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平成16(ネ)3655損害賠償等請求控訴事件

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裁判所 東京高等裁判所
裁判年月日 平成16年12月15日
事件種別 民事
法令 商標権
不正競争防止法2条1項1号1回
キーワード 差止2回
損害賠償1回
主文
事件の概要

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判決文

平成16年(ネ)第3655号 損害賠償等請求控訴事件
平成16年10月6日口頭弁論終結
(原審・東京地方裁判所平成15年(ワ)第10016号,平成16年5月28日
判決)
     判    決
 控訴人 キタムラ機械株式会社
 訴訟代理人弁護士 升永英俊
 訴訟復代理人弁護士 野木正彦
 被控訴人 株式会社北村製作所
 訴訟代理人弁護士 木下健治
 補佐人弁理士 唐木浄治
     主    文
 本件控訴を棄却する。
 当審における控訴人の追加請求を棄却する。
 控訴費用(当審における追加請求につき生じたものを含む。)は控訴人の負担と
する。
     事実及び理由
第1 控訴人の求めた裁判
 1 原判決を取り消す。
 2 被控訴人は,控訴人に対し,3億9300万円及びこれに対する平成15年
5月23日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え(当審における追加
請求を含む。)。
 3 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。
 4 2,3につき仮執行の宣言
第2 事案の概要
 1 手続の経緯
 (1) 控訴人は,原審において,被控訴人が被控訴人標章(原判決別紙「被告標章
目録」1ないし6記載の各標章)を使用したことについて,(ア) 主位的に,本件合
意(原判決別紙「本件合意内容」)に違反すると主張して,「乙(被控訴人)は,
本件商標(商標「KITAMURA」)及びこれに類似する標章を,日本国その他
一切の国及び地域において,今後一切使用しない。」(2条),「乙(被控訴人)
は,本合意に反して,乙(被控訴人)の取り扱い製品について本件標章又はこれに
類似する標章を使用した場合(乙(被控訴人)の製品を販売する業者が使用した場
合を含む。),甲(控訴人)に対して違反行為ごとに違約金100万円を支払
う。」(7条)との合意に基づき,被控訴人標章の使用の差止め,違約金9億84
00万円のうち3億6000万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日(平成15
年5月23日)から支払済みまでの民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支
払を求め,(イ) 予備的に,不正競争防止法2条1項1号所定の不正競争行為に当た
ると主張して,同法3条,5条に基づき,被控訴人標章の使用の差止め,損害とし
て2億5766万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日(平成15年5月23
日)から支払済みまでの民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め
た。
 (2) 原判決は,(ア) 主位的請求について,被控訴人標章1,3ないし6は本件
合意の「本件標章又はこれに類似する標章」に該当しない,被控訴人標章2は本件
合意の「本件標章又はこれに類似する標章」に該当するが,被控訴人が本件合意締
結後にこれを使用したことは認められないと判示し,また,(イ) 予備的請求につい
て,被控訴人標章1,3,4及び6は周知の控訴人使用標章(原判決別紙「原告商
標目録」3記載の標章)に類似しない,被控訴人標章2及び5は周知の控訴人使用
標章に類似するが,被控訴人が本件合意締結後にこれを使用したことは認められな
いと判示して,控訴人の請求をいずれも棄却した。
 (3) 控訴人は,原判決が,主位的請求のうち被控訴人標章2に係る違約金支払請
求を棄却したことを不服として控訴し,さらに,当審において,金額を3億930
0万円に拡張するとともに,遅延損害金の割合を商事法定利率の年6分に拡張し
た。
 2 争いのない事実,争点等
 争いのない事実及び争点は,原判決の「第2 事案の概要等」の「1 争いのな
い事実」及び「3 本件の争点」に記載のとおりであり,また,争点に関する当事
者の主張は,原判決の「第3 争点に関する当事者の主張」に記載のとおりである
から,これを引用する。
第3 当裁判所の判断(当審における控訴人の主張を含む。)
 1 当裁判所も,被控訴人標章2に係る違約金の支払請求は,理由がないものと
判断する。その理由は,2において,当審における控訴人の主張とこれに対する判
断を付加するほかは,原判決の「第4 当裁判所の判断」に記載のとおりであるか
ら,これを引用する。
 2 当審における控訴人の主張とこれに対する判断
 (1) 控訴人は,平成15年7月に,被控訴人の販売代理店である株式会社兼松K
GK金沢営業所が,控訴人の取引先である山崎機工株式会社の依頼に応じて,被控
訴人製品のカタログ(総合カタログ(甲40),KNC-20F(甲4
