平成25(行ケ)10287審決取消請求事件
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裁判所 |
審決取消 知的財産高等裁判所
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裁判年月日 |
平成26年3月27日 |
事件種別 |
民事 |
当事者 |
被告特許庁長官 原告三星電子株式会社
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法令 |
意匠権
意匠法3条1項3号3回
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キーワード |
審決46回
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主文 |
1 特許庁が不服2012-22544号事件について平成25年6月13日にした審決を取り消す。
2 訴訟費用は被告の負担とする。 |
事件の概要 |
1 特許庁における手続の経緯等(争いがない。)
原告は,意匠に係る物品「携帯電話機」に関する意匠につき,平成23年
7月14日を出願日とする意匠登録出願(意願2011-16265号。パリ
条約に基づく優先権主張・2011年4月27日(以下「優先日」という。),
大韓民国。以下「本願」という。また,本願に係る意匠を「本願意匠」とい
う。)をした。原告は,平成24年8月9日付けで拒絶の査定を受け,同年1
1月14日,拒絶査定に対する不服の審判(不服2012-22544号事
件)を請求した。特許庁は,平成25年6月13日,「本件審判の請求は,成
り立たない。」との審決をし,その謄本を,同月25日,原告に送達した。 |
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判決文
平成26年3月27日判決言渡
平成25年(行ケ)第10287号 審決取消請求事件
口頭弁論終結日 平成26年2月13日
判 決
原 告 三 星 電 子 株 式 会 社
訴訟代理人弁護士 濱 田 広 道
同 菅 野 典 浩
同 横 手 聡
被 告 特 許 庁 長 官
指 定 代 理 人 富 永 亘
同 原 田 雅 美
同 小 林 裕 和
同 大 橋 信 彦
主 文
1 特許庁が不服2012-22544号事件について平成25年6月13日に
した審決を取り消す。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
主文第1項と同旨
第2 事案の概要
1 特許庁における手続の経緯等(争いがない。)
原告は,意匠に係る物品「携帯電話機」に関する意匠につき,平成23年
7月14日を出願日とする意匠登録出願(意願2011-16265号。パリ
条約に基づく優先権主張・2011年4月27日(以下「優先日」という。,
)
大韓民国。以下「本願」という。また,本願に係る意匠を「本願意匠」とい
う。)をした。原告は,平成24年8月9日付けで拒絶の査定を受け,同年1
1月14日,拒絶査定に対する不服の審判(不服2012-22544号事
件)を請求した。特許庁は,平成25年6月13日,「本件審判の請求は,成
り立たない。」との審決をし,その謄本を,同月25日,原告に送達した。
2 本願意匠の形態(甲1)
本願意匠の形態は,別紙第1のとおりである。
3 審決の理由
審決の理由は,別紙審決書写しのとおりである。要するに,本願意匠は,本
願出願前の2011年3月2日に特許庁普及支援課が受け入れた同日発行の
『中華人民共和国意匠公報 11-09号』に記載された携帯情報端末機(公
開番号CN301476421S)の意匠(甲8。特許庁意匠課公知資料番号
第HH23002326号。以下「引用意匠」という。別紙第2参照)に類似
する意匠であり,意匠法3条1項3号に掲げる意匠に該当し,同項柱書の規定
により,意匠登録を受けることができない,というものである。
審決が主たるものとして認定した本願意匠と引用意匠の各形態の共通点及び
相違点は以下のとおりである(以下,各共通点及び相違点を示す場合は,審決
において付された符号を用いる。。
)
(1) 共通点
ア 「(A) 全体は,正面視の形状を隅丸の縦長略長方形とする扁平な筐体
とし,筐体正面は,その周囲にスペースを残し中央大部分を縦長略長方形
のタッチパネルとし,このタッチパネルの上方のスペース(以下「上スペ
ース」という。)に放音孔及びカメラレンズ(以下「正面カメラレンズ」
という。)を,また,下方のスペース(以下「下スペース」という。)に機
能キーを配置して,筐体正面全周を細縁枠(以下「正面周囲枠」とい
