平成25(行ケ)10109審決取消請求事件
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裁判所 |
審決取消 知的財産高等裁判所
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裁判年月日 |
平成25年12月25日 |
事件種別 |
民事 |
当事者 |
被告特許庁長官 原告ヤフー株式会社
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対象物 |
経路広告枠設定装置,経路広告枠設定方法及び経路広告枠設定プログラム |
法令 |
特許権
特許法159条2項1回
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キーワード |
審決28回 実施13回 拒絶査定不服審判1回
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主文 |
1 特許庁が不服2011-27507号事件について平成25年3月4日にした審決を取り消す。
2 訴訟費用は,被告の負担とする。 |
事件の概要 |
1 特許庁における手続の経緯
原告は,発明の名称を「経路広告枠設定装置,経路広告枠設定方法及び経路広告
枠設定プログラム」とする発明について,平成20年1月11日,特許出願したが
(以下「本願」といい,本願に係る明細書を図面を含めて「本願明細書」とい
う。)(甲6),平成23年9月21日付けで拒絶査定を受け(甲10),同年1
2月21日,拒絶査定不服審判(不服2011-27507号事件。以下「本件審
判」という。)を請求し,平成25年1月11日,特許請求の範囲を変更する旨の
手続補正(以下「本件補正」という。)を行った(甲7)。特許庁は,同年3月4
日,請求不成立の審決(以下「審決」という。)をし,その謄本は,同月19日,
原告に送達された。
2 特許請求の範囲
本件補正後の本願に係る特許請求の範囲の請求項1は,以下のとおりである(以
下,同請求項に係る発明を「本願発明」という。)(甲7)。
「【請求項1】通信ネットワークを介して接続された広告主の端末から,地図上
の経路に関する線描写によって前記端末で設定された経路情報を受信する経路情報 |
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判決文
平成25年12月25日判決言渡
平成25年(行ケ)第10109号 審決取消請求事件
口頭弁論終結日 平成25年11月25日
判 決
原 告 ヤ フ ー 株 式 会 社
訴訟代理人弁理士 酒 井 宏 明
同 中 嶋 裕 昭
同 新 居 禎 晴
被 告 特 許 庁 長 官
指 定 代 理 人 石 川 正 二
同 金 子 幸 一
同 須 田 勝 巳
同 田 部 元 史
同 堀 内 仁 子
主 文
1 特許庁が不服2011-27507号事件について平成25年3月
4日にした審決を取り消す。
2 訴訟費用は,被告の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
主文同旨
第2 事案の概要
1 特許庁における手続の経緯
原告は,発明の名称を「経路広告枠設定装置,経路広告枠設定方法及び経路広告
枠設定プログラム」とする発明について,平成20年1月11日,特許出願したが
(以下「本願」といい,本願に係る明細書を図面を含めて「本願明細書」とい
う。)(甲6),平成23年9月21日付けで拒絶査定を受け(甲10),同年1
2月21日,拒絶査定不服審判(不服2011-27507号事件。以下「本件審
判」という。)を請求し,平成25年1月11日,特許請求の範囲を変更する旨の
手続補正(以下「本件補正」という。)を行った(甲7)。特許庁は,同年3月4
日,請求不成立の審決(以下「審決」という。)をし,その謄本は,同月19日,
原告に送達された。
2 特許請求の範囲
本件補正後の本願に係る特許請求の範囲の請求項1は,以下のとおりである(以
下,同請求項に係る発明を「本願発明」という。)(甲7)。
「【請求項1】通信ネットワークを介して接続された広告主の端末から,地図上
の経路に関する線描写によって前記端末で設定された経路情報を受信する経路情報
受信手段と,
前記経路情報受信手段により受信した前記経路情報に広告枠を設定し,記憶部に
有する経路データベースに記憶する広告枠設定手段と,
前記経路情報に広告枠が設定された後に,ユーザの端末の位置情報を取得する位
置情報取得手段と,
前記位置情報取得手段により取得された前記位置情報を含む前記経路を,前記経
路データベースから特定する経路特定手段と,
前記広告枠に対応する広告情報を記憶する広告データベースから,前記経路特定
手段により特定された前記経路に関連する広告枠の広告情報を抽出して前記ユーザ
の端末に送信する広告情報送信手段と,
を備える経路広告枠設定装置。」
3 審決の理由
(1) 審決の理由は,別紙審決書写しに記載のとおりであり,その要旨は,本願
発明は,特開2002-156234号公報(甲1。以下「引用例1」という。)
に記載された発明(以下「引用例1発明」という。),特開2004-30571
