知財判決速報/裁判例集知的財産に関する判決速報,判決データベース

ホーム > 知財判決速報/裁判例集 > 平成16(ワ)16445 商標権に基づく差止請求権不存在確認請求事件

この記事をはてなブックマークに追加

平成16(ワ)16445商標権に基づく差止請求権不存在確認請求事件

判決文PDF

▶ 最新の判決一覧に戻る

裁判所 請求棄却 東京地方裁判所
裁判年月日 平成18年5月24日
事件種別 民事
当事者 被告コナミ株式会社
原告モンスター・ケーブル・プロダクツ, ら訴訟代理人弁護士生田哲郎
法令 商標権
キーワード 商標権24回
侵害6回
差止4回
許諾2回
主文 1 原告モンスター・ケーブルの本件訴えを却下する。
2 原告イースの請求を棄却する。
3 訴訟費用は原告らの負担とする。
事件の概要 本件は,ゲーム機用ケーブル等を製造する原告モンスター・ケーブル及び同原告 の日本における代理店として当該ゲーム機用ケーブル等を日本国内において販売す MONSTER GATE MONSTERる原告イースが, との商標権を有する被告に対し, との原告標章を包装に付してゲーム機用ケーブルを販売することにつき,GAME 被告が本件商標権に基づく差止請求権を有しないことの確認を求めた事案である。

▶ 前の判決 ▶ 次の判決 ▶ 商標権に関する裁判例

本サービスは判決文を自動処理して掲載しており、完全な正確性を保証するものではありません。正式な情報は裁判所公表の判決文(本ページ右上の[判決文PDF])を必ずご確認ください。

