平成18(行ケ)10397審決取消請求事件
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裁判所 |
請求棄却 知的財産高等裁判所
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裁判年月日 |
平成18年12月19日 |
事件種別 |
民事 |
当事者 |
被告株式会社ウチコン
Y2 原告X
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法令 |
意匠権
特許法173条2項3回 意匠法54条1項3回 特許法173条1項2回 民事訴訟法40条1項1回
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キーワード |
審決56回 無効8回 意匠権1回
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主文 |
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。 |
事件の概要 |
1 手続の経緯
(1)ア 被告Y2は,意匠に係る物品を「側溝用ブロック」とする登録第1037
733号の意匠(平成6年9月5日登録出願,平成11年2月26日設定
登録。以下「本件意匠」という。)の意匠権者であった者である。 |
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判決文
平成18年(行ケ)第10397号 審決取消請求事件
平成18年11月9日口頭弁論終結
判 決
原 告 X
被 告 株 式 会 社 ウ チ コ ン
訴訟代理人弁理士 小 島 清 路
同 谷 口 直 也
被 告 Y2
主 文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 当事者の求めた裁判
1 原告
(1) 特許庁が再審2006−95001号事件について平成18年8月8日に
した審決を取り消す。
(2) 訴訟費用は被告らの負担とする。
2 被告株式会社ウチコン(以下「被告ウチコン」という。)
(1) 原告の請求を棄却する。
(2) 訴訟費用は原告の負担とする。
3 被告Y2(以下「被告Y2」という。)
原告の請求を認める。
第2 当事者間に争いのない事実
1 手続の経緯
(1)ア 被告Y2は,意匠に係る物品を「側溝用ブロック」とする登録第1037
733号の意匠(平成6年9月5日登録出願,平成11年2月26日設定
登録。以下「本件意匠」という。)の意匠権者であった者である。
イ 被告ウチコンは,平成12年1月19日,本件意匠を無効とすることに
ついて審判を請求した。特許庁は,この請求を無効2000−35055
号事件として審理した上,平成12年8月8日,「本件審判の請求は,成
り立たない。」との審決(以下「第1審決」という。)をした。
ウ 被告ウチコンは,第1審決を不服として,その取消しを求める訴訟を東
京高等裁判所に提起した(東京高裁平成12年(行ケ)第357号)とこ
ろ,同裁判所は,平成13年3月26日,「特許庁が無効2000−35
055号事件について平成12年8月8日にした審決を取り消す。」との
判決をした。
エ 被告Y2は,上記判決を不服として,最高裁判所に上告受理の申立てをし
たが,同裁判所は,平成13年9月25日,上記申立てを受理しない旨の
決定をした。これにより,上記東京高裁判決は確定した。
(2)ア 特許庁は,上記東京高裁判決の確定をうけて,無効2000−3505
5号事件の審理を再開した上,平成14年3月26日,「登録第1037
733号の登録を無効とする。」との審決(以下「第2審決」という。)
をした。
イ 被告Y2は,第2審決を不服として,その取消しを求める訴訟を東京高等
裁判所に提起した(東京高裁平成14年(行ケ)第220号)ところ,同
裁判所は,平成14年9月11日,請求棄却の判決をした。
ウ 被告Y2は,上記判決を不服として,最高裁判所に上告受理の申立てをし
たが,同裁判所は,平成15年2月4日,上記申立てを受理しない旨の決
定をした。これにより,上記東京高裁判決は確定し,第2審決も確定した。
(3) 原告は,平成16年8月25日,第2審決の取消しを求めて,東京高等裁
判所に再審請求をした(東京高裁平成16年(行ケ)第321号)が,同裁
判所は,平成17年3月2日,訴えを却下する判決をし,この判決は確定し
た。
(4) 原告は,平成18年2月4日,被告らを被請求人として,第2審決の取消
を求めて,再審の請求をした(以下「本件再審」という。)。特許庁は,こ
の請求を再審2006−95001号事件として審理した上,平成18年8
月8日,「本件審判の請求を却下する。」との審決(以下「本件審決」とい
う。)をし,そのころ,本件審決の謄本を原告に送達した。
2 本件審決の理由
別紙審決書写しのとおりである。要するに,下記①ないし④のとおり認定判
断し,本件再審の請求は不適法である,としたものである。
① 原告(請求人)は,本件再審の理由として,「(1)民事訴訟法第338
