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| 裁判所 | 請求棄却 東京地方裁判所 |
|---|---|
| 裁判年月日 | 平成25年11月13日 |
| 事件種別 | 民事 |
| 当事者 | 被告株式会社チユチユアンナ 原告プロエフこと プロエフこと 株式会社Cryltd. |
| 法令 |
不正競争 不正競争防止法2条1項3号10回 不正競争防止法2条4項2回 不正競争防止法5条1項2回 著作権法27条1回 不正競争防止法3条1項1回 |
| キーワード | 損害賠償4回 侵害2回 差止2回 |
| 主文 | 1 原告ら及び承継参加人の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告ら及び承継参加人の負担とする。 |
| 事件の概要 | 以下,原告X1を「原告X1」,原告X2を「原告X2」,原告株式会社C ry ltd.を「原告クライ」という。また,原告X1及び原告X2を併せ て「プロエフ」という場合がある。 本件は,原告らが,被告に対し,被告が別紙原告商品目録記載の商品(以下 「原告商品」という。)の形態を模倣した別紙被告商品目録記載の商品(以下 「被告商品」という。)を販売しているなどと主張して,①不正競争防止法3 条1項に基づく差止請求として被告商品の譲渡等の禁止,②同条2項に基づく 廃棄請求として被告製品の廃棄,③同法4条に基づく損害賠償請求として,㋐ 原告X1及び原告X2につき各654万5750円,㋑原告クライにつき67 3万6200円(いずれも附帯請求として訴状送達の日の翌日である平成24 年9月4日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金)の支 払,④同法14条に基づく信用回復の措置請求として訂正広告を求めた事案で ある(参加人は,同法2条1項3号の請求主体の地位を原告X1及び原告X2 から承継したなどと主張して,上記①と同様の請求をしている。)。 |
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平成25年11月13日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
平成24年(ワ)第22013号 商品形態模倣行為差止等請求事件
平成24年(ワ)第36288号 承継参加申立事件
口頭弁論終結日 平成25年8月23日
判 決
大阪市<以下略>
原 告 プロエフこと
X1
大阪市<以下略>
原 告 プロエフこと
X2
東京都渋谷区<以下略>
原 告 株式会社Cry ltd.
大阪市<以下略>
承 継 参 加 人 proefdesigns合 同 会 社
上記4名訴訟代理人弁護士 飯 田 圭
同 外 村 玲 子
同訴訟代理人弁理士 加 藤 ち あ き
同 上 杉 浩
同訴訟復代理人弁護士 佐 竹 勝 一
大阪市<以下略>
被 告 株式会社チユチユアンナ
同訴訟代理人弁護士 平 野 惠 稔
同 吉 村 幸 祐
同 荒 木 昭 子
主 文
1 原告ら及び承継参加人の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告ら及び承継参加人の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
1 原告らの請求
(1) 被告は,別紙被告商品目録記載の商品を譲渡し,譲渡のために展示してはならない。
(2) 被告は,前項記載の商品を廃棄せよ。
(3) 被告は,原告X1に対し,金654万5750円及びこれに対する平成24年9月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(4) 被告は,原告X2に対し,金654万5750円及びこれに対する平成24年9月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(5) 被告は,原告株式会社Cry ltd.に対し,金673万6200円及びこれに対する平成24年9月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(6) 被告は,別紙広告目録記載第1の広告を,同目録記載第2の要領で,掲載せよ。2 承継参加人の請求
(1) 被告は,別紙被告商品目録記載の商品を譲渡し,譲渡のために展示してはならない。
(2) 被告は,前項記載の商品を廃棄せよ。
第2 事案の概要
以下,原告X1を「原告X1」,原告X2を「原告X2」,原告株式会社Cry ltd.を「原告クライ」という。また,原告X1及び原告X2を併せて「プロエフ」という場合がある。本件は,原告らが,被告に対し,被告が別紙原告商品目録記載の商品(以下「原告商品」という。)の形態を模倣した別紙被告商品目録記載の商品(以下「被告商品」という。)を販売しているなどと主張して,①不正競争防止法3条1項に基づく差止請求として被告商品の譲渡等の禁止,②同条2項に基づく廃棄請求として被告製品の廃棄,③同法4条に基づく損害賠償請求として,㋐原告X1及び原告X2につき各654万5750円,㋑原告クライにつき673万6200円(いずれも附帯請求として訴状送達の日の翌日である平成24年9月4日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金)の支払,④同法14条に基づく信用回復の措置請求として訂正広告を求めた事案である(参加人は,同法2条1項3号の請求主体の地位を原告X1及び原告X2から承継したなどと主張して,上記①と同様の請求をしている。)。前提事実(証拠等を掲記した事実以外は当事者間に争いがない。)
(1) 当事者ア 原告X1及び原告X2原告X1と原告X2は,「proef」(プロエフ)というブランド名を使用して,平成23年10月以降,主としてプリントストッキングの企画,販売をして いた者である (後記オの とおり,現在は ,参加承継人 が「proef」に係る事業を承継している。)。(甲1,3,弁論の全趣旨)イ 原告クライ原告クライは,アパレル製品,紳士服,婦人服,日用雑貨品のデザイン,企画,製造,販売等を業とする株式会社である。(弁論の全趣旨)ウ 被告被告は,靴下,衣服等衣料用繊維製品の製造,販売等を業とする株式会社である。エ 承継参加人承継参加人は,アパレル製品,紳士服,婦人服,子供服のデザイン,企画,製造等を業とする株式会社である。(弁論の全趣旨)オ 承継参加人の事業承継原告X1と原告X2は,平成24年8月1日,承継参加人に対し,原告商品に関する著作権(著作権法27条及び28条に定める権利を含む。),意匠登録を受ける権利を含む知的財産権,不正競争防止法,民法等法律上生じる権利及び経済上の利益を享受する権利を含むがこれに限定されない一切の権利(ただし,契約締結より前に上記の権利の侵害により原告X1及び原告X2に生じた損害賠償請求権を除く。)を譲渡し,承継参加人はこれを譲り受けた。承継参加人は,原告X1と原告X2から「proef」ブランドに係る事業を承継した。(以上につき甲79,弁論の全趣旨)
(2) 原告商品の販売原告らは,平成23年9月下旬から,原告商品(タトゥータイツ)を価格2940円(税込価格)で販売している。(弁論の全趣旨)
(3) 被告商品の販売被告は,遅くとも平成24年3月頃から,被告商品(タトゥータイツ)を価格1470円(税込価格)で,被告の渋谷道玄坂店舗,池袋店舗,光が丘店舗等において,販売のために展示し,販売している。争点
(1) 原告らの請求主体性(争点1)
(2) 原告商品の形態が不正競争防止法2条1項3号によって保護される「商品の形態」に当たるか(争点2)
(3) 原告商品の形態と被告商品の形態が実質的に同一であるか(争点3)
(4) 被告商品の形態が原告商品の形態に依拠したものであるか(争点4)
(5) 損害の有無及び額(争点5)
(6) 訂正広告の必要性(争点6)争点に関する当事者の主張
