ホーム > 知財判決速報/裁判例集 > 平成12(行ケ)462 行政訴訟 実用新案権
| 裁判所 | 東京高等裁判所 |
|---|---|
| 裁判年月日 | 平成14年12月16日 |
| 事件種別 | 民事 |
| 法令 |
実用新案権 |
| キーワード | 審決20回 無効11回 進歩性7回 無効審判3回 実用新案権1回 新規性1回 |
| 主文 | |
| 事件の概要 |
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平成12年(行ケ)第462号 審決取消請求事件(平成14年12月2日口頭弁
論終結)
判 決
原 告 株式会社メルコ
訴訟代理人弁護士 飯 塚 卓 也
同 弁理士 下 出 隆 史
同 五十嵐 孝 雄
同 加 藤 光 宏
同 市 川 浩
同 井 上 佳 知
被 告 愛群電腦股 有限公司
訴訟代理人弁理士 廣 江 武 典
主 文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
特許庁が平成11年審判第40016号事件について平成12年10月16日にした審決中,実用新案登録第3042946号の請求項5に係る部分を取り消す。
第2 当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 被告は,名称を「複数電圧と複数倍率選択可能なCPUグレードアップ用コンセント」とする登録第3042946号実用新案(平成9年4月28日出願,同年8月20日設定登録,以下「本件実用新案」という。)の実用新案権者である。 原告は,平成11年9月6日,本件実用新案につき無効審判の請求をした。 特許庁は,同請求を平成11年審判第40016号事件として審理した上,平成12年10月16日に「実用新案登録第3042946号の請求項1ないし4に係る考案についての実用新案登録を無効とする。実用新案登録第3042946号の請求項5に係る考案についての審判請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本は,同年11月8日,原告に送達された。 2 実用新案登録請求の範囲の記載【請求項1】上面にCPUピン挿着用スロットが形成されるとともに,下面にコンピュータ基板のCPUピン挿着用スロットに挿着可能なピンが形成された回路板と,前記回路板の一側に設けられ,外部電源が連結可能な電源コネクタと,前記回路板に設けられ,CPUが要する他の電圧を供給できる電圧調整器と,複数のスイッチからなり,電圧調整器とCPU倍率係数を制御可能な調整スイッチセットとからなることを特徴とした複数電圧と複数倍率選択可能なCPUグレードアップ用コンセント。【請求項5】前記回路板にCPUの一部の制御信号を転換できるプログラマブル論理制御装置を有することを特徴とした請求項1に記載の複数電圧と複数倍率選択可能なCPUグレードアップ用コンセント。(以下,上記請求項1,5記載の各考案を,請求項の番号に対応して「本件考案1」,「本件考案5」という。) 3 審決の理由 審決は,別添審決謄本写し記載のとおり,請求人(注,原告)の主張する無効理由,すなわち,本件考案5は,米国特許第5384692号明細書(審判甲,本訴甲3,以下「第1引用例」という。)又は株式会社インプレスのホームページ「秋葉原マップ」中の「アキバHotLine」の平成9年4月5日付け公開のインターネット情報(審判甲3,本訴甲5,以下「第2引用例」という。)記載の各考案に基づいて,あるいは第1引用例又は第2引用例のいずれかと特開平8-2492号公報(審判甲14,本訴甲6,以下「第3引用例」という。)記載の各考案に基づいて,あるいは第1引用例又は第2引用例のいずれかと特開平6-3014号公報(審判甲15,本訴甲7,以下「第4引用例」という。)記載の各考案に基づいて,当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるとの主張について,本件考案5と第1~第4引用例記載の各考案を比較すると,第1~第4引用例記載の各考案のいずれにも,本件考案5の「(CPUグレードアップ用コンセントの)回路板の一側に設けられ,外部電源が連結可能な電源コネクタ」が具備されておらず,本件考案5は,上記外部電源が連結可能な電源コネクタ(以下「外部電源コネクタ」という。)により,CPUアップグレード用コンセントにおいて,大きな電源に対応でき,安定した供給量が期待できるという格別の効果を奏するものであるとし,本件考案5は,第1~第4引用例記載の各考案から当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとは認められず,請求人の主張及び証拠方法によってはこれを無効とすることはできないとした。
