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平成15(ワ)15728民事訴訟 特許権

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裁判所 東京地方裁判所
裁判年月日 平成15年11月12日
事件種別 民事
法令 特許権
キーワード 特許権7回
侵害3回
損害賠償3回
差止1回
主文
事件の概要

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判決文

平成15年(ワ)第15728号損害賠償請求事件
口頭弁論終結日 平成15年9月1日
            判    決
       原   告       ミツク電子工業株式会社
       訴訟代理人弁護士    及 川 昭 二
       被   告       アルプス電気株式会社
       訴訟代理人弁護士    飯 田 秀 郷
同 栗 宇 一 樹
       同            早稲本 和 徳
    同           七 字 賢 彦
同 鈴 木 英 之
同 隈 部 泰 正
同 大 友 良 浩
            主    文
  1 原告の請求を棄却する。
  2 訴訟費用は,原告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
 被告は原告に対し,金5000万円及びこれに対する平成15年7月20日
から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
 本件は,原告が,被告に対して,特許権侵害を理由として損害賠償を求めた
事案である。
 1 争いのない事実等
(1) 原告の特許権
 原告は,以下の特許権(以下「本件特許権」といい,その請求項1の発明
を「本件発明」という。)を有していた。
特許番号     第1602646号
出願年月日    昭和57年5月22日
登録年月日    平成3年3月26日
発明の名称    センサースイッチ
存続期間満了日  平成14年5月22日
特許請求の範囲 別紙特許公報の写しの該当欄記載のとおり。
(2) 構成要件の分説
 本件発明は,以下のとおりの構成要件に分説することができる。
A 絶縁基台に接点ばね片を略平行して埋設し,両接点ばね片の接点を常時
弾力的な接触状態としたリーフスイッチにおいて,
B 一側面に設定幅の案内面を有するガイド兼カバー枠若しくはガイド片の
ガイド部材を,一方の接点ばね片に連結手段を介して連係設置し,該ガイド部材に
対して一定の方向性をもって接触してくる対象体を,上記案内面が該接点ばね片を
反曲させつつ首振り運動して滑り案内するように設け,
C 他方の接点ばね片の一部に検出突部を設けて,該検出突部の先端を上記
案内面より外方に設定寸法突出せしめて設け,
D 上記ガイド部材の案内面に接触した対象体の定位置の変形部の有,無に
より,検出突部が対象体の接触部に押されて接点ばね片を反曲させつつ後退して,
該反曲動作によって接点相互を離隔(開)せしめ,或は,検出突部が案内面から突
立したままの原位置を保つ,即ち,接点も接触(閉)位置を保つようにして,対象
体の変形部の有,無を自動的に検出して作動するようにしたことを特徴とする,セ
ンサースイッチ。
(3) 被告の行為
 被告は,別紙物件目録記載の検出スイッチ(以下「被告製品」という。)
を製造販売している(ただし,製造販売の開始時期については争いがある。)。
(4) 被告製品の構成
 被告製品の構成は,以下のとおりである(別紙物件目録の3.「イ号物件
の構成の説明」,以下,被告製品の構成a,同bなどということがある。)。
a 別紙物件目録第6図に示すように,絶縁基台101に接点ばね片100
A,100Bを左右(接点ばね片100A,100Bの反曲動作の方向に垂直な方
向において)に略平行して埋設され,右の接点ばね片100Bが左の接点ばね片1
00Aから前後方向(接点ばね片100A,100Bの反曲動作の方向)に離れる
向きに所定角度折り曲げられ,左の接点ばね片100Aの先端が接点100aを形
成するように,接点ばね片100A,100Bの反曲動作の方向に垂直な方向にお
いて略直角に曲げられ,両接点ばね片100A,100Bの接点100a,100
bを一定間隔を隔てて相対したリーフスイッチにおいて,
b 第7図に示すように,検出突部100Eの上方から前方に向けて斜めに