判決文

平成16年(ワ)第16445号 商標権に基づく差止請求権不存在確認請求事件
口頭弁論終結日 平成18年3月17日
判 決
原 告 モンスター・ケーブル・プロダクツ,
インコーポレイテッド
(以下「原告モンスター・ケーブル」という。)
同 株式会社イース・コーポレーション
(以下「原告イース」という。)
原告ら訴訟代理人弁護士 生田哲郎
同 山田基司
同 森本晋
被 告 コナミ株式会社
同訴訟代理人弁護士 安江邦治
同補佐人弁理士 羽切正治
同 小野友彰
主 文
1 原告モンスター・ケーブルの本件訴えを却下する。
2 原告イースの請求を棄却する。
3 訴訟費用は原告らの負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
被告が,原告らに対し,原告らが別紙原告標章目録記載の標章を付したケーブル
類を販売することについて,別紙被告登録商標目録1ないし4記載の各商標の商標
権に基づく差止請求権を有しないことを確認する。
第2 事案の概要
本件は,ゲーム機用ケーブル等を製造する原告モンスター・ケーブル及び同原告
の日本における代理店として当該ゲーム機用ケーブル等を日本国内において販売す
る原告イースが, MONSTER GATE との商標権を有する被告に対し, MONSTER
GAME との原告標章を包装に付してゲーム機用ケーブルを販売することにつき,
被告が本件商標権に基づく差止請求権を有しないことの確認を求めた事案である。
1 前提事実
(1 ) 当事者
ア 原告モンスター・ケーブルは,アメリカ合衆国カリフォルニア州の法人で
あり,主としてオーディオ,ビデオ関連機器に用いられるケーブルを製造すること
を業とするものであるが,日本国内においては,自らその製品を輸入,販売してい
ない。
(争いのない事実,弁論の全趣旨)
イ 原告イースは,車載用電子音響機器,家庭用電子音響機器の輸入,国内販
売代理店業務等を業とするものであり,ゲームの分野における原告モンスター・ケ
ーブルの代理店として,同原告の製品であるゲーム機用ケーブル(「 MONSTER
GAME 」のブランド名のもとで販売される商品群。以下「原告製品」という。)を日
本国内において販売している。
(争いのない事実,甲9の2,20の1及び2,21の1ないし5,23の2及び
3,弁論の全趣旨)
(2 ) 被告の商標権,指定商品
被告は,以下の商標権を有する(以下,これらの商標権を「本件商標権1」のよう
にいい,その登録商標を「本件登録商標1」のようにいう。また,本件商標権1ない
し4を併せて「本件商標権」といい,本件登録商標1ないし4を併せて「本件登録商
標」という。)。本件商標権は,いずれも商品及び役務の区分を第9類とし(ただし,
本件商標権4については第41類をも含む。),指定商品として「電線及びケーブ
ル」を含んでいる。
ア 本件商標権1 別紙被告登録商標目録1のとおり
イ 本件商標権2 別紙被告登録商標目録2のとおり
ウ 本件商標権3 別紙被告登録商標目録3のとおり
エ 本件商標権4 別紙被告登録商標目録4のとおり
(争いのない事実)
(3 ) 原告イースによる原告標章の使用
原告イースは,原告モンスター・ケーブルの販売代理店として,日本国内におい
て,別紙原告標章目録記載の標章(以下「原告標章」という。)を包装の正面上部に付
した原告製品(検甲1,甲5の1及び2参照)を販売している。
(争いのない事実)
(4 ) 被告による警告
ア 被告は,平成16年3月16日付け「警告書」(甲4の1)をもって,原告イ
ースに対し,原告製品は本件商標権を侵害する旨警告した。
イ 被告は,同年5月7日付け「通知書」(甲4の2)を送付し,原告イースに対
し,再度同趣旨の通知をした。
ウ これに対し,原告モンスター・ケーブルは,同月18日付け「通知書」(甲
4の3)をもって,被告に対し,同原告の取引先である原告イースとの直接の接触
を停止するように求めた。
エ 被告は,同年6月3日付け「御回答」(甲4の4)をもって,原告モンスタ
ー・ケーブルに対し,同原告を交渉相手とすることを拒否した。また,被告は,同
月22日付け書簡(甲4の5)をもって,原告イースに対し,再々度警告を行うとと
もに,使用許諾の意思のあることを表示した。
オ これに対し,原告らは,同年7月2日付け「回答書」(甲4の6)をもって,
被告に対し,原告標章と本件登録商標とは非類似であることを主張し,原告モンス
ター・ケーブルの顧客である原告イースに直接接触する被告の行為について抗議し
た。
カ 被告は,同月9日付け書簡(甲4の7)をもって,原告イースに対し,再度
侵害を主張するとともに,使用許諾の意思のあることを再度表示した。
(以上,争いのない事実)
2 争点
(1 ) 原告モンスター・ケーブルの訴えの利益
(2 ) 原告標章と本件登録商標との類似性
3 争点に関する当事者の主張
(1 ) 原告モンスター・ケーブルの訴えの利益
ア 原告モンスター・ケーブルの主張
原告モンスター・ケーブルは,原告製品が原告イースを通じて日本国内において
販売されるのであるから,本件につき訴えの利益を有する。
イ 被告の主張
