平成14(行ケ)104行政訴訟 特許権
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裁判所 |
東京高等裁判所
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裁判年月日 |
平成14年11月20日 |
事件種別 |
民事 |
法令 |
特許権
特許法29条2項1回
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キーワード |
刊行物73回 審決28回 実施2回
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主文 |
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事件の概要 |
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判決文
平成14年(行ケ)第104号 審決取消請求事件(平成14年11月6日口頭弁
論終結)
判 決
原 告 メッツォ・ミネラルズ・ジャパン株式会社
(旧商号) ノードバーグ日本株式会社
訴訟代理人弁理士 須 藤 阿佐子
同 藤 文 夫
被 告 特許庁長官 太 田 信一郎
指定代理人 中 田 誠
同 安 藤 勝 治
同 大 野 克 人
同 宮 川 久 成
主 文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
特許庁が不服2001-15246号事件について平成14年1月21日に
した審決を取り消す。
第2 当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯
原告は,下記特許出願の特許を受ける権利の承継人及び拒絶査定に対する不
服審判請求人であり,その手続の経緯は次のとおりである。
平成 4年 7月21日 宇部興産株式会社による特許出願(特願平4-23
5067号,発明の名称「トンネル内のずり搬送方法」,以下その発明を「本願発
明」という。)
平成 7年 7月24日 宇部興産株式会社から原告(当時の商号・ノードバ
ーグ日本株式会社)への特許を受ける権利の譲渡に伴う出願名義人変更届提出
平成13年 7月31日 拒絶査定
同 年 8月29日 不服審判請求(不服2001-15246号)
平成14年 1月21日 請求不成立審決
同 年 1月30日 原告への審決謄本送達
2 本願発明の要旨
トンネル掘削工事の際の発破作業において生じた岩石等のずりをトンネル外
へ搬送する方法において,切羽で生じたずりをショベルローダで移動式クラッシャ
へ供給して所望のサイズまで破砕した後,毎日トンネル掘進距離に応じて伸張する
延伸ベルトコンベヤを経由してトンネル外へ搬送するトンネル内のずり搬送方法。
3 審決の理由
審決は,別添審決謄本写し記載のとおり,本願発明は,特公平3-3068
0号公報(本訴甲3,以下「刊行物1」という。),実願昭62-192668号
(実開平1-96419号)のマイクロフィルム(本訴甲4,以下「刊行物2」と
いう。)及び特開昭52-154167号公報(本訴甲5,以下「刊行物3」とい
う。)に記載された各発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたも
のであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないとし
た。
第3 原告主張の審決取消事由
審決は,本願発明と刊行物1記載の発明との一致点及び相違点の認定を誤り
(取消事由1),審決の認定に係る相違点についての判断を誤り(取消事由2),
かつ,本願発明の効果を看過した(取消事由3)結果,本願発明が,刊行物1~3
記載の各発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとの誤った結論に
至ったものであるから,違法として取り消されるべきである。
