平成15(ワ)17310民事訴訟 著作権
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裁判所 |
東京地方裁判所
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裁判年月日 |
平成15年11月28日 |
事件種別 |
民事 |
法令 |
著作権
著作権法114条1項1回 著作権法2条1項1号1回
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キーワード |
許諾6回 侵害6回 損害賠償2回
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主文 |
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事件の概要 |
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判決文
平成15年(ワ)第17310号 損害賠償請求事件
口頭弁論終結日 平成15年11月11日
判 決
原 告 株式会社アオイコーポレーション
被 告 株式会社白夜書房
同訴訟代理人弁護士 阿 部 裕 三
主 文
1 被告は,原告に対し,金100万円及びこれに対する平成15年8
月13日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は,これを15分し,その1を被告の負担とし,その余を
原告の負担とする。
4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1 請求
被告は,原告に対し,金1500万円及びこれに対する平成15年8月13
日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要等
1 争いのない事実等
(1) 原告は,厚生労働大臣認可の芸能プロダクションであり,その業務の一部
として,その所属,契約芸能タレントをマスメディアの求めに応じ,テレビ,雑誌
等のインタビューを受ける形で芸能タレントの出演に係る芸能に関する各種の権
利,情報を提供する等の経済取引活動を行っている。
被告は,タレント・アンド・スカウトマガジンとして月刊雑誌「オーディ
ション」(以下「本件雑誌」という。)を毎月1回発行している。
(2) Aは,原告との間で専属芸術家契約を締結した芸能タレントであり,同契
約によると,① Aの氏名,写真,肖像,筆跡及び経歴等についての財産上の権利
を原告が独占的に有し,② 第三者が企画,構成,演出したコンサート,映画,演
劇,テレビ,ラジオ,コマーシャルへの出演その他の出演業務の遂行により制作さ
れた著作物,商品その他のものに関する著作権等一切の権利は原告に帰属するもの
とされている(甲9,10)。
(3) 被告は,原告に対し,平成14年10月初旬ころ,本件雑誌12月号の
「NEXT BREAK」と題する記事の1頁にAのインタビュー記事と肖像写真
を掲載する企画を立て,Aのインタビューと肖像写真の撮影を申し込んだ。原告
は,本件雑誌12月号にAのインタビュー記事及び肖像写真を掲載することを承諾
した。
(4) Aは,同年10月15日,マネージャーのBとともに被告の本社に行き,
本社ビル4階の会議室で,本件雑誌の編集担当社員のC,ライターのD及びカメラ
マンのEと面会し,同人らがAにインタビューするなど取材を行った。
(5) 被告は,本件雑誌12月号にAのインタビュー記事と肖像写真を掲載した
ほか,同年10月28日ころから平成15年6月7日ころまでの間,被告が開設運
営している携帯電話サイトである「オーディション・コム」(以下「本件サイト」
という。)の「先輩に聞こう」のコーナーに,Aのインタビュー記事,肖像写真及
び音声メッセージを掲載した。
本件サイトは,NTTドコモのi-modeサイトの1つであり,被告
は,これを有料で登録会員に提供している。
2 事案の概要
本件は,原告が被告に対し,被告がAのインタビュー記事,肖像写真及び音
声メッセージを本件サイトに掲載したことにつき,① 主位的に,上記インタビュ
ー記事等を本件雑誌12月号にのみ掲載する旨の合意に反したという債務不履行,
又は上記雑誌の販売期間である1か月に限り上記インタビュー記事等を本件サイト
