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平成13(行ケ)514行政訴訟 特許権

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裁判所 東京高等裁判所
裁判年月日 平成14年11月26日
事件種別 民事
法令 特許権
特許法29条2項1回
民事訴訟法61条1回
キーワード 刊行物48回
審決39回
無効4回
特許権1回
無効審判1回
主文
事件の概要

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判決文

平成13年(行ケ)第514号 審決取消請求事件

平成14年11月26日口頭弁論終結

判           決

原      告     A

訴訟代理人弁護士     関   根   志   世

訴訟代理人弁理士     牧       哲   郎

同            吉   田   勝   廣

同            近   藤   利 英 子

被      告     興研株式会社

訴訟代理人弁護士     河   合   弘   之

同            清   水   三 七 雄

訴訟代理人弁理士     渡   部       剛

同            竹   本   松   司

主          文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は,原告の負担とする。

事実及び理由

第1 当事者の求めた裁判

1 原告特許庁が平成9年審判第3320号事件について平成13年10月3日にした審決を取り消す。訴訟費用は被告の負担とする。2 被告主文と同旨

第2 当事者間に争いのない事実

1 特許庁における手続の経緯原告は,発明の名称を「複合プラスチック成形品の製造方法」とする特許第号(昭和60年3月19日出願。平成6年8月8日登録。以下「本件特許」という。)の特許権者である。被告は,平成9年3月3日,本件特許を無効にすることについて審判を請求した。特許庁は,この請求を平成9年審判第33号事件として審理した。原告は,この審理の過程で,本件発明に係る明細書の訂正(以下「本件訂正」という。)を請求した。特許庁は,審理の結果,平成11年7月15日に「訂正を認める。本件審判の請求は成り立たない。」との審決をした(以下「前審決」という。)。被告は,同年9月6日,同審決の取消しを求める訴訟を提起し(東京高等裁判所平成11年(行ケ)第281号),東京高等裁判所は,平成12年9月7日,同審決を取り消すとの判決をし,同判決は確定した(以下「確定判決」という。)。このため,特許庁は,前記無効審判請求について,改めて審理し,その結果,平成13年10月3日に「特許第1861173号発明の特許を無効とする。審判費用は,被請求人の負担とする。」との審決をし,同月1日にその謄本を原告に送達した。2 特許請求の範囲請求項1

(1) 本件訂正前「ポリプロピレン樹脂を金型内に溶融射出成形し,その固化後,スチレンポリマーとエチレンポリマーとブチレンポリマーとのブロックコポリマーを溶融射出して,ポリプロピレン部材の表面に,スチレンポリマーとエチレンポリマーとブチレンポリマーとのブロックコポリマー部材を立体的且つ一体的に融着成形させることを特徴とする複合プラスチック成形品の製造方法」(以下,この発明を「本件発明」という。)

(2) 本件訂正後「ポリプロピレン樹脂を金型内に溶融射出成形し,その固化後,スチレンポリマーとエチレンポリマーとブチレンポリマーとのブロックコポリマーを溶融射出して,ポリプロピレン部材の表面に,何らの接着剤を使用しないで,スチレンポリマーとエチレンポリマーとブチレンポリマーとのブロックコポリマー部材を立体的且つ一体的に融着成形させることを特徴とする複合プラスチック成形品の製造方法(但し融着面がオス-メス型の凹凸形状または入り組んだ接合面となっているものを除く。)」(以下,この発明を「訂正発明」という。)3 審決の理由別紙審決書の写しのとおりである。要するに,①訂正発明は,特開昭53-号公報(審判甲第7号証。本訴甲第5号証。以下「甲第5号証刊行物」といい,同刊行物に記載された発明を「甲第5号証刊行物発明」という。),米国特許第4086388号明細書(審判甲第8号証。本訴第6号証。以下「甲第6号証刊行物」という。),「プラスチックス」第34巻第8号29頁ないし35頁(1987年発行)(審判甲第2号証。本訴甲第4号証。以下「甲第4号証刊行物」という。同刊行物は,甲第5,第6号証刊行物に記載されたスチレン系熱可塑性エラストマーであるクレイトンG-2705が,訂正発明及び本件発明の「SEBS」に当たることを示すものである。),特公昭58-40488号公報(審判甲第13号証)に記載された発明から容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項に該当し,特許出願の際独立して特許を受けることができるものということはできず,本件訂正は認められない,②本件発明は,甲第5号証刊行物,甲第4号証刊行物,甲第6号証刊行物に記載された発明から容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項に該当し,同法123条1項2号により無効とされるべきである,としたものである。

