知財判決速報/裁判例集知的財産に関する判決速報,判決データベース

ホーム > 知財判決速報/裁判例集 > 平成11(ワ)25247 民事訴訟 特許権

この記事をはてなブックマークに追加

平成11(ワ)25247民事訴訟 特許権

判決文PDF

▶ 最新の判決一覧に戻る

裁判所 東京地方裁判所
裁判年月日 平成13年9月28日
事件種別 民事
法令 特許権
キーワード 特許権6回
実施5回
分割4回
侵害2回
差止2回
損害賠償1回
主文
事件の概要

▶ 前の判決 ▶ 次の判決 ▶ 特許権に関する裁判例

本サービスは判決文を自動処理して掲載しており、完全な正確性を保証するものではありません。正式な情報は裁判所公表の判決文(本ページ右上の[判決文PDF])を必ずご確認ください。

判決文

平成11年(ワ)第25247号 特許権侵害差止等請求事件 
(口頭弁論終結日 平成13年7月6日)
判決
原 告   株式会社コンピュータ・テクニカ
訴訟代理人弁護士   松 尾 和 子
同          富 岡 英 次
補佐人弁理士  大 塚 文 昭
同 竹 内 英 人
被 告   日本電気株式会社
 訴訟代理人弁護士 花 岡  巖
同 新 保 克 芳
主文
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
1 被告は,別紙「原告物件目録」記載の物件を生産し,譲渡し,若しくは貸し
渡し,又は譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならない。
 2 被告は,別紙「原告物件目録」記載の物件及び仕掛品を廃棄せよ。
3 被告は,原告に対し,金5億円及びこれに対する平成11年11月17日か
ら支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
  本件は,情報伝送方式に関する特許権を有する原告が,被告に対し,被告に
よるファクシミリ及びファクシミリ,プリンタ,コピーの複合機の製造販売が原告
の特許権の侵害に当たると主張して,その製造販売の差止め,損害賠償等を求める
事案である。
1 争いのない事実
(1) 原告は,次の特許権(以下「本件特許権」といい,特許請求の範囲記載の
発明を「本件発明」という。また,本件特許に係る明細書(別紙特許公報(甲第2
号証)参照)を,「本件明細書」という。)を有している。
  登録番号 特許第1690095号
発明の名称 情報伝送方式
出願日 昭和60年1月18日
(特願昭60-8180号)
公告日 平成3年8月12日
(特公平3-52704号)
登録日 平成4年8月27日
  特許請求の範囲
「電話回線に接続されるモデムとコンピュータとの間に,前記コンピュー
タから送信されたデータ及び前記モデムを介して受信したデータをそれぞれ停電時
にも蓄えておく信号送信用及び受信用の不揮発バッファメモリと,相手局の受信バ
ッファ又は自局のコンピュータがデータを受け取る状態にあるときにデータを出力
する伝送制御手段とを設け,データ送信時に,自局のコンピュータは自局の信号送
信用不揮発バッファメモリに送信要求信号と相手局の電話番号と送信データとから
なる信号を送信し,伝送制御手段は,自局の信号送信用不揮発バッファメモリに送
信データがあるときには,相手局に対し,自局のアドレスを付けて前記電話回線を
介してデータを相手局の信号受信用の不揮発バッファメモリに送信し,受信側の局
のコンピュータは,受信側の受信用不揮発バッファメモリに対してデータが来てい
るかどうかを問い合わせ,来ているときはそのデータを引き取るという手順で情報
を伝送することを特徴とする情報伝送方式。」
(2) 本件発明の構成要件を分説すると次のとおりである(下線部を挿入するか
どうかについては,当事者間に争いがある。被告は,挿入することを主張し,原告
は,挿入すべきでないと主張する。)。
ア 情報伝送方式であって,次のことを特徴とする。すなわち,
イ 電話回線に接続されるモデムとコンピュータがあり,その間に,前記コ
ンピュータから送信されたデータ及び前記モデムを介して受信したデータをそれぞ
れ停電時にも蓄えておく信号送信用及び受信用の不揮発バッファメモリを設けてい
ること,
ウ 電話回線に接続されるモデムとコンピュータがあり,その間に,相手局
の受信バッファ又は自局のコンピュータがデータを受け取る状態にあるときにデー
タを出力する伝送制御手段を設けていること,
エ 自局のコンピュータは,データ送信時に,自局の信号送信用不揮発バッ
ファメモリに送信要求信号と相手局の電話番号と送信データとからなる信号を送信
すること,
オ 伝送制御手段は,自局の信号送信用不揮発バッファメモリに送信データ
があるときには,相手局に対し,自局のアドレスを付けて前記電話回線を介してデ
ータを相手局の信号受信用の不揮発バッファメモリに送信し,
カ 受信側の局のコンピュータは,受信側の受信用不揮発バッファメモリに
対してデータが来ているかどうかを問い合わせ,来ているときはそのデータを引き
取るという手順で情報を伝送すること。
(3) 被告は,型名「NEFAXH980」及び「NEFAX980」の各ファ
クシミリ並びに型名「MULTINAα1800」,「MULTINAα250
0」及び「MULTINAα3500」の各ファクシミリ,プリンタ,コピーの複
合機(以下これらを「被告製品」という。)を製造販売している。
2 争点
(1) 被告製品の特定
(2) 被告製品が構成要件アを充足するか。
(3) 被告製品が構成要件イを充足するか。
ア 電話回線に接続されるモデムとコンピュータがあるか。
イ データを停電時にも蓄えておく不揮発バッファメモリがあるか。
ウ 不揮発バッファメモリが電話回線に接続されるモデムとコンピュータと
の間に設けられているか。
(4) 被告製品が構成要件ウを充足するか。
  ア 相手局の受信バッファがデータを受け取る状態にあるときにデータを出
力する伝送制御手段を設けているか。
   イ 自局のコンピュータがデータを受け取る状態にあるときにデータを出力
する伝送制御手段を設けているか。
(5) 被告製品が構成要件エを充足するか。
(6) 被告製品が構成要件オを充足するか。
(7) 被告製品が構成要件カを充足するか。
(8) 被告製品は公知技術の実施か。
(9) 損害の発生及び額
3 争点に関する当事者の主張
(1) 争点(1)について
【原告の主張】
  被告が製造販売している被告製品は,別紙「原告物件目録」記載のとおり
である。
【被告の主張】
別紙「原告物件目録」記載の構成は不正確かつ不十分であり,別紙「原告
