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平成17(行ケ)10475審決取消請求事件

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裁判所 知的財産高等裁判所
裁判年月日 平成18年5月10日
事件種別 民事
当事者 被告テルモ株式会社
原告メディノールリミティド
対象物 柔軟性拡張可能ステント
法令 特許権
特許法181条1回
キーワード 審決19回
無効12回
特許権3回
無効審判3回
訂正審判1回
主文 特許庁が無効2002-35316号事件について,平成17年1月7日にした審決を取り消す。訴訟費用は原告の負担とする。
事件の概要 本件は,特許を無効とする審決の取消しを求める事件であり,原告は無効とされ た特許の特許権者,被告は無効審判の請求人である。

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判決文

平成17年(行ケ)第10475号 審決取消請求事件
平成18年4月24日口頭弁論終結
判 決
原 告 メディノール リミティド
訴訟代理人弁理士 谷義一,阿部和夫,主代静義,新開正史,伊藤勝久,柱山
啓之
被 告 テルモ株式会社
訴訟代理人弁理士 辻邦夫,辻良子
主 文
特許庁が無効2002-35316号事件について,平成17年1月7日にした
審決を取り消す。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1 原告の求めた裁判
主文第1項と同旨の判決。
第2 事案の概要
本件は,特許を無効とする審決の取消しを求める事件であり,原告は無効とされ
た特許の特許権者,被告は無効審判の請求人である。
1 特許庁等における手続の経緯
(1) 原告は,発明の名称を「柔軟性拡張可能ステント」とする特許第3236
623号の特許権(請求項の数12。以下,この特許を「本件特許」という 。)の
特許権者である(甲2)。
(2) 被告は,平成14年7月30日,本件特許について,特許無効審判を請求
-1 -
したところ(無効2002-35316号事件として係属 ),原告は,平成15年
2月24日,請求項の一部を削除して請求項の数を11とすること等を内容とする
明細書の訂正を請求した(甲3,4)。
(3) 特許庁は,平成17年1月7日,上記訂正を認め,本件特許の請求項1か
ら11までに係る特許を無効とする旨の審決(以下「本件無効審決」という 。)を
し,その謄本は,同月19日に原告に送達された。
(4) 原告は,平成17年5月13日,本件無効審決の取消しを求める本件訴訟
を提起した。
(5) 原告は,平成17年6月22日,請求項の一部を削除して請求項の数を1
1とすること等を内容とする明細書及び図面の訂正審判を請求し(訂正2005-
39105号事件として係属) さらに,同年10月6日,明細書の補正をした(甲

51)。
(6) 特許庁は,平成18年3月2日,上記訂正を認める旨の審決(以下「本件
訂正審決」という。)をし,本件訂正審決は,確定した(甲51)。
2 特許請求の範囲の記載
(1) 設定登録当時のもの(甲2)
「 請求項1】模様形状を有する管より成るステントであって,ここでこの模様