原告モンスター・ケーブルの主張は否認する。
原告モンスター・ケーブルは,日本国内において自ら原告製品を輸入,販売する
ことはなく,また,「 MONSTER GAME 」なる商標の商標権者でもない。したがっ
て,原告モンスター・ケーブルは,現時点において,本件商標権の侵害者その他の
地位にあるものとして訴訟当事者となる可能性は全くないのであるから,原告モン
スター・ケーブルには,被告との間で確定しておかなければならない権利関係は存
在せず,本件訴えの利益はない。また,原告製品を現に国内で輸入,販売し,本件
商標権の侵害行為を問題とされる地位にある原告イースが本件訴訟を提起している
ことにかんがみれば,原告モンスター・ケーブルが確認の訴えを提起しなければな
らない理由はない。
(2 ) 原告標章と本件登録商標との類似性
ア 被告の主張
(ア) 対比の対象
「 MONSTER 」又は「モンスター」と他の文字とが結合した登録商標が数多く存在
する状況にかんがみれば,原告標章及び本件登録商標について,「 MONSTER 」部
分のみが要部として出所識別力を有するということはできず,原告標章と本件登録
商標との類否の判断は,「 MONSTER GAME 」と「 MONSTER GATE 」とを端的に対
比すべきである。
(イ) 観念
後記原告らの主張(イ)はいずれも否認する。
(ウ) 外観
a 原告標章と本件登録商標とは,11字のアルファベット中の「 M 」と
「 T 」の1字が相違するにすぎない。原告標章が付された製品を見た一般需要者(特
に一般需要者には子供も多く存在する。)は,原告標章を本件登録商標と見間違え
るなどの誤認混同を生じる可能性が極めて大きい。
したがって,両者の外観は類似する。
b 後記原告らの主張(ウ)b及びcは否認する。
(エ) 称呼
原告標章は,「モンスターゲイム」の称呼を有する。これに対し,本件登録商標の
称呼は「モンスターゲイトゥ」である。両者は,語尾の「ム」及び「トゥ」にわずかな相
違があるのみで,「ム」及び「トゥ」は,共に口唇を半閉じにした状態でほとんど無声
音に近い音として発声されるものであるから,通常の取引及び使用状態においてそ
の相違を聞き分けることは極めて困難なほどに類似したものである。
(オ) 取引の実情
被告は,家庭用テレビゲーム機「プレイステーション2」用のゲームソフトの製作
販 売 を 行 う と と も に , 人 気 ゲ ー ム ソ フ ト の 商 標 に 本 件 登 録 商 標 の 「 MONSTER
GATE 」を使用し,かつ,同商標をアミューズメントゲーム機及びアミューズメン
トゲーム機を接続して通信を行うケーブルの商標としても使用している。このため,
本件登録商標の「 MONSTER GATE 」は,被告の極めて著名なゲーム関連商品の商
標として,一般需要者の間で極めて著名な商標である。他方,原告製品は家庭用テ
レビゲーム機「プレイステーション」用ケーブルであり,かつ,被告が自ら販売して
いる本件登録商標「 MONSTER GATE 」の付されたゲーム機用ケーブルと全く同種
の商品である。
したがって,原告標章及び本件登録商標が現に使用されている取引の実情に照ら
せば,原告標章と本件登録商標の各使用状況には両者を区別すべき特段の事情は存
在せず,原告製品に接した需要者において出所を誤認混同する蓋然性は極めて高い。
(カ) まとめ
以上より,原告標章は本件登録商標と極めて類似した標章である。
イ 原告らの主張
(ア)a 被告の主張(ア)(対比の対象)は争う。
b 原告標章中「 GAME 」の表示部分は,原告製品がゲーム機用ケーブルで
あることを表示するものとして取引者によって使用され,そのように需要者に認識
されるのであるから,商標の独占的排他力を及ぼすべきでない「用途」又は「使用の
方法」の表示ということができる。したがって,原告標章中,出所識別力があり,
類否判断の対象となるべき要部は,「 GAME 」の部分ではなく,「 MONSTER 」の部
分のみである。
c 本件登録商標は,いずれも「 MONSTER GATE 」として,「 MONSTER 」
と「 GATE 」とが一段構成でバランスよく,一体的に表示されている。このうち,
「 GATE 」なる文字は,原告標章の「 GAME 」と異なり,指定商品との関係において
出所識別力を有するものであるから,商標の一部として認識される。したがって,
「 MONSTER 」の部分と「 GATE 」の部分とは一体として把握されるべきである。
(イ) 観念
a 原告標章の要部「 MONSTER 」と本件登録商標「 MONSTER GATE 」とは,
観念において非類似である。
b 原告標章と本件登録商標とをそのまま対比したとしても,本件登録商標
は「 MONSTER 」と「 GATE 」とが結合したものであると認識され,原告標章は,
「 MONSTER 」と「 GAME 」とが結合したものと認識される。「 GATE(ゲート)」と
「 GAME(ゲーム)」は,前者が「門」,後者がいわゆる「ゲーム」又は「試合」をそれぞ
れ意味する語として見慣れ聞き慣れた常用語であり,明らかにその観念を異にする
