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平成13(ワ)27144民事訴訟 不正競争

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裁判所 東京地方裁判所
裁判年月日 平成14年11月27日
事件種別 民事
法令 不正競争
キーワード 差止5回
許諾1回
損害賠償1回
主文
事件の概要   原告は被告に対して,原告が通信販売カタログに掲載し,販売した商品の形 態を模倣した商品を製造,販売した被告の行為は不正競争防止法(以下「法」とい う。)2条1項3号所定の不正競争行為に該当するとして,商品の製造販売等の差 止め等と損害賠償を求めた事案である。

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判決文

平成13年(ワ)第27144号 不正競争行為差止等請求事件
口頭弁論終結日 平成14年10月1日
              判       決  
原      告  株式会社シムリー
訴訟代理人弁護士   小 林 十四雄
同          佐 藤 水 暁
同          生天目 麻紀子
被      告  株式会社ベルーナ
       訴訟代理人弁護士   中 村   勲
              主       文  
1 被告は,別紙「商品目録」の被告商品①,②,④,⑥,⑧,⑪,⑫記載の
各商品を製造,譲渡し,譲渡のための広告をしてはならない。
2 被告は,原告に対し,金677万6625円及びこれに対する平成14年
8月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
4 訴訟費用は4分して,その1を原告の,その余を被告の負担とする。
5 この判決は,原告勝訴部分に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1 請求
  1 被告は,別紙「商品目録」①ないし⑫記載の商品を製造,譲渡,貸し渡
し,譲渡又は貸し渡しのための広告をしてはならない。
  2 被告は,原告に対し,金2433万6544円及びこれに対する平成14
年8月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
  原告は被告に対して,原告が通信販売カタログに掲載し,販売した商品の形
態を模倣した商品を製造,販売した被告の行為は不正競争防止法(以下「法」とい
う。)2条1項3号所定の不正競争行為に該当するとして,商品の製造販売等の差
止め等と損害賠償を求めた事案である。
1 前提となる事実(争いのない事実及び弁論の全趣旨により認められる。な
お,証拠により認定した事実については末尾に摘示した。)
(1) 当事者
 ア 原告は,昭和53年ころから,カタログによる通信販売を行ない,昭和
59年ころ「Image Collection」と題するカタログ(以下「原告カタログ」とい
う。)を創刊,発行し,カタログ掲載に係る衣料品,家庭用品等の通信販売を行っ
ている。
 イ 被告は,平成13年ころには,カタログ「Ryu Ryu」(以下「被告カタロ
グ」という。)を発行し,カタログ掲載に係る衣料品,家庭用品等の通信販売を行
っている(乙1,2)。
(2) 原告商品の形態及びその販売時期等
 ア 原告は,別紙商品目録の「原告商品」記載の各商品(以下,目録記載の
番号に従って,「原告商品①」ないし「原告商品⑫」という。)を,原告カタログ
に掲載して販売した。原告カタログには,原告商品の全体を撮した写真(甲1ない
し5)やモデルが着用した様子を撮した写真(原告商品①,甲1)や内部の状態を
撮した写真(原告商品⑦,甲3)などがあわせて掲載されている。
   原告商品①ないし⑫の形態は,いずれも別紙商品目録左側の,前身及び
後身の写真及び図柄のとおりである(検甲1の1,2の1,3の1,4の1,5の
1,6の1,7の1,8の1,9の1,10の1,11の1,12の1)。
 イ 原告商品の原告カタログへの掲載時期,原告商品の販売時期,原告商品
が掲載された原告カタログの有効期限は以下のとおりである(甲1ないし5)。
   原告商品①:平成12年8月掲載,同13年1月販売,有効期限同13
年1月31日
   原告商品②:平成13年2月掲載,同年7月販売,有効期限同年8月3
1日
   原告商品③:平成12年8月掲載,販売時期の限定なし,有効期限同1
3年2月28日
   原告商品④:平成13年2月掲載,同年7月販売,有効期限同年8月3
1日
   原告商品⑤:平成12年8月掲載,同年10月販売,有効期限同13年
2月28日
   原告商品⑥:平成12年8月掲載,同年11月販売,有効期限同13年
1月31日
   原告商品⑦:平成13年2月掲載,同年7月販売,有効期限同年8月3
1日
   原告商品⑧:平成13年2月掲載,同年8月販売,有効期限同年8月3
1日
   原告商品⑨:平成13年2月掲載,同年3月販売,有効期限同年8月3
1日
   原告商品⑩:平成11年2月掲載,同年4月販売,有効期限同年8月3
1日
   原告商品⑪:平成13年2月掲載,同年7月販売,有効期限同年7月3
1日
   原告商品⑫:平成13年2月掲載,同年6月販売,有効期限同年7月3
1日
(3) 被告商品の形態及びその販売時期等
 ア 被告は,別紙商品目録の「被告商品」記載の各商品(以下,目録記載の
番号に従って,「被告商品①」ないし「被告商品⑫」という。)を,被告カタログ
に掲載して販売した。被告カタログには,被告商品の全体を撮した写真(乙1,
2)やモデルが着用した様子を撮した写真(被告商品①,乙1)や内部の状態を撮
した写真(被告商品⑦,乙1)などがあわせて掲載されている。
   被告商品①ないし⑫の形態は,いずれも別紙商品目録右側,「Ryu Ryu」
の記載の下の,前身及び後身の写真及び図柄のとおりである(検甲1の2,2の
2,3の2,4の2,5の2,6の2,7の2,8の2,9の2,10の2,11
の2,12の2)。
 イ 被告商品の被告カタログへの掲載時期,被告商品の販売時期,被告商品
が掲載された被告カタログの有効期限は以下のとおりである。
   被告商品①:平成13年8月掲載,同年10月販売,有効期限同14年
2月28日
   被告商品②:平成13年8月掲載,同年11月販売,有効期限同14年
2月28日
   被告商品③:平成13年8月掲載,販売時期の限定なし,有効期限同1
4年2月28日
   被告商品④:平成13年8月掲載,同年11月販売,有効期限同14年
2月28日
   被告商品⑤:平成13年8月掲載,販売時期の限定なし,有効期限同1
4年2月28日
   被告商品⑥:平成13年8月掲載,販売時期の限定なし,有効期限同1
4年2月28日
   被告商品⑦:平成13年8月掲載,同年11月販売,有効期限同14年
2月28日
   被告商品⑧:平成13年8月掲載,同年12月販売,有効期限同14年
2月28日
   被告商品⑨:平成13年8月掲載,同年9月販売,有効期限同14年2
月28日
   被告商品⑩:平成13年8月掲載,同14年1月販売,有効期限同年2
月28日
   被告商品⑪:平成14年2月掲載,同年4月販売,有効期限同年8月3
1日
   被告商品⑫:平成14年2月掲載,同年5月販売,有効期限同年8月3
1日
 (4) 被告による被告商品の販売金額,仕入金額は以下のとおりである(なお,
被告商品②及び⑥は,組合せ商品の合計価格である。)。
            販売金額        仕入金額
   被告商品①: 4,834,800円   2,779,800円
   被告商品②: 4,171,300円   2,244,000円
   被告商品③:   970,200円     483,000円
   被告商品④: 2,519,400円   1,364,200円