う。)で囲み,平底面視及び左右側面視すると,筐体は,平底面及び左右
側面が丸みを帯びて,背面部となだらかに連接し,いずれも全体が扁平な
蒲鉾形状を呈し,また,平面に音声出力端子,底面に外部接続端子部を設
け,筐体左右側面に機能キーを設け,背面視すると,四隅が隅丸で,全体
的に丸みを帯びた縦長略長方形状を呈し,背面上部にカメラレンズ(以下
「背面カメラレンズ」という。)を配置した点」
イ 「(B) 筐体は,正面視すると,縦の長さを横の長さの2倍弱の長さと
し,左右側面視すると,厚みは,周縁付近を除き筐体の縦の長さの10分
の1弱の厚みで上下方向に略同厚とした点」
ウ 「(C) タッチパネルは,その縦の長さを筐体の縦の長さの約3分の2
とし,横の長さは筐体の横の長さよりやや短くして,四隅を曲率半径のご
く小さい隅丸とした縦長略長方形状であり,タッチパネル周囲のスペース
についてみると,左右スペースの左右幅はごく細幅で,上下スペースの上
下幅は幅広である点」
エ 「(D) 放音孔を,上スペースの左右中央位置に,筐体の横幅の10分
の3程度の長さで細幅の略横長バー形状として配置し,正面カメラレンズ
を,上スペースの上下中央位置で,やや外方寄りの位置に,極小円形とし
て配置した点」
オ 「(E) ホームキーを,下スペースの略中心位置に,筐体の横幅の10
分の2程度の横幅の隅丸の枠付き横長略長方形状として配置し,メニュー
キーとバックキーを,ホームキーからそれぞれやや距離をおいた左右振り
分け状の対称位置に,メニューキーは,その全体の輪郭を小横長長方形状
として,バックキーは小略倒U字形状として配置した点」
カ 「(F) 背面カメラレンズを,背面視左上のコーナー付近に,周囲枠付
きの小円形状として配置した点」
キ 「(G) 機能キーを,筐体の左右両側面に1個ずつ,ひとつは側面やや
上方位置に短いものとして,もうひとつは側面中程位置に,共に略縦長バ
ー形状のものを配置し,音声出力端子を,平面の左端寄りの位置に,小円
形状として配置し,外部出力端子部を,底面の左右中央でやや前面寄りの
位置に,略小扁平横長長方形の下方両隅を切り欠いた形状として配置した
点」
(2) 相違点
ア 「(ア) 筐体の形状について,
本願意匠は,ごく僅かに正面が凹面,背面が凸面をなし,側面視でごく
緩やかな円弧状を呈する略湾曲板形状であり,筐体正面の四隅を曲率半径
のやや大きな隅丸とし,上下辺はともにごく緩やかに円弧状に膨らむ曲線
であり,正面周囲枠は,平底面視及び左右側面視すると,正面側にごく僅
かに窄まっているのに対して,
引用意匠は,正面が平坦面,背面も周辺部を除く大部分が正面と平行な
平坦面をなす,平板形状であり,筐体正面の四隅を曲率半径のやや小さな
隅丸とし,上下辺はとも直線であり,正面周囲枠は,この筐体周囲の平坦
面外周よりごく僅かに内側に細縁状に設けられた点」
イ 「(イ) 放音孔及び正面カメラレンズの態様について,
本願意匠は,放音孔が,その形状を略細幅半小判形状として,正面周囲
枠に接して設けられ,また,正面カメラレンズが,放音孔から右斜め下方
にやや離れた筐体のコーナーに近い位置に設けられたのに対して,
引用意匠は,放音孔が,その形状を略細幅小判形状として,上スペース
の上下中央位置に設けられ,また,正面カメラレンズが,放音孔のすぐ左
の位置に設けられた点」
ウ 「(ウ) メニューキーとバックキーの態様について,
本願意匠は,左にメニューキー,右にバックキーを,ホームキーと上下
中央揃えで配置しているのに対して,
引用意匠は,左にバックキー,右にメニューキーを,ホームキーと上揃
えで配置している点」
エ 「(エ) 背面の態様について,
本願意匠は,背面下方付近に横方向の区画細線があり,この細線は,左
右端部付近で略四半円弧状に曲がり,正面周囲枠に沿って,側面及び平面
を囲んでいるのに対して,
引用意匠は,背面中央に隅丸の縦長長方形状の区画細線があり,背面カ
メラレンズの下方に,極小円形状のフラッシュ部を設けた点」
オ 「(オ) 筐体周囲の機能キーの態様について,
本願意匠は,左右側面に設けられた2個の機能キーにつき,その形状を
略細幅半小判形状として,それぞれ正面周囲枠に接して設けられているの
に対して,
引用意匠は,その形状を略細幅小判形状として,正面周囲枠から僅かに
離れた位置に設けられ,更に,略細幅小判形状の機能キーが平面右側に1
個,また,略細幅小判形状の開閉用スライドが,底面の外部出力端子部の
両側にやや離れて2個設けられている点」
第3 原告主張の取消事由
以下のとおり,本願意匠と引用意匠は,意匠に係る物品が共通し,形態にお
いても共通性を有するとしても,意匠に係る異なる美感を有するものであり,
