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平成25(ネ)10001損害賠償請求控訴事件

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裁判所 控訴棄却 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
裁判年月日 平成25年11月27日
事件種別 民事
当事者 控訴人大王製紙株式会社 エリエールプロダクト株式会社
被控訴人ユニ・チャーム株式会社
対象物 使い捨て紙おむつ
法令 特許権
民事訴訟法157条1項1回
キーワード 実施23回
侵害15回
特許権2回
損害賠償2回
進歩性1回
無効1回
主文 1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人らの負担とする。
事件の概要 1 本件は,発明の名称を「使い捨て紙おむつ」とする特許権(特許第4198 313号)を有する控訴人らが,被控訴人が製造・販売する紙おむつは同特許 の特許請求の範囲の請求項1及び3記載の各発明の技術的範囲に属しており, その紙おむつの製造・販売は上記特許権を侵害すると主張して,被控訴人に対 し,不法行為に基づき,損害賠償を請求した事案である。原審は,上記紙おむ つは,上記各発明の技術的範囲に属しないとして,控訴人らの請求をいずれも 棄却したため,控訴人らが,上記の裁判を求めて控訴した。

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判決文

平成25年11月27日判決言渡
平成25年(ネ)第10001号 損害賠償請求控訴事件
(原審・東京地方裁判所平成22年(ワ)第40006号)
口頭弁論終結日 平成25年10月7日
判 決

控 訴 人 大 王 製 紙 株 式 会 社


旧商号:ダイオーペーパーコンバーティング株式会社
控 訴 人 エリエールプロダクト株式会社

上記両名訴訟代理人弁護士 村 林 隆 一
同 井 上 裕 史
同 田 上 洋 平
同 佐 合 俊 彦
上記両名訴訟代理人弁理士 永 井 義 久
上記両名補佐人弁理士 和 泉 久 志

被 控 訴 人 ユニ・チャーム株式会社

訴訟代理人弁護士 近 藤 惠 嗣
同 萩 尾 保 繁
同 山 口 健 司
同 薄 葉 健 司
訴訟代理人弁理士 古 賀 哲 次

補 佐 人 弁 理 士 蛯 谷 厚 志
同 森 本 有 一
同 小 野 田 浩 之
主 文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人らの負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 当事者の求めた裁判
1 控訴人ら
(1) 原判決を取り消す。
(2) 被控訴人は,控訴人らに対し,それぞれ1億円及びこれに対する平成2
2年10月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(3) 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。
2 被控訴人
主文同旨
第2 事案の概要
1 本件は,発明の名称を「使い捨て紙おむつ」とする特許権(特許第4198
313号)を有する控訴人らが,被控訴人が製造・販売する紙おむつは同特許
の特許請求の範囲の請求項1及び3記載の各発明の技術的範囲に属しており,
その紙おむつの製造・販売は上記特許権を侵害すると主張して,被控訴人に対
し,不法行為に基づき,損害賠償を請求した事案である。原審は,上記紙おむ
つは,上記各発明の技術的範囲に属しないとして,控訴人らの請求をいずれも
棄却したため,控訴人らが,上記の裁判を求めて控訴した。
2 前提となる事実,争点及び争点についての当事者の主張は,次のとおり原判
決を補正し,後記3のとおり当審における当事者の主張を付加するほかは,原
判決「事実及び理由」の第2の1ないし3記載のとおりであるから,これを引

用する(以下,原判決を引用する場合は,「原告」を「控訴人」と,「被告」
を「被控訴人」と,それぞれ読み替える。)。
(1) 原判決6頁2行目末尾に,改行の上,次のとおり加える。
「ア 文言侵害の成否(争点2-1)
イ 均等侵害の成否(争点2-2)」
(2) 原判決6頁5行目末尾に,改行の上,次のとおり加える。
「(5) 時機に後れた攻撃方法か否か等(争点5)」
(3) 原判決6頁22行目の「争点2(各被告製品が本件各発明の技術的範囲
に属するか否か)について」を「争点2-1(文言侵害の成否)」と改め
る。
(4) 原判決6頁26行目冒頭から7頁6行目の「存在せず」までを次のとお
り改める。
「 本件発明1における「ウエスト部」は,吸収主体10の長手方向端部
(透液性トップシート11の端部)付近とウエスト開口縁との間の領域で
ある。
ところで,本件明細書の【0010】には,本件発明の作用効果とし
て,「さらに,請求項 1 記載の発明は,縦方向に沿って腰下部まで延在す
る半剛性の吸収コアを有し,腰下部の伸縮部材は,腰下部の中央部を除く
左右脇部に配置されている。吸収コアは可撓性のシートに比較して半剛性
を示すので,伸縮部材による収縮力の伝達により変形したり皺を生じたり
することが少ない。その結果,製品として目立つ中央部が変形したり皺を
生じたりすることがないので,見栄えに優れた製品となる。」との記載が
ある(注・下線は控訴人らによる。この項において以下同じ)。すなわ
ち,構成要件Cで,腰下部の伸縮部材を「中央部を除く左右脇部に配置」
するのは,前記作用効果を求めるためであり,とすれば,「中央部を除く
左右脇部に配置」とは,弾性伸縮部材が,「吸収コア 13 が位置する中央

部には存在しない」ことを意味することは,当業者に明白である。
このことは,本件発明の実施例を説明した【0050】の記載からも明
らかである。すなわち,本件明細書の【0050】には,「図12の
(F)に別の実施の形態として示すように,ウエスト伸縮部材20F,2
0B,ならびに腰下部伸縮部材21F,21Bを,吸収コア13が位置す
る中央部には存在せず,製品の左右脇部のおいてのみ配置固定し,さらに
股部伸縮部材23を設ける形態なども採用できる。このように伸縮部材の
配設形態は適宜であることを付言する。腰下部伸縮部材21F,21B,
または股部伸縮部材23を,吸収コア13が位置する中央部には存在せ
ず,製品の左右脇部のおいてのみ配置固定する場合において,腰下部伸縮
部材21F,21B端部,または股部伸縮部材23の端部が吸収コア13
の側縁部に重なる場合と,吸収コア13の側縁に達しないで離間する場合
との両者を含む。」との説明があり,「中央部を除く」との意味が,正確
には「吸収コア13が位置する中央部には存在せず」との意味であること
を明確にしている。
これに対し,本件明細書の【0032】には「図3の符号において,
『縦方向』とは,腹側と背側を結ぶ方向を意味し,『周方向』とは前記縦
方向と直交する方向を意味する。…また,『中央部』とは,製品の中央線
を含む側部を除く中間領域を意味する。『脇部』とは,胴周り部Tにおけ
る両側部を意味する。」との記載がある。しかしながら,【0032】
は,紙おむつの各部の名称を,図3を用いて一般的に説明したものにすぎ
ず,紙おむつの周方向が,概念上「中央部」と「脇部」の二つの領域に区
分できることを説明したものであるが,紙おむつの縦方向のどこまでが
「中央部」であるかを規定したものではない。よって,「腰下部の中央
部」との用語が,周方向の中央を意味するとしても,縦方向において,腰
下部のうちどの部分を意味するのかは,本件発明1の構成要件Cに関する