(1) 原告らの請求主体性(争点1)(原告ら及び承継参加人の主張)ア 原告商品の商品化の経緯は,以下のとおりである。(ア) 原告商品の商品化に向けた話合いの開始原告クライのW(以下「W」という。)は,平成23年7月13日,原告X1に対し,ストッキングのコラボレーション商品を作る企画を提案した(甲83)。これに対し,同月14日,原告X1がWに対しプロエフと原告クライのブランドのすり合わせを行う必要がある旨を述べるなど(甲84),原告クライと原告X1及び原告X2との間で原告商品の商品化に向けた話合いが始まった。(イ) 原告商品の基本デザインの作成Wは,平成23年7月19日,原告X1に対し,原告クライのブランドのコンセプトを説明し(甲85),同月22日には,原告X2がWに対し,コラボレーション商品のデザインについて薔薇の模様を入れることを提案し(甲86),これを受け,同年8月12日には,Wが原告X2に対し,小さな星が流れているデザインの再提案を行い(甲87),同月14日に原告X2が検討する旨を述べるなど(甲88),原告X1及び原告X2と原告クライとの間において,具体的に商品化するストッキングのデザインの方向性について意見がやりとりされた。同月16日,原告X2は,Wに対し,原告商品のデザインの原型となるデザインを含む2つのデザイン案を提示したところ(甲89),Wは,甲89号証添付の写真1のデザインに決定する旨を原告X2に伝え(甲90),その結果,原告商品の基本デザインが決定した。(ウ) サンプルの製作及び商品としてのストッキングの仕様の決定基本デザインが決定した後,原告X1及び原告X2によってサンプルの製作が開始され(甲91),ストッキングとしての耐久性の確保,色落ちの有無の確認及びフィッティング感の調整等がされた後,平成23年9月1日,原告X1及び原告X2から,原告クライに対し,最初のサンプルの提案が行われ,引き続いて協議を行い,ストッキングとしてのフィッティング感を確認した結果,サンプルの内容でストッキングの仕様が決定した。(エ) パッケージデザインの作成原告クライは,平成23年9月2日,原告X1及び原告X2から,原告商品のパッケージのデザイン案の提案を受けた。原告クライにおいて,当該デザイン案を検討した結果,同月11日にこれを了承し,原告商品のパッケージデザインが決定した。(オ) 原告商品の生産開始及び納入原告X1及び原告X2において,平成23年9月12日,双方で合意した原告商品のストッキング及びパッケージのデザイン及び仕様に基づき,原告商品の生産を開始し,同月20日に,原告クライに対し,初めて原告商品が納入された。(カ) 原告商品の宣伝及び広告原告商品の宣伝及び広告については,衣服,ファッション雑貨等の製造,販売等において培ってきたノウハウを生かせることから原告クライが行うこととし,実際に原告クライが原告商品の宣伝,広告を行ってきた(甲92,93)。(キ) 原告商品の販売原告X1及び原告X2と原告クライは,原告クライの店舗及びプロエフのウェブサイトで原告商品を販売することとし,まず平成23年9月22日から,原告クライの表参道の店舗において,原告商品の販売を開始した。程なくして,プロエフのウェブサイト上においても,原告商品の販売が開始された。また,原告商品の販売価格は,原告X1及び原告X2と原告クライとが話し合った結果,原告クライの店舗及びプロエフのウェブサイトのいずれの場合においても同じ価格で販売されている。イ 以上のとおり,原告X1及び原告X2と原告クライは,共同して原告商品の企画,開発,商品化を行ったものであり,原告クライと同様に,原告X1及び原告X2についても原告商品の商品化のために資金,労力を投入していたことは明らかである。(被告の主張)ア 不正競争防止法2条1項3号の趣旨は,商品化のために資金・労力を投下した者を当該商品の形態をデッドコピーするという不正な競争行為から保護するものであるから,その請求主体は事業の利益及び損失が帰属する主体であり,「商品化のために資金・労力を投下した者」に限定される。そのため,当該形態のアイデアを出しただけの企画・発案者やデザイナーは,請求主体とはなり得ない。イ 原告ら及び承継参加人の主張によれば,原告商品の仕様は平成23年9月1日以降に原告X1及び原告X2が提案したサンプル(原告商品サンプル)の内容で決定したことになる。しかし,原告商品サンプルの形態の具体的な内容は何ら明らかにされておらず,原告商品サンプルと原告商品の形態の同一性があるか否か,主張上も証拠上も明らかになっていない。また,柄物のストッキングを開発するに当たっては,デザイン画やサンプルを作成するに当たりストッキング工場に対し提示する資料を作成するのが通常である。しかし,原告らは,原告商品と同一性の認められない極めて粗いデザイン画を示すのみであり(甲89),存在するはずの資料等を一切提出していない。加えて,原告商品の商品化に当たっては,模様の詳細な配置(模様の具体的な大きさ・数及び配列)や,模様のプリント方法,商品全体の形状,色彩,糸の種類及び編み方等を決定する必要がある。しかし,原告らは,これらに関する事情を何ら明らかにしておらず,これらがいかなる経緯で決定されたのかが全く不明である。したがって,原告X1は,原告商品の事業の利益及び損失が帰属する主体とは認められず,「商品化のために資金・労力を投下した者」とも認められない。ウ 原告X2についても,原告X1と同様の理由において,原告商品の事業の利益及び損失が帰属する主体とは認められず,「商品化のために資金・労力を投下した者」であるとも認められない。むしろ,原告商品の納品書(甲81)右上の箇所には「X1(ローマ字表記)」とのみ記載されており,原告X2の存在を示す記載が存在しないことからすれば,当該記載は原告X2が原告商品の事業の利益及び損失が帰属する主体で はないことや ,「商品化 のために資金・ 労力を投下し た者」ではないことが示されている。エ 原告クライは,原告商品の単なる転売者にすぎず,原告商品の「商品化のために資金・労力を投下した者」とは到底認められない。原告ら及び参加承継人の主張によれば,原告商品の仕様は平成23年9月1日以降に原告X1及び原告X2が提案したサンプルの内容で決定しているが,この時点までの原告クライの関与は,①イメージ写真を提示するなどして,原告商品のデザインにかかるアイデアを提供したこと(甲87,88),②原告商品と同一性の認められない粗いデザイン画2つのうち1つを選択したこと(甲90),③出来上がったサンプルについてストッキングとしてのフィッティング感を確認したことの3点に限定されており,原告商品の商品化のために資金・労力を投下したとは到底いえない。むしろ,甲91号証の「サンプル製作代など,コストは余分にかかりますが,今回の商品はproefとcryの共同制作ということで,販売店はcryと,proefのオンラインショップでの取り扱い限定商品にさせていただければ通常価格と同額で問題ありません」との記載は,原告クライが原告商品の商品化のために必要なサンプル製作にかかる費用すら負担していないことを示している。さらに,原告商品は原告クライなどの取引先に対し販売されていたとのことであり,原告クライは原告商品の数ある購入者のうちの一取引先にすぎない。したがって,原告クライは,原告商品の「商品化のために資金・労力を投下した者」とは認められない。オ 以上のとおり,原告らのそれぞれが請求主体であることは明らかとなっていない。