号公報(甲2。以下「引用例2」という。)の記載事項及び周知事項に基づいて,
当業者が容易に発明することができたというものである。
(2) 審決が認定した引用例1発明の内容,本願発明と引用例1発明との一致点
及び相違点は,以下のとおりである。
ア 引用例1発明の内容
「広告主に割り当てられた情報端末装置33は,通信回線を介して基地局31の
コンピュータ31bと接続され,広告枠の入札条件を基地局31に送信し,
広告主が供給する広告情報と地図上のエリア情報の対応情報を格納するデータ
ベース31cと,
ナビゲーション装置1から送信された現在位置と,現在位置が含まれる地図上の
エリアに対応する広告情報がデータベース31cから読み出されて,ナビゲーショ
ン装置1に送信するコンピュータ31bを備える移動体広告システム。」
イ 一致点
「通信ネットワークを介して接続された広告主の端末から,地図上の情報を受信
する情報受信手段と,
前記情報受信手段により受信した前記情報に広告枠を設定し,記憶部に有するデ
ータベースに記憶する広告枠設定手段と,
前記情報に広告枠が設定された後に,ユーザの端末の位置情報を取得する位置情
報取得手段と,
前記位置情報取得手段により取得された前記位置情報を,前記データベースから
特定する特定手段と,
前記広告枠に対応する広告情報を記憶する広告データベースから,前記特定手段
により特定された広告枠の広告情報を抽出して前記ユーザの端末に送信する広告情
報送信手段と,
を備える広告枠設定装置。」である点。
ウ 相違点
本願発明が,広告枠を経路情報に設定し,経路データベースに記憶し,経路デー
タベースによって経路を特定する経路特定手段を有していて,経路特定手段によっ
て特定された経路に関連する広告枠を抽出していて,その経路は線描写で設定され
るのに対して,引用例1発明では,広告枠を地図上のエリアに設定して,データベ
ース31cに記憶し,現在位置が含まれる地図上のエリアに対応した広告情報を読
み出していて,エリアについてはどの様に設定しているかは明示されていない点。
第3 取消事由に関する当事者の主張
1 原告の主張
審決には,手続違背(取消事由1),引用例1発明の認定の誤り(取消事由2),
一致点及び相違点の認定の誤り(取消事由3),引用例2の記載事項の認定の誤り
(取消事由4),容易想到性の判断の誤り(取消事由5)があり,その結論に影響
を及ぼすから,違法であるとして取り消されるべきである。
(1) 手続違背(取消事由1)
審決の理由と本件審判における拒絶理由通知とは,「本願発明と引用例1発明と
の相違点の認定」及び「引用例2の記載事項の認定等」において相違するから,審
判手続において,新たな拒絶理由通知をすべきであった。新たな拒絶理由通知を欠
いた本件審判の手続は,特許法159条2項で準用する同法50条に違反する。
(2) 引用例1発明の認定の誤り(取消事由2)
引用例1発明は,広告主の広告情報をナビゲーション装置に送信するモードとし
て,競売モードと自動決定モードを有しており,これらのモードを切り替えて実行
する発明である。審決が引用例1発明として認定した「広告主に割り当てられた情
報端末装置33は,通信回線を介して基地局31のコンピュータ31bと接続され,
広告枠の入札条件を基地局31に送信し」との構成は,競売モードであって,自動
決定モードではない。また,審決が引用例1発明として認定した「広告主が供給す
る広告情報と地図上のエリア情報の対応情報を格納するデータベース31cと,ナ
ビゲーション装置1から送信された現在位置と,現在位置が含まれる地図上のエリ
アに対応する広告情報がデータベース31cから読み出されて,ナビゲーション装
置1に送信する」との構成は,自動決定モードであり,競売モードではない。
審決は,引用例1発明を「競売モードの構成」と「自動決定モードの構成」とを
区別することなく認定しており,同認定には,誤りがある。
(3) 一致点及び相違点の認定の誤り(取消事由3)
審決は,以下のとおり一致点の認定に誤りがあり,その結果,相違点の認定を看
過している。
引用例1には,情報端末装置からサービスセンタに「入札条件」が送信されるこ
との記載はあるが,「広告情報」や「地図上のエリア」が送信されるとの記載はな
い。「地図上のエリア」は自動決定モードで用いられるものであるから,競売モー
ドにおける「入札条件」と共に送信されることはない。引用例1発明が,本願発明
の「地図上の」「情報を受信する」「情報受信手段」に相当する構成を有すると認
定することはできない。
また,引用例1発明において,「広告主が供給する広告情報と地図上のエリア情
報の対応情報」は,予めデータベースに格納されているものであり,引用例1には,
これらが広告主の情報端末装置から送信されるとの記載はない。したがって,引用
例1発明が,本願発明の「前記情報受信手段により受信した前記情報に広告枠を設
定し,記憶部に有するデータベースに記憶する広告枠設定手段」に相当する構成を
有すると認定することはできない。
引用例1発明には,広告主の情報端末装置から受信した情報に広告枠を設定する
との構成は存在しないから,本願発明の「前記情報に広告枠が設定された後に,ユ
ーザの端末の位置情報を取得する」との構成も,「前記広告枠に対応する広告情報
を記憶する広告データベースから,前記特定手段により特定された広告枠の広告情