形状は:
a.第一方向に広がる軸を有する偶数次元第一メアンダー模様;
b.これも第一方向に広がる軸を有する奇数次元第一メアンダー模様:ここで前記
奇数次元第一メアンダー模様は前記偶数次元第一メアンダー模様と180゜の位相角
でずれており,そして2本毎の偶数次元メアンダー模様の間にある;
c.前記第一方向とは異なる第二方向に広がる軸を有する第二メアンダー模様:こ
こで前記第二メアンダー模様は前記偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様とか
らみ合って概して均一な分布構造を形成している;
を含んで成る,ステント。
-2 -
【請求項2】前記偶数次元第一メアンダー模様及び前記奇数次元第一メアンダー
模様が前記第一方向に広がる軸を中心に周期的となっており,そして前記第二メア
ンダー模様が前記第二方向に広がる軸を中心に周期的となっている,請求項1記載
のステント。
【請求項3】前記第二メアンダー模様が周期毎に2本のループを有し,そして前
記偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様が各ループの第一及び第二側部それぞ
れに接続している,請求項1又は2記載のステント。
【請求項4】前記第二メアンダー模様が偶数次元及び奇数次元メアンダー模様よ
り成る,先の請求項のいずれか1項記載のステント。
【請求項5】前記偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様がループを有し,そ
して前記偶数次元及び奇数次元第二メアンダー模様が前記偶数次元及び奇数次元第
一メアンダー模様に接続され,各組の偶数次元及び奇数次元第二メアンダー模様の
間に1本の完全ループができている,請求項4記載のステント。
【請求項6】模様形状を有する管より成るステントであって,ここでこの模様形
状が:
a.第一方向に広がる軸を有する第一メアンダー模様;
b.前記第一方向とは異なる第二方向に広がる軸を有する第二メアンダー模様:こ
こで前記第二メアンダー模様は前記偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様とか
らみ合って概して均一な分布構造を形成している;
を含んで成る,ステント。
【請求項7】前記第一メアンダー模様が前記第一方向に広がる軸を中心に周期的
であり,そして前記第二メアンダー模様が前記第二方向に広がる軸を中心に周期的
である,請求項6記載のステント。
【請求項8】前記第一及び第二方向が直交している,請求項1~7のいずれか1
項記載のステント。
【請求項9】前記第一及び第二方向が直交していない,請求項1~7のいずれか
-3 -
1項記載のステント。
【請求項10】前記第一及び第二メアンダー模様がワイヤーより成る,請求項1
~9のいずれか1項記載のステント。
【請求項11】前記第一及び第二メアンダー模様が平らな金属より切断されたも
のである,請求項1~9のいずれか1項記載のステント。
【請求項12】前記ステントが,保護材料のプレーティング,医薬品の含浸及び
材料でのカバーのうちのいずれかにより仕上げられたものである,請求項1~11
のいずれか1項記載のステント。」
(2) 平成15年2月24日付け訂正請求に係るもの(甲3)
上記訂正請求に係る訂正は,(1)の請求項3を削除して,請求項4以下の項数を
繰り上げた上,下線部のとおり変更するものである。
「 請求項1】模様形状を有する管より成るステントであって,ここでこの模様

形状は:
a.第一方向に広がる軸を有する偶数次元第一メアンダー模様;
b.これも第一方向に広がる軸を有する奇数次元第一メアンダー模様:ここで前記
奇数次元第一メアンダー模様は前記偶数次元第一メアンダー模様と 180°の位相角
でずれており,そして2本毎の偶数次元メアンダー模様の間にある;
c.前記第一方向とは異なる第二方向に広がる軸を有する第二メアンダー模様:こ
こで前記第二メアンダー模様は前記偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様とか
らみ合って概して均一な分布構造を形成している;
を含んで成り,そして
d.前記偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様が前記第二メアンダー模様に対
し,当該偶数次元第一メアンダー模様と当該奇数次元第一メアンダー模様との間毎
に当該第二メアンダー模様のループが存在するように接続されている,
ステント。
【請求項2】前記偶数次元第一メアンダー模様及び前記奇数次元第一メアンダー
-4 -
模様が前記第一方向に広がる軸を中心に周期的となっており,そして前記第二メア
ンダー模様が前記第二方向に広がる軸を中心に周期的となっている,請求項1記載
のステント。
【請求項3】前記第二メアンダー模様が偶数次元及び奇数次元メアンダー模様よ
り成る,先の請求項のいずれか1項記載のステント。
【請求項4】前記偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様がループを有し,そ
して前記偶数次元及び奇数次元第二メアンダー模様が前記偶数次元及び奇数次元第
一メアンダー模様に接続され,各組の偶数次元及び奇数次元第二メアンダー模様の
間に1本の完全ループができている,請求項3記載のステント。
【請求項5】模様形状を有する管より成るステントであって,ここでこの模様形
状が:
a.第一方向に広がる軸を有する偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様;
b.前記第一方向とは異なる第二方向に広がる軸を有する第二メアンダー模様:こ
こで前記偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様が前記第二メアンダー模様に対
し,当該偶数次元第一メアンダー模様と当該奇数次元第一メアンダー模様との間毎
に当該第二メアンダー模様のループが存在するように接続されており,そして前記
第二メアンダー模様は前記偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様とからみ合っ
て概して均一な分布構造を形成している;
を含んで成る,ステント。
【請求項6】前記第一メアンダー模様が前記第一方向に広がる軸を中心に周期的
であり,そして前記第二メアンダー模様が前記第二方向に広がる軸を中心に周期的
である,請求項5記載のステント。
【請求項7】前記第一及び第二方向が直交している,請求項1~6のいずれか1
項記載のステント。
【請求項8】前記第一及び第二方向が直交していない,請求項1~6のいずれか
1項記載のステント。
-5 -
【請求項9】前記第一及び第二メアンダー模様がワイヤーより成る,請求項1~
8のいずれか1項記載のステント。
【請求項10】前記第一及び第二メアンダー模様が平らな金属より切断されたも
のである,請求項1~8のいずれか1項記載のステント。
【請求項11】前記ステントが,保護材料のプレーティング,医薬品の含浸及び
材料でのカバーのうちのいずれかにより仕上げられたものである,請求項1~10
のいずれか1項記載のステント。」
(3) 本件訂正審決に係るもの 平成17年10月6日付け補正による。
( 甲51)
本件訂正審決に係る訂正は,(1)の請求項3を削除して,請求項4以下の項数を
繰り上げた上,下線部のとおり変更するものである。
「 請求項1】模様形状を有し縦方向に伸びる管より成るステントであって,こ

