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平成13(ワ)5609民事訴訟 特許権

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裁判所 東京地方裁判所
裁判年月日 平成14年11月27日
事件種別 民事
法令 特許権
キーワード 実施5回
特許権5回
侵害2回
差止2回
損害賠償1回
主文
事件の概要

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判決文

平成13年(ワ)第5609号 特許権侵害差止等請求事件
口頭弁論終結日 平成14年9月9日
判        決
   原          告   岳南第一製紙協同組合
   原          告   東京産業株式会社
     上記両名訴訟代理人弁護士   野 末 寿 一
   被          告   日本製紙株式会社
     同訴訟代理人弁護士      大 場 正 成
     同              尾 崎 英 男
     同              嶋 末 和 秀
主         文
 1 原告らの請求をいずれも棄却する。
 2 訴訟費用は原告らの負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
1 被告は,別紙イ号目録及び同ロ号目録記載の各方法により焼成カーボン(溶
鋼用保温酸化防止材)を製造してはならない。
2 被告は,前項の各方法を用いて製造した焼成カーボン(溶鋼用保温酸化防止
材)を使用,譲渡又は譲渡のために展示してはならない。
3 被告は,その所有する前項記載の焼成カーボン(溶鋼用保温酸化防止材)を
廃棄せよ。
4 被告は,第1項記載の各方法による焼成カーボン(溶鋼用酸化防止材)の製
造に供された設備を除却せよ。
5 被告は,原告らに対し,金2879万1000円及びこれに対する平成13
年3月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
  本件は,原告らが,別紙イ号目録及び同ロ号目録記載の各方法を使用して焼
成カーボンの製造,譲渡及び展示をする被告の行為が,原告らの有する特許権を侵
害するとして,被告に対し,被告の上記行為の差止め及び損害賠償金の支払等を求
めている事案である。
1 争いのない事実
(1) 原告らの有する特許権
  原告らは,以下の特許権(以下「本件特許権」といい,請求項1の発明を
「本件発明」という。)を有する。
 発明の名称    焼成カーボン及び溶鋼用保温酸化防止材の生成方法
 出願日     平成7年9月19日
 登録日     平成11年12月3日
 特許番号    特許第3009610号
 特許請求の範囲 別紙「特許公報」写しの請求項1記載のとおり(以下同公
報掲載の明細書を「本件明細書」という。)。
(2) 本件発明の構成要件
 本件発明を構成要件に分説すると,以下のとおりである。
A 古紙再生施設から排出されたペーパースラッジをロータリ式の加熱炉内
に供給し,
B この加熱炉から排出される排ガス中の酸素濃度を3~8%に制御した状
態で上記ペーパースラッジを上記加熱炉内で転動させてその受熱面を更新しながら
乾燥及び酸素抑制燃焼させた後,
C これを上記乾燥及び酸素抑制燃焼に要する時間とほぼ同等の時間上記加
熱炉内に温度550℃~950℃の下で保持することによって焼成カーボンを熟成
させる
D ことを特徴とする焼成カーボンの生成方法
(3) 被告の行為
 被告は,業として,福島県いわき市〈以下略〉所在の勿来工場及び徳島県
小松島市〈以下略〉所在の小松島工場において,製紙スラッジ粒状炭化物を製造
し,これを溶鋼用保温酸化防止材として販売している(以下,勿来工場において実
施されている製造方法を「勿来方法」,小松島工場において実施されている製造方
法を「小松島方法」という。また,勿来方法及び小松島方法を併せて「被告方法」
という。)。
2 争点及び当事者の主張
(1) 勿来方法の構成
(原告らの主張)
  勿来方法は,別紙イ号目録記載のとおりである(なお,争いのある部分に
は下線を付した。)。
(被告の認否)
ア 別紙イ号目録添付の「図面」1ないし3は認める。
イ 勿来方法の「構成」は,別紙被告主張イ号目録記載のとおりとすべきで
ある。各構成の認否は以下のとおりである。
(ア) 構成a,bについて
認める。
(イ) 構成cについて
  スラッジドライヤー(4)が本件発明の特許請求の範囲に記載された「加
熱炉」であること及び乾燥時間が約43分であることは否認する。その余は認め
る。
(ウ) 構成dについて
  勿来方法の設備に,本件発明の特許請求の範囲に記載された「加熱
炉」が存在することは否認する。その余は認める。
  炭化キルン(7)は炭化炉(12)とは別の装置である。すなわち,炭化キル
ン(7)は無酸素状態で乾留を行う装置であり,炭化炉(12)は炭化キルン(7)で発生し
た乾留ガスを燃焼する装置である。
(エ) 構成eについて
  否認する。
  炭化キルン(7)から排出されるのは,ペレット状のペーパースラッジを