報を抽出して前記ユーザの端末に送信する」との構成も存在しない。
以上のとおり,審決には,一致点認定の誤り,及び相違点看過の誤りがある。
(4) 引用例2の記載事項の認定の誤り(取消事由4)
審決は,広告枠を地図上の経路に対して設定することは,引用例2の記載事項等
から,出願前公知であると認定した。
しかし,引用例2には,「道路沿いの位置(地点)」に広告が設定されることが
記載されているにすぎず,「広告枠を地図上の経路に対して設定すること」は,記
載も示唆もされていないのであって,審決の上記認定には誤りがある。
被告は,引用例2における「道路区間」が本願発明における「経路」に相当する
と主張する。
しかし,引用例2における「道路区間」は,単に地理データベースの構造上の区
分にすぎず,本願発明のように端末で設定されるものでも,線描写によって任意に
設定できるものでもなく,「経路」とは異なる。
(5) 容易想到性判断の誤り(取消事由5)
引用例1発明,引用例2の記載事項及び周知技術から本願発明が容易想到である
とした審決の判断には,以下のとおり,誤りがある。
ア 引用例1発明は,「通信ネットワークを介して接続された広告主の端末から,
地図上の情報を受信する情報受信手段」及び「前記情報受信手段により受信した前
記情報に広告枠を設定し,記憶部に有するデータベースに記憶する広告枠設定手
段」を有しておらず,広告主の端末からの地図上の情報に広告枠を設定するもので
はない。また,引用例2では,「仮想広告掲示板」は,プロバイダにより予め設定
されるものであり,広告主により設定されるものではない。したがって,引用例1
発明及び引用例2に記載された事項から,広告主の端末からの地図上の情報に広告
枠を設定するとの構成に至るものではない。
イ また,引用例2に記載された事項は,「道路沿いの位置(地点)」に広告が
設定されることであるから,引用例1発明に引用例2に記載された事項を組み合わ
せても,「経路」に広告が対応付けられる構成に至ることはない。
ウ 引用例1発明において,ナビゲーション装置から送信される「目的地」に対
して「広告情報」を提供する場合に,「エリアに対応付けられている広告情報」を
「経路に対応付けられている広告情報」へ置き換えると,走行している経路とは異
なる経路の広告情報が提供されることとなり,「目的地」に関して「エリア」を
「経路」に置き換えることには阻害要因がある。
エ さらに,本願発明では,エリアに代えて地図上の様々な経路に広告主が広告
枠を設定できることから,広告主の要求に応じて好みの経路に広告を配信すること
ができるという顕著な効果を有する。しかも,広告主の端末で線描画により任意に
経路を設定することができることから,広告主がターゲットとするユーザの端末に
対して効率的に広告を行うことができる。このような効果は,引用例1発明や引用
例2に記載された事項からは,当業者が容易に想起し得ない効果である。
2 被告の反論
(1) 手続違背(取消事由1)に対して
本願発明は,本件補正前の請求項3に記載された発明を「経路情報」等について
補正した発明である。特許請求の範囲が補正されたことから,本件審判における拒
絶理由通知と審決の理由とでは,引用例1発明との相違点の認定等が表現上異なっ
ているが,容易想到性の判断の内容について,実質的に異なる点はない。審決は,
本件審判での拒絶理由を変更したものではない。この点の原告の主張は,失当であ
る。
(2) 引用例1発明の認定の誤り(取消事由2)並びに一致点及び相違点の認定
の誤り(取消事由3)に対して
引用例1には,移動体広告システムは,自動決定モードと競売モードを切り替え
可能であること,自動決定モードにおいても,「対応関係情報を設定する際,同一
の広告枠に対する複数の広告主の広告情報の競合が生じた際には,広告供給を行う
広告主を競売により決定するようにしてもよい」こと(段落【0024】),ま
た,当該競売に対して「広告主が入力した広告枠の入札条件(入札価格等)を示す
入札条件情報を基地局31に送信する機能」を有すること(段落【0020】)が
記載されている。したがって,引用例1発明は,「広告主の端末から広告枠の設定
条件として地図上の情報を発信する」との構成,及び「広告主の端末から受信した
情報に広告枠を設定する」との構成を備えている。
審決の引用例1発明の認定に誤りはなく,一致点,相違点の認定にも誤りはない。
(3) 引用例2の記載事項の認定の誤り(取消事由4)及び容易想到性判断の誤
り(取消事由5)に対して
本願明細書によると,本願発明における「経路」とは,現在位置から目的地まで
移動する場合の,地図上の道路,線路,航路等の「区画」であり,一般的な用語の
意味からして「区間」にほかならない。他方,引用例2における,一方のノードか
ら他方のノードに至る「経路」は「道路区間」である。
したがって,引用例2における「道路区間」は本願発明における「経路」に相当
する。
また,引用例2の「仮想広告掲示板」は,道路沿いあるいは道路上の特定の位置
を通過するエンドユーザにのみメッセージを伝えるものであるから,本願発明と同
様に,地図上のエリアではなく,「経路」に応じて広告を設定することを意図した
ものである。
引用例1発明において,広告枠を設定するエリアをどのようなものにするかは,