非類似の意匠というべきである。したがって,審決は取り消されるべきである。
1 共通点に関する評価の誤り
(1) 審決の認定する共通点は,いずれも,従来販売されてきたスマートフォ
ンとして一般的な形状であり,看者の注意を惹きやすい特徴的な部分(要
部)であるとはいえない。
また,審決は,共通点のうち,筐体の縦横・厚みの比率,平底面及び左右
側面が丸みを帯びて背面部となだらかに連接し,全体が扁平な蒲鉾状を呈し
ていること,正面のタッチパネルの上下にスペースを広く取った構成につい
て,共通の印象を強く与えると判断している。しかし,これらの共通点は,
従来販売されてきたスマートフォンに一般的に見られる点であり,類否判断
において重視されるべき要部ではない。本願意匠には,全体が弓状になって
いるという決定的な相違点が存在するのであり,審決のように上記共通点が
類否判断を支配しているとするのは不合理である。
(2) スマートフォンの用途,機能及び使用態様から,スマートフォンにおい
ては,携帯電話機としての機能を確保するために正面上部に放音孔を,正面
中央にユーザーインターフェイスとなるタッチパネルを,親指での操作を可
能とするために正面下部にホームキー等を,持っている手を避けるために正
面上部及び背部上部にカメラレンズを配置するなどの共通性を有さざるを得
ない。そのため,意匠の創作の幅も狭まり,上記の態様において共通性を有
さざるを得なくなる。そして,本願意匠に係る物品であるスマートフォンの
ユーザー,特に主たる購入者である若者は,デザインの細かい部分にまで着
目し,他機種とのデザインの差別化が図られる物品を購入する者である。
したがって,本願意匠と引用意匠の基本形状及び基本的構成態様に関する
共通点は,両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼさない。
(3) 共通点(D)の放音孔及び(E)の(正面)機能キーについて,本願意匠の放
音孔は,正面周囲枠に接した略細幅半小判形状であるのに対し,引用意匠の
放音孔は正面周囲枠から離れた正面上スペースの中央部に単なる略横長バー
形状であることから,正面上部の放音孔のデザインや配置位置については異
なっている。そして,スマートフォンが正面上部に放音孔,正面下部にホー
ムキーを配置するのは,その用途及び機能を確保するためにもたらされる共
通性にすぎず,両意匠の基調を形成するものではない。
したがって,放音孔及び機能キーの共通点も,両意匠の類否判断に大きな
影響を及ぼさない。
(4) 共通点(F)の背面カメラレンズ及び同(G)の側面の機能キーや端子相互の
位置関係等の各部の基本形状の共通性については,背面カメラレンズや側面
の機能キーなどの基本形状は,スマートフォンが片手に持って使用されると
いう使用形態を踏まえ,その用途及び機能を確保するために,一定の共通性
を有せざるを得ず,また,従来から一般的にあるスマートフォンが採用して
いる点である。したがって,上記の共通点は本願意匠の要部ではないし,ス
マートフォンである以上必然の点であるから,意匠の対比の際に重要ではな
い。また,これらの共通点が共通しているからといって,ユーザーにとって
は,スマートフォンとして共通するものという程度にとどまり,両意匠が共
通のデザインであるとの印象を強くするものではない。
したがって,背面カメラレンズや側面の機能キーなどの基本形状の共通点
は,両意匠について,看者に与える共通の印象を一層強くするものではない。
2 相違点に関する評価の誤り
(1) 相違点(ア)について
審決は,筐体の形状について,本願意匠の湾曲板形状を呈する筐体の形態
は参考意匠4(別紙第6参照)にも見られ,正面視すると,上下辺はごく緩
やかに円弧状に膨らむ曲線で,正面周囲枠は,平底面視及び左右側面視する
と,正面側にごく僅かに窄まる形態は参考意匠1(別紙第3参照)にも見ら
れ,いずれも公然知られたものであり,本願意匠の筐体の形態は,新規な形
態として看者の注意を惹くものではない,本願意匠の側面視の湾曲の程度,
正面視の上下辺の膨らみの程度は,ともに僅かで緩やかなものにすぎないと
して,相違点(ア)が共通点(A)に埋没する旨判断している。
しかし,本願意匠の筐体は内側前方に湾曲した形状であり,その背面も角
がない丸みを帯びた形状を有しており,手のひらに持ったときになじみやす
い形状をしているのに対して,引用意匠の筐体は,背面視で周囲に丸みが形
成されているが,全体的にフラットであり,手のひらに持った時には生硬な
印象を与える形状をしている。また,本願意匠の筐体の湾曲の度合いもエレ
ガントで看者に対して手のひらで包み込むようにフィットする柔らかな印象
を与え,全体的にフラットで生硬な印象を与える引用意匠とは,全く異なる
