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平成17(行ケ)10554行政訴訟 商標権

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裁判所 知的財産高等裁判所
裁判年月日 平成17年11月24日
事件種別 民事
法令 商標権
商標法50条1項3回
商標法2条3項1号1回
キーワード 審決22回
商標権2回
主文
事件の概要

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判決文

平成17年(行ケ)第10554号 審決取消請求事件
口頭弁論終結日 平成17年10月27日
          判       決
        原      告     コナミ株式会社
        代表者代表取締役     
        訴訟代理人弁護士     安江邦治
        同    弁理士     羽切正治
        同            小野友彰
        被      告     株式会社りょくけん
        代表者代表取締役     
        訴訟代理人弁理士     杉村興作
        同            末野徳郎
        同            廣田米男
          主       文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
          事実及び理由
第1 請求
 特許庁が取消2004-31252号事件について平成17年5月27日に
した審決を取り消す。
第2 事案の概要
 本件は,被告の有する後記商標登録につき,原告が商標法50条1項に基づ
き商標登録取消しの審判を請求したところ,特許庁が請求不成立の審決をしたこと
から,原告がその取消しを求めた事案である。
第3 当事者の主張
 1 請求の原因 
  (1) 特許庁における手続の経緯
 被告は,下記のとおり,「粉菜実」の文字を横書きし,その上に小さく
「こなみ」の文字を横書きしてなる商標登録第2580779号商標(平成2年7
月18日出願,平成5年9月30日設定登録,平成15年4月22日存続期間の更
新登録。以下「本件商標」という。)の商標権者である。
              記
 本件商標の指定商品は,設定登録時は,商標法施行令の旧別表第32類の
「乾燥野菜,乾燥果実及び乾燥茶の葉を主原料とする粉末状の加工食料品」とする
ものであったが,平成16年8月11日に書換登録がされた後は,指定区分が商標
法施行令別表第29類に変更され,指定商品は同じく「乾燥野菜,乾燥果実及び乾
燥茶の葉を主原料とする粉末状の加工食料品」のままであった。
 原告は,平成16年9月21日付けで,本件商標につき,商標法50条1
項に基づいて商標登録の取消しを求める審判を請求し,平成16年10月12日に
その予告登録がされた。
 特許庁は,上記審判請求を取消2004-31252号事件として審理し
た上,平成17年5月27日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決を
し,その審決謄本は平成17年6月8日原告に送達された。
(2) 審決の内容
 審決の内容の詳細は,別添審決写し記載のとおりである。その要旨は,本
件商標とほぼ同一の商標を表示した商品ラベル(本訴甲3の2に添付された審判乙
2。以下「本件ラベル」という。),並びに品名欄に「ブロッコリーパウダーラベ
ル」及び「りょくけん茶ラベル」,「(粉菜実分)」との記載のある請求書及び納
品書(本訴甲3の2に添付された審判乙4の1,2。以下「本件納品書等」と総称
する。)によれば,被告が,本件審判請求の登録前3年以内に,本件商標を使用し
ていたと認められるとしたものである。
(3) 審決の取消事由
 しかしながら,以下に述べるとおり,本件商標がその指定商品に使用され
ていたとはいえないから,審決は,その認定判断に誤りがあるものとして,取り消
されるべきである。
ア 本件商標の使用の事実について
(ア) 審決は,上記のとおり,本件ラベル及び本件納品書等に基づいて,
本件商標が本件審判請求の登録前3年以内に使用されたと認定した。
 しかし,本件ラベル及び本件納品書等が真正に成立し,現に存在する
ことを示す客観的な証拠はない。
 しかも,審決は,本件ラベル及び本件納品書等の記載内容につき,被
告が,本件納品書等に記載された品名「ブロッコリーパウダーラベル」及び「りょ
くけん茶ラベル」のうちの後者が本件ラベルであると主張したにもかかわらず,前
者が本件ラベルであると推認されるとの独自の認定を行っているが,この点にも何
ら合理的根拠がない。
 したがって,本件ラベル及び本件納品書等に基づいて,本件商標が使
用された事実を認定することはできないから,これが使用されていたとした審決の
判断は誤りである。
(イ) 被告は,本訴において,本件商標の使用の事実を立証するための新