実質的に無酸素状態で加熱乾留して発生する燃焼性の乾留ガスであり,炭化キル
ン(7)からは排ガスは排出されない。炭化キルン(7)から炭化炉(12)に導出された乾
留ガスは炭化炉(12)中で燃焼され,さらに脱臭炉(16)で完全に燃焼した上で排出さ
れる。
(オ) 構成fについて
  ペレット状粒子が炭化キルン(7)内で転動されて受熱面を更新すること
は認め,その余は否認する。
  ペレット状粒子は炭化キルン(7)内を約30分で通過し,その間に実質
上無酸素状態で乾留される。ペレット状粒子はスラッジドライヤー(4)で含水率2~
3%まで乾燥されている。
(カ) 構成gについて
  炭化キルン(7)内の温度が780~800℃であることは認め,その余
は否認する。 
(キ) 構成hについて
  熟成させた焼成カーボンであることは否認する。その余は認める。 
(ク) 構成iについて
  焼成カーボンであることは否認する。その余は認める。
(ケ) 構成jについて
  焼成カーボンであることは否認する。その余は認める。
(コ) 構成kについて
  焼成カーボンであることは否認する。その余は認める。
(2) 小松島方法の構成
(原告らの主張)
  小松島方法は,別紙ロ号目録記載のとおりである(争いのある部分には下
線を付した。)。
(被告の認否)
ア 別紙ロ号目録添付の「図面」1ないし3のうち,「図面」1は否認し,
その余の「図面」は認める。「図面」1については排ガスファンの位置が誤ってお
り,別紙被告主張ロ号目録添付の「図面」1のとおりとすべきである。
イ 小松島方法の「構成」は,別紙被告主張ロ号目録記載のとおりとすべき
である。各構成の認否は以下のとおりである。
  (ア) 構成l,mについて
 認める。
(イ) 構成nについて
 ドライヤー(4)が本件発明の特許請求の範囲に記載された「加熱炉」で
あること,乾燥時間が約43分であること,熱風の温度が400℃であること,未
乾燥ペレット状粒子の含水率平均が約65%であること及び乾燥後の含水率が2~
3%であることは否認する。その余は認める。
(ウ) 構成oについて
  小松島工場の設備に,本件発明の特許請求の範囲に記載された「加熱
炉」が存在することは否認する。その余は認める。
  炭化キルン(7)は炭化炉(12)とは別の装置である。すなわち,炭化キル
ン(7)は無酸素状態で乾留を行う装置であり,炭化炉(12)は炭化キルン(7)で発生し
た乾留ガスを燃焼する装置である。
(エ) 構成pについて
  否認する。
  炭化キルン(7)から排出されるのはペレット状のペーパースラッジを実
質的に無酸素状態で加熱乾留して発生する燃焼性の乾留ガスであり,炭化キルン(7)
からは排ガスは排出されない。炭化キルン(7)から炭化炉(12)に導出された乾留ガス
は炭化炉(12)中で燃焼され,さらに再燃炉(21)で完全に燃焼した上で排出される。
(オ) 構成qについて
  ペレット状粒子が炭化キルン(7)内で転動されて受熱面を更新すること
は認め,その余は否認する。
  ペレット状粒子は炭化キルン(7)内を100~120分で通過し,その
間に実質上無酸素状態で乾留される。ペレット状粒子はドライヤー(4)で含水率7%
まで乾燥されている。
(カ) 構成rについて
  炭化キルン(7)内の温度が780~800℃であることは認め,その余
は否認する。
(キ) 構成sについて
  熟成させた焼成カーボンであることは否認する。その余は認める。
(ク) 構成tについて
  焼成カーボンであることは否認する。その余は認める。
(ケ) 構成uについて
  焼成カーボンであることは否認する。その余は認める。
(コ) 構成vについて
  焼成カーボンであることは否認する。その余は認める。
(3) 被告方法の構成要件充足性
(原告らの主張)
ア 構成要件Aの充足性
  勿来方法においては,別紙イ号目録記載の構成aないしdのとおり,ま
た,小松島方法においては,別紙ロ号目録記載の構成lないしoのとおり,製紙工
場から排出されたペーパースラッジをロータリー式の加熱炉であるスラッジドライ
ヤー(4)及び炭化キルン(7)内にそれぞれ移送,供給している。
  したがって,被告方法はいずれも本件発明の構成要件Aを充足する。
イ 構成要件Bの充足性
 (ア) 勿来方法においては,別紙イ号目録記載の構成cないしfのとお
り,また,小松島方法においては,別紙ロ号目録記載の構成nないしqのとおり,
供給されたペーパースラッジを,転動させてその受熱面を更新しながら,スラッジ
ドライヤー(4)(勿来方法)又はドライヤー(4)(小松島方法)内において約43分
間,含水率2~3%まで乾燥させ,引き続き,温度約790~800℃に保持され
た炭化キルン(7)内へ移送し,排出される排ガス中の酸素濃度を3~8%に制御した
状態で,転動させてその受熱面を更新しながら,約4~5分間,昇温・酸化すなわ
ち酸素抑制燃焼させている。
 (イ) 「酸素抑制燃焼」について
  以下に示すとおり,炭化キルン(7)内への空気の流入を遮断する構造と
なっていないことから,被告方法において,「酸素抑制燃焼」が行われていること
は明らかである。
