平成17(行ケ)10762審決取消請求事件
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裁判所 |
請求棄却 知的財産高等裁判所
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裁判年月日 |
平成18年7月3日 |
事件種別 |
民事 |
当事者 |
被告特許庁長官中嶋誠 原告ユニ・チャーム株式会社
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対象物 |
着用対象者案内用表示及びそれを使用した陳列用包装体 |
法令 |
特許権
特許法29条2項3回
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キーワード |
審決18回 刊行物2回 実施1回 優先権1回
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主文 |
原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。 |
事件の概要 |
本件は,拒絶査定に対する不服審判請求を不成立とした審決の取消しを求める事
案である。 |
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判決文
平成17年(行ケ)第10762号 審決取消請求事件
平成18年6月12日口頭弁論終結
判 決
原 告 ユニ・チャーム株式会社
代理人弁理士 正林真之,藤田和子,林一好
被 告 特許庁長官 中嶋誠
指定代理人 國田正久,津田俊明,高木彰,青木博文
主 文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1 原告の求めた裁判
「特許庁が不服2002-21830号事件について平成17年9月13日にし
た審決を取り消す。」との判決。
第2 事案の概要
本件は,拒絶査定に対する不服審判請求を不成立とした審決の取消しを求める事
案である。
1 特許庁における手続の経緯
(1) 原告は,平成13年9月14日(国内優先権主張同年1月9日),発明の
名称を「着用対象者案内用表示及びそれを使用した陳列用包装体」とする特許出願
(請求項の数15)をした。
(2) 原告は,平成14年10月8日付けの拒絶査定を受けたので,同年11月
-1 -
11日,拒絶査定に対する審判を請求し(不服2002-21830号事件として
係属),さらに,同年12月4日付け手続補正書及び平成17年8月4日付け手続
補正書(甲10)により,明細書を補正した,
(3) 特許庁は,平成17年9月13日,「本件審判の請求は,成り立たな
い。」との審決をし,同月27日,その謄本を原告に送達した。
2 請求項1に係る発明の要旨(平成17年8月4日付け補正後のもの。請求項
2以下に係る発明は省略)
「【請求項1】着用対象者が異なる,同種類もしくは類似する商品群を識別表示
する着用対象者案内用表示体であって,日常活動の象徴的な動作の当該着用対象者
の図を示した着用対象者案内用表示部分を備えており,前記着用対象者案内用表示
部分は,他の記載に優先させた表示であることを特徴とする着用対象者案内用表示
体。」
3 審決の理由の要旨
審決の理由は,以下のとおりであるが,要するに,請求項1に係る発明(以下
「本願発明」という。)は,後記引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易
に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を
受けることができない,というものである。
(1) 引用刊行物に記載された事項及び引用発明
本願の国内優先日前に日本国内において頒布された刊行物である「エリエール( )の大人用紙おむつ
R
テークケア 商品のご案内」(大王製紙株式会社,特許庁意匠課平成12年1月26日受入,1ペー
ジ~10ページ。以下「引用例1」という。)には,次の事項が記載されている。
ア 「大人用紙おむつテークケアのテープ止めタイプをパッケージにて包装し,当該パッケージに
は,人間が寝ているイラスト及び椅子に座った人間の横に別の人間が立っているイラストが,商品名
である「テークケア」という表示の上部に,「テークケア」という表示より目立つとはいえない大き
さで表示されていること。」(3ページ上側の「テークケアテープ止めタイプ」)