に掲載する旨の合意に反したという債務不履行を理由として,② 予備的に,上記
インタビュー記事及び音声メッセージに係る著作権侵害並びに上記肖像写真に係る
肖像権侵害に基づく不法行為を理由として,1500万円の損害賠償金を請求する
事案である。
3 本件の争点
(1) 被告の債務不履行責任の有無
(2) 原告の著作権及び肖像権侵害の有無
(3) 損害の発生及び数額
第3 争点に対する当事者の主張
1 争点(1)(被告の債務不履行責任の有無)について
〔原告の主張〕
(1) 原告は,被告との間で,Aのインタビュー記事及び肖像写真を本件雑誌1
2月号の誌上に1回のみ掲載する旨の合意をした。しかし,被告は,上記インタビ
ュー記事及び肖像写真に加え,別途Aの音声メッセージを入手し,平成14年10
月から平成15年6月までの7か月余にわたり,上記合意に反し,原告に無断でこ
れらを本件サイトに掲載,利用したのであるから,原告に対して故意又は過失によ
る債務不履行責任を負う。
(2) 仮に,被告が主張するとおり,本件サイトへの1か月の掲載について原告
が許諾したとしても,残り6か月余については原告の許諾がないから,被告は,原
告に対し,故意又は過失による債務不履行責任を負う。
〔被告の主張〕
(1) 原告は,Aのインタビュー記事と肖像写真が掲載された本件雑誌12月号
の発売期間である1か月の間,上記インタビュー記事,肖像写真及び音声メッセー
ジを本件サイトに掲載することを許諾しているから,〔原告の主張〕(1)の債務不履
行は成立しない。
(2) 〔原告の主張〕(2)の債務不履行が成立するとしても,それは被告が上記
インタビュー記事等を本件サイトから1か月をもって抹消することを失念したこと
によるものであって,過失によるものである。
2 争点(2)(原告の著作権及び肖像権侵害の有無)について
〔原告の主張〕
原告は,Aのインタビュー記事及び音声メッセージに対して著作権を有して
おり,また同人の肖像写真について肖像権を有しているから,被告がこれらの原告
の権利を知りながら上記インタビュー記事等を原告に無断で本件サイトに掲載した
行為は,故意による不法行為を構成する。
〔被告の主張〕
(1) Aのインタビュー記事の著作権はD及び被告が有しており,原告には上記
インタビュー記事の著作権はない。
(2) 著作物は,著作権法2条1項1号に定める思想又は感情を創作的に表現し
てもので,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するものであることを要するとこ
ろ,Aの音声メッセージは単なるメッセージ,挨拶であり,発声も普通の話し言葉
でされており,上記4種類のいずれにも当たらないから,著作物とはいえない。
(3) 原告は,当初Aの肖像写真を本件サイトに掲載することについて承諾して
いたのであり,何ら社会的評価を低下させるものではないから,被告は,肖像権を
侵害していない。
3 争点(3)(損害の発生及び数額)について
〔原告の主張〕
被告が開設運営している本件サイトには,平成14年10月から平成15年
6月までの間,不特定多数の顧客から合計2万6000件に達する多数のアクセス
があり,被告はこれを顧客に対して有料で提供し,多額の利益を得た。
被告の行為による原告に生じた損害は,Aの従前の取引例に照らし,インタ
ビュー記事については500万円,音声形態による著作物については500万円,
肖像権については500万円が相当である。
〔被告の主張〕
(1) 当初の1か月間の本件サイトへの掲載が無償であり,また,一般に若手芸
能人が本件雑誌の「先輩に聞こう」のコーナーに掲載されることは周知性を高め,
後輩へのサービスでもあるから,損害は発生しない。債務不履行による損害は,A
のインタビュー記事等を6か月半インターネットに掲載したことと通常生ずべき因
果関係のある損害であるところ,原告の主張は因果関係の主張と被告の不作為によ
る損害の発生の主張を欠いているから理由がない。また,上記のとおり,本件は著
作権侵害はないから,著作権法114条1項及び2項の適用がなく,被告の利益を
原告の損害とすることもできない。
(2) 仮に,被告の利益を原告の損害とすることができるとしても,被告が本件
サイトにより得た利益は,平成14年11月から平成15年5月までの会員数に会
費300円を乗じた金額に「先輩に聞こう」のコーナーのアクセス率を乗じ,登録
