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平成13(ワ)23480民事訴訟 実用新案権

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裁判所 東京地方裁判所
裁判年月日 平成15年7月4日
事件種別 民事
法令 実用新案権
実用新案法3条1項3号1回
実用新案法29条3項1回
実用新案法3条2項1回
実用新案法12条1項1回
実用新案法3条1項1回
キーワード 無効28回
実用新案権22回
無効審判13回
審決12回
実施10回
侵害6回
刊行物3回
損害賠償2回
許諾1回
特許権1回
差止1回
主文
事件の概要

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判決文

平成13年(ワ)第23480号 実用新案権侵害差止等請求事件
(口頭弁論終結の日 平成15年4月17日)
             判       決
       原      告      京和装備株式会社
       訴訟代理人弁護士      松  田  浩  明
       補佐人弁理士        染  谷     仁
       被      告      パラマウントベッド株式会社
       訴訟代理人弁護士      竹  川  哲  雄
       同             岡     伸  浩
       訴訟復代理人弁護士     髙  木  亮  二
       補佐人弁理士        三  觜  晃  司
             主       文
     1 原告の請求を棄却する。
     2 訴訟費用は原告の負担とする。
             事実及び理由
第1 原告の請求
   被告は,原告に対し,20億円及びこれに対する平成13年11月8日(訴
状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
   本件は,マットレスの滑り落ち防止機構を備えたベッドの考案に係る実用新
案権を有していた原告が,別紙物件目録記載のベッドは上記実用新案権に係る考案
の技術的範囲に属しており,被告が上記ベッドを製造・販売する行為は同実用新案
権を侵害する行為に当たると主張して,損害賠償を求めている事案である。
 1 争いのない事実
  (1) 原告は,下記の実用新案権を有していた(以下,この実用新案権を「本件
実用新案権」といい,その考案を「本件考案」という。本判決末尾添付の本件実用
新案権に係る実用新案公報〔甲2〕参照。なお,この実用新案公報を以下「本件公
報」という。)。
      登録番号   第1908777号
      考案の名称   マットレスの滑り落ち防止機構を備えたベッド
      出  願  日   昭和60年7月19日
      出願公告日   平成3年6月4日
      登  録  日   平成4年5月26日
      存続期間満了日   平成12年7月19日
  (2) 本件実用新案権に係る明細書(以下「本件明細書」という。)における,
実用新案登録請求の範囲の記載は,以下のとおりである。
    「鋼板,合成樹脂板等の表面平滑な床板の端縁あるいはその他の任意の個
所に,表面がぎざぎざな面で形成された滑り防止片を複数個付着してなり,これに
より床板上に配置されるマットレスの滑り落ちを防止するようにしたことを特徴と
するマットレスの滑り落ち防止機構を備えたベッド。」
  (3) 本件考案を構成要件に分説すると,下記AないしDのとおりである(以
下,分説した各構成要件を,その記号に従い「構成要件A」などという。)。
   A 鋼板,合成樹脂板等の表面平滑な床板を有し,
   B 上記床板の端縁あるいはその他の任意の個所に,表面がぎざぎざな面で
形成された滑り防止片が複数個付着され,
   C 上記滑り防止片の付着により,床板上に配置されるマットレスの滑り落
ちを防止するようにしたことを特徴とする,
   D マットレスの滑り落ち防止機構を備えたベッド。
  (4) 被告は,本件実用新案権の存続期間中に別紙被告商品目録記載の各商品
(以下「被告各商品」という。)を製造・販売していた。
  (5) 被告各商品のうち,型番「KA-4534」(以下「被告製品」とい
う。)の具体的な構成は,別紙物件目録の【構成の説明】欄記載のとおりであるが
(同欄記載に係る被告製品の各構成を,その番号に従い「被告製品構成1」などと
いう。),同製品は,全体として,「マットレスの滑り落ち防止機構を備えたベッ
ド」であるから,構成要件Dを充足する。
    また,被告製品における滑り防止片3は,その表面にベッドの長手方向に
延びる断面三角形状の多数の溝が形成され,かつ,臀部床板1bと大腿部床板1c
の両端縁に合計4つ取り付けられたものであるから(被告製品構成9),「表面が
ぎざぎざな面で形成され」,「床板の端縁に‥‥‥複数個付着され」(構成要件
B)た滑り防止片に該当する。したがって,被告製品は,構成要件Bを充足する。
  (6) なお,被告は,平成10年12月30日,本件実用新案権に対して無効審
判の申立をしたが(特許庁平成11年審判第35010号事件。以下「第1次無効
審判」という。),特許庁は,平成11年12月16日,上記審判の請求は成り立
たない旨の審決(甲12。以下「第1次審決」という。)をした。これに対する取
消訴訟の提起がされず,同審決は確定した。
    被告は,平成12年7月24日,再び本件実用新案権に対して無効審判の
申立をし(特許庁無効2000-35405号事件。以下「第2次無効審判」とい
う。),特許庁は,平成13年2月5日,上記審判の請求は成り立たない旨の審決
(乙31。以下「第2次審決」という。)をした。しかるに,審決取消訴訟が提起
され(東京高裁平成13年(行ケ)第127号),平成14年12月26日,東京
高等裁判所は,同審決を取り消す旨の判決(甲22。以下単に「第2次審決取消判
決」という。)をした。上告ないし上告受理の申立がされず,同判決は確定した。
    また,被告は,第2次審決に対する取消訴訟が係属中の平成14年10月
23日,新たな無効事由を主張して,さらに本件実用新案権に対する無効審判の申
立をした(特許庁無効2002-35457号事件。以下「第3次無効審判」とい
う。)。
  (7) 原告は,第2次審決取消判決を受けて,平成15年1月10日,第3次無
効審判手続中において,実用新案登録請求の範囲を下記のとおり訂正することなど
を内容とする訂正請求(甲24。以下「第1次訂正請求」という。)をした。
    「鋼板,合成樹脂板等の表面平滑な床板の端縁あるいはその他の任意の個
所に,添付図面の第1図乃至第3図に示されるような大きさを有し,表面が添付図
面の第2図および第3図に示されるようなぎざぎざな面で形成された滑り防止片を
複数個付着してなり,これにより床板上に配置されるマットレスの滑り落ちを防止
するようにしたことを特徴とするマットレスの滑り落ち防止機構を備えたベッ
ド。」
  (8) 上記第1次訂正請求は,第3次無効審判手続において審理されることにな
ったが,平成15年3月19日付けで,特許庁から,同訂正請求に対する拒絶理由
通知(甲29)が発された。
    特許庁は,同通知において,上記(7)記載に係る実用新案登録請求の範囲の
