平成13(行ケ)228行政訴訟 特許権
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裁判所 |
東京高等裁判所
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裁判年月日 |
平成13年10月29日 |
事件種別 |
民事 |
法令 |
特許権
特許法29条2項1回
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キーワード |
審決6回 訂正審判1回 特許権1回
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主文 |
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事件の概要 |
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判決文
平成13年(行ケ)第228号 特許取消決定取消請求事件(平成13年10月1
5日口頭弁論終結)
判 決
原 告 綜研化学株式会社
訴訟代理人弁理士 鈴 木 俊一郎
同 牧 村 浩 次
同 鈴 木 亨
同 八 本 佳 子
同 森 栄 五
同 辻 野 利永子
被 告 特許庁長官 及 川 耕 造
指定代理人 石 川 昇 治
同 砂 川 克
同 小 泉 順 彦
同 森 田 ひとみ
同 宮 川 久 成
主 文
特許庁が異議2000-71758事件について平成13年3月27
日にした決定を取り消す。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
1 原告
主文と同旨
2 被告
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
第2 当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯
(1) 原告は、名称を「印字テープ出力装置用感熱発色記録テープカートリッ
ジ」とする特許第2975458号発明(平成3年8月5日特許出願、平成11年
9月3日設定登録、以下「本件発明」という。)の特許権者である。
上記特許につき特許異議の申立てがされ、特許庁は、同請求を異議200
0-71758事件として審理した上、平成13年3月27日、「特許第2975
458号の請求項1ないし2に係る特許を取り消す。」との決定(以下「本件決
定」という。)をし、その謄本は同年4月18日原告に送達された。
(2) 原告は、本件決定の取消しを求める本訴提起後の平成13年7月24日、
願書に添付した明細書の特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の各記載を訂正する
旨の訂正審判の請求をしたところ、特許庁は、同請求を訂正2001-39115
号事件として審理した上、平成13年9月17日、上記訂正を認める旨の審決(以
下「本件訂正審決」といい、本件訂正審決に係る訂正を「本件訂正」という。)を
し、その謄本は同月28日原告に送達された。
2 特許請求の範囲の記載
(1) 本件訂正前の特許請求の範囲の記載
【請求項1】巻回された感熱発色記録テープ、該感熱発色記録テープを収納
すると共に該感熱発色記録テープとサーマルヘッドとが接触するための接触部およ
び該サーマルヘッドと接触して正像印字が形成された感熱発色記録テープを送り出
すテープ排出口を有する箱体とからなる感熱発色記録テープカートリッジであり、
該感熱発色記録テープが、サーマルヘッドから賦与される熱エネルギーに対応して
発色して正像印字を形成する感熱発色部、基材および接着剤部がこの順序で配置さ
れた感熱発色記録テープであり、該感熱発色部が、基材の一方の面上に設けられた
感熱発色層と、該感熱発色層上に設けられた透明保護層とからなり、該接着剤部
が、基材の感熱発色層が設けられていない面上に設けられた接着剤層と、該接着剤
層上に配置された剥離紙とからなることを特徴とする印字テープ出力装置用感熱発
色記録テープカートリッジ。
【請求項2】感熱発色記録テープとして、基材と感熱発色層と透明保護層と
からなる印字テープと、接着剤層と剥離紙とからなる接着テープとが個別に巻回さ
れ、印字テープがサーマルヘッドと接触する前または接触した後に該印字テープと
該接着テープとが積層されるように巻回された印字テープと巻回された接着テープ
が箱体内に配置されていることを特徴とする請求項第1項記載の印字テープ出力装