ものである。これらの前に「怪物」等を意味する「 MONSTER(モンスター)」という常
用語が付加されたとしても同様であり,両者は明らかに観念を異にする。
c したがって,原告標章と本件登録商標とは,観念において非類似である。
(ウ)a 被告の主張(ウ)(外観)aは否認する。
b 原告標章の要部「 MONSTER 」と本件登録商標「 MONSTER GATE 」とは,
外観において非類似である。
c 原告標章と本件登録商標とをそのまま対比したとしても,以下のとおり,
両者は,外観において非類似である。
(a) 原告標章
原告標章は,比較的標準文字に近いデザイン文字にて「 MONSTER 」という記載
がされ,その下段に「>>>」という,矢印をイメージさせる図形と,2つの円を同心
円状に配し2本のクロス線と重ね合わせた,ターゲットをイメージさせる図形が配
され,かつ,幾分右斜めに傾斜した書体で「 GAME 」と記載されている。また,上
段の「 MONSTER 」は,下段の図形及び文字よりもやや浮き上がった状態に見える
ように影がつけられたデザインとされている。
(b) 本件登録商標2及び4について
本件登録商標2及び4の商標は,別紙被告登録商標目録2及び4のとおり,デザ
イン文字であり,原告標章はこれらと一見して明らかに異なる。
(c) 本件登録商標1及び3について
本件登録商標1及び3は,標準文字に近い文字が使用されており,原告標章は,
本件登録商標1及び3とも外観が異なる。
(d) また,「 GATE 」と「 GAME 」とは,全く異なる観念を有する見慣れ聞き
慣れた常用語である以上,これらの差異が原告標章と本件登録商標との類否判断に
及ぼす影響は極めて大きい。それらが「 MONSTER(モンスター)」という広く知られ
た語とともに用いられていたとしても同様である。したがって,この観点からも,
原告標章は,本件登録商標と外観が明らかに異なる。
(エ)a 被告の主張(エ)(称呼)は否認する。
b 原告標章の要部の称呼「モンスター」と本件登録商標の称呼「モンスター
ゲート」とは非類似である。
c 本件登録商標からは「モンスターゲート」,原告標章からは「モンスター
ゲーム」という称呼が生じるとしても,「ト」と「ム」とは子音及び母音が異なるため,
「 ゲ ー ト 」 と 「 ゲ ー ム 」 と は そ の 発 音 が 大 き く 異 な る 。 英 語 の 発 音 と し て も,
「 GATE 」と「 GAME 」とは大きく異なる。また,「ゲート」と「ゲーム」とは,全く異
なる観念を有する見慣れ聞き慣れた常用語であることにかんがみれば,称呼上これ
らが混同されるおそれはない。この点は,これらが「モンスター」とともに用いられ
ていても同様である。
したがって,原告標章と本件登録商標とは,そのまま対比したとしても,称呼に
おいて非類似である。
(オ)a 被告の主張(オ)(取引の実情)は否認する。
b(a) 原告モンスター・ケーブルは,高性能な AV ケーブルのメーカーと
して一般需要者に広く認識されており,ケーブルの分野において一般需要者が「モ
ンスター」という称呼を聞いたときには,直ちに同原告の高性能ケーブルを想起す
る。
( b) 原告らにとっては,原告製品が,ケーブルの分野で著名な原告モンス
ター・ケーブルの製造に係るものであることを消費者に知らしめることこそが,そ
の高性能・高品質を消費者にアピールし,販売促進につなげることができる手段と
なる。したがって,出所の混同を最も望んでいないのは原告らであり,例えば,原
告らは,原告製品において,その包装の「 MONSTER GAME 」という標章の上に
「 MONSTER CABLE 」と記載し,包装の両脇にも「 MONSTER CABLE 」と記載して,
これが原告モンスター・ケーブルの製品であることを強調している。
( c) 原告標章自体も,前記(ウ)c( a)のとおりの構成とすることにより,
「 MONSTER for GAME 」,すなわち原告モンスター・ケーブルが発売しているゲー
ム機用ケーブルということが理解されやすいデザインとされている。
(d) また,原告製品は,その包装には,正面に「 Serious Gamers Only 」,
「 GAMELINKTM 400 CVAA 」,「 Play Station8 2」及び「 PS ゲームリンク 400 」,右側
には「 GameLink 400 CVAA 」及び「 GameLink 300 」,左側には「GamePro Magazine 」,
「 Tecmo Games 」及び「 serious game gear for serious gamers 」,裏面には「モンスター
ゲーム AV ケーブル」及び「ゲームリンク 300・400・450 の RCA プラグ部」との各表
示があり,商品がゲーム機用ケーブルであると認識される状態で,コンピューター
ゲームを販売する店舗のゲーム用機材販売コーナーでのみ販売される。
( e) さらに,原告製品は,その価格がゲーム機に同梱されるケーブルに比
して高いこともあり,その購入者は画質や音響に極めて敏感ないわゆるゲームマニ
アのみである。