物件目録(被告の認否)」中,下線を付した部分を否認し,( )内に注記を付した部
分は,( )内の内容であることを前提として認め,その余は認める。
    被告製品の構成は,別紙「被告物件目録」(一)ないし(三)記載のとおりで
ある。
(2) 争点(2)について
   【原告の主張】
被告製品は,本件発明の構成要件アを充足する。
   【被告の主張】
本件発明の情報伝送方式で伝送される「情報」は,データであり,機種な
どを超えてコンピュータ相互が利用できるものである。
これに対し,被告製品のようなファクシミリ装置では,画情報が送受信さ
れるだけであり,印字する以外には相互に利用できない。
したがって,被告製品は,本件発明の構成要件アを充足しない。
(3) 争点(3)アについて
   被告製品に,電話回線に接続されるモデムがあることは当事者間に争いが
ない。
   【原告の主張】
   ア 本件明細書の特許請求の範囲では,「コンピュータ」という用語を,
「パソコン」や「マイコン」とは区別して,それらの上位概念に当たるものとして
使用している。
     また,本件明細書の発明の詳細な説明において,「FAやOAシステム
で用いられるマイコンやパソコン」と例示している(別紙特許公報3欄6行及び7
行ほか)。
     したがって,本件発明にいう「コンピュータ」は「パソコン」に限定さ
れるものではない。
イ 本件発明の目的の一つは,データ伝送の処理が必要なマイコンやパソコ
ンにおいて,主業務を担うメインのCPU又はこれを中心とする制御機構の負担を
軽くすることにある。したがって,本件発明にいう「コンピュータ」とは,データ
伝送以外の業務を主業務とするパソコン,マイコン等の機器において,その主業務
を制御するCPU又はこれを中心とする制御機構を意味する。
  ウ 被告製品(以下においては,「NEFAXH980」を例に主張する
が,その主張は,他の被告製品についても同様に当てはまる。)は,本件発明にい
う「コンピュータ」を備えている。すなわち,被告製品において,伝送制御以外の
ファクシミリの主業務(ファクシミリのユーザーが入力している原稿のスキャニン
グ処理,ディスプレイへの表示,プリントアウト等のデータの出力処理等の業務)
を制御するのは,別紙「被告製品における情報の流れにかかる説明書(1CP
U)」及び別紙「被告製品における情報の流れにかかる説明書(2CPU)」並び
に別紙「全体ブロック図」に示された,基板1の16ビットマイクロプロセッサ
(CPU)及びそのバスに接続されるメインコントロールRAM(ワーク用RA
M),マスクROM,LCDコントローラ,4ビット制御用マイコン(CPU)等
の部分であり,これが本件発明の「コンピュータ」に該当する。
   【被告の主張】
  ア 本件発明は,別紙特許公報第1図及び第2図の点線で囲まれた構成を
「パソコン」と「モデム」の間に設けるものであるから,本件発明にいう「コンピ
ュータ」は,この「パソコン」のことであり,点線中の「CPU」などは本件発明
の「コンピュータ」に当たらない。
  イ 本件明細書に,「異メーカーや異機種のマイコン,パソコン間は,プロ
トコルが不統一であるので,直接接続はできない。そこで,データを一旦不揮発メ
モリに書き込んだらパソコンは別のJOBに移り,相手先のパソコンは相手先のバ
ッファメモリに対してデータが来ているかどうかを問い合わせ,来ていれば引き取
ることとする。これにより,パソコン相互,マイコン相互のプロトコルには無関係
でデータの授受ができることになる。」(別紙特許公報4欄26行ないし35行)
と記載されているとおり,本件発明の「コンピュータ」は,特定のプロトコルに則
った情報のやりとりをしない。本件発明は,「コンピュータ」とは別に設けられた
「不揮発バッファメモリ」と「伝送制御手段」にデータの送受信をさせるという具
体的な解決手段によって,「コンピュータ」自身が通信プロトコルに従ったデータ
送受信をしなくてすむようにしたものである。
  一方,被告製品のようなファクシミリにおいては,送信側及び受信側の
双方のファクシミリ,あるいはそのCPUが,通信プロトコルに則った情報のやり
とりをリアルタイムで対話して行うものであるから,被告製品の制御回路(CP
U,FCU,DRAM,BBRAM等)は本件発明の「コンピュータ」には該当し
ない。
(4) 争点(3)イについて
  被告製品が,不揮発RAM8(画像用)及び不揮発RAM6(管理用)を
備えていること,これらが不揮発メモリであることは,当事者間に争いがない。
   【原告の主張】
  ア 本件発明にいう「不揮発バッファメモリ」は,①自局のコンピュータが
直ちにデータ処理を行える状況にない場合,又は,相手方のコンピュータに接続が
できない場合に,受信したデータ又は送信のためのデータを一時保存できること,
②伝送のための処理によりコンピュータの主業務に負担をかけることを防ぐもので
あること,③瞬間停電があっても,データの内容が壊れないこと,以上の要件を充
たすものである。
 イ 被告製品においては,送信時には画像データ及び電話番号を含む送信要
求のデータを不揮発RAM8(画像用)及び不揮発RAM6(管理用)メモリに格
納しながら送信することができ,電話回線が使用中であったり,相手局が話し中,
あるいは処理繁忙の場合には,送信可能になってから,メモリに格納されていたデ
ータが送信される。受信時には受信した画像データを不揮発RAM8(画像用)に
格納しながら,同時に主業務コンピュータが読み出しつつプリントすることがで
き,用紙切れや用紙詰まりなど,記録系に障害が生じて受信内容を用紙に記録でき
ない状態のときは,メモリに格納された受信データが,障害が除かれた後に,記録
用紙に記録されることになる。したがって,被告製品における不揮発RAM8(画
像用)及び不揮発RAM6(管理用)メモリは,上記アの各要件を充足する。
 ウ よって,被告製品における不揮発RAM8(画像用)及び不揮発RAM
6(管理用)は,「コンピュータから送信されたデータ及び前記モデムを介して受
信したデータをそれぞれ停電時にも蓄えておく信号送信用及び受信用の不揮発バッ
ファメモリ」に該当する。
   【被告の主張】
   被告製品において,CPUの処理速度と伝送処理諸装置の処理速度を同
期するバッファ機能は,画像メモリ及び管理用メモリではなく,主メモリ(DRA
M,メインコントロールRAM14)が担っている。画像メモリは,一旦データを
保存し,必要な時に主メモリに書き出すものであり,CPUの処理のバッファとし
て随時,データの書込みや読出しを行うものではない。
