知財判決速報/裁判例集知的財産に関する判決速報,判決データベース

ホーム > 知財判決速報/裁判例集 > 平成24(ワ)8691 著作権確認等請求事件

この記事をはてなブックマークに追加

平成24(ワ)8691著作権確認等請求事件

判決文PDF

▶ 最新の判決一覧に戻る

裁判所 確認 東京地方裁判所
裁判年月日 平成25年11月20日
事件種別 民事
当事者 被告有限会社東京サウンドシティ企画
原告OことP
法令 著作権
著作権法2条1項6号1回
民法87条1回
キーワード 許諾3回
主文 1 被告と原告との間で,原告が平成23年8月2日及び同月3日に行った歌唱の録音につき,原告がレコード製作者の権利を有することを確認する。
2 被告は,原告に対し,前項記載の録音を最初に固定したCDを引き渡せ。
3 被告は,原告に対し,20万円及びこれに対する平成24年7月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4 訴訟費用は被告の負担とする。
5 この判決は,第3項に限り,仮に執行することができる。
事件の概要 本件は,原告が,被告に対し,①原告の歌唱を録音したCDについてのレ コード製作者の権利を有することの確認,②レコード製作者の権利又は所有権 に基づき,マスターCDの引渡し,③原告が立て替えた伴奏代金20万円及び これに対する訴状送達の日の翌日である平成24年7月14日から支払済みま で年5分の割合による遅延損害金の支払,を求めた事案である。

▶ 前の判決 ▶ 次の判決 ▶ 著作権に関する裁判例

本サービスは判決文を自動処理して掲載しており、完全な正確性を保証するものではありません。正式な情報は裁判所公表の判決文(本ページ右上の[判決文PDF])を必ずご確認ください。

判決文

平成25年11月20日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
平成24年(ワ)第8691号 著作権確認等請求事件
口頭弁論終結日 平成25年9月2日
判 決
東京都世田谷区<以下略>
原 告 OことP
同訴訟代理人弁護士 渡 辺 実
東京都練馬区<以下略>
(登記簿上の本店所在地)東京都練馬区<以下略>
被 告 有限会社東京サウンドシティ企画
同訴訟代理人弁護士 大 久 保 誠 太 郎
同 播 磨 源 二
主 文
1 被告と原告との間で,原告が平成23年8月2日及び同月3日に行った歌唱
の録音につき,原告がレコード製作者の権利を有することを確認する。
2 被告は,原告に対し,前項記載の録音を最初に固定したCDを引き渡せ。
3 被告は,原告に対し,20万円及びこれに対する平成24年7月14日から
支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4 訴訟費用は被告の負担とする。
5 この判決は,第3項に限り,仮に執行することができる。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
主文同旨
第2 当事者の主張
本件は,原 告が,被告に 対し,① 原告の歌唱を録音 したCDにつ いてのレ
コード製作者の権利を有することの確認,②レコード製作者の権利又は所有権


に基づき,マスターCDの引渡し,③原告が立て替えた伴奏代金20万円及び
これに対する訴状送達の日の翌日である平成24年7月14日から支払済みま
で年5分の割合による遅延損害金の支払,を求めた事案である。
1 請求原因
(1) レコード製作者の権利の確認請求について
ア 原告は,Oの芸名で活動するジャズ歌手である。
イ 原告は,平成23年8月2日及び同月3日,「I’m a
w o m a n , Now -MIKI-」と題するアルバム( 以下 「 本件 C

D」という。)
D」 という。)
という 。)用のジャズの歌唱を行い( 以下 「 本件歌唱 」 という 。)
( 以下「 本件歌唱」という。) 。),
本件歌唱は,被告名義で依頼した録音スタッフによりマスターCD( 以下

