平成15(行ケ)88行政訴訟 特許権
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裁判所 |
東京高等裁判所
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裁判年月日 |
平成15年7月17日 |
事件種別 |
民事 |
法令 |
特許権
特許法29条2項2回
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キーワード |
刊行物7回 審決4回 分割2回 特許権2回 訂正審判1回 優先権1回
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主文 |
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事件の概要 |
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判決文
平成15年(行ケ)第88号 特許取消決定取消請求事件
平成15年7月17日判決言渡,平成15年7月15日口頭弁論終結
判 決
原 告 東陶機器株式会社
訴訟代理人弁護士 吉武賢次,宮嶋学,弁理士 中村行孝,紺野昭男,高村雅晴
被 告 特許庁長官 今井康夫
指定代理人 石井淑久,石井克彦,一色由美子,林栄二,大橋信彦
主 文
特許庁が異議2000-70688号事件について平成15年1月23日にした
決定を取り消す。
訴訟費用は各自の負担とする。
事実及び理由
第1 原告の求めた裁判
主文第1項と同旨の判決。
第2 事案の概要
本件は,後記本件発明の特許権者である原告が,特許異議の申立てを受けた特許
庁により本件特許を取り消す旨の決定がされたため,同決定の取消しを求めた事案
である。
1 前提となる事実等
(1) 特許庁における手続の経緯
(1-1) 本件特許
特許権者:原告
発明の名称:「親水性の光触媒性表面を備えた複合材」
特許出願日:平成8年3月21日(優先権主張1995年3月20日外6件,日本
国)を国際出願日とする特願平8-528290号の一部を新たな出願とするため
平成9年3月14日に分割出願した特願平9-82156号の一部を更に新たな出
願として平成9年5月30日に分割出願したもの(特願平9-157458号)
設定登録日:平成11年6月25日
特許番号:第2943768号
(1-2) 本件異議手続
特許異議事件番号:異議2000-70688号
訂正請求日:平成12年12月26日
手続補正:平成13年8月27日付け
異議の決定日:平成15年1月23日
決定の結論:「特許第2943768号の請求項1ないし3に係る特許を取り消
す。」
決定謄本送達日:平成15年2月14日(原告に対し)
(2) 決定の理由の要旨は,上記補正及び訂正は認められず,上記訂正前の請求項
1ないし3に係る発明は,刊行物1ないし6に記載された発明に基づいて当業者が
容易に発明できたものであるから,特許法29条2項により特許を受けることがで
きない,というものである(刊行物1とは特開昭63-100042号公報,刊行
物2とは日本化学会誌1986[1](昭和61年1月10日,日本化学会発行),刊
行物3とは清野学著「酸化チタン 物性と応用技術」(1991年6月25日,技報堂
出版発行),刊行物4とは特開平4-225301号公報,刊行物5とは特開昭6
3-5301号公報,刊行物6とは特開昭61-83106号公報である。)。
(3) 決定が対象とした発明の要旨は,別紙「① 訂正前の発明の要旨」のとおり
である。
(4) 原告は,本訴係属中の平成15年5月2日,本件特許につき,特許請求の範
囲の減縮を目的として,訂正審判の請求をしたところ(訂正2003-39089
号),同年6月27日,当該訂正を認める旨の審決があり,その謄本は同年7月9日
に原告に送達され,訂正審決は確定した。
(5) 上記訂正審決による訂正後の発明の要旨は,別紙「② 訂正後の発明の要
旨」のとおりである。
2 原告主張の決定取消事由
決定は,本件発明の要旨を別紙「① 訂正前の発明の要旨」のとおり認定し,こ
れに基づき,本件発明は特許法29条2項により特許を受けることができないもの
であるなどとしたが,特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正を認める審決が確定
し,本件発明の要旨が別紙「② 訂正後の発明の要旨」のとおり訂正されたことに
より,決定は,結果的に本件発明の要旨の認定を誤ったことになり,瑕疵があるも
のとして取消しを免れない。
第3 当裁判所の判断
本件証拠及び弁論の全趣旨によれば,第2の1に記載の事実関係を認めることが
でき,これらの事実関係に照らせば,原告主張の事由により,決定は取り消される
べきものであり,本訴請求は理由がある。
よって,原告の請求は理由があるからこれを認容し,訴訟費用の負担につき行訴
法7条,民訴法62条を適用して,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第18民事部
裁判長裁判官 塚 原 朋 一
裁判官 塩 月 秀 平
裁判官 田 中 昌 利
【別紙】
① 訂正前の発明の要旨
【請求項1】基材と,前記基材の表面に接合されアナターゼ型チタニア結晶または
ルチル型チタニア結晶からなる表面層を備え,前記アナターゼ型チタニア結晶また
はルチル型チタニア結晶は,前記複合材の表面を,光励起に応じて,水との接触角
に換算して約10°以下の水濡れ性を呈するべく親水性になすものであることを特
徴とする,親水性複合材。
【請求項2】請求項1に記載の親水性複合材からなる,防曇性部材。
【請求項3】請求項1に記載の親水性複合材からなる,自己浄化性部材。
② 訂正後の発明の要旨
【請求項1】基材と,前記基材の表面に接合された,アナターゼ型チタニア結晶ま
たはルチル型チタニア結晶からなる表面層を備え,前記アナターゼ型チタニア結晶
またはルチル型チタニア結晶は,前記複合材の表面層の表面を,太陽光による光励
起に応じて,水との接触角に換算して約10°以下の水濡れ性を呈するべく親水性
になすものであることを特徴とする親水性複合材からなる,防曇性部材。
【請求項2】基材と,前記基材の表面に接合された,アナターゼ型チタニア結晶ま
たはルチル型チタニア結晶からなる表面層を備え,前記アナターゼ型チタニア結晶
またはルチル型チタニア結晶は,前記複合材の表面層の表面を,太陽光による光励
起に応じて,水との接触角に換算して約10°以下の水濡れ性を呈するべく親水性
になすものであることを特徴とする親水性複合材からなる,太陽光があたり,時折
降雨にさらされ,その結果表面に付着した汚れが洗い流され,表面が清浄化する環
境下において用いられる,降雨により浄化される,自己浄化性部材。
以上
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