第3 原告主張の審決取消事由
1 取消事由1(第2引用例の認定の誤り)
(1) 第2引用例(審判甲3,本訴甲5)には,本件考案5の「(CPUアップグレ
ード用コンセントの)回路板の一側に設けられ,外部電源が連結可能な電源コネクタ(注,外部電源コネクタ)」が記載されているから,「本件考案5と甲第1号証,甲第3号証,甲第14号証及び甲第15号証に記載のものとを比較すると,各甲号証(注,第1~第4引用例,審判甲1〔本訴甲3〕,審判甲3〔本訴甲5〕,審判甲14〔本訴甲6〕及び審判甲15〔本訴甲7〕)の何れにも,少なくとも本件考案5を特定する事項である『(CPUグレードアップ用コンセントの)回路板の一側に設けられ,外部電源が連結可能な電源コネクタ』が具備されていない」(審決謄本7頁(2)の第1段落)とした審決の認定は誤りである。 株式会社インプレスは,インターネット上のホームページ「秋葉原マップ」を運営し,そのコーナに「アキバHotLine」を開設している。甲5は,上記「アキバHotLine」に平成9年4月5日(公開日)に掲載されたホームページ画像を,平成10年9月10日に印刷したものである。同画像は,公開後およそ1年半にわたりサーバー上にバックナンバーとして保存されていたもので,掲載後1年5か月を経過した後(印刷日)でも見ることができたものであり,甲5に係るホームページ画像が,平成9年4月5日に公知となったことは明らかである。 第2引用例(甲5)の標題「まさしくゲタ」の写真(2頁)によれば,当業者であれば,人差し指と親指とで保持された回路板の一側に(人差し指の先),「外部電源コネクタ」が存在することを,その外観から一見して確認することができる。同じく,標題「全構成品」の写真によれば,半透明のケース内に収容された電源ケーブル(「外部電源コネクタ」とパソコン本体の電源とを接続する電源ケーブル)を確認することができる。
(2) 仮に,上記標題「まさしくゲタ」の写真が「外部電源コネクタ」の存在を
確認するのに不明瞭であるとしても,甲10~12(審判甲6~8)を参酌すれば,「外部電源コネクタ」の存在は明らかである。すなわち,甲5の「A-MasterとMAXUS Computer・・・で取扱中(A-Masterは通販のみ)」(2頁)の記載によれば,第2引用例(甲5)に係るコンセントは,「A-Master」及び「MAXUSComputer」で販売されていたことが認められる。ソフトバンク株式会社(以下「ソフトバンク」という。)の記者は,平成9年4月13日ころ,秋葉原所在の上記「MAXUS Computer」で,CPUアクセラレータ(商品名PL-PRO/MMX,製造者PowerLeap Product Inc.,基板名PL-MMX VER:2.01V)(以下「本件製品MMX」という。検甲1)を購入し,ソフトバンクは,同製品の照会記事を平成9年5月1日同社発行の雑誌「Oh!PC」(甲10)の「COLUMN」欄に掲載した。その後,原告は,ソフトバンクから同製品を譲り受けた。甲11添付の写真は,原告関係者が,本件製品MMXを撮影したものである(なお,甲11に係る製品には製品名「PL-PRO/MMX」の記載があり,また,同製品の紹介記事を掲載する上記「COLUMN」欄にも製品名は「PL-PRO/MMX」と記載されている。)。甲11添付の写真と第2引用例に係るコンセントの回路板の裏面写真(標題「裏に設定表あり」の写真)とを対比すると,ジャンパスイッチの設定値はすべて同一の値が印刷されており,本件製品MMXが第2引用例に係るコンセントと同一製品であることは明らかである。そして,上記甲1に添付の写真から,本件製品MMXに「外部電源コネクタ」が存在することが外観上確認できる。また,本件製品MMXに添付されていた使用説明書(甲12)には,「ソケットに備えられている外部コネクタが外部電源用コネクタであること」が明示されている(同号証訳文の5,8,9枚目)。 そして,甲10~12は,第2引用例と同一製品に係るものであって,本件出願当時の当業者の技術水準を示すものであり,第2引用例(甲5)に係るコンセントの回路板が「外部電源コネクタ」を備えることは,甲10~12を参酌すれば,その外観からも使用説明書の内容からも明らかである。 2 取消事由2(公知事実の認定の誤り)
(1) ソフトバンクの記者は,平成9年4月13日ころ,「MAXUS Computer」で
本件製品MMX(検甲1,甲11添付の写真)を購入したこと,本件製品MMXに添付されていた使用説明書(甲12)に「外部電源コネクタ」が明示されていることは上記のとおりである。したがって,甲11,12(審判甲7,8)のみからも,本件出願前,「外部電源コネクタ」を備えるCPUグレードアップ用コンセントが公知であったことは明らかである。
