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平成14(ワ)16720民事訴訟 商標権

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裁判所 東京地方裁判所
裁判年月日 平成15年3月28日
事件種別 民事
法令 商標権
キーワード 商標権14回
侵害10回
差止4回
損害賠償1回
主文
事件の概要

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判決文

平成14年(ワ)第16720号損害賠償等請求事件
口頭弁論終結日 平成15年2月19日
            判       決
   原      告     特定非営利活動法人家庭教師派遣業自
主規制委員会
                  (以下「原告自主規制委員会」という。)
       原      告 株式会社日本家庭教師センター学院
                  (以下「原告センター学院」という。)
     被      告     株式会社ディック学園
       訴訟代理人弁護士   井 川 真由美
   主       文
1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は,原告らの負担とする。
   事実及び理由
第1 請求の趣旨
 (原告自主規制委員会)
1 被告は,原告自主規制委員会に対し,金17万3000円及びこれに対する
平成13年11月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告は,原告自主規制委員会に対し,金10万円及びこれに対する平成13
年11月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 被告は,原告自主規制委員会に対し,金12万5825円及びこれに対する
平成13年11月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4 被告は,原告自主規制委員会に対し,金4万8000円を支払え。
5 「原告自主規制委員会は,被告に対して『家庭教師優良業者ネットワーク』
名称中の"優良業者"の削除又は解散,及び関連マーク等の削除,使用禁止を求め
る。」
 (原告センター学院)
6 被告は,原告センター学院に対し,金50万円及びこれに対する平成13年
11月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
7 被告は,原告センター学院に対し,金50万円及びこれに対する平成13年
11月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
8 「原告センター学院は,被告に対して,『全国家庭教師センター連盟』(登
録商標:No4261239)の表示禁止,印刷物・表示物の提出を求める。」
 (原告自主規制委員会及び原告センター学院)
9 「原告自主規制委員会及び原告センター学院は,被告に対して『家庭教師派
遣業自主規制委員会』(登録商標:No3366762)の表示禁止,別紙謝罪広告文記載ど
おりの謝罪広告の掲載を求める。」 
第2 当事者の主張
1 原告らの主張
 (原告自主規制委員会)
(1) 請求の趣旨第1項に係る請求原因
  別紙訴状記載の「紛争の要点(請求原因)1」記載のとおり 
(2) 同第2項に係る請求原因
    別紙訴状記載の「紛争の要点(請求原因)6」記載のとおり
    被告は,原告自主規制委員会が松山地方裁判所において訴外Aと争ってい
る事件に関して,訴外Aを応援する立場を取っており,インターネット上に書き込
まれた原告自主規制委員会及び同原告の理事長に対する誹謗中傷に対し,異を唱え
ることもなく,また,注意の書き込みをすることもなく同調している。これは,同
原告に対する誹謗中傷行為である。
  (3) 同第3項に係る請求原因
    別紙訴状記載の「紛争の要点(請求原因)7」記載のとおり
なお,NPO法人では,理事は個人でしか認可されないため,登記上,理
事は訴外Bとなっているが,会員としては法人会員であり,理事会でも同等として
扱っている。したがって,訴外Bが代表取締役を務める被告に理事分担金の支払義
務がある。
  (4) 同第4項に係る請求原因
    被告は,原告自主規制委員会の会員であるが,平成13年度及び平成14
年度の会費各2万4000円,合計4万8000円を支払っていない。
  (5) 同第5項に係る請求原因
    別紙訴状記載の「紛争の要点(請求原因)2・」記載のとおり  
(原告センター学院)