「 本件 マスタ ー C D」 と いう 。) に録音された ( 以 下 「 本件 録音 」 と い
。)。
う 。)
ウ 原告は,被告に対し,平成22年11月11日,370万円を交付し,
当該370万円を総費用額として,本件歌唱のレコード製作を行う合意を
した。
エ 著作権法上「レコード製作者」とは「レコードに固定されている音を最
初に固定した者」をいうが(2条1項6号),物理的な録音行為の従事者
ではなく,自己の計算と責任において録音する者,通常は,原盤制作時に
おける費用の負担者がこれに該当するというべきである(東京地裁平成1
9年1月19日判決・判時2003号111頁)。
原告 と被告 の間に は,原 告の歌 唱を レコーデ ィング するこ と,レ コー
ディン グ費用 には上 記ウ の37 0万 円を 充てる ことの 合意し か存 在し な
い。
被告は,上記370万円を使用して本件録音を行ったのであるから,原
告が本件録音のレコード製作者である。
オ しかるに,被告はこれを争う。


(2) 本件マスターCDの引渡請求について
ア 被告は,本件マスターCDを所持している。
イ(レコード製作者の権利に基づく引渡請求)
本件マスターCDは,レコード製作者が,その複製権等を行使するため
に必要不可欠な物(従物)であるから,民法87条により,本件マスター
CDのレコード製作者である原告が所持すべきものである。
ウ(所有権に基づく引渡請求)
原告と被告は,上記(1)ウの合意の際,本件マスターCDの所有権が原
告に帰属することを合意した。
(3) 立替金請求について
ア 被告 は,本 件録音 に関し ,株式 会社 ソウルメ ディア コーポ レーシ ョン
以下「 ソウル社 という。) 。)に対し伴奏を依頼し,同社に所属するQと
( 以下 「 ソウル 社 」 という 。)
ウィンドブレイカーズが伴奏を行った。
イ 原告は,平成23年10月21日,ソウル社に対し,被告の支払うべき
未払演奏料20万円を代位弁済した(24万7777円を代位弁済したと
ころ,後日,同社は,被告から4万7777円の支払があったとして原告
に4万7777円を返戻した。)。
(4) よって,原告は,被告に対し,
ア 原告が本件マスターCDのレコード製作者の権利を有することの確認,
イ レコ ード製 作者の 権利又 は所有 権に 基づき, 本件マ スター CDの 引渡
し,
ウ 立替金20万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成24年
7月14日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の
支払
を求める。
2 請求原因に対する認否


(1) レコード製作者の権利の確認請求について
ア ア,イは認める。
イ ウ,エにつき,原告と被告とが本件歌唱のレコード製作を行う合意をし
たこと,被告が,平成22年11月11日,原告から370万円を交付さ
れたことは認め,その余の事実は否認し,主張は争う。
ウ 原告は被告と,遅くとも平成23年8月2日及び3日(本件録音)まで
に,次のような契約を結んだ。
(ア) 原告は歌手としてジャズを歌唱し,被告はこれを録音する。録音は
最高水準のもので行う。
(イ) 被告は上記録音を基に市販用CD(本件CD)を製作する。本件C
Dを製作するに当たっては,原告の意向を最大限反映させる。
(ウ) 被告は本件CDの独占的販売権を取得する。
(エ) 原告は,被告に対し,CD製作費用250万円を支払う。原告は上
記費用とは別にバンド費用として120万円を支払う。
(オ) 被告は原告に対し,1枚1500円以上で本件CDを交付する。枚
数は決めなかった。
エ 被告はCDを製作するまでのノウハウ,音楽関係者とのコネクション等
を総動員してCDを完成させ,その対価を総合すると本件CDの製作費は
250万円以上である。
オ 被告が,本件CDについて著作権及びレコード製作者としての権利を有
してい ること は,本 件C D(甲 1) のジ ャケッ ト裏面 に,被 告名 義で ,
「許諾 を得な いレコ ード の複製 から のレ コード 製作者 の保護 に関 する 条
約」5条で定められている原盤権による保護を受けるために必要なⓅマー
クと,万国著作権条約3条1項で定められている著作権表示を表すⓒマー
クが付いていることからも明らかである。
(2) 本件マスターCDの引渡請求について