a 導出管を通じた炭化キルン内への空気の流入
  被告方法においては,炭化キルン(7)と炭化炉(12)を連通する複数の
導出管(15A)(15B)が存在する。この導出管(15A)(15B)の一部は,炭化キルン(7)内で
発生したガスを炭化炉(12)へ導出する連通管として働くが,残りの一部は,打込み
エアーファン(13)によって炭化炉(12)内へ吹き込まれる空気を,炭化キルン(7)内へ
導出する空気流入口として働くものである。特に,打込みエアーファン(13)の空気
吐出口付近の導出管(15A)では,経験則上,炭化炉(12)側の圧力が炭化キルン(7)側
の圧力に勝ると考えられる。したがって,炭化炉(12)内に吹き込まれた空気は,炭
化キルン(7)内へ送入されている。   
b ロータリーバルブから炭化キルン内への空気の流入
  ロータリーバルブは,羽根の回転により,落下(排出)する被輸送
物の反対側にある充満空気(置換空気)を上昇させ,この容積の交換によって,被
輸送物(ペレット状粒子)の輸送を行うものである。したがって,被告方法の設備
においても,炭化キルン(7)の被輸送物排出口側に設置されたロータリーバルブ(5)
から,被輸送物の排出に伴い,連続的に置換空気が炭化キルン(7)内へ送入されてい
る。
  また,ロータリーバルブ及びシングルスクリューコンベアのよう
に,羽根と羽根の間の空間部に被輸送物を送入し,これを羽根の回転により輸送す
る装置の場合,該羽根空間部における被輸送物質の充満率というものが必ず存在す
る。この充満率は,最も高いものでも0.45である。したがって,炭化キルン(7)
内へ被輸送物を供給する側に設置されたロータリーバルブ(11)でも,羽根空間部の
容積をvlとすると,羽根の回転に伴い,連続的にv(1-0.45)lの空気が被輸送
物とともに内部へ送入されている。
  排出口側及び搬入口側の2台のロータリーバルブ(5)(11)を通じて炭
化キルン(7)内へ漏れ込む空気量を計算すると,1時間当たり39.4‰である。被
告は,漏込量はわずかであると反論するが,被告の計算は,ロータリーバル
ブ(5)(11)内と炭化キルン(7)内の圧力差(ロータリーバルブ(5)(11)内が大気圧と同
じであるのに対し,炭化キルン(7)内は炭化炉(12)とほぼ同じ-2.9mmAqのはずで
あるから,圧力差は-2.9mmAqである。)を考慮していない点で誤りがある。
c エアーシールから炭化キルン内への空気の流入
  被告方法の設備のラビリンスシール(10A)(10B)は,実際は,エアー
シール(シールボックス中の圧力をキルン内部圧力よりも高くとり,シール用ガス
がキルン内に入ってもキルン内ガスが外に漏出しない形式のシール)である。被告
は,シール用ガスとして蒸気を使用していると反論するが,シール部の導入管の構
造や蒸気の物理特性からして,実際には蒸気を使用しているとは考えられない。し
たがって,被告方法の設備のシール部(10A)(10B)からは,炭化キルン(7)内へ空気が
流入している。
  また,仮に蒸気をシール用のガスとして使用しているとしても,被
告方法においては,脱気装置が付設されておらず,結局,蒸気の注入に伴って空気
の吹き込みがあることは明らかであり,炭化キルン(7)内へ空気(酸素)が流入して
いることは否定できない。
(ウ) 排ガス中の酸素濃度について
  構成要件Bの「加熱炉から排出される排ガス」とは,本件明細書の特
許請求の範囲に「加熱炉から排出される排ガス中の酸素濃度を3~8%に制御した
状態で上記ペーパースラッジを上記加熱炉内で転動させて・・・乾燥及び酸素抑制
燃焼させ・・・上記加熱炉内に・・・保持することによって焼成カーボンを熟成さ
せる」と記載されているとおり,加熱炉内で乾燥,酸素抑制燃焼,熟成の各工程を
経た後に加熱炉から排出される排ガスを意味すると解すべきである。
  そうすると,被告方法において,構成要件Bの「排ガス」と対比すべ
き部分は,炭化キルン(7)からの排ガスではなく,ペーパースラッジから発生した可
燃性ガスを燃焼した後に炭化炉(12)から排出されるガスである。そして,木質材料
炭化処理の発生ガスが完全燃焼したときの空気過剰比mが1.3であり,空気中の
酸素濃度が21%であることから,ペーパースラッジの酸素抑制燃焼に伴って放出
された可燃性ガスが完全燃焼したときの酸素濃度を計算すると,4.8%となる。
したがって,被告方法において,炭化炉(12)から排出される排ガス中の酸素濃度は
3~8%の制御範囲に合致する。
(エ) したがって,被告方法はいずれも本件発明の構成要件Bを充足す
る。
ウ 構成要件Cの充足性
 (ア) 勿来方法においては,別紙イ号目録記載の構成e及びgのとおり,
また小松島方法においては,同ロ号目録記載の構成p及びrのとおり,排出される
排ガス中の酸素濃度を3~8%に制御した状態で,ペーパースラッジを転動させて
その受熱面を更新しながら,約47分間,炭化キルン(7)内に温度約790~800
℃の下で保持して熟成させ,焼成カーボンを生成させている。  
 (イ) 被告方法において炭化物の熟成が行われていることは,以下の点か
ら明らかである。
   すなわち,被告は,炭化キルン(7)内の温度が780℃~800℃であ