当業者が任意になし得る設計事項であり,引用例2には「道路に対して広告を設定
すること」が記載されていることから,道路が含まれる地図上のエリアに広告枠を
設定することに換えて,引用例2に記載された上記技術事項を採用して,相違点に
係る構成とすることは,当業者が容易になし得ることである。
以上のとおり,審決の引用例2の記載事項の認定,容易想到性の判断には誤りは
ない。
第4 当裁判所の判断
当裁判所は,審決には,引用例2の記載事項の認定及び容易想到性の判断(取消
事由4,5)には誤りがあると判断する。その理由は,以下のとおりである。
1 認定事実(本願明細書,引用例1及び引用例2の各記載)
(1) 本願明細書の記載
本願明細書には,以下の記載がある。また,図1及び図3は別紙本願明細書図1
及び同図3のとおりである。(甲6)
「【技術分野】
【0001】本発明は,経路広告枠設定装置,経路広告枠設定方法及び経路広告
枠設定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】現状,広告による宣伝がユーザの購買意欲の向上に貢献することか
ら,広告による宣伝は,企業戦略において重要な要素の1つとなっている。このよ
うな状況において,より有益な広告をユーザに行うための様々な広告枠の設定方法
が試みられている。例えば,車等の移動体に搭載されたナビゲーション装置を介し
て,移動体が走行する経路等の周辺の施設等に関する広告情報を供給すると共に,
移動体に搭載されたナビゲーション装置を介して供給するための広告情報の広告枠
を広告主に販売する移動体広告システムが開示されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002-156234号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】特許文献1に記載の移動体広告システムは,移動体の現在位置,目
的地又は現在位置から目的地までの経路に応じて広告情報を配信するものであった。
よって,移動体の位置や,予めユーザが目的地を登録することにより決定された経
路に応じて広告情報を配信するものであった。そして,特許文献1に記載の移動体
広告システムでは,配信する広告情報が地図上の各エリアに対応付けられており,
例えば,移動体が所定の経路を外れても,エリア内であればエリアに対応付けられ
た移動体の移動位置の周辺の広告情報を配信するものであった。
【0004】本発明は,広告情報の新たな対応付けとして,エリアに代えて地図
上の経路に応じて広告情報を配信可能な経路広告枠設定装置,経路広告枠設定方法
及び経路広告枠設定プログラムを提供することを目的とする。」
「【0006】(1) 通信ネットワーク(例えば,通信ネットワーク2)を介
して接続された広告主の端末(例えば,広告主端末3)から,地図上の経路に関す
る経路情報を受信する経路情報受信手段(例えば,経路情報受信手段15)と,
前記経路情報受信手段により受信した前記経路情報に広告枠を設定し,記憶部
(例えば,記憶部20,220)に有する経路データベース(例えば,経路DB2
2)に記憶する広告枠設定手段(例えば,広告枠設定手段16)と,
を備える経路広告枠設定装置(例えば,広告サーバ1,201)。
【0007】(1)このような構成によれば,当該経路広告枠設定装置は,通信
ネットワークを介して接続された広告主の端末から,地図上の経路に関する経路情
報を受信し,受信した前記経路情報に広告枠を設定し,記憶部に有する経路データ
ベースに記憶する。
【0008】よって,広告情報の新たな対応付けとして,エリアに代えて地図上
の様々な経路に広告主が広告枠を設定できるので,広告主の要求に応じて,好みの
経路に広告を配信することができる。」
「【0012】(3) 前記記憶部(例えば,記憶部20,220)は,前記広
告枠に対応する広告情報を記憶する広告データベース(例えば,広告DB26)を
有し,
ユーザの端末(例えば,ユーザ端末5)の位置情報を取得する位置情報取得手段
(例えば,位置情報取得手段17)と,
前記位置情報取得手段により取得された前記位置情報を含む前記経路を,前記経
路データベースから特定する経路特定手段(例えば,経路特定手段18)と,
前記経路特定手段により特定された前記経路に関連する広告枠の広告情報を,前
記広告データベースから抽出して前記ユーザの端末に送信する広告情報送信手段
(例えば,広告情報送信手段19)と,
を備えること,
を特徴とする(1)又は(2)に記載の経路広告枠設定装置(例えば,広告サー
バ1,201)。
【0013】(3)このような構成によれば,当該経路広告枠設定装置は,前記
記憶部に,前記広告枠に対応する広告情報を記憶する広告データベースを有し,ユ
ーザの端末の位置情報を取得するし,取得された前記位置情報を含む前記経路を,
前記経路データベースから特定し,特定された前記経路に関連する広告枠の広告情
報を,前記広告データベースから抽出して前記ユーザの端末に送信する。
【0014】よって,経路を移動するユーザの位置を取得することで,ユーザに,
取得した位置を含む経路に関連する広告枠の広告情報を送信するので,ユーザが予
め目的地を登録する等のユーザによる事前の準備を必要とせず,より有益な広告を
