平成12(行ケ)173行政訴訟 特許権
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裁判所 |
東京高等裁判所
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裁判年月日 |
平成14年10月31日 |
事件種別 |
民事 |
法令 |
特許権
特許法29条1回 特許法29条2項1回 民事訴訟法61条1回
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キーワード |
審決83回 進歩性37回 実施11回 刊行物8回 新規性6回 無効5回 特許権1回
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主文 |
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事件の概要 |
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判決文
平成12年(行ケ)第173号 審決取消請求事件
平成14年10月17日口頭弁論終結
判 決
原 告 株式会社タハラ
訴訟代理人弁護士 野 島 潤 一
訴訟代理人弁理士 志 賀 富 士 弥
同 小 林 博 通
同 富 岡 潔
被 告 株式会社日本製鋼所
訴訟代理人弁護士 安 田 有 三
訴訟代理人弁理士 前 田 宏 之
主 文
特許庁が平成10年審判第35518号事件について平成12年4月3
日にした審決を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
1 原告
主文と同旨
2 被告
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は,原告の負担とする。
第2 当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯
被告は,発明の名称を「中空成形機の金型厚さ調節装置」とする特許第26
29118号(平成4年6月17日出願(以下「本件出願」という。),平成9年
4月18日設定登録。以下「本件特許」という。)の特許権者である。原告は,本
件特許を請求項1ないし4に関し無効とすることについて審判を請求し,特許庁
は,これを平成10年審判第35518号事件として審理した。被告は,この審理
の過程で,本件出願の願書に添付された明細書の訂正(以下「本件訂正」という。
本件訂正に係る明細書を「訂正明細書」という。上記願書に添付された図面も含め
て「訂正明細書」ということもある。)を請求した。特許庁は,審理の結果,平成
12年4月3日「訂正を認める。本件審判の請求は成り立たない。」との審決を
し,同月24日にその謄本を原告に送達した。
2 特許請求の範囲
(1) 本件訂正前
【請求項1】 金型(1)の開閉及び金型厚さ調節を,電動機(15)により
伸縮するトグル機構(9)を介して行うようにした中空成形機の金型厚さ調節装置
において,前記トグル機構(9)のリアプレート(18)と第2クレビス(8a)
間に形成された間隙よりなる金型厚さ調節分(D)と,前記リアプレート(18)
と第2クレビス(8a)間に設けられた弾性体(30)と,前記リアプレート(1
8)と第2クレビス(8a)とを前記弾性体(30)を介して締結するための締結
手段(40)とを備えたことを特徴とする中空成形機の金型厚さ調節装置。
【請求項2】 前記第2クレビス(8a)に形成されたクレビス凹部(8a
A)と前記リアプレート(18)に形成されたリアプレート凹部(18a)とによ
り前記弾性体(30)が保持されていることを特徴とする請求項1記載の中空成形
機の金型厚さ調節装置。
【請求項3】 前記弾性体(30)は,皿ばねにより構成されていることを特
徴とする請求項1又は2記載の中空成形機の金型厚さ調節装置。
【請求項4】 前記第2クレビス(8a)に設けられたガイドピン(33)
は,前記リアプレート(18)に設けられたガイド部材(34)のガイド孔(34
a)に挿入され,前記第2クレビス(8a)とリアプレート(18)が移動する場
合,位置決め案内を前記ガイドピン(33)とガイド部材(34)により行う構成
としたことを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載の中空成形機の金型厚さ
調節装置。
(2) 本件訂正後(下線部が訂正に係る個所である。)
【請求項1】(判決注・以下,審決に従い,符号を付して分節する。当事者
の主張も,この分節に従う。以下,この発明を「訂正発明1」という。)
(A) 金型(1)の開閉及び金型厚さ調節を,電動機(15)により伸縮
するトグル機構(9)を介して行うようにした中空成形機の金型厚さ調節装置にお
いて,
(B) 前記トグル機構(9)のリアプレート(18)と第2クレビス(8