アは認め,イの主張は争い,ウの合意は否認する。
(3) 立替金請求について
アは認め,イは不知。
第3 当裁判所の判断
1 証拠等によれば,以下の事実が認められる。
(1) 原告は,Oの芸名で活動するジャズ歌手であり(争いがない。),本件
CDを含めて9枚のアルバムをリリースしている(原告本人)。うち6枚は
レコード会社に製作を依頼し,原告は製作費を負担せず,レコード製作者の
権利も保有していないが,直近の2枚は,原告が300万円ないし350万
円の製作費の全額を負担し,アメリカ合衆国ニューヨークで録音を行い,原
告がマスターCDを保有している(甲5,原告本人,弁論の全趣旨)。
(2) 被告は,レコードの製作・販売等を業とする特例有限会社であり,Rが
唯一の取締役として被告を代表している(弁論の全趣旨)。
(3) 原告は,平成23年で歌手活動を開始して30周年を迎えることから,
これを記念したCDアルバムの製作を企画し,被告に当該CDの製作を依頼
した(争いがない。)。
当初の 計画では ,アメ リカのジ ャズ メンと共演 し,アメ リカで 録音を 行
い,ピアニストは日本から連れていく予定であった(甲5,乙4,11)。
被告は,CD製作の総費用を,CDの製作費として250万円,共演者の
ギャランティ,同行スタッフの旅費等に120万円の合計370万円と見積
もり,原告にその全額を負担することを依頼した(甲5,乙4,11,原告
本人,弁論の全趣旨)。
原告は,製作費を負担する原告に権利(レコード製作者の権利)が帰属す
ることを被告に確認し,被告はこれを了承した(原告本人)。
被告は,原告に対し,完成したCD3000枚を引き渡す約束をし,その
後,引き渡す枚数を2000枚に変更した(乙11,12,原告本人)。


(4) 原告は,平成22年11月11日,被告に対し,370万円を支払った
(争いがない。)。
(5) 原告は,平成22年11月17日,被告に対し,税理士からのアドバイ
スに基づき,上記370万円の支払について,「CD代 2000枚」とし
た領収書 の交付 を求め たが, 結局, その 領収書は 交付さ れなか った( 乙1
2,原告本人)。
(6) 被告は,平成23年3月11日,原告に対し,アメリカの演奏者のギャ
ランティーとして合計1万3000ドル,ピアニストへのギャランティーと
して16万6666円が必要となること等を説明するとともに,「いろいろ
ママ
な問題(リクエスト)を あるかと思いますが,必要経費がありません。Oさ
ん[判決注:原告]からいただいた金額はあくまでもCD,2000枚の商
品代金と演奏者のギャランティーの一部をいただいております。宣伝活動費
マ マ
及び等 の経費は一切頂いておりません。」などと記載したメールを送付した
(乙4)。
(7) 平成23年4月頃,被告代表者のRがアメリカに入国できないため,C
Dの録音はアメリカでなく日本で行うことに変更されたが,製作費総額は変
更されなかった(甲5,乙11,原告本人)。
原告は,アメリカの演奏者に代わり,ソウル社に所属する「Qとウィンド
ブレイカーズ」に演奏を依頼することにし,被告はソウル社に演奏を依頼し
た(争いがない。)。
被告は,原告に引き渡すCD枚数を1500枚に変更した(甲5・7頁,
乙2,5,6(乙5,6については枝番を含む。以下,他の書証についても
枝番があるものについては枝番を含む。),原告本人)。
(8) 原告は,平成23年8月2日及び3日,東京都内のソニー・ミュージッ
クスタジオで本件歌唱を行い,被告は,ソニーミュージックエンタテインメ
ントのエンジニアであるSを通じ,本件歌唱をSACD(スーパーオーディ