具体的な説明(【0050】)によるべきである。
よって,構成要件Cの「中央部を除く」とは,「吸収コア13が位置す
る中央部には存在せず」との意味であることは,明らかである。
そして,各被控訴人製品のフィットギャザー221 の一部である 221-1
は,腰下部で周方向に連続して配置されているものの,配置されている箇
所は吸収コア上ではなく,吸収コアを避けて配置されており,「吸収コア
13が位置する中央部には存在しない」のである。また」
(5) 原判決7頁9行目末尾に,改行の上,次のとおり加える。
「a 「伸張応力」「太さ」について
前記(ア)のとおり,「ウエスト部」は,吸収主体10の長手方向端部
(透液性トップシート11の端部)付近とウエスト開口縁との間の領域
であり,「腰下部」は,吸収主体11の長手方向端部(透液性トップ
シート11の端部)付近とレッグ開口始端との間の領域であるから,各
被控訴人製品における腰下部に配置された伸縮部材はフィットギャザー
221 であり,ウエスト部に配置された伸縮部材はウエストギャザー220
である。
そして,各被控訴人製品のフィットギャザー221 の伸張応力がウエス
トギャザー220 より小さいこと,及び,フィットギャザー221 の太さが
620dtex 以下であることについては,当事者間に争いはない。
したがって,各被控訴人製品は,いずれも構成要件Dの「伸張応力…
は,前記ウエスト部に配置された前記伸縮部材の伸張応力…よりも小さ
く,かつ太さが 620dtex 以下で」を充足する。」
(6) 原判決7頁10行目冒頭の「a」を「b」と改める。
(7) 原判決7頁17行目冒頭から同8頁8行目末尾までを次のとおり改め
る。
「 そして,各被控訴人製品の腰下部に配置された伸縮部材(フィットギャ

ザー221)の断面外径は,ウエスト部に配置された伸縮部材(ウエストギ
ャザー220)の断面外径よりも小さい。」
(8) 原判決8頁12行目冒頭の「b」を「c」と改める。
(9) 原判決8頁14行目冒頭から同9頁6行目末尾までを次のとおり改め
る。
「 本件発明1における「伸長率」は,JIS規格のとおり,伸びた長さを
元の長さで割った値を意味するものであり,自然長のときは伸長率0%で
あって,「伸長率が150~350%」は,自然長の2.5倍ないし4.
5倍を意味するとの被控訴人の主張を認める。」
(10) 原判決9頁14行目の「100%」を「0%」と改める。
(11) 原判決9頁25行目の「1.5倍ないし3.5倍」を「2.5倍ないし
4.5倍」と改める。
(12) 原判決10頁22行目冒頭から同頁末尾までを次のとおり改める。
「 本件発明1における「ウエスト部」は,吸収主体10の長手方向端部
(透液性トップシート11の端部)付近とウエスト開口縁との間の領域であ
り,「腰下部」は,吸収主体10の長手方向端部(透液性トップシート11
の端部)付近とレッグ開口始端との間の領域である。」
(13) 原判決11頁5行目末尾に,改行の上,次のとおり加える。
「 控訴人らは,構成要件Cの「中央部を除く」とは,「吸収コア13が位
置する中央部には存在せず」との意味であると主張する。同主張は,腰下
部のうち吸収コアの存在しない上端部を除く部分を「中央部」と呼ぶもの
であり,「中央部」という用語を横方向ではなく,縦方向の「中央部」と
解釈しているものである。
しかし,控訴人らは,「ウエスト部」は,吸収主体10の長手方向端部
(透液性トップシート11の端部)付近とウエスト開口縁との間の領域で
あると主張しており,これは,控訴人らが,構成要件Cにおける縦方向の

領域である「腰下部」が,吸収主体10の長手方向端部(透液性トップ
シート11の端部)付近とレッグ開口始端との間の領域であることを認め
たということである。そうであれば,構成要件Cにおける「腰下部」とは
上記の意味の領域であるから,「腰下部の中央部」の縦方向の領域につい
ては,特許請求の範囲の記載から一義的に明確であって,控訴人らの主張
するような限定解釈の余地はない。
また,構成要件Cの文言によれば,「前記腰下部の前記伸縮部材」は,
「(中央部を除く)左右脇部に配置」されていなければならない。本件明
細書には,「脇部」との用語について,「『脇部』とは,胴周り部Tにお
ける両側部を意味する。」(【0032】)と記載されており,紙おむつ
の周方向のみならず縦方向の範囲も含めて明確に定義されている。控訴人
らの上記主張は,構成要件Cの要件である「左右脇部に配置され」との文
言と整合しない。」
3 当審における当事者の主張
(1) 争点2-2(均等侵害の成否)について
ア 控訴人らの主張
仮に,各被控訴人製品が,そのフィットギャザー221 の一部(221-1)
が,腰下部で周方向に連続して配置されていることにより,本件発明1の
構成要件Cを文言解釈上充足しないとしても,各被控訴人製品は,次のと
おり,いわゆる均等の5要件を充たしているから,本件発明1と均等であ
り,その技術的範囲に属するものである。
(ア) 非本質的部分(第1要件)
本件明細書の【0010】にもあるように,本件発明1の構成要件C
において,腰下部の伸縮部材を,腰下部の中央部を除く左右脇部に配置
するのは,半剛性の吸収コアを伸縮部材の収縮力により変形させたり皺
を生じさせたりすることを防止し,「その結果,製品として目立つ中央