ることを認めている。そして,①セルロース及びヘミセルロースを含む木質系物質
の炭化工程では,かかる温度は熟成(精錬)の温度に当たること,②木炭製造のう
ち白炭を生産する場合,560℃以上の温度で精練炭ができること,③木質バイオ
マスの炭化過程においては,600℃以上は炭素化帯として熟成の工程にあるこ
と,④勿来工場において製造された炭化物(以下,「勿来物件」という。)は,炭
素含有率分析値で,熱灼減量に対して炭素含有量が純炭素程度に高いことからすれ
ば,被告方法において炭化物の熟成が行われていることは明白である。
 (ウ) したがって,被告方法はいずれも本件発明の構成要件Cを充足す
る。
(被告の反論)
ア 構成要件Aの充足性について
  被告方法においては,以下のとおり,構成要件Aの「加熱炉」を有しな
い。
  原告らは,本件発明の出願に対する平成10年12月4日付拒絶理由通
知を受けた際に提出した意見書において,「本発明では唯一つのロータリーキルン
式の加熱炉内で乾燥,酸素抑制燃焼及び熟成の各工程を遂行しているのに対し,引
例2(特開昭49-54293)では乾燥機内で乾燥させ,熱分解炉内で熱分解し
ている。」と述べている。したがって,構成要件Aの「ロータリー式の加熱炉」と
は,乾燥,酸素抑制燃焼及び熟成の各工程のすべてを遂行するロータリーキルン式
の加熱炉を指すものと解すべきである。
 これに対し,被告方法では,ペーパースラッジの乾燥は,炭化キルン(7)
とは別体のドライヤーで行っているので,被告方法においては,本件発明の「加熱
炉」を有しない。
  また,勿来方法のペーパースラッジは古紙再生施設から排出されたもの
ではない。
  したがって,被告方法は本件発明の構成要件Aを充足しない。 
イ 構成要件Bの充足性について
(ア) 「酸素抑制燃焼」について
  被告方法においては,以下のとおり,炭化キルン(7)内でペーパースラ
ッジの「酸素抑制燃焼」を行なっていないので,構成要件Bを充足しない。
  すなわち,被告方法は,炭化キルン(7)内でペーパースラッジを実質的
に無酸素状態で乾留して,乾溜ガスを発生させる,いわゆる乾溜式炭化物製造法で
ある。被告方法の設備は,回転する炭化キルン(7)とその周囲を覆う固定の炭化
炉(12)(燃焼室)の二重構造を採用しており,炭化キルン(7)は,ロータリバル
ブ(5)(11)や蒸気を用いたラビリンスシール(10A)(10B)によって空気の流入が遮断さ
れているから,酸素抑制燃焼は起こらない。
 原告らが,「酸素抑制燃焼」を行なっているとする主張は,以下のと
おり理由がない。すなわち,
 a 導出管を通じた炭化キルン内への空気流入に対する反論
  原告らは,被告方法の炭化キルン(7)には,導出管(15A)(15B)を通じ
て炭化炉(12)から空気が流入していると主張する。
  しかし,被告方法においては,炭化キルン(7)及び炭化炉(12)の内部
の気体を排ガスファン(22)で吸引し,炭化炉(12)内の圧力が大気圧に対し-3
mmAqとなるようにして,常にガスが炭化キルン(7)から炭化炉(12)に流れるように制
御している。したがって,炭化炉(12)から炭化キルン(7)内に空気やガスが逆流する
ことはない。
b ロータリーバルブから炭化キルン内への空気流入に対する反論
 原告らは,ロータリーバルブ(5)(11)を通じて空気が炭化キルン(7)
内に流入すると主張する。
   しかし,炭化キルン(7)入口のロータリーバルブ(5)から空気が侵入
することはない。また,炭化キルン(7)出口のロータリーバルブ(11)から,排出され
る固体の体積に等しい量の空気が外部から侵入するとしても,その量は極めてわず
かである。炭化キルン(7)内で1時間当たり発生する水蒸気と乾留ガスの量に,ロー
タリバルブ(11)から1時間当たり流入する空気の量を加えた全気体の合計量に対
し,流入した空気量中の酸素が占める割合を計算すると,酸素濃度は,勿来工場に
おいては0.077%,小松島工場においては0.076%にすぎない。これは,
およそ物が燃焼するために必要な酸素の量とは全くかけ離れた微量な値である。し
たがって,ロータリバルブ(11)から侵入する空気があったとしても,炭化キルン(7)
内が実質的無酸素状態であることに変わりはない。
 c エアーシールから炭化キルン内への空気の流入に対する反論
 ラビリンスシール(10A)(10B)においては,許容酸素量を百万分の一
以下に抑制するように規制した用水から発生させた蒸気を,シール用
ガスとして使用している。したがって,蒸気が炭化キルン(7)内に流入しても炭化キ
ルン(7)内の酸素量を増加させることはない。
(イ) 加熱炉から排出される排ガス中の酸素濃度について
a 被告方法においては,以下のとおり「排ガス」が発生しない。  
 構成要件Bの「加熱炉」とは,ロータリー式加熱炉(ロータリーキ
ルン)を指す。ところで,被告方法において,炭化工程に用いるロータリーキルン
は,炭化キルン(7)が相当するのであるから,「加熱炉から排出される排ガス」と対
比すべきものは,「炭化キルン(7)から排出されるガス」である。被告方法では,そ