オCD),DSD(ダイレクトストリームデジタル)という高品質の録音方
法で録音し(本件録音),本件マスターCDを作成した(甲1,5,乙5,
8~11,原告本人)。原告は本件マスターCDをもらえるか被告代表者に
尋ねたが,被告代表者は黙って本件マスターCDを持ち去った(原告本
人)。
(9) 被告は,ソウル社に支払うべき演奏料金のうち24万7777円を支
払っていなかった(争いがない。)。原告と被告との間では,この演奏料金
は上記370万円に含まれていた(争いがない。)。
原告は,平成23年10月21日,ソウル社に対し,上記24万7777
円を立て替えて支払った(甲2,原告本人)。
被告は ,平成2 3年1 2月11 日, ソウル社に 4万77 77円 を支払 い
(乙2),ソウル社は原告に4万7777円を返戻した(弁論の全趣旨)。
被告は ,平成2 4年7 月24日 ,ソ ウル社に5 万円を支 払って いる( 乙
3)が,この分はソウル社から原告に返戻されていない(弁論の全趣旨)。
(10) 原告は,平成23年10月22日に被告に送付したメールで,契約書の
ドラフトの郵送又はFAXを求めた(乙1)が,結局,原被告間で契約書が
交わされることはなかった(争いがない。)。
(11) 被告は,平成23年10月29日,原告に対し,本件CD500枚,サ
ンプル50枚を送付した(乙5)。
(12) 平成23年11月2日,本件CDは完成した(甲1,乙9)。
本件CDには,以下の記載がある(甲1,乙9)。
「Music director:O
Sound co-ordinator:Q
Recording engineer:S(Sony Music)
Recording:Sony Music Studios TOKYO,Japan
For 02.03 days in August 2011


Masterring engineer:S(Sony Music)
Matrix:Tokyo Sound City Planning Co.,Ltd.Japan.」
「Ⓟ&ⓒ2011 TOKYO SOUND CITY PLANNING CO.,LTD.Tokyo,Japan.
Manufactured by TOKYO SOUND CITY PLANNING CO.,LTD.Made in Japan.
Distributed by IMPEX RECORDS JAPAN.Warning;All rights reserved.
Unauthorized duplication is a violation of applicable laws.」
Ⓟは,「許諾を得ないレコードの複製からのレコード製作者の保護に関す
る条約」5条に基づく,レコード製作者が方式主義国で保護を受けるための
表示であり,ⓒは,万国著作権条約3条1項に基づく,著作権者が方式主義
国で保護を受けるための表示である。
本件CDに同梱されているブックレット(乙8)は,被告が作成した(乙
11)。
本件C Dは,消 費税込 み325 5円 (税抜価格 3100 円)で ある( 甲
1,乙9)。
本件C Dは,原 告及び 被告にお いて 直接販売す るほか, CDシ ョップ や
オーディオ店でも販売されたものと思われる(乙10)が,原告はレコード
会社と契約書を交わしていない(原告本人)。被告がレコード会社と何らか
の契約書を交わしたのかどうかは不明である。
原告は,一切の実演家報酬及びレコード製作者としての原盤印税を受領し
ていない(弁論の全趣旨)。
(13) 被告は,平成23年11月28日,原告に対し,本件CD800枚を送
付した(乙6)。
(14) 被告代表者は,平成23年12月11日,原告のマネージャーであるT
に対し,「原盤権について渡すことは出来ません。」などと記載したメール
を送付し,Tは,「残りのCD200枚Oさんに納品してはどうですか?初
マ マ
めの約束通り。鍵盤 権については供給なのか譲渡なのか弁護士先生にも相談