   被告商品⑤: 2,433,200円   1,238,720円
   被告商品⑥: 7,102,200円   3,409,056円
   被告商品⑦: 1,957,800円   2,000,700円
   被告商品⑧: 1,343,000円     841,770円
   被告商品⑨: 2,742,300円   1,453,400円
   被告商品⑩:   622,300円     392,600円
   被告商品⑪: 1,754,200円     834,140円
   被告商品⑫: 1,817,000円     932,670円
2 争点
(1) 被告商品は,原告商品の形態を模倣したものであるか。
 ア 被告商品①について
  (原告の主張)
   原告商品①と被告商品①の外観は全く同じである。原告商品①のデザイ
ンの重要な特徴はそのシルエットにあるところ,前身写真から明らかなとおり,両
サイドのラインのカーブや,下方の絞り加減,裾部の三角形のライン等につき,原
告商品と被告商品は相似形であり,裾の二重レースの模様も同一である。
   原告商品①と被告商品①では,色彩及び裾のレースの上部の三角状のラ
インの模様が異なっているが,これらは本質的部分ではない。 
  (被告の反論)
  原告商品①と被告商品①とは,レース部分の上部の波形のライン模様が異
なる。また,色彩が原告商品①はキャメル,被告商品①は黒である点で異なる。
イ 被告商品②について
 (原告の主張)
  原告商品②と被告商品②とは,外観が同一である。原告商品の本質的な
特徴であるデザインの襟及び前立て,袖口,裾(メロー始末)等の細部まで同一で
あり,色彩等も同一である。
 (被告の反論)
  原告商品②の色彩はゴールドベージュであるのに対し,被告商品②はゴ
ールドであり,異なる。素材は,原告商品②はレーヨン80%,ポリエステル20
%であるのに対し,被告商品②はアクリル90%,毛10%である点で異なる。ま
た,被告商品は,カーディガンとキャミソールとのアンサンブル商品である点で異
なる。
ウ 被告商品③について
 (原告の主張)
原告商品③と被告商品③では,全体の丈,肩巾,袖の太さと長さの寸法
比は全く同じである。また,ファー付き合皮コートとしての重要な特徴部分である
襟及び袖口のファーの取り付けの点で同一である。
  全体の色彩及びベルトに相違が見られるが,これは本質的なものではな
い。
 (被告の反論)
  原告商品③と被告商品③では,襟の形,ベルトの有無,ポケットの有
無,ファーの取り外し可否などの点で異なる。素材は,原告が合成皮革ポリエステ
ル100%であるのに対し,被告は合成皮革・ポリウレタン樹脂加工である点で異
なる。色彩は,被告商品③はベージュ,原告商品③はボルドー色である点で異な
る。
エ 被告商品④について
 (原告の主張)
  原告商品④と被告商品④では,赤い地色に襟及び袖の「かぎ針編み」の
黒い花模様,胸元の黒い刺繍模様が全く同一である。ノースリーブと長袖という相
違点はあるが,本質的なものではない。
 (被告の反論)
  原告商品④はノースリーブであり,被告商品④は長袖である点で,基本
的な外形が異なる。原告商品④は,綿100%のカットソー裁断のものであるのに
対し,被告商品④は,毛70%,アンゴラ20%,ナイロン10%のニット編みで
あり,素材の点で異なる。原告商品④はレッドであり,被告商品④はボルドー色で
あって,色彩及び花の模様も異なる。
オ 被告商品⑤について
 (原告の主張)
  原告商品⑤と被告商品⑤では,外観は相似形に近い。原告商品⑤の重要
なデザインの特徴である襟ファー,ウエストリボンベルトは同一である。色彩が若
干異なるが,淡い色調である点で共通する。
 (被告の反論)
  原告商品⑤は襟に特徴がないのに対し,被告商品⑤は立襟が大きく,前
面左右の切り込み縫目が目立つ点で異なる。また,色彩が原告商品⑤はスモーキー
ピンクであり,被告商品⑤はベージュである点で異なる。
カ 被告商品⑥について
 (原告の主張)
  原告商品⑥と被告商品⑥では,全体の形状は相似形に近い。原告商品⑥
の重要なデザインの特徴である襟,前立て,袖口のレース仕様及び裾のメロー始末
と,細部まで被告商品⑥は同一である。
  両者の差異は色彩のみであるが,色彩は本質的な部分ではない。
 (被告の反論)
  原告商品⑥はポリエステル76%,ナイロン19%,ポリウレタン5%
のラメ入りであるのに対し,被告商品⑥は,アクリル75%,ナイロン15%,毛
10%からなる起毛素材であって,素材の点で異なる。原告商品⑥はバイオレット
であり,被告商品⑥は黒であり,色彩も異なる。被告商品⑥は,半袖のプルオーバ
ーとのアンサンブル商品である。
キ 被告商品⑦について
 (原告の主張)
 原告商品⑦と被告商品⑦とは,外観は全く同じである。札入れ,小銭入
れ,カード入れ,外の留め金等の配置も全く同一である。両者の差異は主素材のみ
であるが,これは本質的部分ではない。
 (被告の反論)
  金具のデザイン部分を見る限りは類似している。しかし,原告商品⑦の
金具のデザイン部分は,そもそも,いわゆる「グッチ」商品として広く知られる他
社のデザインをヒントとして作られたものであり,被告商品⑦は,原告商品⑦を模
倣したものではない。
ク 被告商品⑧について
 (原告の主張)
  原告商品⑧のデザインの特徴は,襟廻りのレース仕様,前合わせ,裾の
イレギュラーヘム及び裾のフリル仕様にあるが,この部分を含めて被告商品⑧の外
観は全く同じである。両者は,色彩,柄において若干異なるが,これは本質的部分
ではない。
 (被告の反論)
  原告商品⑧と被告商品⑧では,形状は外形的に類似している。しかし,
素材は原告商品⑧は,ポリエステル85%,ナイロン15%であるのに対し,被告
商品⑧は,ポリエステル100%であり,異なる。色彩,柄が,原告商品⑧はゴー
ルドベージュ系,ヒョウ柄であるのに対し,被告商品⑧は茶系,ゼブラ柄であり,
大きく異なる。
ケ 被告商品⑨について
 (原告の主張)
  原告商品⑨のデザインの特徴は,両サイドラインのカーブ,裾のイレギ
ュラーヘム及びレース仕様等にあるが,この部分を含めて被告商品⑨は,その外観
及び色彩においてほぼ同じである。
 (被告の反論)
  基本的な形状は類似する。しかし,原告商品⑨では,スカートと別にレ
ース部分がペチコートとして分かれているのに対し,被告商品⑨では,スカートの
下部にゴアと呼ばれるマチを付けて立体的なカーブを付け,かつ,裾のレースを裏
地に縫いつけている点で異なる。原告商品⑨は,綿95%,麻4%,ポリウレタン
1%であるのに対し,被告商品⑨はポリエステル100%であり,素材の点で異な
る。原告商品⑨は,ボルドーであるのに対し,被告商品⑨は,ベージュ茶系であ
り,色彩が異なる。また,被告商品⑨は,プルオーバーが加えられたアンサンブル
商品である。
コ 被告商品⑩について
 (原告の主張)
  ブラジャーについては,原告商品⑩の特徴は,カップの角度を含む形
状,カップの下のストレッチ仕様,カップとストラップをつないでいる3本のテー
プを編みこみ,その上にリボンをつけている点,その上に更にストラップを3本に
している点,3枚のピンクの花びらと3枚の緑の葉を持つ花をカップのほぼ同じ位
置に付している点等にある。ショーツについては,原告商品⑩の特徴は,花の模様
及び位置,ウエストの脇の部分にストラップを使用している点,腿の付け根部分に
レースを使用している点にある。被告商品⑩のブラジャー及びショーツは,それぞ
れ原告商品⑩の前記特徴をすべて備えている。
 (被告の反論)
 ブラジャーについては,カップの繋ぎ部分が,原告商品⑩は「メガネ」
タイプであるのに対し,被告商品⑩は「台付き」タイプであり,基本的形状が異な
る。ショーツについては,脇部分が,原告商品⑩は3本で繋いでいるのに対し,被
告商品⑩がクロスで繋いでいる点で異なる。
サ 被告商品⑪について
 (原告の主張)
