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平成25(ワ)6920意匠権侵害差止等請求事件

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裁判所 請求棄却 東京地方裁判所
裁判年月日 平成26年5月29日
事件種別 民事
当事者 被告株式会社ブレーンベース 株式会社トリニティー 乙A 乙B 乙C
原告株式会社アドバンス三和圭二郎
法令 意匠権
意匠法37条2回
民法709条1回
民法415条1回
キーワード 意匠権7回
損害賠償4回
侵害3回
無効3回
差止3回
主文 原告の請求をいずれも棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。
事件の概要 本件は,原告が, 被告株式会社ブレーンベース(以下「被告ブレーンベ ース」という。)が製造,販売し,被告株式会社トリニティー(以下「被告ト リニティー」という。)が販売する歯科用インプラントは原告が意匠権を有す る歯科用インプラントの登録意匠に類似すると主張して,上記被告らに対し, 意匠法37条に基づき,上記歯科用インプラントの製造,使用,譲渡等の差止 め及び廃棄を求め, 上記被告らの原告の意匠権の侵害並びに原告の元従業 員であった被告乙B(以下「被告乙B」という。)及び被告乙C(以下「被告 乙C」という。)の原告に対する競業避止等の義務違反により損害を受けたと 主張して,被告らに対し,被告ブレーンベース及び被告トリニティーについて は民法709条,被告ブレーンベース代表取締役の被告乙A(以下「被告乙A」 という。)については会社法429条,被告乙B及び被告乙Cについては民法 415条にそれぞれ基づき,平成24年5月から同年12月までの間における 原告の製造,販売に係る歯科用インプラントの粗利減少額相当の損害金1億0 712万円及びこれに対する不法行為の後であり,訴状送達により支払を催告 した日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連

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判決文

平成26年5月29日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
平成25年(ワ)第6920号 意匠権侵害差止等請求事件
口頭弁論の終結の日 平成26年4月10日
判 決
東京都中央区<以下略>
原 告 株 式 会 社 ア ド バ ン ス
同 訴 訟 代 理 人 弁 護 士 福 間 智 人
三 和 圭 二 郎
東京都品川区<以下略>
被 告 株式会社ブレーンベース
東京都港区<以下略>
被 告 株式会社トリニティー
横浜市<以下略>
被 告 乙A
横浜市<以下略>
被 告 乙B
静岡市<以下略>
被 告 乙C
上記5名訴訟代理人弁護士 小 澤 彰
主 文
原告の請求をいずれも棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
1 被告株式会社ブレーンベース及び被告株式会社トリニティーは,別紙被告製
品目録記載1及び2の歯科用インプラントを製造し,使用し,譲渡し,貸し渡
し,輸出し又はその譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならない。
2 被告株式会社ブレーンベース及び被告株式会社トリニティーは,別紙被告製
品目録記載1及び2の歯科用インプラントを廃棄せよ。
3 被告らは,原告に対し,連帯して1億0712万円及びこれに対する訴状送
達の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
本件は,原告が,  被告株式会社ブレーンベース(以下「被告ブレーンベ
ース」という。)が製造,販売し,被告株式会社トリニティー(以下「被告ト
リニティー」という。)が販売する歯科用インプラントは原告が意匠権を有す
る歯科用インプラントの登録意匠に類似すると主張して,上記被告らに対し,
意匠法37条に基づき,上記歯科用インプラントの製造,使用,譲渡等の差止
め及び廃棄を求め,  上記被告らの原告の意匠権の侵害並びに原告の元従業
員であった被告乙B(以下「被告乙B」という。)及び被告乙C(以下「被告
乙C」という。)の原告に対する競業避止等の義務違反により損害を受けたと
主張して,被告らに対し,被告ブレーンベース及び被告トリニティーについて
は民法709条,被告ブレーンベース代表取締役の被告乙A(以下「被告乙A」
という。)については会社法429条,被告乙B及び被告乙Cについては民法
415条にそれぞれ基づき,平成24年5月から同年12月までの間における