1 取消事由1(一致点及び相違点の認定の誤り)
(1) 審決は、刊行物1記載の発明の「土砂」,「トラクタショベル1」及び
「土砂排出方法」が,それぞれ本願発明の「岩石等のずり」,「ショベルローダ」
及び「トンネル内のずり搬送方法」に相当するとの認定に基づいて,両者の一致点
として,「トンネル掘削工事の際の発破作業において生じた岩石等のずりをトンネ
ル外へ搬送するトンネル内のずり搬送方法」を,相違点として,「本願発明では,
切羽で生じたずりをショベルローダで移動式クラッシャへ供給して所望のサイズま
で破砕した後,毎日トンネル掘進距離に応じて伸張する延伸ベルトコンベヤを経由
してトンネル外へ搬送するのに対し,刊行物1に記載の発明では,切羽で生じたず
りをショベルローダによりダンプに積載しトンネル外へ搬送する点」を認定する
(審決謄本3頁「3.対比・判断」の項)が,誤りである。
(2) トンネル工事における従来技術においては,大量に発生するずりを効率よ
く坑外へ排出するためには大型のダンプトラックを頻繁に往復させる必要があり,
その走行により人身事故の多発のおそれがあるほか,排気ガスや粉塵によるトンネ
ル内の環境を劣悪なものにするという問題点があり,他方,発破によって生じたず
りの中には巨大な岩石も含まれており,コンベヤによる搬出は考慮外であった。そ
こで,本願発明は、移動式クラッシャには機動性があり、間欠的に供給される大寸
法の岩石を含むずりを一定以下の寸法に破砕して連続的に排出する機能を有するこ
と、延伸ベルトコンベヤは容易に伸縮できることに着目し、それらを有機的に結合
して、上記問題点を解決したものである。
このように,本願発明は,「岩石を含むずり」を対象として,「クラッシ
ャ」による「破砕」と「コンベヤ」による「搬送」を結合させたものである。これ
に対し,刊行物1記載の発明は「発破後のトンネルの切羽付近に飛散堆積した土
砂」であり,この土砂はダンプで「搬送」するだけで足りる。したがって,前者の
「岩石を含むずり」と後者の「土砂」は一致しない。さらに,審決の上記認定は,
本願発明の破砕手段である「クラッシャ」と搬送手段である「コンベヤ」を,刊行
物1記載の発明の「ダンプ」に対応させることで,「搬送」工程だけに着目して一
致点及び相違点を認定するにとどまり,「破砕」と「搬送」の結合が「搬送」と相
違する点を看過している。
2 取消事由2(相違点についての判断の誤り)
(1) 審決は,本願発明と刊行物1記載の発明との相違点を上記のとおり認定し
た上,当該相違点について,「刊行物2及び3に記載された技術事項を,刊行物1
に記載の発明に適用するにあたっての特段の阻害要因も見当たらないことから,刊
行物1に記載の発明において,ダンプによる搬送にかえて,刊行物2に記載の延伸
ベルトコンベヤ,及び刊行物3に記載の移動式クラッシャを適用して相違点に係る
本願発明の構成とすることは当業者が容易になし得ることである」(審決謄本3頁
末行~4頁第1段落)と判断するが,誤りである。
(2) まず,刊行物1(甲3)記載の発明は,従来技術と同様,搬送用車輌を使
用するという考えの域を出ないものであり,本願発明の課題とする問題点を解決す
るものではない。
次に,刊行物2(甲4)には,「地中を掘進して得られたズリ、例えば石
炭、鉱石、土砂等を坑外へ搬出するズリ搬出用コンベア設備」(明細書1頁「産業
上の利用分野」欄)が記載されており,そのコンベア設備として延伸コンベアが使
用されているが,搬送対象は「トンネル掘削機」で掘削されたずりであり、そのよ
うなずりの大きさは限られるので、そのままコンベヤによる搬送が可能である。こ
れに対し,本願発明は,発破工法によるずりの搬出に関するものであり,切羽近傍
には発破作業時に破砕された岩石が飛散するため,機材を配設することができな
い。したがって,刊行物2記載の発明のコンベアを刊行物1記載の発明に適用する
ことはできない。
また、刊行物3(甲5)記載の移動式破砕設備は,解放された岩石や土砂
の採掘場で用いるものであり,トンネル掘削に用いるものではない。しかも,同記