条5∼7項及び9項,(2)意匠法違反,(3)被請求人らの弁理士同士の
通謀・結託,(4)特許庁審判官らの被請求人A〔判決注:「被請求人A」と
あるのは,「被請求人ウチコン」の誤記と解される。〕に対する便宜等の不
正行為,(5)特許庁審判課書記官で意匠担当者の妨害行為」(審決書2頁
30行∼34行)を主張しているところ,原告は本件再審の対象である第2
審決の当事者でも参加人でもないから,原告が再審を請求することができる
のは意匠法54条1項にいう「審判の請求人及び被請求人が共謀して第三者
の権利又は利益を害する目的をもって審決をさせたとき」に限られるので,
上記(1)ないし(5)のうち再審の理由となり得るのは上記(3)のみで
ある(以下「判断①」という。)。
② 原告の上記(3)の主張は,具体的には,「第1回目の審決の控訴審(東
京高等裁判所)〔判決注:「控訴審(東京高等裁判所)」とあるのは,東京
高裁平成12年(行ケ)第357号審決取消請求事件のことをいうものと解
される。〕において,被請求人らの弁理士同士の通謀・結託により,被請求
人Y2の訴訟代理人弁理士である前田勘次が,請求人やリタッグから『答弁に
対する主張をして重要証拠を提出してほしい』との強い依頼を受けていたに
も拘わらず,重要な主張を意図的にせず,重要証拠を故意に提出しなかった
ことで,審決が取消しに至った。」(審決書3頁14行∼19行,以下「本
件再審理由」という。)というものであるが,東京高裁平成12年(行ケ)
第357号事件において,被告Y2は被告ウチコン(同事件における原告)の
主張に対し反論しており,共謀して第三者の権利又は利益を害する目的をも
って判決をさせたものとはいえないから,その確定判決の拘束力に従ってな
された第2審決も,共謀して第三者の権利又は利益を害する目的をもって審
決をさせたものとはいえない(以下「判断②」という。)。
③ 「再審は,請求人が取消決定又は審決が確定した後再審の理由を知った日
から30日以内に請求しなければならない」(意匠法58条で準用する特許
法173条1項)ところ,原告が本件再審理由を知ったのは特許庁に「直訴
陳述書」(平成14年1月21日付け)を提出した日前であり,原告は,遅
くとも東京高裁平成16年(行ケ)第321号事件の判決が確定した日まで
には本件再審理由を知っていたにもかかわらず,その約11ヶ月後に本件再
審の請求をしたものであって,本件再審は適法な再審請求期間内に請求され
たものとは認められない(以下「判断③」という。)。
④ 原告は「その責めに帰することができない理由により該期間内にその請求
をすることができなかった」旨の理由を証拠とともに述べていないから,意
匠法58条で準用する特許法173条2項の規定の適用もない(以下「判断
④」という。)。
なお,本件審決は,本件意匠の出願日を「平成6年9月9日」としているが
(審決書1頁18行),乙1∼4に照らし,「平成6年9月5日」の誤記と認
められる。
第3 当事者の主張
1 原告
別紙訴状写し(ただし,別紙訴状訂正書写し記載のとおり訂正された後のも
の)の「請求の原因」及び別紙準備書面(1)写し記載のとおりである。
2 被告ウチコン
本件審決の認定判断は正当であって,これを取り消すべき理由はない。
原告は,無効2000−35055号事件の当事者でも,参加人でもなく,
第三者であるから,原告の主張に係る本件再審の理由のうち,再審理由となり
得るのは,「(3)被請求人らの弁理士同士の通謀・結託」のみである(審決
書3頁6行∼19行)ところ,原告は,東京高裁平成16年(行ケ)第321
号事件の判決が確定した日(平成17年3月23日)には既に上記理由を知っ
ていたものであり,本件再審の請求はその約11月後である平成18年2月4
日になされたものであるから,本件再審の請求は適法な再審請求期間内になさ
れたものとはいえない。
3 被告Y2
原告の主張は認める。
第4 当裁判所の判断
1 本件審決の判断について
(1) 判断①について
本件は,第2審決に係る本件再審の請求を却下した本件審決の取消しを求
める訴訟であるところ,乙2によれば,第2審決は,被告ウチコンを請求人
とし,被告Y2を被請求人とする無効2000−35055号事件についてさ
れたものであって,原告はその当事者でも参加人でもないことが認められる
から,原告が本件再審を請求する理由として主張することができるのは,意
匠法54条1項にいう「審判の請求人及び被請求人が共謀して第三者の権利
又は利益を害する目的をもって審決をさせたとき」に限られることは明らか
であり,本件審決の判断①はこれを是認することができる。
したがって,原告の主張のうち上記の事由以外の点に言及する部分は,そ
れらが再審の理由に当たることを前提に本件審決の違法をいう趣旨であると
すれば,いずれも意匠法54条1項所定の再審請求の理由には当たらないと
いうべきであるから,失当というほかない。
(2) 判断②について
乙1によれば,東京高裁平成12年(行ケ)第357号事件において,被
告Y2は,被告ウチコン(同事件における原告)の主張する第1審決の取消事
由に対して,具体的に反論していることが認められ,共謀して第三者の権利
