平成15(行ケ)259行政訴訟 特許権
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裁判所 |
東京高等裁判所
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裁判年月日 |
平成15年12月24日 |
事件種別 |
民事 |
法令 |
特許権
特許法29条1項3号1回
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キーワード |
審決7回 刊行物2回 訂正審判1回 分割1回 特許権1回
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主文 |
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事件の概要 |
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判決文
平成15年(行ケ)第259号 特許取消決定取消請求事件(平成15年12月1
0日口頭弁論終結)
判 決
原 告 日本鋼管株式会社承継人JFEスチール株
式会社
原 告 鋼管鉱業株式会社
両名訴訟代理人弁理士 石 川 泰 男
同 塩 島 利 之
被 告 特許庁長官 今井康夫
指定代理人 城 所 宏
同 三 崎 仁
同 一 色 由美子
同 伊 藤 三 男
主 文
特許庁が異議2001-72423号事件について平成15年4月2
5日にした決定を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
主文と同旨
第2 当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯等
(1) 被承継人日本鋼管株式会社及び原告鋼管鉱業株式会社(以下「承継前原告
ら」という。)は,名称を「鋼の連続鋳造用モールドパウダー」(後に「中炭素鋼
の連続鋳造用モールドパウダー」,「中炭素鋼の連続鋳造用パウダー」と順次訂
正)とする特許第3142216号発明(平成6年11月11日出願,平成12年
12月22日設定登録,以下「本件発明」といい,この特許を「本件特許」とい
う。)に係る特許権の共有者である。
その後,本件特許につき特許異議の申立てがされ,同申立ては,異議20
01-72423号事件として特許庁に係属したところ,承継前原告らは,平成1
5年1月7日,本件特許出願の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」とい
う。)の特許請求の範囲の記載等の訂正(以下「本件訂正」という。)を請求し
た。
特許庁は,上記事件につき審理した結果,同年4月25日,「訂正を認め
る。特許第3142216号の請求項1ないし2に係る特許を取り消す。」との決
定(以下「本件決定」という。)をし,その謄本は,同年5月19日,承継前原告
らに送達された。
(2) 被承継人日本鋼管株式会社は,同年4月1日に会社分割を行い,その結果,
原告JFEスチール株式会社は,上記被承継人の有していた本件特許に係る共有持
分を包括承継し,同年6月25日,その旨の持分移転登録がされた。
(3) 原告JFEスチール株式会社及び原告鋼管鉱業株式会社(以下「原告ら」
という。)は,本件決定の取消しを求める本訴を提起した後,同年9月30日,本
件明細書の特許請求の範囲の記載等の訂正をする旨の訂正審判の請求をしたとこ
ろ,特許庁は,同請求を訂正2003-39214号事件として審理した上,同年
11月7日,訂正を認める旨の審決(以下「本件訂正審決」という。)をし,その
謄本は,同月19日,原告らに送達された。
2 本件明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2の記載
(1) 設定登録時のもの
【請求項1】主成分がCaO,SiO2で,CaO/SiO2(wt%塩基
度)が1.2~1.6であって,MgO含有量が1.5wt%以下に配合した,結
晶生成温度が1130℃以上であることを特徴とする,鋼の連続鋳造用パウダー。
【請求項2】下記成分組成に配合した,結晶生成温度が1130℃以上であ
ることを特徴とする,鋼の連続鋳造用パウダー。
(a)MgO含有量が1.5wt%以下,
(b)氷晶石,NaF,蛍石,ソーダ灰,Li2Oの何れか1種以上の含有
量が4~25wt
(c)カーボンブラック,鱗状黒鉛の何れか1種以上の含有量が1~8wt
%,