第3 原告主張の審決取消事由の要点

審決の理由中,「Ⅰ.手続の経緯」,「Ⅱ.訂正の可否に対する判断」,「Ⅲ.請求人の主張」,「Ⅳ.被請求人の主張」(審決書1頁下から4行~9頁3行)は認める。「Ⅴ.当審の判断」(審決書9頁35行~12頁3行)のうち,頁35行ないし11頁34行は認め,その余は否認する。「Ⅵ.むすび」は争う。審決は,本件発明と甲第5号証刊行物発明との相違点の認定を誤り,その結果,本来の相違点についての判断を怠ったものであり,この誤りが結論に影響を及ぼすことは明らかであるから,違法として取り消されるべきである。審決は,甲第5号証刊行物に,射出成形により溶融したSEBS(本件発明における「スチレンポリマーとエチレンポリマーとブチレンポリマーとのブロックコポリマー」)がポリプロピレン成形体に融着して固定することは明記されていないものの,「甲第7号証(判決注・本訴甲第5号証)及び甲第8号証(判決注・本訴甲第6号証)に接した当業者は,甲第7号証(判決注・甲第8号証(本訴甲第6号証)の誤記と認める。)から,ポリプロピレンとSEBSが強力に融着することことを認識し,甲第7号証(判決注・本訴甲第5号証)記載の発明のSEBSも,溶融して射出成形することによって,ポリプロピレン成形体に融着して固定することを容易に想到することができたものと認められる。」(審決書11頁35行~3行)と判断した。しかしながら,次に述べるとおり,甲第5号証刊行物における相互連結部のポリプロピレン成形体とピストンのSEBSとは融着していないことが明らかであって,審決のいうように,融着しているかどうかが明らかでないというものではないから,審決は相違点の認定を誤っている。甲第5号証刊行物には次の記載がある。ア 「本明細書で使用される用語「ピストン相互連結部」は,プランジャの位置に対してあらゆる方向においてピストンの運動を固定し且つピストンヘッドおよび/或いは相互連結手段の破壊によつてのみピストンヘツドとの係合から取り外し可能であるようにピストンと恒久的に係止される如き方法においてプランジャのピストンヘツドの本体と相互に係合される構造を意味する」(甲第5号証2頁右上欄行~18行)イ 「ピストン28を相互連結部14から取り外す唯一つの方法は相互連結部14および/或いはピストン28の物理的な破壊によるしかない」(同3頁左上欄行~17行)ウ 「図示されているように,間隙24(第3図参照)には,ピストン28の本体が侵入され且つ充填され,この結果バー18a,18b,18c,18dおよび支持リング20,22がピストン28の本体にからみ合わされ且つ包囲される」(同3頁左上欄5~10行)エ 甲第5号証添付の図面には,断面が十文字形の間隙24を隔てて4本のバー18a,18b,18c,18dが配され,これらのバーが円形の支持リング,22により一体的に連結したピストン相互連結部が記載されている。これらの記載からみて,甲第5号証刊行物発明においては,ピストン相互連結部とピストンとは複雑な形状で係合しているため物理的に破壊しない限り取り外せないものである。このことは,逆に物理的に破壊しさえすれば取り外せるということをも意味する。融着していたら物理的に破壊しても取り外せないから,甲第5号証刊行物発明においては,ピストンはあくまでピストン相互連結部に係合しているのであって融着はしていないというべきである。このように甲第5号証刊行物発明におけるピストン相互連結部のポリプロピレン成形体とピストンのSEBSは融着していないのであって,融着しているかどうかが明らかでないというものではない。融着していないことが明らかな甲第5号証刊行物発明から,融着している本件発明が想到できるというのは誤りである。審決は,SEBSがポリプロピレン成形体に融着して固定することが甲第5号証に明記されていないとした上,明記されていない事項である上記事項は他の証拠(甲第6号証)から容易に想到できるとしている。しかし,甲第5号証刊行物発明においては,SEBSとポリプロピレン成形体とは融着していないものとされており,融着の可能性は否定されているのであるから,このような同発明を出発点にして,なおかつ融着しているものが想到できる,というのは誤りである。甲第5号証刊行物と甲第6号証刊行物の技術分野の親近性が非常に高いとしても,融着していないものから融着しているものを想到するということ自体が誤っているのであるから,これに反する審決は誤りというほかはない。