又は利益を害する目的をもって判決をさせたものとはいえないから,その確
定判決の拘束力に従って判断された第2審決も,共謀して第三者の権利又は
利益を害する目的をもって審決をさせたものとはいうことはできない。した
がって,本件審決の判断②はこれを是認することができる。
原告は,上記事件において,被告らの代理人をつとめた弁理士らが通謀・
結託して,第1審決を取り消すとの判決をさせた旨主張するが,上記認定事
実に照らし,採用することができない。
(3) 判断③について
意匠法58条により準用される特許法173条1項(平成15年法律第4
7号による改正前のもの)は,「再審は,請求人が取消決定又は審決が確定
した後再審の理由を知つた日から三十日以内に請求しなければならない。」
と規定している。乙5,6によれば,原告が,無効2000−35055号
事件に関し,東京高裁平成12年(行ケ)第357号事件の判決確定後,第
2審決がされる前に特許庁に提出した平成14年1月21日付け「直訴陳述
書」には,東京高裁平成12年(行ケ)第357号事件において,被告ら
(同事件における原告と被告)の代理人をつとめた弁理士らが通謀・結託し
て,第1審決を取り消す旨の判決をさせた旨指摘する記載があるから,原告
は,上記「直訴陳述書」を作成した平成14年1月21日までには,上記指
摘に係る事由を知っていたものであり,そうすると,第2審決が確定した平
成15年2月4日には,本件再審理由を知っていたものというべきであるし,
遅くとも本件審決が認定しているように東京高裁平成16年(行ケ)第32
1号事件の判決が確定した日(弁論の全趣旨によれば,平成17年3月23
日と認められる。)には,本件再審理由を知っていたものというべきである。
しかるに,原告が本件再審を請求したのは,平成18年2月4日であるから,
本件再審が適法な再審請求期間内に請求されたものでないことは明らかであ
る。したがって,本件審決の判断③はこれを是認することができる。
(4) 判断④について
原告は,特許庁が,被告ウチコンに便宜を図り,再審請求の手続を教示し
ないなど,再三にわたり原告に対し妨害行為を繰り返して,再審請求の機会
を奪った旨主張しており,その責めに帰することができない理由により本件
再審理由を知った日から30日以内に本件再審の請求をすることができなか
ったことを主張するものと解される。しかし,原告が再審請求の手続を知ら
なかったことは,意匠法58条により準用される特許法173条2項にいう
「再審を請求する者がその責めに帰することができない理由により前項に規
定する期間内にその請求をすることができないとき」に当たらないことは明
らかであり(なお,乙4によれば,東京高裁平成16年(行ケ)第321号
事件の判決においては,確定審決に対する再審の請求について意匠法53条
ないし58条,特許法173条等を挙げて説示されていることが認められ
る。),その他,本件において,原告がその責めに帰することができない理
由により本件再審理由を知った日から30日以内に本件再審の請求をするこ
とができなかった事情は認められない。したがって,本件審決の判断④はこ
れを是認することができる。
なお,意匠法58条により準用される特許法173条2項は,「再審を請
求する者がその責めに帰することができない理由により前項に規定する期間
内にその請求をすることができないときは,同項の規定にかかわらず,その
理由がなくなつた日から十四日(在外者にあつては,二月)以内でその期間
の経過後六月以内にその請求をすることができる。」としているから,仮に
原告の責めに帰することができない理由があったとしても,原告が本件再審
理由を知った日から30日と6か月を経過した後は再審の請求をすることが
できないものというべきであるところ,上記(3)で認定したところによれば,
本件再審の請求が当該期間内にされたものでないことは明らかである。
(5) 以上によれば,本件審決の判断①ないし④に誤りはなく,原告の主張はい
ずれも採用することができない。
2 なお,被告Y2は,平成18年11月9日に行われた第1回口頭弁論期日にお
いて,原告の請求及び主張を認める旨陳述したが,本件は,被告らを当事者と
する確定審決(第2審決)に係る本件再審の請求を却下した本件審決の取消し
を求める訴訟であり,訴訟の目的が共同訴訟人の全員について合一にのみ確定
することが必要な共同訴訟(いわゆる固有必要的共同訴訟)であって,被告ら
の一人の訴訟行為は全員の利益においてのみその効力を生じる(行政事件訴訟
法7条,民事訴訟法40条1項)から,被告Y2の上記陳述はいずれも効力を有
しない。
3 以上のとおりであるから,原告の主張はいずれも理由がなく,他に審決を取
り消すべき瑕疵は見当たらない。
よって,原告の本件請求は理由がないから,これを棄却することとし,主文
のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第3部
裁 判 長 裁 判 官 佐 藤 久 夫
裁 判 官 大 鷹 一 郎
裁 判 官 嶋 末 和 秀
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