タレント数で割ると,3万8056円であり,Aが他の登録タレントより人気があ
ると仮定して2倍しても7万6112円に過ぎない。
また,「先輩に聞こう」のアクセスについて,他に登録タレントが合計8
人ないし14人いるにもかかわらず,全部Aにアクセスしたものとしても,アクセ
ス率を乗じた売上額45万9654円であり,Aに2分の1集中したとしても,2
分の1の額の22万9827円にしかならない。
第4 当裁判所の判断
1 争点(1)(債務不履行責任の有無)について
(1) 上記争いのない事実並びに証拠(甲3(後記措信しない部分を除く。),
4,乙1の1ないし4,2,3の1及び2,4,5の1及び2,6,9ないし1
1)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実が認められる。
ア 被告は,原告に対し,平成14年10月初旬ころ,本件雑誌12月号の
「NEXT BREAK」と題する記事の1頁にAのインタビュー記事と肖像写真
を掲載する企画を立て,編集担当社員であるCがAのインタビューと肖像写真の撮
影を申し込み,原告の承諾を得た。
被告は,本件雑誌を毎月1回発行している。
イ Aは,同年10月15日,被告の本社ビル4階の会議室において,C,
ライターのD及びカメラマンのEらからインタビュー等取材を受けた。
本件サイトの責任者であるFは,上記取材後,Aに同行してきた原告の
従業員で,AのマネージャーでもあるBに対し,本件サイトの説明をした上,本件
サイトにAの紹介記事,肖像写真及び音声メッセージを掲載したい旨を申し出た。
これに対し,Bは,上司に本件サイトへの掲載許可を確認しないと返答できないの
で,後日企画書を送って欲しいと答えた。また,BがFに対し掲載期間はどの位に
なるのかを尋ねたところ,Fは雑誌の発売期間と同じ位となる旨答えた。
その後,Aは,Fらが用意した録音テープに,音声メッセージとして,
「こんにちは。Aです。えー,オーディションを受けるときは,自分を作ろうとす
るのではなく自分のありのままを表現できれば,一番いいんじゃないかと思いま
す。夢を持っている人は,うーん,諦めずにそれを追っていれば,いつかは絶対叶
う日が来ると思うので諦めずに頑張ってください。」との文言を吹き込んだ。
ウ Dは,同月17日,被告にAのインタビュー記事の原稿を送り,被告
は,翌18日ころ,これをBに送り同人の了解を得た。なお,本件雑誌12月号の
発売予定日は,同年11月1日であり,原稿入稿の締め切りは,同年10月21日
ころであった。
エ Fは,前記インタビューの後,Bに対し,本件サイトの企画書を送付
し,原告において同企画書が検討された。Fは,その数日後,Bに対して本件サイ
トへの掲載の承諾が得られるかどうかの確認の電話をした。その後,Fは,同月2
3日,Dに対し,「Aくんのi-modeサイトの件,OKが出たので原稿をお願
いしたいのですが・・」との内容のメールを送信した。
Dは,同月28日,Fに対し,「A原稿」,「標記の件,お送りしま
す」,「D P.N.:D」等の記載があるメールを送信した。
オ Fは,同月28日ころ,被告の社員を通じてBに対し本件サイトに掲載
する原稿を送付し,Bから訂正はない旨電話で伝えられた。
カ 被告は,Aのインタビュー記事及び肖像写真を掲載した本件雑誌12月
号を発行するとともに,同年10月28日ころから平成15年6月7日ころまでの
間,Aのインタビュー記事,肖像写真及び音声メッセージを本件サイトに掲載し
た。
本件サイトは,NTTドコモのi-modeサイトの1つであり,登録
会員が月額登録料として300円を支払うとそのサイトを見ることができるもので
ある。また,本件サイトは,本件雑誌の携帯サイトであり,本件雑誌と連動してい
る。
キ Bは,平成15年6月7日ころ,本件雑誌平成15年7月号において,
本件サイトの紹介記事の「先輩に聞こう」の欄にAの肖像写真が掲載されているの
を見つけ,Fに架電した。この際,Bは,Fに対し,「あれ,いつまで掲載でした
っけ?1週間とか2週間ではなかったでしたっけ?確かすぐに消すんじゃなかった
でしたっけ」などと申し出た。その結果,被告は,前記インタビュー記事等の本件
サイトへの掲載を中止した。
(2) なお,前記(1)オの点に関し,Bの陳述書(甲3)には,① Aに対する
インタビューを行った平成14年10月15日から2週間ほど経過した後,被告か
らAのインタビュー上の発言内容を文書化したものがFAXで送信されてきたこ