  原告商品⑪の特徴は,襟廻りのレースとリボン使い,袖口のフリル,裾
のメロー始末等にあるが,被告商品⑪はこれらを含め色彩,形とも同一である。
 (被告の反論)
  色柄はラベンダーで同一である点は認める。
シ 被告商品⑫について
 (原告の主張)
  原告商品⑫の特徴は,キャミソールについては,胸の中央を下げたライ
ンと,中央にリボンを付していること,胸の下部分の切り替え,ウエストの高い位
置を絞ってある点などにあり,スカートについては,マーメードライン及びセンタ
ーカットのイレギュラーヘム及び裾のレース使い等にある。被告商品⑫はこれらの
点で同一である。
 (被告の反論)
  色柄はパープルで同じである。しかし,原告商品⑫はナイロン55%,
レーヨン45%であるのに対し,被告商品⑫はレーヨン70%,ナイロン30%で
あり,素材の点で異なる。
(2) 原告商品の形態は,同種の商品が通常有する形態か。
 ア 原告商品①について
  (被告の主張)
   原告商品①は,女性スカートのマーメイドラインといわれる極めてあり
ふれた形態が採用されている。ボトム丈が90センチである点も,女性ロングスカ
ートとして一般的な長さである。裾の部分に,レース付着のものも近時の一般的な
流行である。また,原告商品①の素材はポリエステル100%,裾のレース部はレ
ーヨン100%であるが,女性のロングスカートに用いられる一般的な素材が使わ
れている。原告商品①の形態は同種の商品が通常有する形態である。
  (原告の反論)
   原告商品①のスカートは,Aラインスカートに属する。Aラインスカー
トとは,やや裾広がりのシルエットをアルファベットのAに例えて呼んだスカート
である(フレアスカートよりもフレア分がごく控えめである)が,原告商品①は,
Aラインスカートが通常有する形態とは異なる。
イ 原告商品②について
 (被告の主張)
  原告商品②は,このような女性用カーディガンとしては一般的な形状の
ものである。
 (原告の反論)
  カーディガンとは短いジャケットの一種で,襟なしの,前開きボタン留
めの衣服のことをいう。原告商品②は,カーディガンが通常有する形態とは異な
る。
ウ 原告商品③について
 (被告の主張)
  原告商品③は,婦人用の毛皮付きコートとして,極くありふれた一般的
な形状のものである。
 (原告の反論)
  原告商品③のコートはプリンセスコートに属する。バストからウエス
ト,ヒップまでを体のラインに沿ってフィットさせ,裾に向かってフレアを出し
た,縦の切り替え線をプリンセスラインと呼び,そのシルエットを持っているのが
特徴である。原告商品③は,この種の商品の通常有する形態とは異なる。
エ 原告商品④について
 (被告の主張)
  原告商品④は,長袖の婦人用プルオーバーとしてありふれた一般的な形
態である。
 (原告の反論)
  原告商品④は,プルオーバーの中のタンクトップの一種である。タンク
トップとは,袖及び襟がないプルオーバーである(プルオーバーとは,ボタンがけ
などのあきがなく,着るとき頭からかぶる形式の衣服である。)。原告商品④は,
この種の商品の通常有する形態とは異なる。
オ 原告商品⑤について
 (被告の主張)
  原告商品⑤は,婦人用ジャケットとしてありふれた形態である。
 (原告の反論)
  原告商品⑤は,ステンカラージャケットに属する。ステンカラージャケ
ットとは,ステンカラーと呼ばれる第1ボタンをはずしても留めても着られるよう
に二重襟を特徴としたジャケットである。原告商品⑤は,この種の商品の通常有す
る形態とは異なる。
カ 原告商品⑥について
 (被告の主張)
  原告商品⑥は,婦人用カーディガンとしてごくありふれた形状である。
 (原告の反論)
  前記2(2)イ(原告の反論)と同じである。原告商品⑥はこの種の商品の
通常有する形態とは異なる。
キ 原告商品⑦について
 (被告の主張)
 原告商品⑦の財布部分は,同種商品が通常有する形態である。
 (原告の反論)
  原告商品⑦は,二つ折り方の財布であるが,同種の商品が通常有する形
態とは異なる。
ク 原告商品⑧について
 (被告の主張)
  原告商品⑧の襟の前合せの形状は,いわゆる「カシュクール」デザイン
として一般的なものであり,裾のイレギュラーヘム,フリル形状も現今のワンピー
ス,スカートにあっては通常のものであり,同種の商品が通常有する形態であると
いえる。
 (原告の反論)
  原告商品⑧は,タンクワンピースに属する。タンクワンピースとは,タ
ンクトップをワンピースとして着用できる丈まで長くしたものであり,原告商品⑧
は,この種の商品の通常有する形態とは異なる。
ケ 原告商品⑩について
 (被告の主張)
 原告商品⑩のブラジャー,ショーツの花柄は,一般的な柄である。
 (原告の反論)
  原告商品⑩は,4分の3カップブラジャーに属するが,同種商品が通常
有する形態とは異なる。 
コ 原告商品⑪について
 (被告の主張)
  原告商品⑪は,婦人用カーディガンとして,ありふれた形状のものであ
る。
 (原告の反論)
  原告商品⑪は,カーディガンが通常有する形態とは異なる。
サ 原告商品⑫について
 (被告の主張)
  原告商品⑫の形状は一般的であり,スカートのマーメイドライン,セン
ターカットのイレギュラーヘム,裾のレース使用も,ありふれた形状のものであ
る。
 (原告の反論)
  原告商品⑫のプルオーバーは,プルオーバーの中のキャミソールに属す
る。キャミソールとは,胸元のラインを水平にカットし,スリップのように紐など
で肩からつる形状のものである。原告商品⑫は,同種の商品が通常有する形態とは
異なる。
(3) 損害額はいくらか。
(原告の主張)
 ア 主位的主張
  (ア) 被告商品の販売金額から仕入金額を控除した金額及びその合計金額
は以下のとおりである(被告商品⑦については利益が生じていないので除外す
る。)。
    被告商品①: 2,055,000円
    被告商品②: 1,927,300円
    被告商品③:   487,200円
    被告商品④: 1,155,200円
    被告商品⑤: 1,194,480円
    被告商品⑥: 3,693,144円
    被告商品⑧:   501,230円
    被告商品⑨: 1,288,900円
    被告商品⑩:   229,700円
    被告商品⑪:   920,060円
    被告商品⑫:   884,330円
    合計金額:14,336,544円
  (イ) 原告は,弁護士費用として,着手金500万円,成功報酬として5
00万円の支払を原告代理人と約した。
  (ウ) 主位的請求として,原告は被告に対して,法5条1項により,
(ア),(イ)の合計金2433万6544円の支払を求める。
 イ 予備的主張
  (ア) 原告が,第三者に原告商品の形態の使用を許諾するとすれば,その
使用料は売上金額の15%は下らない。
  (イ) したがって,別紙原告商品目録①ないし⑫記載の商品の形態の使用
に対し通常受けるべき金額は,少なくとも被告の売上額の15パーセントである4
84万155円を下ることはない。
  (ウ) 予備的請求として,原告は被告に対し,法5条2項2号により,4
84万155円の支払を求める。
(被告の反論)
原告の損害算定の方法を争う。
 また,原告商品の販売時期を過ぎた後にされた被告商品の販売について
は,原告は,販売時期を過ぎた原告商品を再び販売することはないから,原告に損
害を与えない。
第3 争点に対する判断
1 争点1(形態模倣の有無)について
(1) 被告商品が原告商品を模倣した商品であるか否かについて,各商品ごとに
検討する。
 ア 原告商品①と被告商品①について
  (ア) 証拠(甲1,乙1,検甲1の1,1の2)及び弁論の全趣旨によれ
ば,以下の事実が認められる。
   a 原告商品①及び被告商品①とは,以下の点が共通する。
     原告商品①は,ボトム総丈90ないし91センチの,被告商品①