配信することができる。」
「【発明の効果】
【0041】本発明によれば,広告情報の新たな対応付けとして,エリアに代え
て地図上の経路に応じて広告情報を配信可能な経路広告枠設定装置,経路広告枠設
定方法及び経路広告枠設定プログラムを提供することができる。」
「【0043】(第1実施形態)
[システムの全体構成]
図1は,第1実施形態に係る経路広告枠設定システム100の機能構成を示す図
である。第1実施形態における経路広告枠設定システム100は,広告サーバ1が
通信ネットワーク2を介して,広告主端末3及びユーザ端末5に通信可能に接続さ
れている。
【0044】・・・経路とは,ユーザが自ら又は乗物等により移動可能な,地図
上の道路,線路,航路等の線上で表される一定区画をいう。また,広告サーバ1は,
ユーザ端末5の位置情報を取得してユーザ端末5の位置を把握することで経路を特
定し,経路に関連付けられた広告枠により決定される広告をユーザ端末5に送信す
る装置である。・・・
【0045】広告サーバ1は,制御部10及び記憶部20を備える。広告サーバ
1の制御部10は,さらに入札情報受信手段11,入札情報記憶手段12,落札決
定手段13,広告枠単価算出手段14,経路情報受信手段15,広告枠設定手段1
6,位置情報取得手段17,経路特定手段18及び広告情報送信手段19を有す
る。・・・また,記憶部20は,経路DB(データベース)22,入札DB24及
び広告DB26を有する。」
「【0076】[広告配信処理フロー]
次に,広告サーバ1がユーザ端末5に広告を配信する処理の流れを説明する。図
9は,第1実施形態に係る広告配信処理のフローチャートである。図10は,第1
実施形態に係る広告DB26の例を示す図である。
【0077】図9において,まず,ステップS31では,制御部10(位置情報
取得手段17)は,ユーザ端末5の位置情報を受信する。これは,例えば,ユーザ
端末5において,位置情報の発信を可能に設定することで,広告サーバ1が取得す
ることができる。
【0078】次に,ステップS32では,制御部10は,ステップS31で受信
したユーザ端末5の位置情報に応じた経路を,経路DB22から検索する。そして,
ステップS33では,制御部10は,検索結果として受信したユーザ端末5の位置
情報に応じた経路が存在するか否かを判断する。経路が存在する場合(ステップS
33:YES)には,制御部10は,処理をステップS34に移す。他方,経路が
存在しない場合(ステップS33:NO)には,制御部10は,本処理を終了す
る。」
「【0080】ステップS35では,制御部10は,ユーザ端末5が画像表示が
可能か否かを判断する。これは,ユーザ端末5が,表示部6を有しているか否かを
判断する処理である。ユーザ端末5が画像表示可能である場合(ステップS35:
YES)には,制御部10(広告情報送信手段19)は,処理をステップS36に
移し,広告枠に関する広告の画像データをユーザ端末5に送信した後,処理をステ
ップS37に移す。他方,ユーザ端末5が画像表示が不可である場合(ステップS
35:NO)には,制御部10は,処理をステップS37に移す。」
(2) 引用例1の記載
引用例1には,以下の記載がある。また,図2及び図4は,別紙引用例1図2及
び同図4のとおりである。(甲1)
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,移動体に搭載されたナビゲーション装置に
広告を供給するための移動体広告システムに関するものである。」
「【0003】
【発明が解決しようとする課題】そこで,本発明の第1の目的は,移動体に搭載
されたナビゲーション装置を介して,移動体が走行する経路等の周辺の施設等に関
する広告情報を効率良く供給できる移動体広告システムを提供することである。
【0004】また,本発明の第2の目的は,移動体に搭載された広告出力装置
(ナビゲーション装置)を介して供給するための広告情報の広告枠を効率よく広告
主に販売できる移動体広告システムを提供することである。」
「【0009】
【発明の実施の形態】図1および図2は,本発明の一実施形態に係る移動体広告
システムのブロック図である。この移動体広告システムは,図1および図2に示す
ように,契約した各移動体(ここでは車両)に搭載された複数のナビゲーション装
置(広告出力装置)1と,広告供給を行うサービスセンタ3とを備えている。ナビ
ゲーション装置1が搭載される移動体としては,車両の他に,二輪車(自転車を含
む)や,列車,船舶,飛行機等が考えられる。」
「【0017】広告処理部15bは,ナビゲーション処理部15aから前記現在
位置,前記目的地および前記経路のうちの少なくともいずれか一つ(ここでは全
て)を示す第1の情報を受け取って,その第1の情報を通信部17を介した無線通
信によりサービスセンタ3に送信する機能と,無線通信によりサービスセンタ3か
ら送信されてきた広告情報を通信部17を介して受信して表示部11に表示出力す
る機能とを有する。また,広告処理部15bは,予め登録されている車両の車種を
示す第2の情報を第1の情報と共に通信部17を介してサービスセンタ3に送信す
る機能も有する。なお,この第2の情報は省略可能である。ここで,ナビゲーショ