(2) また,第2引用例(甲5)によらなくても,「外部電源コネクタ」は甲
,19(審判甲5,審判では本訴甲9及び同甲19を併せて甲5として提出している。)により公知であるから,審決は,本件考案5の進歩性を判断するに当たり,上記証拠によって明らかな公知事実を看過した誤りがある。 甲9(「電圧変換ソケット『MTSA-MX』」を含む新製品のリリースノート〔原告が平成9年4月7日付けで報道関係者らに配布したもの〕)及び甲19(「電圧変換ソケット『MTSA-MX』」の「ハードウエアマニュアル」)は,審判において,原告が「外部電源コネクタ」が周知・慣用技術であることを具体的に例示するために提出したものであるが,甲19の「MTSA-MXの取り付け」の欄には,「外部電源コネクタ」を備えるCPUアップグレード用ソケットの図が示され,また,「接続例」の図には,「電源コネクタ」及び「付属の電源ケーブル」によりパソコン本体(外部)から電源が供給されることが記載されている。一方,原告は,平成9年4月7日付けで甲9を報道関係者に配布したから,これにより,同日時点で上記「電圧変換ソケット(MTSA-MX)」及び「ハードウエアマニュアル」(甲19)が公知となったことは明らかである。 一般的に,周知・慣用技術は,当業者にとって具体例を示すまでもなく知られている技術であるのに対し,公知技術は,具体例を示すことが必要である点で相違するものであり,原告の審判における上記主張は,具体例を示しているから,事実上,公知技術の主張にほかならないというべきである。仮に,原告の審判における主張を上記のように善解することができないとしても,審判においては,職権探知主義が採用されているから,審判甲5(本訴甲9,19)を前提とする具体的主張がある以上,これを進歩性の判断に用いるべきことは当然であり,審決には,これを看過した違法がある。 3 取消事由3(相違点の判断の誤り) 第3引用例(甲6,審判甲14)には,メモリ制御信号(CPU制御信号の一つ)が転換されること及び同制御信号の転換を行う論理演算回路(メモリ制御IC)が基板に実装されることが記載され(図3,図7),第4引用例(甲7,審判甲1)には,アドレスストローブ信号が転換されること及び同信号の転換を行う論理演算回路(バス制御回路)が基板に実装されることが記載されている(図7,図)。これらによれば,本件考案5の要件である,「回路板にCPUの一部の制御信号を転換できるプログラマブル論理制御装置を有すること」は周知の技術であることが認められる。さらに,第3,第4引用例はいずれもマザーボード上のCPUを交換する技術に関するものであり,技術分野が共通する。そして,「外部電源コネクタ」が第2引用例(甲5)又は上記甲9,19(審判甲5)により公知であることは上記のとおりであるから,本件考案5は,第2引用例又は上記甲9,19記載の各考案と第3引用例又は第4引用例記載の各考案に基づいて,当業者がきわめて容易に想到できる考案というべきであり,これを否定した審決の判断は誤りである。
第4 被告の反論
1 取消事由1(第2引用例の認定の誤り)について (1) 一般に,インターネットなど電気通信回線を通じて利用可能な情報は,その実際の内容,利用可能となっていた日時,現実に外部から閲覧可能となっていたか否か,実際の閲覧者の有無などが不明であり,かつ,その改ざんも容易であることから,証明力を欠くものである。そもそも,本件考案5には平成11年法律第4号による改正前の実用新案法が適用されるから,第2引用例(甲5,審判甲3)のような電気通信回線を通じて利用可能な情報は新規性喪失事由に該当しない上,登録無効理由は限定列挙であるから,その拡大した解釈及び適用も許されない。また,第2引用例中の標題「まさしくゲタ」の写真は小さく不鮮明であり,これに接した者は,同写真及び記事の内容から細かな部品配置及び具体的な回路構成まで識別することは不可能であって,原告主張の「外部電源コネクタ」の存在を確認することはできない。標題「全構成品」の写真には接続コードらしきものが見えるが,その用途及び構成は不明であり,あえてその用途を推測するとすれば,CPUを冷却するファンに電力を供給する接続コードと考えられる。したがって,第2引用例に「外部電源コネクタ」が記載されているとの
(原告の主張)
は誤りである。
(2) さらに,甲10,11(審判甲6,7)は,本件出願後に頒布されたもの