もそも,炭化キルン(7)内で燃焼が起こらないから,炭化キルン(7)から排出される
ものは「排ガス」ではなく,「乾溜ガス」である。
b 被告方法においては,ガス中の酸素濃度を3~8%に制御すること
が行われていない。
  仮にロータリバルブ(11)から炭化キルン(7)内に空気が流入するとし
ても,被告の主張イ(ア)b記載のとおり炭化キルン(7)内に供給される空気はわずか
な量であり,この程度の漏入れ空気により,炭化キルン(7)から排出されるガス中の
酸素濃度が3~8%となることはない。
  したがって,被告方法は,構成要件Bを充足しない。  
ウ 構成要件Cの充足性について
構成要件Cの「熟成」とは,本件明細書の「発明の詳細な説明」欄を参
照すると,ペーパースラッジを燃焼させた後の燃焼残渣を,熟成工程に供し,乾燥
及び酸素抑制燃焼と同時間炭化炉内で転動移送の間一定温度下に保持することを指
すと解すべきである。すなわち,発明の詳細な説明欄には,【0013】「・・・
ペーパースラッジの乾燥及び酸素抑制燃焼はおよそ45分間450mの転動移送に
よって完了する。」,【0014】「燃焼残渣は乾燥及び酸素抑制燃焼に要する時
間とほぼ同等の時間,即ち,およそ45分間450mの転動移送の間加熱炉4内に
おいて550℃~950℃,望ましくはほぼ670℃の温度下に保持され,これに
よって焼成カーボンが熟成される。」と記載され,同記載に照らすと,熟成とは,
燃焼残渣を所定の条件下で保持することを指すことは明らかである。
これに対し,被告方法においては,そもそも酸素抑制燃焼はないから,
熟成工程に供すべき燃焼残渣もない。そして,酸素抑制燃焼がない以上,乾燥及び
酸素抑制燃焼に要する時間を測ることや,これと等しい熟成時間を測ることができ
ない。以上のとおり,被告方法には,酸素抑制燃焼を前提にその残渣を熟成すると
いう過程が存在しない。
したがって,被告方法は,本件発明の構成要件Cを充足しない。
(4) 損害額
(原告らの主張)
ア 補償金支払請求
  原告岳南第一製紙協同組合(以下「原告岳南」という。)は,平成9年
6月20日付け書面により,被告に対し,特許法(以下「法」という。)65条1
項の警告をした。
  被告は,勿来工場において,遅くとも平成9年11月から同11年11
月までの間本件発明を実施し,少なくとも合計1000トンの勿来物件を製造し,
これをトン単価平均3500円で販売した。また,小松島工場において,遅くとも
平成11年4月から同年11月までの間本件発明を実施し,少なくとも合計120
0トンの炭化物(以下,小松島工場において製造された炭化物を「小松島物件」と
いう。)を製造し,同単価で販売した。本件発明の実施料率は,8パーセントが相
当である。
  したがって,被告は,61万6000円の補償金支払義務を負う。
イ 法102条2項所定の損害
  原告岳南は,平成7年10月ころから,本件発明により製造した製品を
広く日本国内において販売している。
  被告は,勿来工場において,平成11年12月から同13年2月までの
間に,少なくとも勿来物件合計600トンを製造し,これをトン単価平均3500
円で販売した。また,被告は,小松島工場において,同期間の間に,少なくとも小
松島物件合計2250トンを製造し,これを同単価にて販売した。
  勿来物件及び小松島物件の販売による被告の利益率は,20パーセント
を下ることはなく,被告は,販売により少なくとも199万5000円の利益を得
ている。
したがって,原告らの被った損害は199万5000円と推定される。
ウ ペーパースラッジの廃棄処分費用
  原告岳南は,被告による勿来物件及び小松島物件の販売行為により,少
なくとも被告が販売したと認められるのと同等の数量のペーパースラッジ合計28
50トン(平成11年12月に190トン,平成12年1月から2月の間に266
0トン)を投棄処分せざるを得なくなった。
  投棄処分に要した費用は,平成11年12月は,投棄代及び運賃を合わ
せて1トン当たり8600円,平成12年1月から同13年2月までの間は,1ト
ン当たり8100円である。
  したがって,原告らが,被告による勿来物件及び小松島物件の販売行為
により被った積極損害は2318万円である。
エ 弁護士費用
 本件事件処理に関する弁護士報酬としては,少なくとも300万円を下
ることはない。
オ まとめ
  したがって,原告らが被った損害(補償金を含む)は,合計2879万
1000円である。遅延損害金は,各不法行為の後の日である平成13年3月1日
から請求する。
(被告の主張)
  原告岳南が,平成9年6月20日付け書面により,被告に対し,法65
条1項の警告をしたとの主張は認める。その余の主張は争う。 
第3 当裁判所の判断 
 1 構成要件Aの充足性
(1) 構成要件Aにおける「加熱炉」の意義
  当裁判所は,構成要件Aにおける「加熱炉」とは,ペーパースラッジの乾
燥,酸素抑制燃焼及び熟成のすべての工程を行う炉を意味するものと解する。その
理由は,以下のとおりである。
ア(ア) 本件発明の【特許請求の範囲】【請求項1】欄には,「ペーパース
ラッジをロータリ式の加熱炉内に供給し,・・・上記ペーパースラッジを上記加熱