ン装置1からサービスセンタ3に第1および第2の情報が送信される際には,その
ナビゲーション装置1を識別するための識別情報も一緒に送られるようになってい
る。
【0018】サービスセンタ3は,図2に示すように,基地局31と複数の情報
端末装置(入札受付手段)33とを備えている。基地局31は,通信部31a,コ
ンピュータ31bおよびデータベース(記憶手段)31cを備えている。このうち,
通信部31aおよびコンピュータ31bが本発明に係る供給処理手段に対応してい
る。
【0019】各情報端末装置33は,パソコン等の操作入力および画像表示の可
能なものであり,広告情報の供給を行う各広告主に割り当てられている。各情報端
末装置33と基地局31のコンピュータ31bとは無線または有線の通信回線(例
えば,電話回線等を用いた通信ネットワーク)を介して接続されており,その通信
回線を介して情報送受が可能となっている。
【0020】各情報端末装置33の機能には,基地局31が受信した前述の第1
および第2の情報が基地局から転送されてくると,その第1および第2の情報を表
示する機能と,広告主が入力した広告枠の入札条件(入札価格等)を示す入札条件
情報を基地局31に送信する機能とが含まれている。
【0021】基地局31の通信部31aは,無線電話回線等を用いた無線通信に
よりナビゲーション装置1との間で情報送受をする機能を有している。
【0022】データベース31cには,各広告主が供給する複数種類の広告情報
が格納されている。また,データベース31cには,後述するようにコンピュータ
31bが自動的に供給対象となる広告情報を選択する際に用いる対応関係情報も含
まれている。この対応関係情報とは,前記第1の情報が示すナビゲーション装置1
を搭載した車両の現在位置,目的地,および目的地までの経路のうちの少なくとも
いずれか一つに対応する地図上のエリアと,各広告情報との対応関係を示している。
【0023】コンピュータ31bは,データベース31cに格納されている対応
関係情報に基づいて供給する広告情報を自動的に決定する自動決定モードと,供給
する広告情報を競売により決定する競売モードとを切り替え可能に有している。
【0024】自動決定モードでは,ナビゲーション装置1から送信されてきた第
1の情報が通信部31aを介して受信されると,データベース31cに格納されて
いる対応情報に基づいて,その第1の情報が示す車両の現在地,目的地あるいは目
的地までの経路が含まれる地図上のエリアに対応する広告情報がデータベース31
cから読み出されて,通信部31aを介してそのナビゲーション装置1に送信され
る。なお,対応関係情報を設定する際,同一の広告枠に対する複数の広告主の広告
情報の競合が生じた際には,広告供給を行う広告主を競売により決定するようにし
てもよい。
【0025】競売モードでは,ナビゲーション装置1から送信されてきた第1お
よび第2の情報が通信部31aを介して受信されると,その第1および第2の情報
が通信回線を介して各情報端末装置33に送信される。そして,広告情報の供給を
希望する広告主の各情報端末装置33から入札条件を示す入札条件情報が通信回線
を介して送信されてくると,その受信した各広告主の入札条件に基づいて実際に広
告供給者となるべき広告主が自動的に決定されて,その決定された広告主の広告情
報がデータベース31cから読み出されて,通信部31aを介してそのナビゲーシ
ョン装置1に送信される。この場合の入札条件に基づく決定方法としては,例えば
最も高い条件(入札価格等)を出した広告主から順に広告枠を割りあててゆく方法
が考えられる。
【0026】すなわち,この競売モードでは,各広告主が,基地局31からリア
ルタイムで送信されてくる車両の目的地等を示す第1の情報,および車両の車種を
示す第2の情報に基づいて,広告を行うべきか否か,およびその広告枠の入札価格
等をリアルタイムで決定して広告供給を行うことができるようになっている。」
「【0037】
【発明の効果】請求項1に記載の発明によれば,移動体に搭載されたナビゲーシ
ョン装置からサービスセンタに移動体の現在位置,目的地および目的地までの経路
のうちの少なくともいずれか一つを示す第1の情報が送られ,その第1の情報に基
づいて移動体の現在位置,目的地および目的地までの経路のうちの少なくともいず
れか一つに対応するエリアに対応付けられている広告情報が,サービスセンタから
ナビゲーション装置に送られて出力されるようになっているため,移動体が移動す
る経路等の周辺の施設等に関する広告情報を,ナビゲーション装置を介して効率良
く移動体の搭乗者に供給できる。
【0038】また,広告情報の広告主から広告料を徴収し,その徴収した広告料
を利用することにより,ユーザがサービスセンタから道路情報等の情報を無線通信
により取り寄せる際の通信料を低減させたり,無料にしたすることができ,システ
ムの利用の普及を図ることができる。
【0039】請求項2に記載の発明によれば,移動体に搭載された広告出力装置
の広告枠が,入札受付手段が受け付けた入札条件に基づいて競売により決定される
ようになっているため,広告出力装置を介して供給するための広告情報の広告枠を
効率よく広告主に販売できる。
【0040】請求項3に記載の発明によれば,サービスセンタ側では,ナビゲー