イ 「大人用紙おむつテークケアのパンツタイプSより小さいサイズをパッケージにて包装し,当
-2 -
該パッケージには,椅子に座った人間の横に別の人間が立っているイラスト及び一人で歩いている人
間のイラストが,商品名である「テークケア」という表示の上部に,「テークケア」という表示より
目立つとはいえない大きさで表示されていること。」(2ページ下側の「テークケアパンツタイプS
より小さいサイズ」)
ウ 「大人用紙おむつであるテークケアには,テープ止めタイプ,パンツタイプ,尿とりパッド又
はフラットタイプといった複数のタイプが存在すること。」(1ページ~6ページ)
上記のテープ止めタイプ,パンツタイプ,尿とりパッド又はフラットタイプといった複数のタイプ
は,紙おむつを着用する着用対象者がどの程度まで日常活動を行えるかに応じて使い分けされるべく
設けられた商品である。そうすると,引用例1に記載された「人間が寝ているイラスト」,「椅子に
座った人間の横に別の人間が立っているイラスト」及び「一人で歩いている人間のイラスト」は,そ
れらイラストが表示された紙おむつを着用する着用対象者を識別表示するために,ベッド又は布団に
寝たままの状態が長い,補助者がいれば椅子に座ることができる,一人で歩くことができるといっ
た,着用対象者が日常活動において行える動作の中で象徴的な動作を示したものと解するべきであ
る。
したがって,上記ア~ウを含む引用例1の全記載からみて,引用例1には以下の発明(以下「引用
発明」という。)が記載されているものと認める。
「着用対象者が異なる複数のタイプを設けた大人用紙おむつテークケアを包装するパッケージであ
って,
当該パッケージには,着用対象者が日常活動において行える動作の中で象徴的な動作を示すことに
より,包装された大人用紙おむつテークケアの着用対象者を識別表示するイラストが表示されてお
り,
当該イラストは,商品名テークケアの表示の上部に,テークケアという表示より目立つとはいえな
い大きさで表示されているパッケージ。」
(2) 本願発明と引用発明の対比
本願発明と引用発明とを対比する。
まず,引用発明における「大人用紙おむつテークケア」は,着用対象者が異なる複数のタイプが設
けられた商品であるから,本願発明における「同種類もしくは類似する商品群」に相当する。
次いで,引用発明における「着用対象者が日常活動において行える動作の中で象徴的な動作」は,
-3 -
本願発明における「日常活動の象徴的な動作」に相当する。それ故,引用発明における「イラスト」
は,日常活動の象徴的な動作の着用対象者の図を示したものということができ,本願発明における
「着用対象者案内用表示部分」に相当する。
また,引用発明における「パッケージ」は,大人用紙おむつテークケアを包装するものであり,
「イラスト」を表示する表示体と解することもできる。イラストを「表示する」ということは,イラ
ストを「備えている」ことに他ならないのであるから,引用発明におけるイラストを表示した「パッ
ケージ」は,本願発明における着用対象者案内用表示を備えた「着用対象者案内用表示体」に相当す
る。
したがって,両者は
「着用対象者が異なる,同種類もしくは類似する商品群を識別表示する着用対象者案内用表示体であ
って,日常活動の象徴的な動作の当該着用対象者の図を示した着用対象者案内用表示部分を備えてい
る着用対象者案内用表示体。」
において一致し,次の点で相違する。
[相違点]
本願発明では,着用対象者案内用表示部分は,他の記載に優先させた表示であるのに対して,引用
発明におけるイラストは,商品名テークケアの表示の上部に,テークケアという表示より目立つとは
いえない大きさで表示されている点。
(3) 判断
上記相違点について検討する。
まず,本願発明の「他の記載に優先させた表示」とは,どのように表示すれば他の記載に優先させ
た表示となるのか,即ち,優先させた表示であるための基準は何であるかが必ずしも明確でない。そ
こで本願の明細書を参酌すると,そこには次のような記載がある。
a 「本発明の実施形態においては,パッケージの前面の最も目立つ位置に,他の記載に優先させ
て,発明に係る着用対象者案内用表示としての第二の着用対象者案内用表示部分14が印刷されてい
ると共に,商品名が表示されている位置付近の上部という非常に目につきやすい位置に,他の記載に
優先させて,第一の着用対象者案内用表示12を表示させることにより,一見して商品の対象者が把
握されるようにしている。このようにすることによって,多くの商品が陳列されている場合でも,誤
