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平成15(行ケ)471審決取消請求事件

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裁判所 東京高等裁判所
裁判年月日 平成16年3月25日
事件種別 民事
法令 商標権
商標法50条1回
民事訴訟法61条1回
キーワード 審決21回
許諾4回
商標権2回
主文
事件の概要

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判決文

平成15年(行ケ)第471号 審決取消請求事件
平成16年2月19日口頭弁論終結
         判      決
   原      告    キス ネイル プロダクツ インコーポレイテッド
    訴訟代理人弁理士    稲 葉 良 幸
    同           吉 野 正 巳
    同           内 田 佐江子
    同           白 石 和 泰
   被      告    株式会社伊勢半
    訴訟代理人弁護士    伊 藤   真
   訴訟代理人弁理士    古 関   宏
     主      文
    1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
3 この判決に対する上告及び上告受理の申立てのための付加期間を30
日と定める。
    事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
1 原告
 特許庁が取消2000-31258号事件について平成15年6月17日に
なした審決を取り消す。
 訴訟費用は被告の負担とする。
2 被告
 主文1,2と同旨
第2 当事者間に争いのない事実
 1 特許庁における手続の経緯
 被告は,「キッス」の片仮名文字と「KISS」の欧文字とを2段に書して
成り,商品区分第21類「化粧用具(「電気式歯ブラシ」を除く。)」を指定商品
とする,登録第3107025号商標(平成5年3月2日商標登録出願,平成7年
12月26日商標登録。以下「本件商標」という。)の商標権者である。
 原告は,平成12年10月23日,被告を被請求人として,商標法50条の
規定に基づき,その指定商品に係る本件商標の登録を取り消すことについて審判を
請求し,この請求は,そのころ登録された(以下「本件請求登録」という。)。特
許庁は,同請求を取消2000-31258号事件として審理し,その結果,平成
15年6月17日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄
本を同年6月27日に原告に送達した。
2 審決の理由
 別紙審決書写しのとおりである。要するに,「被請求人提出に係る乙第3号
証(判決注・本訴乙第3号証)によれば,被請求人は,本件商標と社会通念上同一
と認められる「Kiss」の文字の表示(判決注・以下「本件表示」という。)を
直営店店頭において使用していることを確認し得る。そして,同店舗においては,
本件審判請求に係る商品である「パフ」,「ブラシ」等の商品を販売していた事実
が認められるものであり,その取扱に係る店舗は,本件取消審判請求の登録前3年
以内であることが証明されている。」(審決書5頁末段~6頁1段),「本件商標
の使用は,直接商品に付して使用しているものではないとしても,商標法第2条第
3項第8号で規定する,請求に係る商品についての広告使用に当たるものといえ
る。そうとすれば,被請求人(商標権者)は,本件商標を本件審判請求の登録前3
年以内に日本国内において,請求に係る指定商品中に包含される「パフ,ブラシ」
について使用していたというべきである。したがって,本件商標は,商標法第50
条の規定により,請求に係る商品について,取り消すことはできない。」(審決書
6頁3段~5段)とするものである。
第3 原告主張の審決取消事由の要点
  審決は,被告が,本件請求登録前3年以内に,その直営店の店頭において,本
件表示を使用していた,と誤って認定しただけでなく(取消事由1),同店舗の店
頭での本件表示の使用を,化粧用具についての使用であると誤って解釈し(取消事
由2),その結果,誤った結論に至ったものであるから,取り消されるべきであ
る。
1 取消事由1(本件表示の使用についての事実誤認)
 審決は,前記のとおり,被告が,本件請求登録前3年以内に,その直営店の
店頭において,本件表示を使用していた,と認定した。しかし,審決のこの認定
は,誤りである。
(1) 審決が被告の直営店と認定した店舗(以下「本件店舗」という。)は,被