a)間に形成された間隙よりなる金型厚さ調節分(D)と,
(C) 前記リアプレート(18)と第2クレビス(8a)間に設けられた
弾性体(30)と,
(D-1)前記リアプレート(18)と第2クレビス(8a)とを前記弾性
体(30)を介して締結するための締結手段(40)とを備え,
(D-2)前記締結手段(40)が,前記金型厚さ調節分(D)を調節変更
可能であることを特徴とする
(E)中空成形機の金型厚さ調節装置。
【請求項2】 前記第2クレビス(8a)に形成されたクレビス凹部(8a
A)と前記リアプレート(18)に形成されたリアプレート凹部(18a)とによ
り前記弾性体(30)が保持されていることを特徴とする請求項1記載の中空成形
機の金型厚さ調節装置。(判決注・以下「訂正発明2」という。)
【請求項3】 前記弾性体(30)は,皿ばねにより構成されていることを特
徴とする請求項1又は2記載の中空成形機の金型厚さ調節装置。(判決注・以下
「訂正発明3」という。)
【請求項4】 前記第2クレビス(8a)に設けられたガイドピン(33)
は,前記リアプレート(18)に設けられたガイド部材(34)のガイド孔(34
a)に挿入され,前記第2クレビス(8a)とリアプレート(18)が移動する場
合,位置決め案内を前記ガイドピン(33)とガイド部材(34)により行う構成
としたことを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載の中空成形機の金型厚さ
調節装置。(判決注・以下「訂正発明4」という。)
3 審決の理由
別紙審決書の写しのとおりである。要するに,①訂正発明1,3は,ドイツ
特許第1479229号公報(審判甲第1号証。本訴甲第2号証。以下「甲第2号
証刊行物」という。)に記載された発明(以下「甲第2号証発明」という。)と同
一であるとはいえない,②訂正発明1,3は,1999年7月26日付けフィッシ
ャー-ダブリュー.ミューラー ブラストフォームテクニック ゲーエムベーハー
代表取締役A外の宣誓書(審判甲第7号証。本訴甲第8号証。以下「甲第8号証宣
誓書」という。)に記載された発明(以下「甲第8号証発明」という。)と同一で
あるとはいえない,③訂正発明1ないし4は,甲第2号証刊行物,「プラスチック
成形加工講座 ブロー成形」(昭和45年2月20日株式会社プラスチックス・エ
ージ発行。審判甲第2号証。本訴甲第3号証。以下「甲第3号証刊行物」とい
う。),特開昭63-256420号公報(審判甲第3号証。本訴甲第4号証。以
下「甲第4号証刊行物」という。),特開昭63-297025号公報(審判甲第
4号証。本訴甲第5号証。以下「甲第5号証刊行物」という。)から当業者が容易
に発明をすることができたとは認められない,④訂正明細書の記載は,当業者が容
易に訂正発明4を実施できる程度に明確かつ十分に記載されていると認められる,
として,本件訂正を認めた上で,請求人(原告)主張の無効事由をすべての請求項
につき排斥したものである。
第3 原告主張の審決取消事由の要点
審決の理由中,「Ⅰ.手続の経緯」(審決書1頁末行~2頁10行)は認め
る。「Ⅱ.訂正の適否についての判断」(審決書2頁11行~15頁11行)のう
ち,「1.訂正の要旨」,「2.訂正の目的の適否,新規事項の有無及び拡張・変
更の存否」は認める。「3.独立特許要件の判断」のうち,「(1)本件訂正発明
の要旨」は認める。「(2)請求人が申し立てている本件訂正発明1-4の特許を
無効とすべき理由」は,4頁25行,26行の「その出願前公知の甲第1~4号証
に記載された発明から」を争い(証拠が一部欠落している。),その余は認める。
「(3)請求人が提出した証拠」,「(4)請求人が提出した証拠の記載事項」は
認める。「(5)請求人の主張」は争う(進歩性に関する主張が一部欠落してい
る。)。「(6)被請求人の反論」は認める。「(7)理由1-4に対する判断」
は,9頁13行ないし32行,10頁5行ないし7行,11頁27行ないし12頁
9行は認め,その余は争う。「(8)むすび」は争う。「Ⅲ.特許無効の審判請求
についての当審の判断」(審決書15頁12行~19行)は争う。
審決は,訂正発明1の独立特許要件の判断に当たり,甲第8号証宣誓書に基
づく進歩性についての原告の主張に対する判断を遺脱し(取消事由1),訂正発明
1の進歩性の判断を誤り(取消事由2),訂正発明1の新規性の判断を誤った(取
消事由3)ものであり,この誤りが,請求項1ないし4のすべてにつき,審決の結
論に影響を及ぼすことは明らかであるから,審決は,請求項1ないし4のすべてに
つき,違法なものとして,取り消されるべきである。
1 取消事由1(判断遺脱)
(1) 審決は,訂正発明1の進歩性につき,「本件訂正発明1が甲第1-4号証
(判決注・本訴甲第2ないし第5号証)に記載された発明から当業者が容易に発明
できたとは認められない。」(審決書14頁14行~15行)と判断した。しか
し,審決は,訂正発明1の進歩性につき判断するに当たり,甲第8号証発明を判断