訂正に関し,「図面は考案の一実施例を示すものであり,かつまた,当該図面に示
された内容は,文章で表現されたものと異なり多義的な理解が可能で,その技術的
意義があいまいとなることから,図面を引用する表現は,通常,技術的事項を明確
に特定するものではないといえる。」とした上で,上記訂正の内容を具体的に検討
しても,その技術的意義は,本件公報の第1図に示されたものから,わずかに,そ
の「滑り防止片」の長さの一例について,おおよその寸法を推測させるにとどま
り,実用新案登録請求の範囲に記載された「滑り防止片」の大きさや,「ぎざぎざ
な面」の具体的な寸法を明確に特定するものとはいえず,また,同請求の範囲を減
縮するものともいえないから,第1次訂正請求を認めることはできない旨の判断を
示した。
  (9) 原告は,上記拒絶理由通知を受け,第3次無効審判手続において,平成1
5年4月16日付け手続補正書(甲30)をもって,改めて,前記実用新案登録請
求の範囲を下記のとおり訂正することなどを内容とする訂正請求をした(以下「第
2次訂正請求」という。)。
    「鋼板,合成樹脂板等の表面平滑な床板の両端縁に,表面がぎざぎざな面
で形成された滑り防止片を複数個付着してなり,これにより床板上に配置されるマ
ットレスの滑り落ちを防止するようにしたことを特徴とするマットレスの滑り落ち
防止機構を備えたベッド。」
 2 争点
  (1) 被告製品が本件考案の構成要件を文言上充足し,本件考案の技術的範囲に
属するかどうか(いわゆる文言侵害の成否)(争点1)。
    すなわち,被告製品が,構成要件A及びCをいずれも充足し,本件考案の
技術的範囲に属するものと認められるかどうか。
   ア 構成要件Aの充足性(争点1ア)
     被告製品の床板1aないし1dは,いずれも,板体14の周縁を折り曲
げて下側が開口された箱状体に構成されており,箱状体の上板には,底面に長孔6
を有する細長い窪み7が,多数形成されている(被告製品構成4)。
     このような形状の床板が,「表面平滑な床板」(構成要件A)に該当す
るか。
   イ 構成要件Cの充足性(争点1イ)
     後記のとおり,被告は,被告製品においては,床板上1aないし1dに
配置されたマットレスが,これら床板に多数配された細長い窪み7の凹部に落ち込
んだ状態になることによって,マットレスの滑り落ち防止効果が生じるものである
旨を主張し,この点に関する証拠を提出している。
     以上を前提にしても,なお,被告製品が,「滑り防止片の付着により,
床板上に配置されるマットレスの滑り落ちを防止するようにしたことを特徴とす
る」(構成要件C)ものとして,構成要件Cを充足するか。
  (2) 被告製品が本件考案の構成と均等なものとして,本件考案の技術的範囲に
属するかどうか(いわゆる均等の成否)(争点2)。
    すなわち,被告製品の床板1が「表面平滑な床板」(構成要件A)に当た
らないとした場合,本件考案との関係において,被告製品の床板は,板体の周縁を
折り曲げて下側が開口された箱状体に構成され,その箱状体の上板には,底面に長
孔を有する細長い窪みが,多数形成されている(前記被告製品構成4)という相違
点が存在することになる。
    このような相違点の存在を前提に,いわゆる均等論により,被告製品が本
件考案の技術的範囲に属するものと認められるか。
  (3) 本件実用新案権に無効事由が存在することが明らかであり,本件実用新案
権に基づく原告の本訴請求は,権利の濫用に当たるものとして許されないか(争点
3)。
  (4) 原告の損害等の額(争点4)。
第3 争点に関する当事者の主張
 1 争点1ア(構成要件Aの充足性)について
  (原告の主張)
  ア ベッドの床板面が平滑な場合には,患者等の伏床者の動きによって,床板
面に載せたマットレスが滑り落ちることがあり,危険である。そこで,従来技術に
おいては,短冊状の細長い板を,間隔を空けて複数個並列してすのこ状に形成し,
これをベッドの床板に使用していた。このようなすのこ状の床板においては,マッ
トレスが短冊の隙間に落ち込んで,短冊の角に引っかかることにより,滑り落ちを
防止できるからである。
    しかし,上記のすのこ状床板は,製造が厄介であるのみならず,マットレ
スが傷つきやすいという欠点を有していた。そこで,これらの欠点を解消するた
め,プレス成形等の容易な方法により製造でき,かつ,マットレスが引っかかって
傷つく原因となる隙間のない床板を開発することが必要となった。その反面,この
ような床板を構成すると,必然的にマットレスが滑り落ちやすくならざるを得な
い。
  イ そこで,本件考案は,プレス成形により製作された鋼板,合成樹脂板など
の表面平滑な床板の端縁あるいはその他の任意の個所に,表面がぎざぎざな面で形
成された滑り防止片を複数個付着することにより,プレス成形による床板の容易な
製造と,マットレスを傷つけることのない滑り防止効果の双方を実現した。
    上記のような考案の経緯に照らせば,構成要件Aの「表面平滑な床板」と
は,通常の用語例における「表面平滑」の意味にとどまらず,①プレス成形により
製作され,すのこ状床板のようにマットレスが落ち込んで引っかかる隙間がなく,
かつ,②滑り防止片を容易に付着し得る形状であるものを広く指すものと解すべき
である。
  ウ このような解釈は,本件考案出願当時のベッド床板に関する技術の状況や
用語例からも,裏付けられる。
    すなわち,有力なベッド製造会社各社のカタログ(甲13~21)から分
かるとおり,出願当時,①鋼板プレス成形による床板,②すのこ状の床板,③ワイ
ヤー状の床板の,主として3種類のものが用いられており,上記①の鋼板プレス成
形による床板には,被告会社の製品を含め,ほぼ例外なく,強度保持のための窪み
と通気性を高めるための穴が空けられており,完全に平らな鋼板による床板は,存
在しなかった。これは,床板の強度保持や通気性確保のことを考えれば,いわば当
然のことである。
    しかも,被告自身が,昭和55年当時の自社製品カタログ(甲13)にお
いて,鋼板プレスで成形された,窪みや穴を伴う形状の床板の製品を,「軽くてじ
ょうぶな鋼板製です。強度を増すために縦横に溝を配し,通気性を良くするために
穴があけられています。なめらかな表面はベッドメーキングを楽にし,清拭,消毒
をしやすくします」と説明し,宣伝している。
    上記から分かるとおり,少なくともこの当時のベッド業界において,ベッ
ドの床板表面を「滑らか」と表現した場合,完全に平らで滑らかな床板が想定され
ていたのではなく,むしろ,強度保持のための窪みや通気性確保のための穴を伴う
形状のものが,当然に想定されていたのである。
  エ 被告製品における細長い窪み7は,幅が6.5cm,深さが0.9cm
で,この中に幅2.5cm,長さ5cmの長孔6を有するものであるが,その側壁
が下方から上方に向けてテーパー状に拡がっており,側壁と床板表面との角(凹部
の上周縁)は丸み(アール)を持たせて成形されている。このようなテーパーかつ
アール付き形状の床板においては,マットレスが落ち込んで引っかかることがほと
んどないのは,明らかであるから,被告製品の床板は,上記イ①の要件を充たして
いる。また,この床板が表面部に滑り防止片を容易に付着し得る形状であること
も,また明らかであるから,同②の要件も充たされている。
    したがって,被告製品の床板は「表面平滑な」ものと認められ,同製品は