  したがって,被告製品における画像メモリ及び管理用メモリは,本件発
明にいう「不揮発バッファメモリ」には該当しない。
(5) 争点(3)ウについて
   【原告の主張】
  ア 本件発明にいう「モデムとコンピュータとの間に」とは,本件のような
コンピュータを使用するシステムの発明にあっては,データの流れに着目して機能
的にとらえるべきであり,物理的な位置関係の意味に限定して解すべきではない。
   イ 本件発明において,伝送処理負担を主として行うのは,伝送制御手段で
あるところ,本件発明における「伝送制御手段」とは,特許請求の範囲に定義され
た「相手局の受信バッファ又は自局のコンピュータがデータを受け取る状態にある
ときにデータを出力する」機能を有し,伝送処理以外のコンピュータの主業務をお
ろそかにすることなく,コンピュータの伝送処理の負担を軽減するものであればよ
く,特にその機能を実現するハードウェアは特定されていない。すなわち,コンピ
ュータと伝送制御手段との区別は,機能的なものにすぎない。例えば,データ通信
に不可欠な,授受するデータを通信プロトコルに従って相手方に単位データの受信
が完了したかどうかを確認しながら順次伝送処理してゆくという最も負担の重い処
理を,コンピュータの主業務から機能的に区別される方法で行うものであれば足り
る。
   ウ 多重プロセッサ(multiprocessor)は,二つ以上の独立した演算装置や
それに関係した制御論理を含んでいる中央処理装置であり,二つの全く独立した作
業を行うことができる。このような中央処理装置の一方を伝送処理以外のコンピュ
ータの主業務に,他方を伝送処理に充てれば,前者がコンピュータ,後者が伝送処
理手段ということになり,後者は,前者に伝送処理負担をかけることなく,伝送処
理を行うことができる。
     時分割(time sharing)システムも,同一のCPUにおいて,一方の処
理に負担をかけないで他方の処理を行うことができるシステムであり,この場合も
一方を伝送処理以外のコンピュータの主業務に,他方を伝送処理に充てれば,後者
は,前者に伝送処理負担をかけることなく,伝送処理を行うことができる。
     したがって,これらのシステムを使用することにより,物理的にはコン
ピュータから独立した伝送制御手段を備えないように見える装置であっても,伝送
処理がコンピュータの伝送処理以外の主業務とは独立して処理され,不揮発バッフ
ァメモリに蓄積されたデータを相手方の受信用バッファメモリ又は自局のコンピュ
ータに伝送するものであり,従来の通信プロトコルに従った伝送処理を行うコンピ
ュータに比べて,はるかに伝送処理の負担が軽減されているものであれば,本件発
明のメールポスト方式を実施しているものということができる。
   エ(ア) 被告製品は,別紙「原告物件目録」記載の構成を備え,その情報の
流れは,同目録,別紙「全体ブロック図」,別紙「ブロック図」2及び3(2CP
Uのとき),別紙「ブロック図」4A及び4B(1CPUのとき)並びに別紙「被
告製品における情報の流れにかかる説明書(1CPU)」及び「被告製品における
情報の流れにかかる説明書(2CPU)」記載のとおりである。
(イ) 送信時
2CPUのときの送信時の信号の流れは,別紙「ブロック図」2のと
おりである。
  a 相手局の電話番号データを含む送信要求のデータは,主業務コンピ
ュータ(CPU1)の制御により,メインコントロールRAM(ワーク用RAM)
14に呼び出され,さらに主業務コンピュータ(CPU1)の制御により,不揮発
RAM6(管理用)のメモリに格納される。
b 「メモリ入力送信」の機能が備えられ,送信原稿をセットして送信
の操作をしたとき,主業務コンピュータ(CPU1)は送信原稿から読み取ったデ
ータをメモリ(不揮発RAM8(画像用))に書き込みながら,伝送制御手段(C
PU2)が読み出しながら送信し,電話回線が使用中であったり,相手局が話し
中,あるいは処理繁忙の場合には,主業務コンピュータ(CPU1)が送信原稿を
このメモリに書き込んで保存し,送信可能になってから伝送制御手段(CPU2)
により送信される。
 c 各画像データには,各送信単位毎に受付順で番号が割り付けられ
る。自局のメモリ(不揮発RAM8(画像用))に送信データがあるときは,伝送
制御手段により,受付番号順に,相手局に対して,自局の電話番号を付けてデータ
を相手局に送信する。
(ウ) 受信時
2CPUのときの受信時の信号の流れは,別紙「ブロック図」3のとお
りである。
a 受信の際には,NCU及びモデムを介して受信したデータは,伝送
制御手段(CPU2)の制御により,デュアルポートRAMを通らない別の経路に
より,セミカスタムLSIを介して,メモリ(不揮発RAM8(画像用))に格納
される。
 b  記録系に障害がない場合は,伝送制御手段(CPU2)が受信
しながら,主業務コンピュータ(CPU1)の制御により,記録用紙に記録され
る。
 c  用紙切れや用紙詰まりなど,記録系に障害が生じて受信データ
を用紙に記録(プリントアウト)できない状態のときでも,伝送制御手段のCPU
2の制御により,受信データはメモリ(不揮発RAM8(画像用))に格納され
る。
 d 同メモリに格納されたこの受信データは,用紙の補給をしたり
紙詰まりを除去して障害を除いた後に,主業務コンピュータ(CPU1)の制御に
より,記録用紙に記録される。
(エ) これらの情報の流れの中で,(イ)a,b及び(ウ)b,dにおけるC
PU1の制御はコンピュータの主業務を遂行しているものであるが,それ以外にお
けるCPU2の制御は,データの送受信に関する業務,すなわち伝送制御業務を遂
行している。
1CPUの場合には,データの送受信に関する業務も,CPU1が遂
行しているが,そのCPU1の制御は,主業務の遂行に関する制御の部分(コンピ
ュータとして機能している部分)と,伝送制御業務に関する部分に分けることがで
き,一つのCPUを時分割により,二つ以上のCPUと同様の機能を果たさせてい
るものである。
したがって,CPUの制御を,主業務の遂行に関する制御の部分(コ
ンピュータとして機能している部分)と,伝送制御に関する部分に分けてその動作
を見ると,画像データ並びに電話番号及び送信要求データは,主業務のコンピュー
タの制御を受けてメモリ(不揮発RAM8(画像用)及び不揮発RAM6(管理
用))に書き込むまでの部分,それ以降のデータをメモリから読み出して行う伝送
制御業務(送受信に関する業務)の遂行に関する制御を受けて流れる部分,及びモ
デムから電話回線に接続する部分とに分けることができ,データは,この順序又は
