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平成17(ネ)10112民事訴訟 意匠権

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裁判所 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
裁判年月日 平成17年12月22日
事件種別 民事
法令 意匠権
特許法104条の31回
キーワード 無効11回
意匠権10回
無効審判3回
差止3回
侵害2回
損害賠償2回
実施1回
主文
事件の概要

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判決文

平成17年(ネ)第10112号 損害賠償等請求控訴事件(原審・東京地裁平成
17年(ワ)第2065号)
(平成17年12月1日口頭弁論終結)
          判        決
   
        控訴人          X
        訴訟代理人弁護士     中山 徹
        同            科埜眞義
   
        被控訴人     有限会社光漢堂
        代表者代表取締役     
        訴訟代理人弁護士     小湊 收
          主        文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
          事実及び理由
第1 控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人は,原判決別紙物件目録記載1~3の前立腺快癒器(以下「被控訴
人製品」と総称する。)を製造し,販売してはならない。
3 被控訴人は,その保管中の被控訴人製品及びその半製品を廃棄せよ。
4 被控訴人は,被控訴人製品を製造するための金型を廃棄せよ。
5 被控訴人は,控訴人に対し,1069万5860円及びこれに対する平成1
7年2月13日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員
を支払え。
6 訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人の負担とする。
7 仮執行宣言
第2 事案の概要
 本件は,意匠に係る物品を「前立腺治療器」とする意匠権(出願平成11年
7月26日,登録平成13年1月26日,登録番号意匠登録第1104350号。
以下「本件意匠権」という。)を有する控訴人(一審原告)が,被控訴人(一審被
告)に対し,被控訴人製品の製造販売行為は本件意匠権の侵害に当たると主張し
て,被控訴人製品の製造販売の差止めと損害賠償等を求めた訴訟である。
 原審は,本件意匠権の意匠登録(以下「本件意匠登録」という。)は無効審
判により無効にされるべきものと認められるから,控訴人は本件意匠権に基づく権
利行使をすることはできない,被控訴人が本件意匠登録の無効を主張することが権
利の濫用又は信義則違反として許されないとも認められないと判断して,控訴人の
請求をいずれも棄却した。控訴人は,これを不服として,本件控訴を提起した。
第3 当事者の主張
1 前提事実は,原判決の「事実及び理由」中の第2の1記載のとおりであるか
ら,これを引用する。
2 争点及び争点に関する当事者の主張は,次のとおり付加するほか,原判決の
「事実及び理由」中の第2の2~6記載のとおりであるから,これを引用する。
(1) 控訴人の主張
 本件意匠権に係る登録意匠の実施品(商品名「エネマグラ」。以下「本件
商品」という。)は,控訴人が米国で特許を有し,米国内で周知されている商品で
ある。控訴人は,平成11年3月ころ,被控訴人が本件商品を日本国内で販売する
ことを認めた。ただし,控訴人が認めたのは,あくまでも控訴人が米国で製造した
本件商品の販売であった。
 本件商品は,我が国でも好評を博し,需要者に周知となった。被控訴人
は,本件商品の売れ行きがよいことから,平成11年9月ころ,日本国内で本件商
品の模倣品の製造販売を始めた。これを知った控訴人は,平成12年9月,不正競
争防止法に基づいて模倣品の製造販売の差止めを求める訴訟(前件訴訟・東京地裁
平成12年(ワ)第18637号)を提起し,平成15年2月6日に訴訟上の和解
(前件和解)が成立した。
 このように,被控訴人は,控訴人の製造した本件商品のみを販売するとの
約束に反し,本件商品が周知性を得るやその模倣品の製造販売を始めたものであっ
て,そのような者が本件意匠登録の無効を主張することは信義則に反するものであ
る。
(2) 被控訴人の主張
 控訴人は被控訴人が本件意匠登録の無効を主張するのは信義則に反すると
主張するが,これを争う。
第4 当裁判所の判断
1 当裁判所も,本件意匠登録は無効審判により無効にされるべきものと認める
から,控訴人は本件意匠権に基づく権利行使をすることができず,また,被控訴人
による本件意匠登録の無効の主張が権利の濫用又は信義則違反として許されないと
いうことはできないと判断する。その理由は,控訴人の当審における主張に対する
判断を次のとおり付加するほか,原判決の「事実及び理由」中の第3の1及び2記
載のとおりであるから,これを引用する。
(1) 控訴人は,被控訴人は控訴人の製造した本件商品のみを販売するとの約束に
反し,本件商品が周知性を得るやその模倣品の製造販売を始めたものであって,そ
のような者が本件意匠登録の無効を主張することは信義則に反する等と主張する。
 しかし,意匠権侵害を理由に差止め等を求められた者が,意匠法41条,
特許法104条の3に基づく権利を行使して,当該意匠に意匠登録無効審判事由が
あると主張することは,法で認められた権利の行使であって適法である。そして,
控訴人の前記主張によっても,控訴人と被控訴人との間の合意の具体的内容は不明
確であるのみならず,関係証拠を総合しても,控訴人と被控訴人とが本件意匠登録
の有効性を争わない趣旨の合意をしたと認めることはできない(なお,甲3及び弁
論の全趣旨によれば,前件訴訟における控訴人の請求は不正競争防止法に基づくも
のであって,平成15年2月6日に成立した前件和解には本件意匠権に関する条項
が含まれていない。)。
 そうすると,被控訴人において本件意匠登録の無効を主張することが信義
則に反すると認めることはできないから,控訴人の上記主張は採用することができ
ない。
(2) したがって,控訴人のその余の主張について判断するまでもなく,控訴人は
被控訴人に対して本件意匠権に基づく権利行使をすることはできないというべきで
ある。
2 以上によれば,控訴人の本訴請求はいずれも理由がなく,これを棄却した原
判決は正当である。
 よって,控訴人の本件控訴は理由がないから棄却することとして,主文のと
おり判決する。
     知的財産高等裁判所 第2部
         裁判長裁判官   中野哲弘
            裁判官   大鷹一郎
            裁判官   長谷川浩二

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