は,ボトム総丈90センチの,いずれもマーメイドラインといわれるシルエット
の,八枚はぎのロングスカートである。原告商品①と被告商品①とは,上方から裾
に向けての幅の絞り具合とそれにより形成される両サイドの曲線,裾部分が四つの
角を有する三角形ラインに切り分けられている点,全体のシルエットが同一であ
る。
     また,原告商品①と被告商品①とは,裾に二段レースが施されてい
ること,レース上部に沿ってスパンコールが施されていること,裾のレースの模様
が,その下端に葉のような図形,その中央に6枚の花びらを有する円形の図形を配
置した点も同一である。
   b 他方,原告商品①と被告商品①とは,以下の点で相違する。
     原告商品①は,色彩がキャメル(らくだ色)であるところ,被告商
品①は,黒である。
     また,裾の二段レースの上部に沿って施されたスパンコールが,原
告商品①では,スパンコール間に一定の間隔を空けて配列されているのに対し,被
告商品①では,重ねあわされて密に配置されている点が異なる。 
  (イ) 実質的同一性の有無
    前記前提となる事実,前記(ア)認定の事実及び弁論の全趣旨によれ
ば,原告商品①の形態において特徴的な点は,商品全体のシルエット及び裾の二段
レースとその模様にあるものと認められる。
    そこで,原告商品①と被告商品①とを対比すると,原告商品①と被告
商品①は,寸法と両サイドのカーブ,幅の絞り具合等,シルエットは同一であると
いえる。また,裾の二段レースとその上にスパンコールが施されていること,レー
スの模様も同一である。
    これに対して,原告商品①と被告商品①とは,色彩が異なるが,前記
のとおり,原告商品①と被告商品①とはそのシルエット,特徴的な裾の二段レース
及びその模様がほぼ同一であることからすると,色彩の違いは,同一性の判断に影
響を与えるものではない。また,裾のスパンコール部分の違いについても,スパン
コール部分自体の幅が非常に細く,些細なものであるということができる。
    以上によると,原告商品①と被告商品①の形態は,実質的に同一とい
うことができる。
  (ウ) 模倣の意図
 以上認定した原告商品①と被告商品①の形態上の同一性,原告商品①
が原告カタログに掲載されて販売された数か月後に被告商品①が被告カタログに掲
載されて販売されたこと,原告,被告ともカタログを利用した商品の販売形態及び
顧客層がいずれも類似していること等の事実に照らすならば,被告は,原告商品①
の形態に依拠して被告商品①を製造販売したものと認められる。
 イ 原告商品②と被告商品②について
  (ア) 証拠(甲3,乙1,検甲2の1,2の2)及び弁論の全趣旨によれ
ば,以下の事実が認められる。
   a 原告商品②及び被告商品②とは,以下の点が共通する。
     原告商品②,被告商品②はいずれもカーディガンであり,いずれの
商品にもMサイズ,Lサイズがあり,そのサイズは,Mサイズが身丈53センチ,
肩幅36センチ,袖丈40センチで,Lサイズが身丈55センチ,肩幅38セン
チ,袖丈41センチであって同一である。
     原告商品②,被告商品②は,いずれも前あきの部分から首まわりま
でを囲む1本の金色のテープ状のスパンコール(ブレード)が施されている点,ス
パンコール部分は,いずれの商品も中央と両端に金色の帯が形成されている点,裾
と袖の端が,いずれも波形に加工されている点(メロー始末),上記の他には特段
の装飾が施されておらず,側面にダーツを入れてしぼりをかけている点,V字型の
ネックの部分の深さ,切り込みの形状,前ホック1つで留める点において共通し,
外形上ほぼ同一である。
原告商品②の色彩はゴールドベージュであり,被告商品②は,ゴー
ルドであるが,金色を基調とし,ラメの入った明るい色彩において共通する。
   b 原告商品②と被告商品②とは,上記のとおり,色彩に若干の相違
(原告商品②の色彩はゴールドベージュであり,被告商品②は,ゴールド)があ
る。また,原告商品②は,レーヨンを,被告商品②はアクリルを中心とした素材で
あるが,そのほかには,相違する点はない。
  (イ) 実質的同一性の有無
    前記前提となる事実,前記(ア)認定の事実及び弁論の全趣旨によれ
ば,原告商品②の形態において特徴的な点は,ラメの入った金色を基調とする色
彩,前あきの部分から首まわりまでを囲む1本の金色のテープ状のスパンコール,
裾と袖の端の波形のメロー始末にあるものと認められる。
    そこで,原告商品②と被告商品②とを対比すると,原告商品②と被告
商品②は,寸法とV字型のネックの部分,前ホック,ダーツ等が同一である上,前
あきの部分から首まわりまでを囲む1本の金色のテープ状のスパンコール,裾と袖
の波形のメロー始末も同一である。
    これに対して,原告商品②と被告商品②とは,色彩が若干異なり,素
材も異なるが,前記のとおり,原告商品②と被告商品②とはその全体的なシルエッ
ト,特徴的なスパンコール,メロー始末等が同一であることからすると,若干の色
彩の違い及び素材の違いは,同一性の判断に影響を与えるものではない。
    以上によると,原告商品②と被告商品②の形態は,実質的に同一とい
うことができる。
    なお,被告は,被告商品②は,カーディガンとキャミソールのアンサ
ンブル商品としている点で異なると主張するが,被告商品②がアンサンブル商品と
して販売されているとしても,商品の形態の比較は,カーディガン自体の形態を比
較すれば足りるものであるから,類似性の判断に際して考慮すべき事情とは認めら
れない(以下,被告商品がアンサンブル商品として販売されている点が,原告商品
と異なると被告が主張している商品についての判断はすべて同様である。)。 
  (ウ) 模倣の意図
 以上認定した原告商品②及び被告商品②の形態上の同一性,販売形
態,販売時期に照らすならば,被告商品②は,原告商品②の形態を模倣したものと
認められる。
 ウ 原告商品③と被告商品③について
  (ア) 証拠(甲2,乙1,検甲3の1,3の2)及び弁論の全趣旨によれ
ば,以下の事実が認められる。
   a 原告商品③及び被告商品③とは,以下の点が共通する。
     原告商品③,被告商品③はいずれも襟にファーが付けられた合皮素
材の婦人シングルコートである。両者は,いずれも襟にファーを,袖にファーカフ
スが施されており,襟のファーの中程に切り込みのある形状,袖のファーカフスの
長さがほぼ同じである。
   b 他方,原告商品③と被告商品③とは,以下の点で相違する。
     原告商品③の色彩はボルドーであり,被告商品③の色彩はベージュ
である。原告商品③の身丈は91ないし92センチであるのに対し,被告商品③
は,着丈98ないし98.5センチであり,若干被告商品③の方が丈が長い。原告
商品③では,中心付近に切り替えをしてポケットを形成し,左右1つずつのポケッ
トがあるのに対し,被告商品③では,中央より高い位置で切り替えをするととも
に,ポケットが存しない。原告商品③では,ボタンが4つであるのに対し,被告商
品③ではボタンが3つである。また,被告商品③には共布のベルトが付属している
のに対し,原告商品③にはベルトがない。 
  (イ) 実質的同一性の有無
    前記前提となる事実,前記(ア)認定の事実及び弁論の全趣旨によれ
ば,原告商品③の形態において特徴的な点は,商品全体のシルエット,襟と袖のフ
ァー,中央左右に設けられたポケット,ファーと対比をなす全体のボルドー色にあ
るというべきである。
    そこで,原告商品③と被告商品③とを対比すると,原告商品③と被告
商品③は,襟と袖にファーが付けられている点はほぼ同一であるが,原告商品③
は,ボルドー色で,かつベルトがないのに対して,被告商品③はポケットがないこ
と,ベージュ色であり,かつベルトが付されている点で異なり,それらの相違点
は,需要者にかなり異なる印象を与えるものと認められる。
    以上によると,原告商品③と被告商品③の形態は,実質的に同一とい
