年月日 昭和57年6月29日
登 録 商 標 BURBERRY(別紙商標目録記載1のとおり)
イ 本件商標権2
商 標 登 録 第2147311号
出願年月日 昭和61年2月14日
商品の区分 (昭和34年法区分)第21類
指 定 商 品 装身具,ボタン類,かばん類,袋物,宝玉およびその模造品,
造花,化粧用具
登録年月日 平成元年6月23日
登 録 商 標 別紙商標目録記載2のとおり
ウ 本件商標権3
国 際 登 録 第732879号
出願年月日 平成12年3月15日
(優先権主張 国名 連合王国)
商品の区分 第3類,第18類,第25類
指 定 商 品 非薬用化粧品,香水,歯用及び毛髪用化粧品,せっけん,シ
ャンプー,制汗用化粧品,オーデコロン及び化粧水,精油,
ひげそり用剤,ポプリ〔以上,第3類〕,かばん類,スーツ
ケース,かばん,旅行かばん,大型雑嚢,ハンドバッグ,札
入れ,財布,ショルダーバッグ,携帯用化粧道具入れ,ブリ
ーフケース,通学用かばん及び書類かばん,革製・レザーボ
ード製又はそれらの代用品製の私物収納用ケース,日傘,傘,
つえ,鍵用くさり及びキーホルダー,犬用コート〔以上,第
18類〕,外衣,レインコート,ブルゾン,カジュアルコー
ト,ポロシャツ,ブラウス,ドレス,パジャマ,ニット製被
服,ショーツ,ズボン,スーツ,スカート,ジャケット,下
着,メリヤス下着,メリヤス靴下,帽子,履物及び運動用特
殊靴,運動に適した衣服,運動用特殊衣服,運動に適した履
物,運動用特殊靴,トラックスーツ,既成裏地,ネクタイ,
ベルト,ラップ,セラーペ,スカーフ,ショール及びストー
ル,手袋〔以上,第25類〕
登録年月日 平成12年4月25日
登 録 商 標 別紙商標目録記載3のとおり
(3) 被告の行為
被告は,平成17年春ころ,UFJニコス株式会社(当時の旧商号は「日
本信販株式会社」)発行のカタログ「ニコスタイル2005春号」による通
信販売の方法で,別紙被告標章目録記載1の標章(以下「被告標章1」とい
う。)を付した織りネームを商品本体の内側に縫い付け,別紙被告標章目録
記載2の標章(以下「被告標章2」といい,被告標章1と併せて「被告各標
章」という。)を商品の下げ札に付したバーバリーバッグ(舟形・ベージュ
色。以下「被告商品」という。)を譲渡した。
なお,被告は,被告商品を,輸入業者から譲渡を受けた株式会社オーテッ
クシー(以下「オーテックシー」という。)から仕入れたものである。
(4) 被告各標章と本件各商標との同一性
ア 被告標章1は,「BURBERRY」の英文字を横書きしてなる標章で
あって,本件商標1と同一又は極めて類似している。
イ 被告標章2は,キャメル色の下地に,黒色の線3本を水平方向及び垂直
方向に均等の幅に並べて格子状に配し,当該黒線が交差してできた四角い
部分を白色に配色し,さらに赤色の線1本を黒線とは互い違いの格子状に
配したチェック柄からなる標章であって,本件商標2及び本件商標3と極
めて類似している。
2 事案の概要
本件は,原告が被告に対し,被告各標章の付された被告商品の譲渡行為が本
件各商標権を侵害すると主張して,民法709条に基づく損害賠償の支払を請
求するとともに,商標法36条に基づく被告商品の販売等の差止め及び廃棄を
請求する事案である。被告は,いわゆる並行輸入の抗弁を主張した。
3 本件の争点
(1) 並行輸入の抗弁の成否
(2) 原告の損害額
第3 争点に関する当事者の主張
1 争点(1)(並行輸入の抗弁の成否)について
〔被告の主張〕
被告は,平成16年10月から平成17年3月までの間,オーテックシーか
ら,被告商品を仕入れて販売した。
被告は,オーテックシーから商標権侵害等を行っていないことの確約をとっ
た上で上記の取引を行ったが,本件の訴訟における原告の指摘を受けて,オー
テックシーの仕入先から遡り,輸入をした有限会社ブロンクスから,被告商品
が真正品であることを確認するため,輸入許可通知書及びインボイスの提示を
受けた。
