平成14(行ケ)313行政訴訟 特許権
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裁判所 |
東京高等裁判所
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裁判年月日 |
平成15年2月25日 |
事件種別 |
民事 |
法令 |
特許権
特許法29条1項2回 民事訴訟法62条1回
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キーワード |
審決6回 特許権1回 優先権1回
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主文 |
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事件の概要 |
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判決文
平成14年(行ケ)第313号 特許取消決定取消請求事件
口頭弁論終結日 平成15年2月13日
判 決
原 告 エクスフルアー・リサーチ・コーポレーション
訴訟代理人弁理士 細 田 芳 徳
被 告 特許庁長官 太 田 信一郎
指定代理人 井 上 彌 一
同 板 橋 一 隆
同 森 田 ひとみ
同 大 橋 良 三
同 涌 井 幸 一
同 一 色 由美子
主 文
1 特許庁が異議2000-70927号事件について平成14年2月5日
にした決定を全部取り消す。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
1 原告の請求
(1) 主文1項と同旨。
(2) 訴訟費用は被告の負担とする。
2 当事者間に争いのない事実
(1) 特許庁における手続の経緯
原告は,発明の名称を「液相フツ素換」とする特許第2945693号の特
許(平成1年9月28日出願(パリ条約による優先権主張外国庁受理 1988年
9月28日,米国),平成11年6月25日設定登録,以下「本件特許」といい,
その発明を「本件発明」という。)の特許権者である。
本件特許に対し,請求項1ないし13につき,特許異議の申立てがあり,そ
の申立ては,異議2000-70927号事件として審理された。原告は,この審
理の過程で,平成13年1月15日,本件特許の出願に係る願書の訂正の請求をし
た。特許庁は,上記事件につき審理し,その結果,平成14年2月5日,「訂正を
認める。特許第2945693号の請求項1ないし13に係る特許を取り消す。」
との決定をし,同年2月27日に,その謄本を原告に送達した(附加期間90
日)。
(2) 決定の理由
決定の理由は,要するに,本件発明中,請求項1,7,8,12に係る各発
明は,特許法29条1項の規定により特許を受けることができないものであり,請
求項2ないし6,9ないし11,13に係る各発明は,特許法29条2項の規定に
より特許を受けることができないものであるのに,本件特許は,これに違反して登
録されたものである,とするものである。
(3) 原告は,本訴係属中の平成14年10月9日,本件特許の出願の願書に添付
された明細書の訂正をすることについて審判を請求した。特許庁は,これを訂正2
002-39216号事件として審理し,その結果,平成14年11月26日に上
記訂正をすることを認める旨の審決(以下「訂正審決」という。)をし,これが確
定した。
(4) 訂正審決による訂正の内容のうち,特許請求の範囲に係る部分は,次のとお
りである。
(ア) 訂正審決による訂正前の本件特許の特許請求の範囲
「【請求項1】a.水素含有化合物を,液状のパーフルオロカーボン,完全
ハロゲン置換されているクロロフルオロカーボンまたはクロロフルオロエーテル媒
体中に,この媒体を撹拌しながら入れ,結果として,該水素含有化合物を該液状媒
体内に溶解もしくは分散させ;
b.フッ素ガスと希釈ガスとの混合物(ここで,ガス混合物中のフッ素濃度
が10~40%である)を該媒体中に導入して,該水素含有化合物をフッ素置換し
(該置換に際し,気体区域中の該液状のパーフルオロカーボン,完全ハロゲン置換
されているクロロフルオロカーボンまたはクロロフルオロエーテル媒体およびフッ
