ホーム > 知財判決速報/裁判例集 > 平成24(ワ)9237 商標権移転登録抹消手続等請求事件
| 裁判所 | 請求棄却 東京地方裁判所 |
|---|---|
| 裁判年月日 | 平成25年12月24日 |
| 事件種別 | 民事 |
| 当事者 | 被告株式会社NBR岡田淳 原告有限会社ノッツインターナショ |
| 法令 |
商標権 |
| キーワード | 商標権17回 無効5回 損害賠償2回 |
| 主文 | 原告の請求をいずれも棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。 |
| 事件の概要 | 本件は,原告が,被告に対し,(1) 事業の譲渡に伴い被告に譲渡した商標権 及び什器備品等について事業譲渡の解消を合意したとして,上記合意に基づき, 商標権移転登録の抹消登録手続及び什器備品等の引渡しを求め,(2) 被告が 原告の所有する什器備品等を占有しているとして,所有権に基づき,什器備品 等の引渡しを求め,(3) 上記合意の際に被告との間で商標権に係る登録商標 の使用料の支払を合意したとして,上記合意に基づき,使用料240万467 2円及びこれに対する訴状送達の日から支払済みまで民法所定の年5分の割 合による遅延損害金の支払を求め,(4) 被告が事業譲渡の解消の合意に基づ く商標権移転登録の抹消登録手続の履行を遅滞したとして,債務不履行による 損害賠償請求権に基づき,平成24年1月及び2月における損害465万40 34円及びこれに対する訴状送達の日から,同年3月ないし平成25年1月に おける損害2605万2491円及びこれに対する訴え変更申立書送達の日 から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め る事案である。 |
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平成25年12月24日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
平成24年(ワ)第9237号 商標権移転登録抹消手続等請求事件
口頭弁論の終結の日 平成25年10月29日
判 決
札幌市<以下略>
原 告 有限会社ノッツインターナショ
ナル
同訴訟代理人弁護士 本 田 聡
加 藤 大 裕
東京都渋谷区<以下略>
被 告 株 式 会 社 N B R
同訴訟代理人弁護士 辰 野 嘉 則
岡 田 淳
主 文
原告の請求をいずれも棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
1 被告は,原告に対し,商標登録第4232261号,第4483266号,
第4483267号,第4503580号及び第4503581号の各商標権
に係る登録商標について,平成23年6月21日受付第008967号の商標権移転登録の抹消登録手続をせよ。2 被告は,原告に対し,別紙物権目録記載1及び2の各物件を引き渡せ。3 被告は,原告に対し,3311万1197円及びうち705万8706円に対する訴状送達の日から,うち2605万2491円に対する訴え変更申立書送達の日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
本件は,原告が,被告に対し,(1) 事業の譲渡に伴い被告に譲渡した商標権及び什器備品等について事業譲渡の解消を合意したとして,上記合意に基づき,商標権移転登録の抹消登録手続及び什器備品等の引渡しを求め,(2) 被告が原告の所有する什器備品等を占有しているとして,所有権に基づき,什器備品等の引渡しを求め,(3) 上記合意の際に被告との間で商標権に係る登録商標の使用料の支払を合意したとして,上記合意に基づき,使用料240万4672円及びこ れに対す る訴状送 達の日か ら 支払済みま で民法所 定の年5 分の割合による遅延損害金の支払を求め,(4) 被告が事業譲渡の解消の合意に基づく商標権移転登録の抹消登録手続の履行を遅滞したとして,債務不履行による損害賠償請求権に基づき,平成24年1月及び2月における損害465万4034円及びこれに対する訴状送達の日から,同年3月ないし平成25年1月における損害 2605 万249 1円及び こ れに対する 訴え変更 申立書送 達の日から各支払 済みまで 民法所定 の年5分 の 割合による 遅延損害 金の支払 を求める事案である。1 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに各項末尾掲記の証拠及び弁論の全趣旨により認められる事実)