美観を生じさせるものである。
また,本願意匠と参考意匠1は,平面視で円弧状に膨らむ曲線で,平底面
視及び左右側面視すると,正面側にごく僅かに窄まる形態という点は共通す
るとしても,本願意匠は背面に凹凸がなく,手に包み込むことができる形状
であり,当業者といえども参考意匠1から本願意匠を容易に創作することが
できるものではない。
本願意匠と参考意匠4は,湾曲板形状を呈する筐体の形態こそ共通するも
のの,本願意匠は,その背面が角のない丸みを帯びた形状であり,手のひら
に持った時に馴染みやすい形状をしている。これに対し,参考意匠4は,そ
の背面が角を有した形状をしており,当業者といえども参考意匠4から本願
意匠を容易に創作することができるものではない。
以上によれば,審決の上記判断は誤りである。
(2) 相違点(イ)について
本件審決は,放音孔について,正面周囲枠に接した略細幅半小判形状とい
う態様が参考意匠2(別紙第4参照)や参考意匠3(別紙第5参照)にも見られ
ることから,本願意匠は,新規な形態として看者の注意を惹くものではない
旨判断した。
しかし,参考意匠2の放音孔は,縦0.5ミリ,横8ミリと非常に細く,
本願意匠の放音孔とは縦横の幅が大きく異なっており,意匠として目立たな
いものである。また,参考意匠3は,本願意匠よりも縦が長く全体にスマー
トな印象を与えており,相対的に,放音孔についても看者にとっては全く異
なる印象を与えるものである。
したがって,審決の上記判断は誤りである。
また,審決は,本願意匠及び引用意匠の放音孔の形状が略横長バー形状と
して上スペースの横中央に配していること及び正面カメラレンズが極小円で
あり,相違点(イ)はこれらの共通点の中に埋没してしまう程度のものにすぎ
ない旨判断した。
しかし,本願意匠の放音孔の形状は略細幅半小判形状で筐体上部から1ミ
リと縁に近く,正面周囲枠に接した位置に配置されているのに対して,引用
意匠の放音孔の形状は略横長バー形状(なお,審決は,引用意匠の放音孔の
形状が略細幅小判形状であると認定しているが,誤りである。)で筐体上部
から6ミリと縁から離れた正面中央付近の位置に配置されている。このよう
に,本願意匠及び引用意匠の放音孔は,その形状及び配置の位置が異なるこ
とから,筐体の形状の違いと相まって,本願意匠が柔らかい印象を与えるの
に対し,引用意匠はシャープな印象を与えるものとなっている。そして,審
決が述べるように放音孔がスマートフォンにおいて最も目に付く部位である
とすれば,上記のような相違は看者にとっては意匠の違いとして大きな印象
を与えることになるから,共通点の中に埋没してしまう程度の相違にすぎな
いとはいえない。
したがって,審決の上記判断は誤りである。
(3) 相違点(ウ)について
審決は,本願意匠と引用意匠のメニューキー及びバックキーの基本形状が
同じであり,位置が左右逆で,ホームキーに対して上下中央揃えか上揃えか
で異なることはありふれた変更にすぎず,両意匠の類否判断に及ぼす影響は
微弱というほかないと判断した。
しかし,スマートフォンにおいては,親指での操作を可能とするために正
面下部にホームキー等を配置せざるを得ず,審決が述べるようにホームキー
の配置がスマートフォンにおいて最も目に付く部位であるとすれば,上記の
ような相違であっても,看者にとっては意匠の違いとして印象を与えること
になる。
したがって,審決の上記判断は誤りである。
(4) 相違点(エ)について
審決は,スマートフォンの背面が正面ほど注目されることはない部位であ
り,細線の態様及び極小円形のフラッシュの有無にすぎない相違が類否判断
に及ぼす影響は微弱である旨判断した。
しかし,スマートフォンは,通常,利用者が片手に持って使用するもので
あるため,背面の態様,形状などは,手に持ったときの感触などと相まって,
ユーザーが非常に重視するところであるし,利用者以外の第三者にとって最
も目に付くところである。しかも,正面部に比べてデザイン的な空間が確保
でき,デザインの違いを強調するところである。したがって,背面部が正面
ほど注目されることはない部位であるという審決の判断の前提自体に誤りが
ある。
そして,本願意匠は背面左側にカメラレンズが配置されているだけで,背
部下部に背面カバーの細横線が本体との区別をするアクセントとなり,背面
にロゴなどもないため,本願意匠が全体的に丸みを帯びた形態であることと
相まって,看者に対して柔らかい優しい印象を与えている。これに対し,引
用意匠は,背面左側にカメラレンズとフラッシュが配置されているが,背部
中央部に上下角丸の長方形のロゴが配されているため,引用意匠が平板で構
成されフラットな形態であることと相まって,看者に対して全体としてスマ