うことはできない。    
 したがって,被告商品③は,原告商品③の形態を模倣したものとは認
められない。
 エ 原告商品④と被告商品④について
  (ア) 証拠(甲3,乙1,検甲4の1,4の2)及び弁論の全趣旨によれ
ば,以下の事実が認められる。
   a 原告商品④及び被告商品④とは,以下の点が共通する。
     原告商品④,被告商品④はいずれも婦人用プルオーバーであり,原
告商品④の方が若干明るめではあるものの,原告商品④,被告商品④ともいずれも
赤色である。両商品とも,Vネックになっている点,胸元部分にカギ針編みのボル
ドー色の花モチーフが施されており,花モチーフには6つの丸型の花が逆三角形に
配されている点,首まわりにはボルドー色のカギ針編みレースが施されている点,
それぞれ同一の模様のボルドー色のカギ編みレースが施されている点(ただし,原
告商品④では袖ぐり,被告商品④では袖口である。)で同一である。また,両商品
とも,いずれも襟ぐりの両側に,肩から胸にかけて,それぞれ長さ約11センチの
縦向きの枝状の刺繍と,胸当たりに,長さ約5センチ(被告商品③においては3セ
ンチ)の横向きの枝状の刺繍の2本がそれぞれボルドー色に施されているところ,
その刺繍のデザインもほぼ同一である。枝状の刺繍の下から花モチーフを取り囲む
様に,小さな葉の形をした楕円形状の刺繍がいくつか施され,さらにそれよりも小
さい刺繍が点在する点もほぼ同一である。
   b 他方,両者は,原告商品④は,袖なしであるのに対し,被告商品④
は長袖である点において異なる。
  (イ) 実質的同一性の有無
    前記前提となる事実,前記(ア)認定の事実及び弁論の全趣旨によれ
ば,原告商品④は婦人用プルオーバーであって全体としてシンプルな形状ではある
ものの,襟ぐり部分に施されたカギ針編みのボルドー色の花モチーフ,襟ぐりの両
側の枝状の刺繍及びそれらを下から取り囲む様に,小さな楕円形で葉の形をした刺
繍が施されている点は,原告商品④の特徴的な形態であると認められる。
    そこで,原告商品④と被告商品④とを対比すると,原告商品④と被告
商品④は,両商品とも,襟部分にカギ針編みのボルドー色の花モチーフが施されて
おり,その模様,配置,襟の両側の枝状の刺繍のデザイン,小さな葉の形の刺繍も
ほぼ同一である。
    これに対して,原告商品④と被告商品④とは,原告商品④は袖なし,
被告商品④は長袖であり,色調も若干異なるが,原告商品④,被告商品④とも前記
刺繍部分以外には特段の装飾が施されていないところ,胸元部分にカギ針編みのボ
ルドー色の花モチーフや,枝状の刺繍,小さな葉の形の刺繍はいずれも特徴的なデ
ザイン,配置であって,原告商品④と被告商品④とは,これらがほぼ同一であるこ
とからすると,上記の違いは,同一性の判断に影響を与えるものではない。
    以上によると,原告商品④と被告商品④の形態は,実質的に同一とい
うことができる。     
  (ウ) 模倣の意図
 以上認定した原告商品④及び被告商品④の形態上の同一性,販売形
態,販売時期に照らすならば,被告商品④は,原告商品④の形態を模倣したものと
認められる。
 オ 原告商品⑤と被告商品⑤について
  (ア) 証拠(甲2,乙1,検甲5の1,5の2)及び弁論の全趣旨によれ
ば,以下の事実が認められる。
   a 原告商品⑤及び被告商品⑤とは,以下の点が共通する。
     原告商品⑤及び被告商品⑤は,いずれも合皮素材の婦人用ショート
丈ジャケットであり,襟内側,前合わせ部分にファーが付けられており,ボタン,
ポケット等がなく,アクセントとして細いウエストリボンが付けられている点,前
身頃に切替え線が入っており,絞られている点で,同一である。
   b 他方,原告商品⑤と被告商品⑤とは,以下の点で相違する。
     被告商品⑤の方が,立て襟が原告商品⑤のものよりも大きい点が相
違する。原告商品⑤の色彩はスモーキーピンク,被告商品⑤の色彩はベージュであ
り,相違する。
  (イ) 実質的同一性の有無
    前記前提となる事実,前記(ア)認定の事実及び弁論の全趣旨によれ
ば,原告商品⑤の形態において特徴的な点は,商品全体のシルエット,ファーの襟
の形状,全体に淡いスモーキーピンクの色調にあると認められる。
    そこで,原告商品⑤と被告商品⑤とを対比すると,原告商品⑤と被告
商品⑤は,襟にファーが付けられている点はほぼ同一であるが,襟の大きさが異な
ること,原告商品⑤の色彩はスモーキーピンク,被告商品⑤の色彩はベージュであ
ることから,原告商品⑤と被告商品⑤とは,需要者にかなり異なる印象を与えるも
のと認められる。
    以上によると,原告商品⑤と被告商品⑤の形態は,実質的に同一とい
うことはできない。
 したがって,被告商品③は,原告商品③の形態を模倣したものとは認
められない。
 カ 原告商品⑥と被告商品⑥について
  (ア) 証拠(甲1,乙1,検甲6の1,6の2)及び弁論の全趣旨によれ
ば,以下の事実が認められる。
   a 原告商品⑥及び被告商品⑥とは,以下の点が共通する。
     原告商品⑥,被告商品⑥はいずれも婦人用カーディガンであり,襟
ぐり,前合わせ,袖口にパイピングレースが施されており,その模様や幅が同一で
ある。両商品とも,上記パイピングレースの他には,何ら装飾等が施されておら
ず,ポケット等もない点,裾にメロー始末が施されている点が同一である。
   b 他方,原告商品⑥と被告商品⑥とは,原告商品⑥はバイオレットで
あるのに対し,被告商品⑥は黒である点で異なる。
  (イ) 実質的同一性の有無
   前記前提となる事実,前記(ア)認定の事実及び弁論の全趣旨によれ
ば,原告商品⑥の形態において特徴的な点は,前合わせから襟まわりに1本のパイ
ピングレースを施し,これと同じパイピングレースを袖口にも施している点とそれ
らの模様にあるものと認められる。
    そこで,原告商品⑥と被告商品⑥とを対比すると,原告商品⑥と被告
商品⑥は,襟,前合わせ,袖口にパイピングレースが施されており,その模様や幅
が同一であり,その他には,何ら装飾等が施されていない。また,裾のメロー始末
も同じである。
    これに対して,原告商品⑥と被告商品⑥とは,原告商品⑥の色彩はバ
イオレット,被告商品⑥は黒であって,かなり異なるが,前記のとおり,原告商品
⑥と被告商品⑥とはパイピングレースの模様や幅が同一であり,その他には,何ら
装飾等が施されていないことなどからすると,色彩の違いは,同一性の判断に影響
を与えるものではない。
    以上によると,原告商品⑥と被告商品⑥の形態は,実質的に同一とい
うことができる。   
  (ウ) 模倣の意図
 以上認定した原告商品⑥及び被告商品⑥の形態上の同一性,販売形
態,販売時期に照らすならば,被告商品⑥は,原告商品⑥の形態を模倣したものと
認められる。
 キ 原告商品⑦と被告商品⑦について
  (ア) 証拠(甲3,乙1,検甲7の1,7の2)及び弁論の全趣旨によれ
ば,以下の事実が認められる。
   a 原告商品⑦及び被告商品⑦とは,以下の点が共通する。
     原告商品⑦,被告商品⑦はいずれも黒色の婦人用財布であり,その
大きさが原告商品⑦は,縦約9.5センチ,横約12センチ,被告商品⑦は,縦約
9.7センチ,横約12.5センチである。前面の銀色の差し込み式金具により開
閉する方式となっている。内部は,一つの面に小銭入れがあり,もう一つの面に
は,内ポケットの他に,段々状に縦に3か所,横に2か所のカード差しがある。横
は札入れになっている。前面の金具は,中央に正方形の開閉スイッチを配した長方
形の金具の両側に,ロ字状金具を配している点も同一である。
   b 他方,原告商品⑦と被告商品⑦とは,原告商品⑦が金具を閉めた際
の上面が若干短いほかは,外観上の相違点はない。
  (イ) 実質的同一性の有無
    前記前提となる事実,前記(ア)認定の事実及び弁論の全趣旨によれ