部が変形したり皺を生じたりすることがないので,見栄えに優れた製品
となる。」との作用効果を奏するためである。よって,当該作用効果に
関連する本件発明1の本質的な部分は,半剛性の吸収コア上に伸縮部材
を配置しない点にある。
各被控訴人製品は,半剛性の吸収コア上に伸縮部材を配置しておら
ず,伸縮部材(フィットギャザー221-1)は,吸収コアから外れた吸収
主体上に周方向に連続して配置されているにすぎない。
したがって,本件発明1と各被控訴人製品との異なる部分(フィット
ギャザー221-1 が,腰下部で周方向に連続して配置されていること)
は,本件発明1の本質的部分ではない。
(イ) 置換可能性(第2要件)
従来製品において,腰下部に伸縮部材が配置されている場合,当該製
品の吸収コアが変形し,大きな皺が生じることから,キャラクターなど
のデザインは,伸縮部材の配置がない後身頃などに印刷されていた。
また,伸縮部材が配置されている箇所にキャラクターなどのデザインを
印刷した製品なども存在したが,伸縮部材の伸長力により発生した皺の
為,見栄えは必ずしも良いものではなかった。
これに対し,本件発明1の実施品は,腰下部の伸縮部材が,腰下部の
中央部を除く左右脇部に配置されており,吸収コア上が平面になってお
り,印刷されたキャラクターも明確に判別できる。また,各被控訴人製
品でも同様に吸収コア上が平面になっており,印刷されたキャラクター
は明確に判別できる。このように,各被控訴人製品は,本件発明1の
「製品として目立つ中央部が変形したり皺を生じたりすることがないの
で,見栄えに優れた製品となる。」との作用効果を奏している。
したがって,本件発明1の構成要件Cの一部を各被控訴人製品の上記
異なる部分に置き換えても,本件発明1と同一の作用効果を奏するた

め,置換可能性がある。
(ウ) 置換容易性(第3要件)
各被控訴人製品製造当時,製造上の理由から,構成要件Cの「腰下部
の中央部を除く左右脇部に配置」することに代えて,吸収コアを避けた
吸収主体の一部に伸縮部材を配置することは,当業者が容易に想到する
構成であるから,各被控訴人製品との前記異なる部分については置換容
易性がある。
(エ) 公知技術からの想到非容易性(第4要件)
少なくとも本件発明1の構成要件Dは,本件特許の出願前の公知技術
にはない独創的な構成であるから,構成要件Dを備える各被控訴人製品
の構成は,本件特許の出願前の公知技術から,当業者が容易に想到でき
たものではない。
(オ) 意識的除外等の特段の事情(第5要件)
本件特許の出願審査の過程で,各被控訴人製品の構成をその技術的範
囲から除外した等の特段の事情はない。
被控訴人は,出願当初明細書には,各被控訴人製品のように,伸縮部
材が,腰下部の一部において吸収主体10を横断して周方向に連続して
配置固定され,腰下部の残部においては中央部に存在せず,製品の左右
脇部においてのみ配置固定されるという構成をも含めた開示・示唆が
あったにもかかわらず,これを意識的に除外したものであると主張す
る。
しかしながら,構成要件Cには,「腰下部の全領域において中央部を
除く」と記載されているわけではなく,また,「左右脇部にのみ」とも
記載されているわけではないのであるから,出願経過において,意識的
に「吸収コア13が位置しない中央部にも伸縮部材を存在させない」と
の構成を記載したものではないから,意識的除外には該当しない。

イ 被控訴人の主張
各被控訴人製品は,以下のとおり少なくとも均等論の第1,第4及び第
5要件を充足しないから,均等侵害は成立しない。
(ア) 非本質的部分(第1要件)について
控訴人らは,フィットギャザー(221-1)が腰下部で周方向に連続し
て配置されている点で異なるとしても,同部分は,本件発明1の本質的
部分ではないと主張する。しかし,同主張は,特許請求の範囲に記載さ
れたどの構成とフィットギャザー(221-1)とを対比しているのかが明
瞭ではない。
仮に,控訴人らが,フィットギャザー(221-1)は腰下部にあっても,
吸収コアが存在しない部分はウエスト部と異なるところがないから,フ
ィットギャザー(221-1)が腰下部にあることは本件発明1の本質的部分
に関するものではないと主張するのであれば,同主張は,「ウエスト部
は,吸収主体10の長手方向端部(透液性トップシート11の端部)付
近とウエスト開口縁との間の領域である」との控訴人らの主張を裏口か
ら覆すことにほかならず,失当である。
また,仮に,控訴人らが,フィットギャザー(221-1)は吸収コアが存
在しない部分にあるから,「腰下部の中央部を除く左右脇部に配置さ
れ」た伸縮部材と均等であると主張するのであれば,同主張も明らかに
本件発明1の本質と矛盾している。本件発明1の本質の少なくとも一部
は,腰下部の中央部から伸縮部材を除くことによって中央部に皺を生じ
させないことにある。したがって,中央部に伸縮部材が存在しても均等
であるといえる場合があるとすれば,控訴人らの主張とは正反対に,伸
縮部材が板のような剛性のある部材に固定されているために伸縮性を全
く発揮できないような場合に限られるはずだからである。
いずれにせよ,本件明細書の【0010】の「製品として目立つ中央

部が変形したり皺を生じたりすることがないので,見栄えに優れた製品
となる。」との作用効果の観点からすれば,吸収コア上に配置される伸
縮部材を「中央部を除く左右脇部」に配置することよりも,吸収コア上
ではない箇所に配置される伸縮部材を「中央部を除く左右脇部」に配置
することの方がより技術的に重要である。また,同じく【0010】の
記載の「さらに,製品を見るとき,目立つのは中央部(周方向の中央
部)であるところ,この形態においては中央部を除く左右脇部において
のみ伸縮部材が存在するので,製品の見栄えに優れる。」という作用効
果の観点からは,伸縮部材が吸収コアの上に配置されているか否かは技
術的に無関係であり,伸縮部材が中央部の全体において中央部を除く左
右脇部に配置される必要があること等を考慮すれば,「縦方向に沿って
腰下部まで延在する半剛性の吸収コアを有し」との構成と,「腰下部の
伸縮部材は,腰下部の中央部を除く左右脇部に配置されている」との構
成の双方とも本件各発明の本質的部分であると解される。さらに,後記
(ウ)で述べる本件特許の出願経過を考慮すれば,構成要件Cの「前記腰
下部の前記伸縮部材は,前記腰下部の中央部を除く左右脇部に配置さ
れ」との点は,少なくとも本件各発明の本質的部分であると解される。
よって,周方向に連続して配置されるフィットギャザー(221-1)の
一部が腰下部に配置されていることから,「前記腰下部の前記伸縮部材
は,前記腰下部の中央部を除く左右脇部に配置され」(構成要件C)と
の点で本件各発明と相違する各被控訴人製品は,本件各発明の本質的部
分において相違するものであるから,均等論の第1要件を充足しない。
(イ) 公知技術からの想到非容易性(第4要件)について
本件各発明が,花王発明に基づき進歩性欠如の無効理由を有すること
は,前記(原判決15頁下から6行目から同19頁10行目)のとおり
である。