傾斜する傾斜面及び前面部とによって形成される設定幅の案内面102を上端部分
に形成するガイド部材(ガイド兼カバー)100Dを,その基端部において絶縁基
台101の枢軸119に回動自在に支持し,且つ,接点ばね片100Aの先端部は
ガイド部材(ガイド兼カバー)100Dの圧接凸部106に当接されると共に,接
点ばね片100Bの検出突部100Eの基部100E’の前方部面の一部はガイド
部材(ガイド兼カバー)100Dの前面部(上記案内面102のうち前面部より成
る部分)の内面に当接されるように設置し,該ガイド部材(ガイド兼カバー)10
0Dに対して上方から接触してくる対象体100Cを滑り案内するように該案内面
102がガイド部材(ガイド兼カバー)100Dに設けられ(対象体100Cが案
内面102に接触することによって該ガイド部材(ガイド兼カバー)100Dが後
方に回動して,接点ばね片100Aは前記圧接凸部106に押圧され,また,接点
ばね片100Bはその一部に設けられた前記検出突部100Eの基部100E’が
ガイド部材(ガイド兼カバー)100Dの前面部の内面に押圧されて,それぞれ後
方に反曲されるように首振り運動する),
c 右の接点ばね片100Bの一部に前記検出突部100Eを設け,該検出
突部100Eの先端は,上記案内面102のうち前面部により成る部分より外方に
設定寸法突出せしめるように設けられ,
d 前記ガイド部材(ガイド兼カバー)100Dの案内面102に接触した
対象体100Cの定位置の変形部104の有無により,検出突部100Eが対象体
100Cの接触部に押されて接点ばね片100Bを反曲させつつ後退して,該反曲
動作によって接点100a,100bを相互に接触(閉)せしめて,或は,検出突
部100Eが案内面102から突出したままの原位置を保つようにして,対象体1
00Cの変形部104の有無を自動的に検出して作動するようにしたことを特徴と
する,スイッチである。
(5) 被告製品の充足性
 被告製品の構成cは,本件発明の構成要件Cを充足する。
(6) 別件訴訟の経過
ア 原告は,本件訴訟に先立つ平成10年7月30日,被告の製造販売に係
る検出スイッチ(被告製品を含む。)が原告の次の特許権(以下,その請求項1の
発明を「別件発明」という。)を侵害するとして,東京地方裁判所に対し,被告を
相手方とする特許権侵害行為の差止及び損害賠償を求めて訴訟を提起した(乙2,
以下「別件訴訟」という。)。
特許番号     第1730090号
出願年月日    昭和57年5月22日
登録年月日    平成5年1月29日
発明の名称    センサースイッチ
特許請求の範囲(別件訴訟提起当時)
「絶縁基台に接点ばね片を上下に略平行して埋設し,両接点ばね片の
接点を一定間隔を隔てて相対したノーマルオープン型リーフスイッチにおいて,検
出突部の前方から上方に設定幅の案内面を形成するガイド兼カバー若しくはガイド
片等のガイド部材を,下の接点ばね片に連結手段を介して連係設置し,該ガイド部
材に対して一定の方向性をもって接触してくる対象体を,上記案内面が該接点ばね
片を反曲させつつ首振り運動して滑り案内するように設け,上の接点ばね片の一部
に検出突部を設けて,該検出突部の先端を上記案内面より外方に設定寸法突出せし
めて設け,上記ガイド部材の案内面に接触した対象体の定位置の変形部の有,無に
より,検出突部が対象体の接触部に押されて接点ばね片を反曲させつつ後退して,
該反曲動作によって接点相互を接触(閉)せしめ,或は,検出突部が案内面から突
立したままの原位置を保つ,即ち,接点も離間(開)位置を保つようにして,対象
体の変形部の有,無を自動的に検出して作動するようにしたことを特徴とする,セ
ンサースイッチ。」
イ 別件発明に係る明細書(乙1)の発明の詳細な説明には,「(Ⅲ)…本
発明の構成」の項に,「本発明は,絶縁基台に接点ばね片を略平行して埋設し,両
接点ばね片の接点を一定間隔を隔てて相対したリーフスイッチにおいて」(4欄9
~11行),「本発明の具体的構成につき説明すると,本発明は絶縁基台1に接点
ばね片A,Bを略平行して埋設し,両接点ばね片A,Bの接点a,bを一定間隔を
隔てて相対したリーフスイッチ,所謂ノーマルオープン型リーフスイッチ(常態に
おいて接点ばね片A,Bの接点a,bが離隔(開)しており,一方の接点ばね片の
押圧反曲によって接点a,bが接触(閉)するタイプのスイッチ)において」(4
欄32~40行)と記載されている(以下,常態において接点ばね片A,Bを略平