ば,原告商品⑦の形態において特徴的な点は,前面の金具の形状にあるものと認め
られる。
しかし,原告商品⑦の形態のうち,上記特徴的な部分の形態は,以下
のとおり,他社の商品と共通するため,原告商品固有の特徴とはいえない。
乙6の1,6の5によれば,原告商品⑦のように,前面中央に正方形
の開閉スイッチを配した長方形の金具の両側に,ロ字状金具を配した商品は,そも
そも著名ブランド「グッチ」製品において特徴的であり,これらの特徴を備えた商
品が市場に多数存在することが認められる。
そうすると,原告商品⑦の形態は,原告商品固有の特徴的な形態とい
うことはできず,被告商品⑦が,原告商品⑦を模倣したものということはできな
い。
 ク 原告商品⑧と被告商品⑧について
  (ア) 証拠(甲3,乙1,検甲8の1,8の2)及び弁論の全趣旨によれ
ば,以下の事実が認められる。
   a 原告商品⑧及び被告商品⑧とは,以下の点が共通する。
     原告商品⑧,被告商品⑧はいずれも婦人用ワンピースであり,身丈
が原告商品⑧が107.5ないし111センチ,被告商品⑧が108ないし109
センチである。両商品とも,襟廻りにレースが施され,前合わせの胸元部分がカシ
ュクールデザインに,裾がイレギュラーヘムになっている点,胸の下に切替えがあ
り,ダーツでウエスト部分を絞っている点,裾の部分がフリルになっている点で同
一である。
   b 他方,原告商品⑧と被告商品⑧とは,原告商品⑧が色彩はゴールド
ベージュ系で柄がアニマルプリントであるのに対し,被告商品⑧は,色彩は茶系
で,ゼブラ柄である点で異なる。
  (イ) 実質的同一性の有無
    前記前提となる事実,前記(ア)認定の事実及び弁論の全趣旨によれ
ば,原告商品⑧の形態において特徴的な点は,婦人用ワンピースとしての商品全体
のシルエットのほか,前合わせの胸元部分のカシュクールデザイン及び裾のイレギ
ュラーヘムにあるものと認められる。
    そこで,原告商品⑧と被告商品⑧とを対比すると,原告商品⑧と被告
商品⑧は,寸法と両サイドのカーブなど,両商品のシルエットはほぼ同一であり,
加えて原告商品⑧の特徴的な点である前合わせの胸元部分のカシュクールデザイン
及び裾のイレギュラーヘムも同一であり,裾の部分がフリルになっている点も同一
である。
    これに対して,原告商品⑧と被告商品⑧とは,原告商品⑧が色彩はゴ
ールドベージュ系で柄がアニマルプリントであるのに対して,被告商品⑧は,色彩
は茶系で,ゼブラ柄であって,異なるが,原告商品⑧と被告商品⑧とはそのシルエ
ット,特徴的な胸元部分のカシュクールデザイン及び裾のイレギュラーヘムも同一
であることからすると,上記相違点は,同一性の判断に影響を与えるものではな
い。
    以上によると,原告商品⑧と被告商品⑧の形態は,実質的に同一とい
うことができる。    
  (ウ) 模倣の意図
 以上認定した原告商品⑧及び被告商品⑧の形態上の同一性,販売形
態,販売時期に照らすならば,被告商品⑧は,原告商品⑧の形態を模倣したものと
認められる。
 ケ 原告商品⑨と被告商品⑨について
  (ア) 証拠(甲3,乙1,検甲9の1,9の2)及び弁論の全趣旨によれ
ば,以下の事実が認められる。
   a 原告商品⑨及び被告商品⑨とは,以下の点が共通する。
     原告商品⑨及び被告商品⑨は,いずれもスカートであり,中心に近
い部分に絞りが存在し,裾の後身部分が前身部分より長く,前身部分が短いイレギ
ュラーヘムになっている。原告商品⑨はスカートの内側に着用する別体のペチコー
トにレースを使用することにより,被告商品⑨はスカートの裾に直接レースを施す
ことにより,いずれもスカートの裾部分にレースがみえるような形状であり,その
模様もほぼ同じである。
   b 他方,原告商品⑨と被告商品⑨とは,原告商品⑨では,裾のレース
部分が二段になっているのに対し,被告商品⑨はこれが一段である点,原告商品⑨
のボトム丈は64ないし65センチであるのに対し,被告商品⑨のボトム丈は82
センチで,被告商品⑨の方がかなり丈が長く,かつ,ゴアがあり,まちを形成して
いる点,原告商品⑨の色彩はボルドーであるのに対し,被告商品⑨の色彩は茶色で
ある点において,異なる。
  (イ) 実質的同一性の有無
    前記前提となる事実,前記(ア)認定の事実及び弁論の全趣旨によれ
ば,原告商品⑨の形態において特徴的な点は,前身部分のイレギュラーヘムも含め
た商品全体のシルエット及び裾部分のレースの仕様にあるものと認められる。
    そこで,原告商品⑨と被告商品⑨とを対比すると,原告商品⑨と被告
商品⑨は,裾部分のレースの模様自体は類似するものの,原告商品⑨では,レース
が二段であるが,被告商品⑨はこれが一段であること,被告商品⑨は原告商品⑨よ
りも17センチほど丈が長く,ゴアでまちが形成されたシルエットは,裾のイレギ
ュラーヘムが同じではあっても,需要者にかなり異なる印象を与えるものと認めら
れる。
    以上によると,原告商品⑨と被告商品⑨の形態は,実質的に同一とい
うことはできない。
 したがって,被告商品⑨は,原告商品⑨の形態を模倣したものとは認
められない。
 コ 原告商品⑩と被告商品⑩について
  (ア) 証拠(甲4,乙1,検甲10の1,10の2)及び弁論の全趣旨に
よれば,以下の事実が認められる。
   a 原告商品⑩及び被告商品⑩とは,以下の点が共通する。
     原告商品⑩,被告商品⑩はいずれもブラジャーとショーツの組合せ
である。ブラジャーは,ピンクの花びら3枚と緑色の葉からなる刺繍が,カップの
上側にそれぞれ3個,カップの間のリボンの上に1個付いており,その配置位置も
ほぼ同じである。肩紐の一部が3本の編み込み式になっており,途中にリボンが付
され,そこから上は3本の別々の紐になっていることも同一である。被告商品⑩は
オフホワイト,原告商品⑩はシャンパンであるが,いずれも全体的に白系のレース
で覆われている。ショーツは,両商品とも,ブラジャーと同一の刺繍が7個施され
ている点,中央のものはリボンの上に置かれている点,及びその配置された位置の
点でほぼ同一である。また,両商品とも,ウエストの脇部分には前身頃と後身頃を
つなぐためにストラップが使用されている点,腿の付け根部分にはレースが施され
ている点,前身頃は白いレースで覆われている点が同一である。
   b 他方,原告商品⑩と被告商品⑩とは,以下の点で異なる。すなわ
ち,ブラジャーについては,原告商品⑩のブラジャーの中央の刺繍が大きなリボン
の上に付されているのに対し,被告商品⑩においては,中央部分のリボンが小さい
点,カップの間の繋ぎ部分が,原告商品⑩の方が被告商品⑩に比べ細い点,レース
の模様が,いずれも花モチーフとしたものであるものの,被告商品⑩の方が大柄で
ある点で異なる。ショーツについては,原告商品⑩の脇部分のストラップが,3本
の平行な紐により構成されているのに対し,被告商品⑩では,2本の紐が交叉する
クロス繋ぎとなっている点で異なる。
  (イ) 実質的同一性の有無
    前記前提となる事実,前記(ア)認定の事実及び弁論の全趣旨によれ
ば,原告商品⑩はブラジャーとショーツからなるが,その形態において特徴的な点
は,ブラジャーにおいては,カップの上側及びカップの間の刺繍及び肩の紐が3本
の編み込み式の紐の途中にリボンが付され,そこから3本の別々の紐になっている
ところにあるものと認められ,また,ショーツにおいては,ブラジャーと同一の刺
繍が7個施され,中央にリボンがあること,ウエストの脇部分にはストラップが使
用され,腿の付け根部分にもレースが施されているところにあるものと認められ
る。
    そこで,原告商品⑩と被告商品⑩とを対比すると,原告商品⑩と被告
商品⑩は,ブラジャーにおいては,カップの上側と中央の刺繍の個数,配置位置,
模様ともほぼ同一である上,肩紐が3本の編み込み式になっていること,リボンか
ら上の部分は3本の別々の紐になっていることも同一であり,また,ショーツにお