(2) 原告商品の形態が不正競争防止法2条1項3号によって保護される「商品の形態」に当たるか(争点2)(原告ら及び承継参加人の主張)ア 原告商品の形態原告商品の形態は,別紙原告商品目録記載写真(1)及び(2)(以下,順に「原告商品写真1」「原告商品写真2」という。)で示されるとおりである。なお,右脚又は左脚とは,すべて正面から見て右脚又は左脚を指すものとして主張する。(ア) 基本的構成A パンティストッキングに星柄がプリントされている。B 星柄の彩色は,不透明,黒色である。C 星柄の大きさの種類は,4種類ある。D 星柄の数は,多数である。E 星柄の配置は,左脚の膝上太腿部から下腿部脛部分まで縦方向の帯状に配置されており,また,右脚の膝周辺部分から足首周辺部分まで縦方向の帯状に配置されている。(イ) 具体的構成c 4種類の星柄の大きさ(一つの山部から対の谷部まで)は,各約6mm(小),約8.5mm(中),約12.5mm(大),約18.5mm(特大)である。d1 右脚において19個の星柄がプリントされている。d2 左脚において19個の星柄がプリントされている。e1 (正面から見て)右脚における星柄の配置は,最上端部(膝周囲部分)に3つの小さい星が縦に並び,その一番下の星の左斜下方にやや大きめの星が配置され,脛から足首にわたり小さい星と大き目の星が混在し,膝周辺と比較して密に配置されている。e2 (正面から見て)左脚における星柄の配置は,最上端部(膝周囲部分)に小さい星と大き目の星が混在して配置され,脛から足首の側面にわたり疎らになるように星柄が配置され,最下端部分には,3つの小さい星が縦に並んで配置されている。f ウエスト巾は約21cm,股上は約21.6cm,股下は約46.1cm,太もも巾は約9cmである。g 股部分にマチがある。h つま先に生地を厚くする加工がされている。i ベースとなるストッキングの生地は透明感は低く光沢がない。j ストッキングの色は濃いベージュである。イ 原告商品の形態の特徴的部分市場で流通する他社の多数のタトゥータイツのデザイン(甲2)から明らかなとおり,星柄のデザインを採用するストッキングはそれほど多くない。さらに,星柄を採用するとしても,星柄の数,大きさ,配置や,星柄と他のデザインとの組み合わせ等においてさまざまな選択が可能であるところ,星柄を採用している他社のストッキングにおいても,原告商品の形態のうち,星柄のデザインの部分,具体的には,星柄の大きさを4種類とし,左右の脚の星の数をそれぞれ19個程度とし,右脚における星柄の配置は,最上端部(膝周囲部分)に3つの小さい星が縦に並び,その一番下の星の左斜下方にやや大きめの星が配置され,脛から足首にわたり小さい星と大き目の星が混在し,膝周辺と比較して密に配置されたものとし,左脚における星柄の配置は,最上端部(膝周囲部分)に小さい星と大き目の星が混在して配置され,脛から足首の側面にわたり疎らになるように星柄が配置され,最下端部分には,3つの小さい星が縦に並んで配置されたものとしたデザインの部分(原告商品星柄デザイン部分)と同一のデザインを採用するものは存在しない(甲2写真2~5参照)。以上のとおり,原告商品星柄デザイン部分は,従来の他社の商品にはなく,他社商品と区別する原告商品の商品形態の特徴的部分である。ウ 被告の主張に対する反論被告は,原告商品星柄デザイン部分に関連し,原告商品に類似する商品として類似商品①~⑥(乙22~27)を挙げる。しかしながら,類似商品①,③及び④については,そもそも,原告商品とは星柄デザインの位置が異なる(原告商品は右脚と左脚の星柄の位置がアシンメトリーであるのに対し,類似商品①,③及び④は右脚と左脚の星柄の位置がシンメトリーである)ことから,これらの商品の存在によって,原告商品星柄デザイン部分が原告商品の商品形態における特徴的部分であることは否定されない。また,類似商品②,⑤及び⑥がいつから販売されたものであるか不明ではあるが,原告商品の販売が開始された平成23年9月よりも後に販売されたものである可能性が極めて高く,これらの商品は原告商品のデッドコピーである可能性が極めて高い。そこで,これらの商品の製造者又は販売者に対して,原 告商品のデッ ドコピーで ある旨の警告状 を送付してお り(甲76,95~97),製造者・販売者は,不正競争防止法2条1項3号該当又はそのおそれを認め,既に製造及び販売が中止されている(甲78,98,103~105)。したがって,これらの商品の存在によっても,原告商品星柄デザイン部分が原告商品の商品形態における特徴的部分であることは否定されない。(被告の主張)原告ら及び承継参加人の主張するように,抽象的に原告商品の形態を捉えれば,かかるアイデアレベルの形態はありふれたものであり,不正競争防止法2条1項3号の保護に値する「形態」とはいえない。以下のとおり,抽象的に原告商品の形態を捉えれば,そのほぼ全ての特徴が一致ないし類似している商品が市場には多数存在する。類似商品 類似商品 類似商品 類似商品 類似商品 類似商品
① ② ③ ④ ⑤ ⑥(乙22) (乙23) (乙24) (乙25) (乙26) (乙27)
①基本的構成ストッキングに星柄がプリ一致 一致 一致 一致 一致 一致ントされている星柄の彩色は,不透明,黒一致 一致 一致 一致 一致 一致色である星柄の大きさの種類は4種一致 一致 一致 一致 一致 一致類である星柄の数は,多数である 一致 一致 一致 一致 一致 一致星柄の配置は,左脚の膝上 ほぼ一致 ほぼ一致太腿部から下腿部脛部分ま (右脚と (右脚とで縦方向の帯状に配置され 左脚の柄 左脚の柄ており,また,右脚の膝周 一致 の配列を ほぼ一致 ほぼ一致 一致 の配列を辺部分から足首周辺部分ま 逆転させ 逆転させで縦方向の帯状に配置され れば一 れば一ている 致) 致)
②具体的構成4種類の星柄の大きさの概一致 一致 一致 一致 一致 一致要上記の表が端的に示しているとおり,流行の追求を本質とするファッション・アパレル業界においては,その追求の過程において激しく競争し,その結果,抽象的なアイデアにおいて類似した商品が市場で多数流通することになる。むしろ,ファッ ション業界として の共通の利益として流 行があり,様々な商品が共通のアイデア・スタイルの下に,多数のブランドから一時期一斉に流通することによってこそ流行が生まれ,流行が需要を喚起し,着用する需要者への満足を与えるのである。様々な事業者が流行を追うことによって,業界が活性化され,それぞれの需要を「食い合う」のではなく,相互にそれぞれの需要を活性化させるのである。このようなファッション・アパレル業界の競争の実態からすれば,抽象的な形態をして不正競争防止法2条1項3号により保護されるとの主張は,あまりに非常識なものといわざるを得ない。
(3) 原告商品の形態と被告商品の形態が実質的に同一であるか(争点3)(原告ら及び承継参加人の主張)ア 被告商品の形態被告商品の形態は,別紙被告商品目録記載写真(1)及び(2)(以下,順に「被告商品写真(1)」「被告商品写真(2)」という。)で示されるとおりである。なお,右脚又は左脚とは,すべて正面から見て右脚又は左脚を指すものとして主張する。(ア) 基本的構成A’パンティストッキングに星柄がプリントされている。B’星柄の彩色は,不透明,黒色である。C’星柄の大きさの種類は,4種類ある。D’星柄の数は,多数である。E’星柄の配置は,左脚の膝上太腿部から下腿部脛部分まで縦方向の帯状に配置されており,また,右脚の膝周辺部分から足首周辺部分まで縦方向の帯状に配置されている。(イ) 具体的構成c’ 4種類の星柄の大きさ(一つの山部から対の谷部まで)は,約6mm,約8mm,約12mm,約15mmである。d1’右脚において17個の星柄がプリントされている。d2’左脚において19個の星柄がプリントされている。e1’右脚における星柄の配置は,最上端部(膝周囲部分)に3つの小さい星が縦に並び,その一番下の星の左斜下方にやや大きめの星が配置され,脛から足首にわたり小さい星と大き目の星が混在し,膝周辺と比較して密に配置されている。e2’(正面から見て)左脚における星柄の配置は,最上端部(膝周囲部分)に小さい星と大き目の星が混在して配置され,脛から足首の側面にわたり疎らになるように星柄が配置され,最下端部分には,3つの小さい星が縦に並んで配置されている。f’ ウエスト巾は約20cm,股上は約20cm,股下は約67cm,太もも巾は約10cmである。g’股部分にマチがない。h’つま先の生地を厚くする加工がされていない。i’ベースとなるストッキングの生地は透明感が高く光沢がある。j’ストッキングの色は薄いベージュである。イ 原告商品及び被告商品の形態の対比(ア) 原告商品写真(1)と被告商品写真(1)との対比及び原告商品写真(2)と被告商品写真(2)との対比から明らかなとおり,被告商品のデザインは原告商品のデザインと酷似している。被告商品においては,星柄の大きさを4種類とし,左右の脚の星の数をそれぞれ19個程度(右脚が17個,左脚が19個)とし,右脚における星柄の配置は,最上端部(膝周囲部分)に3つの小さい星が縦に並び,その一番下の星の左斜下方にやや大きめの星が配置され,脛から足首にわたり小さい星と大き目の星が混在し,膝周辺と比較して密に配置されたものとし,左脚における星柄の配置は,最上端部(膝周囲部分)に小さい星と大き目の星が混在して配置され,脛から足首の側面にわたり疎らになるように星柄が配置され,最下端部分には,3つの小さい星が縦に並んで配置されたものとしたデザインを採用しており,原告商品星柄デザイン部分と共通するデザインを採用している。