その逆の順序で流れている。
また,メモリ(不揮発RAM8(画像用)及び不揮発RAM6(管理
用))は,主業務コンピュータと伝送制御手段との間にあって,データを保管する
ものであるから,物理的にも「コンピュータとモデムとの間」に位置しているとい
うことができる。
オ 以上によると,被告製品の「不揮発バッファメモリ」として機能する不揮
発RAM8(画像用)及び不揮発RAM6(管理用)は,「コンピュータ」と「モ
デム」の間に存在する。
   【被告の主張】
   ア 本件発明においては,データ送信時に自局のコンピュータは「不揮発バ
ッファメモリ」にデータを送り,受信時には,「受信側の局のコンピュータは,受
信側の受信用不揮発バッファメモリに対してデータが来ているかどうかを問い合わ
せ,来ているときはそのデータを引き取る」。したがって,「コンピュータ」は
「不揮発バッファメモリ」とは全く別個の存在でなければならない。異機種間でも
データの伝送ができ,相手方のパソコンが生きていない場合(スタンバイしていな
い場合など)でも相手方の受信バッファまでは送信する(別紙特許公報4欄39行
以下)ためには,「コンピュータ」と「不揮発バッファメモリ」が物理的に別であ
ることが必要である(ただし,別の筐体に納められていることまで必要としな
い。)。
     また,「伝送制御手段」についても,コンピュータの伝送処理負担を軽
減するという本件発明の特徴から言って,「コンピュータ」と別であることが必要
である。
     本件発明においては,上記のように,「不揮発バッファメモリ」と「伝
送制御手段」が「コンピュータ」と別であるからこそ,「モデム」と「コンピュー
タ」の「間に」設けているのである。
  ところが,被告製品においては,仮に制御回路が「コンピュータ」に,
画像メモリと管理用メモリが「不揮発バッファメモリ」にそれぞれ該当するとして
も,主メモリと管理用メモリは,「コンピュータ」の内部にあるし,画像メモリは
制御回路を経ないとモデムとのデータのやりとりができないので,いずれのメモリ
もモデムと「コンピュータ」の間には存在しない。
イ 原告が主張するように,コンピュータと伝送制御手段との区別を機能的
なものにすぎないと解し,データ伝送という最も負担の重い処理を主業務と区別し
て行う機能を有するものであれば,多重プロセッサや時分割システムによるもので
もよいとすると,「モデムとコンピュータの間に」,「不揮発バッファメモリ」と
「伝送制御手段」を設けるという解決手段によって,コンピュータの伝送処理負担
を軽減するという本件発明の特徴が全く無視されることになる。
  ウ また,仮に,被告製品において,制御回路が「コンピュータ」に,画像
メモリと管理用メモリが「不揮発バッファメモリ」にそれぞれ該当するとしたう
え,データの流れに着目して機能的に考えたとしても,画情報の流れは次のとおり
であるから,モデムとコンピュータの間に「不揮発バッファメモリ」はない。
  送信側では,画像メモリに格納された画情報と管理メモリに格納された
電話番号データは,いずれも,主メモリ(メインコントロールRAM14)に書き
込まれ,CPUの制御によりモデムに転送される。したがって,実際に送信される
際の画情報の流れは,【画像メモリ→制御回路(CPU,主メモリ)→モデム】と
なる。
     受信側では,別紙「被告物件目録(一)」第5項のとおり,制御回路が,
モデムを介して受信したデータを主メモリに書き込み,そのデータが復号化された
後SRAMに書き込まれ,さらにファイルコントローラで符号化されて画像メモリ
に格納される。したがって,実際に受信される際の画情報の流れは,【モデム→制
御回路(CPU,主メモリ)→画像メモリ】となる。
エ 被告製品のようなファクシミリにおいては,伝送が主業務であるから,
主業務と伝送制御を区別することはできない。
  (6) 争点(4)アについて
  【原告の主張】
  被告製品は,別紙「原告物件目録」第1項(2)記載のとおり,電話回線が使
用中であったり,相手局が話し中,あるいは処理繁忙の場合には,送信原稿がメモ
リに入力され,送信可能になってから送信される。そして,同目録第1項(4)記載の
通信予約の機能により,コンピュータは,自局のメモリに送信データがあるとき
は,受付番号の順に,相手局に対して,自局の電話番号を付けてデータを相手局に
送信する。
    具体的には,送信先の電話番号データは,主業務コンピュータ(CPU
1)の制御により,不揮発RAM6(管理用)から読み出され伝送制御手段に渡さ
れる。伝送制御手段が自動ダイヤルを実行し,電話回線が確立していること,相手
局の伝送制御手段が受信用バッファメモリに書き込める体制が整っていることを確
認する。
    もし,電話回線が使用中であったり,相手局が話し中,あるいは処理繁忙
の場合には,送信側の伝送制御手段はその旨をCPU1に回答し,一定時間経過後
に再試行する。
    相手局の伝送制御手段が受信用バッファメモリに書き込める体制が整って
いることを確認できた場合には,送信側の伝送制御手段は,不揮発RAM8(画像
用)から読み出されたデータをCODECで画像圧縮してモデムを介して相手方に
送信する。
 したがって,被告製品は,「相手局の受信バッファがデータを受け取る状
態にあるときにデータを出力する伝送制御手段」を備えている。
  【被告の主張】
   被告製品においては,電話回線が使用中からそうでない状態に変わった場
合にデータ送信されるにすぎず,送信側の伝送制御手段が,相手局の伝送制御手段
が受信用バッファメモリに書き込める体制が整っていることを確認することはな
い。
  したがって,被告製品には,本件発明の「相手局の受信バッファまたは自
局のコンピュータがデータを受け取る状態にあるときにデータを出力する伝送制御
手段」がない。
(7) 争点(4)イについて
  【原告の主張】
    被告製品は,別紙「原告物件目録」第1項(4)及び(5)記載のとおり,受信
に際して,モデムを介して受信したデータは,伝送制御手段によりメモリに格納さ
れ,記録系に障害がない場合(すなわち,コンピュータが主業務であるデータの出
力を命ずることができる状況にあるとき)は,受信の都度,伝送制御手段はメモリ
に格納し,同時に主業務コンピュータはメモリから読み出しながら,記録用紙に記
録する。用紙切れや用紙詰まりなど,記録系に障害が生じて受信内容を用紙に記録
できない状態のとき(すなわち,コンピュータが主業務であるデータの出力を命ず
ることができる状況にないとき)は,受信データはメモリに格納され,メモリに格
