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平成17(ネ)617民事訴訟 意匠権

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裁判所 大阪高等裁判所
裁判年月日 平成17年7月7日
事件種別 民事
法令 意匠権
民事訴訟法146条1項1回
キーワード 損害賠償8回
主文
事件の概要

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判決文

平成17年7月7日判決言渡・同日原本領収 裁判所書記官
平成17年(ネ)第617号損害賠償請求控訴事件(原審・大阪地方裁判所平成16
年(ワ)第6266号)
判     決 
        控訴人(1審被告)   A
            同訴訟代理人弁護士   小  西  敏  雄
           被控訴人(1審原告)  宮浦金属工業株式会社
            同代表者代表取締役   B
            同訴訟代理人弁護士   村  松  昭  夫
主     文 
 1 原判決を次のとおり変更する。
 2 控訴人は,被控訴人に対し,270万円及びこれに対する平成16年6月1
8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
 3 被控訴人のその余の請求を棄却する。
 4 訴訟費用は,第1,2審を通じてこれを2分し,その1を被控訴人の,その
余を控訴人の各負担とする。
事実及び理由 
第1 控訴の趣旨
 1 主位的
  (1) 原判決を取り消す。
  (2) 被控訴人の訴えを却下する。
  (3) 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。
 2 予備的
  (1) 原判決中,控訴人敗訴部分を取り消す。
  (2) 被控訴人の請求を棄却する。
  (3) 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。
第2 事案の概要
 1 本件は,被控訴人が,控訴人に対し,①控訴人と被控訴人との間の,新型コ
ーヒードリッパーに係る金型製作契約の締結交渉に当たって,控訴人の契約締結上
の過失により損害を受けたと主張し,損害賠償530万円の支払を求め,②控訴人
が,被控訴人が見本として製作したコーヒードリッパーの意匠を使用して意匠登録
出願を行い,意匠登録を得たことが不法行為であると主張し,損害賠償100万円
の支払いを求めた事案である。
   原審は,被控訴人の請求を,契約締結上の過失による損害賠償450万円の
限度で認容したところ,控訴人が本件控訴を提起した。
  (以下,被控訴人を「原告」,控訴人を「被告」という。)
 2 基礎となる事実
   当事者間に争いがない事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に
認定できる事実は,原判決2頁6行目から3頁24行目までに記載のとおりである
から,これを引用する。
   ただし,2頁6行目の「金型製造」を「金型製作」と,同13行目及び同1
9行目の各「作成」をいずれも「製作」と,同16行目の「金型製造代金」を「金
型製作代金」と,同17行目の「ファクス送信した。」を「ファクシミリで送信し
た。」と,同21行目,3頁8行目,同11行目及び同15行目の各「金型製造契
約」をいずれも「金型製作契約」と,2頁末行の「製作」を「製造」と,3頁12
行目の「製造」を「製作」と各改める。
 3 争点及び争点に関する当事者の主張
   次のとおり付加,訂正するほか,原判決3頁末行から6頁17行目までに記
載のとおりであるから,これを引用する。
  (1) 4頁1行目を次のとおり改める。
  「ア 被告の主張
     本訴の請求も,前訴の請求も,本件金型の製作契約の締結に向けた契約
締結上の過失を原因とする損害賠償請求であり,訴訟物は同一である。」
  (2) 4頁10行目末尾の次に改行して,次のとおり加える。
  「イ 原告の主張
     前訴は,被告の原告に対する損害賠償請求権が訴訟物であるが,本訴
は,原告の被告に対する損害賠償請求権が訴訟物であり,両者の訴訟物は異なる
し,前訴では,原告の被告に対する損害賠償請求権は審理の対象になっていなかっ
た。」
  (3) 4頁13行目の「製造契約」を「製作契約」と,同14行目の「製造」を
「製作」と各改め,5頁7行目末尾の次に改行して,次のとおり加える。
  「(ウ) 仮に,代金200万円で契約が成立していなかったとしても,被告
は,代金200万円で契約が成立したと信じていたし,原告は,被告に200万円
しか予算がないことは分かっていたから,被告には事前に予算を明示すべき義務は
ない。」
  (4) 5頁13行目の「金型製造」を「金型製作」と,6頁13行目の「固定
版」を「固定板」と各改める。
第3 当裁判所の判断
 1 次のとおり付加,訂正するほか,原判決6頁19行目から14頁13行目ま
でに記載のとおりであるから,これを引用する。
  (1) 引用する原判決文中,各「金型製造」をいずれも「金型製作」と,各「金
型製造代金」をいずれも「金型製作代金」と,各「金型製造契約」をいずれも「金
型製作契約」と,各「製造」(ただし,8頁14行目,同21行目,9頁2行目,