第4 被告の反論の要点

審決の認定判断は,正当であり,審決を取り消すべき理由はない。前審決に対する審決取消訴訟(平成11年(行ケ)第281号)の確定判決(乙第1号証)は,「(3)引用例1及び引用例2に接した当業者は,引用例2から,ポリプロピレンとSEBSが強力に融着することを認識し,引用例1記載の発明のSEBSも,溶融して射出成形することによって,ポリプロピレン成形体に融着して固定することを容易に想到することができたものと認められる。この点に関して,被告は,引用例2記載の発明においては,非常に薄いポリプロピレン層26を溶融して,SEBSからなるボタン21をポリエステルフィルム24に接着させており,ポリプロピレン樹脂は,接着剤として使用されているのであって,それは,引用例1記載の発明における相互連結部14のような立体的な部材としての使用とは,全く異なる使用の態様であると主張する。しかし,引用例2に,ポリプロピレンが,溶融したSEBSに接することによって溶融し,冷却時にSEBSと強力に融着することが記載されていることは前認定のとおりである。そうである以上,引用例2に接した当業者は,引用例1記載の発明のポリプロピレン成形体も,溶融して射出されたSEBSに接することによって,その接している部分が溶融し,冷却時にSEBSと強力に融着して固定することを容易に想到することができたことは明らかであって,このことは,引用例2記載の発明におけるポリプロピレンの使用の態様が立体的な部材であるか否かにかかわるものではない。また,被告は,引用例2記載の発明においては,ポリプロピレン層26も,SEBS21も,いずれも射出成形により形成されたものではないと主張する。しかし,引用例1記載の発明と引用例3(判決注・引用例2の誤記と認める。)記載の発明が,いずれもプラスチックの成形加工に関する技術であって,技術分野の親近性が非常に高いものである以上,上記被告主張の事実は,当業者が,引用例2から認識される,ポリプロピレンとSEBSが強力に融着するという技術事項を,引用例1記載の発明に適用することの妨げとなるものではない。」(乙第号証第35頁第1行~36頁第17行)と判断した。同判決にいう引用例1は本件訴訟における甲第5号証刊行物に,引用例2は本件訴訟における甲第6号証刊行物に当たり,かつ,同判決は確定している。このように,審決11頁35行ないし38行に記載された上記判断は,確定判決において実質的に判断された内容と合致するものであるから,審決の判断に誤りはないものというべきである。

第5 当裁判所の判断

 1 原告は,甲第5号証刊行物発明における相互連結部のポリプロピレン成形体とピストンのSEBSとは融着していないことが明らかであって,審決のいうように,融着しているかどうかが明らかでないというものではないから,審決は相違点の認定を誤っている,と主張する。しかしながら,審決は,本件発明と甲第5号証刊行物発明との相違点として,本件発明においては,射出成形により溶融した「SEBS]がポリプロピレン成形体に融着するとされているのに対し,甲第5号証刊行物にSEBSがポリプロピレン成形体に融着して固定されていることが明記されていないことを挙げた上,相違点に対する判断に当たり,事実上,甲第5号証刊行物発明においてはSEBSとポリプロピレン成形体とが融着していないものと仮定して,そのことを前提に認定判断をしたものであることは,審決の説示自体で明らかである。甲第5号証刊行物発明においてはSEBSとポリプロピレン成形体が融着していない,との

(原告の主張)

は,何ら審決の相違点の認定の誤りを指摘したことにはならず,主張自体失当であるというべきである。2

(原告の主張)