被告商品は,原告商品の商品形態の特徴的部分である原告商品星柄デザイン部分と共通するデザインを備えるものである。言い換えれば,原告商品の形態と被告商品の形態は,①パンティストッキングに星柄がプリントされている(A,A’),②星柄の彩色が不透明,黒色で ある(B ,B’) ,③星柄 の大きさの種 類が4種 類ある(C,C’),④星柄の数が多数である(D,D’),⑤星柄の配置が左脚の膝上太腿部から下腿部脛部分まで縦方向の帯状に配置されており,また,右脚の膝周辺部分から足首周辺部分まで縦方向の帯状に配置されている(E,E’),という基本的な構成において全て共通し,具体的な構成においても,①4種類の星柄の大きさの概要(c,c’),②右脚の星柄の数 の概要( d1,d 1’), ③左脚の星柄 の数(d 2,d2’),④右脚の星柄の配置の概要(e1,e1’),⑤左脚の星柄の配置の概要(e2,e2’)が共通するものであるから,原告商品の商品形態における特徴的部分である原告商品星柄デザイン部分と被告商品のデザインが共通していることが明らかである。(イ) 一方,両者が相違している部分は,具体的な構成における,①4種類の星柄の微 細な大き さ(0. 5mmな いし3.5m m程度) (c,c’),②右脚の星柄の若干の数(2個)(d1,d1’),③右脚の星柄の若干の配置(e1,e1’),④左脚の星柄の若干の配置(e2,e2’),⑤商品サイズ(f1,f1’),⑥マチの有無(g,g’),
⑦つま先加工の有無(h,h’),⑧ストッキングの光沢,質感,透け感及び伸縮性の相違(i,i’)及び⑨ストッキングの色(j,j’)である。しかしながら,①~④の点については,被告商品のデザインは,①星柄の大きさを 4種類と し,②左 右の脚の 星の数を19 個程度( ≒17個)とし,③右脚における星柄の配置は,最上端部(膝周囲部分)に3つの小さい星が縦に並び,その一番下の星の左斜下方にやや大きめの星が配置され,脛から足首にわたり小さい星と大き目の星が混在し,膝周辺と比較して密に配置されたものとし,④左脚における星柄の配置は,最上端部(膝周囲部分)に小さい星と大き目の星が混在して配置され,脛から足首の側面にわたり疎らになるように星柄が配置され,最下端部分には,3つの小さい星が縦に並んで配置されたものとした,という点において原告商品の形態の特徴的部分である原告商品星柄デザイン部分と共通するといえることから,商品全体からみるといずれも些細な相違にすぎない。また,⑤~⑨の点については,これらの点は全て既存のストッキングにおいて選択的に採用されてきたありふれた形態であり,容易に改変できるものである。言い換えれば,ストッキングとして一般的・標準的に適宜選択する種類の範囲内の改変に基づくものにすぎず,その改変のための着想は極めて容易であり,改変の内容,程度は低いことから,実質的同一の判断に影響を与える事情とはいえない。したがって,①~⑨の相違点は両商品の形態の実質的同一性の判断に影響するものではなく,被告商品は,原告商品の形態の特徴的部分である原告商品星柄デザイン部分と共通するデザインを備えるものであるから,原告商品と被告商品を全体として観察した場合に両者の形態が実質的に同一であるといえる。(ウ) 以上から,被告商品の形態は,対応する原告商品の形態と実質的に同一であることは明らかである。ウ 対比方法(ただし,後記(ア)は原告らの主張,後記(イ)及び(ウ)は原告ら及び承継参加人の主張である。)(ア) 不正競争防止法2条4項において「商品の形態」は「需要者が通常の用法に従った使用に際して知覚によって認識することができる商品の外部及び内部の形状並びにその形状に結合した模様,色彩,光沢及び質感」と定義されるから,商品形態の実質的同一性を判断する際には,主として,需要者が通常の用法に従った使用をする際に認識する商品全体の形態を対比することが合理的である。そして,本件では,ストッキングの「通常の用法」とは,着用である。このことは,原告のオンラインショップ(甲49),被告のオンラインショップ(甲50),ファッション雑誌(甲5~7,9~21)のいずれにおいても着用した状態が表示されていることから明らかである。また,ストッキングは,およそ着用した状態で宣伝広告及び販売されており,需要者はモデル,マネキン等が着用した状態で認識する場合が通常である。これに対し,被告は,商品を平置きにした状態で計測したウエスト巾,股上等の相違を指摘する。しかし,ストッキングのサイズは編地の種類による伸縮性に大きく左右される。さらに,同一の商品であっても,着用,洗濯,乾燥によりウエスト巾,股上,股下,太もも巾が変化する。被告が主張するような未着用の商品を平置きにした状態は,需要者が通常の用法に従った使用をする際に認識する商品全体の形態に該当せず,使用の実態からも乖離しており,かかる状態で計測した商品のサイズは,商品形態の対比において全く意味がない。(イ) 被告は,ストッキング商品の大部分がパッケージに入ったままの状態で展示されていることなどから,需要者は,ストッキング商品の大半をパッケージに入ったままの状態で認識し,モデル,マネキン等が着用した状態を具体的に認識することなく購入するのが通常であると主張する。不正競争防止法2条1項3号は,先行者が投下した資本,労力を後行者による模倣行為から保護することを目的とする。そのメルクマールとして,購入や 展示の際 の誤認混 同ではな く,「通常の 用法に従 った使用」の際の認識に基づく形態を問題とするのであるから,ストッキングの展示場面や購入場面における形態が問題となるのではなく,通常の用法に従った使用,すなわち着用場面における形態が問題となるのである。したがって,ストッキングが通常どのような形態で販売され,また展示されているかは問題ではなく,ストッキングが通常の用法に従って使用された場合,すなわちストッキングが着用された場合における形態が問題となることは明らかである。(ウ) また,被告は,平置きの状態も通常の用法に従った使用であると主張する。しかし,ストッキングの通常の用法に従った使用が着用であることは自明であり,被告の主張は平置きの状態を「通常の用法に従った使用」に含めるために考えられた技巧的な説明であり,ストッキングの「通常の用法に従った使用」の理解として誤っている。(被告の主張)ア 商品の形態を詳細に観察した場合,原告商品と被告商品の形態は以下のとおりとなる。原告商品(Mサイズ) 被告商品A ウエスト巾約18cm,股上約2 ウエスト巾約20cm,股上約22cm,股下約48cm,太もも 0cm,股下約67cm,太もも巾約8cmである(別紙1比較写 巾約10cmである(別紙1比較真①,乙1)。 写真①,乙1)。形B 股部分にマチがある(別紙1比較 股部分にマチがない(別紙1比較状写真②-2,乙2の1)。 写真②-1,乙2の2)。C つま先部分の生地を分厚くする加 つま先部分の生地を分厚くする加工がされている(別紙1比較写真 工がされていない(別紙1比較写