の資料としなかった。
原告は,被告による本件訂正の請求に対応して,甲第8号証宣誓書を提出
した上,平成12年1月13日付け口頭審理陳述要領書(甲第15号証)におい
て,「甲第7号証(判決注・本訴甲第8号証)により立証される公然知られあるい
は公然実施された発明においては,第2クレビス59Aとリアプレート72Aとの
間の距離を調節変更する構成となっているから,甲第1号証(判決注・本訴甲第2
号証)に開示されている内容と組み合わせることにより,本件特許発明1(判決
注・訂正発明1のことである。)に想到することは,当業者にとって容易なことで
ある。」(甲第15号証6頁2行~6行)と主張し,平成12年1月20日の口頭
審理においても,同旨の主張を行った。
審決は,上記原告の主張について,判断を遺脱したことが明らかであり,
これが,審決の結論に影響を及ぼすことは明らかである。
(2) 被告は,甲第2号証発明と甲第8号証発明とは,全く同じ構造であるか
ら,訂正発明1の進歩性に関し,甲第2号証発明について審理することで,甲第8
号証発明についても同時に審理を行っていることになる,と主張する。しかし,甲
第2号証発明と甲第8号証発明とが,細部において相違していることは一目瞭然で
ある。現に,審決自身も,新規性の判断において,甲第2号証刊行物発明と甲第8
号証発明とが構成において異なることを前提に判断している。原告は,審判手続中
に,甲第2号証発明と甲第8号証発明とが全く同じ構造である,と主張したことは
ない。両発明が全く同じ構造であることを前提とする被告の上記主張は,失当であ
る。
被告は,審決において,甲第2号証発明及び甲第8号証発明は,いずれも
構成要件(D-2)を有していないと判断されているから,甲第2号証発明と甲第
8号証発明との組合せに基づく進歩性の判断は,甲第2号証発明単独に基づく進歩
性の判断と同じになることを,審決から読み取ることができるから,甲第8号証発
明についても審決において審理されているということができる,と主張する。しか
し,このような被告の主張は,むしろ,甲第8号証発明を先行技術の一部として用
いた進歩性の議論が,審決において全くなされていないことを示すものである。審
決においては,甲第2号証発明が訂正発明1と同一であるか否か,甲第8号証発明
が訂正発明1と同一であるか否か,についての判断が,個々になされているにすぎ
ない。
2 取消事由2(訂正発明1の進歩性についての認定判断の誤り)
(1) 訂正発明1と甲第2号証発明とを対比すると,両者は訂正発明1の構成要
件(A),(B),(C),(D-1),(E)の点で一致し,構成要件(D-
2)の点でのみ相違することは,審決も認めるところである(審決書13頁28行
~30行)。審決は,甲第3ないし第5号証各刊行物には,いずれも訂正発明1の
構成要件(D-2)については記載も示唆もない(審決書14頁1行~4行,8
行,12行~13行)と認定した。
しかし,審決が進歩性の判断に用いなかった甲第8号証には構成要件(D
-2)についての記載がある。
訂正発明1の構成要件(D-2)の技術的意義は,訂正明細書の記載から
みて,厚さの異なる金型に交換した際に,従前のスペーサと同様に,金型厚さの設
計値からの寸法差に応じて第2クレビス8aをリアプレート18に対し移動させ,
トグル機構9の有効長を調節することにほかならない。訂正明細書の実施例では,
ボルト31とナット32とにより金型厚さ調節分(D)を調節変更することがこれ
にあたる。
甲第8号証発明において,筒状のナット82Aを回転すると,雄ネジを有
する部材59A(これが訂正発明1の第2クレビスに相当する)が図の左右方向に
相対的に移動し,部材59Aとリアプレート72Aとの間の距離が変化する。した
がって,甲第8号証発明が訂正発明1の構成要件(D-2)を有することは明らか
である。
(2) 甲第2号証発明では,第2クレビス101(別紙図面参照)とリアプレー
ト22との間に間隙より成る金型厚さ調節分が存在し,ここに圧縮バネ37が設け
られているとともに,リアプレート22と第2クレビス101とが何らかの締結手
段で締結されていることが明らかである。審決においても,具体的な構成は不明で
あるものの,何らかの締結手段を備えているものと認定している(審決書11頁3
行~6行)。
甲第8号証発明は,前記のように,第2クレビス101に相当する部材5
9Aとリアプレート22に相当するリアプレート72Aとの間の金型厚さ調節分を
調節変更することが可能な構成となっている。
特に,トグル機構を用いた型締装置の分野においては,本件明細書中の従
来技術の説明等にみられるように,古くから,金型交換時の厚さのばらつきが重要
な課題として知られており,その対策として,トグル機構の有効長を何らかの手段
で金型の寸法差に対応して調節する必要があることは,当業者であればだれでもが
知っている技術常識である。しかも甲第2号証発明と甲第8号証発明とは,いずれ