素が可燃性混合物を形成しないように該フッ素を希釈し,そして該フッ素ガスの量
が,該水素含有化合物の水素原子の全てをフッ素で置換するのに必要な化学量論的
過剰量である);そして
c.該水素含有化合物が完全フッ素置換されるまで工程bのフッ素置換を継
続する;ことを含む液相完全フッ素置換のための方法。
【請求項2】該完全ハロゲン置換されているクロロフルオロカーボンが1,
1,2-トリクロロトリフルオロエタンである請求の範囲1の方法。
【請求項3】該完全ハロゲン置換されているクロロフルオロエーテルが完全
ハロゲン置換されているクロロフルオロポリエーテルである請求の範囲1の方法。
【請求項4】該完全ハロゲン置換されているクロロフルオロエーテルが(C
F2C1)2CFOCF2OCF(CF2C1)2,またはCF2C1CF2OCF2O
CF2CF2C1である請求の範囲3の方法。
【請求項5】該液状媒体が該フッ素置換により完全フッ素置換されている生
成物と同じである請求の範囲1の方法。
【請求項6】該水素含有化合物を最初に溶媒に溶解し,次いで溶液状で該液
状媒体中に導入する請求の範囲1の方法。
【請求項7】該フッ素置換をフッ化水素捕集剤の存在下行う請求の範囲1の
方法。
【請求項8】該フッ化水素捕集剤がフッ化ナトリウムである請求の範囲7の
方法。
【請求項9】該フッ素置換のガス状生成物を,フッ化水素捕集剤を含有して
いる床を通して循環させた後,これを該フッ素置換用反応槽に再導入する請求の範
囲1の方法。
【請求項10】該液状媒体の沸点未満の温度であるが,副生成物のフッ化水
素を該反応槽から除去するのに充分に高い温度で,該フッ素置換反応をフッ化水素
捕集剤なしで行う請求の範囲1の方法。
【請求項11】フッ素ガスを,紫外光で照射することなく液状媒体中に導入
し,そしてフッ素の導入を紫外光で照射することなく継続する請求の範囲1の方
法。
【請求項12】a)水素含有化合物を,液状のパーフルオロカーボン,完全
ハロゲン置換されているクロロフルオロカーボンまたはクロロフルオロエーテル媒
体中に,この媒体を撹拌しながら入れ,結果として,該水素含有化合物を該液状媒
体内に溶解もしくは分散させ;
b)フッ素ガスと希釈ガスとの混合物を該媒体中に導入して,該水素含有化
合物をフッ素置換し(該置換に際し,気体区域中の該液状のパーフルオロカーボ
ン,完全ハロゲン置換されているクロロフルオロカーボンまたはクロロフルオロエ
ーテル媒体およびフッ素が可燃性混合物を形成しないように該フッ素を希釈し,そ
して該フッ素ガスの量が該水素含有化合物の水素原子の全てをフッ素で置換するの
に必要な化学量論的過剰量であり,そして該ガス混合物のフッ素含有量が10%~
40%である);
c)該フッ素置換反応を-40℃~150度の温度に保持し;
d)該フッ素置換中,該水素含有化合物をフッ化水素捕集剤と接触させ(該
水素含有化合物に対するフッ化水素捕集剤の量が,フッ素置換中に生成してくるフ
ッ化水素と反応するのに充分である);そして
e)該水素含有化合物が完全フッ素置換されるまで工程b,cおよびdのフ
ッ素置換を継続する;
ことを含む液相完全フッ素置換のための方法。
【請求項13】ガス出口流中のフッ素濃度が2~4%の間である請求の範囲
12の方法。」
(イ) 訂正審決による訂正後の特許請求の範囲(下線部が訂正された箇所であ
る。)
「【請求項1】a.水素含有化合物を,液状のパーフルオロカーボン,完全
ハロゲン置換されているクロロフルオロカーボンまたはクロロフルオロエーテル媒
体中に,この媒体を攪拌しながら入れ,結果として,該水素含有化合物を該液状媒
体内に溶解もしくは分散させ;
b.フッ素ガスと希釈ガスとの混合物(ここで,ガス混合物中のフッ素濃
度が10~40%である)を該媒体中に導入して,該水素含有化合物をフッ素置換
し(該置換に際し,気体区域中の該液状のパーフルオロカーボン,完全ハロゲン置
換されているクロロフルオロカーボンまたはクロロフルオロエーテル媒体およびフ
ッ素が可燃性混合物を形成しないように該フッ素を希釈し,そして該液状媒体内に
存在する水素含有化合物の水素原子の全てをフッ素で置換するのに必要な化学量論
的過剰量の割合でフッ素ガスを導入する);そして
c.該液状媒体に導入された水素含有化合物が完全フッ素置換されるま