ション装置から目的地等を示す第1の情報が送られてくると,その第1の情報が通
信回線を介して各広告主の情報端末装置に送られるため,各広告主が,その第1の
情報に基づいてリアルタイムで広告枠の競売に参加することができ,その結果,広
告枠の販売をより効率良く行うことができる。
【0041】また,移動体の経路等を考慮して広告枠の競売が行われるため,移
動体が移動する経路等の周辺の施設等に関する広告情報を,ナビゲーション装置を
介して効率良く移動体の搭乗者に供給できる。」
(3) 引用例2の記載
引用例2には,次の記載がある。また,図11は別紙引用例2図11のとおりで
ある。(甲2)
「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は,位置に基づく広告,及びエンドユーザの現在位置から該広告に関連し
た関心ある地点までの経路情報を提供する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
地理的領域を通って移動する人は,異なる種類のモバイル式又は携帯型コンピュ
ーティング・プラットフォームを使用して種々の地理関連の特徴及びサービスを得
ることができる。地理関連の特徴及びサービスを提供するモバイル式又は携帯型コ
ンピューティング・プラットフォームは,専用の計算装置及び汎用の計算装置を含
む。専用の計算装置には,車載ナビゲーション・システム及び個人用(すなわち,
携帯用又は手持ち式)ナビゲーション・システムが含まれる。汎用の計算装置には,
携帯型パーソナル・コンピュータ(例えば,ノートブック型コンピュータ)及び個
人用携帯情報端末(例えば,PDA)のような装置が含まれる。」
「【0005】
【発明が解決しようとする課題】
地理関連の特徴及びサービスを提供する現在のモバイル式又は携帯型コンピュー
ティング・プラットフォームは,多くの有用な利点がもたらされるものではあるが,
改善の余地は引き続き存在する。改善の余地がある一つの領域は,位置に基づいて
エンドユーザに情報を提供することに関する。広告のような幾つかの種類の情報は,
ある特定の位置にだけ制限される場合,より有効又は有用であり得る。」
「【0060】E.広告地点
位置に基づく広告メッセージの伝達を容易にするための別の方法は,広告メッセ
ージを伝えることができる位置に通行可能な道路沿いの地点を指定することである。
この方法により,地理的領域内の道路に沿った「仮想広告掲示板」の位置が設けら
れる。次に,ナビゲーション・サービス・プロバイダは,広告主と契約を結び,設
けられた「仮想広告掲示板」の位置を通過するエンドユーザにメッセージを伝える。
この実施形態によると,道路区間沿いの特定位置に仮想広告掲示板の位置を指定す
ることができる。仮想広告掲示板の位置のために選択された位置は,その位置に関
連した広告メッセージが交差点に設けられることになる如何なる走行案内も防げな
いように,交差点から適切に間隔を置いて配置される。
上述の幾つかの実施形態におけるように,ナビゲーション・サービス・プロバイ
ダ328は,合意により広告メッセージをエンドユーザに伝える。この実施形態に
おいて,広告メッセージは,仮想広告掲示板の位置を通り越して移動するエンドユ
ーザに伝えられる。次に,エンドユーザは,その広告メッセージに関連した関心あ
る地点へ移動するための経路情報を要求することができる。
【0061】この実施形態によると,エンドユーザは地理的領域内の道路に沿っ
て移動する際に,ナビゲーション・サービス・プロバイダ328と通信してい
る。・・・エンドユーザが道路に沿って移動している間,エンドユーザの位置が求
められる。ユーザ入力などによるエンドユーザのコンピューティング・プラットフ
ォームに関連した測位装置(例えば,GPS,内部センサなど)のような何らかの
手段を用いて,エンドユーザの位置が求められる。地理的領域内の道路を表すデー
タにエンドユーザの位置を突き合わせる。道路を表すデータはまた,広告メッセー
ジが与えられることになる道路沿いの位置(例えば,仮想広告掲示板の位置)を表
すデータを含む。エンドユーザの位置が仮想広告掲示板の位置を通過すると,広告
メッセージがエンドユーザに与えられる。」
「【0062】この実施形態は,従来の物理的広告掲示板に優る多数の利点を有
している。例えば,仮想広告掲示板は,局所的な条例又は用途地域制限の支配を受
けない。更に,仮想広告掲示板によって与えられた広告メッセージは,容易に変え
ることができる。
図11は,この実施形態を示す。」
2 取消事由4,5(容易想到性の有無等)について
上記認定事実に基づき,審決の認定に係る本願発明の引用例1発明との相違点に
ついて,引用例2の記載事項及び周知事項により容易想到であるかを判断する。
(1) 本願発明の解決課題及び解決手段について
本願発明は,車等の移動体に搭載されたナビゲーション装置を介して,移動体が
走行する経路等の周辺の施設等に関する広告情報を提供する移動体広告システムに
おける経路広告枠設定装置に関する発明である。従来の移動体広告システムは,移
動体の位置や,予めユーザが目的地を登録することにより決定された経路に応じて
広告情報を配信するものであったが,配信する広告情報が地図上の各エリアに対応