したがって,各被控訴人製品の構成が本件各発明の技術的範囲に属す
るのであれば,各被控訴人製品の構成が,本件各発明の出願時における
公知技術(花王発明)と同一又は容易に推考できたものであることは明
らかである。
よって,均等論の第4要件も充足しない。
(ウ) 意識的除外等の特段の事情(第5要件)について
構成要件Cの「前記腰下部の前記伸縮部材は,前記腰下部の中央部を
除く左右脇部に配置され」との要件は,出願当初明細書の特許請求の範
囲の記載には存在せず,平成20年6月19日付けの拒絶理由を回避す
るため,平成20年8月26日付け手続補正書による補正(以下「本件
補正」という。)によって追加されたものである。
当該手続補正書と同日付けで提出された意見書において,出願人は,
「構成Cは,段落0043に依拠」する補正であると説明している。出
願当初明細書の【0043】の記載とは,【0040】から始まる一連
の文章の一部であることは明らかであるから,図4に関する説明であ
る。そして,図4においては,腰下部Uの吸収コアが存在する部分のみ
ならず,吸収コアが存在しない吸収主体部分も含めて,腰下部Uの全領
域において,中央部を除く左右脇部に腰下部伸縮部材21F,21Bが
配設されている様子が図示されていることから,構成要件Cの要件の追
加が,このような図4の形態を意図して追加されたものであることが明
らかである。
また,出願当初明細書には,現在の明細書(本件明細書)の記載と同
じく,「上記の第1~第4の実施の形態を概念的に纏めると,それぞれ
図12の(A)~(D)に示すとおりとなる。これらを比較して推測で
きるように,ウエスト伸縮部材20F,20B,ならびに腰下部伸縮部
材21F,21Bは,吸収主体10を横断して周方向に連続して配置固

定する形態と,吸収コア13が位置する中央部には存在せず,製品の左
右脇部のおいてのみ配置固定する形態とを選択的に採ることができ
る。」,「このように伸縮部材の配設形態は適宜であることを付言す
る。」(いずれも【0050】)との記載がある。そうすると,各被控
訴人製品のように,腰下部の一部は吸収主体10を横断して周方向に連
続して配置固定,腰下部の残部は中央部には存在せず,製品の左右脇部
においてのみ配置固定という構成をも含めた開示・示唆があったとい
え,また,伸縮部材の配設形態を特許請求の範囲の記載においてどのよ
うに特定するかも出願人の任意であったことが明らかである。そのよう
な状況の中,出願人は,上記のとおり,構成要件Cを追加する本件補正
を行ったのである。
以上の出願経過に鑑みれば,構成要件Cの「前記腰下部の前記伸縮部
材は,前記腰下部の中央部を除く左右脇部に配置され」との形態以外の
伸縮部材の配設形態,すなわち,各被控訴人製品のように吸収主体10
を横断して周方向に連続して配置固定,腰下部の残部は中央部には存在
せず,製品の左右脇部においてのみ配置固定という構成を含むその他の
伸縮部材の配設形態の構成は,本件補正によって,本件各発明の技術的
範囲から意識的に除外されたことが客観的・外形的に明らかである。
以上によれば,本件については,意識的除外等の特段の事情があり,
均等を認めることはできない。
(2) 争点5(時機に後れた攻撃方法か否か等)について
ア 被控訴人の主張
(ア) 控訴審における控訴人らの主張は,いずれも時機に遅れた攻撃方法
の提出である。
控訴人らは,「ウエスト部は,吸収主体10の長手方向端部(透液性
トップシート11の端部)付近とウエスト開口縁との間の領域である」

との原判決の認定を前提とした上で,①構成要件Cの「中央部を除く」
とは,「吸収コア13が位置する中央部には存在せず」との意味である
との新たな文言侵害の主張,及び②各被控訴人製品について均等侵害が
成立するとの新たな主張を,控訴審になって初めて提出した(以下,①
の主張と②の主張を併せて「本件攻撃方法」という。)。
しかしながら,控訴人らは,原審においては,「ウエスト部は,胴回
り部のうちウエスト開口縁側の領域であり,かつ,吸収コア13の長手
方向端部と重ならない部分と解するべきである。」として,原判決の上
記認定とは異なる「ウエスト部」の解釈を一貫して主張し,この解釈を
前提として,各被控訴人製品が構成要件Dの「前記腰下部に配置された
前記伸縮部材の伸張応力及び断面外径は,前記ウエスト部に配置された
前記伸縮部材の伸張応力及び断面外径よりも小さく」との要件を充足す
ることについての主張に専心してきた。
これに対して,被控訴人も,原審においては,「ウエスト部」に関す
る控訴人らの解釈を前提とした構成要件D非充足の主張が認められるこ
とを前提に,「ウエスト部」の解釈に関する控訴人らの主張を争わない
とした上で,専ら,各被控訴人製品が構成要件Dの「前記腰下部に配置
された前記伸縮部材の伸張応力及び断面外径は,前記ウエスト部に配置
された前記伸縮部材の伸張応力及び断面外径よりも小さく」との要件を
充足しないとの主張及びこれに対する控訴人らの反論への再反論に注力
するとともに,予備的に,原判決が採用した構成要件C非充足の理由と
同様の主張も適時に提出していた。
したがって,控訴人らは,原審において,構成要件Cについて,原判
決が採用した「ウエスト部」の解釈を前提として,本件攻撃方法と同様
の主張を提出する機会は十二分にあった。のみならず,控訴人らは,原
審が開始されるよりも前から本件攻撃方法と同様の主張を検討していた