たな証拠として,本件ラベルが貼付された容器等の写真(本訴乙3の1~5)を提
出した。しかし,この写真に示す商品が取引市場に流通していたことを示す客観的
な証拠はないから,この点に関する被告の主張も失当である。
イ 本件商標が使用された商品について
 本件商標の指定商品は,前述したように第29類の商品区分に属する
「乾燥野菜,乾燥果実及び乾燥茶の葉を主原料とする粉末状の加工食料品」である
から,乾燥野菜,乾燥果実及び乾燥茶の葉を主原料とし,これに何らかの加工を施
した粉末状の加工食料品に限られる。特段の加工を施さないそのままの状態の乾燥
野菜,乾燥果実又は乾燥茶の葉は,「粉末状の加工食料品」ではないから,本件商
標の指定商品には当たらない。
 また,「茶」や「粉末茶」は第30類の商品区分に属するものであっ
て,柿の葉茶,杜仲茶等の「健康茶」と称される商品も,本件商標の指定商品とは
全く別異のものである。
 他方,本件ラベルが使用されたとされる商品(被告が本訴において提出
した上記写真に係る商品も同様である。以下「本件使用商品」という。)は,本件
ラベル上の「ビタミン,ミネラル,食物繊維を,そのまま飲めるフリーズ・ドライ
タイプ」,「粉菜実は,緑健栽培で育ったブロッコリーと茶の葉を粉末にし,半分
づつ配合しました」,「名称・・・・粉末茶」等の記載からして,第30類の「茶」に
属する商品(粉末茶,健康茶)であるというべきであって,何らかの加工を施した
粉末状の加工食料品ではない。したがって,本件商標の指定商品の範囲に属するも
のではない。
 ところが,審決は,本件使用商品は,いわゆる健康食品であり,本件商
標の指定商品の範囲に属すると判断したものであって,その判断には明らかな誤り
がある。
2 請求原因に対する認否
 請求原因(1)及び(2)の各事実は認めるが,同(3)は争う。
3 被告の主張
(1) 本件商標の使用の事実について
 本件は,登録商標の不使用取消審判に関する訴訟事件であり,審判請求の
予告登録があったのは平成16年10月12日であるところ,被告は,同登録前3
年以内である平成14年10月9日(本件納品書等に記載された本件ラベルの納品
時期)以降,本件商標をその指定商品の範囲に属する本件使用商品に使用した。こ
のことは,審決において証拠とされた本件ラベル及び本件納品書等,並びに,本件
訴訟において被告が証拠として提出した,本件ラベルの貼付された容器及びその容
器に入れられた「ブロッコリーと茶の葉を粉末にし,半分ずつ配合した粉末状の加
工食料品」の写真(本訴乙3の1~5)から明らかである。したがって,本件商標
の使用の事実を認めた審決の判断に誤りはない。
 なお,審決が,本件ラベルは本件納品書等に記載された「りょくけん茶ラ
ベル」であるとの被告の主張を採用せず,「ブロッコリーパウダーラベル」である
と認定したことは,不適切ではあるが,本件商標の使用があったとする結論は正当
であるから,この点が審決の取消事由に当たることはない。
(2) 本件商標が使用された商品について
 本件使用商品は,加工野菜である粉末状のブロッコリーと茶の葉が配合さ
れた粉末状の食品であり,健康に配慮したいわゆる健康食品である。したがって,
審決が,本件使用商品及び本件商標の指定商品の内容を検討して,本件使用商品
は,いわゆる健康食品であって,本件商標の指定商品の範囲に属する旨の判断をし
たことに誤りはない。
 これに対し,原告は,本件使用商品は,「茶」であって,本件商標の指定
商品の範囲に属するものではないと主張する。しかし,商標法施行令別表第30類
の「茶」は,ウーロン茶,紅茶等の一般に「茶」と認識される商品をいうものであ
って,本件使用商品はこれに当たらない。なお,本件ラベルには「粉末茶」との記
載があるが,これは需要者に分かりやすい表示として用いたにすぎず,これをもっ
て本件使用商品が「茶」の概念に属するものとなることはない。
第4 当裁判所の判断
1 請求原因(1)(特許庁における手続の経緯),(2)(審決の内容)の各事実
は,いずれも当事者間に争いがない。
2 予告登録前における本件商標の使用の有無
(1) 証拠(本訴甲3の2,乙3の1~5)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事
実が認められる。
ア 被告は,本件納品書等(本訴甲3の2に添付された審判乙4の1,2)
に示されたとおり,平成14年10月9日付けで,有限会社レップから「ブロッコ
リーパウダーラベル」5000枚及び「りょくけん茶ラベル」2000枚の納品を
受けた。
イ 本件ラベル(本訴甲3の2に添付された審判乙2)には,「粉菜実」の
漢字を若干図案化した文字で横書きし,その上に小さな「こなみ」の平仮名文字を
横書きしてなる標章が表示されている。また,本件ラベルには,同標章の下に「フ
レッシュ・パウダー・ティー」の文字,葉及び花を付けた茶の木並びにブロッコリ
ーの花部と認められる図形,並びに「ビタミン,ミネラル,食物繊維を,そのまま
飲めるフリーズ・ドライタイプ。アイスティーでどうぞ。」の文字が配置され,そ