構成要件Aを充足する。
  (被告の主張)
  ア 通常の用語例からすれば,また,本件考案の実施例を示す本件公報の図1
に照らしても,「表面平滑」とは,表面に凹凸がなく,平らで滑らかな状態を指す
ものと解するのが自然である。
    しかるところ,被告製品の床板1a~1dは,板体の周縁を折り曲げて下
側が開口された箱状体に構成されており,箱状体の上板には,底面に長孔を有する
細長い窪みが,多数形成されている(被告製品構成4)。このような形状の床板
が,「表面平滑」といえないことは明らかである。
    仮に原告が主張するように,被告製品のような,ほぼ全面にわたり細長い
窪みのある床板も「表面平滑な床板」に含まれるのであれば,原告は,実用新案登
録請求の範囲に,そのことを具体的に記載するか,少なくとも,考案の詳細な説明
において,そのことを開示すべきであった。原告はそれをせず,上記請求の範囲に
「表面平滑な床板」とだけ記載し,本件考案の構成要件を特定し,実用新案登録を
受けたのであるから,「表面平滑」の文言の通常の意味に基づいて,その技術的範
囲が解釈されるべきである。
  イ 被告製品においては,上記のとおり,床板のほぼ全面にわたって細長い窪
みが形成されているから,荷重により弾性変形が生じるマットレスの場合には,窪
みに対応するマットレスの底面が,窪み部分(凹部)に落ち込む状態となり,側壁
と床板表面との角(凹部の上周縁)の部分において,マットレスに引っかかりが生
じる。これが横方向の動きに対する抵抗となり,マットレスの滑り落ち防止として
機能する。
    このことは,従来技術であるすのこ状床板との比較によっても,明らかで
ある。すなわち,被告製品と同様に,床板が,背部床板,臀部床板,大腿部床板及
び脚部床板を連結してなる,すのこ状床板のベッド(例えば,乙2のカタログ18
頁に記載された型番「KA-243」のベッド)につき,すのこ板間の隙間により
形成される空間の全面積が,床板の全面積に対してどの程度の割合になるかを,図
から求めてみると,臀部床板については約17%,大腿部床板については約20%
である。これに対し,被告製品の床板における,細長い窪みが存在することにより
生じる空間の割合は,臀部床板について約19%,大腿部床板について約26%で
あるから(別紙物件目録【構成の説明】参照),すのこ状の床板における空間の割
合よりも,被告製品における空間の割合の方が大きいことになる。したがって,空
間に落ち込むマットレスの面積も,被告製品の方が大きく,従来技術であるすのこ
状の床板による滑り落ち防止効果よりも,被告製品の床板の細長い窪みにより実現
する滑り落ち防止効果の方が,大きくなる。
    このように,被告製品において,滑り防止片が取り付けられている臀部床
板と大腿部床板は,滑り防止片の存在よりも,むしろ細長い窪みが形成されている
ことにより,すのこ状板と同等か,それ以上のマットレス滑り落ち防止機能を有す
るものである。このような床板を「表面平滑な床板」ということはできない。
  ウ なお,原告は,被告会社の昭和55年当時のカタログ(甲13)に,「滑
らかな表面」との記載があることをもって,「表面平滑」に関する自らの解釈を根
拠づけようとしている。
    しかしながら,上記の記載は,単に,床板の表面が滑らかに仕上がった状
態を表現したものにすぎない。すなわち,鋼板をプレス成形したままの状態では,
表面のバリやエッジ部分の鋭利な角が生じており,製品にならない。そこで,鋼板
の全面に塗装を施すことが普通に行われており,そのことによって,平らな部分
も,窪みの部分も,穴のエッジも,「滑らかに」仕上がることになる。「滑らかな
表面」とは,このような塗装を施した後の仕上がりの状態を指して使われているの
である。また,そもそも,表面が単に滑らかであるのと,表面が平らで,かつ滑ら
か(平滑)であるのとは,言葉の意味として明らかに別個のことであるから,この
ことに照らしても,原告の主張は当を得ていない。
 2 争点1イ(構成要件Cの充足性)について
  (原告の主張)
  ア 原告は,被告製品と同じ形状の床板の被告商品(KA-4524)を用
い,① 窪みがあり,滑り防止片が付いている被告製品そのままの状態の床板,②
 上記①の床板から滑り防止片を取り除いたもの,③ 上記①の床板に平らな鋼板
を取り付けたもの,④ 上記③の床板に,被告製品から取り外した滑り防止片を,
被告製品と同様の位置に付着したもの,という4種類の床板を準備した上で,マッ
トレスを載せ,その上に重さ20kgの砂袋をベッド長手方向に3個並べて置き,
手動のリフトでベッド全体を少しずつ傾斜させて,床板上のマットレスが滑り落ち
始める傾斜角度を計測する実験を行った(甲8参照)。
    その結果,マットレスが滑り落ち始める傾斜角度は,上記①において2
5.9度,同②において14.6度,同③において15.4度,同④において3
1.1度であった。また,同②においては,滑り始めてから約8秒後にマットレス
が落下したのに対し,同③においては,約65秒後に落下した。
    上記の結果から,滑り落ち始めの傾斜角度は,滑り落ち防止片が取り付け
られた床板(上記①及び④)と,取り付けられていない床板(上記②及び③)とで
大きく異なること,また,滑り落ち防止片がない床板については,窪みのない平ら
な鋼板のもの(上記③)の方が,むしろ,窪みのある形状のもの(同②)よりも,
滑り落ち防止効果が高い(窪みが存在することにより,床板とマットレスの接触面
積が減少し,摩擦抵抗が減ったことが原因と推測される。)ことが判明した。
    上記によれば,被告製品において滑り落ち防止効果を果たすのは,あくま
で滑り防止片であり,マットレスが窪みに落ち込むことにより滑り落ち防止効果が
生じるという被告の後記主張は,誤りである。
    したがって,被告製品は,「滑り防止片の付着により,床板上に配置され
るマットレスの滑り落ちを防止するようにしたことを特徴とする」(構成要件C)
ものと認められ,構成要件Cを充足する。
  イ なお,被告は,後記のとおり,床板に設けられた窪みがマットレスの滑り
を防止する機能を果たす旨を主張する。
    しかしながら,被告自身が,被告製品を含む商品カタログ(甲4~7)に
おいて,床板の端部に取り付けたぎざぎざ付きのゴム片(滑り防止片)を,マット
レスのズレ防止機能を果たすものとして記載するとともに,床板上の窪み及び穴に
ついては,通気性を高めるために設置したものである旨を記載している(甲4〔1
3頁等〕,甲5〔10頁等〕など)。すなわち,被告は,マットレスのズレ防止機
能は滑り防止片の効用であること,及び,窪みや穴は通気性を高めるためのもので
あることを,いずれも自認しているのであって,滑り防止機能を果たすのは窪みで
ある旨の上記主張は,本訴において,被告製品が本件考案の構成要件Cを充足する
との結論を避けるため,訴訟提起後に考え出した牽強付会の主張といわざるを得な
い。
  (被告の主張)
  ア 被告は,被告製品と同じ形状の床板の被告商品(KA-2230)を用
い,① 窪みがあり,滑り防止片が付いている被告製品そのままの状態の床板,②
 上記①の床板から滑り防止片を取り除いたもの,③ 上記①の床板に,その床板
と同一の表面加工(塗装)を施した平らな鋼板を取り付けたもの,④ 上記③の床
板に,被告製品から取り外した滑り防止片を,被告製品と同様の位置に付着したも
の,という4種類の床板を準備し,硬め,柔らかめ,標準的なものの3種類のマッ