③,乙3)。 真③,乙3)。D 星柄部分は,星柄にくり抜かれた 星柄部分は,やや光沢のある顔料模光沢のないフェルト状の手触りの インクにてストッキングにプリン様黒色生地がストッキングに張り付 トがされており,ストッキング生けられており,ストッキング生地 地とプリント部分はフラットであから星柄が浮き出ている(別紙1 る(別紙1比較写真④-1,乙4比較写真④-2,乙4の1)。 の2)。E 右脚には,19個の星柄が付され 右脚には,19個の星柄が付されており,その具体的配列は,別紙 ており,その具体的配列は,別紙1比較写真⑤のとおりである(乙 1比較写真⑤のとおりである(乙5)。 5)。F 左脚には,19個の星柄が付され 左脚には,17個の星柄が付されており,その具体的配列は,別紙 ており,その具体的配列は,別紙1比較写真⑥のとおりである(乙 1比較写真⑥のとおりである(乙6)。 6)。G 星柄の大きさには4種類あり,そ 星柄の大きさには4種類あり,それぞれ各約6mm,約10.5m れぞれ各約6mm,約8mm,約m,約15mm,約18.5mm 11mm,約15mmである(別で あ る ( 別 紙 1 比 較 写 真 ⑦ , 乙 紙1比較写真⑦,乙7)。7)。H ベースとなるストッキングの色 ベースとなるストッキングの色色 は,サンドベージュ(白味がかっ は,フレッシュベージュ(黄味が彩 たベージュ)である(別紙1比較 かったベージュ)である(別紙1写真⑧,乙8)。 比較写真⑧,乙8)。I ベースとなるストッキングは,比 ベースとなるストッキングは,比光較的光沢のある生地が用いられて 較的光沢のない生地が用いられて沢いる。 いる。質 J ベースとなるストッキングは,ポ ベースとなるストッキングは,ポ感 リエステルとナイロンの糸で編ま リエステルとナイロンの混縫の糸れており,厚さはストッキングの とナイロンの糸が交互に編まれて中では比較的厚く,網目が緊密で おり,厚さはストッキングの中でなめらかであり,透け感がない。 は比較的薄く,網目が粗く,透け感がある。イ 原告商品の形態と被告商品の形態とを比較すると,両商品の形態は次の各点において異なっている。(ア) 形状原告商品と被告商品とでは,形状の点において,以下のとおり違いがある。a サイズ原告商品 被告商品ウエスト巾 18cm 20cm股上 22cm 20cm股下 48cm 67cm太もも巾 8cm 10cmこのように,原告商品と被告商品のサイズは,ウエスト巾,股上,股下及び太もも巾においてそれぞれ異なっており,特に股下のサイズにおいて19cmもの差異がある(別紙1比較写真①,乙1)。b 股部分の加工原告商品は股部分にマチがあるのに対し,被告商品にはこれがない(別紙1比較写真②,乙2の1,2)。股部分にマチを加工するのは,ストッキングを履いた際の履き心地を良くするための工夫であるが,マチの加工をした場合には,その分製造コストが高くなる。c つま先部分の加工原告商品はつま先部分の加工がされているのに対し,被告商品にはこれがされていない(別紙1比較写真③,乙3)。つま先部分の加工をなくすことは,「つま先スルー」と呼ばれ,サンダルを履いたときや靴を脱いだ際に素足のように見えるための工夫である。(イ) 形状に結合した模様a 星柄の質感,光沢,色彩等原告商品の星柄は,星柄にくり抜かれた光沢のないフェルト状の手触りの濃い黒色生地がストッキングに張り付けられており,ストッキング生地から星柄が浮き出ている。これに対し,被告商品の星柄は,光沢のある顔料インクにて比較的薄い黒色で,ストッキングにプリントがされており,ストッキング生地とプリント部分はフラットである。このように,原告商品と被告商品の星柄の質感や光沢等は大きく異なっている(別紙1比較写真④,乙4の1,2)。また,ストッキングは,着用の折には全体として伸張するところ,原告商品の星柄はフェルトであるためほとんど伸張せず,被告商品の星柄は伸張によって,質感,光沢,色彩は大きく変わる。b 星柄の大きさ原告商品の星柄の大きさは,各約6mm,約10.5mm,約15mm,約18.5mmである。これに対し,被告商品の星柄の大きさは,各約6mm,約8mm,約11mm,約15mmである(別紙1比較写真⑦,乙7)。このように,原告商品と被告商品の星柄の大きさは,4種類中3種類において異なっており,特に,最も目立つ最大の星柄の大きさについては,3.5mmもの違いがある。c 星柄の数及び具体的配列原告商品の星柄の数は右脚,左脚ともに19個であり,具体的配列は別紙1比較写真⑤⑥(下側)のとおりであるのに対し,被告商品の星柄の数は右脚が19個,左脚は17個であり,具体的配列は別紙1比較写真⑤⑥(上側)のとおりである(乙5,6)。右脚の星柄は,その数は一致するとはいえ,左側の星柄の数は異なっている。また,具体的な星柄の配列も,星柄と星柄との位置関係が異なるほか,星柄と星柄との間の距離(原告商品の方が被告商品よりも星柄どうしの間隔が狭い。)や星柄の角度も異なっている。このように,原告商品と被告商品の星柄の具体的配列もまた大きく異なっている。d 小括このように,原告商品の模様と被告商品の模様とは,その質感や光沢,大きさ,具体的配列においてそれぞれ大きく異なっている上,これらの相違点が相まった結果,原告商品の模様と被告商品の模様とは全く異なったものとなっている。(ウ) 形状に結合した色彩原告商品の色彩はサンドベージュ(白味がかったベージュ色)であるのに対し,被告商品の色彩はフレッシュベージュ(黄味がかったベージュ色)である。このように,原告商品と被告商品の色彩は大きく異なっている(別紙1比較写真⑧,乙8)。(エ) 形状に結合した光沢原告商品には比較的光沢のある生地が用いられているのに対し,被告商品には比較的光沢がない生地が用いられている点で異なっている。(オ) 形状に結合した質感原告商品は,ポリウレタンとナイロンの糸で編まれており,厚さはストッキングの中では比較的厚く,網目が緊密でなめらかであるため,透け感がない。これに対し,被告商品は,ポリウレタンとナイロンの混縫の糸とナイロンの糸が交互に編まれており,厚さはストッキングの中では比較的薄く,網目が粗いため,透け感がある。(カ) 小括以上のとおり,原告商品と被告商品とは,商品の形状並びに形状に結合した模様,色彩,光沢及び質感の全てにおいて大きく異なっているのであり,その形態が同一であるとはいえない。原告らの主張は,ストッキングに関する抽象的なアイデアの保護を求めるものにすぎない。被告は,被告商品の開発に当たって,両商品の相違点について相当の資本や労力を投下している(乙41,42)。被告独自の競争の結果が上記相違点として現れているのであり,正当な競争の結果として企画・開発された被告商品が不正競争防止法に違反するはずがない。ウ(ア) 原告らは,原告と被告のオンラインショップ,ファッション雑誌のいずれにおいても着用した状態が表示されていることから,ストッキングの「通常の用法」とは着用であると主張する。しかし,「通常の用法」の主体は「需要者」であり,原告,被告,ファッション雑誌の出版社等ではなく,原告らの主張に理由はない。(イ) また,原告らは,ストッキングは,およそ着用した状態で宣伝広告及び販売されており,需要者はモデル,マネキン等が着用した状態で認識する場合が通常であると主張する。しかし,被告においては,被告の店舗での売上げがオンラインショップでの売上げを大幅に上回る(全売上げの99%程度が店舗での販売である。)。被告の店舗では,大多数のストッキング(本段落ではタイツを含む。)はパッケージに入ったままの状態で展示されており,マネキン等に履かせ て展示し ているの は5%程 度にすぎない 。さらに ,その5%程度の商品についても,展示期間は販売開始直後等の期間に限られており,全販売期間にわたってマネキン等に履かせて展示されているわけではない。加えて,被告を含むストッキングの販売店舗では,通常,需要者によるストッキングの試着を認めていない。したがって,被告店舗においては,需要者は,ストッキングの大半をパッケージに入ったままの状態で認識し,モデル,マネキン等が着用した状態を具体的に認識することなく購入するのが通常である。よって,被告商品を購入した需要者一般について,被告商品をモデル,マネキン等が着用した状態を具体的に認識して購入したということはできない。また,原告クライの神宮前(表参道店)の店舗においても,原告商品はマネキン等に履かせて展示されていない。具体的には,同店舗で,原告商品は,マネキンの足に複数の星柄に切り取られた模様が直接貼り付けられるという方法で,そのアイデアのみが開示されており,原告商品自体は,パッケージに入った状態で販売されている。したがって,原告商品を購入した需要者一般について,原告商品をモデル,マネキン等が着用した状態を具体的に認識して購入したということはできない(乙29)。(ウ) 需要者が原告商品を使用するには,通常,①パッケージを開封して取り出す,②足,下腿部,大腿部,腰に通す,③原告商品を,腰,大腿部,下腿部,足から脱する,④洗濯し,乾燥させ,押入れ等に保管する,