(乙61参照)。したがって,控訴人らが時機に後れて本件攻撃方法を
提出したことにつき「故意又は重大な過失」があったことは明らかであ
る。
また,本件攻撃方法は,原審における控訴人らの主張と重なるところ
が全くないものであり,特に均等論については五つもの各要件の充足性
について当事者間で新たに攻撃防御を重ねなければならないことになる
から,「訴訟の完結を遅延させる」ものであることは明らかである。
よって,被控訴人は,控訴人らの本件攻撃方法につき,民事訴訟法1
57条1項に基づく却下を申し立てる。
(イ) 控訴審における控訴人らの主張は,禁反言の法理ないし訴訟上の信
義則に反し許されないこと
被控訴人は,原審において,「ウエスト部」の解釈に関する原審にお
ける控訴人らの主張を条件付きで認めた上で,これを前提とした防御に
多大な負担を強いられてきたが,それが奏功して,被控訴人は,原審に
おいて,構成要件C非充足の主位的判断,及び原審における控訴人らの
「ウエスト部」の解釈に関する主張を前提とした構成要件D非充足の予
備的判断を勝ち取った。
したがって,「ウエスト部」の解釈に関して,原審における控訴人ら
の主張と明らかに矛盾する新たな主張を許すことは,原審において,控
訴人らの「ウエスト部」の解釈を前提とした主張に誠実に対応してきた
被控訴人の,もはや控訴人らが「ウエスト部」ないし構成要件Cについ
て別異の主張をすることはないだろうという保護されるべき合理的な期
待に反するものであるから,控訴人らが本件攻撃方法を主張すること
は,禁反言の法理ないし訴訟上の信義則に反し,許されないというべき
である。
イ 控訴人らの主張

(ア) 時機に後れた攻撃方法であるとの主張について
訴訟において事実関係に争いがある場合に,当事者の一方が,相手方
の主張を認めて争点を減らし,審理を促進させることは一般的になされ
ることであり,「審理の完結を遅延させる」ものに該当しないから,被
控訴人の主張には理由がない。
(イ) 禁反言の法理ないし訴訟上の信義則違反であるとの主張について
同一訴訟手続内において,控訴審において原審の認定を争わないとし
ただけで,禁反言の法理ないし訴訟上の信義則に反するとするいわれは
ない。まして,原審は控訴人らの請求を棄却しているのであるから,原
審の認定を争わないことにより,被控訴人の利益を損なうおそれもな
い。よって,控訴人らが本件攻撃方法を主張することが,訴訟上の信義
則違反等の法理で制限される理由はない。
また,控訴人ら文言侵害に関する新主張及び均等侵害の主張は,控訴
理由書で主張されているものであり,適時においてなされているから,
控訴審の「審理の完結を遅延させる」ものではなく,被控訴人の主張に
は理由がない。
第3 当裁判所の判断
当裁判所も,各被控訴人製品は,本件各発明の技術的範囲に属しないから,
控訴人らの請求はいずれも理由がないものと判断する。その理由は,次のとお
りである。
1 争点2-1(文言侵害の成否)について
(1) 本件発明1の構成要件Cについて
ア 本件明細書の記載等
(ア) 本件明細書(甲2,3)の発明の詳細な説明には,次の記載があ
る。
「【0010】

(作用効果)・・・請求項1記載の発明は,縦方向に沿って腰下部ま
で延在する半剛性の吸収コアを有し,腰下部の伸縮部材は,腰下部の中
央部を除く左右脇部に配置されている。
吸収コアは可撓性のシートに比較して半剛性を示すので,伸縮部材に
よる収縮力の伝達により変形したり皺を生じたりすることが少ない。
その結果,製品として目立つ中央部が変形したり皺を生じたりするこ
とがないので,見栄えに優れた製品となる。製品の中央部には,キャラ
クターなどのデザインを施すが,この部分が変形したり皺を生じたりす
ることがないためにそのデザインが崩れることなく鮮明に分かるものと
なる。
また,製品の周方向の締め付け力は,主に胴周り部の脇部に作用し,
肌との摩擦力により吸収コアの中央に向かうに従って減衰されるので,
吸収コアのほぼ全体領域においては周方向の締め付け力が小さいものと
なり,お腹を過度に圧迫することがない。
さらに,製品を見るとき,目立つのは中央部(周方向の中央部)であ
るところ,この形態においては中央部を除く左右脇部においてのみ伸縮
部材が存在するので,製品の見栄えに優れる。」
「【0032】
図3の符号において,「縦方向」とは,腹側と背側を結ぶ方向を意味
し,「周方向」とは前記縦方向と直交する方向を意味する。「ウエスト
開口縁」とはウエスト開口部WOの縁を意味し,「レッグ開口縁」とは
レッグ開口部LOの縁を意味する。「レッグ開口始端」とはレッグ開口
部LOのレッグ開口縁と接合部30とが交差する位置を意味し,レッグ
開口縁の始まり個所の意味である。「胴周り部」Tとは,ウエスト開口
縁からレッグ開口始端に至る長さ範囲の全体領域を意味する。胴周り部
Tは,概念的に「ウエスト部」Wと「腰下部」Uとに分けることができ

る。これらの縦方向の長さは,製品のサイズによって異なるが,ウエス
ト部Wは15~40mm,腰下部Uは65~120mmである。「股
部」Lとは,レッグ開口部LOを形成する長さ範囲の全体領域を意味す
る。また,「中央部」とは,製品の中央線を含む側部を除く中間領域を
意味する。「脇部」とは,胴周り部Tにおける両側部を意味する。」
「【0043】
そしてかかる構成のもと,本発明に従って前身頃F及び後身頃Bのウ
エスト部Wから股部Lまでの間の領域たる腰下部Uにおける,前身頃F
の下腹部及び後身頃Bの臀部に,周方向に沿って腰下部伸縮部材21
F,21Bが設けられている。そして,腰下部伸縮部材21F,21B
はそれぞれ,前身頃F及び後身頃Bにおいて,一方側の接合部30から
他方側の接合部30までの部分のうち吸収コア13のほぼ全体を除く製
品の左右脇部に設けられている。」
「【0050】
(パンツ型使い捨ておむつの各形態についての補足説明及び他の実施
の形態)
上記の第1~第3の実施の形態を概念的に纏めると,それぞれ図12
の(A)~(C)に示すとおりとなる。これらを比較して推測できるよ
うに,ウエスト伸縮部材20F,20B,ならびに腰下部伸縮部材21
F,21Bは,吸収主体10を横断して周方向に連続して配置固定する
形態と,吸収コア13が位置する中央部には存在せず,製品の左右脇部
の(ママ)おいてのみ配置固定する形態とを選択的に採ることができる。ま
た,股部伸縮部材23の配設の有無についても選択可能である。さら
に,前身頃Fと後身頃Bとの間で伸縮部材の配設形態を相違させること
もできる。したがって,図12の(E)に他の実施の形態として示すよ
うに,ウエスト伸縮部材20F,20B,ならびに腰下部伸縮部材21

