平成15(行ケ)87行政訴訟 特許権
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裁判所 |
東京高等裁判所
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裁判年月日 |
平成15年12月15日 |
事件種別 |
民事 |
法令 |
特許権
特許法29条2項1回
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キーワード |
審決6回 訂正審判1回 特許権1回
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主文 |
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事件の概要 |
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判決文
平成15年(行ケ)第87号 特許取消決定取消請求事件(平成15年12月3日
口頭弁論終結)
判 決
原 告 本田技研工業株式会社
訴訟代理人弁理士 大 島 陽 一
被 告 特許庁長官 今井康夫
指定代理人 出 口 昌 哉
同 八日市谷 正 朗
同 鈴 木 法 明
同 高 木 進
同 伊 藤 三 男
主 文
特許庁が異議2002-70727号事件について平成15年1月2
8日にした決定を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
主文と同旨
第2 当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯
(1) 原告は,名称を「エアバッグ式乗員保護装置」とする特許第321205
3号発明(平成5年10月25日特許出願,平成13年7月19日設定登録,以下
「本件発明」といい,この特許を「本件特許」という。)の特許権者である。
その後,本件特許につき特許異議の申立てがされ,同申立ては,異議20
02-70727号事件として特許庁に係属したところ,原告は,平成14年10
月11日,本件特許出願の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)
の特許請求の範囲の記載等を訂正する旨の訂正請求(以下「本件訂正請求」とい
う。)をした。
特許庁は,同特許異議事件について審理した上,平成15年1月28日,
「訂正を認める。特許第3212053号の請求項1に係る特許を取り消す。」と
の決定(以下「本件決定」という。)をし,その謄本は,同年2月17日,原告に
送達された。
(2) 原告は,本件決定の取消しを求める本訴を提起した後,平成15年8月2
6日,本件明細書の特許請求の範囲の記載等を訂正する旨の訂正審判の請求をした
ところ,特許庁は,同請求を訂正2003-39177号事件として審理した上,
同年10月29日,上記訂正を認める旨の審決(以下「本件訂正審決」という。)
をし,その謄本は,同年11月10日,原告に送達された。
2 特許請求の範囲の記載
(1) 設定登録時の特許請求の範囲の記載
【請求項1】ガス発生用インフレータと,該インフレータが発生するガス圧
によって膨張するエアバッグと,該エアバッグを収納するべく車体に固定されたリ
テーナとを有し,所定値を超える減速度が車両に作用した際に,通常はリッドにて
塞がれたインストルメントパネルの開口から,リッドを押しのけてエアバッグが車
室内に膨出するようにしてなるエアバッグ式乗員保護装置であって,
前記リッドは,その外縁部との間に前記インストルメントパネルの開口内
縁部を挟み込むことによって前記インストルメントパネルに対する位置の確定を行
うための挟持部を有するものであり,
前記リテーナに対する前記リッドの係合手段は,前記リテーナの互いに対
向する一対の壁との間の位置調節手段を備えるものであることを特徴とするエアバ
ッグ式乗員保護装置。
(2) 本件訂正請求に係る訂正後の特許請求の範囲の記載(注,訂正部分を下線で
示す。)
【請求項1】ガス発生用インフレータと,該インフレータが発生するガス圧
によって膨張するエアバッグと,該エアバッグを収納するべく車体に固定されたリ
テーナとを有し,所定値を超える減速度が車両に作用した際に,通常はリッドにて
塞がれたインストルメントパネルの開口から,前記リッドを押しのけて前記エアバ
ッグが車室内に膨出するようにしてなるエアバッグ式乗員保護装置であって,
前記リッドは,その外縁部との間に前記インストルメントパネルの開口内
縁部を挟み込むことによって前記インストルメントパネルに対する位置の確定を行
うための挟持部と,前記リテーナの互いに対向する一対の壁の外面に設けられた係
合部材と係合する係合片とを有するものであり,
前記係合部材と前記係合片との間には,前記リテーナと前記リッドとの間
の位置調節手段が設けられることを特徴とするエアバッグ式乗員保護装置。
(3) 本件訂正審決に係る訂正後の特許請求の範囲の記載(注,訂正部分を下線
で示す。なお,二重下線部分は,上記(2)との相違部分である。)
【請求項1】ガス発生用インフレータと,該インフレータが発生するガス圧
によって膨張するエアバッグと,該エアバッグを収納するべく車体に固定されたリ
テーナとを有し,所定値を超える減速度が車両に作用した際に,通常はリッドにて
塞がれたインストルメントパネルの開口から,前記リッドを押しのけて前記エアバ
ッグが車室内に膨出するようにしてなるエアバッグ式乗員保護装置であって,
前記リッドは,その外縁部との間に前記インストルメントパネルの開口
内縁部を挟み込むことによって前記インストルメントパネルに対
する位置の確定を行うための挟持部
を有するものであり,
前記 は,前記リテーナの互いに対向する一対の壁との間の位置調節
手段
ことを特徴とするエアバッグ式
乗員保護装置。
3 本件決定の理由
本件決定は,本件訂正請求に係る訂正を認め,本件発明の要旨を同訂正後の
特許請求の範囲の記載(上記2(2))のとおり認定した上,本件発明は,米国特許第
5135252号公報(本訴甲5-1,審判甲1)及び実願平4-18374号
(実開平5-68754号)のCD-ROM(本訴甲5-2,審判甲2)に記載さ
れた各発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,本件特
許は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから,拒絶の査
定をしなけらばならない特許出願に対してされたものであり,特許法等の一部を改
正する法律(平成6年法律第116号)附則14条の規定に基づく特許法等の一部
を改正する法律の施行に伴う経過規定を定める政令(平成7年政令第205号)4
条2項の規定により,取り消されるべきものであるとした。
第3 当事者の主張
1 原告
本件決定が,本件発明の要旨を本件訂正請求に係る訂正後の特許請求の範囲
の記載(上記第2の2(2))のとおり認定した点は,本件訂正審決の確定により特許
請求の範囲の記載が上記第2の2(3)のとおり訂正されたため,誤りに帰したことに
なる。そして,この瑕疵は本件決定の結論に影響を及ぼすものであるから,本件決
定は違法として取り消されるべきである。
2 被告
本件訂正審決の確定により特許請求の範囲の記載が上記のとおり訂正された
ことは認める。
第4 当裁判所の判断
本件訂正審決の確定により,本件明細書の特許請求の範囲の記載が上記第2
の2(3)のとおり訂正されたことは当事者間に争いがなく,この訂正によって,特許
請求の範囲が減縮されたことは明らかである。
そうすると,本件決定が,本件発明の要旨を,本件訂正請求に係る訂正後の
特許請求の範囲の記載(上記第2の2(2))のとおり認定したことは,結果的に誤り
であったことに帰し,これが本件決定の結論に影響を及ぼすことは明らかであるか
ら,本件決定は,瑕疵があるものとして取消しを免れない。
よって,原告の請求は理由があるから認容することとし,主文のとおり判決
する。
東京高等裁判所第13民事部
裁判長裁判官 篠 原 勝 美
裁判官 岡 本 岳
裁判官 早 田 尚 貴
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