納された受信データは,障害が除かれた後に,記録用紙に記録される。
    また,主業務コンピュータ自体の処理が繁忙状態の際に,相手局から更に
受信したデータも伝送制御手段によりメモリに格納され,繁忙状態解除後に(すな
わち,主業務コンピュータがメモリからデータを受け取ることができる状態となっ
たときに),引き続き受信データを自動的に記録用紙に出力する。
    したがって,被告製品は,「自局のコンピュータがデータを受け取る状態
にあるときにデータを出力する伝送制御手段」を備えている。
  【被告の主張】
   前記のとおり,被告製品には「コンピュータ」がないし,仮に制御回路を
「コンピュータ」と呼ぶとしても,別に「伝送制御手段」は存在しない。
  本要件は,構成要件カ「受信側の局のコンピュータは,受信側の受信用不
揮発バッファメモリに対してデータが来ているかどうかを問合せ,来ているときは
そのデータを引き取る」に対応して,不揮発バッファメモリからコンピュータにデ
ータを送ることを出力と呼んでいる。
  被告製品では,モデムを介して受信した画情報データは受信バッファとし
て利用される主メモリに書き込まれ,ファイルコントローラで蓄積用符号化方式の
符号化をされて一旦画像メモリに格納されるが,格納された画情報データを印字す
ることは,原告の主張によれば制御回路の主業務に他ならないから,不揮発バッフ
ァメモリからデータを印字部に送るのは主業務としての制御回路が行うことであっ
て,伝送制御手段が行うことではない。
  したがって,被告製品には,「自局のコンピュータがデータを受け取る状
態にあるときにデータを出力する伝送制御手段」はない。
(8) 争点(5)について
   【原告の主張】
    被告製品は,別紙「原告物件目録」第1項(2)及び(3)記載の構成を有して
おり,具体的な情報の流れとしては,別紙「被告製品における情報の流れにかかる
説明書(1CPU)」及び「被告製品における情報の流れにかかる説明書(2CP
U)」各第二項1①ないし④記載のとおりである。
  したがって,被告製品は,「自局のコンピュータは,データ送信時に,自
局の信号送信用不揮発バッファメモリに送信要求信号と相手局の電話番号と送信デ
ータとからなる信号を送信する」ものであり,本件発明の構成要件エを充足する。
   【被告の主張】
   被告製品において,送信時に,送信要求信号と相手局の電話番号が管理メ
モリに,送信される画情報が画像メモリにそれぞれ格納されることは認める。
   しかし,前記のとおり,被告製品には,「コンピュータ」も「不揮発バッ
ファメモリ」もないから,被告製品は構成要件エを充足しない。
(9) 争点(6)について
  【原告の主張】
   被告製品は,別紙「原告物件目録」第1項(4)記載のとおり,メモリ入力通
信機能に関連して通信予約の機能が備えられている。通信予約を管理するために,
各送信単位毎に受付順で番号が割り付けられ,コンピュータは,自局のメモリに送
信データがあるときは,受付番号の順に,相手局に対して,自局の電話番号を付け
てデータを相手局に送信する。
   具体的な情報の流れは,別紙「被告製品における情報の流れにかかる説明
書(1CPU)」及び「被告製品における情報の流れにかかる説明書(2CP
U)」各第二項1④ないし⑦記載のとおりである。
    相手局が,画像データをプリントアウトするときには,自局の電話番号が
ともに印刷されているから,自局の伝送制御手段は,自局の信号送信用不揮発バッ
ファメモリに送信データがあるときには,相手局に対し,「自局のアドレスを付け
て」前記電話回線を介してデータを相手局の信号受信用の不揮発バッファメモリに
送信している。
   したがって,被告製品は,「伝送制御手段は,自局の信号送信用不揮発バ
ッファメモリに送信データがあるときには,相手局に対し,自局のアドレスを付け
て前記電話回線を介してデータを相手局の信号受信用の不揮発バッファメモリに送
信」するという構成を備えている。
  【被告の主張】
  ア 前記のとおり,被告製品には,「伝送制御手段」も「不揮発バッファメモ
リ」もない。
    なお,原告は,被告製品について,「コンピュータは,自局のメモリに
送信データがあるときには,受付番号の順に,相手局に対して,自局の電話番号を
付けてデータを相手局に送信する」と主張するが,原告の主張ではコンピュータと
伝送制御手段は別のはずであり,この主張は,そのような区別が被告製品に当ては
まらないことを端的に示すものである。
 イ 被告製品において,相手局が,画像データをプリントアウトするときに
は,自局の電話番号がともに印刷されているかどうかは明らかではない。
  ウ 被告製品においては,相手側のファクシミリと対話しながら画情報を送
り,受け取った後で相手側が画像メモリに格納しているのであるから,「電話回線
を介してデータを相手局に送信し」ているにすぎず,「相手局の信号受信用不揮発
バッファメモリに送信し」ているのではない。
  エ したがって,被告製品は,構成要件オを充足しない。
(10) 争点(7)について
  【原告の主張】
   被告製品においては,別紙「原告物件目録」第1項(5)記載のとおり,モデ
ムを介して受信したデータは,伝送制御手段により不揮発RAM8(画像用)に格
納される。記録系に障害がない場合は,受信の都度,記録用紙に記録される。用紙
切れや用紙詰まりなど,記録系に障害が生じて受信内容を用紙に記録できない状態
のときには,不揮発RAM8(画像用)に格納された受信データは,用紙の補給を
したり紙詰まりを除去して障害を除いた後に,記録用紙に記録される。また,主業
務のコンピュータの処理が繁忙状態の際に,相手局から更に受信したデータも伝送
制御手段によりメモリに格納され,繁忙状態解除後に,引き続き自動的に記録用紙
に出力される。
    具体的な情報の流れは,別紙「被告製品における情報の流れにかかる説明
書(1CPU)」及び「被告製品における情報の流れにかかる説明書(2CP
U)」第一項1③及び④記載のとおりであり,CPU1は,不揮発RAM8(画像
用)に受信データがきているか否かを問い合わせ,来ていれば,そのデータをメイ
ンコントロールRAM14に読み込み,プリンタコントローラを通じてプリンタに
出力する。
    したがって,被告製品は,「受信側の局のコンピュータは,受信側の受信
用不揮発バッファメモリに対してデータが来ているかどうかを問い合わせ,来てい
るときはそのデータを引き取るという手順で情報を伝達すること」という要件を充
足する。
  【被告の主張】