原告の製造,販売に係る歯科用インプラントの粗利減少額相当の損害金1億0
712万円及びこれに対する不法行為の後であり,訴状送達により支払を催告
した日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連
帯支払を求める事案である。
1 前提事実(当事者間に争いがないか,後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容
易に認めることができる事実)
 当事者
ア 原告は,医療機械器具,デンタル医療材料等の開発,製造及び販売等を
営む株式会社である。
イ 被告ブレーンベースは,医療材料,用具の研究開発,製造,販売,仕入,
輸出及び輸入等を営む株式会社である。被告乙Aは,平成8年1月12日
に原告を退職して,被告ブレーンベースに入社し,その代表取締役に就任
した。被告乙Bは,平成20年3月24日に原告に入社したが,同年12
月4日に退職し,その後まもなくして被告ブレーンベースに入社した。
ウ 被告トリニティーは,歯科医療機器販売等を営む株式会社である。被告
乙Cは,平成19年8月6日に原告に入社したが,平成23年7月6日に
被告トリニティーを設立して代表取締役に就任し,同年8月30日に原告
を退職した。
 原告の意匠権
ア 原告は,平成17年11月25日,意匠に係る物品を「歯科用インプラ
ント」とする意匠登録出願をし,平成22年6月25日,意匠権の設定登
録がされた(意匠登録第1393365号。以下,この意匠権を「本件意
匠権」といい,その登録意匠を「本件意匠」という。)。
イ 本件意匠登録出願の願書に添付した図面に記載された意匠は,本判決添
付の意匠公報の図面記載のとおりである。
(甲5)
 本件意匠の構成
ア 基本的構成態様
顎骨に孔を開けて埋入するためのネジ山が側面に形成された被覆部と,
義歯を装着する支台部とが一体的に形成されている。
イ 具体的構成態様
 被覆部において,ほぼ一様な円柱状の側面上に,底部付近から支台部
との境界付近までネジ部が形成され,当該ネジ部を構成するネジ溝が底
部付近のネジ溝深さよりも支台部付近のネジ溝深さが浅くなるよう形成
されている。
 被覆部において,左側面及び右側面の中央やや下側付近の中心軸に対
し互いに対称の位置にある2か所に,被覆部の長さの3分の2程度を占
め,長手方向が軸方向と平行の帯状部分とこれに対する複数の横方向延
伸部分からな る平面視 脊柱状( 外周は略 舟形状)の切 り欠き面 (以下
「本件平滑面」という。)が形成されている。
 支台部において,被覆部近傍から順に,やや逆円錐台形状,円柱形状,
略円錐台形状が一体的に形成されている。
 支台部の略円錐台形状部分において,左側面及び右側面の中心軸に対
して互いに対称な位置にある2か所に,円錐台形状側面に対し傾斜した
平面からなる切取り面が形成されている。
(甲5)
 被告ブレーンベース及び被告トリニティーの行為等
ア 被告ブレーンベースは,遅くとも平成24年頃から,業として別紙被告
製品目録記載1及び2の歯科用インプラント(以下,番号順に「被告製品
1」のようにいい,併せて「被告各製品」という。)を製造,販売し,被
告トリニティーは,その頃から,業として被告各製品を販売している。
(甲12)
イ 被告各製品は,歯科用インプラントであり,本件意匠に係る物品と同一
である。
被告製品1の意匠(以下「被告意匠1」という。)は,別紙被告製品目
録添付写真1のとおりであり,被告製品2の意匠(以下「被告意匠2」と
いい,被告意匠1と併せて「被告各意匠」という。)は,同目録添付写真
2のとおりである。
 被告各意匠の構成
ア 基本的構成態様
顎骨に孔を開けて埋入するためのネジ山が側面に形成された被覆部と,
義歯を装着する支台部とが一体的に形成されている。
イ 具体的構成態様
 被告意匠1
a 被覆部において,ほぼ一様な円柱状の側面上に,支台部の境界付近
には微細な筋がネジ状に刻まれたマイクロスレッドが形成され,その
下部には底部付近からマイクロスレッドとの境界付近までネジ部が形
成され,当該ネジ部を構成するネジ溝が底部付近のネジ溝深さよりも
支台部付近のネジ溝深さが浅くなるよう形成されている。
b 被覆部において,左側面及び右側面の下部右端の中心軸に対し互い
に対称の位置にある2か所に,被覆部の長さの5分の1程度を占め,
平面視略半円形の切り欠き面(以下「ザグリ部」という。)が形成さ
れている。
c 支台部において,被覆部近傍から順に,円柱形状,略円錐台形状が
一体的に形成されている。
d 支台部の略円錐台形状部分において,左側面及び右側面の中心軸に
対して互いに対称な位置にある2か所に,円錐台形状側面に対し傾斜
した平面からなる切取り面が形成されている。
 被告意匠2
a 前記  aと同じ。