も弾性体を利用した金型厚さ調節装置である点で共通する。したがって,甲第2号
証発明のものにおいて,より大きな金型厚さのばらつきに対応するために,甲第8
号証発明の技術を適用することは,当業者にとって,何ら困難なことではない。
したがって,甲第2号証発明と甲第8号証発明とに基づいて当業者が訂正
発明1を容易に想到し得ることは明白である。
(3) 被告は,訂正発明1の構成要件(D-2)により,同じ厚さの金型であっ
ても,「金型厚さ調整分D」を小さく設定して弾性体を大きく予圧縮させた状態に
すれば,トグル機構9に大きな慣性を与えて型締めを急速に行うことが可能にな
り,電動機15の負荷を低減させつつ型締めを短時間で行うことができる,一方,
弾性体を伸張させた状態で「金型厚さ調節分D」を大きく設定することにより,型
締めを緩徐に行うことが可能になり,金型1同士の衝突時に作用する衝撃力を低減
させて型締めを行うことができ,軟質な材料によって金型1を制作した場合の早期
変形を抑制することができる,という作用効果が得られる,と主張する。しかし,
このような「同じ厚さの金型」を前提とした課題や作用効果については,訂正明細
書に記載がなく,これを示唆する記載もない。このような,訂正明細書に記載され
ていない作用効果を,訂正発明1の進歩性の判断に当たって顧慮するべきではな
い。審決もこの作用効果については認定判断していない。
被告は,訂正発明1の利点として,金型厚さ調節分Dの調節変更に伴い弾
性体30の予圧縮量が調節変更されることによる作用効果を主張する。しかし,こ
れは何ら有益な作用効果ではなく,必然的に生じてしまう現象を,殊更に優れたも
のであるかのように説明しているにすぎない。弾性体30の予圧縮量をいかに変え
たとしても,型締力の調整には何ら寄与せず,そればかりか,本件実施例のように
予圧縮量が変化するように構成することで,金型の交換時に厚さ違いがあれば,型
締力は変わってしまうこととなる。金型厚さ違いに対応する金型厚さ調節装置とし
て,訂正発明1が機構的に優れている点はない。
3 取消事由3(訂正発明1の新規性についての認定判断の誤り)
(1) 審決は,「本件訂正発明1における第2クレビスは,クレビスという用語
(U字形の継ぎ手の意)が使用されている点から判断してトグル片の端部を揺動可
能に支持するという機能を有する部材であるとともにリアプレートとの間に弾性体
を設けるという機能をも有する単一の部材である。」(審決書10頁1行~4行)
と認定し,甲第8号証発明について「部材59Aおよび軸部が一体となった部分は
トグル片の端部を揺動可能に支持してはいるものの皿ばね84Aと接していないの
でリアプレート(部材72Aおよび部材73Aが一体となった部材)との間に弾性
体を設ける(構成要件(C))ことができないから,第2クレビスにはなりえな
い。」(審決書12頁21行~24行)と認定した。
しかし,「クレビス」の語は,相手部材と揺動可能に連結するU字形の継
ぎ手を意味するのであるから,トグル片の端部のピンを受けている部分が「クレビ
ス」の主要部であることは言うまでもない。したがって,甲第8号証発明におい
て,トグル片37Aにピン65Aを介して連結されている部材59Aが,訂正発明
1における「第2クレビス」に相当するのは,明白である。
訂正明細書の段落【0005】には,図3及び図4に図示された従来のト
グル機構の説明として,「第2トグル片8は第2クレビス8aを介してリアプレー
ト18に接続されている」,段落【0006】には,「第2トグル片8の第2クレ
ビス8aとリアプレート18との間に所要厚さの第2スペーサS2を挿入して」と
の記載があり,リアプレートとの間に弾性体を設けるという機能を有しない従来の
ものに対しても「第2クレビス」という用語が用いられている。段落【0014】
の実施例の説明中には,「なお,従来例と同一又は同等部分については同一符号を
用いて説明する」との記載があり,実施例において,従来例と同一の符号を用いて
「第2クレビス8a」として記載されている。このように「第2クレビス8a」自
体は,従来例と基本的に変わらず,単にトグル片8の端部と連結する部材として取
り扱われている。
被告自身も,甲第8号証発明の部材59Aが,訂正発明1における「第2
クレビス」に相当することを当初から認めていた(甲第14号証5頁2行~6行参
照)。
審決の上記解釈は明らかに誤りである。
(2) 審決は,「甲第7号証の装置(判決注・甲第8号証発明)は,上記のとお
り本件訂正発明1における第2クレビスを有していないので,本件訂正発明1にお
ける締結手段に対応する部材を有することはありえない。」(審決書12頁28~
30行),「甲第7号証の装置(判決注・甲第8号証発明)は,上記のとおり本件
訂正発明1における第2クレビスに対応する部材を有していないので,皿ばね84
Aはリアプレートと第2クレビスの間に設けられているとはいえず,従って本件訂
正発明1における弾性体には該当しない。」(審決書12頁34行~13頁2