   ア 前記のとおり,被告製品には,「コンピュータ」も「不揮発バッファメ
 モリ」もない。
   イ 被告製品のようなファクシミリでは,送信側から受信側へ通信プロトコ
ルに従ってリアルタイムで対話しながら直接画情報が伝送される。被告製品におい
ては,受信側の制御回路は,モデムを介して受信した画情報を主メモリに書き込
み,主メモリから読み出された画情報は,通信用符号化方式で符号化された後SR
AMに書き込まれ,ファイルコントローラで蓄積用符号化方式の符号化をされて画
像メモリに格納される。すなわち,モデムを介して画情報が受信側に来た時点で,
制御回路に入るので,画像メモリに対して「データが来ているかどうかを問い合わ
せ,来ているときはそのデータを引き取る」ということは全く行っていない。
  ウ したがって,被告製品は,構成要件カを充足しない。
(11) 争点(8)について
【被告の主張】
ア 送受信された画情報を不揮発の記録媒体に保持するファクシミリ装置は
公知である。
(ア) 本件特許出願前に刊行された「NEC技報」(乙第1号証)記載の
「画像蓄積機能を有する複合PPCファクシミリ」は,固定ディスクを内蔵してお
り,この固定ディスクは,その中に記憶された情報が電源が落ちても失われない
「不揮発性」である。
   (イ) 不揮発のデータ蓄積装置として,磁気ディスク,バックアップ電源
のあるICメモリ等が利用できることは周知の技術である(乙第5号証4欄11な
いし17行)ところ,データの記憶場所として,ハードディスクを用いるかRAM
を用いるかは,単なる設計上の問題にすぎない。
    昭56ー20377号公開特許公報(乙第7号証)には,不揮発のデ
ータ蓄積装置として,磁気ディスク,バックアップ電源のあるICメモリ等を利用
できることが明記されている(4欄2ないし7行)。
(ウ) 本件特許の出願前に刊行された「RICOH TECHNICAL
 REPORT」(乙第4号証)記載の「テレテックス リコーEX5120」
は,ワードプロセッサ機能,通信機能等を総合したテレテックス装置であるが,そ
の通信制御装置のCCUはCPU,ROM,RAM等で構成されており,このCC
UのRAMは不揮発バッファメモリである。
  イ したがって,被告製品は公知の技術を使用しているにすない。
【原告の主張】
 ア(ア) 本件発明における不揮発バッファメモリは,前記(4)【原告の主張】
ア記載の①ないし③の要件を充たすものであるところ,ハードディスクは,通常,
CPUとメインメモリとの処理速度の同期をとるために設けられているバッファメ
モリに使用されるRAMと比較して,アクセス時間が1000倍以上,場合により
200万倍以上となるものであるから,②の要件を充たさない。したがって,ハー
ドディスクは,通常,「不揮発バッファメモリ」に含まれない。
 (イ) 被告が主張する「テレテックス リコーEX5120」について,
前記「RICOH TECHNICAL REPORT」(乙第4号証)には,
「リコーEX5120では,受信メモリとして,SCU制御下のフロッピーディス
クを採用している」ことが記載されており,受信用のメモリとして不揮発バッファ
メモリを使用しているものではないことは明らかである。
イ よって,被告製品が公知技術の実施であるということはできない。
(12) 争点(9)について
【原告の主張】
被告は,遅くとも平成7年から被告製品を生産,譲渡しているが,現在ま
でに販売した被告製品の売上高は,少なくとも290億円になる。
原告が本件特許権について受けるべき実施料率は,売上高の5パーセント
を下らない。
したがって,原告は,被告に対し,売上高の290億円の5パーセントで
ある14億5000万円を,自己が受けた損害の額として賠償請求し得るところ,
このうち5億円の支払を求める。
【被告の主張】
原告の主張を争う。
第3 当裁判所の判断
1 争点(4)について
(1) 「伝送制御手段を設けていること」の意味について
ア 原告は,本件発明における「伝送制御手段」とは,伝送処理以外のコン
ピュータの主業務をおろそかにすることなく,コンピュータの伝送処理の負担を軽
減するものであればよく,その機能を実現するハードウェアは特定されていないと
主張する。すなわち,コンピュータと伝送制御手段との区別は,機能的なものにす
ぎず,データ伝送という最も負担の重い処理を,コンピュータの主業務から機能的
に区別される方法で行うものであれば,多重プロセッサ(multiprocessor)や時分
割(time sharing)システム(以下これらを「多重処理」という。)のように,物
理的にはコンピュータから独立した伝送制御手段を備えない装置であっても,「伝
送制御手段を設けていること」という要件を充たすと主張する。
そこで,この点について検討するに,次に述べる理由により,本件発明
にいう「コンピュータ」と「伝送制御手段」は,機能ではなく,ハードウェアによ
って定義されなければならず,「コンピュータ」とは別に独立のハードウェアとし
て「伝送制御手段」が設けられる必要があるというべきである。
(ア) 本件明細書には,本件発明が解決しようとする問題点として,「伝
送処理負担を軽減すること FAやOAシステムで用いられるマイコンやパソコン
は,各々の主業務を担っており,データ伝送のための処理を行なうと,主業務がお
ろそかになりがちであるが,本発明ではデータ伝送を負担なしで行ないたい。」
(別紙特許公報3欄5行ないし10行)と記載され,これを解決するための手段と
して,「本発明は,電話回線に接続されるモデムとコンピュータとの間に,前記コ
ンピュータから送信されたデータ及び前記モデムを介して受信したデータをそれぞ
れ停電時にも蓄えておく信号送信用及び受信用の不揮発バッファメモリと,相手局
の受信バッファ又は自局のコンピュータがデータを受け取る状態にあるときにデー
タを出力する伝送制御手段とを設け」(別紙特許公報3欄34行ないし41行)る
ことが記載されている。
「伝送制御手段」が主業務を行うコンピュータとハードウェアを共通
にしている場合には,当該ハードウェアがデータ伝送のための処理を行うことに変
わりはないから,「伝送制御手段」を設けても当該ハードウェアの負担を軽減する
ことにはならず,結局,「コンピュータ」の処理負担を軽減することはできない。
これは,多重処理の場合であっても同様であり,「伝送制御手段」が「コンピュー
タ」とハードウェアを共通にしている以上,当該ハードウェアの仕事量は変わらな
いのであって,通信を原因とする待ち時間を減少することで処理効率を上げて「コ
ンピュータ」の処理を効率化することにはなっても,「コンピュータ」の処理負担