したがって,原告製品の取引者,需要者は,すべてゲーム用機材について高度な
注意能力と知識を持った者である。これらの者は,原告製品が AV ケーブル等の分
野で高性能ケーブルのメーカーとして著名な原告モンスター・ケーブルが製造した
ゲーム機に用いる音声・映像用ケーブルであることを明確に認識して,原告製品を
購入している。
( f) 他方,被告が本件登録商標を使用し,販売しているのは,ゲームの装
置又はソフトウェアであり,ケーブル製品を販売してはいない。
( g) 以上より,取引の実情を考慮すれば,本件における原告標章の使用に
ついては,本件登録商標との関係で出所の誤認混同を生じさせるおそれはない。
(カ) 被告の主張(カ)(まとめ)は否認する。原告標章は本件登録商標と非類似で
ある。
第3 当裁判所の判断
1 原告モンスター・ケーブルの訴えの利益
( 1) 確認の利益は,判決をもって法律関係の存否を確定することが,その法律
関係に関する法律上の紛争を解決し,当事者の法律上の地位ないし利益が害される
危険を除去するために必要かつ適切である場合に認められるものである。
(2 ) これを本件について見るに,前提事実(1)のとおり,原告モンスター・ケー
ブルは,自ら日本国内において原告製品を輸入,販売することはなく,原告イース
がこれを輸入,販売している。
( 3) そうすると,原告モンスター・ケーブルは,本件商標権の侵害につき,被
告との間の法律関係に関する法律上の紛争を生じているとはいえないから,判決を
もって法律関係の存否を確定することが,原告モンスター・ケーブルの法律上の地
位ないし利益が害される危険を除去するために必要かつ適切であるとはいえない。
したがって,原告モンスター・ケーブルについては,本件訴えにつき,訴えの利
益を認めることができない。
これに反する原告モンスター・ケーブルの主張は,採用することができない。
2 原告標章と本件登録商標の類似性
(1 ) 対比の対象
ア 本件登録商標1及び3
前提事実(2)ア及びウのとおり,本件登録商標1及び3は,上段に片仮名で「モン
スターゲート」,下段に欧文字で「 Monster Gate 」(本件登録商標1)又は「 MONSTER
GATE 」(本件登録商標3)と標準文字に近い字体により記載し,上段と下段を均等
な幅として構成されているものと認められる。
「モンスターゲート」及び「 Monster Gate 」又は「 MONSTER GATE 」の文字は,そ
れぞれ同一書体で同じ大きさの文字を一連一体にまとまりよく表されており,これ
により生じる「モンスターゲート」との称呼も,必ずしも冗長ではなく,よどみなく
一気に称呼し得るものである。また,「 Monster 」(又は「 MONSTER 」),「 Gate 」(又
は「 GATE 」)いずれの単語も,現在の日常生活上しばしば接することのある,一般
に広く認知されたといってよい英単語である。
これらのことにかんがみると,本件登録商標1及び3は,片仮名部分を「モンス
ターゲート」として把握すべきことはもちろん,その欧文字部分も「 Monster Gate 」
及び「 MONSTER GATE 」として一連一体に把握されるべきである。被告のみなら
ず原告イースも,この点については争わない。
イ 本件登録商標2及び4
前提事実(2)イ及びエのとおり,本件登録商標2及び4は,やや図案化された文
字で,中央部分から両端に向けて徐々に文字の大きさを上下左右方向に拡大するよ
うに,欧文字で「 MONSTERGATE 」と記載し,このうち「 M 」と「 G 」を他の文字よ
りやや大きく表示するとともに,その中央部分下部に,中心に盾様の5角形状の図
柄,その両脇に握り部分を上部とし,切っ先部分を下部とし,その切っ先部分を盾
様の5角形状の図柄の上下方向の中心線に向けて斜めに配した剣様の図柄を配して
構成されているものである。さらに,本件登録商標4においては,欧文字
「 GATE 」部分の下部で,中央部分下部の図柄の右側部分に,片仮名で小さく「モン
スターゲート」と書されていることが認められる。
このような構成のうち,「 MONSTERGATE 」部分は,やや図案化されてはいるも
のの,全体的にまとまりよく一体として表されている。また,本件登録商標4にお
いて右下に小さく書されている「モンスターゲート」部分は,同一書体で同じ大きさ
の文字を一連一体にまとまりよく表されている。さらに,これにより生じる「モン
スターゲート」の称呼が必ずしも冗長ではなく,よどみなく一気に称呼し得るもの
であること,「 MONSTER 」,「 GATE 」いずれの単語も広く認知されたといってよ
い英単語であることは,上記のとおりである。
したがって,本件登録商標2及び4についても,その片仮名部分を「モンスター
ゲート」として把握するとともに(本件登録商標4),その欧文字部分を
「 MONSTERGATE 」として一連一体に把握するのが相当である。被告のみならず原
告イースも,この点については争わない。
ウ 原告標章
(ア) 証拠(検甲1,甲5の1及び2)及び弁論の全趣旨によれば,原告標章は,
ゴシック体のデザイン文字にて欧文字の「 MONSTER 」という記載がされ,その下