行),「甲第7号証の装置(判決注・甲第8号証発明)は,上記のとおり本件訂正
発明1における第2クレビスに対応する部材を有していないので,本件訂正発明1
における金型厚さ調節分を有していることはありえない。」(審決書13頁5~7
行),「甲第7号証の装置(判決注・甲第8号証発明)は本件訂正発明1における
締結手段に対応する部材を有していないので,甲第7号証の装置が構成要件(D-
2)を有することはありえない。」(審決書13頁9行~11行)と認定した。し
かし,これらの認定は,すべて,甲第8号証発明が「第2クレビスに対応する部材
を有していない」との認定を前提としており,前提となる認定が誤りである以上,
誤りであることが明らかである。
(3) このように,審決は,甲第8号証発明と訂正発明1との同一性の判断にお
いて,甲第8号証発明には「第2クレビス」が存在しない,という認定を出発点と
し,この認定に基づき,極めて形式的な論理を積み重ねることによって多数の不一
致点を見いだしている。上記のとおり,その出発点となる認定自体が誤りであるか
ら,この結論は誤りである。審決は,訂正発明1における「第2クレビス」の解釈
を誤った結果,訂正発明1と甲第8号証発明との同一性の判断を誤ったものであ
る。
第4 被告の反論の要点
審決の認定判断は,正当であり,審決を取り消すべき理由はない。
1 取消事由1(判断遺脱)について
原告が審判手続において提出した証拠である甲第8号証(審判甲第7号証)
には,甲第2号証発明と甲第8号証発明との同一性に関し,両発明が全く同じ構造
である旨が,公証人の署名付きの証明書によつて証明された内容として明記されて
いる。このように,原告は,審判手続において,甲第8号証を提出して,甲第2号
証発明と甲第8号証発明とが同一であると主張している。原告の,甲第8号証に基
づく進歩性の判断を求める旨の主張は,甲第2号証発明と甲第8号証発明とが同一
でないことを前提として成立するものであり,それは,両者が同一であるとする原
告の上記主張と齟齬することになる。このような主張を顧慮する必要がないのは,
当然である。審決が同一性を有する発明の一方についてのみ審理し,他方について
審理しないことに,違法性は存在しない。
審決は,甲第2号証発明に基づく進歩性について審理することで,それと全
く同じ構造の甲第8号証発明に基づく進歩性についても同時に審理を行なっている
ということができる。全く同じ構造の甲第2号証発明と甲第8号証発明との組合せ
に基づく進歩性についての判断が,甲第2号証発明単独に基づく進歩性についての
判断と同じになることは,自明である。
しかも,審決は,甲第2号証発明は,構成要件(D-2)の点で訂正発明1
と相違していると認定し(審決書11頁13行~16行),甲第8号証発明につい
ても,構成要件(D-2)を有することはあり得ないと認定した(審決書13頁8
行~11行)のであるから,甲第2号証発明と甲第8号証発明との組合せに基づく
進歩性に関する判断が,構成要件(D-2)を有しない甲第2号証発明単独の判断
と同じになることも審決から読み取ることができる。このように,審決は,実質的
には,甲第8号証発明に基づく進歩性についても審理している,ということができ
る。
2 取消事由2(訂正発明1の進歩性についての認定判断の誤り)について
(1) 原告は,甲第8号証発明が構成要件(D-2)を示唆することは明らかで
あるから,甲第2号証発明と甲第8号証発明とに基づいて当業者が訂正発明1を容
易に想到し得ることは明白である,と主張する。
訂正発明1の構成要件(D-2)は,「前記リアプレート(18)と第2
クレビス(8a)とを前記弾性体(30)を介して締結するための締結手段(4
0)とを備え,」との構成要件(D-1)の充足を前提とするものであり,第2ク
レビス(8a)の調節移動により,トグル機構(9)の有効長を増減調節する機能
と弾性体(30)の予圧縮量を増減変更させる機能とを有するものである。
これに対し,甲第8号証発明では,ナット(82A)を回せば雄ねじを有
する部材(59A)が図上で左右方向に移動し,部材(59A)とリアプレート
(72A)との間の距離が変化するので,リンク(37A)の有効長さを調節変更
することは可能であるものの,皿ばね(84A)の予圧縮量は,一定のままに保た
れて変化しない。
このように,甲第8号証発明は,訂正発明1の構成要件(D-1)の充足
を前提とする構成要件(D-2)を有していないのみならず示唆すらもしていな
い,というべきである。
(2) 訂正発明1は,構成要件(D-1)の充足を前提とする構成要件(D-
2)を備えることにより,同じ厚さの金型であつても,「金型厚さ調節分D」を小
さく設定して弾性体を大きく予圧縮させた状態にすれば,トグル機構9に大きな慣
性を与えて型締めを急速に行なうことが可能になり,電動機15の負荷を低減させ
つつ型締めを短時間で行なうことができる。一方,弾性体を伸張させた状態で「金
