平成14(行ケ)651行政訴訟 特許権
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裁判所 |
東京高等裁判所
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裁判年月日 |
平成15年5月8日 |
事件種別 |
民事 |
法令 |
特許権
特許法44条1項1回 特許法29条2項1回
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キーワード |
刊行物8回 審決6回 訂正審判1回 特許権1回
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主文 |
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事件の概要 |
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判決文
平成14年(行ケ)第651号 特許取消決定取消請求事件
平成15年5月8日判決言渡,平成15年4月24日口頭弁論終結
判 決
原 告 富士ゼロックス株式会社
訴訟代理人弁理士 佐藤清孝,前川純一,牛久保学
被 告 特許庁長官 太田信一郎
指定代理人 畑井順一,森正幸,高橋泰史,林栄二
主 文
特許庁が異議2001-73406号事件について平成14年11月14日にし
た決定を取り消す。
訴訟費用は各自の負担とする。
事実及び理由
第1 原告の求めた裁判
主文第1項同旨の判決。
第2 事案の概要
1 特許庁における手続の経緯
原告が特許権者である本件特許第3178530号「表示記憶媒体,画像書き込
み方法および画像書き込み装置」は,平成9年11月18日に出願された特願平9
-317049号の一部を特許法44条1項の規定により,平成12年10月5に
新たな特許出願としたものであって,平成13年4月13日に設定登録された。そ
の後,異議2001-73406号の特許異議の申立てにおいて取消理由通知があ
り,その指定期間内である平成14年5月7日に訂正請求がされた結果,平成14
年11月14日に,「訂正を認める。特許第3178530号の請求項1ないし9
に係る特許を取り消す。」との決定があり,その謄本は同月30日原告に送達され
た。
原告は,決定の取消しを求める本訴提起後の平成15年2月10日,本件特許に
つき特許請求の範囲の減縮等を目的とする訂正審判の請求をし(訂正2003-3
9021号),平成15年3月25日に訂正を認める旨の審決(訂正審決)があっ
て確定した。
2 平成14年5月7日訂正請求後の特許請求の範囲
【請求項1】少なくとも一方が透明の一対の基板間に,それぞれ可視光中の互い
に異なる色光を選択反射するコレステリック液晶によって構成された複数の表示層
が積層され,複数の表示層の外部の画像書き込み装置から前記積層された複数の表
示層に電界が印加されることによって画像が書き込まれるとともに,前記電界の印
加後の無電界下では複数の前記コレステリック液晶表示層が前記電界の電界強度に
応じて全てプレーナー相の状態または全てフォーカルコニック相の状態のいずれか
を選択的に呈するように前記複数の表示層が構成されたことを特徴とする表示記憶
媒体。
【請求項2】
請求項1の表示記憶媒体において,前記複数の表示層が,400~500nmの波長域に
ピークを有する色光を選択反射する表示層,500~600nmの波長域にピークを有する
色光を選択反射する表示層,および600~700nmの波長域にピークを有する色光を選
択反射する表示層によって構成されたことを特徴とする表示記憶媒体。
【請求項3】
請求項1または2の表示記憶媒体において,前記複数の表示層は,それぞれ,コ
レステリック液晶の連続相中に高分子のネットワークが形成されたPNLC構造である
ことを特徴とする表示記憶媒体。
【請求項4】
請求項1または2の表示記憶媒体において,前記複数の表示層は,それぞれ,高
分子マトリックス中にコレステリック液晶が分散されたPDLC構造であることを特徴
とする表示記憶媒体。
【請求項5】 請求項1~4のいずれかの表示記憶媒体において,前記複数の表示
層のそれぞれが,互いに同じ色光を選択反射し,かつ互いに螺旋ねじれ方向が逆の
コレステリック液晶によって構成された2つの表示層からなることを特徴とする表示