炉内で転動させてその受熱面を更新しながら乾燥及び酸素抑制燃焼させた
後,・・・これを上記乾燥及び酸素抑制燃焼に要する時間とほぼ同等の時間上記加
熱炉内に温度550℃~950℃の下で保持することによって焼成カーボンを熟成
させる」と記載されている。
 (イ) また,本件特許出願に対し,平成10年12月15日,拒絶理由通
知書が発せられ,その中で,公知技術として引例2(特開昭49-54293号公
報)の存在が指摘された。これに対して,出願人である原告らは,平成11年2月
9日,特許庁に対して手続補正書及び意見書を提出した。原告らは,同意見書の中
で,本件発明を引例2の公知技術と区別すべく,「引例2では,機械的に脱水した
未侵出スラッジを回転式乾燥機内で油バーナからの燃焼ガスと直接接触させて乾燥
し,次いで,この乾燥機から取り出した乾燥生成物が尚あたたかい内に油バーナを
具え両端を密閉して漏洩を防止してなる熱分解炉内に供給してここで油バーナの二
次空気の供給を緩徐に減少させることによって生成される還元性条件下で直接加熱
することにより熱分解している。・・・即ち,本発明では唯一のロータリキルン式
の加熱炉内で乾燥,酸素抑制燃焼及び熟成の各工程を遂行しているのに対し,引例
2では乾燥機内で乾燥させ,熱分解炉内で熱分解している。」と述べ,上記補正を
経て,本件発明について特許査定されている(乙10,弁論の全趣旨)。
イ 上記アの記載及び経緯に照らすならば,本件発明の構成要件Aにおける
「ロータリー式の加熱炉」とは,乾燥,酸素抑制燃焼及び熟成の各工程のすべてを
遂行するロータリーキルン式の加熱炉を指し,その一部の工程のみを遂行する加熱
炉を含まないものと解すべきである。
(2) 被告方法との対比
ア 勿来方法においては,ペレット状粒子は,まず,スラッジドライヤー(4)
で含水率が2~3%になるまで乾燥させられてから,次いで,ロータリーバルブ(5)
及びシングルスクリューコンベア(6)を経由して,スラッジドライヤー(4)とは別個
の設備である炭化キルン(7)内部へと移送され,また,小松島方法においては,ペレ
ット状粒子は,まず,ドライヤー(4)で乾燥させられてから,次いで,ロータリーバ
ルブ(5)及びシングルスクリューコンベア(6)を経由して,ドライヤー(4)とは別個の
設備である炭化キルン(7)内部へと移送される(争いがない)。
イ 以上によれば,被告方法では,ペレット状粒子を乾燥させる工程が,炭
化キルン(7)とは異なる設備内で行われているものであり,仮に炭化キルン内で酸素
抑制燃焼及び熟成が行われているとしても(被告は,炭化キルン内で酸素抑制燃焼
及び熟成が行われていること自体を争っている。),被告方法は,乾燥,酸素抑制
燃焼及び熟成のすべての工程を単一の「加熱炉」で行うものではない。
  したがって,被告方法は,いずれも構成要件Aを充足しない。
2 構成要件Bの充足性
(1) 被告方法において,炭化キルン(7)内でペーパースラッジの「排ガス中の
酸素濃度を3~8%に制御した状態で・・・酸素抑制燃焼」を行なっていると認め
られるか否かについて検討する(なお,上記1(2)イで判断したとおり,被告方法に
おいては「加熱炉」,すなわち乾燥,酸素抑制燃焼及び熟成のすべての工程を遂行
するロータリーキルン式の加熱炉が存在しないのであるから,構成要件Bの「加熱
炉から排出される排ガス」と,被告方法のいかなる部分から排出されるガスとを対
比すべきかが,必ずしも明確ではない。しかし,原告らは,被告方法においてはペ
ーパースラッジの酸素抑制燃焼及び熟成工程は炭化キルン(7)内で遂行されていると
主張するのであるから,以下においては,炭化キルン(7)から排出されるガスと対比
することとする。)。
(2) 事実認定
ア 勿来工場及び小松島工場の設備の構造は以下のとおりであり,これを覆
すに足りる証拠はない(証拠を付した部分以外は,争いがない)。
(ア) ペーパースラッジは,スラッジドライヤー(4)(勿来方法)又はドラ
イヤー(4)(小松島工場)で乾燥された後,ロータリーバルブ(5),シングルスクリ
ューコンベア(6)を経由して,炭化キルン(7)内に搬入される。炭化キルン(7)は,炭
化炉(12)を貫通して内嵌されている回転可能な円筒形の装置である。
(イ) 炭化炉(12)は,炭化キルン(7)の周囲を覆っており,炭化炉(12)と炭
化キルン(7)とは,複数の導出管(15A)(15B)により連通している。炭化炉(12)には,
複数の補助バーナー(14)が配設され,その内部を加熱できるようになっている。ま
た,炭化炉(12)内には,打込みエアーファン(13)により送入された空気が,複数の
打込みエアノズル(空気吐出口)から吹き込まれている。打込みエアノズルは,導
出管(15A)(15B)の吐出口と相対することのないよう,吐出口の位置とは,すべて水
平上の位置及び高さをずらして配置されている(乙13)。
(ウ) 炭化キルン(7)の回転部(8)と,回転部を支持するキルン固定
部(9A)(9B)との間からの空気の流入を防ぐため,両部分の接触部分には,ラビリン
スシール(10A)(10B)が施されている。このラビリンスシールは,キルン回転部(8)の