載のベルトコンベアは,破砕した岩石を先端から排出して,その場に堆積させる
か,ダンプトラック等の搬送車輌に積み込むためのものであり,移動式破砕設備の
一部をなすもの(本願発明の実施例でいえば,メインコンベヤ240)にすぎな
い。これに対し,本願発明は「ずりを所望サイズに破砕した後・・・延伸コンベヤ
を経由してトンネル外へ搬送する」ものであり,このような延伸コンベヤが刊行物
3に記載されているとはいえない。
そして,刊行物1には,コンベア設備を適用すべき課題が何ら示されてお
らず,刊行物2,3にも,その構成を刊行物1記載の発明に適用できるとの記載及
び示唆もない。すなわち,刊行物1~3のいずれにも本願発明の課題が存在しない
ので,刊行物1記載の発明の「ダンプ」に代えて刊行物2記載の「コンベア」及び
刊行物3記載の「破砕装置」を適用することは容易とはいえない。
3 取消事由3(本願発明の効果の看過)
審決は,本願発明によってもたらされる効果は,刊行物1~3記載の各発明
から当業者が当然に予測できる程度のものであって顕著なものとはいえない旨判断
する(審決謄本4頁第2段落)。しかし,この判断は,構成のみの予測可能を前提
とするものであり,発明の目的を勘案すると,構成の組合せが予測できたとする判
断が誤っており,したがって,これを前提とする上記効果についての判断も誤りと
いうべきである。
第4 被告の反論
1 取消事由1(一致点及び相違点の認定の誤り)について
原告は,審決の認定は,本願発明の「クラッシャ」と「コンベヤ」を,刊行
物1記載の発明の「ダンプ」に対応させるものである旨主張するが,審決は、あく
まで切羽で生じたずりをトンネル外へ搬送するまでの工程において、前記相違点と
して記載した相違があるとの認定を行ったにすぎず、本願発明の「クラッシャ」と
「コンベヤ」を刊行物1に記載された発明の「ダンプ」に対応させたものではな
い。
2 取消事由2(相違点についての判断の誤り)について
(1) 原告は,刊行物1記載の発明は搬送用車輌を使用するという考えの域を出
ず,本願発明の課題とする問題点を解決するものではない旨主張するが,発破工法
が大部分である山岳トンネルの掘削工事において,ずり搬出手段としてベルトコン
ベヤを使用することは,本件出願前において周知である(昭和55年技報堂出版発
行の「新版 土木工学ハンドブック 中巻」1333頁,1335頁,1340頁
〔乙1〕)。
(2) 原告は,切羽近傍には発破作業時に破砕された岩石が飛散し,機材を配設
することができないため,刊行物2記載の発明のコンベアを刊行物1記載の発明に
適用することはできない旨主張する。しかし,刊行物1記載の発明と刊行物2記載
の延伸コンベアとは、ともにトンネル掘削工事の際に生じたずりの搬送という共通
の技術分野に属するものであり、また、上記1のとおり,刊行物1に記載の発明の
ダンプに代えてベルトコンベヤを含む他の搬送手段の適用を検討することは当業者
が普通にし得ることといえるから、刊行物2に記載された延伸コンベヤを刊行物1
に記載された発明に適用することは当業者が容易に想到し得ることである。そし
て、発破作業によりトンネル掘削を行えば、ベルトコンベヤでは搬送できない大き
な岩石がずりに含まれることは当業者にとって自明の事項であるから、刊行物1記
載の発明のダンプによる搬送に代えて刊行物2に記載の延伸ベルトコンベヤを適用
するに当たって,何らかの岩石の破砕手段を併用することは当業者が当然に考慮す
べき事項である。
(3) 原告は,刊行物3記載の発明と本願発明とを対比して,前者のベルトコン
ベアと後者の延伸コンベヤの違いを主張するが,審決は,本願発明と刊行物3記載
の発明の対比をしているのではなく,刊行物1記載の発明に刊行物2記載の発明の
延伸ベルトコンベアを適用するに当たって必要となる岩石の破砕手段として,移動
式クラッシャが公知であることを示すために刊行物3を引用したものである。原告
の上記主張は理由がない。
(4) 原告は,刊行物1~3のいずれにも本願発明の課題が存在しない旨主張す