型厚さ調節分D」を大きく設定することにより,型締めを緩徐に行なうことが可能
になり,金型同士の衝突時に作用する衝撃力を低減させて型締めを行なうことがで
き,軟質な材料によつて金型を製作した場合の早期変形を抑制することができる,
との作用効果を奏する。訂正発明1は,同じ厚さの金型において,「金型厚さ調節
分D」を調節することにより,最終の型締め力を同一に確保したままで,型締め作
動時の弾性体30の圧縮開始時期を遅速変更することができる。
これに対し,甲第8号証発明では,部材(59A)とリアプレート(72
A)との間の距離を大小調節変更しても,型締ストロークの中で型締め力が作用し
始める時期を遅速変更することができるのみであり,上述したように皿ばね(84
A)の予圧縮量は一定のままで変化しないから,最終の型締め力を同一に確保した
ままで,「緩徐」又は「急に」型締め力を作用させることはできない。
このように,甲第8号証発明とは異質の機能・作用効果を奏する訂正発明
1が進歩性を欠如するという原告の主張には,根拠がない。
(3) 甲第8号証には「添付書類1に明らかなように,・・・皿バネ(84A)
の予圧縮量が変化する。」(甲第8号証訳文2頁20行~23行)と明記されてい
る。しかし,甲第8号証発明において皿バネ(84A)の予圧縮量が変化しないこ
とは,原告も認めているから,甲第8号証の上記記載は事実に反するものであると
いうべきである。
3 取消事由3(訂正発明1の新規性についての認定判断の誤り)について
訂正発明1においては,構成要件(C)に記載されているように,弾性体
(30)が「リアプレート(18)と第2クレビス(8a)間に」設けられるので
あるから,「第2クレビス」は弾性体(30)の一端を支持している。
審決は,このことを前提として,「本件訂正発明1における第2クレビス」
の解釈を行なったものである。「本件訂正発明1における第2クレビスは,トグル
片の端部を揺動可能に支持する機能を有する部材であるとともにリアプレートとの
間に弾性体を設けるという機能をも有する単一の部材である。」(審決書12頁1
1行~13行)との審決の解釈に誤りはない。
原告の主張は,技術用語としてのクレビス自体の意義と訂正発明1における
「第2クレビス」の意義とを混同している。
第5 当裁判所の判断
1 取消事由1(判断遺脱)について
(1) 原告は,審決が,訂正発明1の進歩性の判断に当たり,甲第8号証につい
ての判断を遺脱した,と主張する。
甲第15号証によれば,原告は,本件の審判手続において,「(6)本件
特許発明の進歩性について(その3) 甲第7号証(判決注・本訴甲第8号証)に
より立証される公然知られあるいは公然実施された発明においては,第2クレビス
59Aとリアプレート72Aとの間の距離を調節変更する構成となっているから,
甲第1号証(判決注・本訴甲第2号証)に開示されている内容と組み合わせること
により,本件特許発明1(判決注・訂正発明1のことと認める。)に想到すること
は,当業者にとって容易なことである。従って,仮に,甲第7号証に示される装置
が本件特許発明と同一でないとしても,特許法29条2項の規定により特許を受け
ることができないことは明らかである。」(平成12年1月13日付け口頭審理陳
述要領書6頁2行~9行)と述べたことが認められる。この認定事実によれば,原
告は,本件の審判手続において,訂正発明1の進歩性について,甲第2号証発明と
甲第8号証発明とを組み合わせることにより訂正発明1に想到することは容易であ
る,との主張を行っていたことが明らかである。
審決は,訂正発明1の進歩性についての,請求人(本訴原告)の主張とし
ては,「本件訂正発明1-4は,その出願前公知の甲第1~4号証(判決注・本訴
甲第2~第5号証)に記載された発明から当業者が容易に発明できる程度のもので
あり,特許法29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるか
ら,本件訂正発明1-4の特許は,特許法123条第1項第2号の規定により無効
とすべきである。」(審決書4頁25行~29行)とのみ記載し,同主張に対する
判断として,訂正発明1と甲第2号証発明との相違点である訂正発明1の構成要件
(D-2)は,甲第2ないし第4号証には記載も示唆もされていない旨を記載した
上,「本件訂正発明1が甲第1-4号証に記載された発明から当業者が容易に発明
できたとは認められない。」(審決書14頁14行~15行)とのみ記載し,訂正
発明1が,甲第2号証発明と甲第8号証発明とから容易に発明をすることができた
か否かについては何ら記載していない。
上に述べたところによれば,審決は,訂正発明1の進歩性の判断に当た
り,甲第2号証発明と甲第8号証発明とを組み合わせることにより訂正発明1に想
到することは容易である,との原告の主張に対する判断をしていないことが明らか
である。
(2) 被告は,甲第2号証発明と甲第8号証発明とは,同一であるから,審決