⑤その後,押入れ等の保管場所から取り出し②~④を繰り返すとの過程を経ている。そのため,「通常の用法に従った使用」とは,上記①~⑤の一連の使用行為と解すべきであり,需要者が上記①~⑤に「際して知覚によって認識することができる商品の外部及び内部の形状並びにその形状に結合した模様,色彩,光沢及び質感」は全て原告商品の「形態」となる。したがって,着用を前提としていない平置きの状態での比較は正当である。他方で,ストッキングは,伸縮性のある生地が用いられており,それを着用する人の体型や着用の仕方等によって,柄の見え方が変わってくるから,誰かが着用した状態で形態を捉えることは不適切であるというほかない(別紙2参照)。
(4) 被告商品の形態が原告商品の形態に依拠したものであるか(争点4)(原告ら及び承継参加人の主張)原告商品は,平成23年9月下旬には,原告クライの表参道店舗及びプロエフのウェブサイトで販売が開始された。また,原告商品は,ファッション雑誌「ar」(甲5) ,同「NYLON STYLE bo ok」(甲6),同「Gina」 (甲7),タレン ト藤井リナの写真集「 アイ ラブカワイイ」(甲4)に掲載される等,マスメディア及びインターネットに掲載され,被告は原告商品にアクセスが可能であった。実際に,被告代理人は,平成24年5月25日付け書状において「当社担当デザイナーが,インターネットで種々の商品を研究する中で,Proefの商品を偶然見つけ,そのデザインに触発され,これを参考とさせていただいてデザインされた商品です。Proefの当該商品のデザインは,…当社デザイナーもProef商品のデザインにおける,これらアイディア,コンセプトおよび作風をアレンジして,当社商品をデザインしたものであります。」(甲43)と回答している。したがって,被告商品は,原告商品に依拠して制作されたことは争う余地がない。(被告の主張)被告は,被告商品の開発に当たり,偶然にインターネット上で発見した原告商品着用画像のデザインをアイデアとして参照したにすぎず,原告商品の現物にアクセスしたことはなく,当然ながら,原告商品の具体的形態を被告商品の開発に際し参考にすることなどできない。また,不正競争防止法2条1項3号は,単にデザインを参考にすることを規制の対象とはしていないのであるから,被告代理人の書状の内容をもって,被告が被告商品の開発に当たって原告商品に「依拠」したなどということはできない。
(5) 損害の有無及び額(争点5)(原告らの主張)ア 逸失利益(ア) 原告らの逸失利益の発生被告の故意による形態模倣行為により,原告らの営業上の利益が侵害され,これにより原告らは原告商品の製造販売により得べかりし利益を失った。(イ) プロエフの逸失利益の額(不正競争防止法5条1項)プロエフは,原告クライに対し,原告商品を金1260円で販売している。また,自らのウェブサイトにおいても2940円(税込)で直接販売している。プロエフは,原告クライに販売した場合,1足当たり950円,自らのウェブサイトで販売した場合,2100円の利益がある。また,プロエフの販売実績全体において,原告クライへの販売が約60%,自らのウェブサイトでの販売が約40%を占めている。プロエフは,平成24年3月から7月末までの間,約9000足の原告商品の製造販売が可能であったが,被告の形態模倣行為により約850足の製造販売にとどまった。平成24年4月19日付け繊研新聞(甲35の2)によれば,被告の原宿店では1週間に450点のタトゥータイツが販売され,その売れ筋商品は被告商品であると記載されている。被告の店舗は全国で約200箇所存在し,仮にタトゥータイツの売上の2分の1が被告商品であるとしても,被告は,平成24年3月から7月までの間,少なくとも1万足以上を販売したものである。したがって,プロエフの逸失利益の額は,少なくとも1149万1500円に上る。(計算式)(950円×8150足×60%)+(2100円×8150足×40%)=1149万1500円注:8150足=9000足-850足(ウ) 原告クライの逸失利益の額(不正競争防止法5条1項)原告クライは,表参道店舗において原告商品を2940円(税込)で顧客に販売し,原告クライの利益は,1足当たり1260円である。原告クライは,平成24年3月から7月末までの間,プロエフが製造販売可能であった約9000足の原告商品のうちプロエフ・原告クライの販売実績割合である60%に相当する約5400足の原告商品の仕入販売が可能であったが,被告の形態模倣行為により約530足の販売にとどまった。上記のとおり,被告は,平成24年3月から7月までの間,少なくとも1万足以上を販売したものである。したがって,原告クライの逸失利益の額は,少なくとも613万6200円に上る。(計算式)1260円×4870足=613万6200円注:4870足=5400足-530足イ 慰謝料プロエフは,独創的なデザインを重視するブランドである。また,原告商品は,「モード感がありエッジが利いたアイテム」という原告クライの方向性をも踏まえてプロエフにより独自にデザインされたデザイン性の高いコラボレーション商品である。しかるに,被告の故意による形態模倣行為により,被告商品があたかも被告のオリジナルであるかのような,あるいは原告商品のオリジナリティが乏しいかのような誤解が取引者・需要者に生じてしまうことは,プロエフのブランド・イメージを著しく傷つけるものとして,原告X1及び原告X2にとって,到底容認し難いものである。このように原告X1及び原告X2が受けた精神的苦痛による損害の額は,金銭に換算すると各々10万円,合計20万円と算定するのが相当である。ウ 経費原告X1及び原告X2は,本件訴訟の準備のために,証拠収集のための費用,交通費等各々10万円,合計20万円を支弁せざるを得ず,同金額の損害を被った。エ 代理人費用相当額原告らは,当初話し合いによる解決を試みたが,被告の不誠実な対応により本訴の提起を余儀なくされ,事案の性質・内容からこれを弁護士である原告代理人に依頼せざるを得なかった。その結果,原告らは,原告代理人らに弁護士費用の支払を約し,少なくとも各々金60万円,合計180万円の弁護士費用相当額の損害を蒙った。オ 以上のとおり,原告X1及び原告X2の損害は各654万5750円,原告クライの損害は673万6200円である。(被告の主張)原告らの主張ア(ア)は争う。同ア(イ)のうち,平成24年4月19日付け繊研新聞に被告の原宿店では「タトゥー風パンスト」が1週間に450点が売れた旨,売れ筋が星柄である旨が記載されていることは認め,その余は争う。同ア(ウ)のうち,第1段落は不知,その余は争う。同イ~オは争う。
(6) 訂正広告の必要性(争点6)(原告らの主張)被告の故意による形態模倣行為により,原告商品に係る原告らの営業上の信用が毀損された。このような広範囲に及ぶ深刻な原告商品に係る原告らの営業上の信用の毀損は,性質上,その損害額を金銭的に正確に算定することが困難であり,また,いずれにしても損害賠償により完全に回復させることも困難であるので,損害賠償に代えて原告らの信用の回復措置が不可欠である。被告に謝罪文言を含まない単なる訂正広告として別紙広告目録記載第1の広告を同目録記載
第2の要領で掲載させる程度であれば,原告らの信用の回復措置として相当
なものということができる。(被告の主張)原告らの主張第1段落は否認ないし争う。同第2段落は争う。
第3 当裁判所の判断
1 本件事案の内容に鑑み,まず,原告商品の形態と被告商品の形態が実質的に
同一であるか(争点3)について検討する。
(1) 不正競争防止法2条1項3号は,他人の商品の形態を模倣した商品を譲
渡するなどの行為を不正競争行為として規定する。ここで「模倣する」とは,他人の商品の形態に依拠して,これと実質的に同一の形態の商品を作り出すことをいう(同法2条5項)から,同号の不正競争行為といえるためには,他人の商品と作り出された商品を対比して観察した場合に,それぞれの形態が同一であるか実質的に同一といえる程度に類似していることが必要である。そして,問題とされている商品の形態に他人の商品の形態と相違する部分があるとしても,その相違がわずかな改変に基づくものであって,商品の全体的形態に与える変化が乏しく,商品全体からみて些細な相違にとどまると評価される場合には,当該商品は他人の商品と実質的に同一の形態というべきである。これに対して,当該相違部分についての改変の着想の難易,改変の内容・程度,改変が商品全体の形態に与える効果等を総合的に判断したときに,当該改変によって商品に相応の形態的特徴がもたらされていて,当該商品と他人の商品との相違が商品全体の形態の類否の上で無視できないような場合には,両者を実質的に同一の形態ということはできない。