b 前記  bと同じ。
c 支台部において,被覆部近傍から順に,やや逆円錐台形状,円柱形
状,略円錐台形状が一体的に形成されている。
d 支台部の略円錐台形状部分において,左側面及び右側面の中心軸に
対して互いに対称な位置にある2か所に,円錐台形状側面に対し傾斜
した平面及び下部においてわずかに曲面からなる切取り面が形成され
ている。
(乙16の1ないし6,17の1及び2,検乙1,2)
 被告乙B及び被告乙Cは,原告に入社する際,冒頭に「この度私は,貴社
に採用されるに当たり,就業規則及びその他服務に関する諸規定の遵守,並
びに本書の次の事項を承諾し,且つ責任をもって誓約します。」,10条に
「会社の名誉,利害に関する重要な事項及び業務上の秘密に属する事項を第
三者に漏洩しないこと。」,14条に「退社後3年間は,会社と競業関係に
ある企業に就職しないこと。」,17条に「本件各条項に違反したときは,
就業規則に定める懲戒規定に従って処分を受けること。もし当条項に従わず
会社に損害を与えた場合は,会社の計算による当該損害を賠償すること。」,
末尾に「上記について,これを承知した上で入社し,且つその遵守を誓約し
ます。その証として本書に署名捺印の上,提出します。」との記載のある誓
約書(以下「本件誓約書」という。)にそれぞれ署名押印して,原告に差し
入れた。
(甲20,甲21)
2 争点
 被告各意匠と本件意匠の類否(争点1)
 被告乙B及び被告乙Cの債務不履行責任の有無(争点2)
3 争点に関する当事者の主張
 争点1(被告各意匠と本件意匠の類否)について
(原告)
ア 本件意匠の要部は,① ほぼ円柱状の被覆部側面に底部付近から支台部
との境界付近まで形成され,底部付近のネジ溝深さよりも支台部付近のネ
ジ溝深さが浅くなるよう形成されたネジ部と,② 支台部の先端付近に形
成された,中心軸に対し互いに対称な位置において側面よりも傾斜した2
か所の本件切取り面を有する略円錐台形状部分である。
 ①は,形成された領域が本件意匠の形態のほぼ半分を占め,需要者の
注意を強く惹くことに加え,底部付近におけるネジ溝深さよりも支台部
付近のネジ溝深さが浅くなるよう形成されることによりネジ溝と支台部
側面とが連続的に接続するよう形成されるという形状を有しているとこ
ろ,かかる形状は,公知の形態に見られない新規かつ特異なものである
から,本件意匠の要部を構成する。また,②は,公知の形態等における
切取り面が,いずれも中心軸に対し平行で,かつ長手方向にほぼ一様な
形状からなるのに対し,本件切取り面は,中心軸方向に対し傾斜するが
ゆえに支台部の先端に向かうにつれて軸方向の幅が拡大しており,公知
の形態と比較して極めて特異な形状を有し,新規な部分であるから,本
件意匠の要部を構成する。
a 本件意匠の被覆部側面に形成された本件平滑面の大きさは,本件図
面から算出すると幅1.74mm,長手方向長さ6.4mm程度であ
り,非光沢面で反射等により視覚的に強調されることもないから,看
者にとって,その具体的形状を把握することは困難であるし,歯科用
インプラントを顎骨に埋入した後に当該平滑面に密着するよう骨組織
が形成されることによって,歯科用インプラントが抜け出ることを防
止するという専ら機能的な観点から必要不可欠に形成される。また,
本件平滑面は,ネジ山部分及びネジ溝の一部が削られることにより,
外観上は中央縦方向(中心軸に平行な方向)の帯状部分に対し複数の
横方向延伸部分からなる形状によって構成されるが,このような構成
は,本件意匠登録出願前から公知であるから,本件意匠の要部を構成
しない。
b 支台部の逆円錐台形状は,顎骨に埋入した歯科用インプラントが過
度に沈下して上顎洞や神経を侵襲することを防止するために,専ら機
能的な観点から必要不可欠に形成されるものであるし,公知の形態に
おいてもこれらの形態のものが存在するから,本件意匠の要部を構成
しない。
イ 被告各意匠と本件意匠の類似性
 被告各意匠と本件意匠は,本件意匠の要部を含む大部分の形態が共通
であり,これらの共通点は,需要者に共通の美観を生じさせるから,被
告各意匠は,本件意匠に類似する。
 被告各意匠のうち次のa及びbに記載の部分,被告意匠1のうちcに
記載の部分及び被告意匠2のうちdに記載の部分は,いずれも次に述べ
る理由から類否の判断に影響しない。
a 被告各意匠のマイクロスレッドは,その具体的態様が,濃いめのグ
レーの色彩が付され,ほぼ同一径の円筒上に左下から右上へと連なる
ネジ山状の突起が連続的に形成されている点で,マイクロスレッド下
部のネジ部と共通しており,直径4mm程度,高さ1.6mm程度の
狭小な領域に刻まれた微少なネジ溝によって構成されるもので,非光
沢面であるがゆえに反射等により視覚的に強調されることもなく,看