記憶媒体。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかの表示記憶媒体において,前記一対の基板が,可とう性
を有することを特徴とする表示記憶媒体。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかの表示記憶媒体において,一方の基板側に共通電極が設
けられたことを特徴とする表示記憶媒体。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかの表示記憶媒体に画像を書き込む方法において,外部の
画像書き込み装置から,前記積層された複数の表示層に,少なくとも,セレクト期
間と,その後の無電界の表示期間とによって構成され,そのセレクト期間での電界
強度Esが,前記複数の表示層のコレステリック液晶を全て同じ相状態に変化させる
電界強度となる書き込み信号を印加することを特徴とする画像書き込み方法。
【請求項9】
請求項1~7のいずれかの表示記憶媒体に画像を書き込む装置において,表示記
憶媒体の外部から,前記積層された複数の表示層に,少なくとも,セレクト期間
と,その後の無電界の表示期間とによって構成され,そのセレクト期間での電界強
度Esが,前記複数の表示層のコレステリック液晶を全て同じ相状態に変化させる電
界強度となる書き込み信号を印加することを特徴とする画像書き込み装置。
3 訂正審決による訂正後の本件特許の特許請求の範囲
【請求項1】 少なくとも一方が透明の一対の基板間に,それぞれ可視光中の互
いに異なる色光を選択反射するコレステリック液晶によって構成された複数の表示
層が積層され,複数の表示層の外部の画像書き込み装置から前記積層された複数の
表示層に電界が印加されることによって画像が書き込まれるとともに,前記複数の
表示層の,それぞれのプレーナー相とフォーカルコニック相の相変化のしきい電界
強度のうちの最も大きい値Eth1と,前記複数の表示層の,それぞれのフォーカ
ルコニック相とホメオトロピック相の相変化のしきい電界強度のうちの最も小さい
値Eth2とが,Eth1<Eth2の関係を有するように構成し,前記Eth1
とEth2の間の電界強度をEa,前記複数の表示層の,それぞれのフォーカルコ
ニック相とホメオトロピック相の相変化のしきい電界強度のうちの最も大きい値以
上の電界強度をEbとした場合,前記電界強度Ea,Ebから選定された電界強度
となる書き込み信号を前記表示記憶媒体に印加することにより,前記電界の印加後
の無電界下では複数の前記コレステリック液晶表示層が前記電界の電界強度に応じ
て全てプレーナー相の状態または全てフォーカルコニック相の状態のいずれかを選
択的に呈するように前記複数の表示層が構成されたことを特徴とする表示記憶媒
体。
【請求項2】~【請求項9】は,前記2の項に記載のものと同じ。
4 決定の理由の要点
平成14年5月7日訂正請求後の本件発明1,2,4,5,6,8,9は,下記
刊行物1及び2記載の発明から,本件発明3は下記刊行物1~3記載の発明から,
本件発明7は下記刊行物1,2及び4記載の発明から,それぞれ容易に想到し得る
ものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
刊行物1:特開平9-160066号公報
刊行物2:特開平7-287214号公報
刊行物3:特開平2-84616号公報
刊行物4:特開平9-197381号公報
5 訂正審決の理由の要点
訂正後の請求項1~9に係る発明は,上記刊行物1~4記載の発明に基づいて当
業者が容易に発明をすることができたものではないから,特許出願の際独立して特
許を受けることができるものである。
第3 原告主張の決定取消事由
決定は,訂正審決による訂正前の請求項に基づき本件発明の要旨を認定し,特許
を取り消すべきものとしているが,訂正審決により特許請求の範囲の減縮等を目的
とする訂正が認められたことによって,本件発明の要旨を結果的に誤認したことに
なり違法となったものである。
第4 当裁判所の判断
原告主張の事由により決定は取り消されるべきものであり,本訴請求は理由があ
る。よって,訴訟費用の負担につき行訴法7条,民訴法62条を適用して,主文の
とおり判決する。
東京高等裁判所第18民事部
裁判長裁判官 塚 原 朋 一
裁判官 塩 月 秀 平
裁判官 古 城 春 実
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