(1) 原告は,平成16年に商標登録第4232261号,第4483266号,第4483267号,第4503580号及び第4503581号の各商標権(以下,これらを併せて「本件商標権」といい,それぞれの登録商標を併せて「本件商標」という。)を取得し,その頃から,自ら企画,製造した被服や衣料雑貨品等に本件商標を使用して,これを東京都渋谷区神宮前六丁目17番15号所在の落合ビルB1の店舗において販売し,その後,さらに,電子商取引サイトにおいて通信販売していた(以下,本件商標を使用した事業を「本件事業」という。 。)被告代表者は,原告代表者の弟であり,平成17年頃に原告に入社し,平成20年頃からは落合ビルにおける販売を任されるようになった。(甲5の1ないし5,23の1ないし5,乙1の1・2)
(2) 原告は,平成21年頃から売上が減少して負債が増加し,平成22年末になると資金繰りが苦しくなって経営が立ち行かなくなるおそれが生じた。原告代表者は,会社の整理を検討し,その際,本件事業を廃止せずに,新会社を設立してこれに本件事業を譲渡してその存続を図ろうと考え,設立する新会社の代表者には被告代表者を就任させようとした。なお,設立する新会社が本件事業の譲渡を受けるには,銀行その他原告の融資元の承諾を得る必要があり,そのために,新会社が,落合ビルB1の賃貸借の保証金300万円,本件商標権の譲渡代金300万円及び内装の譲渡代150万円合計750万円を負担することとされた。(甲7ないし9,12,25ないし28,54,56,乙3,25)
(3) 被告代表者は,当初,設立する新会社の代表者に就任することを拒んでいたが,弁護士や経営コンサルタントを交えて原告代表者と話をする中で,これを引き受けることを決め,平成23年6月8日,本店所在地を落合ビルB1として,被告を設立し,その代表取締役に就任した。(甲2,25ないし28,56,乙3,25)
(4) 被告は,設立とともに,原告からその所有する別紙物件目録記載1及び2の什器備品等(以下「物件1」及び「物件2」という。)の引渡しを受け,これを使用して,落合ビルB1において本件事業を開始した。被告は,平成23年6月21日,同月16日に原告から本件商標権の譲渡を受けたとして,平成23年6月21日受付第008967号の商標権移転登録を経由した。(甲5の1ないし5,13,56,乙5の1ないし4,25)
(5) 被告は,平成23年7月28日に原告から「内装代150万円+商標代300万」その他の支払の請求を受け,翌29日,原告の口座に合計528万6513円を振込送金した。(甲33,乙3,7)
(6) 原告代表者は,平成23年7月31日午前10時12分頃,次の内容の電子メール(以下「本件送信メール」という。)を被告代表者に送信した。「今回の事業譲渡の件はご破算です。弁護士にも相談していますが,そちらの協力がない場合は,東京都にカラーズの消費税の件で報告,Bさんから,Cへの借金の未納分を弁護士から手配,などいろいろ手を打ちます。内装代と商標名義変更代はC個人の貸付け132万を差し引いた金額を来週中に返却します。商標譲渡の書類が準備できたら送ります。3つのチョイスから選んでください。1)7月末で終了。7月末で落合ビルから出て行く。店にあるNBRが購入していないものはすべてノッツ所有なので,NBRと個人のもの以外は持ち出さない。Cのパソコン2台ぐらいノッツで購入しているので,それらを7月末で返却する。2)11FWで終了。12月末日で落合ビルから出て行く。それまでは家賃42万+光熱費実費を支払う(ノッツのものは動かさないので善意を持って取り扱うこと)これから生産する商品に関してはNBR買い取りで仕入額の10%を商標使用料としてノッツに支払うこと。委託に関しては商品原価の10%を支払うこと。店にあるNBRが購入していないものはすべてノッツ所有なので,NBRと個人のもの以外は持ち出さない。Cのパソコン2台ぐらいノッツで購入しているので,それらを7月末で返却する。3)68の商標買い取り買い取り金額 4000万(68の借金の半額)保証人2名必要」(甲14の1)