告が経営する店舗ではない。本件店舗の経営は,被告及び被告の子会社である訴外
株式会社キスミーコスメチックス(以下「訴外キスミー」という。)とは,別会社
によるものである。被告と本件店舗との関係は,単に,訴外キスミーが,本件店舗
に社員を派遣している,というだけのものである。
(2) 本件店舗の営業が平成12年9月1日ころから行われたとしても,その当
時からその店頭に本件表示が使用されていたことは,確認することができない。
2 取消事由2(本件店舗の店頭広告の解釈の誤り)
 最高裁判所昭和43年2月9日判決(昭和42年(行ツ)第32号)は,
「商標の使用があるとするためには,当該商標が,必ずしも指定商品そのものに付
せられて使用されていることは必要でないが,その商品との具体的関係において使
用されていることを必要とする」としている。これによれば,本件店舗の店頭看板
に本件表示が使用されているとしても,この店頭看板に記載された商標と,店内で
販売される指定商品との間にどのような具体的関係,結び付きが見られるかによっ
て,当該商品についての使用といえるかどうかが決まることになる。審決は,この
具体的関係を明らかにしないまま,漫然と,本件店舗の店頭看板に本件表示が使用
され,その店内で「パフ」,「ブラシ」等の化粧用具が販売されているから,本件
表示は,化粧用具の広告として使用されていることになる,と判断している。しか
し,この判断は,上記最高裁判決に反する解釈を前提にするものであり,誤りであ
る。
 本件店舗の名称は,「エクサイト」であり,本件表示は,本件店舗の名称で
はない。また,前述のとおり,本件店舗の営業主体は,被告でも訴外キスミーでも
ない。このような状況では,本件表示は,本件店舗で販売される,本件表示を使用
した商品を広告したものでしかあり得ない。本件店舗では,本件表示は,化粧品に
付されていただけで,化粧用具には付されていなかった。本件店舗では,被告以外
の者が製造,販売した化粧用具は販売されていたものの(甲第10号証(以下枝番
は省略する。)),被告が製造,販売し,本件表示を付した化粧用具は販売されて
いないのである。結局のところ,本件表示は,化粧品の広告のために使用されてい
ただけで,化粧用具の広告のためには使用されていなかったのである。
第4 被告の反論の骨子
 審決の認定・判断は,正当であり,審決に原告主張のような違法はない。
1 取消事由1(本件表示の使用についての事実誤認)について
 被告は,その子会社である訴外キスミーに本件商標の使用を許諾し,訴外キ
スミーは,平成12年5月19日から,本件店舗の店頭において,本件表示を使用
して,化粧用具を販売してきたものである。
2 取消事由2(本件店舗の店頭広告の解釈の誤り)について
 訴外キスミーは,化粧用具を販売する本件店舗の店頭の看板において,本件
表示を使用し,化粧用具名も記入するそのレシートや納品書にも本件表示を使用し
ている。このような訴外キスミーの本件表示の使用は,化粧用具についての使用に
当たるというべきである。
第5 当裁判所の判断
1 取消事由1(本件表示の使用についての事実誤認)について
(1) 本件店舗は,店舗名を「エクサイト」(XSITE),その所在地を相模
原市(以下省略)とするものであり,訴外キスミーが同店舗を借り受け,化粧品及
び化粧用具等の専門店として営業しているものである(乙第3,第5,第8号
証)。訴外キスミーは,平成12年5月19日(金曜日)に本件店舗を開店してお
り(乙第5,第8,第9号証),その開店時から,本件店舗の内部壁面や宣伝用看
板等の中央に大きな文字で本件表示を付した上で,同店舗において,化粧品ととも
に,「ローション用マスクシート」,「コンパクト」,「アトマイザー(噴霧
器)」,「アイラッシュカーラー(まつ毛カール器)」,「化粧用はけ」,「付け
まつ毛(アイラッシュ)」などの化粧用具を,販売している(乙第3,第5,第
9,第10,検乙第1ないし第3号証)。
 原告は,本件店舗にその開店時から本件表示が使用されていたことは確認
することができない,と主張する。しかし,本件店舗が平成12年5月19日(金
曜日)に開店され,そのときから本件表示がその看板等に使用されていることは,
前掲乙第5号証の開店当時の写真,同乙第8号証の本件店舗の賃貸借契約書,同乙
第9号証の出庫案内表(入庫表)から明らかである。
(2) 訴外キスミーが被告の子会社であることは争いがない。被告は,子会社で
ある訴外キスミーに本件商標の使用を許諾し(弁論の全趣旨で明らかである。),
訴外キスミーは,本件商標と社会通念上同一と認められる本件表示を本件店舗にお
いて,上記のとおり使用してきたものである。被告が本件表示をその直営店店頭に