いては,両商品とも,ブラジャーと同一の刺繍が同じ個数,同じ位置に施され,中
央にリボンが付けられている点で同一である。両商品ともウエストの脇部分にはス
トラップが使用され,腿の付け根部分にもレースが施されている点で同一である。
    これに対して,原告商品⑩と被告商品⑩とは,ブラジャーについて
は,そのカップの間のリボンの大きさ及び繋ぎ部分の太さに差があり,ショーツに
ついては,その脇付け根部分のストラップが,原告商品⑩では3本の紐が平行に置
かれているのに対し,被告商品⑩では,2本の紐が交叉しているという違いがある
が,これらは前記類似点に比べれば些細なものであるということができる。
    以上によると,原告商品⑩と被告商品⑩の形態は,実質的に同一とい
うことができる。
  (ウ) 模倣の意図
 以上認定した原告商品⑩及び被告商品⑩の形態上の同一性,販売形
態,販売時期に照らすならば,被告商品⑩は,原告商品⑩の形態を模倣したものと
認められる。
 サ 原告商品⑪と被告商品⑪について
  (ア) 証拠(甲5,乙2,検甲11の1,11の2)及び弁論の全趣旨に
よれば,以下の事実が認められる。
   a 原告商品⑪及び被告商品⑪とは,以下の点が共通する。
     原告商品⑪,被告商品⑪はいずれもカーディガンであり,いずれの
商品にもMサイズ,Lサイズが存在し,そのサイズは,両商品とも,Mサイズが身
丈52センチ,肩幅36センチ,袖丈40センチで,Lサイズが身丈54センチ,
肩幅37.5センチ(被告商品⑪は38センチ),袖丈41センチであり,ほぼ同
一である。両商品とも,V字型のネックの部分の深さ,切り込み形状,ワンホック
で胸元で留める点,首まわりにレースが施され,その中央にカーディガンと同系色
のリボンを通し(通しリボン),胸元で通しリボンを結ぶことができる点,七分袖
丈の袖口部分にフリルが付いており,裾部分がメロウ仕上げになっている点,色彩
がラベンダー色である点が同一である。
   b 他方,原告商品⑪と被告商品⑪とは,外観上特段の相違はない。
  (イ) 実質的同一性の有無
    前記前提となる事実,前記(ア)認定の事実及び弁論の全趣旨によれ
ば,原告商品⑪の形態において特徴的な点は,襟,首まわりにレースが施され,胸
元で通しリボンを結ぶことができる点及び七分袖丈の袖口部分のフリル,裾部分の
メロウ仕上げにあるものと認められる。
    そこで,原告商品⑪と被告商品⑪とを対比すると,原告商品⑪と被告
商品⑪は,寸法とV字型のネックの部分の形状,ワンホックで胸元でとめる点,
襟,首まわりにレースが施され,胸元で通しリボンを結ぶこと,七分袖丈の袖口部
分のフリル,裾部分のメロウ仕上げなど,ほぼ同一であり,外観上特段の相違がな
い。
    以上によると,原告商品⑪と被告商品⑪の形態は,実質的に同一とい
うことができる。   
  (ウ) 模倣の意図
 以上認定した原告商品⑪及び被告商品⑪の形態上の同一性,販売形
態,販売時期に照らすならば,被告商品⑪は,原告商品⑪の形態を模倣したものと
認められる。
 シ 原告商品⑫と被告商品⑫について
  (ア) 証拠(甲5,乙2,検甲12の1,12の2)及び弁論の全趣旨に
よれば,以下の事実が認められる。
   a 原告商品⑫及び被告商品⑫とは,以下の点が共通する。
     原告商品⑫,被告商品⑫はいずれもキャミソールとスカートの組合
せであり,原告商品⑫は身丈49ないし50センチ,ボトム総丈62ないし63セ
ンチ,被告商品⑫は身丈48ないし50センチ,ボトム総丈62ないし63センチ
である。キャミソール,スカートとも,総レースの2枚重ねであり,パープルのレ
ースにはいずれの商品にも花をあしらった柄が施されている。
     キャミソールのネックラインは胸の中央を下げたラインとし,無地
のパープルのオーガンジーでネックラインを縁取り,前中心にリボンを配し,ウエ
ストの高い位置を絞っている。スカートについては,全体形状をマーメイドライン
とし,裾をセンターカットのイレギュラーヘムとしている。また,原告商品⑫はス
カートの裾にレースを施すことにより,被告商品⑫は2枚重ねになっているレース
部分の裾を長くすることにより,スカートの裾からレースがのぞくようになってい
る。
   b 他方,原告商品⑫と被告商品⑫とは,レースの柄のちらばり具合や
大きさに若干の相違があるほかは,外観上特段の相違はない。
  (イ) 実質的同一性の有無
    前記前提となる事実,前記(ア)認定の事実及び弁論の全趣旨によれ
ば,原告商品⑫の形態において特徴的な点は,キャミソール,スカートの全体のシ
ルエットのほか,2枚重ねの総レースとし,レースに花をあしらったデザインの柄
を点在させたことにあるものと認められる。
    そこで,原告商品⑫と被告商品⑫とを対比すると,原告商品⑫と被告
商品⑫は,寸法がほぼ同じであるほか,キャミソールの胸の中央を下げたライン,
ウエストの高い位置を絞っていること,スカートについては,全体形状をマーメイ
ドラインとし,裾をセンターカットのイレギュラーヘムとしている点から,原告商
品⑫と被告商品⑫のシルエットはほとんど同一である。また,総レースの二枚重ね
とし,レースに花をあしらった柄を点在させていることも同一である。レースの柄
のちらばり具合や大きさに若干の相違はあるが,些細な点であり,原告商品⑫と被
告商品⑫の形態は,ほぼ同一である。
    以上によると,原告商品⑫と被告商品⑫の形態は,実質的に同一とい
うことができる。   
  (ウ) 模倣の意図
 以上認定した原告商品⑫及び被告商品⑫の形態上の同一性,販売形
態,販売時期に照らすならば,被告商品⑫は,原告商品⑫の形態を模倣したものと
認められる。
(2) 小括
 以上認定した事実によれば,被告商品①,②,④,⑥,⑧,⑩,⑪,⑫
は,それぞれ原告商品①,②,④,⑥,⑧,⑩,⑪,⑫の形態を模倣したものと認
められる。
2 争点2(原告商品の形態は,同種の商品が通常有する形態か)について
 (1) 原告商品の形態について
  ア 原告商品①の形態について
    被告は,原告商品①の形態は,マーメイドラインの外形及び裾にレース
を付けたごく一般的なものであるから,同種の商品が通常有する形態であるとし,
それに沿う証拠として,乙4の1,4の2を提出する。
    乙4の2は,乙4の1(陳述書)によれば,発売時期は明らかではない
ものの,乙4の2に掲載されている女性用スカートには,マーメイドラインの外形
のスカート,裾にレースのあるもの,ボトム丈長めのスカート,八枚はぎで裾が三
角形に切られている商品が存在することが窺えるが,原告商品①のように,ボトム
丈長めのマーメイドラインのシルエットで,裾部分に二段レースが施され,その上
部にスパンコールが施された商品は見あたらず,これら原告商品①の特徴的な形態
について,これがありふれたものである旨認めるに足る証拠はない。
    以上によれば,原告商品①の形態は,同種の商品が通常有する形態であ
るとはいえない。
 イ 原告商品②の形態について
    被告は,原告商品②の形態は,女性用カーディガンとして一般的な形状
のものであるから,同種の商品が通常有する形態であるとし,それに沿う証拠とし
て,乙6の1,6の2を提出する。
    乙6の2は,乙6の1(陳述書)によれば,発売時期は明らかではない
ものの,乙6の2に掲載されているカーディガンには,前ホック1つで止める女性
用カーディガンや,前あきの部分から首まわりまでを囲む1本のテープ状のスパン
コールが施されたものがあるが,原告商品②のように,ラメの入った金色を基調と
して前あきから首周りまでを金色のスパンコールで囲み,裾と袖の端に波形のメロ
ー始末を施した商品は存せず,原告商品②の特徴的な形態について,これがありふ
れたものである旨認めるに足る証拠はない。
    以上によれば,原告商品②の形態は,同種の商品が通常有する形態であ
るとはいえない。
ウ 原告商品④の形態について
