平成14(行ケ)312行政訴訟 特許権
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裁判所 |
東京高等裁判所
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裁判年月日 |
平成14年12月18日 |
事件種別 |
民事 |
法令 |
特許権
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キーワード |
審決9回 訂正審判1回
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主文 |
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事件の概要 |
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判決文
平成14年(行ケ)第312号 特許取消決定取消請求事件
口頭弁論終結日 平成14年11月18日
判 決
原 告 東洋紡績株式会社
同訴訟代理人弁理士 三 枝 英 二
同 小 原 健 志
同 藤 井 淳
被 告 特許庁長官
太 田 信一郎
同指定代理人 石 井 淑 久
同 須 藤 康 洋
同 森 田 ひとみ
同 大 橋 良 三
同 涌 井 幸 一
同 一 色 由美子
主 文
1 特許庁が異議2000-73394号事件について平成14年5月
2日にした決定を取り消す。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
主文第1項と同旨
第2 前提となる事実(文末に証拠を掲げたもの以外は,当事者間に争いがない事
実か又は当裁判所に顕著な事実である。)
1 特許庁における手続及び本訴の提起等の経緯
(1) 原告は,平成2年6月27日,発明の名称を「柔軟なナイロン織物の製造
方法」とする発明につき特許出願をした。上記特許出願について,特許庁は,特許
の査定をし,平成12年1月7日,原告を権利者として,特許第3018409号
(以下「本件特許」といい,同特許に係る発明を「本件特許発明」という。)の設
定登録をした(甲2)。
(2) ユニチカ株式会社は平成12年9月8日付けで,Aは同年9月13日付け
で,本件特許について,特許庁に特許異議の申立てをした。特許庁は,同異議申立
事件(異議2000-73394号事件)について,原告に対する取消理由通知等
の所定の手続を経た上,審理を行い,平成14年5月2日付けで,「特許第301
8409号の請求項1ないし3に係る特許を取り消す。」旨の決定(以下「本件決
定」という。)をし,その謄本は同月27日に原告に送達された(甲1,3,弁論
の全趣旨)。
(3) 原告は,平成14年6月20日,本件決定の取消しを求めて本訴を提起し
た。
(4) 原告は,本訴係属中に本件特許につき訂正審判の請求をし,特許庁は,同
事件を訂正2002-39179号事件として審理し,平成14年10月22日付
けで,「特許3018409号に係る明細書を本件審判請求書に添付された訂正明
細書のとおり訂正することを認める。」旨の審決(以下「本件訂正審決」とい
う。)をし,その謄本は本件訴訟係属中の同月25日に原告に送達され,同日,同
審決は確定した。
2 本件訂正審決による訂正の内容(甲2,4,6)
(1) 本件訂正審決による訂正前の本件特許発明の要旨
【請求項1】ナイロン織物を製造するにあたって,3500m/分以上の巻取速度で
紡糸された
複屈折率(△n)0.03~0.045,伸度(DE)40~60%,トータルデニール
(D1)35~80d,単糸デニール(D2)0.4~1.5dのナイロンマルチフィラメン
トを少なくとも経糸に用いて,前記D1が35~45dのときには,仕上経・緯密度の
和が280~340本/インチとなるように製織し,且つ
「550≦D1 ≦1320」
を満たすように製織することを特徴とする柔軟なナイロン織物の製造方法。
【請求項2】ナイロン織物を製造するにあたって,3500m/分以上の巻取速度で
紡糸された
複屈折率(△n)0.03~0.045,伸度(DE)40~60%,トータルデニール
(D1)35~80d,単糸デニール(D2)0.4~1.5dのナイロンマルチフィラメン
トを少なくとも経糸に用いて,前記D1が45~60dのときには,仕上経・緯密度の
和が250~300本/インチとなるように製織し,且つ
「550≦D1 ≦1320」
を満たすように製織することを特徴とする柔軟なナイロン織物の製造方法。
【請求項3】ナイロン織物を製造するにあたって,3500m/分以上の巻取速度で
紡糸された
複屈折率(△n)0.03~0.045,伸度(DE)40~60%,トータルデニール
(D1)35~80d,単糸デニール(D2)0.4~1.5dのナイロンマルチフィラメン