で,工程bの条件下での該媒体中へのフッ素ガスの導入を続けてフッ素置換を継続
する;
ことを含む液相完全フッ素置換のための方法。
【請求項2】該完全ハロゲン置換されているクロロフルオロカーボンが1,
1,2-トリクロロトリフルオロエタンである請求の範囲1の方法。
【請求項3】該完全ハロゲン置換されているクロロフルオロエーテルが完全
ハロゲン置換されているクロロフルオロポリエーテルである請求の範囲1の方法。
【請求項4】該完全ハロゲン置換されているクロロフルオロエーテルが(C
F2Cl)2CFOCF2OCF(CF2Cl)2,またはCF2ClCF2OCF2O
CF2CF2Clである請求の範囲3の方法。
【請求項5】該液状媒体が該フッ素置換により完全フッ素置換されている生
成物と同じである請求の範囲1の方法。
【請求項6】該水素含有化合物を最初に溶媒に溶解し,次いで溶液状で該液
状媒体中に導入する請求の範囲1の方法。
【請求項7】該フッ素置換をフッ化水素捕集剤の存在下行う請求の範囲1の
方法。
【請求項8】該フッ化水素補集剤がフッ化ナトリウムである請求の範囲7の
方法。
【請求項9】該フッ素置換のガス状生成物を,フッ化水素捕集剤を含有して
いる床を通して循環させた後,これを該フッ素置換用反応槽に再導入する請求の範
囲1の方法。
【請求項10】該液状媒体の沸点未満の温度であるが,副生成物のフッ化水
素を該反応槽から除去するのに充分に高い温度で,該フッ素置換反応をフッ化水素
捕集剤なしで行う請求の範囲1の方法。
【請求項11】フッ素ガスを,紫外光で照射することなく液状媒体中に導入
し,そしてフッ素の導入を紫外光で照射することなく継続する請求の範囲1の方
法。
【請求項12】a)水素含有化合物を,液状のパーフルオロカーボン,完全
ハロゲン置換されているクロロフルオロカーボンまたはクロロフルオロエーテル媒
体中に,この媒体を攪拌しながら入れ,結果として,該水素含有化合物を該液状媒
体内に溶解もしくは分散させ;
b)フッ素ガスと希釈ガスとの混合物を該媒体中に導入して,該水素含有化
合物をフッ素置換し(該置換に際し,気体区域中の該液状のパーフルオロカーボ
ン,完全ハロゲン置換されているクロロフルオロカーボンまたはクロロフルオロエ
ーテル媒体およびフッ素が可燃性混合物を形成しないように該フッ素を希釈し,そ
して該液状媒体内に存在する水素含有化合物の水素原子の全てをフッ素で置換する
のに必要な化学量論的過剰量の割合でフッ素ガスを導入し,そして該ガス混合物の
フッ素含有量が10%~40%である);
c)該フッ素置換反応を-40℃~150℃の温度に保持し;
d)該フッ素置換中,該水素含有化合物をフッ化水素捕集剤と接触させ(該
水素含有化合物に対するフッ化水素補集剤の量が,フッ素置換中に生成してくるフ
ッ化水素と反応するのに充分である);そして
e)該液状媒体に導入された水素含有化合物が完全フッ素置換されるまで,
工程b,cおよびdの条件下で該媒体中へのフッ素ガスの導入を続けてフッ素置換
を継続する;
ことを含む液相完全フッ素置換のための方法。
【請求項13】ガス出口流中のフッ素濃度が2~4%の間である請求の範囲
12の方法。」
3 当裁判所の判断
上記当事者間に争いのない事実によれば,本件特許については,特許法29条
1項及び2項の規定に違反して登録された特許であることを理由に特許を取り消し
た決定の取消しを求める訴訟の係属中に,当該特許に係る特許請求の範囲の各請求
項のすべてについての減縮を含む訂正の審決が確定したということになり,決定
は,結果として,判断の対象となるべき各発明の要旨の認定を誤ったものとなる。
この誤りが決定の結論に影響を及ぼすことは明らかである。したがって,決定は取
消しを免れない。
4 以上によれば,本訴請求は理由がある。そこで,これを認容し,訴訟費用の負
担については,原告に負担させるのを相当と認め,行政事件訴訟法7条,民事訴訟
法62条を適用して,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第6民事部
裁判長裁判官 山 下 和 明
裁判官 設 樂 隆 一
裁判官 阿 部 正 幸
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