ートかつシャープな印象を与えている。
このように,相違点(エ)の差異がかもし出す美感は,両意匠の全体の美感
の形成に強く作用する要素であって,僅かな差であるとはいえない。
したがって,審決の上記判断は誤りである。
(5) 相違点(オ)について
審決は,本願意匠の機能キーの態様が参考意匠1にも見られる形態であっ
て,新規な形態として看者の注意を惹くものではない,機能キーの形状,筐
体周囲における機能キーの基本的な配置及び機能キーに長短がある点が共通
していることから,相違点(オ)は,機能キーの共通点に埋没してしまう旨判
断した。
しかし,スマートフォンのユーザー,特に主たる購入者である若者がデザ
インの細かい部分にまで着目していることから,形状のみならず,その長短
などの違いは,その使い勝手だけでなく,意匠としての違いとしても関心の
示されるところであり,看者の注意を惹くものである。
また,スマートフォンは,通常,利用者が片手に持って使用することから,
(通話等の)ボリュームキーなどのキーを筐体左右の中央より上部に配置し,
また,機能の違うキーであることが手の感触で分かるようにするために,機
能キーに長短をつけるといった形で区別をせざるを得ない。このように,審
決が指摘する共通点は,スマートフォンの用途及び機能を確保するために求
められる基本的な形状の共通性にすぎず,両意匠の類否判断に大きな影響を
及ぼすものではない。
したがって,審決の上記判断は誤りである。
第4 被告の反論
以下のとおり,審決の認定判断に誤りはない。
1 共通点に関する評価の誤りについて
(1) タッチパネルを湾曲させたスマートフォンは本願出願前より既に公知と
なっており,本願意匠のみの新規な特徴とはいえない。スマートフォンは使
用時に片手に持ったり,画面を指で操作する関係から,筐体全体の形態はも
とより,機能キーの形状や配置,カメラレンズの配置等,詳細に確認される
ものであって,それら全てが,意匠の特徴部分となり得るのであり,タッチ
パネルを湾曲させたことのみを過大評価することはできないし,そもそも本
願意匠の湾曲の程度はごく僅かなものでしかない。
(2) 筐体全体の形態,機能キーや放音孔,カメラレンズの形状や配置におい
て様々な形態のスマートフォンが存在する(乙1)。したがって,本願意匠
の形態と引用意匠の形態の共通点はスマートフォンに一般的に見られる形態
とはいえず,類否判断において重視すべき要部ではないとはいえない。
(3) スマートフォンの各部の形状や配置は,その用途及び機能,ユーザーの
使いやすさを考慮した観点より工夫が施されるとしても,それらはスマート
フォンとして一義的に決定されるようなものではなく,依然として創作者に
は各部の形状や配置の創作には自由度がある。また,各部の形状は,需要者
にとって強く注意を惹く部分であって,意匠を対比する際に重要な特徴部分
であることに変わりはない。したがって,本願意匠の類否判断において,共
通点を重要な特徴部分とした審決に誤りはない。
(4) 原告の主張する放音孔の位置や形状の相違点は,審決において相違点と
して挙げ認定している。その上で,両意匠は(D)放音孔をホームキーより横
長のごく細幅の略横長バー形状とし,(E)ホームキーを一定の大きさを持つ
隅丸の枠付き横長長方形状として正面パネルの縦中央を揃えて上下に配置し
た態様において共通していると評価したのであり,審決における両意匠の共
通点の認定に誤りはない。
また,放音孔を正面上部に,ホームキーを正面下部に配置することは,ス
マートフォンとしての用途及び機能を確保する上で,配慮が必要なことがあ
るとしても,当該部分の位置や大きさ及び形状には,何の制約も存在せず,
一義的に決定されるものではない。
(5) 背面カメラレンズ及び機能キーの配置や形状が,従来から一般的に見ら
れるものであったとしても,その配置や形状には自由度があり,背面カメラ
レンズを背面中央上部に配置するスマートフォン等,様々な態様が見られる
中にあって,本願意匠と引用意匠が背面カメラレンズ及び機能キーの配置や
形状を同じようなものとしているという点を両意匠の共通点として挙げるこ
とに何ら問題はなく,審決の認定に誤りはない。
2 相違点に関する評価の誤りについて
(1) 相違点(ア)について
本願意匠と引用意匠の筐体の形状には,原告の主張するような違いはある
ものの,本願意匠のように液晶画面を湾曲させたスマートフォンが既に公知
となっている以上,他の共通点を無視して,筐体の形状のみにより類否判断
を行うことは,類否判断を片寄ったものとしてしまい,物品全体を観察し,
意匠の特徴部分について総合的に判断を行うことができなくなる。
審決は,本願意匠と引用意匠の筐体における相違点を含め,その他の両意