トを少なくとも経糸に用いて,前記D1が60~80dのときには,仕上経・緯密度の
和が210~270本/インチとなるように製織し,且つ
「550≦D1 ≦1320」
を満たすように製織することを特徴とする柔軟なナイロン織物の製造方法。
(2) 本件訂正審決による訂正後の本件特許発明の要旨
【請求項1】ナイロン織物を製造するにあたって,3500m/分以上の巻取速度で
紡糸された複屈折率(△n)0.03~0.045,伸度(DE)40~60%,トータルデニー
ル(D1)35~45d,単糸デニール(D2)0.4~1.5dのナイロンマルチフィラメ
ントを少なくとも経糸に用いて,仕上経・緯密度の和が280~340本/インチとなる
ように製織し,且つ
550≦D1 ≦1320
を満たすように製織することを特徴とする柔軟なナイロン織物の製造方法。
【請求項2】ナイロン織物を製造するにあたって,3500m/分以上の巻取速度で
紡糸された複屈折率(△n)0.03~0.045,伸度(DE)40~60%,トータルデニー
ル(D1)45~60d,単糸デニール(D2)0.4~1.5dのナイロンマルチフィラメ
ントを少なくとも経糸に用いて,仕上経・緯密度の和が250~300本/インチとなる
ように製織し,且つ
550≦D1 ≦1320
を満たすように製織することを特徴とする柔軟なナイロン織物の製造方法。
【請求項3】ナイロン織物を製造するにあたって,3500m/分以上の巻取速度で
紡糸された複屈折率(△n)0.03~0.045,伸度(DE)40~60%,トータルデニー
ル(D1)60~80d,単糸デニール(D2)0.4~1.5dのナイロンマルチフィラメ
ントを少なくとも経糸に用いて,仕上経・緯密度の和が210~270本/インチとなる
ように製織し,且つ
550≦D1 ≦1320
を満たすように製織することを特徴とする柔軟なナイロン織物の製造方法。
3 本件決定の理由の要旨は,次のとおりである(甲1)。
(1) 前記2(1)記載の請求項1は,「トータルデニール(D1)35~80d,単
糸デニール(D2)0.4~1.5dのナイロンマルチフィラメントを少なくとも経糸に
用いて」と冒頭に規定し,上記トータルデニールのうち「D1が35~45dのときに
は,仕上経・緯密度の和が280~340本/インチとなるように製織し」と規定するだ
けで,残りのトータルデニールの場合については何ら条件を規定していないが,本
件特許発明の詳細な説明によれば,上記の「35~45d」を除く残りのトータルデニ
ールの場合であっても,「35~45d」の範囲で規定されているのと同様の条件規定
があり,無条件で本件特許発明の目的が達成されるとは記載されていない。
したがって,上記請求項1に係る本件特許発明は,発明の構成に欠くこと
ができない事項のみを記載していないから,特許法(平成2年法律第30号による
改正前のもの)36条4項2号に規定する要件を満たしていない。
(2) 上記請求項1に係る本件特許発明と同様の理由により,前記2(1)記載の
請求項2及び3に係る本件特許発明も,同号に規定する要件を満たしていない。
(3) そうすると,本件特許は,同号の規定する要件を満たしていない特許出願
に対してされたものであるから,取り消すべきである。
4 原告主張の本件決定の取消事由
原告が主張する本件決定の取消事由は,本件訴訟係属中に,本件決定の対象
となった本件特許の請求項1ないし3につき,明りょうでない記載の釈明を目的と
する訂正を認容する本件訂正審決が確定し,本件決定が本件特許を取り消すべきも
のとした理由は解消されたから,本件決定は取り消されるべきである,というもの
である。
第3 当裁判所の判断
1 本件訴訟係属中に,本件特許の請求項1ないし3につき,明りょうでない記
載の釈明を目的とする訂正を認容する本件訂正審決が確定したことは,前記第2の
1(4)に記載のとおりである。そして,本件訂正審決による訂正後の本件特許発明の
要旨は,上記第2の2(2)記載の請求項1ないし3のとおりであり,これらの請求項
に係る本件特許発明には,本件決定が本件特許の取消理由とした事由(前記第2の
3)は存在しないから,本件決定が上記の取消理由をもって本件特許を取り消すべ
きものとした判断は,結果として誤りであったことになる。
したがって,本件決定は,取消しを免れない。
2 以上の次第で,原告の本件請求は理由があるから,これを認容することとし,
また,訴訟費用については,本訴の経過にかんがみ,これを原告に負担させるのを
相当と認め,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第3民事部
裁判長裁判官 北 山 元 章
裁判官 青 柳 馨
裁判官 橋 本 英 史
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