であるから,同所で言及されている製品が第2引用例(甲5,審判甲3)に記載のコンセントと同一のものであるとしても,これを参照することはできず,同コンセントの具体的な構成を特定する根拠とはならない。したがって,これらの記載を参酌して第2引用例に係るコンセントの構成を特定することはできない。 2 取消事由2(公知事実の認定の誤り)について 甲11,12(審判甲7,8)による開示は,守秘義務を有する「MAXUSComputer」によってされた被告の意に反するものであるから,これらの証拠をもって本件考案5の進歩性を否定することはできない。また,甲9,19(審判甲5)は,原告の内部資料にすぎず,公知事実を立証する証拠として用いることはできないばかりでなく,上記各証拠を見ても,原告のいうプレスリリースが,具体的にどのような報道関係者及び取引先に送信され,その情報が実際にどのように扱われたかなど明らかではなく,しかも,製品「MTSA-MX」の具体的な構成も記載されていないから,公知事実についての証明力を欠く。したがって,審決に原告主張の誤りはない。
3 取消事由3(相違点の判断の誤り)について
本件考案5の「外部電源コネクタ」につき,第2引用例,甲9,19(審判甲5)にその記載がないことは上記のとおりであり,本件考案5は,複数電圧と複数倍率選択可能なCPUグレードアップ用コンセントについて,以下のとおりの作用効果を奏するものである。
① 複数電圧を要するグレードアップされたCPUに対し,選択的に所望の電圧を
提供できるとともに,CPUの要求するクロック周波数に対応するために,異なる周波数倍率を選択できる。
② プログラマブル論理制御装置によってCPUの制御信号を簡単に転換でき,複
数の異なるコンピュータ及びグレードアップ用CPUに対応できる。
③ グレードアップされた能力の高いCPUに対し,外部電源が連結可能な電源コ
ネクタを介して安定的に十分な電力を簡単かつ確実に供給でき,CPUを安定させて駆動できる。 しかし,上記作用効果については,第3引用例又は第4引用例に記載されていないばかりか,第2引用例及び甲9,19にも開示がないから,これらを組み合わせたとしても,上記作用効果を予測することはできない。したがって,本件考案はきわめて容易に考案をすることができたものとはいえないとした審決の判断に誤りはない。
第5 当裁判所の判断
1 取消事由1(第2引用例の認定の誤り)について
(1) 原告は,第2引用例(甲5,審判甲3)中の標題「まさしくゲタ」の写真
及び標題「全構成品」の写真によれば,同引用例記載の回路板に「外部電源コネクタ」の存在を確認することができると主張する。第2引用例には,「6×/P54C/P55C/K6/M2に対応した『ゲタ』がアキバで出回り始めている。製品は「Power Leap」というメーカーのもの。『ゲタ』とは,言わずと知れたCPU供給電圧の電圧変換とCPU内部のクロック倍率設定を行うアダプタ。486時代には,アップグレード用によく使われたもの。今一部で出回っているのは,PentiumのSokect用のもの・・・これを使えば,古いマザーボードでも最新CPUが使えるというワケ。・・・MMX対応Pentium200を載せたところバッチリ動き・・・A-MasterとMAXUSComputer・・・で取扱中(A-Masterは通販のみ)・・・取材協力:A-Master」との記載があり,「こんな箱に入ってる」「まさしくゲタ」「全構成品」及び「裏に設定表あり」と題する四つの写真が掲載されている。しかし,表題「まさしくゲタ」の写真に示された回路板が,本件発明の「回路板」に対応することは明らかであるものの,上記記載及び写真には上記回路板に供給される電源に関しては記載がなく,同回路板が「外部電源コネクタ」を具備するものと認めることはできない。したがって,第2引用例は「外部電源コネクタ」を具備しないとした審決の認定に誤りはない。 原告は,標題「まさしくゲタ」の写真中,人差し指の先にコネクタの存在をその外観から一見して確認することができると主張するが,同写真は鮮明なものではなく,コネクタを確認することはできず,仮に,コネクタが確認できたとしても,それが「外部電源コネクタ」であるとの記載や開示があるわけではない。また,原告は,標題「全構成品」の写真中,「外部電源コネクタ」とパソコン本体の電源とを接続する電源ケーブルを確認することができるとも主張するが,同写真中ケーブルと見られるものは確認できるものの,同ケーブルがコンセントとパソコン本体の電源を接続するケーブルであるとの記載や開示があるものとは認められない。
(2) 原告は,さらに,甲10~12(審判甲6~8)を参酌すれば,第2引用