は,結局,SEBSとポリプロピレン成形体とが融着していない甲第5号証刊行物発明に甲第6号証刊行物から認識されるポリプロピレンとSEBSとが強力に融着するという技術事項を適用することは困難である,との主張に帰するものである。しかしながら,甲第5,第6号証及び弁論の全趣旨によれば,甲第5号証刊行物発明は,SEBSを溶融して射出成形することによって,固化しているポリプロピレン成形体と一体化させることを内容とする発明であること,甲第6号証刊行物発明は,SEBSを溶融してスクリュー型押出機で押し出し,この溶融したSEBSに配向ポリエステル重合体層とポリプロピレン層からなる二層構成のフイルムのポリプロピレン層が接することによって,ポリプロピレンが溶融し,冷却時にポリプロピレンとSEBSとが強力に融着することを内容とする発明であること,が認められる。このように,甲第5号証刊行物発明と甲第6号証刊行物発明とは,いずれもプラスチックの成形加工に関する技術を内容とするものであって,技術分野の親近性が非常に高いものであるから,甲第5号証刊行物発明において,SEBSとポリプロピレン成形体とが融着していないとしても,そのことは,甲第5号証刊行物に甲第6号証刊行物記載の技術事項を適用することの妨げとなるものではない,というべきである。原告は,甲第5号証刊行物中の「本明細書で使用される用語「ピストン相互連結部」は,プランジャの位置に対してあらゆる方向においてピストンの運動を固定し且つピストンヘッドおよび/或いは相互連結手段の破壊によつてのみピストンヘッドとの係合から取り外し可能であるようにピストンと恒久的に係止される如き方法においてプランジャのピストンヘッドの本体と相互に係合される構造を意味する。」(甲第5号証2頁右上欄11行~18行),「図示されているように,間隙(第3図参照)には,ピストン28の本体が侵入され且つ充填され,この結果バー18a,18b,18c,18dおよび支持リング20,22がピストン28の本体にからみ合わされ且つ包囲される。このようにして,ピストン28は,相互連結部14上で回転することが不可能であるか或いはいずれの方向においても相互連結部14の端部から引き外せないような方法で相互連結部14に固定される。ピストン28を相互連結部14から取り外す唯一つの方法は相互連結部14および/或いはピストン28の物理的な破壊によるしかない。」(甲第5号証3頁左上欄5行~17行)等の記載を挙げ,これらの記載を根拠に,融着していたら物理的に破壊しても取り外せないのであるから,物理的に破壊しさえすれば取り外せるということは,ピストンはあくまでピストン相互連結部に係合しているのであって,融着していないことは明らかであり,甲第5号証刊行物においては,融着の可能性は否定されている,と主張する。しかしながら,仮に,甲第5号証刊行物発明において採用されている結合方法自体は係合であることが明らかであるとしても,その係合を,甲第6号証刊行物から認識されるポリプロピレンとSEBSとが強力に融着するという技術的事項を適用して,融着に変えることを困難にする事情は,甲第5号証刊行物を中心に本件全証拠を検討しても見いだすことができない。

(原告の主張)

は採用することができない。

3 以上のとおりであるから,原告主張の審決取消事由は理由がなく,その他審

決の認定判断にはこれを取り消すべき瑕疵は見当たらない。

4 確定判決は,訂正発明と甲第5号証刊行物発明との相違点(甲第5号証刊行

物には,射出成形により溶融したSEBSがポリプロピレン成形体に融着して固定されることが明記されていない点)について,甲第6号証刊行物発明を甲第5号証刊行物発明に適用することによって,訂正発明に容易に想到することができる,と判断し,この判断に基づいて前審決を取り消している。本件発明と甲第5号証刊行物発明との相違点は,訂正発明と甲第5号証刊行物との上記相違点と同じであるから,この相違点については,前審決に対する確定判決の拘束力(行政事件訴訟法33条)が及ぶと解する余地がある。仮に確定判決の拘束力が及ぶとした場合には,審決は,改めて上記相違点について検討を加えるまでもなく,拘束力を根拠に,確定判決の趣旨に従い,結論を導くべきであったということになり,審決が上記相違点について,改めて検討を加えた上で判断をしたのは,判断の方法として誤りということになる。しかしながら,審決は,検討の結果,結局のところ,確定判決と同一の判断をしているのであるから,上記の誤りは,審決の結論に影響を及ぼさないことが明らかである。

第6 よって,原告の請求を棄却することとし,訴訟費用の負担について,行政事

件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。   東京高等裁判所第6民事部       裁判長裁判官     山   下   和   明          裁判官    阿   部   正   幸裁判官    高   瀬   順   久

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