1),KNC-30FA/30FP(甲42)及びTX80(甲43))を提供したことがあるから,
このことに照らすと,被控訴人は,本件合意締結後の平成12年2月から平成15
年3月までの間に,上記カタログに記載された被控訴人製品を,少なくとも393
台販売した,と主張する。
 (2) しかし,仮に被控訴人の販売代理店が控訴人の取引先に被控訴人製品のカタ
ログを提供したことがあったと認められるとしても,このことから,直ちに,被控
訴人が上記カタログに記載された被控訴人製品を少なくとも393台販売したこと
を認めるには足りない。
 (3) また,甲103,乙23の1ないし3及び弁論の全趣旨によれば,(ア) 控
訴人の取引先である山崎機工株式会社高岡営業所のAは,平成15年7月20日過
ぎころ,控訴人の専務取締役であるBから,被控訴人のKNC-20G,KNC-30FA,TX70及
びTX80のカタログと価格を提示してほしいと依頼され,その翌日,株式会社兼松K
GK金沢営業所のCに電話して,上記4種類のカタログの送付と価格の見積もりを
依頼した,(イ) Cは,自社にカタログがなかったので,直接被控訴人に電話して,
カタログの送付を依頼し,その後,被控訴人から郵送されてきたカタログを,さら
にAに郵送した,(ウ) Aは,同月末か翌月初めに,郵送されたカタログを受け取
り,カタログが総合カタログとKNC-20F,KNC-30FA/30FP及びTX80の製品カタログで
あることを確認して,その翌日,これをBに手渡した,(エ) Cは,被控訴人に電話
して,被控訴人のKNC-20G,KNC-30FA,TX80及びTX75の価格と仕切価格,納期等を教
えてもらい,同年8月7日,ファクシミリ連絡書(甲47)を作成して,ファクシ
ミリでこれをAに送付した,(オ) Aは,ファクシミリ連絡書の送付を受け取り,当
日,ファクシミリにより,これをさらにBに送付した,との事実が認められる。
 そして,控訴人は,上記カタログが,甲40ないし43であると主張する。しか
し,上記カタログが甲40ないし43であることについては,Aの陳述書(甲10
3)のほかに,的確な証拠はなく,Aの陳述書の信憑性については慎重に検討せざ
るを得ない。まず,上記認定事実によれば,Aが依頼したのは
KNC-20G,KNC-30FA,TX70及びTX80であるのに対し,郵送されたカタログは総合カタ
ログとKNC-20F,KNC-30FA/30FP及びTX80の製品カタログであり,価格が提示された
のはKNC-20G,KNC-30FA,TX80及びTX75であって,いずれも齟齬しているのである
が,証拠上,AがこれについてCに疑義を質したり,依頼したカタログの再送付を
依頼したりした形跡は認められない。また,乙23の4によれば,被控訴人は,平
成15年3月にKNC-20Fの型式をKNC-20Gに変更したことが認められるところ,被控
訴人が,KNC-20Gのカタログの送付を依頼されていながら,あえて変更前の型式の
KNC-20Fのカタログを送付するとは通常考え難い(同様に,被控訴人が,TX70のカタ
ログの送付を依頼されていながら,その送付をしないというのも考え難い。)。さ
らに,控訴人が本件訴えを提起したのは平成15年5月7日であり,BがAに被控
訴人製品のカタログと価格の提示を依頼したのは,上記認定のとおり同年7月20
日過ぎころというのであるから,取引の一環としてではなく,本訴の証拠の収集を
目的としたものと疑われても仕方がないと考えられるところ,控訴人が当時このほ
かにも種々の手段を講じて被控訴人製品のカタログを入手しようとしていたであろ
うことも,当然に疑われることは避けられないのであるから,控訴人としては,甲
40ないし43を可及的速やかに書証として提出するとともに,併せてその入手経
路についても遅滞なく具体的に主張立証すべきものであった。しかるに,控訴人
は,平成15年9月4日の原審における弁論準備手続期日に甲40ないし43を提
出していながら(同号証を含む書証の証拠説明書の提出日は同年8月29日),
「最近原告が新たに入手した」(同日付け原告準備書面(3)12頁)としただけで,
その入手経路等について具体的で明確な釈明をせず,本件合意書7条に違反する事
実があったことについて主張も立証もしなかったところ,当審に至ってようやく上
記のような入手経路等を主張し,甲103を提出するようになったのである。以上
のような事情を併せ考えると,Aの前記陳述書(甲103)は,にわかに採用する
ことができない。
 そうであってみれば,被控訴人あるいはその販売代理店である株式会社兼松KG
Kが,平成15年7月に,甲40ないし43を提供したとの控訴人の主張について
は,証拠上これを認めることはできないものといわざるを得ない。
 (4) したがって,当審における控訴人の上記主張は,採用することができない。
第4 結論
 以上のとおり,被控訴人標章2に係る違約金の支払請求は理由がなく,本件控訴
は理由がないから,これを棄却すべきであり,また,当審における控訴人の追加請
求は理由がないから,これを棄却すべきである。
  東京高等裁判所知的財産第4部
         裁判長裁判官     塚  原  朋  一
            裁判官     塩  月  秀  平
            裁判官     髙  野  輝  久

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