平成16(ワ)13922特許実施許諾料返還請求事件
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裁判所 |
東京地方裁判所
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裁判年月日 |
平成17年1月26日 |
事件種別 |
民事 |
法令 |
特許権
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キーワード |
実施35回 許諾34回
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主文 |
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事件の概要 |
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判決文
平成16年(ワ)第13922号 特許実施許諾料返還請求事件
口頭弁論終結日 平成16年11月26日
判 決
原 告 株式会社ハネックス
同訴訟代理人弁護士 金子光邦
同 小池邦吉
被 告 合名会社新技術開発研究所
(以下「被告会社」という。)
被 告 A
被 告 B
主 文
1 被告らは,原告に対し,連帯して2000万円及びこれに対する平成12年
5月13日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告らの負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
主文同旨
第2 事案の概要
本件は,原告が,被告会社との間で,出願中の特許発明の実施許諾契約に基づき
実施許諾料を支払ったところ,特許出願が取り下げられたことから,被告会社に対
し,上記実施許諾契約に基づき,実施許諾料の返還及び出願取下げによる最終処分
がされた日の翌日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の
支払を求め,合名会社である被告会社の社員であるその余の被告らに対し,商法8
0条1項に基づき,同額の連帯支払を求めた事案である。
1 前提事実
証拠を掲記しない事実は,当事者間に争いのない事実(明らかに争わない事実を
含む。)である。
(1) 当事者
ア 原告は,ヒューム管の製造販売等を目的とする株式会社である。
イ 被告会社は,コンピュータ,ソフト,ハードセンサーの研究開発等を目的と
する合名会社である。
(2) 本件実施許諾契約
原告は,被告会社との間で,平成10年4月17日,被告会社を許諾者,原告を
被許諾者とする次の内容の実施許諾契約を締結した(以下「本件実施許諾契約」と
いう。)。
ア 対象となる権利
(ア) 出願番号 特願平8-358380
出願日 平成8年12月9日
出願人 被告A
発明の名称 移動体通信装置
(イ) 出願番号 特願平6-259896
出願日 平成6年9月15日
出願人 被告A
発明の名称 データ送受装置
(以下,これらの出願を「本件各出願」といい,それぞれの出願を「本件出願(ア)」
のように表示する。)
イ 実施許諾料
実施許諾料は,2000万円とする(5条(1))。
ウ 実施許諾料の返還
被告会社は,本件各出願の拒絶査定が確定した場合には,実施許諾料を原告に返
還する(7条(1))。
エ 不争義務
(ア) 原告は,理由または方法のいかんを問わず本件に基づく出願中の特許および
ノウハウの効力について自ら争い,あるいは第三者をして抗争せしめ,または,第
三者の抗争に援助を与えてはならない(9条)。
(イ) 上記(ア)の不争義務の範囲内に,実施許諾料の返還請求が含まれないこと
は,明らかである。
(甲1,3,5)
(3) 実施許諾料の支払
原告は,被告会社に対し,平成10年5月8日ころ及び同年8月5日ころ,実施
許諾料として各1000万円,合計2000万円を支払った。
(4) 本件各出願の経過
ア 本件出願(ア)については,平成10年6月26日に出願公開され,平成11
年4月13日に拒絶理由通知書が発送され,同年6月9日に被告Aから出願取下書
が提出され,同年7月30日に取下げを理由とする最終処分がされた。
イ 本件出願発明(イ)については,平成7年8月4日に出願公開され,平成11
年12月21日に拒絶理由通知書が発送され,平成12年2月25日に被告Aから
出願取下書が提出され,同年5月12日に取下げを理由とする最終処分がされた。
(甲1~4)
(5) 被告会社の完済不能
ア 被告会社は,現在,本件請求に係る債務を含めた会社の債務を完済するに足
りる会社財産を有していない(商法80条1項)。
イ 被告A及び被告Bは,いずれも被告会社の社員である。
ウ なお,合名会社の社員は加入前の会社債務についても責任を負うから(商法
82条),被告Bは,加入前に締結された本件実施許諾契約に基づく債務について
も責任を負う。
2 争点
本件各出願が取り下げられたことは,本件実施許諾契約における実施許諾料の返
還事由(7条(1))に当たるか。
3 争点に関する当事者の主張
(1) 原告の主張
ア 本件各出願については,いずれも拒絶理由通知がされ,これをそのまま放置
すれば拒絶査定がされ,確定することは明らかである。
したがって,その前に特許出願が取り下げられ,最終処分が確定したことは,拒
絶査定の確定と同視すべきである。
イ 被告らは,後続の特許出願がされたことを理由に,実施許諾料の返還を要し
ない旨主張するが,本件実施許諾契約は,本件各出願を対象とするものであるか
ら,本件実施許諾契約の対象ではない後続の特許出願の事実をもって,実施許諾料
の返還事由が不発生であると認めることはできない。
(2) 被告らの主張
ア 本件各出願の審査手続は,いずれも出願取下げにより「査定なし」として確
定しており,拒絶査定は確定していない。
イ 本件各出願は,引き続いて開発された技術とノウハウを盛り込んだ後続の出
願中の特許(特願平11-203603,出願日平成11年6月14日,出願人被
告A)において,拡充,発展した形で存続している。
第3 当裁判所の判断
1 争点について
(1) 本件実施許諾契約は,①特許出願中の本件各出願に係る発明を実施権の対象
とし(前文,1条(1)),②実施許諾料として2000万円を支払い(5条(1)),
③売上げに応じた実施料として3ないし2%を支払い(1条,5条(2)),④本件各
出願につき拒絶査定が確定した場合には実施許諾料を返還し(7条(1)),⑤本件各
出願に係る発明の特許請求の範囲が減縮されて登録され,かつ被告会社から移転さ
れたノウハウ等を使用しても有効に実施できない場合は,減縮に応じた金額を返還
する(7条(2))と定めている(争いのない事実,甲5)。
これらの本件実施許諾契約全体の趣旨によれば,本件実施許諾契約7条(1)にいう
本件各出願の「拒絶査定が確定した場合」とは,本件各出願が特許として成立しな
かった場合を意味し,本件のように特許出願の出願公開後に特許出願が取り下げら
れた場合を含むものと解すべきである。
これに反する被告らの主張は,採用することができない。
(2) 被告らは,後続の出願中の特許の存在を本件実施許諾契約7条(1)に該当し
ない理由として主張するが,本件実施許諾契約は飽くまで本件各出願を対象とする
ものであるから,後続の出願中の特許の存在を理由に本件実施許諾契約の7条(1)に
該当しないものと解することはできず,被告らの上記主張は,採用することができ
ない。
(3) 以上によれば,被告会社は,原告に対し,本件実施許諾契約に基づき,実施
許諾料2000万円の返還及びこれに対する本件各出願の最終処分が確定した日後
である平成12年5月13日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅
延損害金の支払義務があり,被告A及び被告Bは,原告に対し,商法80条1項に
基づき,同額の連帯支払義務がある。
2 結論
よって,原告の請求はいずれも理由があるからこれを認容することとし,主文の
とおり判決する。
東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 市 川 正 巳
裁判官 頼 晋 一
裁判官 高 嶋 卓
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