平成14(行コ)101行政訴訟 特許権
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裁判所 |
東京高等裁判所
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裁判年月日 |
平成14年11月7日 |
事件種別 |
民事 |
法令 |
特許権
特許法42条1項7回 特許法39条5項2回 特許法42条2項1回 特許法41条1回
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キーワード |
優先権11回
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主文 |
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事件の概要 |
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判決文
平成14年(行コ)第101号 出願審査請求却下処分取消請求控訴事件(平成1
4年9月10日口頭弁論終結。原審・東京地方裁判所平成13年(行ウ)第274
号)
判 決
控訴人(原告) 日本信号株式会社
訴訟代理人弁護士 日野和昌、大井暁、補佐人弁理士 丹羽宏之、野口忠夫
被控訴人(被告) 特許庁長官 太田信一郎
指定代理人 松下貴彦、志村陽子、佐藤一行、真鍋伸行
主 文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1 控訴人の求めた裁判
「原判決を取り消す。被控訴人が控訴人に対し平成11年9月9日付けでした出
願審査請求却下処分を取り消す。」との判決。
第2 事案の概要
本訴は、本件特許出願について控訴人がした出願審査の請求(原判決では「本件
請求」と表記しているが、本判決では「本件出願審査請求」と表記する。)の却下
処分(本件却下処分)の取消しを求めるものである。本件特許出願については、本
件特許出願などを優先権主張(国内優先権主張)の基礎とするPCT条約に基づく
国際出願(本件国際出願)があり、そこにおいて、日本国も指定国とされていた。
被控訴人は、特許法42条1項本文の規定に基づき、本件特許出願の日である平成
7年6月5日から1年3月後の平成8年9月5日の経過をもって、先の出願たる本
件特許出願は取り下げられたものとみなされているから、平成11年1月26日に
した本件出願審査請求は本件特許出願の取下げ後のものであるとして、本件却下処
分をしたものである。
控訴人は、平成9年2月5日、本件国際出願における日本国の指定を取り下げて
いた。控訴人は、PCT条約24条(1)は、国際出願における指定国の指定の取下げ
について、当該指定国における国内出願の取下げの効果と「同一の効果をもって消
滅する」と規定しており、国内出願の取下げとみなされるとは規定していないこと
を根拠に、本件国際出願において日本国の指定の取下げがされた結果、当初から日
本国は指定国でなかったことになり、日本国については特許法41条の優先権主張
を伴う出願をしていないものと取り扱われるから、同法42条1項本文を適用する
基礎を欠く、と主張している。
当事者双方がそれぞれの主張の理由とするところは、原判決事実及び理由の「第
3 争点及びこれに対する当事者の主張」に示されているとおりである。控訴人が
当審において主張の理由を補充した点については、これを引用しつつ次項において
補足して判断する。
第3 当裁判所の判断
当裁判所も、本件却下処分が理由としたとおり、特許法42条1項本文の規定に
より、本件出願審査請求時には先の出願たる本件特許出願が取り下げられたものと
みなされ、本件出願審査請求は不適法なものであると判断するものであるが、その
理由は、次のとおり付加するほか、原判決事実及び理由の「第4 当裁判所の判
断」の1の項に示されているとおりである。なお、控訴人が当審において補充した
主張にかんがみ、次のとおり判断を補足する。
1 控訴人は、「PCT条約に基づく規則90の2.3(a)及び特許法184条の1
5第1項(特許法42条2項の適用排除)によると、優先権主張を伴う国際出願に
おいて、優先権の主張は、その基礎とされた出願日から1年3月以降であっても2
0月までの間であれば取下げができることになる。このように、20月までの間に
優先権主張の取下げを認めながら、1年3月経過をもってみなし取下げとするの
は、出願人に混乱を生じさせ、法的安定性を害する。また、PCT条約23条(1)
は、指定官庁が優先日から20月を経過する時までは、国際出願の処理又は審査を
行ってはならない旨規定しているから、出願人としては、優先権主張の基礎とした
先の出願日から1年3月を経過した後であっても、20月経過前であれば、指定国
の指定の取下げをすることができて、この場合には先の出願はみなし取下げとなる
ことはないと期待するのが通常である。したがって、日本国を指定国の一つとした
国際特許出願で、優先権主張を伴うものについては、PCT条約に基づく規則90
の2.2(a)、90の2.3(a)、PCT条約23条(1)の規定との統一的解釈を図るため
に、特許法42条1項本文所定の「1年3月」は「20月」と読み替えるべきであ
る。」などと主張する。
しかしながら、日本国を指定国の一つとする国際出願が日本国の特許出願(先の
出願)を基礎とする優先権を主張する場合において、特許法42条1項本文の規定
の適用があると解釈しても、出願人としては、①先の出願から1年3月以内に優先
権主張を取り下げて(特許法42条1項ただし書、2項参照)みなし取下げの効果
が生じるのを避ける対応を取るか、又は②当該国際出願における日本国の指定を維
持して、当該国際出願において実質的に先の出願の発明に関する特許を受ける対応
を取ることなどにより、特許法42条1項本文所定のみなし取下げの効果によって
生じる不都合の回避を図ることが可能である。したがって、規定の明文に反してま
で、控訴人主張のように、特許法42条1項本文所定の「1年3月」を「20月」
と読み替えるべきものとすることはできない。(そもそも、本件のように、国際出
願において優先権主張を伴う場合に、1年3月経過による特許法42条1項本文所
定の先の出願のみなし取下げの効果が生じることは、例えば、吉藤幸朔著・熊谷健
一補訂「特許法概説」〔第12版〕394頁の注1(本件特許出願時の版としては
〔第9版〕の290頁の注1)にも解説されていて、異説を述べる解説書等は見当
たらないところである。)
その他、控訴人が当審で主張するところを斟酌してみても、本件について特許法
42条1項本文の適用を排除すべきものとすることはできない。
2 PCT条約11条(3)所定の国際出願の効果について規定するPCT条約24
条(1)の「国内出願の取下げと同一の効果」に関連して、控訴人は、特許法39条5
項本文の定める遡及効を、同条1項ないし4項の場合に限定せず、国際出願におけ
る指定国の指定の取下げに関しても適用すべきである旨主張したのに対し、原判決
はこの主張は理由がないとした。控訴人は、原判決のこの解釈は誤りであり、本件
においては、特許法39条5項本文が類推適用されるべきであると主張するが、当
審における控訴人の主張を斟酌してみても、原判決のこの解釈を相当として維持せ
ざるを得ない。
第4 結論
以上のとおりであって、本件却下処分に違法な点は認められないとして本訴請求
を棄却した原判決は相当である。
東京高等裁判所第18民事部
裁判長裁判官 永 井 紀 昭
裁判官 塩 月 秀 平
裁判官 古 城 春 実
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