と,② その内容は,Aが発言した内容が同人の表現どおりに文字化されており,
被告のインタビュアーによる独自の創作的意見やコメントも全く存在しなったの
で,原告の重役であるGの了解を得て,本件雑誌12月号に1回限り掲載すること
のみ承諾したこと,以上の記載がある。
しかし,上記①については,前記(1)で認定したとおり,本件雑誌の発売は
平成14年11月1日を予定しており,しかも,原稿入稿の締め切りは同年10月
21日ころであったから,同月15日から2週間を経過した同月29日ころに原稿
を送信しその承諾を求めたのでは本件雑誌の掲載に到底間に合わないし,上記②に
ついても,本件雑誌12月号の記事にはインタビュアーのDのコメントが含まれて
いるのに対し,本件サイトに掲載された記事はAの口述内容がそのまま掲載されて
いること(乙1の2及び4,4)からすると,Bが原告の重役の了解を得て承諾し
たのは本件サイトへの掲載についてであるといわざるを得ないから,Bの陳述書中
上記①及び②の記載は信用することができない。
そうすると,Bは,原告の前記重役の了解を得た上,Fに対し,本件サイ
トへの掲載について,記事の原稿に訂正はない旨の連絡をしたものと認められる。
(3) 原告は,被告に対し,上記インタビュー記事等を本件サイトに掲載するこ
と自体承諾していないと主張する。しかしながら,前記認定の事実によれば,①
Fは,Bに対し,Aのインタビュー記事,肖像写真及び音声メッセージの本件サイ
トへの掲載を申し出,Bは,これに対して後日企画書を原告に送付するように指示
し,それを前提にAに音声メッセージの録音に応じさせていること,② Fは,B
に対し.本件サイトの企画書を送付し,同企画書は原告において検討されているこ
と,③ Fは,Dに対し,平成14年10月23日に,本件サイトへの掲載につい
てOKが出た旨述べていること,④ Bは,被告から送付されたAのインタビュー
記事の本件サイトへの掲載について原告の重役から了解を得て被告に対して訂正は
ないと返事をしていること,⑤ Bは,本件サイトにAのインタビュー記事等が掲
載されているのを発見してFに対し電話した際,掲載自体を抗議する言動を行って
いないことが認められる。そうすると,原告は,遅くとも,Dから本件サイトの企
画書の送付を受けた後の平成14年10月23日までに,Bを通じてFに対して上
記インタビュー記事等の本件サイトへの掲載を許諾したものと認める
のが相当である。
そして,許諾を与えた掲載期間については,本件サイトは本件雑誌の携帯
サイトであり本件雑誌と連動していること,前記(1)で認定したとおり,FはBに対
し本件雑誌の発売期間と同じ位になる旨答えていること,Bも平成15年6月7日
ころのFへの電話の中で掲載期間は短期間であることを前提として述べていること
からすると,本件雑誌12月号の発売期間である1か月であったものと認められ
る。
よって,原告と被告との間で,上記インタビュー記事,音声メッセージ及
び肖像写真を本件サイトに1か月に限り掲載するとの合意が成立したものと認める
のが相当である。
(4) 以上によれば,被告が平成14年10月28日ころから平成15年6月7
日ころまでの間上記インタビュー記事等を本件サイトに掲載した行為は,上記合意
に違反するものであり,また,前記(1)で認定した事実経過からすると,被告は,上
記1か月経過後,上記インタビュー記事等を本件サイトから抹消するのを怠り,さ
らに6か月以上にわたり掲載し続けたと認められるから,被告は原告に対して債務
不履行責任を負うものと解される。
2 争点(3)(損害の発生及び数額)について
(1) 被告は,当初の1か月間の本件サイトへの掲載が無償であり,また,一般
に若手芸能人が本件雑誌の「先輩に聞こう」のコーナーに掲載されることは周知性
を高め,後輩へのサービスでもあるから,損害は発生しないと主張する。
しかしながら,被告は,本件サイトの「先輩に聞こう」のコーナーに出演
したタレントのうち,Hに対して1万2000円の出演料を支払ったことがあるな
ど(乙11),本件サイトの出演が常に無償というわけではなく,本件において
は,本件サイトへの掲載期間が1か月であったからこそ,原告は無償での掲載に応
じたということができ,仮にその期間がそれ以上である場合にまで無償での掲載に
応じたとは必ずしもいえない。また,仮に,「先輩に聞こう」のコーナーへの掲載