F,21Bを,吸収コア13が位置する中央部には存在せず,製品の左
右脇部においてのみ配置固定し,さらに股部伸縮部材23を設けない形
態や,図12の(F)に別の実施の形態として示すように,ウエスト伸
縮部材20F,20B,ならびに腰下部伸縮部材21F,21Bを,吸
収コア13が位置する中央部には存在せず,製品の左右脇部の(ママ)お
いてのみ配置固定し,さらに股部伸縮部材23を設ける形態なども採用
できる。このように伸縮部材の配設形態は適宜であることを付言する。
腰下部伸縮部材21F,21B,または股部伸縮部材23を,吸収コア
13が位置する中央部には存在せず,製品の左右脇部の(ママ)おいての
み配置固定する場合において,腰下部伸縮部材21F,21B端部,ま
たは股部伸縮部材23の端部が吸収コア13の側縁部に重なる場合と,
吸収コア13の側縁に達しないで離間する場合との両者を含む。」
「【0056】
他方で,製品の中央部(吸収コアのほぼ全体領域)に,図14に示す
ように,不透液性バックシート12の裏面側にキャラクターなどのデザ
インをたとえば印刷により施すことができる。このデザイン部分は,あ
る程度の剛性を有する吸収コア13を有し,かつ本発明にしたがって外
形シート1が変形したり皺を生じたりすることがないために,そのデザ
インが崩れることなく鮮明に分かるものとなる。また,図14に示すよ
うに,製品の正面と裏面とに対応して,当該キャラクターの正面と背面
とを施すと,誰でも一目で前後を判別でき,おむつ換えが楽しくなり,
着用者も喜ぶものとなる。デザインを施したデザインデザイン (ママ)
シートを外形シート間に介在させることでもよい。また,外形シート1
にデザイン印刷することもできる。」
(イ) また,図4(第1の実施の形態の展開状態使用面側からの平面図)
及び図9(第3の実施の形態の展開状態使用面側からの平面図)は,吸

収主体10の長手方向端部(透液性トップシート11の端部)付近を
もってウエスト部Wと腰下部Uとを区分し,ウエスト部Wにウエスト伸
縮部材20F,20Bを配置し,腰下部Uに腰下部伸縮部材21F,2
1Bを配置していることを図示している。
イ 「ウエスト部」と「腰下部」の意味について
上記ア認定の本件明細書及び図面の記載によれば,本件発明1における
「ウエスト部」は,吸収主体10の長手方向端部(透液性トップシート1
1の端部)付近とウエスト開口縁との間の領域であり,「腰下部」は,吸
収主体10の長手方向端部(透液性トップシート11の端部)付近とレッ
グ開口始端との間の領域であると認められる(この点は,控訴人らも争わ
ないところである。)。
ウ 「腰下部の中央部」の意味について
上記ア認定の本件明細書及び図面の記載よれば,本件発明1における
「腰下部の中央部」とは,製品の中央線を含む,側部を除く周方向の中間
領域を意味するものと認められる(【0032】)。
控訴人らは,「腰下部の中央部」との用語が周方向の中央を意味すると
しても,縦方向において腰下部のうちどの部分を意味するのかは,本件明
細書【0050】の説明によるべきであるとして,構成要件Cの「腰下部
の中央部を除く」とは「吸収コア13が位置する中央部には存在せず」の
意味であると主張する。控訴人らの主張は,「腰下部の中央部」とは,製
品の中央線を含む,側部を除く周方向の中間領域のうち,吸収コアの存在
する領域だけを意味するというものと解される。
なるほど,本件明細書の【0050】には「ウエスト伸縮部材20F,
20B,ならびに腰下部伸縮部材21F,21Bは,吸収主体10を横断
して周方向に連続して配置固定する形態と,吸収コア13が位置する中央
部には存在せず,製品の左右脇部のおいてのみ配置固定する形態とを選択

的に採ることができる」との記載があり,また,【0056】には「製品
の中央部(吸収コアのほぼ全体領域)に,図14に示すように,・・・キ
ャラクターなどのデザインをたとえば印刷により施すことができる」との
記載があって,「腰下部の中央部」に吸収コア13が位置すること及び
「腰下部の中央部」が吸収コアのほぼ全体領域であることが記載されてい
る。
しかし,これらの記載は,吸収コア13が位置する部分のみ,あるいは
吸収コアの全体領域のみが,「腰下部の中央部」であることを示すもので
はない。
また,本件明細書の【0050】には,「ウエスト伸縮部材20F,2
0B,ならびに腰下部伸縮部材21F,21Bは,…吸収コア13が位置
する中央部には存在せず,製品の左右脇部のおいてのみ配置固定する形
態」,「ウエスト伸縮部材20F,20B,ならびに腰下部伸縮部材21
F,21Bを,吸収コア13が位置する中央部には存在せず,製品の左右
脇部においてのみ配置固定し」などの記載がある。これらの記載によれ
ば,「腰下部の中央部」は,腰下部(すなわち胴周り部)の縦方向の範囲
全体において,「左右脇部」と相対立する概念して位置付けられているこ
とが認められる。
さらに,後記2(2)のとおり,構成要件Cは,平成20年8月26日付
けの本件補正によって付加された要件であり,控訴人らの同日付けの意見
書において「請求項1発明の・・・構成Cは,段落0043に依拠し」と
記載されているところ,本件補正における構成要件Cの根拠とされた出願
当初明細書の【0043】(本件明細書の【0043】)において説明さ
れている図4には,腰下部Uの吸収コアが存在する領域のみならず,吸収
コアが存在しない吸収主体の領域を含めて,腰下部Uの全領域において,
左右脇部にのみ腰下部伸縮部材21F,21Bが配設されている様子が図