トレスを載せて,その上に重さ20kgの砂袋を3個置き,引張圧縮試験機を用い
て水平方法に引っ張る方法により,実験を行った(乙3~16参照)。
    その結果,床板及びマットレスの条件が同一であれば,滑り防止片のある
床板の方が,ない床板よりも,マットレスが滑りにくいことが示されたが,その一
方で,窪みのあるタイプの床板(上記①及び②)と窪みのないタイプ(同③及び
④)の最大点荷重差は,窪みがあって滑り防止片があるもの(同①)とないもの
(同②)の最大点荷重差よりも大きく,かつ,窪みがなくて滑り防止片があるもの
(同④)とないもの(同③)の最大点荷重差よりも大きいこと,すなわち,床板の
形状の方が,滑り防止片の有無よりも,滑り止め防止効果にとってむしろ大きな影
響をもたらすことが示された。
    また,被告は,上記①~④の床板を用い,原告による実験と同様の傾斜方
法(乙18~19)による実験も行ったが,その結果,硬いマットレスにおいて
は,滑り防止片の有無により,滑り防止効果に有意な差が表れたが,柔らかなマッ
トレスにおいては,滑り防止片の有無に関係なく,むしろ,床板の形状の差,すな
わち,被告製品のように窪みが設けられているか(上記①及び②),それとも,窪
みのない平らな鋼板であるか(上記③及び④)により,滑り防止効果が左右される
ことが確認された。
    以上の実験結果を総合すれば,被告製品においては,滑り防止片ではな
く,そのほぼ全面にわたって形成された細長い窪みによって,マットレスの滑り落
ち防止機能が果たされていることは,明らかというべきである。したがって,被告
製品は,「滑り防止片の付着により,床板上に配置されるマットレスの滑り落ちを
防止するようにしたことを特徴とする」(構成要件C)ものではなく,構成要件C
を充足しない。
  イ なお,原告は,被告自身が,その商品カタログ(甲4~7)において,床
板の端部に取り付けたぎざぎざ付きのゴム片(滑り防止片)を,マットレスのズレ
防止機能を果たすものとして記載するとともに,床板上の窪み及び穴については,
通気性を高めるために設置したものである旨を記載していると指摘する(前記(原
告の主張)イ)。
    しかしながら,そもそもカタログは,商品を顧客に購入してもらうため,
広告会社等に依頼して制作される広告・宣伝媒体であって,技術説明書ではないか
ら,商品を構成するある部分の構造や機能等が,カタログで説明されていないから
といって,その構造や機能等が否定されるわけではない。そして,原告が指摘する
各カタログには,床板に形成された窪みによるマットレスの滑り落ち防止機能に関
する記載はないが,この機能と矛盾する記載があるわけでもない。
    被告製品における細長い窪みは,もともと,荷重に対する床板の曲げ剛性
を大きくするために設けられたものであるが(通気性確保のため,平板に長孔を形
成しただけでは,十分な曲げ剛性を得ることができず,荷重によって下方への変形
が生じてしまう。),単に,十分な曲げ剛性と通気性の両方を確保するためだけな
らば,細長い窪みの開口部の面積を通気孔である長孔の面積より大きくする必要は
ない。ところが,別紙物件目録中の図面を基に概算してみると,被告製品における
細長い窪みの開口部の総面積は,長孔の総面積の約8倍にもなる。このように,被
告製品は,細長い窪みの開口部の面積を非常に広くしたことを,構成上の特徴とす
るものであり,このように広い窪み面積を有するために,対応するマットレスの個
所が,人間の体重によって窪みに落ち込み,マットレスの滑り落ち防止機能が果た
されるのである。
 3 争点2(均等の成否)について
  (原告の主張)
  ア 実用新案権侵害訴訟において,明細書の実用新案登録請求の範囲に記載さ
れた構成に,被告が製造等をする製品(以下「対象製品」という。)と異なる部分
が存する場合であっても,① 同部分が考案の本質的部分ではなく,② 同部分を
対象製品における構成に置き換えても,考案の目的を達成することができ,同一の
作用効果を奏するものであって,③ このように置き換えることに,当業者が対象
製品の製造等の時点において容易に想到することができたものであり,④ 対象製
品が,考案の実用新案登録出願時における公知技術と同一又は当業者がこれらから
同出願時にきわめて容易に推考できたものではなく,かつ,⑤ 対象製品が,実用
新案登録出願手続において実用新案登録請求の範囲から意識的に除外されたものに
当たるなどの特段の事情もない場合には,当該対象製品は,実用新案登録請求の範
囲に記載された構成と均等なものとして,考案の技術的範囲に属するというべきで
ある(特許権に関する最高裁平成6年(オ)第1083号同10年2月24日第三小法
廷判決・民集52巻1号113頁参照)。
    したがって,仮に,被告製品における細長い窪みを有する床板が,「表面
平滑な床板」(構成要件A)に当たらないとしても,本件考案と被告製品の相違
点,すなわち,被告製品の床板が,板体の周縁を折り曲げて下側が開口された箱状
体に構成され,その箱状体の上板には,底面に長孔を有する細長い窪みが多数形成
されている(被告製品構成4)点が,上記均等の要件①~⑤を充たす場合には,被
告製品は,本件考案の構成と均等なものとして,本件考案の技術的範囲に属するこ
とになる。
  イ 本件考案は,すのこ板状の床板等を用いていた従来技術との比較におい
て,マットレスの滑り落ち防止という課題解決のため,床板に滑り防止片を付着す
る方法を採用したことを特徴とするものであり,この点こそが同考案の本質的部分
というべきである。
    しかるところ,上記相違点は,単に床板の形状が異なることを内容とする
ものであり,上記本質的部分に関わるものではないから,本件においては,均等の
要件①(非本質的部分であること)が充たされている。
  ウ また,原告及び被告の双方が行った実験結果(前記2参照)によれば,滑
り防止片を付着していれば,床板の形状が完全に平らなものであろうと,被告製品
のように窪みを有するものであろうと,滑り防止効果が達成され,同一の作用効果
を奏することが明らかである。
    したがって,本件においては,均等の要件②(置換可能性)が充たされて
いる。
  エ 本件明細書の実用新案登録請求の範囲には,滑り防止片を付着すべき床板
の材質につき,「鋼板,合成樹脂板等」と開示されており,考案の詳細な説明に
は,このような床板は,「プレス成形により容易に製作しうる」(本件公報2欄4
~5行)旨が記載されている。また,前記のとおり(前記1参照),本件考案出願
当時,鋼板プレス成形による床板を用いたベッドについては,被告会社の製品を含
め,ほぼ例外なく,強度保持のための窪みと通気性を高めるための穴が備えられて
いた。
    そうすると,ベッド製造業者として通常の知識を有する者であるならば,
被告製品の製造時において,滑り防止片を付着すべき床板を,被告製品のような窪
みを有する形状のものに置き換えても,本件考案と同様に,マットレスの滑り落ち
防止という作用効果を奏し,その目的を達成することができることに,容易に想到
できたというべきである。
    したがって,本件においては,均等の要件③(容易想到性)が充たされて
いる。
  オ 本件考案の登録出願当時,被告製品が,公知技術と同一であった,あるい
は,公知技術からきわめて容易に推考することができたと認めるに足りる事情は,
存在しない。