被告は,バーバリーの表示があるタグにおいて,納入された被告商品の管理
番号を確認し,その番号がインボイスの管理番号(「11177861」)と同一であ
ることを確認した。
被告商品の標章(被告各標章)は,原告が付したものであり,当然に原告が
被告商品の商品管理ができることから,並行輸入の抗弁が成立する。
〔原告の主張〕
被告は,並行輸入の抗弁として,被告商品が真正品であることを主張するも
のと窺える。
しかしながら,被告は,最高裁平成14年(受)第1100号同15年2月
27日第一小法廷判決・民集57巻2号125頁で示された要件に当てはめた
主張をせず,立証もないから,並行輸入の抗弁として失当というほかない。
2 争点(2)(原告の損害額)について
〔原告の主張〕
(1) 逸失利益
ア 被告は被告商品を全部で41個納入して販売したが,実際には,販売し
たうちの16個が購入者からクーリングオフされて直接オーテックシーに
戻されたため,被告商品の販売実数は25個である。その販売価格は1万
9800円(税抜き),仕入価格は1万2870円(税抜き)である。
イ よって,被告商品の販売による被告の利益は17万3250円であるか
ら,商標法38条2項により,同額をもって原告が受けた損害の額と主張
する。
(1万9800円−1万2870円)×25個=17万3250円
(2) 弁護士費用
原告は,被告の侵害行為により,本件訴訟の提起を余儀なくされた。弁護
士費用相当の損害は,50万円を下らない。
〔被告の主張〕
原告の主張(1)に係る事実は認め,同(2)は否認ないし争う。
第4 当裁判所の判断
1 本件各商標権の侵害について
前記第2の1(4)記載のとおり,被告標章1は,本件商標1と類似し,被告
標章2は,本件商標2及び本件商標3と類似している。そして,被告各標章の
付された被告商品は,かばん類であって本件各商標権の指定商品と同一である。
したがって,被告の行為は,指定商品について本件各商標と類似する標章を
使用するものであって,本件各商標権を侵害するものとみなされる(商標法3
7条1号)。
2 争点(1)(並行輸入の抗弁の成否)について
ところで,被告による本件各商標権の侵害行為は,被告商品の輸入行為では
なく,国内における譲渡行為であるが,被告の主張は,輸入の時点で,前主に
よる並行輸入として商標権侵害の実質的な違法性がない以上,それ以降の後主
による譲渡行為は,違法性がないとの趣旨のものであると解される。
商標権者以外の者が,我が国における商標権の指定商品と同一の商品につき,
その登録商標と同一又は類似の商標を付したものを輸入する行為は,許諾を受
けない限り,商標権を侵害する(商標法2条3項,25条,37条)。しかし,
そのような商品の輸入であっても,(1) 当該商標が外国における商標権者又
は当該商標権者から使用許諾を受けた者により適法に付されたものであり,
(2) 当該外国における商標権者と我が国の商標権者とが同一人であるか又は
法律的若しくは経済的に同一人と同視し得るような関係があることにより,当
該商標が我が国の登録商標と同一の出所を表示するものであって,(3) 我が
国の商標権者が直接的に又は間接的に当該商品の品質管理を行い得る立場にあ
ることから,当該商品と我が国の商標権者が登録商標を付した商品とが当該登
録商標の保証する品質において実質的に差異がないと評価される場合には,い
わゆる真正商品の並行輸入として,商標権侵害としての実質的違法性を欠くも
のである(最高裁平成14年(受)第1100号同15年2月27日第一小法
廷判決・民集57巻2号125頁)。
上記(1)の要件は,真正商品の意義について商標を付す主体の観点から述べ
たものであり,商品の真正をいうものである。すなわち,①外国における商標
権者自身が当該商標を付したこと,又は②当該商標が外国における商標権者自
身によって付されたものでない場合には,当該商標権者から使用許諾を受けた
者が適法に当該商標を付したことが必要である。また,上記(2)の要件は,内
