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平成15(ネ)3361民事訴訟 不正競争

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裁判所 控訴棄却 東京高等裁判所
裁判年月日 平成15年12月25日
事件種別 民事
当事者 控訴人          A
被控訴人         メディカルサイエンス株式会社        株式会社アートコネクシヨン
法令 不正競争
不正競争防止法4条2回
不正競争防止法2条4項2回
不正競争防止法2条1項4号2回
不正競争防止法2条1項13号1回
不正競争防止法2条1項14号1回
民事訴訟法67条2項1回
キーワード 損害賠償7回
主文 1 原判決中,控訴人敗訴の部分を取り消す。2 被控訴人らの請求をいずれも棄却する。3 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人らの負担とする。
事件の概要

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判決文

平成15年(ネ)第3361号 損害賠償等請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成
13年(ワ)第26301号)
平成15年11月11日 口頭弁論終結
判 決
控訴人          A
被控訴人         メディカルサイエンス株式会社
被控訴人          株式会社アートコネクシヨン
両名訴訟代理人弁護士   木 村 峻 郎
同             寺 田   了
同             北 出 容 一
主 文
1 原判決中,控訴人敗訴の部分を取り消す。
2 被控訴人らの請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人らの負担とする。
事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
1 控訴人
 主文同旨 
2 被控訴人ら
 控訴人の控訴を棄却する。
 控訴費用は控訴人の負担とする。
第2 事案の概要
1 被控訴人メディカルサイエンス株式会社(旧商号「氣づきの会株式会社」。
平成12年10月25日に現商号に変更。以下,商号変更の前後にかかわらず,
「被控訴人メディカル」という。)は,健康器具の輸出入及び販売並びに健康食品
等の輸出入及び販売を業とする会社であり,会員組織型訪問販売事業を行ってい
る。被控訴人株式会社アートコネクシヨン(以下「被控訴人アート」という。)
は,健康器具及び健康食品等の販売を業とする会社であり,取扱商品の企画,製造
委託管理,輸入,卸業務を行っている。被控訴人メディカルと被控訴人アートの事
務所は同一場所にあり,両者の代表者も同一で,両者の事務も峻別されていない。
控訴人は,被控訴人メディカルの主宰する顧客会員組織「氣づきの会」(以下「氣
づきの会」という。)の会員であった者である。
 本件は,被控訴人らが,控訴人,並びに,ワールド・ウィンドウ株式会社
(以下「被告会社」という。),並びに,被控訴人らの元従業員で,その後被告会
社に勤務しているB及びC(以下,これら3名を「原審被告3名」という。)に対
し,不正競争防止法2条1項4号,7号,8号(営業秘密保護に関する不正競争行
為),同項13号(品質誤認表示に関する不正競争行為),及び,同項14号(虚
偽事実の告知・流布に関する不正競争行為)を理由として,各不正競争行為の中止
を求め,上記各不正競争行為及び不法行為を理由として,損害賠償を求めた事案で
ある。原審では,被控訴人の原審被告3名に対する不正競争防止法に基づく請求及
び不法行為に基づく請求がすべて棄却され,同被告らに対する判決は確定した。し
かし,控訴人は,原審において,適式の呼び出しを受けながら,口頭弁論期日に出
頭せず,答弁書その他の準備書面も提出しなかったため,被控訴人らが主張した請
求原因事実を自白したものとみなされ,控訴人に対する請求は一部を除いて認容さ
れた。
 控訴人は,控訴審において,原審被告3名の主張,立証をすべて援用した。
したがって,当事者の主張は,下記のとおり付加するほかは,原判決の「事実及び
理由」の「第2 事案の概要」,「第3 争点に関する当事者の主張」欄記載のと
おりであるから,これを引用する(ただし,「第3 争点に関する当事者の主張」
欄の争点1ないし4及び6,7の各主張中の「(2) 被告ら(ただし,被告柿本を除
く。)の主張」との見出しをいずれも「控訴人の主張」と訂正の上,引用す
る。)。なお,当裁判所も,「原告商品1」,「原告商品2」,「被告商品2」,
「KBG社」,「BIO社」の語を,原判決の用法に従って用いる。
2 被控訴人らの控訴人に対する請求のうち,原審がその請求を認容し,当審に
おける審理の対象となっているものは,次のとおりである。
(1) 被控訴人らは,控訴人に対して,控訴人と原審被告3名が,①被控訴人ら
の営業秘密である「氣づきの会」の会員情報を不正に取得し,控訴人が被控訴人ら