(2) 以上を前提として,原告商品と被告商品のそれぞれの形態を対比する。
ア 原告商品の形態後掲の証拠によれば,原告商品の形態は,以下のとおりであると認められる(ただし,原告商品はMサイズのものである。)。(ア) 外部形状ウエスト巾約18cm,股上約22cm,股下約48cm,太もも巾約8cmである(乙1,別紙1比較写真①参照)。股部分にマチがある(乙2の1,別紙1比較写真②-2参照)。つま先部分の生地が厚い(乙3,別紙1比較写真③参照)。(イ) 外部形状に結合した模様外部形状に結合した模様として,星柄のフェルト状の黒色生地がストッキングに張 り付けら れている (乙4の 1,別紙1比 較写真④ -2参照)。a 着用者の正面に向き合った場合の右脚(通常でいう左脚であるが,
(原告の主張)
に合わせて,以下「右脚」という。被告商品についても,以下同様に表記する。)には,19個の星柄が付されており,その具体的配列は,原告商品写真(1)及び別紙1比較写真⑥のとおりである(甲2,乙6)。(a) 着用時の写真において,右脚の星柄模様が付された位置は,膝下付近の模様は脚の外側に位置するが,緩やかに流れ落ちるように正面方向へ向かい,足首付近では,ほぼ正面に位置している。足首部分の星の配置の形状に特色は見られない。(b) 非着用時の写真において,右脚の星柄模様は,右上方向から左下方向に流れるように形成されており,着用時の形状と一致している。(c) 着用時と非着用時を比較すると,着用時の写真では,星柄模様の間隔が非着用時よりも広くなっており,原告商品の伸縮性が高いことが分かる。b 着用者の正面に向き合った場合の左脚(通常でいう右脚であるが,
(原告の主張)
に合わせて,以下「左脚」という。被告商品についても,以下同様に表記する。)には,19個の星柄が付されており,その具体的配列は,原告商品写真(2)及び別紙1比較写真⑤のとおりである(甲2,乙5)。(a) 着用時の写真において,左脚の星柄模様が付された位置は,膝のやや上部に位置する大腿下部において,最も上部の2個の星は左脚の正面近くに位置し(着用時の写真においては,最も上部の2個の星のうち一番上の星は撮影の対象から除外されており,二番目の星はわずかにその一部が撮影されているのみである。),そこから緩やかに流れ落ちるようにふくらはぎ方向へ向かい,一番下の3個の星はふくらはぎ(正面から見ると見えない脚の背部)の下部にまで達している。星柄模様が回転しながら,脚に巻かれているように見える。(b) 非着用時の写真において,左脚の星柄模様は,右上方向から左下方向へ流れるように形成されており,着用時の形状と一致している。(c) 着用時と非着用時を比較すると,着用時の写真では,星柄模様の間隔が非着用時よりも広くなっており,原告商品の伸縮性が高いことが分かる。c 星柄の大きさ(1つの山部から対の谷部までの長さ)には,4種類あり,それぞれ小さい方から約6~8mm,約10.5mm,約15mm,約18.5mmである(乙7,別紙1比較写真⑦参照)。それぞれの個数は,右脚が小さい方から4個,8個,5個,2個,左脚が小さい方から4個,8個,5個,2個である(乙5,6,弁論の全趣旨,別紙1比較写真⑤,⑥参照)。(ウ) 外部形状に結合した色彩ストッキングの生地は,濃いベージュである(乙5,6,別紙1比較写真⑤,⑥参照)。(エ) 外部形状に結合した光沢ストッキングの生地は,透明感が低く光沢がない(乙8,別紙1比較写真⑧参照)。(オ) 外部形状に結合した質感ストッキングの生地は,比較的厚く,網目が緊密でなめらかである(乙4の1,別紙1比較写真④-2参照)。イ 被告商品の形態(ア) 外部形状ウエスト巾約20cm,股上約20cm,股下約67cm,太もも巾約10cmである(乙1,別紙1比較写真①参照)。股部分にマチがない(乙2の2,別紙1比較写真②-1参照)。つま先部分の生地は厚くない(乙3,別紙1比較写真③参照)。(イ) 外部形状に結合した模様外部形状に結合した模様として,星柄は顔料インクでストッキングにプリントがされている(乙4の2,別紙1比較写真④-1参照)。a 右脚には,17個の星柄が付されており,その具体的配列は,被告商品写真(1)及び別紙1比較写真⑥のとおりである(甲2,乙6)。(a) 着用時の写真において,右脚の星柄模様が付された位置は,膝下付近の模様は脚の外側に位置し,そのままほぼ外側を緩やかに流れ落ちるが,足首付近で正面方向へ向きを変え,足首の星柄模様はほぼ正面に位置している(原告商品の右脚の着用時の写真と被告商品の右脚の着用時写真とでは,被告商品の写真のマネキンの方がつま先をやや内側へ向けられているため,被告商品でも星柄が上部の方から正面に位置するようにも見えるが,両写真のマネキンの足首の方向を一致させた状態を考えれば,被告商品における星柄の配置は上記のとおりと認められる。)。足首部分の星側の形状が北斗七星のひしゃく部分のように見える点に特色がある。(b) 非着用時の写真において,右脚の星柄模様は,足首部分のひしゃく形の部分を除いては,ほぼ直線上に配置されており,右上方向から左下方向に流れるように形成されており,着用時の形状と一致している。(c) 着用時と非着用時を比較すると,着用時の写真では,星柄模様の間隔にそれほど大きな差異はない。b 左脚には,19個の星柄が付されており,その具体的配列は,被告商品写真(2)及び別紙1比較写真⑤のとおりである(甲2,乙5)。(a) 着用時の写真において,左脚の星柄模様が付された位置は,最上部の星柄が膝の外側側部に位置し,そこからほぼ緩やかに流れ落ちるように左脚の外側側部をふくらはぎ方向へ向かい,一番下の3個の星はふくらはぎ(正面から見ると見えない脚の背部)の下部にまで達している。星柄模様はほぼ縦の直線状に見える。(b) 非着用時の写真において,左脚の星柄模様は,上部から下部へほぼ直線状に形成されており,着用時の形状と一致している。(c) 着用時と非着用時を比較すると,星柄模様の間隔にそれほど大きな差異はない。c 星柄の大きさ(1つの山部から対の谷部までの長さ)には,4種類あり,それぞれ約6mm,約8mm,約11mm,約15mmである(乙7,別紙1比較写真⑦参照)。それぞれの個数は,右脚が小さい方から3個,8個,4個,2個,左脚が小さい方から7個,5個,5個,2個である(乙5,6,別紙1比較写真⑤,⑥参照)。(ウ) 外部形状に結合した色彩ストッキングの生地は,薄いベージュである(乙5,6,別紙1比較写真⑤,⑥参照)。(エ) 外部形状に結合した光沢ストッキングの生地は,透明感が高く光沢がある(乙8,別紙1比較写真⑧参照)。(オ) 外部形状に結合した質感ストッキングの生地は,比較的薄く,網目が粗い(乙4の2,別紙1比較写真④-1参照)。ウ 形態の対比(ア) 外部形状の対比原告商品は,①ウエスト巾約18cm,股上約22cm,股下約48cm,太もも巾約8cmであり,②股部分にマチがあり,③つま先部分の生地が厚い。これに対し,被告商品は,①’ウエスト巾約20cm,股上約20cm,股下約67cm,太もも巾約10cmであり,②’股部分にマチがなく,③’つま先部分の生地は厚くない。以上のとおり,原告商品と被告商品とは,サイズの違い(①と①’)があるが,これは生地の伸縮性によるものと解されるから,形態として大きな相違点であるとは解されない。また,原告商品と被告商品とは,マチの有無(②と②’),つま先部分の生地の厚さ(③と③’)に違いがあるが,これらは機能的な工夫によるものと解される上,通常の着用の状態では見えない部分であるから,同様に形態として大きな相違点であるとは解されない。(イ) 外部形状に結合した模様の対比原告商品は,④外部形状に結合した模様として,星柄のフェルト状の黒色生地がストッキングに張り付けられ,⑤右脚には,19個の星柄が付されており,着用時における具体的配列は,原告商品写真(1)のとおりであり,右脚の星柄模様が付された位置は,膝下付近の模様は脚の外側に位置するが,流れ落ちるように緩やかに正面方向へ向かい,足首付近では,ほぼ正面に位置している。足首部分の星の配置の形状に特色は見られない。⑥左脚には,19個の星柄が付されており,着用時における具体的配列は,原告商品写真(2)のとおりであり,左脚の星柄模様が付された位置は,膝のやや上部に位置する大腿下部において,最も上部の2個の星柄は左脚の正面近くに位置し,そこから正面から背面へ向けて流れ落ちるように緩やかにふくらはぎ方向へ向かい,一番下の3個の星はふくらはぎ(正面から見ると見えない脚の背部)の下部にまで達している。星柄模様が回転しながら脚に巻かれているように見える。⑦星柄の大きさ(1つの山部から対の谷部までの長さ)には,4種類あり,それぞれ約6~8mm,約10.5mm,約15mm,約18.5mmである。それぞれの個数は,右脚が小さい方から4個,8個,5個,2個,左脚が小さい方から4個,8個,5個,2個である。これに対し,被告商品は,④’外部形状に結合した模様として,星柄は顔料インクでストッキングにプリントがされ,⑤’右脚には,17個の星柄が付さ れており ,着用時 における 具体的配列は ,被告商 品写真