るが,本願発明の課題は,トンネル掘削工事において自明又は周知のものであり,
かつ,刊行物1~3記載の各発明の組合せに係る特段の阻害要因もないから,この
点の審決の判断に誤りはない。
3 取消事由3(本願発明の効果の看過)について
本願発明の効果は,ダンプを使用せずに,ずりをコンベヤ搬送することによ
り当然に生ずる効果にすぎず,原告の主張は理由がない。
第5 当裁判所の判断
1 取消事由1(一致点及び相違点の認定の誤り)について
(1) 原告は,本願発明の「岩石等のずり」と刊行物1記載の発明の「土砂」と
は一致しない旨主張する。しかし,刊行物1(甲3)の「発明の詳細な説明」欄の
冒頭に「本発明は,発破工法によるトンネル掘削工事における土砂排出方法に関す
るものである。従来,発破工法において,発破後のトンネルの切羽付近に飛散堆積
した土砂は・・・トラクタショベル1により,ダンプ2に積載し・・・トンネル外
へ排出されていた」と記載されているところ,これは,本件明細書(甲2)の「ず
り」の坑外への搬送方法に係る従来技術の記載(段落【0002】)とほぼ同じ内
容であり,しかも,刊行物1において,「土砂」を「岩石」と区別して取り扱って
いることをうかがわせる記載もない。そうすると,前者の「土砂」と後者の「ず
り」と異なる意義を持つものと解することはできず,刊行物1記載の発明の「土
砂」が本願発明の「岩石等のずり」に相当するとした審決の認定に誤りはないとい
うべきである。
(2) また,原告は,本願発明と刊行物1記載の発明との対比判断において,審
決は,本願発明の破砕手段である「クラッシャ」と搬送手段である「コンベヤ」
を,刊行物1記載の発明の「ダンプ」に対応させることで,「搬送」工程だけに着
目して一致点及び相違点を認定するにとどまり,「破砕」と「搬送」の結合が「搬
送」と相違する点を看過している旨主張する。しかし,審決が両者の相違点とし
て,本願発明の「切羽で生じたずりをショベルローダで移動式クラッシャへ供給し
て所望のサイズまで破砕した後」との構成を明示的に認定しているところであるか
ら,原告の主張するような「破砕」工程の有無を看過した誤りがあるとはいえな
い。その他,原告の主張する趣旨は,相違点についての判断の誤りとして取消事由
2で述べるところと重複するので,下記2で併せて検討する。
2 取消事由2(相違点についての判断の誤り)について
(1) まず,刊行物1記載の発明に,刊行物2記載の発明の「ズリ搬出用コンベ
ア設備」を適用することの容易性ないし困難性について検討する。
原告は,刊行物2記載の発明の搬送対象は「トンネル掘削機」で掘削され
たずりである旨主張する。確かに,刊行物2(甲4)の実施例に関する記載及び図
示は,トンネル掘削機を用いた掘進を前提とする内容となっているが,明細書1頁
の「産業上の利用分野」欄には「本考案は,地中を掘進して得られたズリ,例えば
石炭,鉱石,土砂等を坑外へ排出するズリ搬出用コンベア設備に関するものであ
る」と記載されており,実用新案登録請求の範囲の記載においても,当該コンベア
設備が,トンネル掘削機で掘削されたズリに限定される旨の記載はない。加えて,
前掲乙1(「新版 土木工学ハンドブック 中巻」)の第3章「山岳トンネル工法」
1340頁右欄b項には,「ずり運搬車としてはレール方式のずりトロとダンプト
ラックが主なものであるが,このほか特殊なものとしてベルトコンベヤ・・・など
もあり,トンネル断面の大きさ,ずり積機の能力などを考え施工計画に適合したも
のとしなければならない」との記載があり,これによれば,トンネルの掘削に伴い
排出されるずりの搬送手段としてのベルトコンベヤの使用は,本件出願前から当業
者の選択し得る手段として周知であったことが認められる。
そして,刊行物1,2記載の各発明が,ともにトンネル掘削工事に伴うず
りの排出方法という共通の技術分野に属するものであることを併せ考えれば,刊行
物1記載の発明に,刊行物2記載の発明の「ズリ搬出用コンベア設備」を適用する
ことに格別の困難性はないというべきである。