から示された同情報を不正の利益を得る目的で開示・使用し,あるいは不正開示さ
れた同情報を使用して,同会員らに対して商品の購入の勧誘等をした,②原告商品
1の仕入先である李震の情報,及び,原告商品2の仕入先であるKBG社及びBI
O社の情報は営業秘密であり,控訴人は,不正開示行為であることを認識しなが
ら,これを取得し,同営業秘密を使用した,などと主張して,不正競争防止法2条
1項4号,8号に基づき,「氣づきの会」の会員に対する入会勧誘,商品販売活動
の中止を求め,原審においてその請求が認められた。
(2) 被控訴人らは,控訴人に対し,控訴人と原審被告3名が,被控訴人らが販
売する健康食品である原告商品2(アメリカのクラマス湖に生えている藻から作っ
たもの)とは品質の異なる健康食品である被告商品2につき,被控訴人らの原告商
品2と同じ成分表示を施して品質を誤認させたとして,不正競争防止法2条1項1
3号に基づき,同成分表示の中止,及び,同表示をした被告商品2の販売の中止を
求め,原審においてその請求が認容された。
(3) 被控訴人らは,控訴人に対し,控訴人と原審被告3名が,「氣づきの会」
の会員らに,被控訴人ら及びその代表者Dの営業上の信用を害する虚偽の事実を告
知・流布したとして,不正競争防止法2条1項14号に基づき,「氣づきの会」の
会員及び第三者に対し,被控訴人ら及びその代表者であるDについて,商品「ブレ
インプラーナ」(原告商品1)はDが開発したものではないこと,被控訴人らには
同商品の在庫がなく会員に不良品を販売していること,被控訴人らが近く倒産する
こと,被控訴人ら及びDが詐欺的な商売をしていること,その他これに類する陳述
の告知・流布の中止を求め,原審においてその請求が認容された。
(4) 被控訴人メディカルは,控訴人に対し,控訴人らの上記(1)及び(2)記載の
各不正競争行為,並びに,控訴人の不法行為(①平成12年11月27日の告発を
きっかけに,氣づきの会の会員に対し,新聞記事を題材に「氣づきの会被害者の会
結成のお知らせ」と題する怪文書を作成して頒布し,会員の不安と動揺をあおり,
会員の横取りを始めた,②平成13年3月下旬,渋谷の職業安定所(ハローワー
ク)に被控訴人メディカルの新聞記事や誹謗中傷文書を持参し,被控訴人メディカ
ルの求人の斡旋を中止するように要求し,被控訴人メディカルの営業妨害をした,
③同月29日,氣づきの会の会員に対し,Dが在宅起訴された報道新聞やインター
ネット記事をFAXや電話で配布し,更なる営業妨害をした,④各地で説明会を開
催し,自分が主宰する「融和の会」に入会を働きかけ,氣づきの会の会員を横取り
し,被告会社の商品を継続的に販売した,との不法行為)により,被控訴人らの売
上げが減少し,損害を受けたことを理由として,不正競争防止法4条又は民法70
9条に基づき,2716万9877円の損害賠償金とこれに対する年5分の割合に
よる遅延損害金の支払を求め,原審においてその請求が認められた。
(5) 被控訴人アートは,控訴人に対し,控訴人らの上記(1)及び(2)記載の各不
正競争行為,並びに,控訴人の上記①ないし④の不法行為を理由として,不正競争
防止法4条又は民法709条に基づき,292万7512円の損害賠償金及び年5
分の割合による遅延損害金の支払いを求め,原審においてその請求が認められた。
(6) 被控訴人メディカルは,控訴人に対し,控訴人らの上記(3)記載の不正競争
行為を理由として,名誉信用毀損による損害として,500万円の損害賠償請求及
び年5分の割合による遅延損害金の支払いを求め,原審において,200万円とこ
れに対する年5分の割合による遅延損害金について,その請求が認められた。
3 控訴人の当審における主張の要点
 上記2(4)及び(5)の①については,そのような文書を作成し,流布したこと
はない。同②については,渋谷の職業安定所に行ったことすらない。同③について
も,新聞記事等をFAX等で送付したことは全くない。同④については,「氣づき
の会」の会員を横取りしたことはない。
第3 当裁判所の判断
1 当裁判所は,被控訴人らの請求は,いずれも理由がないから,棄却すべきも
のである,と判断する。その理由は,次のとおり付加するほか,原判決の原審被告
3名に対する判断部分,すなわち,「第5 その余の被告らに対する請求について
の当裁判所の判断」の1ないし4及び6のとおりであるので,これを引用する(た
だし,4(1)の判断部分は除く。)。
(1) 被控訴人らの「氣づきの会」の会員情報は,秘密として管理されていたも
のと認めることができず,不正競争防止法2条4項の営業秘密には該当しない。ま
た,原告商品2の仕入先であるKBG社及びBIO社に関する情報は,非公知のも
のとはいえず,不正競争防止法2条4項にいう営業秘密には当たらない。原告商品
1の仕入先である李震に関する情報も,同法同条項にいう営業秘密には該当しな
い。(これらの理由の詳細は,原判決29頁6行ないし32頁13行のとおりであ
る。)したがって,前記第2・2(1)の中止の請求,及び,この不正競争行為を理由
とする同(4)及び(5)の損害賠償の請求は,いずれも理由がない。
(2) 被控訴人らが販売する健康食品である原告商品2と被告会社が販売する健