外権利者の実質的同一性を必要とし,上記(3)の要件は,我が国の商標権者が
直接的に又は間接的に当該商品の品質管理を行い得る立場にあるという品質に
対する商標権者のコントロールを重視するものである。これらの要件は,商標
権侵害に対するいわば違法性阻却事由として,被告において主張立証すべき責
任があり,いずれの国で当該商標が付されたかは,その前提として被告が主張
立証すべきものである。
被告は,原告が被告各標章を付した旨主張するものの,本件第2回口頭弁論
期日において,被告商品がイタリア共和国で製造されて香港経由で日本に輸入
されたものであるが,どこの国で商標を付されたかは分からない旨を述べるに
とどまり,このほかに,被告商品の商標が付された事実関係に係る的確な主張
立証をしない。なお,被告は,輸入をした有限会社ブロンクスから,被告商品
の輸入許可通知書及びインボイスの提示を受け,バーバリーの表示があるタグ
において,納入された被告商品の管理番号を確認し,その番号がインボイスの
管理番号と同一であることを確認した旨主張し,乙第2号証の1・2及び同第
3号証を提出するが,被告商品の輸入許可があったことによって,これに付さ
れた被告各標章が上記(1)の要件のとおり適法に付されたものということには
ならない。そうすると,上記(1)の要件を認めるに足りない。
また,だれがいずれの国で商標を付したかが不明である以上,上記(2)及び
(3)の要件も認めることはできず,被告商品の輸入行為につき商標権侵害とし
ての実質的違法性を欠くものとはいえないことになる。なお,証拠(甲25
〔枝番を含む。〕ないし28)及び弁論の全趣旨によると,イタリア共和国及
び香港における本件各商標権に係る商標権者は,いずれも原告であるものと認
められる。
したがって,被告の主張は,失当であるというほかない。
3 争点(2)(原告の損害額)について
(1) 被告による本件各商標権の侵害行為については,過失があったものと推
定される(商標法39条,特許法103条)。そして,これを覆すに足りる
被告の反証はないから,被告は,商標権侵害により,原告の被った損害を賠
償すべきことになる。なお,他人の商標を付した輸入商品を販売するに当た
っては,当該商品が前記2の3要件を満たしていることを確認すべき注意義
務があり,被告はこれを怠ったものである。
(2) 逸失利益
被告商品について,販売価格が1万9800円(税抜き),仕入価格が1
万2870円(税抜き),販売個数が25個であって,その販売による被告
の利益が17万3250円であることは,当事者間に争いがない。被告はそ
の余の控除すべき変動経費を主張しないから,17万3250円が被告の受
けた利益の額であり,この同額をもって,原告が受けた損害の額と推定され
る(商標法38条2項)。
(1万9800円−1万2870円)×25個=17万3250円
(3) 弁護士費用
被告による本件各商標権侵害の不法行為と相当因果関係のある弁護士費用
は,本件にあらわれた一切の事情を考慮して,これを30万円と認める。
(4) 小括
以上のとおり,原告の損害額は,47万3250円となる。
17万3250円+30万円=47万3250円
4 結論
したがって,原告の請求は,民法709条に基づく損害賠償金47万325
0円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成18年9月20日から支
払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払請求並びに商標法
36条に基づく被告商品の販売等の差止め及び廃棄請求の限度で理由がある。
よって,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 高 部 眞 規 子
裁判官 平 田 直 人
裁判官 田 邉 実
商 標 目 録



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