平成15(行ケ)17特許取消決定取消請求事件
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裁判所 |
東京高等裁判所
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裁判年月日 |
平成17年2月15日 |
事件種別 |
民事 |
法令 |
特許権
特許法126条1項1回
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キーワード |
審決6回 刊行物1回 特許権1回 分割1回
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主文 |
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事件の概要 |
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判決文
平成15年(行ケ)第17号 特許取消決定取消請求事件
平成17年2月1日口頭弁論終結
判 決
原 告 東洋紡績株式会社
訴訟代理人弁理士 高島一,谷口操,土井京子,栗原弘幸,田村弥栄子,山本健
二,幸芳
被 告 特許庁長官 小川洋
指定代理人 佐野整,一色由美子,林栄二,大橋信彦,宮坂初男,井出英
一郎
主 文
特許庁が異議2001-72488号事件について,平成14年12月2日にし
た決定を取り消す。
訴訟費用は各自の負担とする。
事実及び理由
第1 原告の求めた裁判
主文第1項と同旨の判決。
第2 事案の概要
本件は,後記本件特許を取り消すとした決定の取消しを求める事件である。
1 特許庁等における手続の経緯
(1) 原告は,発明の名称を「脂肪族ポリエステルおよび/またはその共重合体」
とする特許第3144416号(請求項の数3。平成6年9月9日に出願した特願
平6-216129号の分割出願,平成13年1月5日に設定登録。以下「本件特
許」という。)の特許権者である(甲2)。
(2) 本件特許について,特許異議の申立てがされ(異議2001-72488号
事件として係属),これに対し,原告は,平成14年7月26日,明細書の訂正を
請求した(甲1,3)。
(3) 特許庁は,平成14年12月2日,上記訂正は認められないとした上,請求
項1ないし3に係る特許を取り消す旨の決定をし,その謄本は,同月18日に原告
に送達された。
決定の要旨は,平成14年7月26日付け訂正請求に係る訂正は,特許法120
条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法12
6条1項ただし書きの各号に規定する何れの目的にも該当しないので,当該訂正は
認められない,請求項1ないし3に係る発明は,刊行物1ないし4に記載された発
明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであり,請求項1ないし3
に係る発明の特許は,特許法29条2項の規定に違反してされたものである,とい
うものである(甲1)。
(4) 原告は,平成15年1月15日,上記取消決定の取消しを求める本件訴訟を
提起した。
(5) 原告は,平成16年9月6日,明細書の特許請求の範囲の記載等を訂正する
ことについて審判を請求したところ(訂正2004-39212号事件として係
属),特許庁は,同年10月29日,訂正することを認める旨の審決(以下「本件
訂正審決」という。)をし,上記審決は確定した(甲11)。
2 特許請求の範囲の記載
(1) 設定登録当時のもの(甲2)
【請求項1】 下記式(II)および(III)を満足することを特徴とする脂肪族ポ
リエステルおよび/またはその共重合体;
IVf/IVi≧0.85 (II)
T10%(℃)≧300 (III)
(ここで,IVfおよびIViは,それぞれ200℃で1時間不活性ガス雰囲気条件
下で溶融させたときの溶融前後の還元粘度を示し,T10% は,不活性ガス気流下で1
0℃/分の速度で加熱する熱重量分析において,当初重量の10重量%がなくなる
ときの温度を示す。)
【請求項2】 請求項1に記載の脂肪族ポリエステルおよび/またはその共重合
体を形成してなるフィルム。
【請求項3】 包装用フィルム,農園芸用マルチフィルム,ショッピングバッ
ク,ごみ袋,テープ類,肥料袋または分離膜の用途に使用される請求項2に記載の
フィルム。
(2) 平成14年7月26日付け訂正請求に係るもの(下線部分が訂正箇所。甲
3)
【請求項1】 重合触媒に由来する残留金属を除去する工程の無い製造工程から
得た,下記式(II)および(III)を満足することを特徴とする脂肪族ポリエステル
および/またはその共重合体;
IVf/IVi≧0.85 (II)
T10%(℃)≧300 (III)
(ここで,IVfおよびIViは,それぞれ200℃で1時間不活性ガス雰囲気条件
下で溶融させたときの溶融前後の還元粘度を示し,T10% は,不活性ガス気流下で1
0℃/分の速度で加熱する熱重量分析において,当初重量の10重量%がなくなる
ときの温度を示す。)
【請求項2】 請求項1に記載の脂肪族ポリエステルおよび/またはその共重合
体を形成してなるフィルム。
【請求項3】 包装用フィルム,農園芸用マルチフィルム,ショッピングバッ
ク,ごみ袋,テープ類,肥料袋または分離膜の用途に使用される請求項2に記載の
フィルム。
(3) 本件訂正審決に係るもの(下線部分が(1)に対する訂正箇所。甲11)
【請求項1】 開環重合触媒に下記式(V)で表されるアルミニウムβ-ジケト
ン無電荷錯体を用いて製造され,該アルミニウムβ-ジケトン無電荷錯体由来のア
ルミニウムを68~152ppm含有し,下記式(II)および(III)を満足するこ
とを特徴とする脂肪族ポリエステルおよび/またはその共重合体;
IVf/IVi≧0.85 (II)
T10%(℃)≧300 (III)
(ここで,IVfおよびIViは,それぞれ200℃で1時間不活性ガス雰囲気条件
下で溶融させたときの溶融前後の還元粘度を示し,T10% は,不活性ガス気流下で1
0℃/分の速度で加熱する熱重量分析において,当初重量の10重量%がなくなる
ときの温度を示す。)
(V)
(式中,Ra,Rcはそれぞれ独立してアルキル基,シクロアルキル基またはアリ
ール基であり,Rbは水素原子またはアルキル基,シクロアルキル基またはアリー
ル基であり,このアルキル基,シクロアルキル基またはアリール基は置換ハロゲン
を含有しうる)
【請求項2】 請求項1に記載の脂肪族ポリエステルおよび/またはその共重合
体を形成してなるフィルム。
【請求項3】 包装用フィルム,農園芸用マルチフィルム,ショッピングバッ
ク,ごみ袋,テープ類,肥料袋または分離膜の用途に使用される請求項2に記載の
フィルム。
第3 原告主張の決定取消事由の要点
決定は,設定登録当時の明細書の特許請求の範囲の記載に基づき,各請求項の発
明の要旨を認定したが,本件訂正審決が確定したことにより,結果として,発明の
要旨の認定を誤ったことになるところ,この誤りが決定の結論に影響を及ぼすこと
は明らかである。
第4 当裁判所の判断
1 第2の事実によれば,本件訂正審決が確定したことにより,明細書の特許請
求の範囲の記載が第2の2(3)のとおりに訂正されたところ,上記訂正が特許請求の
範囲の減縮に当たることは明らかである。
そうすると,設定登録当時の明細書の特許請求の範囲の記載に基づいて発明の要
旨を認定した決定は,結果として,発明の要旨の認定を誤ったものであって,この
誤りが決定の結論に影響を及ぼすことは明らかである。
2 したがって,原告主張の決定取消事由は理由があるから,原告の請求は,認
容されるべきである。
東京高等裁判所知的財産第4部
裁判長裁判官 塚 原 朋 一
裁判官 塩 月 秀 平
裁判官 高 野 輝 久
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