匠の共通点及び相違点を総合的に評価し,周辺の先行意匠の実態を加味した
上で,湾曲板状を呈する筐体の形態が本願出願前より広く見られることから,
本願意匠のみの新規な特徴とはいえず,また,その湾曲の程度もごく僅かで
あるため,両意匠の筐体の形態における相違点が類否判断に及ぼす影響は微
弱なものにとどまる,としたものであり,誤りはない。
参考意匠1は,本願意匠と同様に湾曲した液晶画面を有し,かつ,本願意
匠を正面視すると,上下辺はごく緩やかに円弧状に膨らむ曲線で,正面周囲
枠は,平底面視及び左右側面視すると,正面側にごく僅かに窄まる形態が,
本願出願前に既に公知となっている事実を示したものであり,そのような特
徴が本願意匠のみの新規なものではなく,類否判断に与える影響は相対的に
低いことを示したものであって,創作の容易性を主張するものではないし,
本願意匠と参考意匠1との背面の凹凸の相違を問題とするわけでもない。
参考意匠4は,正面が凹面,背面が凸面であって,側面視ごく緩やかな円
弧状をなす湾曲板形状を呈する筐体の形態が,本願出願前より公知となって
いた事実を示すために引用したものであり,本願意匠の創作の容易性を主張
するものではない。したがって,湾曲させた筐体が公知となっていた事実以
外の,参考意匠4の背面が角を有しているか否かという具体的な形状につい
て本願意匠と比較するものではない。
(2) 相違点(イ)について
参考意匠2及び参考意匠3は,両意匠の相違点である正面周囲枠に接した
略細幅半小判形状の態様の放音孔が,本願出願前より公知となっていた事実
を示したものであり,放音孔の大きさや携帯電話機全体との比率を問うため
の例示ではない。
放音孔の形状については,端部形状が相違するため,些細に観察すれば異
なる形状であるとしても,端部の大きさからしてごく細部の相違であって,
両意匠ともに略横長バー形状といえる範囲内であるから,意匠全体として見
た場合には,類似するものである。また,配置の位置についても,上スペー
スの横中央に位置する点で共通する上に,参考意匠2及び参考意匠3に見ら
れるように,正面周囲枠に接して配置されること自体に特徴はない。これら
のことを踏まえた上で,審決は,放音孔がこの種物品において最も目に付く
部位に配置されていたとしても,相違点に関わる形状や配置位置は,本願意
匠のみに見られる新規な特徴ではないことから,相違点は共通点の中に埋没
してしまう程度にすぎないとしたもので,誤りはない。
(3) 相違点(ウ)について
ホームキーなどは,この種物品において最も目に付く部位に配置されてい
るものの,3つのキーの相対的な位置関係の相違は,ありふれた変更の程度
にすぎない。他方,ホームキーなどを正面下部に配置していないスマートフ
ォンも多数存在する。審決は,正面下部にホームキーなどを配置することの
共通性は大きく,意匠全体の中での配置や形状が極めて共通していることか
ら,相違点が類否判断に及ぼす影響は微弱であるとしたのであり,審決に誤
りはない。
(4) 相違点(エ)について
本願意匠及び引用意匠はともに,背面側に細線などが施されているものの,
そこに凹凸などはないため,たとえ手に持ったときの感触などと相まった点
を考慮したとしても,背面側に特徴的な差異は見当たらない。また,手に持
って使用することから,使用時には背面側は手で隠れていることが多いため,
背面側を第三者が目にすることは少ない。背面側のカメラレンズを使用して
写真撮影などを行う場合においても,第三者は距離をおいて観察する程度で
あって,背面が正面ほど注目される機会は少ない。したがって,相違点(エ)
が類否判断に及ぼす影響は微弱であるとした審決に誤りはない。
(5) 相違点(オ)について
機能キーの配置や形状が従来から一般的に見られるものであったとしても,
その配置や形状には自由度があり,様々な態様が見られる中にあって,本願
意匠と引用意匠が機能キーの配置や形状を同じようなものとしているという
点を,両意匠の共通点として挙げることに何ら問題はなく,審決に誤りはな
い。
原告は,相違点(イ)ないし(オ)についてそれぞれ看者が強く注意を惹く部
分に関する相違点であり,類否判断に及ぼす影響は大きい旨共通して主張し
ている。しかし,看者が強く注意を惹く部分とは,同時に,それぞれの部分
における両意匠の共通点についても,看者が強く認識するものであって,両
意匠の相違点のみを看取するものではない。看者が強く注意を惹く特徴部分
についての共通点の印象と相違点の印象とを比較し,総合的に判断した結果,
各相違点はいずれも両意匠の共通点に埋没する程度のものであるとした審決
の判断に誤りはない。
第5 当裁判所の判断
当裁判所は,本願意匠と引用意匠とは類似するとはいえないので,本願意匠