を軽減することにはならない。
「コンピュータ」の処理負担を軽減するためには,「コンピュータ」
のハードウェアの仕事量自体を減少させることが必須であり,不揮発バッファメモ
リを設けるのみならず,「コンピュータ」のハードウェアから独立した「伝送制御
手段」を設けることによって始めて「コンピュータ」の処理負担を軽減することが
可能になるというべきである。
   また,原告が主張するように,コンピュータと伝送制御手段との区別
をその機能にかからしめ,本件発明にいう「コンピュータ」を,主業務を制御する
CPU又はこれを中心とする制御機構というというように機能から定義するなら
ば,もともと「コンピュータ」が主業務ではないデータ伝送のための処理を行うこ
とはないから,「コンピュータ」の「伝送処理負担を軽減する」ということ自体,
あり得ないことになる。この点からいっても,原告の主張は採用できない。
(イ) 本件明細書には,本件発明が解決しようとする問題点として,「自
由なシステム構成ができること 工場の生産システムは刻々と変化する。これに応
じて,拡張,縮小変更が自由に行なえるばかりか,臨時的なデータ収集も可能なほ
どの自由度が欲しい。」(別紙特許公報3欄11行ないし15行)と記載されてい
る。
この記載によると,本件発明の目的の一つとして,システム構築時に
比してシステムの容量が増加し,主業務の業務量の増加に対応できるハードウェア
に置き換える必要が生じた場合に,より自由なシステム変更を可能にするシステム
構成が求められていると解される(別紙特許公報9欄37行ないし10欄2行参
照)。
「伝送制御手段」や「不揮発バッファメモリ」のハードウェアが主業
務を行う「コンピュータ」から独立していない場合には,これらをすべて変更しな
ければシステムの変更ができないのに対し,これらがハードウェアとして「コンピ
ュータ」から独立している場合には,主業務を行うコンピュータのみを置き換える
ことでシステムの変更が可能となる。
したがって,システム変更の自由度を高めるという観点からも,「伝
送制御手段」がハードウェアとして,「コンピュータ」から独立していることが前
提とされている。
(ウ) 本件明細書には,本件発明が解決しようとする問題点として,「異
メーカーや異機種のマイコンやパソコンが接続できること 伝送規約(プロトコ
ル)が異メーカー,異機種でまちまちになっており,これらを直接接続することが
できない。そこで,使用言語が異なってもデータだけは間接的でよいから伝送した
い。」(別紙特許公報3欄16行ないし22行)と記載され,これを解決するため
の手段として,「異メーカーや異機種のマイコン,パソコン間は,プロトコルが不
統一であるので,直接接続はできない。そこで,データを一旦不揮発メモリに書き
込んだらパソコンは別のJOBに移り,相手先のパソコンは相手先のバッファメモ
リに対してデータが来ているかどうかを問い合わせ,来ていれば引き取ることとす
る。これにより,パソコン相互,マイコン相互のプロトコルには無関係でデータの
授受ができることになる。」(別紙特許公報4欄26行ないし35行)と記載され
ている。
この記載によると,本件発明の「コンピュータ」は,特定のプロトコ
ルに基づくデータの授受をしないものと解される。すなわち,本件発明は,データ
の送受信を「コンピュータ」とは別に設けられた「不揮発バッファメモリ」と「伝
送制御手段」が行うことにより,「コンピュータ」自体は,通信プロトコルに従っ
たデータの送受信をしなくてよいようにしたものであり,その結果,「コンピュー
タ」相互のプロトコルに関係なくデータの授受を可能にしたものである。
そうすると,この点からも,「伝送制御手段」がハードウェアとし
て,「コンピュータ」とは独立していることが本件発明の前提となっているという
ことができる。
(エ) 本件明細書には,問題点を解決するための手段として,「停電や相
手方のパソコンが生きていない(相手方のパソコンが別のJOBをしてる場合やス
タンバイしていない場合など,データを受ける状態になっていない)場合でも,相
手方の受信バッファまでは送信することにより,確実に保存するようにした。」
(別紙特許公報4欄40行ないし5欄1行)という記載がある。
この記載及び弁論の全趣旨によると,相手方の「コンピュータ」が何
らかの原因で「生きていない」,すなわちシステムエラー等何らかの原因でスタン
バイしていない場合であっても,相手方の受信バッファまではデータを送信するた
めには,「コンピュータ」の稼働状態にかかわらず,「伝送制御手段」が機能する
ことが必要であると認められる。
「コンピュータ」と「伝送制御手段」がハードウェアを共通にしてい
たとすると,「コンピュータ」にデータを受けることができなくなるようなトラブ
ルが発生し,正常に動作しなくなっている場合には,「伝送制御手段」も動作しな
くなる可能性が高い。このことは,多重処理の場合でも,同様であると考えられ
る。
したがって,相手方のパソコンが「生きていない」場合でも,相手方
の受信バッファまでは送信することが可能であるためには,やはり,「伝送制御手
段」がハードウェアとして,「コンピュータ」から独立していることが必要であ
る。
(オ) 本件明細書には,「コンピュータ」の例示として,「マイコンやパ
ソコン」があげられている(別紙特許公報3欄6行及び7行ほか)。そして,実施
例(別紙特許公報5欄15行以下)においては,CPUなどからなる「伝送制御手
段」が,「コンピュータ」であるパソコンとは別に設けられている。すなわち,
「伝送制御手段」は,ハードウェアとして「コンピュータ」から独立している。
その他,本件明細書に,本件発明において,「コンピュータ」とは別
に独立のハードウェアとして「伝送制御手段」が設けられる必要はなく,それら
は,機能的に区別されていれば足りると解すべき記載は認められない。
(2) 1CPU構成の被告製品について
証拠(甲第12ないし第14号証,乙第8,第11号証)及び弁論の全趣
旨によると,被告製品のうち,「MULTINAα1800」は一つのモデムしか
使用できないこと,「MULTINAα2500」,「MULTINAα350
0」,「NEFAX980」は,標準型では一つのモデムしか使用できないが,オ
プションで二つのモデムを使用できるマルチポート仕様にすることができること,
「NEFAXH980」は,標準型で二つのモデムを使用することができること,
二つのモデムが使用できる場合には,別紙「被告物件目録(二)」添付のブロック図
でいう基板1のモデムを使用するか又は基板2のモデムを使用するかを使用者にお