(7) 被告代表者は,平成23年7月31日午後零時10分頃,本件メールを受けて,次の内容の電子メール(以下「本件返信メール」という。)を原告代表者に送信した。「了解しました。2)でお願いします。パソコンはマウスとデルの2台を購入しています。マウスはハードが壊れて使えません。デルはAが使ってます。ちなみにバイオは自分で購入しています。」(甲14の2)
(8) 被告は,その後も,落合ビルB1において本件事業を行っていて,物件1の全て及び物件2のうち別紙物件目録2の番号6,番号19,番号22ないし36を除き占有している。
(9) 被告代理人は,本件事業の譲渡を解消するとの合意(以下「本件合意」という。)が成立したと認められることを慮って,平成24年7月17日の本件口頭弁論期日において,原告代理人に対し,強迫又は詐欺を理由に本件合意を取り消す旨の意思表示をした。争点
(1) 本件合意の成否及びその効力の有無
(2) 原告から被告に対する物件2の譲渡の有無
(3) 本件商標使用料の支払の合意の成否
(4) 被告が商標権移転登録の抹消登録手続の履行を遅滞したことによる原告の被った損害の有無及びその額争点についての当事者の主張
(1) 争点(1)(本件合意の成否及びその効力の有無)についてア 本件合意の成否(ア) 原告原告代表者は,本件送信メールにおいて本件事業の譲渡を解消することを申し込み,被告代表者は,本件返信メールにおいてこれを承諾したから,これにより,本件合意は成立した。(イ) 被告原告代表者と被告代表者の間のメールのやりとりは兄弟間のざっくばらんなやりとりにすぎず,本件送信メールと本件返信メールによって,本件合意が成立することはない。イ 本件合意の効力の有無(ア) 被告a 強迫を理由とする取消し原告代表者は,被告代表者に対し,本件合意に際し,もし被告が応じなければ,被告代表者が経営していた有限会社カラーズの東京都に対する未納の消費税や被告代表者のBに対する未払の借入金の取立てが始まるなど,被告代表者の財産に危害を加えかねない気勢を示して被告代表者を脅し,その旨畏怖させて本件合意を成立させた。b 詐欺を理由とする取消し原告代表者は,被告代表者に対し,本件合意に際し,有限会社カラーズの東京都に対する未納の消費税や被告代表者のBに対する未払の借入金の支払を強いられることがないにもかかわらず,取立てが始まるかのように告げて被告代表者を欺き,その旨誤信させて本件合意を成立させた。c 錯誤による無効被告代表者は,本件合意に際し,有限会社カラーズの東京都に対する未納の消費税や被告代表者のBに対する未払の借入金の支払を強いられることがないにもかかわらず,取立てが始まるものと誤信しており,原告代表者は,被告代表者が誤信していたことを認識していた。(イ) 原告a 強迫を理由とする取消し原告代表者は,本件送信メールにより,被告代表者に対し,原告代表者が消費税の件やBへの借金の件で苦労しながらこれまでやってきたこと伝えようとしたのであって,原告代表者に強迫の故意はないし,被告代表者は,消費税や借入金の取立てを受ける可能性がないことを認識していたから,畏怖していたとは認められない。b 詐欺を理由とする取消し被告代表者は,消費税や借入金の取立てを受ける可能性がないことを認識していたから,誤信していない。c 錯誤による無効被告代表者は,消費税や借入金の取立てを受ける可能性がないことを認識していたから,誤信していない。
(2) 争点(2)(原告から被告に対する物件2の譲渡の有無)についてア 被告原告は,本件事業の譲渡において,被告に対し,物件2を譲渡した。イ 原告原告が被告に対し物件2を譲渡したことはない。このことは,事業譲渡契約書(甲11。以下「本件事業譲渡契約書」という。)や原告が被告に提供した見積書(甲51の1ないし3。以下「本件見積書」という。)に物件2の記載がないことからも明らかである。
(3) 争点(3)(本件商標使用料の支払の合意の成否)についてア 原告原告と被告は,本件合意の際,被告が平成23年12月末日まで本件事業を継続し,その間,被告が原告に対し,本件商標使用料として,被告が原告から仕入れた商品(以下「仕入商品」という。)については仕入額の10%に相当する金額,原告から販売を委託された商品(以下「委託商品」という。 については商品原価の10%に相当する金額を支払うことを合意)した。イ 被告前記(1)のとおり,本件合意は成立していないし,仮に成立したとしても無効であるから,本件商標使用料支払の合意も,これと同様に,成立していないか,仮に成立したとしても無効である。