は意匠法3条1項3号に該当するとした審決の認定判断には誤りがあると判断
する。その理由は,以下のとおりである。
1 類否判断の前提となる事実
(1) 本願意匠と引用意匠が,それぞれその意匠に係る物品を共通にしている
ことは当事者間に争いがない。
(2) 本願意匠と引用意匠の形態に前記第2の3(1)記載の共通点があること,
及び,本願意匠と引用意匠の形態に前記第2の3(2)記載の相違点があるこ
と(審決が引用意匠の放音孔の形状が略細幅小判形状であるとの認定してい
る点を除く。)は当事者間に争いがない。
また,甲第8号証によれば,引用意匠における放音孔の態様は,小判形状
のものを横に細長く形成したものと認められるので,これを略細幅小判形状
とした審決の認定が誤りであるとはいえない。
(3) 携帯電話の意匠において,筐体の正面が凹面,背面が凸面の側面視がご
く緩やかな円弧状をなす湾曲板形状を呈する筐体の形態は,優先日前に公知
である(甲9の1,乙12)。
また,正面視すると,上下辺はごく緩やかに円弧状に膨らむ曲線で,正面
周囲枠は,平底面視及び左右側面視すると,正面側にごく僅かに窄まる形態
も,優先日前に公知である(甲9の1)。
2 両意匠の類否判断
(1) 両意匠に係る物品はいずれもタッチパネルや機能キーを操作し,インタ
ーネットに接続して情報通信をする携帯端末機(スマートフォン)である。
スマートフォンの主たる需要者は,スマートフォンを選択し,購入する一
般の利用者であると解される。
そして,その形状に照らすと,需要者がスマートフォンを使用するときは,
片手で筐体を背後から握るように持ち,同手の指で機能キーや画面を操作す
るか,又は,もう一方の手の指で機能キーや画面を操作することとなる。ま
た,スマートフォンの機能を発揮するためには,まず,電源キーを含む機能
キーを操作し,電源入力後はタッチパネル式画面及び機能キーを使い分けて
操作し,通話時には放音孔に耳を当てる。さらに,スマートフォンは,一般
的に多様な機能を搭載することが可能であり,それを利用するためには,画
面に表示されるアイコン等を操作することで機器への指示を入力し,その結
果についても画面に表示出力される(弁論の全趣旨)。
以上の物品の性質,用途,使用方法に照らすと,需要者がスマートフォン
を観察する際には,意匠全体の支配的な部分を占める全体の形状,及び一見
して目に入り,かつ,操作の際に最も使用頻度が高いものと考えられるタッ
チパネル画面や機能キーを含めた正面視の形状,並びにこれらのまとまりが
最も注意を惹く部分であるということができる。他方,背面及び周側の形状
は,正面と比べると需要者の注意を惹く程度は弱いものということができる。
(2) そして,両意匠は,全体形状及び正面視の形状において,共通点(A)ない
し(E)において共通している。
もっとも,本願意匠は,全体の形状において,相違点(ア)に係る,ごく僅
かに正面が凹面,背面が凸面をなし,側面視でごく緩やかな円弧状を呈する
略湾曲板形状であり,筐体正面の四隅を曲率半径のやや大きな隅丸とし,上
下辺はともにごく緩やかに円弧状に膨らむ曲線であり,正面周囲枠は,平底
面視及び左右側面視すると,正面側にごく僅かに窄まっている形態を有して
いる。そして,これらの形態により,全体として丸みを帯びた柔らかな印象
を与えるものであるということができる。
これに対し,引用意匠は,正面が平坦面,背面も周辺部を除く大部分が正
面と平行な平坦面をなす,平板形状であり,筐体正面の四隅を曲率半径のや
や小さな隅丸とし,上下辺はとも直線であり,正面周囲枠は,この筐体周囲
の平坦面外周よりごく僅かに内側に細縁状に設けられた形態を有している。
そして,これらの形態により,本願意匠と比べると,全体としてよりシャー
プかつフラットな印象を与えるものということができる。
そうすると,本願意匠と引用意匠とは,意匠に係る物品がいずれもスマー
トフォンであり,その全体の形状及び正面視の形状に関し,共通点(A)ない
し(E)において共通するものではあるけれども,上記の相違点に係る形態に
おいて看者に異なる美感を与えており,全体としてみても上記共通点から生
じる印象に埋没するものではないというべきである。したがって,本願意匠
は,引用意匠に類似するということはできない。
3 被告の主張について
被告は,タッチパネルを湾曲させたスマートフォンは本願出願前より既に公
知となっており,本願意匠のみの新規な特徴とはいえないし,スマートフォン
は使用時に片手に持ったり,画面を指で操作する関係から,筐体全体の形態は
もとより,機能キーの形状や配置,カメラレンズの配置等,詳細に確認される
ものであって,それら全てが,意匠の特徴部分となり得るのであり,タッチパ