    したがって,本件においては,前記均等の要件④(出願時の公知技術との
非同一性等)が充たされている。
  カ 本件考案の実用新案登録出願から登録に至るまでの過程において,例えば
実用新案登録請求の範囲を減縮する補正が行われたなど,被告製品の構成のベッド
を,上記請求の範囲から意識的に除外したと認められる特段の事情は,存在しな
い。
    したがって,本件においては,前記均等の要件⑤(意識的除外のないこと
等)が充たされている。
  キ 以上のとおり,均等の要件①~⑤がすべて充たされているから,被告製品
は,実用新案登録請求の範囲に記載された構成と均等なものとして,本件考案の技
術的範囲に属する。
  (被告の主張)
  ア 均等に関する原告の主張は,すべて争う。均等論は,権利を拡張する法理
であって,本来厳格に解釈すべきものであるところ,原告の主張は,実用新案登録
請求の範囲の構成から「滑り防止片」のみを抽出し,これが存在すればすべて均等
の範囲に入ると主張するかのごときであり,不適切である。
  イ 本件明細書の考案の詳細な説明の欄には,従来技術の問題点が,「マット
レスの滑り落ち防止対策として,従来,短冊状の床板を複数個並べてすのこ状に形
成し,これをベッドの床板として使用する方法が採用されていた。‥‥‥しかし,
上述のすのこ状床板では,製造が厄介であるのみならず,マットレスが傷付きやす
いという欠点を有しており,プレス成形により容易に製作しうる表面平滑な鋼板等
の使用が強く望まれていた。」(本件公報1欄22行以下)と記載されており,そ
の一方で,本件考案の構成を採用すると,表面平滑な床板を使用するにもかかわら
ず,ぎざぎざの滑り防止片の作用により,マットレスを傷つけることなく滑り落ち
が防止され,しかも床板の製造が容易である旨が明記されている(同4欄9行以
下)。
    上記の記載からすれば,従来技術の問題を解決するために採用された「表
面平滑な床板」の構成が,本件考案の本質的部分であることは疑いがない。したが
って,本件においては,前記均等の要件①(非本質的部分であること)が充たされ
ていない。
  ウ 原告は,本件考案の実用新案登録出願当時,被告製品が公知技術と同一で
あった,あるいは,公知技術からきわめて容易に推考できたと認めるに足りる事情
は,存在しないと主張している。
    しかしながら,被告製品は,本件考案出願当時の公知例である乙27~2
9記載に係る各考案を組み合わせることにより,きわめて容易に推考できたもので
あり,第2次審決取消判決(甲22)は,乙27~29(第2次審決取消判決にお
ける甲1~3)記載に係る各考案を組み合わせる起因ないし契機(動機付け)があ
ると明確に判断している。さらにいえば,被告製品は,第3次無効審判の主引用例
である乙52の1に包含されており,乙52の1そのものを使用していると言って
も過言ではない。
    以上から分かるとおり,被告製品は,本件考案の実用新案登録出願前の公
知技術と同一であるか,あるいは,公知技術を組み合わせることによりきわめて容
易に推考できたものであって,当業者にとっては,本件考案と関係なく,その出願
前に容易に製作できたものにすぎない。したがって,本件において,前記均等の要
件④(出願時の公知技術との非同一性等)が充たされていないことは,明らかであ
る。
  エ 以上によれば,いずれにせよ,被告製品が,本件考案の開示する構成と均
等の範囲内にあるものということはできない。
 4 争点3(無効事由の存否)について
  (被告の主張)
  ア 乙52の1(米国定期刊行物「HOSPITALS」JOUNAL OF THE AMERICAN
HOSPITAL ASSOCIATION,Volume.39 Number 17,September 1,1965.第3次無効審
判における主引用例)の90~91頁には,表面平滑な鋼製板(steel panel)で構
成された床部が起伏状態にあるギャッチベッドの写真が掲載されており,「病院に
好適な複数の鋼製板は,マットレスを所定の位置に保持するための,畝のある複数
のゴム製帯を備えています。リンク-タイプのスプリングも提供できます。」(訳
文である乙52の2参照)との説明が付されている。これらを併せ読めば,上記ベ
ッドにおいて,いわゆる背上げ,棚上げの状態にある表面平滑な鋼製板のうち,ヘ
ッド板に最も近いものと,フット板に最も近いものの両端縁の近傍には,これら端
縁に沿って延びるゴム製の帯状体が2つずつ備えられていること,及び,これら帯
状体の表面には,畝(ribbed)による複数の条が存在し,凹凸を形成していること
が容易に理解できる。すなわち,上記乙52の1には,床板として用いられる表面
平滑な鋼製板において,その両側の端縁の近傍に,マットレスを所定の位置に保持
するための,表面に畝のあるゴム製帯を1つの鋼製板ごとに複数設けた構
成のギャッチベッドが,明瞭に開示されている。
    上記鋼製板が「鋼板,合成樹脂板等の表面平滑な床板」(構成要件A)
に,上記ギャッチベッドが,全体として,「滑り防止片の付着により,床板上に配
置されるマットレスの滑り落ちを防止するようにしたことを特徴とする,マットレ
スの滑り落ち防止機構を備えたベッド」(構成要件C,D)に,それぞれ該当する
ことは明らかであり,また,上記ゴム製帯が,その大きさや形状は別にして,「床
板の端縁あるいはその他の任意の個所に」複数個付着された「滑り防止片」(構成
要件B)に対応するものであることも,また明らかである。しかるところ,通常の
用語例からしても,また,公開特許公報等の技術文献における用語例に照らして
も,「片」(乙37~40参照)という言葉や,「ぎざぎざ」(乙41~42参
照)という言葉は,特に大きさを規定するものではないから,「表面がぎざぎざな
面で形成された滑り防止片」に,大きさや形状に関する特段の限定はないというべ
きであり,結局,上記ゴム製帯は,「床板の端縁あるいはその他の任意の個所に」
複数個付着された,「表面がぎざぎざな面で形成された滑り防止片」(構成要件
B)に該当することになる。
    そうすると,本件考案の構成要件は,すべて乙52の1に開示されてお
り,本件考案は,乙52の1記載に係る公知技術と同一であるか,この技術に基づ
いてきわめて容易に考案できたものというべきである。さらには,乙52の1と後
記乙27及び乙29のいずれか,あるいはその両方を組み合わせることにより,き
わめて容易に考案できたものというべきである。
  イ 乙27(実公昭57-40844公報。第2次無効審判における主引用
例)の実用新案登録請求の範囲には,ギャッチベッドのマットレス敷台上からのマ
ットレスの滑りを防止するために,表面に断面∩状の小突起を群設するか,あるい
は,断面∩状の突条を突設せしめた滑り止め体を,敷台上に取り付ける構成が開示
されており,乙29の1(foster hard FURNITURE CO.「PRICE LIST
#H-90」Effective November 1,1970.第2次無効審判における主引用例)には,表
面平滑な床板にマットレスの滑り防止片を複数取り付けたベッドが記載されてい
る。
    上記によれば,本件考案の実用新案登録出願当時,乙27と乙29の1を
組み合わせることにより,表面平滑な床板に,表面に断面∩状の小突起を群設する
か,あるいは,断面∩状の突条を突設せしめたマットレスの滑り防止片を複数取り
付け,もってマットレスの滑り落ちを防止するベッドを構成することはきわめて容