者がこれをネジ部と別異のものと認識することはない。また,ネジ部
よりも上部の領域においてネジ部よりも微細なスジを刻むというマイ
クロスレッドの構成は,本件意匠登録出願前から公知であったから,
独自の美観を生じさせるものではない。
b 被告各意匠のザグリ部は,本件平滑面と比較して,長手方向の長さ
が短く,被覆部側面に対しより深く形成されているが,いずれも被覆
部側面上の2か所に形成された凹部構造という点で本件意匠と共通す
る上,第三者の歯科用インプラントの被覆部側面の凹部構造に様々な
ものがあるから,凹部構造の具体的形状は,意匠の観点からは適宜選
択し得る事項に過ぎない。また,かかる凹部構造は,患者の顎骨に埋
入後に再び歯科用インプラントが回転して顎骨との結合強度が低下す
ることを防止するという専ら機能的な目的で形成されるものであって,
本来的に特段の美観を生じるように形成されるものではなく,現に被
告各意匠において,被覆部側面のごく一部の領域に被覆部側面と同一
の色彩で形成されていることからすれば,看者が当該凹部構造の具体
的形状に注目することはなく,ザグリ部と本件平滑面との相違は,両
意匠の類否判断に影響しない。仮に看者がザグリ部を本件平滑面と別
異のものと認識するとしても,ザグリ部の形状は,本件意匠登録出願
前から公知であったから,新たな創作に該当せず,看者が見た際に独
自の美観を生じさせるものではない。
c 被告意匠1は,支台部のうち略円錐台形状部分以外の部分が専ら円
柱形状により形成されている点において本件意匠と相違するが,本件
意匠も支台部において円柱状の部分を有しているから,上記相違点は,
構成上の微差に過ぎない。
d 被告意匠2の支台部の2か所の切取り面の傾斜角の変化の態様は,
写真でも判別し難いほどの極めて軽微なものに過ぎず,看者がこれを
認識し,当該丸みから独自の美観を感ずることはないから,かかる相
違点は,類否判断に影響しない。
(被告ブレーンベース,被告トリニティー及び被告乙A)
ア 本件意匠のうち,被覆部において支台部付近のネジ溝の深さが浅くなる
ように形成されている構成や支台部において被覆部近傍からやや逆円錐台
形状に形成されている構成は,被告ブレーンベースや他のメーカーが平成
2年頃から採用しているものであったし,人工歯を取り付けるアバットメ
ント部分に人工歯が回転しないよう,支台部の1面や2面にカット面を入
れることは多くのメーカーがやっており,「インプラント YEAR B
OOK」の平成14年版にもその形状が記載されていたから,これらの構
成は,本件意匠の要部を構成しない。
イ 被告各意匠はいずれも本件意匠と次の  ないし  の点で相違するほか,
被告意匠1は  の点で,被告意匠2は  の点で相違するから,被告各意匠
は本件意匠に類似しない。
 本件意匠は被覆部の左側面及び右側面に刃物で削り落としたような平
坦部である本件平滑面を有するが,被告各意匠はこれを有しない。
 被告各意匠は底部付近の2か所に回転防止のため深く掘られた溝のよ
うな形状のザグリ部を有するが,本件意匠はこれを有しない。
 被告各意匠は,支台部付近において,インプラントが顎骨とより強く
結合するために,インプラントの表面に微細な筋を何重にも刻み込んだ
マイクロスレッドを有するが,本件意匠はこれを有しない。
 本件意匠は支台部にやや逆円錐台形状のふくらみがあるが,被告意匠
1にはこれがない。
 本件意匠は支台部の切取り面が平坦な切取り面になっているが,被告
意匠2は先端からストレートに切り込み,下の部分に向け,徐々に丸み
が付けられている。
 争点2(被告乙B及び被告乙Cの債務不履行責任の有無)について
(原告)
ア 被告乙Bについて
被告乙Bは,原告退職後3年が経過するより前に,原告と競業関係にあ
る被告ブレーンベースに就職して,本件誓約書14条に違反した。
また,被告乙Bは,原告顧客に関する情報を被告ブレーンベースに提供
して,本件誓約書10条に違反した。原告顧客に関する情報は,会社の利
害に関する重要な事項として原告内部において管理され,外部に漏洩する
ことはなく,被告ブレーンベースが当然に知り得る情報ではないが,被告
ブレーンベースらの営業手法は,被告各製品と原告の歯科用インプラント
(以下「原告製品」という。)のサイズ換算表を明示し,被告各製品と原
告製品が互換性を有することを積極的にアピールするなど,これまで原告
製品を利用してきた原告顧客を対象とするものであるから,原告顧客に関
する情報は極めて重要な価値を有する。被告ブレーンベースが平成23年
7月6日以降に,被告乙Bの原告在職時の担当地域である関東,東海地域
の原告顧客に対して被告トリニティーと連名の販促資料を送付するという
営業活動を行ったことからすれば,被告乙Bが被告ブレーンベースに原告
顧客に関する情報を提供したことは明らかである。また,被告乙Bは,原