おいて使用してきたとの審決の認定は,正確には誤りであり,本来は,被告がその
子会社である訴外キスミーに使用許諾をし,訴外キスミーが,その経営する本件店
舗において本件表示を使用してきた,と認定すべきであったということができる。
しかし,被告がその子会社に使用許諾し,この子会社が本件表示を使用してきたも
のである以上,不使用取消の成否の検討に当たっては,被告が直接本件表示を使用
してきたのと同様に扱っても,結論に関係するような誤りにはならないというべき
である。
  原告は,本件店舗の経営が,被告及び訴外キスミーとは別会社によるもの
である,と主張する。確かに,乙第4号証(訴外キスミー作成の疎明書)には,訴
外キスミーが,被告製造に係る化粧品及び化粧用具を販売するため,「平成11年
9月4日以来全国に展開するKiss各店舗へ当社社員を派遣駐在の上,」本件表
示を付した商品を販売してきたとの記載がある。しかし,訴外キスミーが全国に展
開する「Kiss」各店舗の中には,同社が第三者に店舗の経営を委託しているも
のもあるため(乙第3号証),乙第4号証(上記疎明書)では,「当社社員を派遣
駐在の上」と記載したものであるにすぎず,本件店舗が訴外キスミーの経営に係る
ものであることは,前掲乙第8,第9号証から明らかである。
2 取消事由2(本件店舗の店頭広告の解釈の誤り)について
 本件店舗は,化粧品及び化粧用具等を販売する専門店であり,被告の子会社
である訴外キスミーの経営に係るものである。本件店舗においては,被告の製造に
係る本件表示を付した化粧品,並びに,本件表示とは異なる商標が付されているも
のの,被告の製造に係る「ローション用マスクシート」,「コンパクト」,「アト
マイザー(噴霧器)」などの化粧用具等が販売され,その店頭及び店内の看板に,
大きく本件表示が付され,また,それらの商品の売上げのレシート及び納品伝票に
も,本件表示が使用されている。(乙第3ないし第5,第9,第10,第11号
証,検乙第1ないし第3号証,弁論の全趣旨)。
 上記の事実からすれば,訴外キスミーは,本件店舗において,その販売する
商品である化粧品のみならず,化粧用具についても,その宣伝広告,及び,その取
引書類に,本件表示を使用しているものである,ということができる。本件店舗に
おける「本件商標の使用は,直接商品に付して使用しているものではないとして
も,商標法第2条第3項第8号で規定する,請求に係る商品についての広告使用に
当たるものといえる。」(審決書6頁3段)とした審決の判断に誤りはない。
 原告は,本件店舗の店頭看板に本件表示が使用されているとしても,この店
頭看板に記載された商標と,店内で販売される指定商品にどのような具体的関係,
結び付きが見られるかによって,当該商品についての使用といえるかどうかが決ま
るのである,本件店舗では,本件表示は,化粧品に付されていただけで,化粧用具
には付されていなかったのであるから,本件表示は,化粧品の広告のために使用さ
れていただけで,化粧用具の広告のためには使用されていなかったのである,と主
張する。しかし,上記のとおり,本件店舗が,被告の子会社である訴外キスミーの
経営に係る,化粧品及び化粧用具等の専門店であること,本件店舗において販売し
ている化粧品については,被告が製造し,本件表示が付され,訴外キスミーが販売
する商品が含まれており,化粧用具についてみても,その中には,被告が製造し,
訴外キスミーが販売する商品が含まれていることからすれば,本件店舗の看板等に
使用されている本件表示が,本件店舗内で販売されている被告製造の化粧品のみな
らず,被告製造の化粧用具とも密接な関連性を有しているものであることは明らか
である。
3 以上のとおりであるから,被告は,本件商標と社会通念上同一と認められる
本件表示をその指定商品である化粧用具に使用している,と認定判断した審決は,
その結論において相当である。原告主張の審決取消事由はいずれも理由がなく,そ
の他,審決には,これを取り消すべき誤りは見当たらない。そこで,原告の本訴請
求を棄却することとし,訴訟費用の負担並びに上告及び上告受理の申立てのための
付加期間の付与について,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条,96条2項を
適用して,主文のとおり判決する。
   東京高等裁判所第6民事部
       裁判長裁判官     山   下   和   明
裁判官     設   樂   隆   一
          裁判官    高   瀬   順   久

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