の左側に「粉菜実は,緑健栽培で育ったブロッコリーと茶の葉を粉末にし,半分づ
つ配合しました」等の文字,右側に「名称  粉末茶」,「内容量  100g」,
「賞味期限  別途記載」等の文字が記載されている。
ウ 本件ラベルは,円筒形の缶(本訴乙3の1~5)に,その側面全体を覆
うようにして貼付された。この缶には,銀色の袋に入った緑色の粉が収納されてい
る。また,その底面に「20031028」の文字が記されている(本訴乙3の1
~5は,審判においては提出されず,本訴提起後に提出されたものであるが,これ
が許されることは最高裁平成3年4月23日第三小法廷判決・民集45巻4号53
8頁の判示からして明らかである。)。
(2) 本件ラベルに付された上記(1)イの標章が,その形状からして本件商標と社
会通念上同一と認められることは明らかである(商標法50条1項括弧書き参
照)。
 また,本件ラベルの上記記載内容からすると,これが貼付された缶に収納
された物は,野菜(ブロッコリー)及び茶の葉を主な原料とし,これを乾燥した
上,粉末状にして配合するという加工を施したものであって,本件商標の指定商品
である「乾燥野菜,乾燥果実及び乾燥茶の葉を主原料とする粉末状の加工食料品」
の範囲に含まれるということができる。
 そして,本件ラベルが上記円筒形の缶に貼付された時期については,本件
ラベルは本件納品書等に記載された2種類のラベル(「ブロッコリーパウダーラベ
ル」又は「りょくけん茶ラベル」)のいずれかであると推認されることからすれ
ば,平成14年10月以降であると,また,前記のとおり賞味期限の記載であると
推認される2003年(平成15年)10月28日との記載によれば,平成15年
10月以前であると,それぞれ認めることができる。
 さらに,被告に納品されたラベルの枚数に照らせば,本件ラベルを貼付し
た商品は市場での流通に置かれたものであると認められる。
 そうすると,本件商標の商標権者である被告は,本件審判請求の予告登録
(平成16年10月12日)前3年以内である平成14年10月から平成15年1
0月までの間に,日本国内において,本件商標と社会通念上同一と認められる商標
を,本件商標の指定商品の包装に付することによって,本件商標を使用した(商標
法2条3項1号)と認めるのが相当である。
(3) これに対し,原告は次のとおり主張するが,以下のとおり,いずれも採用す
ることができない。
ア 原告は,本件ラベルや本件納品書等が真正に成立し,現に存在すること
を示す客観的な証拠がないと主張する。
 しかし,その体裁及び記載内容に照らせば,これらは通常の取引の過程
で作成された書面であると認められるから,これらに基づいて本件商標の使用の事
実の認定することに不合理なところはないというべきである。
イ また原告は,審決が,本件納品書等に記載された「ブロッコリーパウダ
ーラベル」及び「りょくけん茶ラベル」のうち後者が本件ラベルであるとの被告の
主張に反して,前者が本件ラベルであると認定したことを非難する。
 しかし,本件ラベルが本件納品書等に記載された2種類のラベルのいず
れかに該当すると推認される以上,本件ラベルは平成14年10月ころに被告に納
品され,被告によって使用に供されたと認めることができるから,原告の上記主張
は結論に影響しないといわざるを得ない。
ウ さらに原告は,本件使用商品は,商標法施行令別表第30類の「茶」に
属するものであって,本件商標の指定商品には含まれないと主張する。
 しかし,本件において問題となるのは,本件の指定商品が商標法施行令
別表の第30類に属するかそれとも前記のとおり第29類に属するかということで
はなく,あくまで指定商品の書換登録の前後を通じて変更のない「乾燥野菜,乾燥
果実及び乾燥茶の葉を主原料とする粉末状の加工食料品」についての使用の有無で
あるところ,上記認定のとおり,本件使用商品は,乾燥した野菜及び茶の葉を主な
原料とし,これを粉末状に加工したものであるから,本件商標の指定商品の範囲に
属する使用がされたと認めることができる。
 なお,本件ラベルには,「アイスティーでどうぞ。」,「名称・・・・粉末
茶」といった記載があるが,この記載は,本件使用商品を茶と同様の方法で飲用に
供することができることを示すにとどまると解され,これをもって,本件使用商品
が粉末状の加工食料品に当たらないとみることはできない。
3 結語
 以上のとおりであるから,原告の本件審判請求を不成立とした審決の判断
は,正当として是認することができる。
 よって,原告の本訴請求は理由がないので,これを棄却することとして,主
文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所 第2部
         裁判長裁判官  中   野   哲   弘
            裁判官   大   鷹   一   郎
    裁判官  長 谷 川   浩   二

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