康商品である被告商品2との成分が異なっていることを認めるに足りる証拠はな
く,被告会社がその商品の成分の内容を誤認させる表示をしたものと認めることは
できない(その理由の詳細は,原判決32頁14行ないし34頁1行のとおりであ
る。)。したがって,前記第2・2(2)の中止の請求,及び,この不正競争行為を理
由とする同(4)及び(5)の損害賠償の請求は,いずれも理由がない。
(3) 控訴人が,被控訴人らが主張する営業上の信用を害する虚偽の事実,すな
わち,控訴人が,氣づきの会の会員に対して,被控訴人ら及びその代表者であるD
について,原告商品1(「気」の波動を利用した健康器具である。)はDが開発し
たものではないこと,被控訴人らには原告商品1の在庫がなく会員に不良品を販売
していること,被控訴人らが近く倒産すること,被控訴人ら及びDが詐欺的な商売
をしていること,その他これに類する被控訴人らの営業上の信用を害する虚偽の事
実を告知し,又は流布したこと,を認めるに足りる証拠はない。
  甲第11号証の5には,被控訴人らの商品を販売している者の顧客が,控
訴人から,被控訴人らが倒産するおそれがあり,また,会員に不良品を販売してい
ることなどをいわれたこと,甲第11号証の9には,同じく,被控訴人らの商品を
販売している者が,控訴人から,被控訴人らが,原告商品1の仕入れ代金を支払わ
ないので,在庫がなく,出荷できなくなる,などといわれたことが記載されてい
る。しかし,甲第11号証の5は,被控訴人らの商品を販売している者が,その顧
客が控訴人から聞いたとの話をまとめたにすぎないものであり,控訴人から聞いた
話を当該顧客が直接記載した形式の書面ですらない。上記各書証によっては,上記
各事実を認めることはできない。本件記録中のその余の証拠によっても,上記被控
訴人主張事実を認めることはできない。
(4) 被控訴人らが主張する不法行為を構成する事実についても,これを認める
に足りる十分な証拠はない。すなわち,①控訴人が,平成12年11月27日の告
発をきっかけに,氣づきの会の会員に対し,新聞記事を題材に「氣づきの会被害者
の会結成のお知らせ」と題する怪文書を作成して頒布し,会員の不安と動揺を煽
り,会員の横取りを始めた,との被控訴人ら主張事実については,甲第12号証に
よれば,「氣づきの会被害者の会結成のお知らせ」との表題の書面が存在すること
は認められるものの,控訴人が同書面を作成し,これを頒布したことを認めるに足
りる証拠はない。なお,同書面中には,Dの「東京大学物理学科卒業」「元NAS
A研究員」との経歴が虚偽であったことが判明し,Dが「氣づきの会」の会員に謝
罪したことが記載されているものの,同記載事実が真実であることは,原判決26
頁20行ないし25行記載のとおりである。また,同書面には,Dは,原告商品2
の開発者である,と公言しているものの,同一の構造の製品は,Dではなく,中国
のある科学者が発明したものであると記載されている。しかし,証拠(乙第1ない
し第6号証)によれば,この記載も真実であると認められる。②控訴人が,平成1
3年3月下旬,渋谷の職業安定所に被控訴人メディカルの新聞記事や誹謗中傷文書
を持参し,被控訴人メディカルの求人の斡旋を中止するように要求し,被控訴人メ
ディカルの営業妨害をした,との被控訴人ら主張事実についても,この事実を認め
るに足りる証拠はない。③控訴人が,平成13年3月29日,氣づきの会の会員に
対し,Dが在宅起訴された報道新聞やインターネット記事をFAXや電話で配布
し,更なる営業妨害をした,との被控訴人ら主張事実についても,この事実を認め
るに足りる証拠はない。④控訴人が,各地で説明会を開催し,自分が主宰する「融
和の会」に入会を働きかけ,氣づきの会の会員を横取りし,被告会社の商品を継続
的に販売した,との被控訴人ら主張事実については,控訴人が各地で説明会を開催
し,自分が主宰する「融和の会」に入会を働きかけたとの事実は認められる(甲1
1の1・2)。しかし,氣づきの会の会員を横取りした,との被控訴人らの主張
が,違法な手段により横取りした,との趣旨であれば,違法な手段を基礎づける事
実の主張をすべきであるのに,その主張は明確ではない。仮に,被控訴人らの同主
張が,被控訴人らが本訴において具体的に主張した虚偽事実の告知,流布等の主張
に基づくものであるとすれば,同主張事実を認めるに足りる証拠がないことは上記
のとおりである。
2 結論
  以上によれば,被控訴人らの控訴人に対する本訴請求は,その余の点につい
て判断するまでもなく理由がないことが明らかである。そこで,被控訴人らの本訴
請求を一部認めた原判決を取り消し,被控訴人らの本訴請求を棄却することとし,
訴訟費用の負担については,民事訴訟法67条2項,61条,65条1項本文を適
用して,主文のとおり判決する。
  東京高等裁判所第6民事部
       裁判長裁判官 山  下  和  明
          裁判官  設  樂  隆  一
 
          裁判官  阿  部  正  幸

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