告顧客であり東京都中野区で歯科医院を営むD歯科医師に対し,販促資料
の送付をしたことを自認するが,東京本社及び大阪支社のほか,全国計6
か所の工場を稼働し多数の従業員を雇用する被告ブレーンベースの規模か
らすれば,被告乙Bが販促資料の送付に何らかの関与をしたことを示すも
のである。
イ 被告乙Cについて
被告乙Cは,原告在職中に,原告と競業関係にある被告トリニティーを
設立して代表取締役に就任して,本件誓約書14条に違反した。
また,被告ブレーンベースが,被告乙Cの原告在籍当時の担当地域であ
る関東,東海地域の原告顧客に対して,被告トリニティーの社名等を記載
した被告製品1に関する販促資料を送付したことからすれば,被告乙Cが
自ら担当していた原告顧客に関する情報を被告ブレーンベースや被告トリ
ニティーに提供したことは明らかであるから,被告乙Cは,本件誓約書1
0条に違反した。
ウ したがって,被告乙B及び被告乙Cは,上記の各債務不履行に基づき原
告に生じた損害を賠償する責任がある。
(被告乙B)
ア 被告乙Bは,原告から特段の理由もなく退職届の記載を強要されたが拒
否し続けていたところ,重大な過失もないのに執拗に退職を強要された挙
げ句に会社都合で退職させられたから,この退職の実質は権利濫用による
違法な解雇処分である。被告乙Bは,こうした原告の違法な生活のために
急いで次の就職先を探さざるを得ず,やむなく経験のある歯科用インプラ
ントメーカー等の中途採用の公募に応募した結果,被告ブレーンベースに
就職したのである。こうした事情からすれば,被告乙Bが本件誓約書14
条に違反したとはいえない。
被告ブレーンベースの社員はインターネットや日常の営業活動により得
た情報に基づき歯科医院に販促資料を送付したに過ぎず,被告乙Bは被告
ブレーンベースに原告の顧客情報の提供をしていないから,本件誓約書1
0条に違反しない。
イ 被告乙Bは,原告に入社する際,原告の前社長が詐欺事件により逮捕さ
れたといった事情を全く知らず,本件誓約書について自由に意見を述べた
り自由な判断をしたりすることができる状況にもなかった。こうした経緯
の下で作成された本件誓約書は,被告乙Bの無思慮かつ窮迫的な状況に乗
じて原告を利するために差し入れさせられたものといえるから,社会的妥
当性を欠き公序良俗に反する無効な書面である。
また,原告が被告乙Bを強制的に解雇しながら,本件誓約書の作成を盾
にとって損害賠償を求めることは,被告乙Bの職業選択の自由を侵害する
無思慮かつ窮迫の状況に乗じた行為であって,公序良俗に反するから,本
件誓約書は,遡及的に無効となる。
ウ 被告乙Bは,原告に損害を与えたことはなく,被告乙Bの行為と原告主
張の損害との間に相当因果関係はない。
(被告乙C)
ア 被告乙Cが設立した被告トリニティーの総販売額の90%以上を占める
のが原告製品であり,被告トリニティーは,原告と競業関係にはなく,む
しろ協力関係にあるから,被告乙Cが被告トリニティーを設立してその代
表取締役に就任したことは本件誓約書14条に違反しない。また,被告乙
Cは,原告に入社する際,原告の前社長の前記詐欺事件や原告が売掛金の
水増し計上をしていることを知らず,こうした原告の公序良俗に反する業
務形態に反対して退職したのであるから,被告トリニティーを設立して歯
科用インプラント販売をしたとしても,本件誓約書14条に違反しない。
被告乙Cは,被告乙B同様,被告ブレーンベースに原告の顧客情報の提
供などしていないから,本件誓約書10条に違反しない。
イ 被告乙Cは,原告が前記のような公序良俗に反する営業を行っている会
社であるとは知らずに原告に入社し,その際,無知なまま誓約書の作成に
応じたのだから,その作成行為自体無効である。
ウ 被告乙Cは,原告に損害を与えたことはなく,被告乙Cの行為と原告主
張の損害との間に相当因果関係はない。
第3 当裁判所の判断
1 争点1(被告各意匠と本件意匠の類否)について
 被告各意匠と本件意匠との対比
ア 被告意匠1について
 共通点
被告意匠1と本件意匠とは,顎骨に孔を開けて埋入するためのネジ山
が側面に形成された被覆部と,義歯を装着する支台部とが一体的に形成
されているという基本的構成態様において共通し,具体的構成態様は,
① 被覆部が,底部付近から上部付近までネジ部が形成され,当該ネジ
部を構成するネジ溝が底部付近のネジ溝深さよりも支台部付近のネジ溝
深さが浅くなるよう形成されている点,② 被覆部が,左側面及び右側
面の中心軸に対し互いに対象の位置にある2か所に切り欠き面が形成さ
れている点,③ 支台部が,被覆部近傍から順に,円柱形状,略円錐台
形状が一体的に形成されている部分を有する点,④ 支台部の略円錐台
形状部分が,左側面及び右側面の中心軸に対し互いに対称な位置にある
2か所に,円錐台形状側面に対し傾斜した平面からなる切取り面が形成