(4) 争点(4)(被告が商標権移転登録の抹消登録手続の履行を遅滞したことによる原告の被った損害の有無及びその額)についてア 原告原告は,被告が本件商標について商標権移転登録の抹消登録手続の履行をしなかったため,平成24年1月から平成25年1月までの間本件事業を行うことができず,これにより,3070万6525円の利益を失い,同額の損害を被った。イ 被告前記(1)のとおり,本件合意は成立していないし,仮に成立したとしても無効であるから,被告は本件商標について商標権移転登録の抹消登録手続を履行する義務を負わない。
第3 当裁判所の判断
1 争点(1)(本件合意の成否及びその効力の有無)について
(1) 前記前提事実に,証拠(甲10,14の1・2,25ないし28,33
ないし41,乙3,6の1ないし3,11,原被告各代表者)及び弁論の全趣旨を総合すれば,次の事実が認められる。ア 被告は,平成23年6月8日の設立とともに,落合ビルB1において本件事業を開始し,その後,クレジット会社の契約,電子商取引サイトのサーバー会社との契約,商品の運搬契約,電話回線契約,落合ビルで本件事業に関わ ってい た従業 員3 名との 間の雇 用契約及 びその 他本件 事業 に必要なインフラ等の契約について,契約主体を原告から被告に切り替え,同月29日には,原告代表者の指示に従い,見出しを「国内代理店変更のお知らせ及び新会社設立のご挨拶」,本文を「この度,有限会社ノッツインターナショナルが取り扱って参りました68&BROTHERS NEWYORK製品の日本国内の販売代理店業務を,2011年6月1日をもちまして,株式会社NBRへ移行する事となりました。」などとの内容の原告名の電子メールを原告の取引先に一斉送信した。イ 被告は,平成23年7月29日,内装代や商標代その他として,原告の口座に合計528万6513円を振込送金したが,原告代表者は,同日夜,「内装代と商標更新代返すので,68FWとか切れのいいところで終了してください。申し訳ないけど,今日の話,Cの態度でやる意味がないと思った。」との内容の電子メールを被告代表者に送信した。ウ 原告代表者は,平成23年7月31日午前10時12分頃に本件送信メールを被告代表者に送信し,被告代表者は,同日午後零時10分頃に本件返信メールを原告代表者に送信したが,その後,原告代表者は,同年8月2日に「2)で了解しました。またパソコンの件わかりました。年内まで使用していてOKです。あとMPの件ですが,ノッツで投資している事業ですので,継続するのであればフェアーに運営お願いします。辞めるのであれば,契約解除前に一報ください。」との内容の電子メールを被告代表者に送信し,被告代表者は,同日に「パソコンの件,了解しました。MPは今月で終了します。」との内容の電子メールを原告代表者に送信した。エ 被告代表者は,平成23年8月11日,原告代表者に対し, 「今回の事「業譲渡の件はご破算です」という一方的な通告を受け入れるつもりはありません。また,あなたからは,当方が既に支払済みの商標譲渡代金について返却するとのお話もありましたが,商標は引き続き当方が保有しますので,そのような返却を受けることはできません。」などとの内容の電子メールを原告代表者に送信した。オ 被告は,その後も,落合ビルB1において本件事業を行っている。
(2) 本件事業の譲渡は,原告の資金繰りが苦しくなって経営が立ちゆかなく
なるおそれが生じたことから,本件事業を存続させることを目的として,原告代表者の主導のもとに採用された企画であり,そもそもこれを解消して元の状態に戻すことは想定されていない。そして,被告は,設立後,上記企画に従い,本件事業を開始し,これに必要なインフラ等の契約の主体を原告から被告に切り替え,「国内代理店変更のお知らせ及び新会社設立のご挨拶」との見出しの電子メールを原告の取引先に一斉送信し,平成23年7月29日には,原告からの「内装代150万円+商標代300万円」その他の支払の請求を受けて,合計528万6513円を振込送金した。原告代表者は,そのような状況のもとで,同日夜,唐突に本件事業譲渡の解消をにおわす内容の電子メールを送信し,その翌々日の同月31日に本件送信メールを送信したのである。