置用感熱発色記録テープカートリッジ。
(2) 本件訂正によって訂正された特許請求の範囲の記載(注、訂正部分を下線
で示す。)
【請求項1】巻回された感熱発色記録テープ、該感熱発色記録テープを収納
すると共に該感熱発色記録テープとサーマルヘッドとが接触するための接触部およ
び該サーマルヘッドと接触して正像印字が形成された感熱発色記録テープを送り出
すテープ排出口を有する箱体とからなる感熱発色記録テープカートリッジであり、
該感熱発色記録テープが、サーマルヘッドから賦与される熱エネルギーに対応して
発色して正像印字を形成する感熱発色部、基材および接着剤部がこの順序で配置さ
れた感熱発色記録テープであり、該感熱発色部が、基材の一方の面上に設けられた
感熱発色層と、該感熱発色層上のUV硬化性樹脂から形成された透明保護層とから
なり、該接着剤部が、基材の感熱発色層が設けられていない面上に設けられた接着
剤層と、該接着剤層上に配置された剥離紙とから構成され、前記基材が、厚さが5
~150μmの樹脂フィルムまたは可撓性フィルムからなり、前記巻回された感熱
発色記録テープが、接触部で印字された後、テープの送り方向を変えることなく、
テープ排出口から送り出されるように構成されるとともに、前記巻回された感熱発
色記録テープが、テープの送り出し方向において、テープの印字面に垂直な箱体の
側壁と、該側壁に対向する箱体の側壁との間の箱体内の略中央部に収納されている
ことを特徴とする印字テープ出力装置用感熱発色記録テープカートリッジ。
【請求項2】感熱発色記録テープとして、基材と感熱発色層と透明保護層と
からなる印字テープと、接着剤層と剥離紙とからなる接着テープとが個別に巻回さ
れ、印字テープがサーマルヘッドと接触する前または接触した後に該印字テープと
該接着テープとが積層されるように巻回された印字テープと巻回された接着テープ
が箱体内に配置されていることを特徴とする請求項第1項記載の印字テープ出力装
置用感熱発色記録テープカートリッジ。
3 本件決定の理由
本件決定は、本件発明の要旨を本件訂正前の特許請求の範囲の記載のとおり
認定した上、同請求項1記載の本件発明は、実願平1-58420号(実開平2-
148358号)のマイクロフィルム、実願昭55-22304号(実開昭56-
125354号)のマイクロフィルム、特開平1-238687号公報、米国特許
第4370370号明細書及び実願昭60-97227号(実開昭62-6761
号)のマイクロフィルム記載の各発明に基づいて、同請求項2記載の本件発明は、
上記各発明及び実願昭63-135960号(実開平2-58957号)のマイク
ロフィルム記載の発明に基づいて、いずれも当業者が容易に発明をすることができ
たものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないも
のであり、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平
成7年政令第205号)4条2項の規定により、その特許は取り消されるべきもの
とした。
第3 当事者の主張
1 原告
本件決定が、本件発明の要旨を本件訂正前の特許請求の範囲の記載のとおり
認定した点は、本件訂正審決の確定により特許請求の範囲の記載が上記のとおり訂
正されたため、誤りに帰したことになる。そして、この瑕疵は本件決定の結論に影
響を及ぼすものであるから、本件決定は違法として取り消されるべきである。
2 被告
本件訂正審決の確定により特許請求の範囲の記載が上記のとおり訂正された
ことは認める。
第4 当裁判所の判断
本件訂正審決の確定により、特許請求の範囲の記載が上記のとおり訂正され
たことは当事者間に争いがなく、この訂正によって特許請求の範囲が減縮されたこ
とは明らかである。
そうすると、本件決定が、本件発明の要旨を本件訂正前の特許請求の範囲の
とおりであると認定したことは、結果的に誤りであったことに帰する。そして、こ
れが本件決定の結論に影響を及ぼすことは明らかであるから、本件決定は、瑕疵が
あるものとして取消しを免れない。
よって、原告の請求は理由があるから認容し、訴訟費用は、原告の申立て等
本件訴訟の経過にかんがみ、原告に負担させることとして、主文のとおり判決す
る。
東京高等裁判所第13民事部
裁判長裁判官 篠 原 勝 美
裁判官 長 沢 幸 男
裁判官 宮 坂 昌 利
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