して内容を協議してみてはどうですか?お互いの主張を友好的に協議したら
どうかと。実際,原盤とはどう使われるべきなのか説明もして欲しい。Oさ
んにとっては,今のRさんに不安要素があるので原盤を手元に持ちたいとし
ていると思います。」などと返信した(乙2)。
マ マ
(15) 被告代表者は,平成24年1月27日,原告に対し,「Oさんのい言う
通り,なんの契約も交わしていないのですから‥‥,何も拘束力のある制約
ママ
わ ありませんね。まだ,何枚CDを引き渡すか? 今はっきりしているのは
Oさんから弊社の銀行に370万を振り込まれたことだけです。」などと記
載したメールを送付した(甲4)。
(16) 原告は,平成24年3月26日,本訴を提起した(当裁判所に顕著)。
2 レコード製作者の権利の確認請求について
(1) 著作権法上の「レコード製作者」とは,「レコードに固定されている音
を最初に固定した者」(著作権法2条1項6号)をいうが,ここでいう「固
定した者」とは,物理的な録音行為の従事者ではなく,自己の計算と責任に
おいて録音する者,通常は,原盤制作時における費用の負担者がこれに該当
するというべきである(東京地裁平成19年1月19日判決・判時2003
号111頁)。
(2) これを本件についてみると,平成22年11月11日に原告が被告に3
70万円を交付したことは争いがないところ,上記1(3)のとおり,この3
70万円は本件CDの製作費全額として交付し,その際,レコード製作者の
権利は原告に帰属させるという合意があったというのであり,その後も本件
CDの製作費の負担やレコード製作者の権利の帰属を変更するような合意は
されなかったことが認められるから,本件CDのレコード製作者は原告であ
り,本件歌唱を録音した本件マスターCDが作成された時点で,原告が本件
CDのレコード製作者の権利の全部を原始的に取得したものというべきであ
る。


(3) 被告の主張について
ア 被告の主張が変遷していること
被告は,本件CDの「レコード製作者の権利」が原告に帰属することを
争っているところ,被告の主張は,以下のとおり変遷している。
(ア) 平成24年10月4日付け被告準備書面(1)における主張
原告がCD製作を被告に依頼した際,原告と被告は概要以下の合意を
した。
① 原告は,被告が原告の歌唱を録音しCD化すること及び被告による
CDの販売を許諾する。
② 被告は,原告に対し,販売用CDの完成後,一定枚数のCDを,市
販価格の半額で引き渡す。
③ ②の代金は,原告が被告に対しあらかじめ前払いする。
④ CDの著作権及びレコード製作者の権利は,全て被告に帰属する。
被告は,上記合意に基づき,原告のために良質なCDを作成したが,
CDの製作費は500万円を超えるものとなってしまった。
(イ) 平成24年10月30日付け被告準備書面(2)における主張
原告は,平成22年11月11日,被告に370万円を振り込んでい
るが, これ は完 成後 のCD 20 00 枚の 商品代 金と スタ ジオミ ュー ジ
シャンの報酬であり,被告はこれを原告に説明し,原告は異議を述べて
いない。
被 告と原 告との 間で は,最 終的 に, 完成し たCD 200 0枚 では な
く,1500枚を引き渡すこととされていた。原告には1300枚を引
渡済みである。
(ウ) 平成25年4月23日付け被告準備書面3における主張
原告と被告は,遅くとも平成23年8月2日及び3日までに,概要以
下の契約を締結した。


① 原告は歌手としてジャズを歌う。被告はこれを録音する。録音は最
高水準のもので行う。
② 被告は上記録音を基に市販用CD(本件CD)を製作する。本件C
Dを製作するに当たっては,原告の意向を最大限反映させる。
③ 被告は本件CDの独占的販売権を取得する。
④ 原 告は ,被 告に 対し, CD 製作 費用 250 万円 を支 払う。 原告 は
(被告準備書面3・1頁に「被告は」とあるのは誤記と認める。)上
記費用とは別にバンド費用として120万円を支払う。
⑤ 被告は原告に対し(被告準備書面3・1頁に「原告は被告に対し」
とあるのは誤記と認める。),1枚1500円以上で本件CDを交付
する。枚数は決めなかった。
被告は,上記契約に基づき,自己のノウハウ,コネクション等を総動
員して本件CDを完成させた。これらの対価を総合すると製作費は25
0万円以上である。
(エ) 被告代表者Rの平成25年5月31日付け陳述書(乙11)におけ
る陳述
被告は,平成22年10月30日,原告と次のとおり約定した。
① 被告は原告の演奏を録音しCD一式を製作する。
② 原告はCD3000枚を370万円で買う。
③ 原 告は 被告 に対 し,本 件原 盤に かか るアー ティ スト の実演 につ い
て,著作権法上の一切の権利を独占的に譲渡する。
④ 本件原盤に関わる全ての権利(所有権,レコード製作者の有する一
切の権利を含む。)は被告に帰属する。
⑤ 被告は前2号により本件原盤の全部又は一部を独占的に利用してレ
コードを複製し,これに適宜の商標を付して,国内,国外を問わず自
由に頒布できる。