例(甲5,審判甲3)に係るコンセントの回路板が「外部電源コネクタ」を具備することは明らかであると主張する。審判の手続において審理判断されていた公知事実の持つ意義を明らかにするため,審判の手続に現われていなかった資料に基づき当該実用新案登録出願当時における当業者の技術常識を認定することは許されるところであり(最高裁昭和55年1月24日第一小法廷判決・民集34巻1号80頁),甲10,11に掲載された本件製品MMXの写真にはコンセントの隅部に4本のピンが確認できるが,これが「外部電源コネクタ」であることを示す記載はないから,これらは,上記主張を何ら基礎付けるものではない。また,甲12には「CPU用のアップグレードキットPL-Pro/MMXには,電源に接続するための電源コネクタが備わっています。電源コネクタをJP1コネクタに差し込む際には,『1』のピンがコネクタの赤い線に対応するようにします。そして,電源コネクタの反対の端を,コンピュータの電源プラグの1つに差し込みます」(訳文9枚目,原文は英語)との記載があり,「外部電源コネクタ」が記載されていることが認められる。しかし,甲及び弁論の全趣旨によれば,甲12は,平成9年4月13日ころソフトバンクの記者が購入した本件製品MMXに添付されていた使用説明書であることが認められ,同文書の性質上,当業者に一般的ないし平均的に知られていた技術を記載したものということはできないから,同証拠のみによっては,上記記載内容が,本件実用新案登録出願当時の当業者の技術常識であったとは認められず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。なお,原告は,甲10~12は当業者の技術水準を示すものであるとも主張するが,仮に甲10~12の記載内容が本件実用新案登録出願当時における技術水準であったとしても,第2引用例からコネクタが確認できないことは上記のとおりであるから,第2引用例は「外部電源コネクタ」を具備しないとした審決の認定に誤りはないとの上記判断を左右しない。したがって,原告の上記主張も採用することができない。
2 取消事由2(公知事実の認定の誤り)について
(1) 原告は,甲11,12(審判甲7,8)のみからも,本件出願前,「外部
電源コネクタ」を備えるCPUグレードアップ用コンセントが公知であったと主張する。しかし,原告が,無効審判において,本件考案5の無効原因(進歩性の欠如)として主張した公知事実は,第1~第4引用例(甲3,5,6,7〔審判甲1,,14,15〕)のみであり,上記甲11,12が公知事実であるとしてこれとの対比における無効原因の審理判断はされていないことは上記第2の3のとおりであるから,原告の上記主張はそれ自体失当というほかない。
(2) 原告は,また,「外部電源コネクタ」は甲9,19(審判甲5)により公
知であるのに,審決は,本件考案5の進歩性を判断するに当たり,上記証拠によって明らかな公知事実を看過した誤りがあると主張する。しかし,原告が,無効審判において,審判甲5(甲9,19)を提出した趣旨が,「外部電源コネクタ」が周知・慣用技術であることを具体的に例示することにあったことは,その自認するところであって(第3の2(2)),上記のとおり,本件考案5の無効原因(進歩性の欠如)として主張した公知事実は,第1~第4引用例(甲3,5,6,7〔審判甲,3,14,15〕)のみであり,上記甲9,19が公知事実であるとしてこれとの対比における無効原因の審理判断はされていないから,原告の上記主張もそれ自体失当というほかない。もっとも,原告は,審判段階における上記主張は,具体例を示しているから,事実上,公知技術の主張にほかならないとも主張するが,甲(審判請求書)の記載からも,その趣旨を読み取ることはできないから,採用することができない。さらに,原告は,審判においては,職権探知主義が採用されているから,審判甲5(甲9,19)を前提とする具体的主張がある以上,当然に進歩性の判断に用いるべきであったのに,審決には,これを看過した違法があるとも主張するが,審判において職権探知主義が採用されていても,審判官に職権審理を義務付けるものではないから,職権審理を行わないからといって審決が違法となるものではない。
3 取消事由3(相違点の判断の誤り)について
「外部電源コネクタ」が第2引用例又は上記甲9,19(審判甲5)により公知であるということができないことは,上記説示のとおりであるから,本件考案は,第2引用例又は上記甲9,19記載の各考案と第3引用例又は第4引用例記載の各考案に基づいて,当業者がきわめて容易に想到できる考案であるとする原告の主張は理由がない。 4 以上のとおり,原告主張の取消事由はいずれも理由がなく,他に審決を取り消すべき瑕疵は見当たらない。 よって,原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第13民事部 裁判長裁判官 篠 原 勝 美 裁判官 岡 本 岳 裁判官 宮 坂 昌 利
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