しかも,原告代表者が本件送信メールにおいて提示した選択肢は「1)」が即日本件事業を停止するというものであり,「3)」が本件事業における借金,すなわち原告の債務の半額を負担させるというものであって,いずれも本件事業の譲渡の趣旨に反する内容であり,「2)」についても,被告が本件事業を開始してからわずか7か月弱で終了させるというものであって,被告が本件事 業を継続 するこ とに格 別の支障 や不都合 があると は窺え ないこ とに鑑みれば,本件事業の譲渡の趣旨とは相容れない内容であるといわざるを得ない。また,原告が本件送信メールに記載された内装代,商標名義変更代を返還したと認めるに足りる証拠はなく,その後,原告代表者が,平成23年8月11日の 被告代表 者の電 子メー ルについ て疑義を 質したり 異議を 述べた とか,被告代表者との間で,本件事業の譲渡の解消に向けて具体的な話合いをもった形跡もない。これらの事情に,原告代表者と被告代表者とが兄弟であること,やりとりが電子メ ールとい う比較 的気軽 に利用す ることが できる手 段によ るもの であることを併せ考えれば,原告代表者は,何らかの理由で被告代表者の態度に腹を立て,本件事業の譲渡の解消という被告代表者が困惑せざるを得ないような内容の電子メールを送信して,被告代表者に対する不平や不満の感情をぶつけたにすぎないものと認められる。そうであるから,本件送信メールは,意思表示としての本件事業の譲渡の解消の申入れではなく,原告代表者がその感情を表出させたものであるというにとどまり,被告代表者がこれに対して本件返信メールを送信したとしても,本件合意が成立すると認めることはできない。争点(2)(原告から被告に対する物件2の譲渡の有無)について弁論の全趣旨によれば,物件2は落合ビルB1にあって本件事業に用いられていたことが認められ,被告はその設立とともに,原告からその引渡しを受け,内装代として合計150万円を原告に支払っているのであるから,原告は,本件事業の譲渡に伴い,物件2を譲渡したものと認められる。原告は,本件事業譲渡契約書や本件見積書に物件2の記載がないから,原告が被告に対し物件2を譲渡したことはないと主張する。しかしながら, (甲証拠11)によれば,本件事業譲渡契約書は日付や金額が「○」と記載されている上,当事者欄にはそれぞれの記名があるだけで押印がないことが認められるから,同契約書の別紙の内容が譲渡の対象となる資産等を確定するものということはできない。また,本件見積書は,建築付属設備が合計20万円とされ,器具備品が個 々の金額 を10万 円以下で 合 計130万 円とされ ているも のであるが,証拠(甲29,乙21の1ないし3)によれば,被告代表者は,平成23年6月11日,「7月1日に助成金の申請をするので,見積もり(詳細)を20日ぐらいまでにお願いします。内装は什器を20万以下に備品類は10万以下に分類してもらえると都合がいいのでお願いします。3ヵ月後に上記経費の支払った1/3が適用されます。」との内容の電子メールを原告代表者に送信していること,被告代表者は,平成23年10月27日及び平成24年1月24日,東京労働局長に対し,受給資格者創業支援助成金の給付を申請し,その給付を受けたことが認められ,これらの事実によれば,本件見積書は,被告が上記助成金の給付を申請するために作成されたものであり,この記載内容が譲渡の対象となる資産等を確定するものということもできない。原告の上記主張は,採用することができない。以上によれば,(1) 本件合意に基づく商標権移転登録の抹消登録手続請求及び物件1の引渡請求は,本件合意が成立したと認めることができないから,理由がなく,(2) 所有権に基づく物件2の引渡請求は,原告が被告に対し物件2を譲渡してその所有権を喪失しているから,理由がなく,(3) 商標使用料の支払の合意に基づく使用料請求及び債務不履行による損害賠償請求は,いずれも本件合意が有効に成立したことを前提とするから,本件合意が成立したと認めることができない以上,これらも理由がない。よって,原告の請求は,すべて理由がないから,いずれもこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。東京地方裁判所民事第47部裁判長裁判官 高 野 輝 久裁判官 三 井 大 有裁判官 藤 田 壮
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