認識による購入ミスが低減されることとなる。」(段落番号0058)
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また,平成17年8月4日付け意見書には次のような記載もある。
b 「引用例1の第3頁上部に表示されたパッケージには,「日常活動の象徴的な動作の当該着用
対象者の図を示した着用対象者案内用表示部分」が「包装体」に「付設」されています。しかしなが
ら,引用例1の「着用対象者案内用表示体」が付設されたもの(すなわちパッケージ)に,他の記載
に優先させて表示されているのは,商品名である「テークケア」です。日常活動の象徴的な動作の着
用対象者の図を示した「着用対象者案内用表示部分」は,商品名「テークケア」の上部に,ひかえめ
に表示されているに過ぎません。」(3ページ6行~12行)
上記aに基づけば,「商品名が表示されている位置付近の上部という非常に目につきやすい位置」
に表示しさえすれば「他の記載に優先させた表示」ということができる。そうすると,引用発明にお
いても,商品名テークケアの上部にイラストを表示しているのであるから,当該イラストは他の記載
に優先させた表示となる。しかしながら,イラストが「商品名が表示されている位置付近の上部とい
う非常に目につきやすい位置」に表示されていたとしても,その色や大きさが目立たないくらいひか
えめなものであれば,他の記載に優先させた表示といえないことも確かである。上記bはこのことを
主張したものと解される。
つまり上記a及びbを参酌すると,「他の記載に優先させた表示」とは,その表示の色,大きさ及
び表示場所等を総合的に勘案して,他の記載よりも目立つ表示であることを意味すると解すべきであ
る。
ところで,引用例1には次の事項が記載されている。
エ 「大人用紙おむつテークケアの尿とりパッドレギュラーをパッケージにて包装し,当該パッケ
ージには,「尿とりパッドレギュラー」及びパック入り数が,商品名である「テークケア」よりも大
きな文字を使用して表示されていること。」(4ページ下側の「テークケア尿とりパッドレギュラ
ー」)
オ 「大人用紙おむつテークケアの夜1枚安心パッドをパッケージにて包装し,当該パッケージに
は,「夜1枚安心パッド」が,商品名である「テークケア」よりも大きな文字を使用して表示されて
いること。」(5ページ下側の「テークケア夜1枚安心パッド」)
カ 「大人用紙おむつテークケアのフラットタイプをパッケージにて包装し,当該パッケージに
は,「フラットタイプ」が,商品名である「テークケア」よりも大きな文字を使用して表示されてい
ること。」(6ページ上側の「テークケアフラットタイプ」)
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上記エ~カに基づけば,引用例1には,包装された大人用紙おむつの特徴や類似商品との違いを,
商品名である「テークケア」より大きな文字を使用して表示し,目立つようにしたパッケージが多数
記載されている。つまり,紙おむつ等の消耗品においては,その商品の特徴や類似商品との違いを消
費者に対して強く訴えるため,当該商品の特徴や類似商品との違いを他の表示より目立つようにパッ
ケージに表示することは常套手段である。
引用発明においても,着用対象者を識別表示するイラストは商品の特徴や類似商品との違いを示す
ものであるから,これを他の記載より目立つように表示すること,即ち,他の記載に優先させた表示
とすることは当業者であれば容易に想到できることである。そして,本願発明の作用効果も引用発明
及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。
よって,本願発明は,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができた
ものである。
(4) 審決のむすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることが
できたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
本願発明が特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから,本願のその余の請求
項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶を免れない。