    被告は,原告商品④の形態は,婦人用プルオーバーとしてありふれたも
のであるから,同種の商品が通常有する形態であるとし,それに沿う証拠として,
乙6の1,6の4を提出する。
    乙6の4は,乙6の1(陳述書)によれば,発売時期は明らかではない
ものの,乙6の4に掲載されているプルオーバーの中には,襟ぐりを縁取ったカギ
針編み部分,胸元及び襟ぐりの両側に枝状にみえる刺繍などが施された,原告商品
④とかなり似通った商品もある。しかし,これら商品が,いつ発売されたものであ
るかが全く明らかではなく,原告商品④に先行してこれらの商品が販売されていた
と認めるに足る証拠はない。その他,原告商品④のカギ針編み部分,胸元及び襟ぐ
りの両側の枝状にみえる刺繍などの特徴的な形態につき,これがありふれたもので
あると認めるに足る証拠はない。
    以上によれば,原告商品④の形態は,同種の商品が通常有する形態であ
るとはいえない。
エ 原告商品⑥の形態について
  被告は,原告商品⑥の形態は,女性用カーディガンとして一般的な形状
のものであるから,同種の商品が通常有する形態であるとし,それに沿う証拠とし
て,乙4の1,4の4を提出する。
    乙4の4は,乙4の1(陳述書)によれば,発売時期は明らかではない
ものの,乙4の4に掲載されているカーディガンには,襟,前合わせを囲んでレー
スが施され,これと同じレースが袖にも施されたものがあるが,原告商品⑥のよう
に,襟ぐりや前合わせ部分,袖にパイピングレースの施された商品は存せず,これ
ら原告商品⑥の特徴的な形態がありふれたものである旨認めるに足る証拠はない。
    以上によれば,原告商品⑥の形態は,同種の商品が通常有する形態であ
るとはいえない。 
オ 原告商品⑧の形態について
  被告は,原告商品⑧の前合せの形状は,「カシュクール」デザインとし
て,普遍的なものであり,裾のイレギュラーヘム,フリル形状も一般的なものであ
り,同種の商品が通常有する形態であるとし,それに沿う証拠として,乙4の1,
4の5を提出する。
    乙4の5は,乙4の1(陳述書)によれば,発売時期は明らかではない
ものの,乙4の5には,胸元にカシュクールデザインが施されたもの,裾がイレギ
ュラーヘムとなったものなどが掲載されている。しかし,原告商品⑧のようなシル
エットで,かつ,前合わせの胸元部分のカシュクールデザイン及び裾のイレギュラ
ーヘムがあるデザインのものは存在せず,原告商品⑧の特徴的な形態がありふれた
ものである旨認めるに足る証拠はない。
    以上によれば,原告商品⑧の形態は,同種の商品が通常有する形態であ
るとはいえない。 
カ 原告商品⑩の形態について
  被告は,原告商品⑩の花柄は一般的な柄であるとし,原告商品⑩のブラ
ジャー,ショーツはいずれも同種の商品が通常有する形態であるとし,それに沿う
証拠として,乙6の1,6の7を提出する。
    乙6の7は,乙6の1(陳述書)によれば,発売時期は明らかではない
ものの,乙6の7には,3本の編み込み式の紐の途中にリボンが付され,そこから
3本の別々の紐になっている構成の肩紐を有するブラジャーや,ピンクの花びら3
枚と緑色の葉からなる刺繍を付けたブラジャー又はショーツは存在せず,これら原
告商品⑩の特徴的な形態がありふれたものである旨認めるに足る証拠はない。
    以上によれば,原告商品⑩の形態は,同種の商品が通常有する形態であ
るとはいえない。 
キ 原告商品⑪の形態について
 被告は,原告商品⑪は婦人用カーディガンとしてごくありふれたもので
あり,同種の商品が通常有する形態であるとし,それに沿う証拠として,乙4の
1,4の6を提出する。
    乙4の6は,乙4の1(陳述書)によれば,発売時期は明らかではない
ものの,その中には,襟,首まわりにレースが施され,胸元で通しリボンを結ぶこ
とができるもの及び七分袖丈の袖口部分のフリル,裾部分のメロウ仕上げがあるも
のは存在せず,原告商品⑪の特徴的な形態がありふれたものである旨認めるに足る
証拠はない。
    以上によれば,原告商品⑪の形態は,同種の商品が通常有する形態であ
るとはいえない。 
ク 原告商品⑫の形態について
    被告は,原告商品⑫の形状は極めて一般的であり,スカートのマーメイ
ドライン,センターカットのイレギュラーヘム,裾のレース仕様も,現今のごくあ
りふれたものであり,同種の商品が通常有する形態であるとし,それに沿う証拠と
して,乙4の1,4の7を提出する。
    乙4の7は,乙4の1(陳述書)によれば,発売時期は明らかではない
ものの,その中には,キャミソール,スカートを総レースの2枚重ねとし,レース
には柄を点在して施し,スカートの全体形状をマーメイドラインとして裾をイレギ
ュラーヘムとしたものは存在せず,原告商品⑫のこれら特徴的な形態がありふれた
ものである旨認めるに足る証拠はない。
    以上によれば,原告商品⑫の形態は,同種の商品が通常有する形態であ
るとはいえない。 
 (2) 差止請求について
以上のとおり,被告商品のうち,被告商品①,②,④,⑥,⑧,⑩,⑪,
⑫については,いずれも原告商品①,②,④,⑥,⑧,⑩,⑪,⑫をそれぞれ模倣
したものであるから,被告がこれら商品を製造・譲渡する行為は不正競争行為に該
当するというべきである。
したがって,上記被告商品(被告商品⑩を除く。)の製造,販売等の差止
めを求める原告の請求は理由がある。ただし,本件全証拠によるも,被告が被告商
品を貸し渡した事実は認められないから,被告商品の貸渡しの差し止めを求める部
分については理由がない。
原告商品⑩については,原告が販売を開始した時から,既に3年が経過し
ているので,被告商品⑩の製造等の差止めを求める原告の請求は理由がない。
3 争点3(損害額はいくらか)について
原告の被った損害について検討する。
(1) 財産的損害
 ア 被告商品の販売金額,仕入金額(それぞれ争いがない)によれば,被告
商品①,②,④,⑥,⑧,⑩,⑪,⑫について,販売金額から仕入金額を控除した
額は,合計金855万5742円であると認められる(②及び⑥については,模倣
がされたのは組合せ商品の一つであるのに対し,前記各金額は組合せ商品の全体に
係る金額であるから,その2分の1を基礎とした。経費についても同様であ
る。)。
 イ 弁論の全趣旨及び本件に現れた諸般の事情を総合考慮すれば,被告の利
益を算定するに当たって控除すべき販売費及び一般管理費等の経費の割合は,売上
高(販売金額)の15%であるとするのが相当と認められるから,被告が本件不正
競争行為により得た利益は,下記の式のとおり,577万6625円であると認め
られる。
   18,527,450(被告商品①,②,④,⑥,⑧,⑩,⑪,⑫の販
売金額の合計)×0.15=2,779,117
   8,555,742-2,779,117=5,776,625
 ウ なお,被告は,原告商品のカタログ販売期間が過ぎた後に被告商品の販
売を開始したのであるから原告には損害が発生しないと主張する。しかし,カタロ
グに販売期間が記載されていたからといっても,そのような事実経緯が直ちに被告
の販売と原告の損害との間の相当因果関係を失わせるに足りる事情ということはで
きない。被告の主張は失当である。
(2) 弁護士費用
本件における一切の事情を考慮すると,被告の不正競争行為と相当因果関
係のある弁護士費用としては100万円が相当である。
(3) 損害額の合計
  上記認定の損害額を合計すると,被告が賠償すべき金額は,677万66
25円となる。
第4 結論
 以上のとおり,原告の本件請求は,主文掲記の限度で理由がある。
東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官    飯  村  敏  明
裁判官 今  井  弘  晃
裁判官 大  寄  麻  代
(別紙)
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