易であったというべきところ,①「ぎざぎざ」も「小突起群」も,いずれも,マッ
トレスをずれないように定位置に保持するという,同一の作用効果を奏するために
有効なものであり,②上述のとおり,「片」という言葉にも,また,「ぎざぎざ」
という言葉にも,特に大きさを規定する意味合いはなく,かつ,③金属製の表面平
滑な床板についても,出願前の公知文献である乙28の1~5によって,既に公知
であったのであるから,これらを併せ考えれば,本件考案の構成要件は,出願前
に,乙27及び29の1に事実上その全部が開示されていたということができる。
    したがって,本件考案は,乙27及び29の1を組み合わせることによっ
て,当業者がきわめて容易に考案できたものというべきである。
  ウ 上記のとおり,本件実用新案権に無効事由が存在することは明白であるか
ら,本件実用新案権に基づく原告の本訴請求は,権利の濫用に当たるものとして許
されない。
  (原告の主張)
  ア 被告は,①本件明細書の記載,及び,②「片」という言葉の用語例に照ら
し,本件考案の「滑り防止片」(構成要件B)には,何ら大きさの限定はないとい
うべきであるから,乙52の1記載のベッドに設けられたゴム製帯状体も「滑り防
止片」に該当するとして,乙52の1には,本件考案の構成要件がすべて開示され
ていると主張する。
    しかしながら,上記①の点については,確かに,実用新案登録請求の範囲
には滑り防止片の大きさを限定する記載はないが,本件公報の第1図~第3図には
滑り防止片が図示されており,これらの図によって,その大きさが明確に示されて
いる。また,上記②の点についても,「片」という言葉は,通常,細長い形状のも
のを含まず,その限度で大きさ・形状を特定する意味があるし(細長い形状のもの
を表現する場合には,「片」ではなく,「帯」という言葉を用いるのが通例のはず
である。),被告が「片」に大きさ・形状を特定する意味がないことの例として引
用する乙37~40(公開特許公報)も,仔細に検討すると,例えば細長い矩形形
状の部品を,単なる「片」ではなく「帯片」という用語で示したり(乙37。特開
昭54-98829公報),「切断片」のもととなる基体を「帯状平板」と表現し
たり(乙39。特開昭57-77518公報)しており,被告の主張とは逆に,
「片」が「帯」と組み合わされずに単独で用いられる場合には,むしろ,細長い形
状のものを排除する趣旨で用いられることを示すものというべきである。したがっ
て,被告の上記主張には,理由がない。
    乙52の1におけるゴム製帯状体は,本件公報の各図によって特定された
滑り防止片よりはるかに大きく,ヘッド板に最も近い鋼板及びフット板に最も近い
鋼板の各長手方向の寸法とほぼ同じ長さを有する,細長い形状のものである。本件
考案の「滑り防止片」は,それが「片」と呼べる大きさ・形状のものであるがゆえ
に,ベッドの使用目的・態様に応じて,きめ細かく場所を選定した上,必要な個数
のみを付着できるのであって,上記のような大きさのゴム製帯状体では,背板と脚
板の端縁のほぼ全面にわたって付着せざるを得ない。これでは,マットレスの摩擦
が抵抗となってギャッチ操作の際に不都合が生じるし,同操作の繰り返しにより逆
にマットレスのずれを助長する可能性すらある。
    上記のとおり,乙52の1におけるゴム製帯状体は,「滑り防止片」に該
当するものではなく,したがって,乙52の1に本件考案の構成要件がすべて開示
されているものではない。この点に関する被告の主張は,理由がない。
  イ 被告は,本件考案は,公知文献である乙27及び乙29の1を組み合わせ
ることにより,当業者がきわめて容易に考案できたものである旨の主張もしてい
る。
    乙27記載に係るギャッチベッドの滑り止め具は,表面に断面∩状の小突
起を郡設するか,あるいは,断面∩状の突条を突設して構成されるものであるとこ
ろ,これら小突起や突条は相当に大きな寸法のものであって,本件考案における滑
り防止片のように,表面がぎざぎざな,のこぎりの目のような面で形成されたもの
ではない(本件考案の第1図~第3図参照)。しかも,これら小突起や突条は床板
全体に添着されており,本件考案のように,「床板の端縁あるいはその他の任意の
個所」を選んで付着させたものでもなければ,小さな「片」を部分的に付着させた
ものでもない。そうすると,乙27に記載された考案は,本件考案とは著しく相違
するものというべきである。
    また,乙29の1には,床板の両端縁に沿って,滑り止め用のゴム製帯状
体を形成したベッドが示されているが,このゴム製帯状体は,ベッドの頭部付近か
ら足先部分まで連続して伸びた細長い帯状体であって,しかも表面は平らで,ぎざ
ぎざを有していない。前記アで述べたとおり,この種の細長い帯状体では,本件考
案における小さな「片」と異なり,床板上の滑りやすい場所を任意に選定し,複数
個付着させるというきめ細かな構成を採ることは,不可能である。そうすると,乙
29の1には,「床板の端縁あるいはその他の任意の個所に,表面がぎざぎざな面
で形成された滑り防止片が複数個付着され」(構成要件B)の構成が開示されてお
らず,そこに記載されたベッドは,本件考案を実施したベッドとは異なるものとい
うべきである。
    上記から分かるとおり,この点に関する被告の上記主張は,理由がない。
  ウ 上記ア,イ記載のとおり,被告の無効主張にはいずれも理由がなく,本件
実用新案権に無効事由は存在しない。したがって,原告の本訴請求が,権利の濫用
に当たるものではない。
 5 争点4(原告の損害等の額)について
  (原告の主張)
   被告は,本件実用新案権の出願公告日である平成3年6月4日から(平成5
年法律第26号による改正前の実用新案法12条1項)権利の存続期間満了日であ
る平成12年7月19日までの間に,被告製品をはじめ,被告製品と同様の構成で
あり,いずれも本件考案の技術的範囲に属する被告各商品を,少なくとも101万
5510台製造し,1台当たり平均して13万5000円を下らない金額で販売し
た。したがって,上記期間内における,被告各商品の販売総額は,1370億90
00万円を下らない。
   そして,仮に本件考案について実施を許諾した場合,その実施料は売上金額
の3%を下らないから,原告が被告による被告各商品の製造・販売行為により被っ
た損害の額(実用新案法29条3項),及び,原告の損失において被告が不当に利
得した金銭の額の合計は,41億1270万円を下らない。
   よって,原告は,被告に対し,本件実用新案権の侵害に基づく損害賠償金又
は不当利得金として,合計41億1270万円の金員支払請求権を有するところ,
本訴においては,その1部である20億円の支払を求める。
  (被告の主張)
   損害等に関する原告の上記主張は,すべて争う。
第4 当裁判所の判断
   本件においては,被告は被告製品が本件考案の技術的範囲に属すること(文
言侵害ないし均等の成立)をも争っているものであるが,本件事案にかんがみ,本
件考案における無効事由の存否(争点3)から,判断する。
 1 乙52の1に基づく無効事由の存否について
  (1) 乙52の1(「HOSPITALS」JOUNAL OF THE AMERICAN HOSPITAL
ASSOCIATION,Volume.39 Number 17,September 1,1965.)は,本件考案の実用新