段左側に「>>>」という図形と,2つの円を同心円状に配し2本のクロス線と重ね合
わせたターゲットをイメージさせる図形が配され,下段右側に,幾分右斜めに傾斜
した書体で欧文字の「 GAME 」と記載されるとともに,上段の「 MONSTER 」,下段
の「 GAME 」,下段の左側の「>>>」の図形のうち右端のものとも,やや浮き上がった
状態に見えるように影がつけられたデザインとなっている。
このうち,「 MONSTER 」の文字部分と「 GAME 」の文字部分とは,後者は幾分右
斜めに傾斜した書体であるという違いはあるものの,同一の字体により同じ大きさ
で表されている。さらに,これにより生じる「モンスターゲーム」の称呼も,必ずし
も 冗 長 で は な く , よ ど み な く 一 気 に 称 呼 し 得 る も の で あ る 。 加 え て,
「 MONSTER 」,「 GAME 」いずれの単語も,現在の日常生活上しばしば接すること
のある,一般に広く認知されたといってよい英単語である。
これらのことにかんがみると,原告標章は,「 MONSTER GAME 」として一連一
体に把握されるべきである。
(イ) これに対し,原告イースは,原告標章のうち「 GAME 」の部分は「用途」又
は「使用の方法」の表示であり,原告標章の要部は「 MONSTER 」の部分のみである
旨主張する。
しかしながら,「>>>」という図形とターゲット状の図形が使用されていることを
考慮しても,原告標章が取引者,需要者によって「 MONSTER for GAME 」の意味に
理解されるものと認めることはできない。また,原告製品は,ゲーム機用ケーブル
で あ っ て , ゲ ー ム 用 ソ フ ト ウ ェ ア 又 は ゲ ー ム 用 装 置 そ れ 自 体 で は な い か ら,
「 GAME 」部分に出所識別機能がないとはいえない。さらに,指定商品を「電線及び
ケーブル」とする登録商標に「 MONSTER 」又は「モンスター」と他の語が結合したも
のが多数存在すること(乙3の1ないし7)にかんがみると,「 MONSTER 」部分の
みでは出所識別機能は必ずしも強くないと見られる。
これらの事情を考慮すると,原告標章のうち「 MONSTER 」部分のみを要部と見
るのは相当とはいえないから,この点に関する原告イースの主張を採用することは
できない。
(2 ) 観念
ア 原告標章について
「 MONSTER 」は「怪物」を,「 GAME 」は「ゲーム」又は「試合」を意味する語として,
いずれも一般に広く認知された英単語であることから,「 MONSTER GAME 」なる
標章からは,「怪物の登場するゲーム」,「怪物により行われる試合」などといった観
念を生じるものと認められる。
イ 本件登録商標について
「 GATE 」は「門」ないし「出入口」を意味する語として一般に広く認知された英単
語であることから,「 MONSTER GATE 」(又は「 MONSTERGATE 」)なる商標からは,
「怪物のように巨大な門」,「怪物の住む世界への出入口」,「怪物の使用する出入口」
などといった観念を生じるものと認められる。
ウ したがって,原告標章と本件登録商標とは,観念において非類似である。
(3 ) 外観
ア 原告標章及び本件登録商標の構成は前記(1)アないしウのとおりであるか
ら,原告標章と本件登録商標とは,その外観を異にする。
イ しかし,原告標章の文字部分は欧文字で「 MONSTER GAME 」とされてい
るのに対し,本件登録商標1,3及び4においては,片仮名で「モンスターゲート」
と表されているのに加え,欧文字で「 Monster Gate 」(本件登録商標1),「 MONSTER
GATE 」(本件登録商標3)又は「 MONSTERGATE 」(本件登録商標4)とされ,また,
本件登録商標2においては,欧文字で「 MONSTERGATE 」とされており,欧文字部
分の相違点は,それぞれ11文字あるうちの,原告標章の「 M 」と本件登録商標の
「 T 」(又は「 t 」)の部分のみである。しかも,原告標章,本件登録商標は,いずれも
一連一体に表されていることもあって,上記相違点が特に看者の注意を惹く構成に
はなっていない。このため,離隔的観察によれば,この程度の相違ではなお両者は
相紛らわしいものと見るのが相当である。
ウ したがって,原告標章と本件登録商標とは,外観において類似する。これ
に反する原告イースの主張を採用することはできない。
(4 ) 称呼
ア 前記(1)アないしウのとおり,原告標章は「モンスターゲーム」なる称呼を
生じ,本件登録商標はいずれも「モンスターゲート」なる称呼を生じるものと認めら
れる。したがって,両者はその称呼を異にする。
イ しかし,「ム」と「ト」は,子音及び母音を異にするとはいえ,いずれも語尾
に位置することもあって,日常生活上の発声においては,必ずしも強い音として明
確に発音されるものではない。このため,離隔的観察によれば,なお両者は相紛ら
わしいものと見るのが相当である。このことは,日本語としての発音についてのみ
ならず,英語としての発音についても同様である。