されている点において共通する。
 相違点
被告意匠1と本件意匠との具体的構成態様は,① 被告意匠1の被覆
部が,支台部の境界付近に微細な筋がネジ状に刻まれたマイクロスレッ
ドが形成され,その下部にネジ部が形成されているが,本件意匠の被覆
部は,マイクロスレッドがなく,支台部との境界付近までネジ部が形成
されている点,② 被告意匠1の被覆部の切り欠き面が,左側面及び右
側面の下部右端に,被覆部の長さの5分の1程度を占め,平面視略半円
形のザグリ部であるのに対し,本件意匠の切り欠き面は,左側面及び右
側面の中央やや下側付近に,被覆部の長さの3分の2程度を占め,長手
方向が軸方向と平行の帯状部分とこれに対する複数の横方向延伸部分か
らなる平面視脊柱状(外周は略舟形状)の本件平滑面である点,③ 本
件意匠の支台部の被覆部最近傍にはやや逆円錐台形状の部分があるのに
対し,被告意匠1にはこれがない点において相違する。
イ 被告意匠2について
 共通点
被告意匠2と本件意匠とは,顎骨に孔を開けて埋入するためのネジ山
が側面に形成された被覆部と,義歯を装着する支台部とが一体的に形成
されているという基本的構成態様において共通し,具体的構成態様は,
① 被覆部が,底部付近から上部付近までネジ部が形成され,当該ネジ
部を構成するネジ溝が底部付近のネジ溝深さよりも支台部付近のネジ溝
深さが浅くなるよう形成されている点,② 被覆部が,左側面及び右側
面の中心軸に対し互いに対象の位置にある2か所に切り欠き面が形成さ
れている点,③ 支台部が,被覆部近傍から順に,やや逆円錐台形状,
円柱形状,略円錐台形状が一体的に形成されている点,④ 支台部の略
円錐台形状部分が,左側面及び右側面の中心軸に対し互いに対称な位置
にある2か所に,円錐台形状側面に対し傾斜した平面を含む面からなる
切取り面が形成されている点において共通する。
 相違点
被告意匠2と本件意匠との具体的構成態様は,① 被告意匠2の被覆
部が,支台部の境界付近に微細な筋がネジ状に刻まれたマイクロスレッ
ドが形成され,その下部にネジ部が形成されているが,本件意匠の被覆
部はマイクロスレッドがなく,支台部との境界付近までネジ部が形成さ
れている点,② 被告意匠2の被覆部の切り欠き面が,左側面及び右側
面の下部右端に,被覆部の長さの5分の1程度を占め,平面視略半円形
のザグリ部であるのに対し,本件意匠の切り欠き面は,左側面及び右側
面の中央やや下側付近に,被覆部の長さの3分の2程度を占め,長手方
向が軸方向と平行の帯状部分とこれに対する複数の横方向延伸部分から
なる平面視脊柱状(外周は略舟形状)の本件平滑面である点,③ 被告
意匠2の支台部の切取り面が下部においてわずかに曲面からなるのに対
し,本件意匠の切取り面は全て平面からなる点において相違する。
 本件意匠の要部
ア 本件意匠は,その登録意匠に係る物品が歯科用インプラントであり,証
拠(甲5)によれば,これは,顎骨に孔を開けて被覆部を埋入,固定し,
支台部に義歯を装着するものであると認められるから,その需要者である
歯科医師は,被覆部及び支台部のいずれの形状も観察することになる。
イ 後掲の証拠及び弁論の全趣旨を総合すれば,次の事実を認めることがで
きる。
 本件意匠のような被覆部(フィクスチャー)と支台部(アバットメン
ト)が一体化された歯科用インプラントは1ピースタイプ(一体型)と
呼ばれるが,他にフィクスチャーに別途アバットメントを取り付ける2
ピースタイプと呼ばれる歯科用インプラントがある。
(甲6ないし10,31,乙1ないし13)。
 本件意匠登録出願時(平成17年11月25日)において,次の意匠
が公知であった。
a 1ピースタイプの歯科用インプラントにおいて,被覆部のほぼ一様
な円柱状の側面上に,底部付近から,支台部の境界付近から被覆部の
長さの5分の1程度下がった付近までネジ部が形成され,支台部は,
被覆部近傍から順に円柱形状,略円錐台形状が一体的に形成されてい
て,支台部の略円錐台形状部分の少なくとも1か所において,円錐台
形状側面に対し傾斜した平面からなる切取り面が形成されているもの。
(乙5,6)
b 1ピースタイプの歯科用インプラントにおいて,被覆部のほぼ一様
な円柱状の側面上に,底部付近から支台部との境界付近までネジ部が
形成され,当該ネジ部を構成するネジ溝が底部付近のネジ溝深さより
も支台部付近のネジ溝深さが浅くなるよう形成されており,支台部は,
被覆部近傍から順に,円柱形状,略円錐台形状が一体的に形成されて
いて,略円錐台形状部分の1か所において,その側面に対し傾斜した
平面及び下部において曲面からなる切取り面が形成されているもの。
(乙4)
c 1ピースタイプの歯科用インプラントにおいて,被覆部のやや逆円
錐台形状の側面上に,底部付近から支台部との境界付近までネジ部が