示されている。すなわち,「腰下部の中央部」が,製品の中央線を含む,
側部を除く周方向の中間領域のうち,吸収コアの存在する領域だけを意味
するという控訴人らの上記主張は,出願経過における控訴人ら自身の上記
意見書における説明及び本件明細書の記載と上記図4とも矛盾するもので
ある。
以上によれば,構成要件Cの「前記腰下部の前記伸縮部材は,前記腰下
部の中央部を除く左右脇部に配置され」における「腰下部の中央部」を,
吸収コアの位置する中央部のみに限定することはできず,控訴人らの上記
主張を採用することはできない。
エ 各被控訴人製品が構成要件Cを充足するかについて
(ア) 証拠(甲4,5,乙2,3)及び弁論の全趣旨によれば,各被控訴
人製品1のフィットギャザー(221)の本数は,前身頃が12本ないし1
4本,後身頃が13本であり,そのうち周方向に連続して配置されてい
るものの本数は,前身頃が1本ないし3本,後身頃が4本ないし5本で
あり,各被控訴人製品2のフィットギャザー(221)の本数は,前身頃が
12本ないし14本,後身頃が11本であり,そのうち周方向に連続し
て配置されているものの本数は,前身頃が3本ないし4本,後身頃が3
本ないし5本であること,各被控訴人製品のフィットギャザー(221)の
うち周方向に連続して配置されているフィットギャザー(221-1)は,
吸収コア(213)の長手方向端部よりも上部(ウエスト開口縁の側)の領
域に配置され,その一部が吸収主体(210)を横断して配置され,フィッ
トギャザー(221)からフィットギャザー(221-1)を除いたフィットギャ
ザー(221-2)は,吸収コア(213)の長手方向端部よりも下部(股部の側)
の領域において,吸収コア(213)を横断することなく,中央部を除く左
右脇部に配置されていることが認められる。
(イ) そうすると,各被控訴人製品の吸収主体(210)は,本件発明1の吸

収主体10に該当するから,各被控訴人製品は,フィットギャザー
(221-2)が腰下部の左右脇部に配置されているものの,フィットギャ
ザー(221-1)は,腰下部においてその周方向に連続して配置されてい
て,腰下部の左右脇部のみならずその中央部にも配置されているもので
ある。したがって,各被控訴人製品は,本件発明1の「前記腰下部の前
記伸縮部材は,前記腰下部の中央部を除く左右脇部に配置され」との構
成要件Cを充足しない。
(2) 本件発明2の構成要件Gについて
本件発明2の構成要件Gは「前記腰下部の前記伸縮部材は,…前記腰下部
の中央部を除く左右脇部に配置され,」であり,本件発明1の構成要件Cの
構成を含むものであるから,前記のとおり各被控訴人製品が構成要件Cを充
足しない以上,各被控訴人製品は,本件発明2の構成要件Gも充足しない。
(3) 小括
よって,各被控訴人製品について,本件各発明との関係において文言侵害
は成立しない。
2 争点2-2(均等侵害の成否)について
(1) 各被控訴人製品と本件各発明との相違点
前記1のとおり,各被控訴人製品は,腰下部に配置されたフィットギャ
ザー(221)の一部であるフィットギャザー(221-1)が,周方向に連続して配
置されていて,本件発明1の構成要件Cの「前記腰下部の前記伸縮部材は,
前記腰下部の中央部を除く左右脇部に配置され」との要件を文言上充足しな
い。各被控訴人製品は,少なくともこの点において,本件各発明と相違す
る。
そして,均等侵害については,最高裁判所平成6年(オ)第1083号同1
0年2月24日第三小法廷判決・民集52巻1号113頁が示す五つの要件
について判断する必要があるところ,本件では,事案の内容に鑑み,まず,

意識的除外等の特段の事情(第5要件)から判断する。
(2) 意識的除外等の特段の事情(第5要件)について
ア 本件特許の出願経過の概要
控訴人らは,平成12年12月8日に本件特許を出願し(特願2000
-374190,甲1),平成14年6月18日に出願公開されたものの
(特開2002-172134,甲2),平成20年6月19日に拒絶理
由通知を受けた(乙6の1)。
控訴人らは,平成20年8月26日,手続補正書(乙6の5)を提出し
て本件補正をするとともに同日付けで意見書(乙6の2)を提出した。
控訴人らは,上記出願について,平成20年9月11日,特許査定を受
けた(乙6の3)。
イ 本件補正の内容
控訴人らは,平成20年6月19日付けで,請求項1ないし8につい
て,引用文献1(特開平8-280739号公報)及び引用文献2(特開
2000-126229号公報)を理由とする拒絶理由通知を受け(乙6
の1),請求項1を次のとおり補正した。
(本件補正前のもの)
「【請求項1】
使用状態においてウエスト開口部及び左右レッグ開口部が形成され,
少なくとも前記ウエスト開口縁から前記レッグ開口始端に至る長さ範囲
の胴周り部において周方向に沿い,かつ縦方向に間隔を有する多数の伸
縮部材を有する使い捨て紙おむつであって,
少なくとも前身頃において,太さが620dtex以下の前記伸縮部
材が,前記間隔を7.0mm以下とされた状態で製品の外面を構成する
シートに対して取り付けられた領域が,前記胴周り部の60%以上の長
さ範囲にわたって存在する,

ことを特徴とする使い捨て紙おむつ。」
(本件補正後のもの)
「【請求項1】
使用状態においてウエスト開口部及び左右のレッグ開口部が形成さ
れ,
前記ウエスト開口縁を含むウエスト部と,該ウエスト部の下端から前
記レッグ開口始端に至る腰下部とからなる胴周り部において,周方向に
沿い,かつ縦方向に間隔をもって配置された多数の伸縮部材を有し,か
つ縦方向に沿って前記腰下部まで延在する半剛性の吸収コアを有する使
い捨て紙おむつであって,
前記伸縮部材は,前記胴回り部の60%以上の長さ範囲にわたって前
記間隔を7.0mm以下とされた状態で配置され,
前記腰下部の前記伸縮部材は,前記腰下部の中央部を除く左右脇部に
配置され,
前記腰下部に配置された前記伸縮部材の伸張応力及び断面外径は,前
記ウエスト部に配置された前記伸縮部材の伸張応力及び断面外径よりも
小さく,かつ太さが620dtex以下で,伸長率が150~350%
ある,
ことを特徴とする使い捨て紙おむつ。」
ウ 本件補正により意識的に除外されたもの
上記イによれば,本件発明1については,本件補正により,少なくと
も構成要件Cの「前記腰下部の前記伸縮部材は,前記腰下部の中央部を
除く左右脇部に配置され,」との要件が加えられたことが明らかであ
る。
出願当初明細書の【0050】には,「上記の第1~第4の実施の形
態を概念的に纏めると,それぞれ図12の(A)~(D)に示すとおり