⑥ 被告は原告の承諾なく,本件原盤の全部又は一部を再編集して使用
することができる。
⑦ 被告は原告の承諾なく,本件原盤を第三者に使用させることができ
る。
⑧ 被告は本件原盤のネットワーク配信(衛星放送を使った音楽配信を
含む。)による使用を,原告の承諾なく行うことができる。
そ の後, 売買す るC Dの枚 数は 30 00枚 から2 000 枚に 変更 さ
れ,さらにその後にまた枚数を減らすことになったが,減らす枚数は決
まっていなかった。原告には1400枚を引渡済みである。
イ 被告準備書面3における主張について
最終的な主張である被告準備書面3における主張(上記ア(ウ))におい
て,被告は,原告から交付された370万円が,CD制作費用250万円
及びバンド費用120万円の合計であることを認めている。
そして,同準備書面では,レコード製作者の権利の帰属について,特に
製作費の負担者と異なる者に帰属させるとの合意をしたとの主張はない。
同準備書面には,本件CDの製作費は250万円以上である旨の主張が
あるが,製作費の全額として想定された額を全額負担するとの合意をした
場合,別段の合意のない限り,その負担者が完成したレコードのレコード
製作者となり,レコード製作者の権利の全部を原始的に取得するものとい
うべきであり,実際の製作費が当初の想定を超え,超過分を負担した者が
いたとしても,当該負担者がレコード製作者の権利の全部又は一部を取得
することはないと解するのが相当であるから,上記主張は,原告のレコー
ド製作者の権利を否定する理由となるものではない。
ウ 陳述書(乙11)における陳述について
(ア) もっとも,被告代表者のRは,上記被告準備書面3の後に作成した
陳述書(乙11)において,370万円はCD3000枚(後に200


0枚,後にまた減少)の売買代金であり,レコード製作者の権利は被告
に帰属する旨の合意をした旨陳述しているので,念のためこの陳述につ
き検討する。
(イ) この点,①原告が,平成22年11月17日付けの被告宛てメール
(乙12)において,370万円につき「CD代 2000枚」とした
領収書の発行を求めていること(上記1(5)),②被告が,平成23年
3月11日付けの原告宛てメール(乙4)に「Oさんからいただいた金
額はあくまでもCD,2000枚の商品代金と演奏者のギャランティー
の一部をいただいております。」と記載していること(上記1(6)),
③本件CD(甲1)には,レコード製作者として被告の名が表記されて
いること(上記1(12)),④原告のマネージャーであるTが,平成23
年12月11日付け被告代表者宛てメール(乙2)において「残りのC
D200枚Oさんに納品してはどうですか?初めの約束通り。」と記載
していること(上記1(14))は,一見,被告代表者の上記陳述に沿うか
のようにみえる。
(ウ) しかし,①の点については,原告本人尋問の結果によれば,確定申
告のた めの 税理 士か らのア ドバ イス によ るもの であ って ,税理 士は レ
コード製作者が誰かや原盤権が誰に帰属するかを頭に入れた上でのアド
バイスではなかったというのであって,当事者間の実際の合意を反映し
たものではなかった可能性があり,また,実際には領収書は発行されな
かったのであるから,370万円がCD製作費であったことと矛盾する
とまではいえない。
(エ) ②の点も,上記①の領収書記載要請を受けた後の被告代表者の認識
を示したものにすぎず,370万円がCD製作費であったことと矛盾す
るとはいえない。
(オ) ③の点も,原告本人尋問の結果によれば,これがレコード製作者の