  (6) 同第6項に係る請求原因
    別紙訴状記載の「紛争の要点(請求原因)3」記載のとおり
また,被告は,タウンページにおいて,「全日本家庭教師センター連盟」
を使用した広告を掲載している。さらに,被告は,生活情報誌月刊「ぷらざ」2月
号(平成11年2月発行)において,「全日本家庭教師センター連盟」の名称を使
用している。
  (7) 同第7項に係る請求原因
    別紙訴状記載の「紛争の要点(請求原因)4」記載のとおり
 「家庭教師優良業者全国ネットワーク」会員が使用している文書(甲17
の1)には,「家庭教師派遣業自主規制委員会」の名称が使用されている。また,
被告は,生活情報誌月刊「ぷらざ」2月号(平成11年2月発行)において,「家
庭教師派遣業自主規制委員会副会長」及び「家庭教師派遣業自主規制委員会大分苦
情相談室」の名称を使用している。
  (8) 同第8項に係る請求原因
    別紙訴状記載の「紛争の要点(請求原因)2・」記載のとおり  
 (原告自主規制委員会及び原告センター学院の請求)
  (9) 同第9項に係る請求原因
    別紙訴状記載の「紛争の要点(請求原因)2・」記載のとおり  
2 被告の認否及び反論
(1) 商標権侵害等について
 被告が「家庭教師派遣業自主規制委員会」及び「家庭教師優良業者全国
ネットワーク」の会員であることは認める。自社のパンフレット等に「家庭教師派
遣業自主規制委員会」及び「家庭教師優良業者全国ネットワーク」の名称を使用し
ていることは否認する。
 被告がかつて「全日本家庭教師センター連盟」に加入していたこと,被
告のホームページの会社沿革欄等に「全日本家庭教師センター連盟加入」等の記載
があることは認める。自社の沿革等を説明するためにその旨の記載をしたのである
から,商標としての使用ではない。
(2) インターネット等による名誉毀損について
 被告がインターネット上で原告自主規制委員会を誹謗中傷したこと,文
書により名誉毀損行為をしたことは,いずれも否認する。
(3) 理事負担金について
 被告が原告自主規制委員会の理事であったことは否認する。
(4) 年会費について
(ア) 認否
 被告が原告自主規制委員会の会員であること,平成14年度の年会費を
支払っていないことは認める。そもそも,被告には年会費の支払義務はない。
(イ) 弁済の抗弁
 被告は,平成15年2月14日及び同月18日,原告自主規制委員会に
対し,平成13年度及び平成14年度の年会費合計4万8000円を支払った(乙
9,10)。
第3 当裁判所の判断
 原告らの主張は,必ずしも明らかでない。以下,訴状及び準備書面の記載から
原告らの主張を善解した上で判断した。
(原告自主規制委員会の請求)
1 請求の趣旨第1項の請求について
 原告自主規制委員会は,被告が,AAA審査の混乱を生じさせた訴外加藤勝
征の審査方法を支持し,被告が所属する「家庭教師優良業者全国ネットワーク」会
員に有利な審査を押し進めた結果,AAA審査の誤解を招き,これにより,同原告
のNPO活動を妨害し,同原告に信用失墜など損害を被らせたが,被告の同行為が
不法行為に当たると主張しているものと善解される。
 しかし,本件全証拠を検討しても,被告が原告自主規制委員会のAAA審査
に関与したことを窺わせる事情は一切認められない。したがって,その余の点につ
き判断するまでもなく,原告自主規制委員会の請求は理由がない。
2 同第2項の請求について
 原告自主規制委員会は,被告が,訴外高橋昭,訴外加藤勝征,訴外A及び
「家庭教師優良業者全国ネットワーク」会員とともに,平成13年11月29日か
ら平成14年1月24日までの間に,インターネット[www.aozora.com/kzi]上で7
7回にわたり原告自主規制委員会に対する誹謗中傷行為を行い,また,文書でも同
原告の名誉毀損,信用失墜行為を行い,これにより,同原告に信用失墜などの損害
を被らせたが,被告の同行為が不法行為に当たると主張しているものと善解され
る。
 しかし,被告がインターネット[www.aozora.com/kzi]上で原告自主規制委員
会を誹謗中傷しているとの事実及び文書で同原告の名誉毀損,信用失墜行為を行っ
たとの事実を認めるに足りる証拠はない。ウエブペー
ジ(http://www.aozora.com/kzi)の写し(甲15の1~14,甲27)には,原告
自主規制委員会に関する書き込みも認められるが,これらの書き込みが被告によっ
て行われたことを認めるに足りる証拠はない。
 したがって,その余の点につき判断するまでもなく,原告自主規制委員会の
請求は理由がない。
3 同第3項の請求について
 原告自主規制委員会は,理事会及び臨時総会において理事が12万5825
円を負担するとの決議をしたことを根拠として,被告に対して理事負担金12万5