こでこの模様形状は:
a.第一方向に広がる軸を有する偶数次元第一メアンダー模様:ここで当該偶数次
元第一メアンダー模様は,前記第一方向の中心線分を中心とする周期模様からなり,
前記周期模様は,交互に向きが変わって反対方向に開放する複数のループを有し,
これにより,前記偶数次元第一メアンダー模様は,閉じられたスロット又は閉じら
れた領域を形成しない;
b.これも第一方向に広がる軸を有する奇数次元第一メアンダー模様:ここで前記
奇数次元第一メアンダー模様は,前記第一方向の中心線分を中心とする周期模様か
らなり,前記周期模様は,交互に向きが変わって反対方向に開放する複数のループ
を有し,これにより前記奇数次元第一メアンダー模様は閉じられたスロット又は閉
じられた領域を形成せず,また前記奇数次元第一メアンダー模様は,前記ステント
の前記縦方向に沿って,前記偶数次元第一メアンダー模様と交互に配置され,また
前記奇数次元第一メアンダー模様は前記偶数次元第一メアンダー模様と 180°の位
相角でずれており,これにより,前記奇数次元第一メアンダー模様のループの開放
部は,隣の前記偶数次元第一メアンダー模様の対応するループの開放部に向い合っ
-6 -
ている;
c.前記第一方向とは異なる第二方向に広がる軸を有する複数の第二メアンダー模
様:ここで前記複数の第二メアンダー模様は前記偶数次元及び奇数次元第一メアン
ダー模様とからみ合って概して均一な分布構造を形成している;
を含んで成り,そして
d.前記偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様が前記複数の第二メアンダー模
様に対し,当該偶数次元第一メアンダー模様と当該奇数次元第一メアンダー模様と
の間毎に当該第二メアンダー模様のループが存在するように接続されており,
e.前記複数の第二メアンダー模様のループが,開放していて,拡張圧縮可能であ
ると共に,前記ステントの全周方向に亘って分散配置され,これにより前記ステン
トの屈曲の際,該ステントの屈曲部の内側曲線及び外側曲線の両方の近くに前記第
二メアンダー模様のループが存在する
ステント。
【請求項2】前記偶数次元第一メアンダー模様及び前記奇数次元第一メアンダー
模様が前記第一方向に広がる軸を中心に周期的となっており,そして前記第二メア
ンダー模様が前記第二方向に広がる軸を中心に周期的となっており,そして前記偶
数次元第一メアンダー模様の前記周期模様が正弦波からなり,そして前記奇数次元
第一メアンダー模様の前記周期模様が正弦波からなる,請求項1記載のステント。
【請求項3】前記第二メアンダー模様が偶数次元及び奇数次元メアンダー模様よ
り成り,前記複数の第二メアンダー模様のループがU字状,コ字状又はV字状であ
る,先の請求項のいずれか1項記載のステント。
【請求項4】前記偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様がループを有し,そ
して前記偶数次元及び奇数次元第二メアンダー模様が前記偶数次元及び奇数次元第
一メアンダー模様に接続され,各組の偶数次元及び奇数次元第二メアンダー模様の
間に一本の完全ループができており,この完全ループの中に少なくとも1つの開放
ループができている,請求項3記載のステント。
-7 -
【請求項5】模様形状を有し縦方向に伸びる管より成るステントであって,ここ
でこの模様形状が:
a.第一方向に広がる軸を有する偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様:ここ
で当該偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様は,前記第一方向の中心線分を中
心とする周期模様からなり,前記周期模様は,交互に向きが変わって反対方向に開
放する複数のループを有し,これにより,前記偶数次元第一メアンダー模様は,閉
じられたスロット又は閉じられた領域を形成せず,前記奇数次元第一メアンダー模