行して埋設し,両接点ばね片A,Bの接点a,bが離隔(開)しており,一方の接
点ばね片の押圧反曲によって接点a,bが接触(閉)するタイプのスイッチを意味
する用語として,「ノーマルオープン型リーフスイッチ」を用いる)。
 また,被告製品は,別件訴訟の当事者間に争いのない物件目録(ハ号物
件)の構成の説明において,ノーマルオープン型リーフスイッチであると説明され
ていた(乙2)。
ウ 別件訴訟において,原告の請求は棄却された(乙2)。原告は,東京高
等裁判所に控訴したが,同控訴は棄却され(乙3),さらに上告及び上告受理の申
立てをしたが,いずれも斥けられた(乙4)。
2 争点及び当事者の主張
(1) 被告製品は,本件発明の構成要件Aを充足するか。
(原告の主張)
ア 最も基本的で一般的な1回路1接点のリーフスイッチは,絶縁基台(プ
ラスチック)に2本の接点ばね片を略平行して埋設し(絶縁基台をプラスチック成
形加工するときにインサート成形加工して埋設する),該2本の接点ばね片の先端
部を接点として両接点を相互に接触(スイッチON)若しくは一定寸法離隔(スイ
ッチOFF)した状態に対置し,スイッチ作動時に接点ばね片を外力で押圧反曲し
て両接点を相互に離隔(スイッチOFF)若しくは接触(スイッチON)するよう
に設けるという構成が採用されている。
イ 本件発明に係る明細書(以下「本件明細書」という。)の特許請求の範
囲の構成要件Aの部分(以下「構成要件A」という。以下同じ。)における「絶縁
基台に接点ばね片を略平行して埋設し,両接点ばね片の接点を常時弾力的な接触状
態としたリーフスイッチ」の記載は,最も基本的で一般的な1回路1接点のリーフ
スイッチであって,絶縁基台に2本の接点ばね片を略平行して埋設し,該2本の接
点ばね片の先端部を接点として両接点を相互に接触(スイッチON)した状態に対
置し,スイッチ作動時に接点ばね片を外力で押圧反曲して両接点を相互に離隔(ス
イッチOFF)するように設けるものを指すが,前記アの最も基本的で一般的な1
回路1接点のリーフスイッチを広く含むと解釈されるべきである。
ウ これに対して,被告製品の構成aは,絶縁基台101に2本の接点ばね
片100A,100Bが略平行して埋設され,また,2本平行した接点ばね片10
0A,100Bの先端部の接点100a,100bが一定間隔を隔てて相対して設
けられ(スイッチOFF),スイッチ作動時に接点ばね片100A,100B(主
として100B)が外力で押圧反曲すると接点100a,100bが接触(スイッ
チON)するように設けられている。
 被告製品は,上記構成要件Aの文言には含まれないが,前記の最も基本
的な一般的1回路1接点のリーフスイッチの基本的構成と一致する。
ウ したがって,被告製品の構成aは,本件発明の構成要件Aを充足する。
(被告の反論)
ア 本件発明の構成要件Aにおける「両接点ばね片の接点を常時弾力的な接
触状態としたリーフスイッチ」とは,常態において接点ばね片A,Bの接点a,b
が接触(閉)しており,一方の接点ばね片の押圧反曲によって接点a,bが離隔
(開)するタイプのスイッチ(以下,「ノーマルクローズ型リーフスイッチ」とい
う。)を意味するものと解すべきである。
イ これに対して,被告製品aは,「絶縁基台101に接点ばね片100
A,100Bを左右(接点ばね片100A,100Bの反曲動作の方向に垂直な方
向において)に略平行して埋設され,・・・両接点ばね片100A,100Bの接
点100a,100bを一定間隔を隔てて相対したリーフスイッチ」(構成a)で
あり,いわゆるノーマルオープン型リーフスイッチである。
ウ したがって,被告製品は,構成要件Aを充足しない。
(2) 被告製品は,本件発明の構成要件Bを充足するか。
(原告の主張)
ア 構成要件Bの「ガイド部材」とは,検出突部の前方から「設定幅の案内
面を有するガイド兼カバー若しくはガイド片」である。これに対して,被告製品の
ガイド部材(ガイド兼カバー)100Dは「第7図に示すように,検出突部100
Eの上方から前方に向けて斜めに傾斜面及び前面部とによって形成される設定幅の
案内面102を上端部に形成」し,「その基端部において絶縁基台101の枢軸1
19に回動自在に支持し」たものであるから,構成要件Bの「ガイド部材」に当た
る。
イ 構成要件Bは,前記のガイド部材を「一方の接点ばね片に連係手段を介
して連係設置し」,その連係設置したことによって「該ガイド部材に対して一定の
方向性をもって接触してくる対象体を,上記案内面が該接点ばね片を反曲させつつ