825円の支払を求めている。しかし,同原告は,被告が同原告の理事でないこと
を自認しているのであるから,その請求に理由がないことは明らかである。
4 同第4項について
 被告が原告自主規制委員会の会員であること,被告が平成13年度及び14
年度の会費を支払っていないことは当事者間に争いがない。また,証拠(甲24,
28)と弁論の全趣旨によれば,原告自主規制委員会の会員は,同原告に対し,会
費を支払う義務を負うこと,平成13年度,14年度の年会費は各2万4000円
であることが認められる。これらの事実によれば,被告は原告自主規制委員会に対
し,年会費として4万8000円の支払義務があるものと認められる。
 ところで,証拠(乙9,10)と弁論の全趣旨によれば,被告は,同原告に
対し,上記年会費として,平成15年2月14日及び同月18日に各2万4000
円あての合計4万8000円を振込送金したことが認められるから,同原告の上記
年会費請求権は,弁済により消滅した。
 よって,原告自主規制委員会の請求は理由がない。
5 同第5項の請求について
 原告自主規制委員会は,被告が特定商取引に関する法律(以下「特定商取引
法」という。)43条に違反する行為を行い,同法47条に当たるとして,被告に
対し,「家庭教師優良業者全国ネットワーク」との名称中の「優良業者」の文字の
削除又は「家庭教師優良業者全国ネットワーク」の解散,その関連マークの削除及
び使用差止を求めているものと善解する余地がないではない。
 しかし,このように解したとしても同原告の主張は理由がない。すなわち,
特定商取引法は,43条で役務提供業者等の誇大広告等を禁止する旨規定し,47
条で主務大臣の業務停止権限等を規定しているが,役務提供業者等に同法43条に
違反する行為があったとしても,私人が同法の規定に基づき当該役務提供業者等に
対して業務の停止や違反行為の差止等の措置を求める権利を有するものでないこと
は,同法の規定から明らかであるから,原告自主規制委員会の上記主張は,その主
張自体において理由がない。その他,原告自主規制委員会が被告に対し,上記のよ
うな請求をなし得る法律上の根拠については何らの主張もない。
 よって,原告自主規制委員会の請求は理由がない。
(原告センター学院の請求)
6 同第6項の請求について
(1) 原告センター学院は,被告が,同原告の有する商標権(登録番号 第42
61239号)の登録商標と同一の標章「全日本家庭教師センター連盟」を無断で
使用して上記商標権を侵害し,これにより同原告に損害を被らせたが,被告の同行
為が不法行為に当たると主張しているものと善解される。
(2) 証拠(甲6の1,2)と弁論の全趣旨によれば,原告センター学院は,次
の商標権を有することが認められる。
登録番号  第4261239号
登録日  平成11年4月9日
指定役務  職業のあっせん
技芸・スポーツ又は知識の教授,研究用教材に関する情報の
提供及びその仲介,セミナーの企画・運営又は開催,教育・文化・娯楽・スポーツ
用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。)
登録商標  「全日本家庭教師センター連盟」(標準文字)
 しかし,被告が,標章「全日本家庭教師センター連盟」を使用していると
の事実を認めるに足りる証拠はない。
 すなわち,証拠(甲18の1,2)によれば,被告は,ホームページ上の
会社案内において,会社沿革中に「昭和60年7月 全日本家庭教師センター連盟
加盟」,「平成2年12月 全日本家庭教師センター連盟 常任理事就任」,「平
成4年11月 全日本家庭教師センター連盟副会長就任」と記載していることが認
められる。しかし,これらの記載態様に照らせば,いずれも「全日本家庭教師セン
ター連盟」との名称が沿革の説明の中で使用され,被告の商標として使用されてい
ないことは明らかであるから,原告センター学院の上記商標権を侵害するものでは
ない。
 また,証拠(甲25,26)によれば,①平成12年ころのタウンページ
大分県大分・別府市版に被告の営む大分家庭教師センターの広告が掲載されたが,
その広告中に「大分家庭教師センター」の表示の上に小さく「全日本家庭教師セン
ター連盟公認23年間で指導実績30,000人以上」と記載されていること,②
生活情報誌月刊ぷらざNO.120(平成12年2月号)に「オーダーメイド指導
と,優れた派遣システムこそプロ家庭教師の魅力」と題する記事が掲載されたが,
この記事中に,被告の営む「大分家庭教師センター」の表示の上に小さく「全日本
家庭教師センター連盟公認・社団法人全国学習塾協会加盟」と記載されているこ
と,③上記の各記事は被告が掲載させたものであること等の事実が認められる。し
