平成14(行ケ)309行政訴訟 特許権
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裁判所 |
東京高等裁判所
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裁判年月日 |
平成14年10月8日 |
事件種別 |
民事 |
法令 |
特許権
特許法4条1回 特許法121条2項1回 民事訴訟法61条1回 特許法121条1項1回
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キーワード |
審決10回 特許権2回
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主文 |
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事件の概要 |
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判決文
平成14年(行ケ)第309号 審決取消請求事件
平成14年9月24日口頭弁論終結
判 決
原 告 シンジェンタ モーゲン ベスローテンフェンノ
ートシャップ
訴訟代理人弁理士 高 野 明 近
同復代理人弁理士 石 井 康 夫
被 告 特許庁長官太田信一郎
指定代理人 村 山 隆
同 森 田 ひとみ
同 大 橋 良 三
主 文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
この判決に対する上告及び上告受理の申立てのための付加期間を30日と
定める。
事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
1 原告
(1) 特許庁が不服2001-19454号事件について,平成14年2月7日
にした審決を取り消す。
(2) 訴訟費用は被告の負担とする。
2 被告
主文同旨
第2 特許庁における手続の経緯並びに審決の理由
以下は,当事者間に争いがなく,かつ,甲第1号証及び弁論の全趣旨によっ
て認定できる事実である。
1 原告は,平成3年3月27日,発明の名称を「植物の病原からの保護方法」
(なお,出願後に,「植物に病原体抵抗性を誘発する方法及び病原体耐性植物」と
補正されている。)とする発明(以下「本願発明」という。)につき,特許出願
(平成3年特許願第507720号)をした。これにつき,平成13年6月18
日,拒絶査定(以下「本件拒絶査定」という。)がなされ,その謄本は,同月27
日に原告に送達された。同拒絶査定において,審判請求期間が60日延長された。
原告は,平成13年9月26日,本件拒絶査定に対する不服の審判の請求(以下
「本件審判請求」という。)をした。特許庁は,これを不服2001-19454
号事件として審理し,その結果,平成14年2月7日,「本件審判の請求を却下す
る。」との審決をし,その謄本を,平成14年3月4日に原告に送達した。なお,
出訴期間として,90日が付加された。
2 審決の理由
審決の理由は,以下のとおりである。
「本願に対して平成13年6月18日に拒絶査定がされ,その査定の謄本は
平成13年6月27日に本件審判請求人である出願人の代理人に送達されたことは
郵便物配達証明書により明らかである。
その拒絶をすべき旨の査定に対する審判の請求は,特許法第121条の規
定により査定の謄本の送達があった日から90日以内である平成13年9月25日
までにされなければならないところ,本件審判の請求は平成13年9月26日にさ
れているので,上記法定期間経過後の不適法な請求であり,その補正をすることが
できないものである。
したがって,本件審判の請求は,特許法第135条の規定により却下すべ
きものである。」(審決書1頁15行目~24行目)
第3 当事者の主張の要旨
1 原告
(1) 現在,特許法の改正が頻繁になされており,当事者はその対応に神経をす
り減らしている。本件でも,原告は,特許庁からの指示等について相当の注意を払
っていたが,結果的に1日を徒過してしまった。しかし,本件拒絶査定に対して,
不服であることを審判請求により表明している。
(2) 本来,特許を受けることができる発明については,特許庁と当事者が協力
し合って,正当に特許が受けられるよう協力すべきであって,本件のように,法規
を機械的に適用したのでは,特許を受ける権利を一瞬のうちに消滅させてしまうよ
うな案件については,特許庁は,そのようなことにならないように適切な行政をす
べきである。
例えば,欧州特許法は,その122条1項において,「状況によって必要
とされる相当な注意をしたにもかかわらず欧州特許庁に対し期間を遵守することが
できなかった欧州特許出願人又は欧州特許権者は,期間の不遵守がこの条約によっ
て欧州特許出願又は請求の拒絶,欧州特許出願が取り下げられたものとみなされる
こと,欧州特許の取消又はその他の権利若しくは救済手段の喪失という直接の結果
を生ずる場合には請求によりその者の権利を回復することができる。」とするな
ど,特許を受ける権利をできる限り守ろうとする立場を明らかにしている。
(3) 本件においても,特許庁は,本件審判請求により,不適法な点は治癒され
たとして,本願発明の特許性についての審理をする,との運用を行うべきであっ
た。そうしないで本件審判請求を却下した審決は,その運用に誤りがあり,取り消
されるべきである。
2 被告
原告が主張する事実は,特許法121条2項の,「責めに帰することができ
ない理由」に該当しない。
第4 当裁判所の判断
1 本件拒絶査定の送達日から審判請求期間である90日が経過した後に,それ
に対する不服の審判の請求である本件審判請求がなされたことは,当事者間に争い
がない。
2 特許法121条1項は,拒絶査定に対し,その謄本の送達があった日から3
0日(この期間は,職権により延長することができ,本件においては,60日延長
され90日とされている。特許法4条。)以内に,審判を請求することができる,
と定めている。
本件では,本件拒絶査定の送達日から91日後に,本件審判請求がなされて
いるから,これは不適法な申立てとなる。
3 同法121条2項は,「前項の審判を請求する者がその責めに帰することが
できない理由により同項に規定する期間内にその請求をすることができないとき
は,同項の規定にかかわらず,その理由がなくなった日から14日(在外者にあっ
ては,2月)以内でその期間の経過後6月以内にその請求をすることができる。」
と定めている。
原告は,特許法の改正等に十分注意を払ってきたものの,本件では結果的に
期間を1日徒過してしまったこと,特許権を受けるに値する権利については,なる
べく救済を図るような運用をすべきであり,欧州ではそのような法制度があること
などを主張する。しかし,それらの事情を総合しても,上記「責めに帰することが
できない理由」があるとは認めることができない。他にも,本件全資料を検討して
もこの理由に該当する事情は認めることができない。
特許庁による運用をいう原告の主張が,上記「責めに帰することができない
理由」があるとは認められない場合であっても,請求を却下しない運用をすべきで
ある,との趣旨であるとしても,採用することができない。請求期間後の請求は,
上記理由のあるときに限り,例外的に認めるものとしている特許法の立場と相容れ
ないものであるからである。
本件審判請求が期間経過後になされたものであり,不適法であるとして,こ
れを却下した審決の判断は相当である。
4 結論
以上のとおりであるから,原告主張の取消事由には理由がなく,その他,審
決に取消の事由となるべき誤りは認められない。そこで,原告の本訴請求を棄却す
ることとし,訴訟費用の負担,上告及び上告受理の申立てのための付加期間につい
て行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条,96条2項を適用して,主文のとおり
判決する。
東京高等裁判所第6民事部
裁判長裁判官 山 下 和 明
裁判官 阿 部 正 幸
裁判官 高 瀬 順 久
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