第3 当事者の主張の要点
1 原告主張の審決取消事由
審決は,「本願発明は,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明
をすることができたものである。」と判断した。
(1) 審決が上記第2の3(3)で引用した引用例1(甲1)の「大人用紙おむつテ
ークケア」の「尿とりパッドレギュラー」,「夜1枚安心パッド」及び「フラット
タイプ」との表示は,「他の記載に優先させた表示」であるが,これらは,あくま
でも文字である上,商品のタイプを説明したものにすぎない。これに対し,本願発
明の「他の記載に優先させた表示」は,着用対象者自身を象徴的に示した図である
上,使用者である着用対象者を直接的に表示している。
-6 -
紙おむつ等の消耗品において,その商品の特徴や類似商品との違いを消費者に対
して強く訴えるため,商品の特徴や類似商品との違いを他の表示より目立つように
パッケージに表示することが常套手段であるとしても,その手段として,文字や商
品そのものでなく,着用対象者自身を象徴的に示した図を用いて「人」を直接的に
表示することは,容易に想到することはできない。
(2) 着用対象者自身を象徴的に示した図を用いることにより,文字を用いた場
合に比して,把握しやすく,受け入れられやすくなるのであって,一般消費者が陳
列された商品の中から目的とするものを見いだすことがきわめて容易となり,ま
た,説明文を読むまでもなく,商品の種類や着用対象者を一見して把握することが
できる。その結果,誤認識による購入ミスが解消されるのはもちろんのこと,例え
ば,「介助者」をも一緒に図示(請求項2)すれば,ほのぼのとした印象を消費者
側に与えることになり,商品自体のアピール度が増して,消費者の購買意欲を増進
させ,さらに,購入した後も,ほのぼのとした印象を与える部分をより長時間見せ
ておくようにすることができる。
このように,購入時のみならず,購入後においても,所定の効果があることにつ
いては,当業者といえども予測することができる範囲のものではない。
(3) したがって,本願発明は,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容
易に発明をすることができたものではないのであって,審決の上記判断は誤りであ
る。
2 被告の反論
(1) 「他の記載に優先させた表示」とは,審決が説示するように,「その表示
の色,大きさ及び表示場所等を総合的に勘案して,他の記載よりも目立つ表示であ
ることを意味する」と解されるところ,文字であるから目立たないとか,図である
から目立つといった,文字や図に由来する特性があるとはいえないから,「他の記
載よりも目立つ」という機能を奏する点で,文字であるか,図であるかには何らの
差異もない。そればかりでなく,商品表面に図を目立つように表示することは一般
-7 -
に行われているから,単に図を「他の記載に優先させた表示」とすることは,当業
者にとって想到容易であるというほかない。
(2) 同一の構成であれば,同一の作用効果が奏されるはずであるから,上記(1)
のとおり,当業者が容易に想到することのできる相違点に係る構成を採用したもの
にあっては,本願発明と同様の作用効果が奏されることは明らかである。
(3) したがって,「本願発明は,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が
容易に発明をすることができたものである。」とした審決の判断に誤りはない。
第4 当裁判所の判断
1 引用例1(甲1)の「大人用紙おむつテークケア」の「尿とりパッドレギュ
ラー」,「夜1枚安心パッド」及び「フラットタイプ」との表示が,「他の記載に
優先させた表示」であることは,当事者間に争いがないところ,これらの表示は,
いずれも,当該商品の特徴や類似商品との違いを示すものであるから,紙おむつ等
の技術分野において,パッケージにおける,商品の特徴や類似商品との違いを示す
表示を,他の記載に優先させて表示することは,周知の技術手段であると認めるこ
とができる。
他方,引用発明の「人間が寝ているイラスト」,「椅子に座った人間の横に別の
人間が立っているイラスト」及び「一人で歩いている人間のイラスト」は,審決が
認定するように,それらイラストが表示された紙おむつを着用する着用対象者を識
別表示するために,ベッド又は布団に寝たままの状態が長い,補助者がいれば椅子
に座ることができる,一人で歩くことができるといった,着用対象者が日常活動に