権利を示すものとは気付かなかったというのであり,原告がレコード製
作者の権利を有していることと矛盾するとまではいえない。
なお,本件において,原告においても被告においても,レコード会社
と原盤譲渡契約を締結したり,原盤印税を受領したりといった,レコー
ド製作者としての対外的な行動を取った証拠は全くない。
(カ) ④の点も,原告がCD製作費を負担し,レコード製作者の権利を有
しているとしても,被告が原告に(原告側で販売するため)一定枚数の
CDを引き渡す合意をすることはあり得るから,被告の陳述を裏付ける
ものとはいえない。
むしろ,370万円がCD3000枚の売買代金であったとすれば,
完成したCD3000枚との引換給付とするのが自然であるし,CDの
売買枚数が減少しても売買代金が全く変わらないのは極めて不自然であ
る(370万円が3000枚の売買代金とすれば1枚当たり1233円
である が, 15 00 枚の売 買代 金と すれ ば1枚 当た り2 466 円で あ
る。)。
(キ) 被告は,本件CDの製作費について,「500万円を超えるものと
なってしまった」(被告準備書面(1)3頁)とか「250万円以上で
ある」(被告準備書面3・2頁)とか主張するものの,実際に支出した
製作費の内訳について何ら主張立証しない(乙11の陳述書には,本件
CDの製作費についての記載が全くない。)。原告がニューヨークで録
音した過去のCDの製作費は300万円から350万円の間に収まって
いたと いう ので ある から( 原告 本人 ), 本件C Dの 製作 費も原 告の 支
払った370万円を超えるものではなかったと認められ,これに反する
証拠はない。
(ク) そもそも,被告の主張には上記のとおり変遷があり,上記(ア)の陳
述記載部分は訴状送達(平成24年7月13日)後10か月以上が経過


した平成25年5月31日付け陳述書において初めてなされたものであ
る上,被告代表者は本人尋問期日に出頭せず,上記陳述記載部分は反対
尋問を経ていないのであるから,このような訴訟経過だけから見ても,
被告代表者の上記陳述記載部分は到底信用することができない。
(4) 以上によれば,本件CDのレコード製作者は原告であり,原告がレコー
ド製作者の権利を有していると認められるから,原告によるレコード製作者
の権利の確認請求は理由がある。
3 本件マスターCDの引渡請求について
(1) 被告が本件マスターCDを所持(占有)していることは争いがない。
(2) マスターCDの所有権は,特段の合意がない限り,製作費を投じてマス
ターCDを製作させたレコード製作者に原始的に帰属するものとみるのが相
当であり,本件においてこれと異なる合意をした証拠もないから,本件マス
ターCDの所有権は,レコード製作者である原告に原始的に帰属したものと
認められる。
(3) 原告は,複製作業に必要な限度で被告に本件マスターCDの占有権原を
与えていたものと思われるが,遅くとも本件訴状の送達をもって返還を請求
し,被告は占有権原の抗弁を主張していないのであるから,原告は,被告に
対し,所有権に基づき,本件マスターCDの引渡しを求めることができる。
4 立替金請求について
(1) 平成23年10月21日時点で,被告がソウル社に対し24万7777
円の未払演奏料債務を負担していたことは争いがない。
(2) 原告は,平成23年10月21日,ソウル社に対し,上記24万777
7円を立て替えて支払ったのであるから(上記1(9)),原告は,被告に対
し,24万7777円の求償債権を取得した。
被告がソウル社に4万7777円を支払い,ソウル社は原告に4万777
7円を返戻したから(上記1(9)),原告の求償債権は4万7777円分減


少した。
被告は,その後,ソウル社に5万円を支払っている(上記1(9))が,被
告のソウル社に対する債務は原告の第三者弁済により消滅しているから,上
記支払があったからといって,原告の被告に対する求償債権が減少すること
はない。
(3) 以上によれば,原告は,被告に対し,第三者弁済に基づく求償金として
20万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成24年7月14日
から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める
ことができる。
5 以上によれば,原告の請求はすべて認められる。
よって,主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第29部