案登録出願前に外国において頒布された刊行物(平成11年法律第41号による改
正前の実用新案法3条1項3号)に該当する。
    乙52の1の90~91頁には,ギャッチベッドの写真及びその説明文が
掲載されているところ,このベッドの床板は,表面平滑な鋼板(steel panel)4枚
を連結して構成されており,これら4枚の鋼板のうち,ヘッド板に最も近い鋼板
と,フット板に最も近い鋼板の両端縁付近には,端縁に沿って延びる,各鋼板の長
手方向の寸法とほぼ同じ長さを有する,細長い形状のゴム製帯状体が,合計4つ付
着されている。そして,このゴム製帯状体の表面には,長手方向に延びる複数の条
が存在し,畝のような凹凸形状が形成されている(ribbed)。
  (2) 本件考案の構成要件は,第2,1(3)で分説したとおりであるが,実用新
案登録請求の範囲の記載上,「表面平滑」という文言には何の限定も付されていな
い。また,本件明細書の考案の詳細な説明における「床板面が平滑な場合には,患
者等の伏床者の動きによってマットレスが床板から滑り落ちることがあり,」(本
件公報1欄15行以下),「マットレスの滑り落ち防止対策として従来,短冊状の
床板を複数個並べてすのこ状に形成し,これをベッドの床板として使用する方法が
採用されていた。‥‥‥しかし,上述のすのこ状床板では,製造が厄介であるのみ
ならず,マットレスが傷つきやすいという欠点を有しており,プレス成形により容
易に製作しうる表面平滑な鋼板等の使用が強く望まれていた。」(同1欄22行以
下),「この床板1はプレス成形により容易に成型される表面平滑なパネル状鋼
板,あるいは成形加工された表面平滑な合成樹脂板等からなる。」(同2欄23行
以下),「本考案では表面平滑な床板2を使用するにもかかわらず,ぎざぎざ5の
滑り止め作用によりマットレス13の床板からの滑り落ちが防止され,しかも従来
のように床板1がすのこ状ではなく,表面平滑なパネルであるので,マ
ットレス13が傷付くことがなく,かつ製造もプレス成形等により容易に達成され
る」(同3欄20行以下)等の各記載に照らしても,「表面平滑な床板」について
は,鋼板をプレス成形したり合成樹脂を成形加工して得られる,表面が平らなもの
であり,かつ,短冊状の床板を複数個並べてすのこ状に形成した従来技術の形状は
これに含まれないということ以上に,「表面平滑」の具体的な意味は特定されてい
ない。
    上記によれば,「表面平滑」とは,プレス成形や合成樹脂の成形加工によ
り容易に製作し得る程度に平らで,かつ滑らかであることを意味するものと解する
ほかない。
    しかるところ,乙52の1において示されている表面平滑な鋼板(steel
panel)4枚を連結して構成された上記床板は,プレス成形や合成樹脂の成形加工に
より容易に製作し得る程度に平らで,かつ滑らかであるものと認められるから(そ
のことは,原告も特に争っていない。),同床板は,「鋼板,合成樹脂板等の表面
平滑な床板」(構成要件A)に該当する。
  (3) また,乙52の1に掲載されている写真によれば,上記表面平滑な4枚の
鋼板のうち,ヘッド板に最も近い鋼板と,フット板に最も近い鋼板の両端縁の付近
に,長手方向に延びる複数の条によって表面に畝のような形状が形成され
た(ribbed),合計4つの細長い形状のゴム製帯状体が付着されていることが認め
られるところ,これには「病院に好適な複数の鋼製板は,マットレスを所定の位置
に保持するための,畝のある複数のゴム製帯を備えています。リンク-タイプのス
プリングも提供できます。」との説明が付されており(訳文である乙52の2参
照),これらの点に照らせば,これらのゴム製帯状体が,マットレスを所定の位置
に保持するために,すなわち,「マットレスの滑り落ちを防止する」(構成要件
C)ために付着されたものであることは,明らかである。
    また,本件考案の「ぎざぎざ」(構成要件B)については,本件明細書の
実用新案登録請求の範囲及び考案の詳細な説明の記載に照らしても,その形状を特
に限定する記載は見当たらないところ,そもそも,乙52の1において示されてい
る上記ゴム製帯状体の表面の畝のような形状は,本件公報の第2図及び第3図に記
載されている実施例の一形態としての「滑り防止片3」の表面の形状とほぼ同じで
あると認められる。これらに照らせば,乙52の1において示されている上記ゴム
製帯状体は,「表面がぎざぎざな面で形成された」(構成要件B)ものということ
ができる。
    そうすると,各鋼板の長手方向の寸法とほぼ同じ長さを有する上記ゴム製
帯状体が,「滑り防止片」(構成要件B,C)に該当するならば,乙52の1に記
載されたギャッチベッドは,全体として,「床板の端縁あるいはその他の任意の個
所に,表面がぎざぎざな面で形成された滑り防止片を複数個付着してなり,これに
より,床板上に配置されるマットレスの滑り落ちを防止するようにしたことを特徴
とする,マットレスの滑り落ち防止機構を備えたベッド」(構成要件B,C及び
D)に該当することになる。
  (4) そこで,乙52の1において示されている各鋼板の長手方向の寸法とほぼ
同じ長さを有する上記ゴム製帯状体が,「滑り防止片」に該当するかについて検討
する。
    本件明細書の実用新案登録請求の範囲の記載においては,「滑り防止片」
は,「床板の端縁あるいはその他の任意の個所」に「複数個付着」すべきものとさ
れているほか,その大きさや長さを特定する記載はない。また,本件明細書の考案
の詳細な説明における,「滑り防止片3は第3図示のように床板1の端縁2に長手
方向に沿って付着してもよく,あるいは図示しないが床板1面上の任意の個所に適
宜に付着しても構わない。」(本件公報3欄12行以下)との記載に照らしても,
滑り防止片の大きさや長さに関しては,実用新案登録請求の範囲の記載以上に特に
限定は付されていないものというべきである。ちなみに,本件公報の第1図~第3
図には,床板端縁に沿って延びる程度の細い幅しかなく,かつ,床板全体の長手方
向の寸法のせいぜい6分の1以下の長さしかない大きさの滑り防止片が図示されて
いるが,これらの各図面において,具体的な寸法の開示は一切ない上に,本件明細
書の考案の詳細な説明の記載によれば,これらの図が実施例の一態様を示すものと
して描かれたものであることは明らかであるから,これらの図をもって,「滑り防
止片」の大きさや長さを具体的に特定する記載ということはできない

    上記によれば,本件考案における「滑り防止片」は,床板自体の大きさよ
り小さいことは当然であるが,床板全体に複数付着可能であるならば,大きさ
(幅)や長さに関し,それ以上の限定はないものと解するのが相当である。
    そうすると,乙52の1に示されている上記ゴム製帯状体も,各鋼板の長
手方向の寸法とほぼ同じ長さを有するものの,その一方で,端縁に沿って延びる細
長い(すなわち,幅の狭い)形状のものであり,端縁に付着されているほか,床板
にさらに複数付着することが可能なものと認められるから,本件考案の構成要件に
いう「滑り防止片」に該当するというべきである。
  (5) なお,この点につき,原告は,①本件公報の第1図~第3図によって,滑
り防止片の大きさが明確に限定されているから,これよりも大きな乙52の1のゴ
ム製帯状体は「滑り防止片」に当たらない,②「片」という言葉は,「帯」と異な
り,通常,細長い形状のものを指す言葉としては使われないから,その限度で大き