(d)残部の主成分がCaO,SiO2で,CaO/SiO2(wt%塩基
度)が1.2~1.6である。
(2) 本件訂正に係るもの(注,訂正部分を下線で示す。)
【請求項1】主成分がCaO,SiO2で,CaO/SiO2(wt%塩基
度)が1.2~1.6であって,MgO含有量が1.5wt%以下に配合した,結
晶生成温度が1130℃以上であり,1300℃における粘性値が0.1Pa・S
以下であることを特徴とする中炭素鋼の連続鋳造用パウダー。
【請求項2】下記の成分組成に配合した,結晶生成温度が1130℃以上で
あり,1300℃における粘性値が0.1Pa・S以下であることを特徴とする中
炭素鋼の連続鋳造用パウダー。
(a)MgO含有量が1.5wt%以下,
(b)氷晶石,NaF,蛍石,ソーダ灰,Li2Oの何れか1種以上の含有
量が4~25wt%
(c)カーボンブラック,鱗状黒鉛の何れか1種以上の含有量が1~8wt
%,
(d)残部の主成分がCaO,SiO2で,CaO/SiO2(wt%塩基
度)が1.2~1.6である。
(以下,上記各請求項に係る発明を,それぞれ「本件発明1」,「本件発明
2」という。)
(3) 本件訂正審決に係るもの(注,訂正部分を下線で示す。なお,2重下線部
分は,上記(2)との相違部分である。)
【請求項1】主成分がCaO,SiO2で,CaO/SiO2(wt%塩基
度)が1.2~1.6であって,MgO含有量が1.5wt%以下に配合した,結
晶生成温度が1130℃以上であり,1300℃における粘性値が0.1Pa・S
以下である
ことを特徴とする中炭素鋼の連続鋳造用パウダー。
【請求項2】下記の成分組成に配合した,結晶生成温度が1130℃以上で
あり,1300℃における粘性値が0.1Pa・S以下である
ことを特徴とする中炭素鋼
の連続鋳造用パウダー。
(a)MgO含有量が1.5wt%以下,
(b)氷晶石,NaF,蛍石,ソーダ灰,Li2Oの何れか1種以上の含有
量が4~25wt%
(c)カーボンブラック,鱗状黒鉛の何れか1種以上の含有量が1~8wt
%,
(d)残部の主成分がCaO,SiO2で,CaO/SiO2(wt%塩基
度)が1.2~1.6である。
3 本件決定の理由
本件決定は,本件発明の要旨を本件訂正に係る本件明細書の特許請求の範囲
の記載(上記2(2))のとおり認定した上,本件発明1は,特開平3-193248
号公報(以下「刊行物1」という。)に記載された発明であり,本件発明2は,刊
行物1及び特公平2-27063号公報に記載された発明に基づいて当業者が容易
に発明をすることができたものであって,本件発明1は特許法29条1項3号の規
定により,本件発明2は同法29条2項の規定によりいずれも特許を受けることが
できず,本件特許は,拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたも
のであるから,特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令
(平成7年政令第205号)4条2項の規定により,取り消されるべきであるとし
た。
第3 原告ら主張の審決取消事由
本件決定が,本件発明の要旨を本件訂正に係る本件明細書の特許請求の範囲
の記載(上記第2の2(2))のとおり認定した点は,本件訂正審決の確定により本件
明細書の特許請求の範囲の記載が上記第2の2(3)のとおり訂正されたため,誤りに
帰したことになるから,本件決定は,本件発明の要旨の認定を誤った違法があり,
取り消されるべきである。
第4 被告の主張
本件訂正審決の確定により本件明細書の特許請求の範囲の記載が上記のとお
り訂正されたことは認める。
第5 当裁判所の判断
本件訂正審決の確定により,本件明細書の特許請求の範囲の記載が上記第2
の2(3)のとおり訂正されたことは当事者間に争いがなく,この訂正によって特許請
求の範囲が減縮されたことは明らかである。
そうすると,本件決定が,本件発明の要旨を本件訂正に係る本件明細書の特
許請求の範囲の記載(上記第2の2(2))のとおり認定したことは,結果的に誤りで
あったことに帰し,これが本件決定の結論に影響を及ぼすことは明らかであるか
ら,本件決定は,瑕疵があるものとして取消しを免れない。
よって,原告らの請求は理由があるから認容することとし,主文のとおり判
決する。
東京高等裁判所第13民事部
裁判長裁判官 篠 原 勝 美
裁判官 岡 本 岳
裁判官 早 田 尚 貴
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