は,甲第2号証発明を引用発明とする進歩性の判断を行うことによって,甲第8号
証発明をも引用発明とする進歩性の判断も,実質的にしたことになる,と主張す
る。
しかしながら,審決は,訂正発明1が甲第2号証発明と同一であるとの主
張に対する判断において,「甲第1号証(判決注・本訴甲第2号証)の装置は構成
要件(A),(B),(C),(D-1),(E)の点で本件訂正発明1と一致し
ているものの,構成要件(D-2)の点で本件訂正発明1と相違している」(審決
書11頁13行~15行)と認定し,訂正発明1が甲第8号証発明と同一であると
の主張に対する判断において,「甲第7号証(判決注・本訴甲第8号証)の装置は
構成要件(A)および(E)および構成要件(B),(C),(D-1)のうちリ
アプレート,の点で本件訂正発明1と一致しているものの,構成要件(D-2)お
よび構成要件(B),(C),(D-1)のうち第2クレビス,締結手段,弾性体
および金型厚さ調節分の点で本件訂正発明1と相違している」(審決書13頁12
行~16行)と認定している。これらの認定からすれば,審決は,甲第2号証発明
と甲第8号証発明とを同一であるとは認定していないから,被告の上記主張は,そ
の前提を欠くものというべきである。
(3) 被告は,審決は,上記のとおり,甲第2号証発明及び甲第8号証発明は,
いずれも訂正発明1の構成要件(D-2)を有していないと認定しており,仮に,
審決が甲第2号証発明及び甲第8号証発明の双方に基づいて訂正発明1の進歩性を
審理した場合にも,訂正発明1はこれら発明から当業者が容易に発明することがで
きたとは認められない,との判断がなされることが確実であるから,審決は,甲第
8号証発明を引用発明とする進歩性の判断を実質的に行っている,と主張する。
ア 審決は,訂正発明1と甲第8号証発明との同一性について,次のとおり
判断した。
「本件訂正発明1における第2クレビスは,トグル片の端部を揺動可能
に支持する機能を有する部材であるとともにリアプレートとの間に弾性体を設ける
という機能をも有する単一の部材である。・・・甲第7号証(判決注・本訴におけ
る甲第8号証)の記載「ロッド(59A)は,ネジ部を有し」および請求人の主張
「ナット82Aを回転すると,雄ネジを有する第2クレビス59Aが図の左右方向
に相対的に移動する」からみて,請求人は甲第7号証(判決注・本訴における甲第
8号証)のExhibit1において引き出し線が付され59Aと表示されている
部材(以下,部材59Aという)および該部材59Aの右に隣接している横長の部
分(以下,軸部という)が本件訂正発明1における第2クレビスに該当すると主張
(主張2)した。部材59Aおよび軸部が一体となった部分はトグル片の端部を揺
動可能に支持してはいるものの皿ばね84Aと接していないのでリアプレート(部
材72Aおよび部材73Aが一体となった部材)との間に弾性体を設ける(構成要
件(C))ことができないから,第2クレビスにはなりえない。
・締結手段について
本件訂正発明1における締結手段は,リアプレートと第2クレビスとを
弾性体を介して締結するための部材である。(構成要件D-1)
甲第7号証(判決注・本訴における甲第8号証)の装置は,上記のとお
り本件訂正発明1における第2クレビスを有していないので,本件訂正発明1にお
ける締結手段に対応する部材を有することはありえない。
・弾性体について
本件訂正発明1における弾性体は,リアプレートと第2クレビス間に設
けられている部材である(構成要件C)。
甲第7号証(判決注・本訴における甲第8号証)の装置は,上記のとお
り本件訂正発明1における第2クレビスに対応する部材を有していないので,皿ば
ね84Aはリアプレートと第2クレビスの間に設けられているとはいえず,従って
本件訂正発明1における弾性体には該当しない。
・金型厚さ調節分について
本件訂正発明1における金型厚さ調節分は,リアプレートと第2クレビ
ス間に形成された間隙よりなっているが,甲第7号証(判決注・本訴における甲第
8号証)の装置は,上記のとおり本件訂正発明1における第2クレビスに対応する
部材を有していないので,本件訂正発明1における金型厚さ調節分を有しているこ
とはありえない。
構成要件(D-2)について
上記のとおり,甲第7号証(判決注・本訴における甲第8号証)の装置
は本件訂正発明1における締結手段に対応する部材を有していないので,甲第7号
証(判決注・本訴における甲第8号証)の装置が構成要件(D-2)を有すること
はありえない。
結局,甲第7号証(判決注・本訴における甲第8号証)の装置は構成要
件(A)および(E)および構成要件(B),(C),(D-1)のうちリアプレ
ート,の点で本件訂正発明と一致しているものの,構成要件(D-2)および構成
要件(B),(C),(D-1)のうち第2クレビス,締結手段,弾性体および金
型厚さ調節分の点で本件訂正発明1と相違していると認められるので,本件訂正発
明1と甲第7号証(判決注・本訴における甲第8号証)の装置は同一ではない。」