おいて行える動作の中で象徴的な動作を示したものである(このことは,原告も争
わない。)から,これらのイラストも,商品の特徴や類似商品との違いを示すもの
であるということができる。
そうすると,引用発明の各イラストに,上記の周知技術を適用して,これらを他
に優先させた表示とするように構成することは,当業者が容易に想到することがで
-8 -
きるものといわなければならない。
そして,本願発明の作用効果も,引用発明及び上記の周知技術から当業者が予測
することができる範囲のものである。
2 原告は,引用例1の「大人用紙おむつテークケア」の「尿とりパッドレギュ
ラー」,「夜1枚安心パッド」及び「フラットタイプ」との表示は,あくまでも文
字である上,商品のタイプを説明したものにすぎないないところ,商品の特徴や類
似商品との違いを他の表示より目立つようにパッケージに表示する手段として,文
字や商品そのものでなく,着用対象者自身を象徴的に示した図を用いて「人」を直
接的に表示することは,容易に想到することはできないと主張する。
しかしながら,文字や商品そのものでなく,着用対象者自身を象徴的に示した図
を用いて「人」を直接的に表示する構成は,引用発明が備えているところである。
そして,これらの図(イラスト)が着用対象者自身を示し,引用例1の「大人用
紙おむつテークケア」の「尿とりパッドレギュラー」,「夜1枚安心パッド」及び
「フラットタイプ」との表示が商品のタイプを示すという言い方が可能であるとし
ても,着用対象者の種類(日常活動における動作の状況等)によって必要とされる
紙おむつのタイプが定まるのが通常であるから,結局は,表裏いずれからみた言い
方であるかという程度の差異でしかなく,商品の特徴や類似商品との違いを示すと
いう点では共通するものである。また,当該表示が文字で構成されているか,イラ
ストであるかという点も,商品の特徴や類似商品との違いを示すという点では変わ
りがなく,さらに,イラストであるからといって,文字で構成されている場合と比
較して,他の表示よりも目立つように表示することが困難であるような事情もうか
がわれない。
そうすると,上記1の周知技術には,商品の特徴や類似商品との違いを示す表示
が文字で構成されている場合だけでなく,イラストである場合も包含されるという
べきであるし,また,引用発明の各イラストに上記の周知技術を適用することを阻
害する事由も見当たらないから,原告の上記主張を採用することはできない。
-9 -
3 また,原告は,本願発明には,購入時のみならず,購入後においても,所定
の効果があるところ,これについては,当業者といえども予測することのできる範
囲のものではないと主張する。
しかしながら,審決が認定するように,
本願発明と引用発明とは,「日常活動の象徴的な動作の当該着用対象者の図を示し
た着用対象者案内用表示部分を備えている」点で一致しており,引用発明の図(イ
ラスト)は,商品の特徴や類似商品との違いを示す点で本願発明の図(イラスト)
と共通している。そうすると,原告の主張する本願発明の効果は,商品の特徴や類
似商品との違いを示すイラストを他の記載よりも目立つように表示したことことに
よる効果にほかならないから,引用発明及び引用例1に記載された技術から当業者
が予測することができる程度のものである。なお,本願発明は,着用対象者の図に
「介助者」の図を含むことを規定していないから,「介助者」をも一緒に図示(請
求項2)すれば,ほのぼのとした印象を消費者側に与え,商品自体のアピール度が
増して,消費者の購買意欲を増進させ,さらに,購入した後も,ほのぼのとした印
象を与える部分をより長時間見せておくようにすることができるとの効果は,本願
発明の要旨に基づくものではない。
4 したがって,本願発明は,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易
に発明をすることができたものであって,審決の判断に誤りはないから,原告主張
の審決取消事由は,理由がない。
第5 結論
以上のとおりであって,原告主張の審決取消事由は理由がないから,原告の請求
は棄却されるべきである。
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官
石 原 直 樹
裁判官
高 野 輝 久
裁判官
佐 藤 達 文
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