首振り運動して滑り案内するように設け」ると記載されている。
 これに対し,被告製品は,「接点ばね片100Aの先端部はガイド部材
(ガイド兼カバー)100Dの圧接凸部106に当接されると共に」,「該ガイド
部材(ガイド兼カバー)100Dに対して上方から接触してくる対象体100Cを
滑り案内するように該案内面102がガイド部材(ガイド兼カバー)100Dに設
けられ」ている。被告製品は,このような構成が採られることによって,「対象体
100Cが案内面102に接触することによって該ガイド部材(ガイド兼カバー)
100Dが後方に回動して,接点ばね片100Aは前記圧接凸部106に押圧さ
れ,また,接点ばね片100Bはその一部に設けられた前記検出突部100Eの基
部100E’ガイド部材(ガイド兼カバー)100Dの前面部の内面に押圧され
て,それぞれ後方に反曲されるように首振り運動する」という作用が可能となる。
ウ そうすると,被告製品における「接点ばね片100Aの先端部」を「圧
接凸部106」に「当接」するという手段は,構成要件Bにおける「連携手段」に
該当する。したがって,被告製品は,本件発明の構成要件Bを充足する。
(被告の反論)
 構成要件Bは,「ガイド兼カバー枠若しくはガイド片のガイド部材を,一
方の接点ばね片に連結手段を介して連係設置」と記載されている。
 これに対して,被告製品のガイド部材(ガイド兼カバー枠)100Dは,
圧接突部と「連結」(つないでひと続きにすること)していない。
 したがって,被告製品は,構成要件Bを充足しない。
(3) 被告製品は,本件発明の構成要件Dを充足するか。
(原告の主張)
 構成要件Dは,「該反曲動作によって接点相互を離隔(開)せしめ,或
は,検出突部が案内面から突出したままの原位置を保つ,即ち,接点も接触(閉)
位置を保つ」と記載されている。本件発明の構成要件Dは,文言にかかわらず,接
点相互が離隔若しくは接触(スイッチOFF若しくはON)し,あるいは接点相互
が接触若しくは離隔(スイッチON若しくはOFF)した原位置を保つようにし
て,対象体の変形部の有無を自動的に検出して作動するようにしたものを広く指す
というべきである。
 これに対して,被告製品は,「該反曲動作によって接点100a,100
bを相互に接触(閉)せしめて,或は,検出突部100Eが案内面102から突出
したままの原位置を保つ」構成が採られているが,対象体の変形部の有無を自動的
に検出して作動するようにしたものであるから,本件発明の構成要件Dを充足す
る。
(被告の反論)
 構成要件Dは,「該反曲動作によって接点相互を離隔(開)せしめ,或
は,検出突部が案内面から突出したままの原位置を保つ,即ち,接点も接触(閉)
位置を保つ」と記載されている。
 これに対して,被告製品は,「該反曲動作によって接点100a,100
bを相互に接触(閉)せしめて,或は,検出突部100Eが案内面102から突出
したままの原位置を保つ」構成が採られている。
 このように,本件発明と被告製品は,全く正反対の構成が採られており,
被告製品は,構成要件Dを充足しない。
(4) 原告の損害額はいくらか。
(原告の主張)
 被告は,原告の本件特許権の存在を知りながらこれを無視し,平成6年3
月ころより現在に至るまで被告製品を製造販売しており,これにより,原告は少な
くとも2億円の損害を被った。
 よって,原告は,被告に対し,内金として5000万円を請求する。
(被告の認否)
 被告が被告製品を平成9年12月から製造販売していることは認め,その
余の主張は争う。
第3 当裁判所の判断
1 構成要件Aの充足性
(1) 本件発明の構成要件Aは,「絶縁基台に接点ばね片を略平行して埋設し,
両接点ばね片の接点を常時弾力的な接触状態としたリーフスイッチにおいて」と記
載されている。また,本件明細書(甲2)の「発明の詳細な説明」欄には,
「(Ⅲ)…本発明の構成」の項に,「本発明は,絶縁基台に接点ばね片を略平行し
て埋設し,両接点ばね片の接点を常時弾力的な接触状態としたリーフスイッチにお
いて」(4欄9~11行),「本発明の具体的構成につき説明すると,本発明は絶
縁基台1に接点ばね片A,Bを略平行して埋没し,両接点ばね方A,Bの接点a,
bを,例えば接点ばね片Bを曲成して,常時弾力的に接触したリーフスイッチ,所
謂ノーマルクローズ型リーフスイッチ(常態において接点ばね片A,Bの接点a,
bが接触(閉)しており,一方の接点ばね片の押圧反曲によって接点a,bが離隔
(開)するタイプのスイッチ)において」(4欄32~41行)と記載されてい