形成され,支台部は,被覆部近傍から順に逆円錐台形状,円柱形状,
略円錐台形状が一体的に形成されていて,略円錐台形状部分の1か所
において,その側面に対し傾斜した平面及び下部においてより急に傾
斜した平面からなる切取り面が形成されているもの。
(甲10)
d 下部,中部円柱状部及び上部により構成される1ピースタイプの歯
科用インプラントにおいて,下部のほぼ一様な円柱状の側面状に底部
付近から中部円柱状部付近までネジ部が形成され,ネジ山部分に縦溝
が彫り込まれており,中部には断面半楕円となる溝が全周に設けられ,
上部は上縁部が面取りされた略円筒形状で1か所に垂直の切り欠き面
を有するもの(なお,中部円柱状部は,歯肉の進入増殖を防止する目
的で設けられている。)。
(甲6,7)
e 歯科用インプラントの被覆部において,ネジ部のネジ山部分,ネジ
溝部分あるいは双方の1か所又は複数の箇所に,縦溝や雲形で角が鋭
角な平滑面を設けたり,底部付近に平面視略半円形状の切り欠き面を
設けたりしているもの(なお,これらの縦溝,平滑面及び切り欠き面
は,歯科用インプラントが抜けたり回転したりすることを防止して結
合強度を確保する等の目的で設けられている。)。
(甲23の1,24,25,26の1,27の1,28ないし33,
34の1,乙1ないし3,7,8)
f 2ピースタイプの歯科用インプラントにおいて,被覆部の上部側面
に,マイクロスレッドが形成されているもの(なお,マイクロスレッ
ドは,結合強度を確保する等の目的で設けられている。)。
(甲33,34及び35の各1及び2,36)
ウ 以上のような本件意匠に係る物品である歯科用インプラントの性質,目
的,用途,機能及び使用態様に公知の意匠の構成を併せ考慮すれば,本件
意匠のうち看者である需要者(歯科医師)の注意を最も惹きやすいのは,
被覆部において,ほぼ一様な円柱状の側面上に,底部付近から支台部との
境界付近までネジ部が形成され,当該ネジ部を構成するネジ溝が底部付近
のネジ溝深さよりも支台部付近のネジ溝深さが浅くなるよう形成されてい
て,左側面及び右側面の中央やや下側付近の中心軸に対し互いに対称の位
置にある2か所に,被覆部の長さの3分の2程度を占め,長手方向が軸方
向と平行の帯状部分とこれに対する複数の横方向延伸部分からなる平面視
脊柱状(外周は略舟形状)の切り欠き面(本件平滑面)がそれぞれ形成さ
れている部分と,支台部の略円錐台形状部分において,左側面及び右側面
の中心軸に対して互いに対称な位置にある2か所に,円錐台形状側面に対
し傾斜した平面からなる切取り面(本件切取り面)が形成されている部分
であり,これらが本件意匠の要部であると認められる。
エ 原告は,ほぼ円柱状の被覆部側面に底部付近から支台部との境界付近ま
で形成され,底部付近のネジ溝深さよりも支台部付近のネジ溝深さが浅く
なるよう形成されたネジ部は本件意匠の要部であるが,本件平滑面は公知
の形状であって,機能的な観点から不可欠的に形成されることなどから要
部とはならないと主張する。
しかしながら,上記のようなネジ部の構成は,本件意匠登録出願時にお
いて公知であったから,これのみが要部になると解するのは相当ではない。
そして,本件平滑面と同一形状の意匠が本件意匠登録出願時において公知
であったと認めるに足りる証拠はなく,結合強度を確保する等の目的で被
覆部のネジ部に設けられる形状には縦溝,平滑面及び切り欠き面など様々
な種類があると認められることからすれば,本件平滑面の形状が機能的な
観点から不可欠的に形成されるものであるとはいえず,むしろ,本件平滑
面の独特な形状は看者の注意を強く惹くものと考えられる。そうすると,
ネジ部と本件平滑面とが有機的に結合した被覆部の形状こそが本件意匠の
要部に当たるというべきである。
原告の上記主張は,採用することができない。
 被告各意匠と本件意匠の類否
ア 被告意匠1について
 被告意匠1と本件意匠には,前記  ア  の共通点があり,そのうち,
支台部の略円錐台形状部分において,左側面及び右側面の中心軸に対し
互いに対称な位置にある2か所に,円錐台形状側面に対し傾斜した平面
からなる切取り面が形成されている点は,本件意匠の要部である。
しかしながら,被告意匠1と本件意匠には,前記  ア  の相違点があ
り,とりわけ,本件意匠では,被覆部において,底部付近から支台部と
の境界付近までネジ部が形成され,本件平滑面が設けられているのに対
し,被告意匠1では,被覆部において,全体の概ね中央付近の目立つ箇
所である支台部の境界付近にマイクロスレッドが形成され,底部付近か
らマイクロスレッドとの境界付近までネジ部が形成されていて,本件平
滑面とは位置も大きさも形状も異なるザグリ部がそれぞれ設けられてい
るのである。
このように,被告意匠1には本件意匠の要部と大きく異なる点があり,