かし,上記①,②は,その記載自体から,「大分家庭教師センター」が全日本家庭
教師センター連盟の公認を受けていることを説明的に記述したものであって,「全
日本家庭教師センター連盟」との名称が被告の商標として使用されたものでないこ
とは明らかであるから,原告センター学院の上記商標権を侵害するものではない。
その他本件全証拠によるも,被告が標章「全日本家庭教師センター連盟」を使用し
ていることを窺わせる事情は認められない。
 したがって,その余の点につき判断するまでもなく,原告センター学院の
請求は理由がない。
7 同第7項の請求について
(1) 原告センター学院は,被告が,同原告の有する商標権(登録番号 第33
66762号)の登録商標と同一の標章「家庭教師派遣業自主規制委員会」を無断
で使用して上記商標権を侵害し,これにより同原告に損害を被らせたが,被告の同
行為が不法行為に当たると主張しているものと善解される。
(2) 証拠(甲5の1,2)と弁論の全趣旨によれば,原告センター学院は,次
の商標権を有することが認められる。
登録番号  第3366762号
登録日  平成9年12月19日
指定役務  技芸・スポーツ又は知識の教授
登録商標  「家庭教師派遣業自主規制委員会」(標準文字)
 しかし,被告が,標章「家庭教師派遣業自主規制委員会」を使用している
との事実を認めるに足りる証拠はない。
 すなわち,甲17の1の書面には,「家庭教師派遣業自主規制委員会」と
表示されている。しかし,同書面と被告との関わりは全く不明であり,これにより
被告が標章「家庭教師派遣業自主規制委員会」を使用しているとの事実を認めるこ
とはできない。
 また,甲26によれば,前記月刊ぷらざの記事において,①被告代表者で
ある訴外Bの紹介文の中に「家庭教師派遣業自主規制委員会副会長」と記載されて
いること,②「家庭教師トラブル110番」,「判断に迷ったり,困ったとき,苦
情やトラブルに…」と横書きで4行に記載されたその下に,フリーダイヤルの電話
番号とともに「家庭教師派遣業自主規制委員会大分苦情相談室」と記載されている
こと等の事実が認められる。しかし,上記①の「家庭教師派遣業自主規制委員会副
会長」は,訴外Bの役職を示す記載であり,被告の商標として使用されているわけ
ではないし,上記②についても読者が「家庭教師派遣業自主規制委員会大分苦情相
談室」を紹介するものと理解するような態様で記載されているから,被告の商標と
して使用されているとは認められない(なお,甲33によれば,被告は平成12年
当時は原告自主規制委員会の会員であるが,会員は,所定の手続を採れば,自主規
制委員会の表示を使用することもできるとされていることが認められる。)。した
がって,上記①,②の記載は,原告センター学院の上記商標権を侵害するものとは
いえない。
 その他本件全証拠によるも,被告が標章「家庭教師派遣業自主規制委員
会」を使用していることを窺わせる事情は認められない。
 よって,その余の点につき判断するまでもなく,原告センター学院の請求
は理由がない。
8 同第8項の請求について
 原告センター学院は,被告が標章「全日本家庭教師センター連盟」を使用し
て同原告の商標権を侵害したことを理由として,被告に対し,標章「全日本家庭教
師センター連盟」の使用差止と同標章が記載された印刷物の引渡しを求めているも
のと善解される。
 しかし,前示のとおり,本件全証拠を検討しても,被告が標章「全日本家庭
教師センター連盟」を使用して原告センター学院の商標権を侵害したとの事実を認
めることはできない。
 したがって,その余の点につき判断するまでもなく,原告センター学院の請
求は理由がない。
(原告自主規制委員会及び原告センター学院の各請求)
9 同第9項の請求について
 原告らは,被告が標章「家庭教師派遣業自主規制委員会」を使用して原告セ
ンター学院の商標権を侵害したことを理由として,被告に対し,標章「家庭教師派
遣業自主規制委員会」の使用差止と謝罪広告の掲載を求めているものと善解され
る。
 しかし,前示のとおり,本件全証拠を検討しても,被告が標章「家庭教師派
遣業自主規制委員会」を使用して原告センター学院の商標権を侵害したとの事実を
認めることはできない。
 したがって,その余の点につき判断するまでもなく,原告らの請求は理由が
ない。
(結論)
10 以上のとおりであるから,原告らの請求はいずれも理由がない。よって,主
文のとおり判決する。
   東京地方裁判所民事第29部
         裁判長裁判官    飯 村 敏 明
            裁判官   榎 戸 道 也
            裁判官   大 寄 麻 代

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