がAの周知性を高めるという側面があるとしても,それをもって原告に損害が発生
しないということはできない。
(2) 前記のとおり,被告は,平成14年10月28日ころから平成15年6月
7日ころまで,当初の1か月を除く6か月以上にわたって,原告との合意に違反し
て許諾なくAのインタビュー記事,音声メッセージ及び肖像写真を本件サイトに掲
載していたものであって,上記債務不履行により原告に損害が生じたことが認めら
れる。
前記1(1)で認定した事実並びに証拠(甲2,4,11ないし13,乙1
0,16)及び弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実が認められる。
ア 本件サイトは,登録会員が月額登録料300円を支払うことにより何度
でもアクセスすることができるものである。本件サイトの登録会員数は各 月ごと
に変動するが,平均して約8000人程度であり,被告は,これら の会員が6か
月以上にわたりアクセス可能な状態においたものである。
イ 実際に「先輩に聞こう」への会員からのアクセス数は,各月3000件
から5000件程度あった。
ウ Aは人気タレントであり,原告においては次のとおりの取引事例が存在
する。
(ア) 原告と株式会社集英社との間で締結された平成15年3月20日付け
広告出演契約によると,原告は,同社の製造販売する「集英社文庫」の広告宣伝活
動のために,Aについて,① 印刷媒体広告のスチール撮影への出演,② 電波媒
体広告,インターネット・ホームページ,携帯電話情報サービスへの露出,③ 印
刷媒体広告及び電波媒体広告,インターネット・ホームページ広告,携帯電話情報
サービスのCM撮影への出演をすることを約し,同社は原告に対し契約料及びCM
撮影出演料として,500万円(源泉税込み,消費税を除く。)を支払うものとさ
れた。
(イ) 原告と株式会社日本経済広告社との間で締結された平成15年8月3
1日付け広告出演契約によると,Aが同社の得意先である株式会社シードの製造・
販売する眼鏡商品「プラスミックス」の新聞広告,雑誌広告,販売ツール制作物
(ポスター,商品カタログ,ノベルティツール,店頭POP類,チラシ),インタ
ーネットホームページ(スチール使用,壁紙ダウンロードサービス等),プロモー
ション用VTR(店頭,展示会等で使用),イベント出演に出演した場合に,同社
は契約料(各1回分のスチール撮影出演料,プロモーションVTR撮影出演料,イ
ベント出演料を含む。)として,1500万円を支払うものとされた。
(ウ) 原告が株式会社ホリプロ大阪支店との間で交わした平成15年8月2
5日付け覚書によると,Aが武庫川女子大学主催の学園祭のトークショーに30分
程度出演した際に,同社は,原告に対し出演料として,100万円を支払うものと
された。
(3) 原告に生じた損害は,その性質上,その額を立証することが極めて困難と
認められる。よって,被告の債務不履行と相当因果関係のある原告の損害額につい
ては,民訴法248条を適用し,以上の事実及び口頭弁論の全趣旨を総合し,イン
タビュー記事,音声メッセージ及び肖像写真分を合わせて,100万円と認める。
(4) 被告は,原告の損害額として被告の利益額を超えるものではない旨主張
し,その利益額も最も多く見積もっても45万9654円にしかならない旨主張す
る。
しかしながら,証拠(乙10)及び弁論の全趣旨によると,被告主張の上
記金額は,本件サイトの会員が1か月に何回「先輩に聞こう」等にアクセスしても
月額登録料が300円であることを前提に計算したものであるところ,損害額の算
定に当たって,具体的なアクセス数を問わず定額の月額登録料を基礎として算定す
る方法自体,採用することはできない。また,上記被告の債務不履行と相当因果関
係のある原告の損害は,被告の利益額に限られるものではなく,原告における取引
事例等諸般の事情を考慮して認定すべきものであるから,被告の上記主張は理由が
ない。
3 結語
以上の次第であるから,その余の争点について判断するまでもなく,原告の
請求は主文の限度で理由がある。
東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 髙 部 眞 規 子
裁判官 上 田 洋 幸
裁判官 宮 崎 拓 也
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