(審決12頁11行~13頁17行)
イ 訂正発明1の構成要件(D-2)は,「前記締結手段(40)が,前記
金型厚さ調節分(D)を調節変更可能であることを特徴とする。」というものであ
る。訂正明細書には,訂正発明1の実施例について,「ボルト31とナット32に
より締結手段40を構成し,このナット32を回転させることにより金型厚さ調節
分Dを自在に調節することができるように構成されている。」(段落【002
0】)と記載されている(甲第12号証)。この記載によると,訂正発明1の実施
例においては,構成要件(D-1)における締結手段(40)がボルトとナットの
組み合わせであるため,金型厚さ調節分(D)が調節可能であるとされているもの
であるということができる。
審決は,訂正発明1の進歩性についての判断において,「甲第1号証の
装置(判決注・甲第2号証発明)においても本件訂正発明1における締結手段に対
応する部材があるとは認められるものの,その具体的な構成は全く不明である。し
たがって,該締結手段に対応する部材が金型厚さ調節分(D)を必要に応じて可変
調整することが可能な構成かどうかも全く不明である」(審決書11頁8行~11
行)として,甲第2号証発明の締結手段が,訂正発明1の実施例におけるボルトと
ナットの組み合わせのように調節可能なものであると認定することができないこと
を根拠に,甲第2号証発明が構成要件(D-2)を備えない旨認定し,この点を,
進歩性についての判断において検討の対象となる訂正発明1との相違点として認定
した(審決書13頁下から2行)ものであることは,明らかである。
そうすると,訂正発明1の進歩性についての判断に当たって検討が必要
となるのは,具体的には,甲第2号証発明における締結手段を訂正発明1における
締結手段,すなわち,例えば訂正発明1の実施例におけるボルトとナットの組み合
わせのような調節可能なものに変更することが推考容易であるか否かのみというこ
とになる。ところが,前記のとおり,審決は,甲第8号証刊行物についてこのよう
な観点からの検討をしたと認めることはできない。
前記のとおり,審決は,訂正発明1と甲第8号証発明との同一性の判断
において,甲第8号証発明が構成要件(D-2)を備えていないと判断しているも
のの,これを具体的にみれば,甲第8号証発明が,訂正発明1における第2クレビ
スに相当する部材を有していないので,訂正発明1における締結手段に対応する部
材を有することはあり得ず,締結手段に対応する部材を有していない以上,構成要
件(D-2)を有することはありえない,との判断を示しているにすぎない。進歩
性の判断においては,主たる引用発明である甲第2号証発明は,構成要件(D-
2)以外の構成においては,訂正発明1と一致しているのであるから,第2クレビ
スや締結手段の有無は問題とならず,問題となるのは,上記のとおり,甲第2号証
発明における締結手段を訂正発明1における締結手段のような,すなわち,例えば
ボルトとナットの組み合わせのような調節可能なものに変更することが容易である
か否かのみである。そして,この点が問題となるのであるならば,その解答を得る
ためには,甲第8号証発明の部材59Aの位置をナットを回転させることによって
左右に移動させることができるという構成から推考することが容易であるか否か,
という観点からの検討が加えられるべきである,ということができる。ところが,
この点については,審決は,何ら判断を示していないのである。
ウ 以上のとおり,審決は,甲第8号証発明については,新規性について判
断したにとどまるものである。新規性についての判断がなされたからといって,進
歩性についての判断もなされたことになるわけではないことは,明らかである。
被告の主張は,採用することができない。
(4) 以上によれば,審決は,訂正発明1の進歩性についての判断に当たり,甲
第2号証発明及び甲第8号証発明の双方に基づいて容易に発明をすることができ
た,との原告の主張に対する判断を遺脱したものというべきである。
取消事由1は理由がある。
2 1で述べたところによれば,審決は,訂正発明1の独立特許要件の判断にお
いて,進歩性の判断に当たり,判断を遺脱したものであり,この誤りが審決の結論
に影響を及ぼすことは明らかである。
第6 結論
以上のとおりであるから,審決は,その余の原告の主張について判断するま
でもなく,違法なものとして,取消しを免れない。
よって,審決を取り消すこととし,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7
条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第6民事部
裁判長裁判官 山 下 和 明
裁判官 阿 部 正 幸
裁判官 高 瀬 順 久
(別紙)
別紙図面
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