(1)のとおりであり,右脚の星柄模様が付された位置は,膝下付近の模
様は脚の外側に位置し,そのままほぼ外側を流れ落ちるが,足首付近で正面方向へ向きを変え,足首の星柄模様はほぼ正面に位置している。足首部分の星柄の形状が北斗七星のひしゃく部分のように見える点に特色がある。⑥’左脚には,19個の星柄が付されており,着用時における具体的配列は,被告商品写真(2)のとおりであり,左脚の星柄模様が付された位置は,最上部の星柄が膝の外側側部に位置し,そこから左脚の外側側部を流れ落ちるようにふくらはぎ方向に向かい,一番下の3個の星はふくらはぎ(正面から見ると見えない脚の背部)の下部まで達している。星柄模様はほぼ縦の直線状に見える。⑦’星柄の大きさ(1つの山部から対の谷部までの長さ)には,4種類あり,それぞれ約6mm,約8mm,約11mm,約15mmである。それぞれの個数は,右脚が小さい方から3個,8個,4個,2個,左脚が小さい方から7個,5個,5個,2個である。以上のとおり,原告商品と被告商品とは,星柄がフェルト状かプリント(④と④’)との違いがあり,原告商品では星柄が浮き出ているという違いがある。また,原告商品と被告商品とは,右脚では,星柄の個数に違いがある上,着用による対比によっても,上から5番目以降の星の配置に違いが あり,そ の結果, 星柄模様 の流れの方向 性に違い がある(⑤と⑤’)。特に,被告商品では足首部分が北斗七星のひしゃく部分のように見える模様があるが,原告商品ではそのような特色はない。左脚では,星柄の個数は同じであるが,着用による対比によっても,上から9番目までの星の配置が,原告商品では脚の正面側に寄っているのに対し,被告商品では膝の横に位置するという違いがあり,その結果,原告商品では,星柄模様が回転しながら脚に巻かれているように見えるのに対し,被告商品では,星柄模様はほぼ縦の直線に見えるという違いがある(⑥と⑥’)。さらに,原告商品と被告商品とは,星柄の大きさに違いがあるが,特に一番大きな星の大きさが異なる(⑦と⑦’)。また,被告商品の方が星の大きさが原告商品と比較してより小さく,より繊細な印象を与える。(ウ) 外部形状に結合した色彩の対比原告商品は,⑧ストッキングの生地が濃いベージュである。これに対し,被告商品は,⑧’ストッキングの生地が薄いベージュである。このように,原告商品と被告商品とは,ストッキングの生地の色に違いがある(⑧と⑧’)。(エ) 外部形状に結合した光沢の対比原告商品は,⑨ストッキングの生地の透明感が低く光沢がない。これに対し,被告商品は,⑨’ストッキングの生地の透明感が高く光沢がある。このように,原告商品と被告商品とは,ストッキングの生地の透明感や光沢に違いがある(⑨と⑨’)。(オ) 外部形状に結合した質感の対比原告商品は,⑩ストッキングの生地は,比較的厚く,網目が緊密でなめらかである。これに対し,被告商品は,⑩’ストッキングの生地は,比較的薄く,網目が粗いこのように,原告商品と被告商品とは,ストッキングの生地の厚さ及び網目の違い から,な めらかさ の有無と いう質感に違 いがある (⑩と
⑩’)。
(カ) 以上のとおり,原告商品と被告商品とは,①~⑩と①’~⑩’の違いがある。もっとも,被告商品の①’~③’については,商品の全体的形態に与える変化が乏しく,商品全体からみて些細な相違にとどまるといい得る。しかしながら,被告商品の④’~⑩’については,これらを総合して判断すると,これらによって商品に相応の形態的特徴がもたらされており,被告商品④’~⑩’と原告商品④~⑩との相違が商品全体の形態の同一性の判断の上で無視できるものとはいい難い。特に,着用時における星柄の模様の配置等について検討すると,①右脚について,原告商品と被告商品では星柄の数(原告商品19個,被告商品17個)という相違があるほか,着用時において星柄の模様の配置された箇所が,原告商品においては,模様が膝下の外側から流れ落ちるように緩やかに正面方向へ向かい,足首付近でほぼ正面に位置するのに対し,被告商品においては,模様が膝下の外側からそのまま外側を流れ落ち,足首付近で正面方向へ向きを変え,足首の星柄模様がほぼ正面に位置するという相違があり,また,被告商品においては足首部分の星柄の形状が北斗七星のひしゃく部分のように見えるのに,原告商品ではそのような特徴がないという相違がある。②左脚について,原告商品では,星柄の最も上部の2個の星が左脚の正面近くに位置し,そこから星柄模様が正面から背面へ向けて流れ落ちるように緩やかにふくらはぎ方向へ向かい,脚に巻かれているように見えるのに対し,被告商品では,最上部の星柄が膝の外側側部に位置し,そこから左脚の外側側部を流れ落ちるようにふくらはぎ方向に向かい,一番下の3個の星はふくらはぎの下部まで達しており,ほぼ縦の直線状に見えるという相違がある。したがって,これらの点を考慮すると,原告商品の形態と被告商品の形態が実質的に同一であるとは認められない。仮に,星柄の模様のみで実質的同一性を判断するとしても,上記の相違点に鑑みれば,原告商品と被告商品の星柄の模様は実質的に同一とはいえない。エ 対比方法について原告ら及び参加承継人は,ストッキングの「通常の用法に従った使用」が着用であるとして,平置きの状態の比較が誤っている旨主張する。確かに,不正競争防止法2条4項は,「この法律において『商品の形態』とは,需要者が通常の用法に従った使用に際して知覚によって認識することができる商品の外部及び内部の形状並びにその形状に結合した模様,色彩,光沢及び質感をいう。」と規定しているから,「通常の用法に従った使用」,すなわち,本件でいえば着用時における商品の形態をもって比較するのが相当である。しかし,別紙原告商品目録及び被告商品目録(甲2も同じ)における着用時の一方向からの写真のみでは,撮影方向が一方向に限定され,また,マネキンの足の方向によっても見え方が左右されるから,限定された写真のみから着用時の星柄模様の状態を正確に把握することはできない。そのため,着用時の状態を正確に把握するためには,非着用時の模様の配置を参考にする必要がある。その意味で,非着用時の模様の配置(被告のいう着用前の平置きの状態)を参照することが相当であると解される。他方,被告は,ストッキングは,伸縮性のある生地が用いられており,それを着用する人の体型や着用の仕方等によって,柄の見え方が変わってくるから,誰かが着用した状態で形態を捉えることは不適切である旨主張する(別紙2参照)。しかしながら,そのような問題点があることを踏まえながら,非着用時の状態(平置きの状態)での形態も考慮して比較をすればよいのであって,ストッキングを着用した状態での比較が許されないとはいえない。オ 小括以上のとおり,原告商品の形態と被告商品の形態が実質的に同一であるとは認められないから,その余について判断するまでもなく,被告商品は,不正競争防止法2条1項3号に該当しない。
(3) したがって,原告ら及び参加承継人の請求はいずれも理由がない。
結論よって,主文のとおり判決する。東京地方裁判所民事第29部裁判長裁判官 大 須 賀 滋裁判官 小 川 雅 敏裁判官 森 川 さ つ き
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