同3行目,同4行目,同12行目,同23行目,同25行目,10頁8行目,11
頁5行目,同24行目から25行目にかけて,12頁5行目,同24行目,13頁
21行目及び14頁2行目のもの)をいずれも「製作」と各改める。
  (2) 7頁2行目の「することもできない。」を「いうこともできない。」と,
同3行目の「本訴を」を「本訴は」と,同4行目の「することができない。」を
「いうことができない。」と各改める。
  (3) 7頁6行目冒頭から同7行目末尾までを,次のとおり改める。
   「確かに,反訴を提起することは,紛争の一回的解決を可能にし,訴訟経済
上有益であるけれども,民事訴訟法146条1項本文は,「被告は,本訴の目的で
ある請求又は防御の方法と関連する請求を目的とする場合に限り,口頭弁論の終結
に至るまで,本訴の係属する裁判所に反訴を提起することができる。」と規定して
おり,このことからすれば,反訴を提起するか別訴を提起するかの選択権は前訴の
被告にゆだねられているというべきであり,前訴の被告が反訴の提起ではなく別訴
の提起を選択したからといって,このことが不適法であるとはいえない。」
  (4) 7頁18行目末尾の次に改行して,次のとおり加える。
   「被告は,金型の製作に関する知識,経験は有していなかった。」
  (5) 8頁2行目及び同5行目の各「ファクス送信した」をいずれも「ファクシ
ミリで送信した」と,同3行目の「本製造」を「本製作」と,同9行目の「金額」
を「上記金額」と,同10行目の「原告に伝えた」を「被告に伝えた」と各改め,
同13行目末尾の次に改行して,次のとおり加える。
   「その際,被告は,原告に対し,予算額を告げなかった。
    また,原告は,遅くともこのころまでに,被告は金型の製作に関する知
識,経験を有していないことを認識するに至った。」
  (6) 8頁16行目末尾の次に改行して,次のとおり加える。
   「この際,原告は,被告に対し,上記設計変更により金型製作費用が増加
し,これに伴って代金額も増額されることについて特段の説明をせず,被告も,こ
の点について原告に質問することはなかった。」
  (7) 9頁10行目の「固定版」を「固定板」と,同13行目の「フィルター押
さえ版」を「フィルター押さえ板」と,同14行目の「作成」を「製作」と,同2
4行目の「代金400万円との見積」を「代金300万円ないし400万円の見積
もり」と各改める。
  (8) 10頁3行目の「上記」を「前記」と改め,同14行目の「当然である」
の次に「(被告は,前記認定のとおり,金型製作に関する知識,経験を有していな
かったが,そうであるとしても,このことは容易に知り得たというべきであ
る。)」を加え,11頁22行目の「金型製造代」を「金型製作代」と改める。
  (9) 14頁4行目から5行目にかけての「よって,上記損害額を減額すべき事
情も認められない。」を,次のとおり改める。
   「しかし,前記認定のとおり,被告は金型製作に関する知識を有しておら
ず,原告も,このことを交渉の経緯の中で認識するに至ったものと認められる。
    そうすると,原告は,被告が予算額を明示しなかったとはいえ,被告から
予算額に上限はなく,無制限に費用を掛けてよいと告げられたわけではないのであ
るから,設計変更により大幅に見積額が上昇した場合(原告の提示した代金額53
0万円は,当初見積額230万円の2倍以上になっている。)には,被告の予算の
限度を超過してしまい,契約締結に至ることができなくなる可能性があることを,
容易に予見し得たというべきである。
    そうすると,原告は,被告から設計変更の要望を受け,これにより大幅な
費用の増加が見込まれる場合は,当該設計変更によりどの程度代金額が増加するか
について,見積もりを提出するなどして,被告に注意を促すべき信義則上の注意義
務を負担しており,これを怠った原告の過失が,前記の被告の過失と相まって,契
約不成立の結果を招き,前記損害を発生させたものということが相当である。
    そして,前記認定の事実経過によれば,原告と被告の過失割合は,原告が
4割,被告が6割と認めるのが相当である。
    したがって,被告が原告に対して支払うべき契約締結上の過失による損害
の額は,270万円(450万円×0.6)となる。」
 2 その他,原審及び当審における当事者提出の各準備書面記載の主張に照ら
し,原審及び当審で提出,援用された全証拠を改めて精査しても,当審及び当審の
引用する原審の認定,判断を覆すほどのものはない。
 3 結論
   以上によれば,原告の請求は,270万円及びこれに対する訴状送達の日の
翌日である平成16年6月18日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による
遅延損害金の支払を求める限度で理由があり,その余は理由がないから,これと異
なる原判決は変更を免れない。
   よって,主文のとおり判決する。
   (口頭弁論終結・平成17年5月12日)
       大阪高等裁判所第8民事部
          裁判長裁判官   竹   原   俊   一
             裁判官   小   野   洋   一
             裁判官   中   村       心

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