被告意匠1にのみ存するマイクロスレッドが需要者の注意を強く惹くも
のであることからすると,被告意匠1と本件意匠は,上記共通点にかか
わらず,看者に対し,全体として異なる美観を与えるものというべきで
ある。
 原告は,看者がマイクロスレッドをネジ部と別異のものと認識するこ
とはなく,マイクロスレッドは本件意匠登録出願時より前から公知であ
ったから,これが独自の美観を生じさせるものではないと主張するが,
マイクロスレッドには結合強度を確保する等の固有の目的がある上,マ
イクロスレッドとネジ部とでは外観上ネジ山の幅が明らかに異なってい
るから,看者が両者を区別して認識することは明らかであるし,被覆部
上部にマイクロスレッドが形成された1ピースタイプの歯科用インプラ
ントが上記当時に公知であったと認めるに足りる証拠はないから,原告
の上記主張のように解することはできず,これを採用することはできな
い。
イ 被告意匠2について
被告意匠2と本件意匠には,前記  イ  の共通点があり,そのうち,支
台部の略円錐台形状部分において,左側面及び右側面の中心軸に対し互い
に対称な位置にある2か所に,円錐台形状側面に対し傾斜した平面を含む
面からなる切取り面が形成されている点は,本件意匠の要部である。
しかしながら,被告意匠2と本件意匠には,前記  イ  の相違点があり,
とりわけ,本件意匠では,被覆部において,底部付近から支台部との境界
付近までネジ部が形成され,本件平滑面が設けられているのに対し,被告
意匠2では,被覆部において,全体の概ね中央付近の目立つ箇所である支
台部の境界付近にマイクロスレッドが形成され,底部付近からマイクロス
レッドとの境界付近までネジ部が形成されていて,本件平滑面とは位置も
大きさも形状も異なるザグリ部がそれぞれ設けられているのである。
このように,被告意匠2には本件意匠の要部と大きく異なる点があり,
被告意匠2にのみ存するマイクロスレッドが需要者の注意を強く惹くもの
であることからすると,被告意匠2と本件意匠は,上記共通点にかかわら
ず,看者に対し,全体として異なる美観を与えるものというべきである。
原告は,看者がマイクロスレッドをネジ部と別異のものと認識すること
はなく,マイクロスレッドは本件意匠登録出願時より前から公知であった
から,これが独自の美観を生じさせるものではないと主張するが,原告の
上記主張を採用することができないのは,前記のとおりである。
 したがって,被告各意匠は,いずれも本件意匠に類似しない。
2 争点2(被告乙B及び被告乙Cの債務不履行責任の有無)について
 本件誓約書10条違反の主張について
被告乙Bが被告ブレーンベースに,被告乙Cが被告ブレーンベースや被告
トリニティーに提供したとする「原告顧客に関する情報」の具体的内容が不
特定かつ不分明であるし,仮にこれが原告の販売するインプラントを購入し
た特定の歯科医師や歯科医院の氏名,名称及び住所等の情報を指すものであ
るとしても,被告乙B及び被告乙Cがこうした情報を他人に提供したと認め
るに足りる証拠はない。
 本件誓約書14条違反の主張について
被告乙Bは,平成20年12月4日に原告を退職し,その後まもなくして
被告ブレーンベースに入社し,被告乙Cは,平成23年8月30日に原告を
退職した時点において被告トリニティーの代表取締役の地位にあったもので
あるが,被告乙B及び被告乙Cのこれらの行為に起因して,原告製品の粗利
の減少等の損害が生じたことを認めるに足りる証拠はない。
3 以上のとおりであって,原告の被告ブレーンベース及び被告トリニティーに
対する意匠法37条に基づく差止請求及び民法709条に基づく損害賠償請求,
被告乙Aに対する会社法429条に基づく損害賠償請求並びに被告乙B及び被
告乙Cに対する民法415条に基づく損害賠償請求は,その余の点について判
断するまでもなく,全て理由がない。
よって,原告の請求をいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 高 野 輝 久
裁判官 三 井 大 有
裁判官 宇 野 遥 子
(別紙)
被 告 製 品 目 録
1 被告製品1
以下に示す歯科用インプラント
(1)製品名 Arrow Implant A-Ⅱ
(2)形態 添付写真1に示すとおり
2 被告製品2
以下に示す歯科用インプラント
(1)製品名 Arrow Implant A-Ⅲ
(2)形態 添付写真2に示すとおり
<添付の意匠公報は省略する>
写真1(被告製品1の形態)
①正面写真 ②背面写真
③右側面写真 ④左側面写真
⑤平面写真 ⑥底面写真
写真2(被告製品2の形態)
①正面写真 ②背面写真
③右側面写真 ④左側面写真
⑤平面写真 ⑥底面写真

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