る。以上によれば,構成要件Aにいう「両接点ばね片の接点を常時弾力的な接触状
態としたリーフスイッチ」とは,ノーマルクローズ型リーフスイッチに限定される
ものと解すべきである。
(2) これに対して,被告製品は,「絶縁基台101に接点ばね片100A,1
00Bを左右(接点ばね片100A,100Bの反曲動作の方向に垂直な方向にお
いて)に略平行して埋設され,右の接点ばね片100Bが左の接点ばね片100A
から前後方向(接点ばね片100A,100Bの反曲動作の方向)に離れる向きに
所定角度折り曲げられ,左の接点ばね片100Aの先端が接点100aを形成する
ように,接点ばね片100A,100Bの反曲動作の方向に垂直な方向において略
直角に曲げられ,両接点ばね片100A,100Bの接点100a,100bを一
定間隔を隔てて相対したリーフスイッチにおいて」(構成a),接点ばね片100
Bの「反曲動作によって接点100a,100bを相互に接触(閉)せしめ・・・
るようにしたことを特徴とする,スイッチ」(構成d)との構成が採用されたノー
マルオープン型リーフスイッチである。なお,被告製品がノーマルオープン型リー
フスイッチであるという点は,別件訴訟においても,原,被告間で争いのない事実
である(前記第2の1(争いのない事実等)(6)イ)。
 そうすると,被告製品は,ノーマルクローズ型リーフスイッチではないの
で,構成要件Aの「両接点ばね片の接点を常時弾力的な接触状態としたリーフスイ
ッチ」には当たらない。
 したがって,被告製品は,構成要件Aを充足しない。
(3) 原告は,構成要件Aの「両接点ばね片の接点を常時弾力的な接触状態とし
たリーフスイッチ」は,最も基本的で一般的なリーフスイッチであれば広く含むと
の解釈を前提として,被告製品の構成aは,構成要件Aを充足する旨主張する。し
かし,構成要件Aの「両接点ばね片の接点を常時弾力的な接触状態としたリーフス
イッチ」に関する原告の主張は,本件明細書の「特許請求の範囲」の記載に基づか
ないものであって,主張自体理由がない。
2 構成要件Dの充足性
(1) 構成要件Dは,「上記ガイド部材の案内面に接触した対象体の定位置の変
形部の有,無により,検出突部が対象体の接触部に押されて接点ばね片を反曲させ
つつ後退して,該反曲動作によって接点相互を離隔(開)せしめ,或は,検出突部
が案内面から突立したままの原位置を保つ,即ち,接点も接触(閉)位置を保つよ
うにして,対象体の変形部の有,無を自動的に検出して作動するようにしたことを
特徴とする,センサースイッチ。」と記載されている。上記構成要件における「セ
ンサースイッチ」は,常態において接触状態にある両接点ばね片の接点が,一方の
接点ばね片の反曲動作により離隔するものを指すと解することは明らかである。
(2) これに対して,被告製品は,「前記ガイド部材(ガイド兼カバー)100
Dの案内面102に接触した対象体100Cの定位置の変形部104の有無によ
り,検出突部100Eが対象体100Cの接触部に押されて接点ばね片100Bを
反曲させつつ後退して,該反曲動作によって接点100a,100bを相互に接触
(閉)せしめて,或は,検出突部100Eが案内面102から突出したままの原位
置を保つようにして,対象体100Cの変形部104の有無を自動的に検出して作
動するようにしたことを特徴とする,スイッチ」(構成d)である。そうすると,
被告製品のスイッチは,常態において一定間隔を隔てて相対した両接点ばね片10
0A,100Bの接点100a,100bが,接点ばね片100Bの反曲動作によ
り相互に接触するというものであるから,構成要件Dの前記「常態において接触状
態にある両接点ばね片の接点が,一方の接点ばね片の反曲動作により離隔する」と
の構成を有しない。
 したがって,被告製品は,構成要件Dを充足しない。
3 結論
 以上のとおりであるから,被告製品は,その余の点を判断するまでもなく,
本件発明の技術的範囲に属しない。
 よって,原告の請求は理由がないから,これを棄却することとし,主文のと
おり判決する。
  東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官   飯  村  敏  明
裁判官 榎  戸  道  也
裁判官 佐  野     信
(別紙)
物件目録第1図~第4図・第6図~第8図・第10図~17図・第20図

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