付けられていたため,移動体が所定の経路を外れても,エリア内であれば,エリア
に対応付けられた広告情報が配信されてしまうという解決課題があった。本願発明
は,エリアに代えて地図上の経路に応じて広告情報を配信可能な経路広告枠設定装
置を提供することを目的とするものである。
本願発明における経路広告枠設定装置は,通信ネットワークを介して広告主の端
末と接続しており,この広告主の端末から,地図上の経路に関する,線描写によっ
て設定された経路情報を受信し,受信した前記経路情報に広告枠を設定し,記憶部
に有する経路データベースに記憶するとの構成を有するものであり,広告主は,地
図上の様々な経路に広告枠を設定することができるとするものである。そして,ユ
ーザの端末からユーザの位置情報を取得し,当該位置情報を含む経路を特定して,
当該経路に関連する広告枠の広告情報をユーザの端末に送信する。
(2) 容易想到性の有無
引用例1発明は,広告枠を地図上のエリアに設定し,広告主が供給する広告情報
と地図上のエリア情報の対応関係をデータベースに記憶し,現在位置が含まれる地
図上のエリアに対応した広告情報をデータベースから読み出して,ナビゲーション
装置に送信するという,移動体広告システムの発明であり,本願明細書が言及する
とおり,移動体が所定の経路を外れても,エリア内であれば,エリアに対応付けら
れた広告情報が配信されてしまうとの未解決の課題を残した発明である。
他方,引用例2は,車載ナビゲーション・システム等を使用した,位置に基づく
広告の提供方法に関する発明を記載したものである。引用例2には,広告メッセー
ジを伝えることができる位置として,通行可能な道路沿いの特定位置を「仮想広告
掲示板」の位置として指定し,ナビゲーション・サービス・プロバイダは広告主と
の契約に基づき,設けられた「仮想広告掲示板」の位置を通過するエンドユーザに
広告メッセージを伝えるとの技術事項が記載開示されている。引用例2に記載され
た上記技術は,通行可能な道路沿いの特定位置を通過するユーザに対して,広告メ
ッセージを伝えるものであり,広告メッセージが送信されるのは,ユーザが特定の
位置を通過した時点である。
広告枠を地図上のエリアに設定し,広告主が供給する広告情報と地図上のエリア
情報の対応関係をデータベースに記憶し,現在位置が含まれる地図上のエリアに対
応した広告情報をデータベースから読み出して,ナビゲーション装置に送信すると
いう発明である引用例1発明と,通行可能な道路沿いの特定位置を「仮想広告掲示
板」の位置として指定し,位置を通過するエンドユーザに広告メッセージを伝える
との引用例2に記載された技術事項を組み合わせたとしても,本願発明における地
図上の経路に広告枠を設定するとの構成に至ることはない。また,引用例1発明に
引用例2の記載事項を組み合わせても本願発明における上記構成に至らない以上,
経路を線描写によって設定することが周知事項であったとしても,引用例1発明に
引用例2の記載事項及び上記周知事項を組み合わせることにより本願発明の上記構
成に至ることはない。
したがって,広告枠を地図上の経路に対して設定することが引用例2の段落【0
060】及び【0061】の記載並びに図11から出願前公知であるとして,経路
を線描写によって設定することが周知事項であることを考慮し,引用例1発明の地
図上のエリアとして引用例2の記載事項にあるような道路区間(経路)を採用し,
相違点の構成とすることが当業者において容易になし得ることであるとした審決の
判断には誤りがある。
(3) 被告の主張に対して
被告は,引用例2における「道路区間」は本願発明における「経路」に相当し,
引用例2には「道路(経路)に対して広告を設定すること」が記載されているので
あるから,引用例1発明に引用例2に記載の技術事項を採用して,相違点に係る構
成に至るのは容易であると主張する。
しかし,引用例2に記載された「道路区間」の語は,仮想広告掲示板を設定する
「道路区間」沿いの位置を特定する文脈の中で用いられたものであって,広告枠を
設定する対象を意味するものとして用いられた語ではない。したがって,引用例2
における「道路区間」と本願発明における「経路」とは,技術的意義において相違
する。引用例2においては,移動体が当該道路区間上を移動中であったとしても,
当該特定位置に至らない限り,広告メッセージは配信されないのであるから,「広
告枠を経路情報に設定」することが記載されているとはいえず,被告の主張は失当
である。
(4) 小括
以上のとおり,審決の引用例2の記載事項の認定及び容易想到性の判断には誤り
がある。
3 結論
以上によると,原告主張の取消事由4及び5には理由があり,その余の点を判断
するまでもなく,審決にはその結論に影響を及ぼす誤りがある。よって,審決を取
り消すこととして,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第1部
裁判長裁判官
飯 村 敏 明
裁判官
八 木 貴 美 子
裁判官
小 田 真 治
別紙 本願明細書図1
本願明細書図3
別紙 引用例1図2
引用例1図4
別紙 引用例2図11
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