様は,閉じられたスロット又は閉じられた領域を形成せず,また前記偶数次元第一
メアンダー模様は前記奇数次元第一メアンダー模様と 180°の位相角でずれてお
り,これにより,前記奇数次元第一メアンダー模様のループの開放部は,隣の前記
偶数次元第一メアンダー模様の対応するループの開放部に向い合っている;
b.前記第一方向とは異なる第二方向に広がる軸を有する複数の第二メアンダー模
様:ここで前記偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様が前記複数の第二メアン
ダー模様に対し,当該偶数次元第一メアンダー模様と当該奇数次元第一メアンダー
模様との間毎に当該第二メアンダー模様のループが存在するように接続されてお
り,そして前記複数の第二メアンダー模様は前記偶数次元及び奇数次元第一メアン
ダー模様とからみ合って概して均一な分布構造を形成している;
を含んで成り,そして
c.前記複数の第二メアンダー模様のループが,開放していて拡張圧縮可能である
と共に,前記ステントの全周方向に亘って分散配置され,これにより前記ステント
の屈曲の際,該ステントの屈曲部の内側曲線及び外側曲線の両方の近くに前記第二
メアンダー模様のループが存在する
ステント。
【請求項6】前記第一メアンダー模様が前記第一方向に広がる軸を中心に周期的
であり,そして前記第二メアンダー模様が前記第二方向に広がる軸を中心に周期的
であり,そして前記偶数次元及び奇数次元第一メアンダー模様の前記周期模様が正
-8 -
弦波からなる,請求項5記載のステント。
【請求項7】前記第一及び第二方向が直交している,請求項1~6のいずれか1
項記載のステント。
【請求項8】前記第一及び第二方向が直交していない,請求項1~6のいずれか
1項記載のステント。
【請求項9】前記第一及び第二メアンダー模様がワイヤーより成る,請求項1~
8のいずれか1項記載のステント。
【請求項10】前記第一及び第二メアンダー模様が平らな金属より切断されたも
のである,請求項1~8のいずれか1項記載のステント。
【請求項11】前記ステントが,保護材料のプレーティング,医薬品の含浸及び
材料でのカバーのうちのいずれかにより仕上げられたものである,請求項1~10
のいずれか1項記載のステント。」
第3 原告主張の審決取消事由の要点
本件訂正審決が確定したので,本件無効審決は,取り消されるべきである。
第4 当裁判所の判断
1 第2の事実によれば,本件訂正審決が確定し,明細書の特許請求の範囲の記
載が前記第2の2(3)のとおりに訂正されたところ,この訂正が特許請求の範囲の
減縮に当たることは明らかである。
2 本件は,平成15年法律第47号による改正後の特許法の施行前に請求され
た特許無効審判の審決に対する訴えであり,改正後の特許法181条の規定が適用
されない(同法の附則2条10項)から,その係属中に,当該特許について特許出
願の願書に添付された明細書を訂正すべき旨の審決が確定し,特許請求の範囲が減
縮された場合には,個別的な事情を考慮することなく,特許を無効にすべき旨の審
決を取り消さなければならないものである(最高裁平成7年(行ツ)第204号同
11年3月9日第三小法廷判決・民集53巻3号303頁,最高裁平成10年(行
ツ)第81号同11年4月22日第一小法廷判決・裁判集民事193号231頁,
-9 -
最高裁平成17年(行ヒ)第106号同年10月18日第三小法廷判決・最高裁H
P参照)。
3 そうであれば,原告主張の審決取消事由は理由がある。
第5 結論
よって,原告の請求を認容し,訴訟費用の負担について,行政事件訴訟法7条,
民訴法62条を適用して,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官
塚 原 朋 一
裁判官
高 野 輝 久
裁判官
佐 藤 達 文

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