裁判長裁判官

大 須 賀 滋

裁判官

小 川 雅 敏

裁判官

西 村 康 夫

最新の判決一覧に戻る

法域

特許裁判例 実用新案裁判例
意匠裁判例 商標裁判例
不正競争裁判例 著作権裁判例

最高裁判例

特許判例 実用新案判例
意匠判例 商標判例
不正競争判例 著作権判例

特許事務所の求人知財の求人一覧

創英国際特許法律事務所

東京・京都・福岡 ・創英は、品質の三原則を意識して日常業務を遂行することを 仕事上のポリシーとして大切にしています。 ・弁理士間、弁理士・弁護士間の協働により技術分野及び法域 を超えたワンストップサービスを心がけています。 ・ITを駆使して、弁理士・弁護士の業務効率を高めています。 ・若手・中堅の有資格者のグローバル化を積極推進しています。

山王テック株式会社

埼玉県和光市又は栃木県宇都宮市 ★急募★【特許調査・解析業務】 ◆完全週休2日制、長期連休年3回 ◆有休がとりやすい会社です ◆女性も多く活躍中!働きやすい環境です

LINE株式会社

東京都新宿区 ◆特許担当募集 ◆情報系・電気系の特許権利化業務経験者 ◆世界中で利用されているメッセンジャーアプリ運営企業

新潟大学地域創生推進機構

新潟県 産学官連携リサーチ・コーディネーター募集 医歯薬学分野全般、農学分野(応用生命科学、食品科学) 産学連携活動における企業との調整 知的財産権の取得・活用支援 企業等での研究開発経験者、歓迎!

今週の知財セミナー (6月17日~6月23日)

6月18日(火) - 東京 港区

A06 商標保護強化実務

6月18日(火) - 愛知 名古屋市

A06 商標保護強化実務[TV聴講/名古屋]

6月18日(火) - 大阪 大阪市

A06 商標保護強化実務[TV聴講/大阪]

6月18日(火) - 福岡 福岡市

A06 商標保護強化実務[TV聴講/福岡]

6月20日(木) - 東京 港区

A03 特許発明の書き方(電気・機械)

6月20日(木) - 東京 千代田区

韓国発明振興会SMART3案内無料セミナー

6月21日(金) - 東京 大田区

後発でも勝てる特許戦略

6月21日(金) - 大阪 大阪市

韓国発明振興会SMART3案内無料セミナー

6月21日(金) - 愛知 刈谷市

特許管理のミカタ(特別企画セミナー)

来週の知財セミナー (6月24日~6月30日)

6月25日(火) - 東京 千代田区

IPランドスケープ 2.0の活用

6月25日(火) - 大阪 大阪市

B011 特許調査の第一歩(半日)

6月26日(水) - 大阪 大阪市

B01 はじめての特許調査(Ⅰ)

6月27日(木) - 大阪 大阪市

B02 はじめての特許調査(Ⅱ)

6月27日(木) - 東京 港区

A18 研究開発に必要な特許の基本

6月28日(金) - 大阪 大阪市

B32 はじめての特許情報分析

6月28日(金) - 大阪 大阪市

2019年 Orbit ユーザー会 【大阪】

6月28日(金) - 東京 千代田区

商標の識別性と類否判断について

特許事務所紹介 IP Force 特許事務所紹介

辰己国際特許事務所 (TATSUMI International IP Firm)

〒101-0048 東京都千代田区神田司町2丁目17番地 上田司町ビル5階 特許・実用新案 商標 外国特許 外国商標 コンサルティング 

北大阪特許事務所

〒564-0051 大阪府吹田市豊津町1番18号 エクラート江坂ビル4F 特許・実用新案 意匠 商標 外国特許 鑑定 コンサルティング 

浅村合同事務所

東京都品川区東品川2丁目2番24号 天王洲セントラルタワー 22階 特許・実用新案 意匠 商標 外国特許 外国意匠 外国商標 訴訟 鑑定 コンサルティング