さ・形状を特定する意味がある,などと主張する(第3,4(原告の主張)ア)。
    しかしながら,上記①の点については,上記(4)において説示したとおり,
本件公報の各図は,実施例の一態様を示すものにすぎず,また,本件において,実
用新案登録請求の範囲に記載された「滑り防止片」の文言を,上記実施例に限定し
て解釈すべき特段の事情も認められないから,これらの図が,「滑り防止片」の大
きさや長さを具体的に特定する根拠となる記載であるということはできない。その
ことは,特許庁が,本件公報の各図を引用して「滑り防止片」の大きさや形状を特
定しようとした第1次訂正請求に対し,図面は,通常,考案の一実施例を示すもの
であるとともに,文章で表現されたものと異なり多義的な理解が可能であるから,
技術的事項を明確に特定する機能を有するものではない旨の前置きをした上で,上
記訂正は,「滑り防止片」の大きさや,「ぎざぎざな面」の具体的な寸法を明確に
特定するものとはいえないとして,拒絶理由通知を発した事実(第2,1(8))に照
らしても,明らかというべきである。
    また,上記②の点についても,本件で提出された公知例である乙37~4
0に照らせば,細長い形状の部材を「帯片」(乙37),「帯状の合成樹脂製係止
片」(乙38)などと呼ぶことはあるにしても,同様に細長い形状の部材を単に
「切断片」(乙39)と呼ぶこともあるから,結局,技術用語としての「片」が,
部材の大きさや長さを規定する趣旨で用いられる言葉であると認めることはできな
い。
    上記のとおりであるから,原告の主張を採用することはできない。
  (6) 上述したところによれば,本件考案の各構成要件は,すべて出願前の公知
文献である乙52の1に開示されていたことになる。そうすると,本件考案は,平
成11年法律第41号による改正前の実用新案法3条1項の規定に違反して実用新
案登録されたものであり,無効事由があることが明らかというべきである。
    なお,上記のとおり,乙52の1に示されている上記ゴム製帯状体は,
「表面がぎざぎざな面で形成された」(構成要件B)ものということができるが,
仮に,畝のある複数のゴム製帯を「表面がきざぎざな面で形成された」ということ
ができないと解したとしても,本件考案の実用新案登録出願前の刊行物である乙2
7(実公昭57-40844公報)には,ギャッチベッドにおいてマットレスの滑
りを防止する用具として,断面 状の小突起を設けた滑り防止体が記載されてお
り,これが「表面がぎざぎざな面で形成された滑り防止片」に該当することは明ら
かであるところ,乙52の1と乙27とを組み合わせて,乙52の1の上記ゴム製
帯状体の表面をぎざぎざな面で形成することは,当業者であればきわめて容易に推
考することができるものであるから,本件考案は実用新案法3条2項に違反して実
用新案登録されたものとして,無効事由を有することが明らかである。したがっ
て,いずれにしても,本件考案に無効事由が存在することは明らかというべきであ
る。
 2 原告の本訴請求の許否
   上記1において判示したとおり,本件考案に無効事由が存在することは明ら
かというべきであるが,本件においては,前記のとおり,原告による第2次訂正請
求がされている。
   しかしながら,仮に,本件明細書の実用新案登録請求の範囲における「表面
平滑な床板の端縁あるいはその他の任意の個所に」との記載を,「表面平滑な床板
の両端縁に」と訂正することを内容とする上記訂正請求が認められたとしても,
「滑り防止片」が付着される場所が特定されるにとどまり,その長さが具体的に特
定されるものでないことは,上記1で判示したところから明らかである(それどこ
ろか,上記訂正請求に係る実用新案登録請求の範囲に記載された考案の構成は,床
板の両端縁に滑り防止機能を有する部材を付着する点において,上記1(1)記載に係
る乙52の1に開示されたギャッチベッドの具体的構成に,いっそう近くなるとい
うべきである。)。したがって,仮に第2次訂正請求が認められたところで,前記
無効事由が解消するものではないことも,また明らかである。
   以上によれば,本件においては,本件実用新案権に基づく原告の本訴請求
は,権利濫用に該当するものとして,許されないというべきである(最高裁平成1
0年(オ)第364号同12年4月11日第三小法廷判決・民集54巻4号1368頁
参照)。
 3 結論
   以上によれば,争点1,2について判断するまでもなく,原告の本訴請求は
理由がない。
   よって,主文のとおり判決する。
     東京地方裁判所民事第46部
          裁判長裁判官   三  村  量  一
             裁判官   青  木  孝  之
             裁判官   吉  川     泉
  (別紙)           物件目録
            下記の2クランクギャッチベッド
  【型番】
   KA-4534
  【図面】(添付省略)
   後掲〔図1〕~〔図4〕のとおり。
  【構成の説明】
 1 下部にキャスター10を設けたヘッド側フレーム11及びフット側フレーム
12の間に,床板支持フレーム13が配されている。
 2 床板支持フレーム13の上側には,床板1が支持されている。
 3 鋼板プレスにより成形された床板1は,ヘッド側フレーム11からフット側
フレーム12に向かって順次配置された,背部床板1a,臀部床板1b,大腿部床
板1c及び脚部床板1dの4つの部分床板を連結して構成されている。
 4 それぞれの床板1a,1b,1c及び1dは,板体14の周縁を折り曲げて
下側が開口された箱状体に構成されており,箱状体の上板には,底面に長孔6を有
する細長い窪み7が,多数形成されている。
 5 背部床板1aにおいては,ベッドの長手方向に延びる細長い窪み7が,ベッ
ドの幅方向に等間隔に,合計6つ並んで設けられている。それぞれの細長い窪みに
対して,5個の長孔6が形成されており,各長孔の間には凹部の浅い部分14が形
成されている。
 6 臀部床板1bにおいては,ベッドの長手方向に延びる細長い窪み7が,ベッ
ドの幅方向に等間隔に,合計6つ並んで設けられ,それぞれの細長い窪みに対し,
1個ずつの長孔6が形成されている。この臀部床板において,上板の全面積に対す
る,細長い窪み(凹部)の面積の総和の割合は,約19%である。
 7 背部床板1cにおいては,ベッドの長手方向に延びる細長い窪み7が,ベッ
ドの幅方向に等間隔に,合計6つ並んで設けられている。それぞれの細長い窪みに
対して,2個の長孔6が形成されており,各長孔の間には凹部の浅い部分14が形
成されている。この臀部床板において,上板の全面積に対する,細長い窪み(凹
部)の面積の総和の割合は,約26%である。
 8 背部床板1dにおいては,ベッドの長手方向に延びる細長い窪み7が,ベッ
ドの幅方向に等間隔に,合計6つ並んで設けられている。それぞれの細長い窪みに
対して,3個の長孔6が形成されており,各長孔の間には凹部の浅い部分14が形
成されている。
 9 臀部床板1b及び大腿部床板1cには,それぞれの両端縁2の付近に,ベッ
ドの長手方向に延びる細長い滑り防止片3が,取り付けられている。これらの滑り
防止片の上面には,ベッドの長手方向に延びる断面三角形状の多数の溝が,形成さ
れている。
(別紙)
図1図2図3図4被告商品目録

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