外周にリング状の板を数枚垂直方向に取り付け,かつ,その板と板の間に位置する
ように,キルン固定部(9A)(9B)の内周に同様のリング状の板を数枚垂直に取り付け
て,キルン回転部(8)とキルン固定部(9A)(9B)との間の空間を仕切り,狭い通路を設
けることによって,流体の流れを妨げているものである(乙4,6)。被告方法に
おいては,この通路に,脱酸素処理をした用水を用いて発生させた蒸気を充満さ
せ,固定枠の通路内の圧力が外気より少し高くなるようにすることにより,外部空
気の炭化キルン(7)内への流入を防止している(甲19の2頁及び写真No13,乙
7,8)。また,シール性を高めるため,キルン固定部(9A)(9B)のリング状の板の
両外側に,弾力性のあるシールパッキンを取り付けている(乙7,8)。
イ 上記認定した事実によれば,被告方法の炭化キルン(7)は,可能な限り内
部への空気の流入を防ぐよう設計されており,たとえ炭化キルン(7)内に不可避的に
漏れ入る空気があるとしても,その量はわずかなものにすぎないといえる。
ウ 原告らの主張に対する判断
 これに対して,原告らは,被告方法においては,複数の経路を通じて炭
化キルン(7)内に多量の空気が流入していると主張する。しかし,原告らの同主張
は,以下のとおり理由がない。すなわち,
 (ア) 導出管を通じた流入について
   原告らは,被告方法においては,炭化炉(12)内の空気が導出
管(15A)(15B)の一部を通じて炭化キルン(7)内に流入していると主張する。
   しかし,前記認定((2)ア(イ))のとおり,打込みエアノズルは,導出
管(15A)(15B)の吐出口と相対することのないよう,すべて吐出口とは水平上の位置
及び高さをずらして配置されているのであり,かかる構造からすれば,炭化キル
ン(7)が回転している間も,導出管(15A)(15B)の吐出口とエアノズルが一直線上に並
ぶことはなく,打込みエアーファン(13)によって炭化炉(12)内へ送り込まれた空気
がそのまま炭化キルン(7)内へ挿入されるとは認められない。
   かえって,被告方法においては,炭化キルン(7)内で発生した可燃性ガ
スを炭化炉(12)へと確実に導入するために,炭化炉(12)内の圧力が常に炭化キル
ン(7)内の圧力よりも低くなるように制御していることがうかがえる(乙5)ことか
らすると,炭化炉(12)内の空気が,導出管(15A)(15B)を通じて炭化キルン(7)内に流
入するとは考えられないというべきである。
   したがって,この点についての原告らの主張は採用できない。
 (イ) ロータリーバルブからの空気の流入について
   また,原告らは,被告方法においては,ロータリーバルブ(5)(11)を通
じて炭化キルン(7)内に空気が流入していると主張する。
   確かに,乙4及び6によれば,ロータリーバルブとは,円筒状のケー
シングの中で,数枚の羽根から構成された断面が星状のローターが回転し,右羽根
の間の溝(ポケット)に入った物体を排出する構造になっていることが認められ,
このような構造からすれば,ロータリーバルブ(5)(11)から搬送物が搬出入されるの
に伴い,炭化キルン(7)内に羽根の間の溝から空気が漏れ入る可能性がある。
   しかし,乙6及び弁論の全趣旨によれば,ロータリーバルブの役割は
本来外界からの空気を遮断しつつ噴流体を供給することにあることが認められ,こ
のような装置を用いて搬送物の搬出入をすることに伴い不可避的に空気が流入する
としても,その量はごくわずかなものであると推認されることからすれば(乙4に
よれば,ペーパースラッジを排出した際の置換空気の量は,ロータリーバルブ1台
につき,勿来方法については約0.352Nm3,小松島工場については約2.13
5Nm3程度であり,これを炭化キルン(7)中の酸素濃度に換算すると,勿来工場につ
いては0.077%,小松島工場については0.076%であることが認められ
る。),このような不可避的な空気の流入がわずかに生ずることをもって,被告方
法において,排ガス中の酸素濃度を3~8%に制御した酸素抑制燃焼を行っている
と認めることはできない。
 したがって,この点についての原告らの主張は採用できない。
 (ウ) 勿来物件の炭素成分含有率について
   なお,原告らは,勿来物件の炭素成分含有率が約97%と非常に高い
ところ,炭化キルン(7)内に酸素を供給することなく,このような高炭素物質を得る
ことは理論的に不可能であるとも主張する。
   しかし,乙1によれば,被処理物から炭化物を生成する方法として
は,本件発明のように被処理物を供給した炉内で燃焼を行う内熱式の炭化方法以外
にも,被処理物を投入した部分への空気の流入を遮断し,これを外部から加熱し
て,被処理物を熱分解させる方法も存在することが認められる(甲20によれば,
木材は,空気の供給を不十分にするか遮断しながら加熱していくと,96%という
高い炭素含有量が得られる旨述べた文献もある。)。
   したがって,この点についての原告らの主張も採用できない。
(3) 小括
 以上によれば,被告方法において,炭化キルン(7)内に,同キルンから排出
される排ガス中の酸素濃度が3~8%となるような大量の空気(酸素)を供給して