ウ したがって,原告標章と本件登録商標とは,称呼において類似する。これ
に反する原告イースの主張を採用することはできない。
(5 ) 取引の実情
ア 証拠(各項目に挙示したもの)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認
められる。
(ア) 原告イースは,原告製品を,平成13年10月に開催された「東京ゲーム
ショウ2001秋」にて,「世界最強の PS2 ハイエンドケーブル2002年1月,
いよいよ日本上陸!」などとする広告とともに出品し,また,平成14年9月に開
催された「東京ゲームショウ2002」においても,原告製品を出品するとともに,
「モンスター,日本上陸。」,「究極のゲームケーブル "モンスターゲーム"誕生」など
と記載したチラシを作成,配布した。
(甲23の2ないし5)
(イ) 原告イースは,雑誌「ゲームラボ」平成14年7月号(甲20の2)及び雑
誌「 WEEKLY ファミ通」同年7月12日号(甲21の3)に上記チラシと同趣旨の宣
伝文句を記載した広告を掲載した。また,同原告は,雑誌「 WEEKLY ファミ通」平
成14年3月29日号(甲21の1),同誌同年4月12日号(甲21の2)及び雑誌
「ファミ通 Xbox 」平成14年5月号(甲21の5)に,「2002. .
2 22/全米 No.1
のゲームギア日本上陸」などと記載した広告を掲載した。
(甲20の2,21の1ないし3,21の5)
(ウ) 原告製品としては,家庭用テレビゲーム機「プレイステーション2」及び
「 Xbox 」に対応する数種類の製品が,実売価格5000円から1万円程度で販売さ
れている。
(甲1の3及び4,5の1,20の1及び2,21の1ないし5,23の3及び5,
検甲1)
イ 以上の事実によれば,原告製品は,平成14年2月という比較的最近にな
って日本国内の市場に投入されたものであること,いわゆるハイエンド製品として
の位置づけ及びその販売価格帯の高さ等から,テレビゲームの音声や映像を特に重
視するゲーム愛好家を主要な購買層とすることが推認されると同時に,ゲーム機用
ケーブルのメーカーとしては必ずしも一般に広く認知され,高い知名度を獲得する
までにはいまだ至っていないことがうかがわれる。
このような取引の実情と,原告製品の需要者としては,取引業者のほか,一部の
ゲーム愛好家にとどまらず,家庭用ゲーム機を購入・使用する一般消費者(ここに
は子供も多く含まれる。)が想定されること,原告標章と本件登録商標との外観及
び称呼の類似性の程度を総合的に考慮すると,原告製品の包装における他の記載を
考慮してもなお,原告標章を原告製品に付すことにより,本件登録商標との関係で,
出所の誤認混同を引き起こすおそれが認められるというべきである。
ウ これに対し,原告イースは,原告モンスター・ケーブルが高性能な AV ケ
ーブルのメーカーとして一般需要者に広く認識されている,原告製品の購買者は画
質や音響に極めて敏感なゲーム愛好家のみであるなどとして,取引の実情を考慮す
れば,原告標章の使用は,本件登録商標との関係で出所の誤認混同を生じさせるお
それはない旨主張する。
しかし,原告モンスター・ケーブルは,仮に音楽用ケーブルのメーカーとしては
かなりの知名度を獲得しているとしても,原告標章がゲーム機用ケーブルの分野に
おいても著名又は周知であることまで示す証拠はない。また,需要者については,
実際の購買者層は主に音質・画質にこだわるゲーム愛好家であるとしても,その販
売に当たっては,そのようなゲーム愛好家のみを対象とした商品陳列がされている
ことを認めるに足りる証拠はなく,かえって,家庭用ゲーム機向け周辺機器の1つ
として,ゲーム用機材販売コーナーに他の同種商品と並べて陳列されている例も少
なくないと考えられる。そうすると,需要者としては,実際に原告製品を購入する
者にとどまらず,広く他の同種商品と原告製品とを購入のために比較検討する可能
性のある者,すなわち家庭用ゲーム機の需要者一般を想定するのが相当であり,原
告イースが主張するように,主な購入者であるゲーム愛好家に需要者を限定するこ
とは狭きに失するというべきである。
したがって,この点に関する原告イースの主張を採用することはできない。
(6 ) まとめ
ア 以上によれば,原告標章と本件登録商標とは類似するものと認められる。
イ そして,前提事実(1)イ及び(2)のとおり,原告製品はゲーム機用ケーブル
であり,これは本件商標権の指定商品「電線及びケーブル」と同一であるから,原告
イースが原告製品の包装に原告標章を付する行為は本件商標権を侵害するものと認
められる。
したがって,被告は,原告イースに対し,本件商標権に基づき,原告標章を付し
た原告製品の販売の差止請求権を有する。
3 結論
以上より,原告モンスター・ケーブルの被告に対する請求は不適法であるから,
これを却下することとし,原告イースの被告に対する請求は理由がないから,これ
を棄却する。
東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 市 川 正 巳
裁判官 杉 浦 正 樹
裁判官 頼 晋 一