なお,原告は,発破工法において,切羽近傍には発破作業時に破砕された
岩石が飛散するため,機材を配設することができないとも主張するが,コンベア設
備の適用に当たり,発破の現場から必要な距離を保つという程度のことは,当業者
の当然に考慮する自明の事項であって,上記組合せを何ら阻害するものとはいえな
い。
(2) 次に,刊行物1記載の発明に,刊行物2記載の発明の「ズリ搬出用コンベ
ア設備」を適用するに当たり,刊行物3記載の「移動式破砕設備」による破砕工程
を併用することの容易性ないし困難性について検討する。
原告は,刊行物3記載の移動式破砕設備は,解放された岩石や土砂の採掘
場で用いるものであり,トンネル掘削に用いるものではない旨主張する。確かに,
刊行物3(甲5)には,その移動式破砕設備をトンネル掘削工事に用いる旨の記載
はないものの,掘削された岩石や土砂の大塊を搬出するに先だって,これらを所望
のサイズまで破砕するための設備であることは明らかであって,刊行物2記載のズ
リ搬出用コンベア設備との組合せを阻害する特段の要因は見当たらない。かえっ
て,昭和43年平凡社発行の「世界大百科事典9」(甲11)246頁右欄の「コ
ンベヤ」の項には,「各種のコンベヤがそれぞれ単独で使用されることもあるが,
種々の形式を組み合わせたり,あるいは他の機械装置(たとえばクレーン等の荷役
機械,粉砕機,ふるい等)と組み合わせ一つの荷役運搬設備として使用される場合
が多い」(下から15行目以下)との記載があり,これによれば,コンベヤと破砕
機(粉砕機)を適宜に組み合わせて使用すること自体は本件出願前から当業者に周
知な技術事項にすぎないことが認められるところである。
そうすると,刊行物1記載の発明に,刊行物2記載の発明の「ズリ搬出用
コンベア設備」を適用するに当たり,刊行物3記載の「移動式破砕設備」による破
砕工程を併用することは当業者の容易に想到し得たことというべきである。
(3) 原告は,本願発明は,移動式クラッシャと延伸コンベヤの有機的結合によ
りトンネル内の作業環境の悪化等の課題を解決したものであることを強調するとと
もに,刊行物1~3のいずれにも本願発明の課題が存在しない旨主張するが,本願
発明の課題(前記第3の1(2))は,いずれも前掲乙1(「新版 土木工学ハンドブ
ック 中巻」の1348頁「3.5.2 換気」の項,1349頁「3.5.4 事故
防止」の項)に記載されている自明又は周知のものにすぎないというべきであり,
課題という点に着目したとしても,これらの構成の組合せに格別の困難性は見いだ
せないというべきである。なお,原告は,刊行物3には本願発明の延伸コンベヤに
相当するものが記載されていない旨主張する点については,審決が刊行物3を引用
している趣旨が,移動式クラッシャによる破砕工程に係る構成を開示するものとし
てであることを看過しあるいは正解しない議論であって,何ら審決の判断の誤りを
基礎付けるものとはいえない。
(4) したがって,原告の取消事由2の主張は理由がない。
3 取消事由3(本願発明の効果の看過)について
この点の原告の主張は,構成の組合せが予測できたとする審決の判断の誤り
を前提とするものであるところ,当該前提において理由がないことは上記2のとお
りである。なお,本願発明の効果とされるところ(本件明細書〔甲2〕段落【00
10】)は,ずり搬送手段としてダンプトラックに代えてコンベヤを使用すること
によって当然に奏されるものであって,これが当業者の予測可能なものにすぎない
ことは明らかである。
4 以上のとおり,原告主張の取消事由は理由がなく,他に審決を取り消すべき
瑕疵は見当たらない。
よって,原告の請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決
する。
東京高等裁判所第13民事部
裁判長裁判官 篠 原 勝 美
裁判官 長 沢 幸 男
裁判官 宮 坂 昌 利
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