となる。これらを比較して推測できるように,ウエスト伸縮部材20
F,20B,ならびに腰下部伸縮部材21F,21Bは,吸収主体10
を横断して周方向に連続して配置固定する形態と,吸収コア13が位置
する中央部には存在せず,製品の左右脇部のおいてのみ配置固定する形
態とを選択的に採ることができる。」,「このように伸縮部材の配設形
態は適宜であることを付言する。」との記載がある(乙6の4)。本件
補正前と本件補正後の請求項1の前記各記載と図12の(A)~(D)
の実施の形態からも明らかなように,本件補正前の請求項1には,腰下
部伸縮部材が吸収主体10を横断して周方向に連続して配置固定する実
施形態と,腰下部伸縮部材が吸収コア13が位置する中央部には存在せ
ず,製品の左右脇部においてのみ配置固定される実施形態が選択的に存
在し,いずれも請求項1に包含されていたところ,本件補正後の請求項
1においては,このうち,前者(腰下部伸縮部材が吸収主体10を横断
して周方向に連続して配置固定する実施形態)が減縮により除外され,
後者(腰下部収縮部材が中央部には存在せず,製品の左右脇部において
のみ配置固定される実施形態)が本件補正による減縮後も残ったことが
認められる。
なお,控訴人らの平成20年8月26日付け意見書によれば,本件補
正により加えられた構成要件Cは,本件明細書の【0043】に依拠す
るものであることが明記されており(乙6の2),本件明細書の【00
43】には,「腰下部伸縮部材21F,21Bは・・・一方側の接合部
30から他方側の接合部30までの部分のうち吸収コア13のほぼ全体
を除く製品の左右脇部に設けられている」との記載があり,これと同一
の実施形態についての記載である【0040】で引用されている図4に
記載された実施形態をみると,腰下部伸縮部材21F,21Bが腰下部
中央部を除く左右脇部にのみ配置されている実施形態が示されている。

以上によれば,本件補正を客観的・外形的に見れば,控訴人らにおい
て,腰下部における伸縮部材の配置について,構成要件Cの「前記腰下
部の前記伸縮部材は,前記腰下部の中央部を除く左右脇部に配置され」
との実施形態が包含されるものに減縮し,従前の請求項1に記載されて
いた,これと異なる実施形態,すなわち,腰下部伸縮部材の一部が吸収
主体10を横断して周方向に連続して配置固定され,その余の腰下部伸
縮部材が製品の左右脇部において配置固定されるという実施態様を,本
件補正により,本件発明1の技術的範囲から意識的に除外したものと認
められる。
そして,各被控訴人製品は,腰下部伸縮部材に当たるフィットギャ
ザー221 の一部(221-1)が吸収主体10を横断して周方向に連続して配
置固定され,その余のフィットギャザー221-2 が中央部を除く左右脇部
において配置固定されるというものであるから,各被控訴人製品は,本
件補正により請求項1から意識的に除外されたものに包含されるものと
いわざるを得ない。したがって,各被控訴人製品については,均等論を
主張し得ない特段の事情が存在するものと認められる。
(3) 小括
よって,各被控訴人製品について,本件各発明との関係において均等侵
害は成立しない。
3 争点5(時機に後れた攻撃方法か否か等)について
(1) 被控訴人は,控訴人らの本件攻撃方法の提出は時機に後れたものであり
却下されるべきである旨主張する。
しかし,本件攻撃方法は,いずれも平成25年3月18日の当審第1回口
頭弁論期日において陳述された控訴理由書に記載されており,既に提出済み
の証拠に基づき判断可能なものである上,当裁判所は,その後2回の弁論準
備手続期日(そのうち1回は技術説明会を実施したもの)を経て,同年10

月7日の当審第2回口頭弁論期日において弁論を終結したものである以上,
本件攻撃方法の提出が「訴訟の完結を遅延させる」(民訴法157条1項)
ものとまでは認められない。
よって,本件攻撃方法を時機に後れたものとして却下する必要はない。
(2) 被控訴人は,本件各発明の「ウエスト部」の文言解釈に関して,控訴人
らが控訴審において,原審における主張と異なる主張をしたことは,被控訴
人において,もはや控訴人らが「ウエスト部」ないし構成要件Cについて別
異の主張をすることはないであろうとの合理的な期待に反するものであり,
禁反言の法理ないし訴訟上の信義則に反し許されない旨主張する。
しかし,控訴人らは,「ウエスト部」の解釈に関して,原審において主張
したところが原判決によっていれられなかったことを受けて,控訴審におい
ては,原判決の認定を争わないとしたものにすぎない。このような控訴人ら
の対応をもって,禁反言の法理ないし訴訟上の信義則に反するものというこ
とはできない。
よって,被控訴人の上記主張を採用することはできない。
第4 結論
以上によれば,原判決は相当であり,本件控訴は理由がないからこれを棄却
することとして,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第3部


裁判長裁判官 設 樂  一


裁判官 西 理 香


裁判官 田 中 正 哉

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A06 商標保護強化実務

来週の知財セミナー (6月24日~6月30日)

6月25日(火) - 東京 千代田区

IPランドスケープ 2.0の活用

6月25日(火) - 大阪 大阪市

B011 特許調査の第一歩(半日)

6月26日(水) - 大阪 大阪市

B01 はじめての特許調査(Ⅰ)

6月27日(木) - 大阪 大阪市

B02 はじめての特許調査(Ⅱ)

6月27日(木) - 東京 港区

A18 研究開発に必要な特許の基本

6月28日(金) - 大阪 大阪市

B32 はじめての特許情報分析

6月28日(金) - 大阪 大阪市

2019年 Orbit ユーザー会 【大阪】

6月28日(金) - 東京 千代田区

商標の識別性と類否判断について

6月29日(土) - 京都 京都市

弁理士の日記念講演会

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