最新の判決一覧に戻る

法域

特許裁判例 実用新案裁判例
意匠裁判例 商標裁判例
不正競争裁判例 著作権裁判例

最高裁判例

特許判例 実用新案判例
意匠判例 商標判例
不正競争判例 著作権判例

今週の知財セミナー (3月3日~3月9日)

3月6日(木) - 東京 港区

研究開発と特許

3月7日(金) - 東京 港区

知りたかったインド特許の実務

来週の知財セミナー (3月10日~3月16日)

3月11日(火) - 東京 港区

特許調査の第一歩

3月12日(水) - 東京 港区

はじめての特許調査(Ⅰ)

3月12日(水) - 愛知 名古屋市中区

技術情報管理と秘密保持契約

3月13日(木) - 東京 港区

はじめての特許調査(Ⅱ)

特許事務所紹介 IP Force 特許事務所紹介

松嶋知的財産事務所

神奈川県横浜市港北区日吉本町1-4-5パレスMR201号 特許・実用新案 意匠 商標 外国特許 訴訟 鑑定 コンサルティング 

特許業務法人 広江アソシエイツ特許事務所

〒500-8368 岐阜県 岐阜市 宇佐3丁目4番3号 4-3,Usa 3-Chome, Gifu-City, 500-8368 JAPAN 特許・実用新案 意匠 商標 外国特許 外国商標 訴訟 鑑定 コンサルティング 

IP-Creation特許商標事務所

東京都練馬区豊玉北6-11-3 長田ビル3階 特許・実用新案 意匠 商標 外国特許 外国意匠 鑑定 コンサルティング