ネルを湾曲させたことのみを過大評価することはできないし,そもそも本願意
匠の湾曲の程度はごく僅かなものでしかないので,両意匠の筐体の形態におけ
る相違点が類否判断に及ぼす影響は微弱なものにとどまる旨主張する。
そして,前記1(3)認定のとおり,携帯電話の意匠において,筐体の正面が
凹面,背面が凸面の側面視がごく緩やかな円弧状をなす湾曲板形状を呈する筐
体の形態,及び,正面視すると,上下辺はごく緩やかに円弧状に膨らむ曲線で,
正面周囲枠は,平底面視及び左右側面視すると,正面側にごく僅かに窄まる形
態は,それぞれ優先日前に公知である。
しかし,乙第1号証によれば,携帯電話の意匠においては,本願意匠のよう
な筐体の正面が凹面,背面が凸面の側面視がごく緩やかな円弧状をなす湾曲板
形状を呈する筐体の形態ではなく,むしろ,正面及び背面の大部分が平坦面で
かつそれぞれが平行な平坦面をなす平板形状の筐体の形態も多数見受けられる
ことが認められる。そうすると,本願意匠の上記形態は,スマートフォンの形
態としてありふれたものであるとまでいうことはできない。しかも,上記認定
のとおり,上記の形態は,本願意匠の全体の形状という最も需要者の注意を惹
きやすい部分の一つを構成する形態であることも併せ考えると,上記認定のと
おり,筐体の正面が凹面,背面が凸面の側面視がごく緩やかな円弧状をなす湾
曲板形状を呈する筐体の形態が公知のものであるとしても,直ちに本願意匠の
上記形態が,共通点(A)の形態に埋没してしまい,需要者の注意を惹くもので
ないということはできない。また,上記の点に照らすと,タッチパネルが湾曲
した形態を有すること自体が全体の形状の美観に与える影響が大きいものであ
るというべきであり,その程度が僅かであるとしても,やはり,需要者の注意
を惹くものでないということはできない。
なお,被告は,画像を表示するための画面を凹面として湾曲させることは,
スマートフォンを含む画面(液晶画面等)を使用する物品においては,本願出
願前よりごく普通に見受けられるものであった(乙2ないし6)とか,スマー
トフォンにおいて,画面を湾曲させたものも本願出願前に既に公知となってい
るものが見受けられる(乙7ないし11)とも主張する。しかし,スマートフ
ォン以外の物品において画像を表示するための画面を凹面として湾曲させる形
態が公知であったとしても,用途や使用方法が大きく異なる以上,そのことを
もって直ちにスマートフォンにおいて画像を表示するための画面を凹面として
湾曲させる形態が需要者の注意を惹くものでないことの根拠とすることはでき
ない。また,スマートフォンにおけるものについても,本願意匠とはその形態
が大きく異なるもの(乙10,11)も存在する以上,上記乙号各証に示され
たスマートフォンないしはその意匠に画面を湾曲させた形態のものが存在する
からといって,直ちに上記認定が左右されるものとはいえない。
また,乙第1号証によれば,正面視における上下辺の形態や,正面周囲枠の
形態についても種々のものが見られることが認められる。そうすると,本願意
匠の筐体正面の四隅を曲率半径のやや大きな隅丸とし,上下辺はともにごく緩
やかに円弧状に膨らむ曲線であり,正面周囲枠は,平底面視及び左右側面視す
ると,正面側にごく僅かに窄まっている形態がありふれたものであるとまでい
うことはできない。その上,上記形態は,本願意匠の最も需要者の注意を惹き
やすい部分の一つを構成するものであることも併せ考えると,正面視すると,
上下辺はごく緩やかに円弧状に膨らむ曲線で,正面周囲枠は,平底面視及び左
右側面視すると,正面側にごく僅かに窄まる形態が本願出願前に公知であると
しても,本願意匠の上記形態が共通点(A)の形態に埋没してしまい,需要者の
注意を惹くものではないということはできない。
そして上記の各形態のまとまりにより,本願意匠は,引用意匠と異なった美
観を生じさせることは前記2認定のとおりである。
よって,被告の上記主張を採用することはできない。
4 まとめ
以上によれば,本願意匠と引用意匠とは類似するとはいえず,意匠法3条1
項3号に該当しないから,審決の判断は誤りであり,原告主張の取消事由は理
由がある(なお,当裁判所の前記判断は,本願意匠の意匠法3条1項3号該当
性についての審決の判断に対するものであり,当然ながら,本願意匠の同法3
条2項について何ら判断するものではない。)。
第6 結論
よって,原告の請求を認容することとし,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官 設 樂 一
裁判官 西 理 香
裁判官 神 谷 厚 毅
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