いること,さらに,その供給量を排ガス中の酸素濃度が3~8%の範囲内となるよ
うに制御していることを認めることはできない。
 したがって,被告方法は,いずれも本件発明の構成要件Bを充足しない。
第4 結論
 よって,その余の点を判断するまでもなく,原告らの請求はいずれも理由が
ないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。
        東京地方裁判所民事第29部
            裁判長裁判官     飯  村  敏  明
   
            裁判官     今  井  弘  晃
    
            裁判官     大  寄  麻  代
イ号目録
1 図面の簡単な説明
別紙図面1は,本件イ号方法のためのスラッジ炭化設備の概略フローである。
同図面2はイ号方法における炭化炉及び炭化キルンの模式的な正面断面図,同図面
3は,イ号方法における炭化炉及び炭化キルンの一部を切り欠いて示した模式的な
斜視図である。
2 イ号方法の構成
a 製紙工場から排出されたペーパースラッジを原料受入槽(1)へ貯留し,処理量
に応じて槽底に設けた4本のスクリューコンベヤ(2)で排出し,造粒機(3)へ移送す
る。
b 造粒機(3)では,ペーパースラッジを多数の小穴からペレット状粒子として連
続的に押し出す。
c 上記の未乾燥(含水率平均約65%)のペレット状粒子を,加熱炉であるス
ラッジドライヤー(4)へ移送し,転動させて受熱面を更新しながら,約43分間,約
400℃の熱風により乾燥(含水率2~3%)する。
d ペレット状粒子を,スラッジドライヤー(4)出口からロータリーバルブ(5),
シングルスクリューコンベヤ(6)を経由し,加熱炉である炭化炉(12)中の炭化キル
ン(7)内部へ移送する。
e 炭化キルン(7)に周設された複数の導出管(15A)(15B)を通じて炭化キルン(7)
から炭化炉(12)を経て排出される排ガス中の酸素濃度を3~8%に制御した状態
で,
f 上記ペレット状粒子を約4~5分間,炭化キルン(7)内で転動させてその受熱
面を更新しながら引き続き乾燥及び酸素抑制燃焼させた後,
g 約47分間,炭化キルン(7)内に温度780℃~800℃の下で保持して焼成
カーボンを熟成させる。
h 熟成させた焼成カーボンは連続的に,ロータリーバルブ(11),シングルスク
リューコンベア(17)を経由し,冷却キルン(18)へ移送される。
i 外部水冷式のロータリーキルンである冷却キルン(18)において,上記焼成カ
ーボンを約50℃(出口)まで冷却する。
j 冷却された焼成カーボンは,ベルトコンベア(19)で炭化物ホッパー(20)へ移
送される。
k 炭化物ホッパー(20)に貯留された焼成カーボンをコンテナーバッグへ充填す
る。
図面1図面2図面3
ロ号目録
1 図面の簡単な説明
別紙図面1は,本件ロ号方法のためのスラッジ炭化設備の概略フローである。
同図面2はロ号方法における炭化炉及び炭化キルンの模式的な正面断面図,同図面
3は,ロ号方法における炭化炉及び炭化キルンの一部を切り欠いて示した模式的な
斜視図である。
2 ロ号方法の構成
l 製紙工場から排出されたペーパースラッジを原料受入槽(1)へ貯留し,処理量
に応じて槽底に設けた6本のスクリューコンベヤ(2)で排出し,造粒機(3)へ移送す
る。
m 造粒機(3)では,ペーパースラッジを多数の小穴からペレット状粒子として連
続的に押し出す。
n 上記の未乾燥(含水率平均約65%)のペレット状粒子を,加熱炉であるド
ライヤー(4)へ移送し,転動させて受熱面を更新しながら,約43分間,約400℃
の熱風により乾燥(含水率2~3%)する。
o ペレット状粒子を,ドライヤー(4)出口からロータリーバルブ(5),シングル
スクリューコンベヤ(6)を経由し,加熱炉である炭化炉(12)中の炭化キルン(7)内部
へ移送する。
p 炭化キルン(7)に周設された複数の導出管(15A)(15B)を通じて炭化キルン(7)
から炭化炉(12)へ放出され,更に,再燃炉(21),ドライヤー(4)を経て排出される排
ガス中の酸素濃度を3~8%に制御した状態で,
q 上記ペレット状粒子を約4~5分間,炭化キルン(7)内で転動させてその受熱
面を更新しながら引き続き乾燥及び酸素抑制燃焼させた後,
r 約47分間,炭化キルン(7)内に温度780℃~800℃の下で保持して焼成
カーボンを熟成させる。
s 熟成させた焼成カーボンは連続的に,ロータリーバルブ(11),投入用シュー
ト(22)を経由し,冷却キルン(18)へ移送される。
t 外部水冷式のロータリーキルンである冷却キルン(18)において,上記焼成カ
ーボンを約40℃(出口)まで冷却する。
u 冷却された焼成カーボンは,ベルトコンベア(19)で炭化物ホッパー(20)へ移
送される。
v 炭化物ホッパー(20)に貯留された焼成カーボンをコンテナーバッグへ充填す
る。
図面1図面2図面3
(別紙)
被告主張イ号目録図面1図面2図面3図面4図面5被告主張ロ号目録図面1図面2
図面3図面4図面5

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