いて選択できること,以上の事実が認められる。
 したがって,原告が別紙「被告製品における情報の流れにかかる説明書
(1CPU)」に記載している被告製品は,「MULTINAα1800」及び他
の被告製品のうち基板1のモデムを使用したものとなる。
これらの被告製品において,一つのCPUが主業務と伝送制御の両方に兼
用されていることは当事者間に争いがないから,これらの被告製品は,「コンピュ
ータ」からハードウェアとして独立した「伝送制御手段」を設けているということ
はできない。
よって,これらの被告製品は,本件発明の構成要件ウにいう「伝送制御手
段を設けていること」という要件を充足しない。
(3) 2CPU構成の被告製品について
ア 前記認定の事実によると,原告が別紙「被告製品における情報の流れに
かかる説明書(2CPU)」に記載している被告製品は,「MULTINAα18
00」を除く被告製品のうち基板2のモデムを使用したものとなる。
イ これらの被告製品には,主業務を行う「コンピュータ」である基板1上
のCPU(以下「CPU1」という。)とは別に,ハードウェアとして独立した基
板2上のCPU(以下「CPU2」という。)が存し,このCPU2が伝送制御に
関与していることは,当事者間に争いがない。
ウ 原告は,2CPU構成の被告製品については,別紙「被告製品における
情報の流れにかかる説明書(2CPU)」記載のとおり,CPU1が主業務を,C
PU2が伝送制御を担っており,CPU1は伝送制御には関与せず,CPU2は主
業務に関与しない旨主張する。確かに,これらの被告製品が原告の主張するとおり
のものであれば,本件発明のいう「伝送制御手段」に該当するCPU2を設けてい
ることになるので,以下検討する。
甲第21,第22号証によると,画像データは,別紙「ブロック図」2
及び3記載のとおり,デュアルポートRAMとCPUバスを通らずに流れているこ
とが認められる。しかし,弁論の全趣旨によると,データがデュアルポートRAM
とCPUバスを通らなくとも,伝送についてCPU1の制御を受けることがあり得
るものと認められるから,デュアルポートRAMとCPUバスを通らないことが直
ちに,CPU1が画像データの伝送を制御していないということはできないという
べきである。
甲第23号証及び乙第11号証によると,送受信中の100マイクロ秒
間を観測した場合には,CPU1が動作しておらず,CPU2が動作していること
が観測されること,送受信中の20ミリ秒間を観測した場合には,CPU1が動作
していることが観測されることが認められる。以上のとおり,少なくとも,20ミ
リ秒間を観測した場合には,CPU1が動作していることが観測される以上,10
0マイクロ秒間にCPU1の動作が観測されなかったからといって,直ちにCPU
1が伝送制御に関与していないと認めることはできない。
被告は,2CPU構成の被告製品において,伝送制御に当たり,CPU
1は,ファイルコントローラを制御していると主張する。原告は,これを争うが,
2CPU構成の被告製品において,伝送制御に当たり,CPU1は,ファイルコン
トローラを制御していないことを認めるに足りる証拠はない。乙第11号証の実験
は,被告製品において,送受信中にCPU1が動作していることを示すことを目的
としてされた実験であって,CPU1がファイルコントローラを制御しているかど
うかを確認するための実験ではなく,また,CPU1が画像メモリの書込み,読出
し動作といかなる相関関係をもって動作していればファイルコントローラを制御し
ているものと認められるのかについての証拠も存しないから,同号証を根拠とし
て,CPU1がファイルコントローラを制御していないことを認めることもできな
い。
   以上によると,CPU1が伝送制御に関与しないということを認めるこ
とはできず,2CPU構成の被告製品について,主業務を担っているCPU1が伝
送制御には関与しないという原告の前記主張は採用できない。なお,この点につい
て,裁判所は,弁論準備手続期日において,原告に対して,CPU1が伝送制御に
関与しない証拠を提出するのであれば,早急に提出するよう求め,提出する十分な
機会を与えたが,結局以上のとおり提出されなかったものである。
   よって,これらの被告製品が原告主張の構成を備えていると認めること
はできないから,その構成を前提として,被告製品が本件発明の構成要件を充足す
るとする原告の主張も認められない。
エ なお,念のため,2CPU構成の被告製品において,CPU1が伝送制
御の一部に関与している場合に,CPU2が本件発明にいう「伝送制御手段」たり
得ないことについて補足する。
前記(1)記載のとおり,本件明細書には,「本発明ではデータ伝送を負担
なしで行ないたい。」(別紙特許公報3欄9行及び10行),「相手方のパソコン
が生きていない(相手方のパソコンが別のJOBをしてる場合やスタンバイしてい
ない場合など,データを受ける状態になっていない)場合でも,相手方の受信バッ
ファまでは送信する」(別紙特許公報4欄40行ないし44行)といった記載があ
る。しかるところ,たとえ一部でも伝送制御に主業務の「コンピュータ」が関与す
るとなると,①主業務の「コンピュータ」における伝送の負担は減少してもゼロに
はならない,②相手方の「コンピュータ」が「生きていない」場合に,伝送制御に
おいて必要な「コンピュータ」の関与部分が実行できないため,相手方の受信バッ
ファまで送信することができないことになる。
したがって,本件発明にいう「伝送制御手段」は,「コンピュータ」か
らハードウェアとして独立していることは勿論,「コンピュータ」の部分的な関与
も必要としないような完全な独立が求められるものと解される。
よって,2CPU構成の被告製品が,CPU1が伝送制御の一部にでも
関与しているのであれば,本件発明にいう「伝送制御手段」を設けるという要件を
充足しない。
2 以上によると,その余の点を判断するまでもなく,原告の本訴請求は,いず
れも理由がないから,これらを棄却することとし,主文のとおり判決する。
   東京地方裁判所民事第47部
   裁判長裁判官 森  義 之
   裁判官 岡 口 基 一
   裁判官 男 澤 聡 子
別紙
           原告物件目録
1 被告製品は以下の構成を有する。すなわち,
(1) 被告製品は,コンピュータを備え,このコンピュータの制御により電話回線
を介して相手局との間で情報データの送信及び受信を行うように機能する情報伝送
機能を備えたファクシミリ装置である。電話回線への接続のためにモデムを備え,
このモデムを介して相手局とのデータの送受信を行う。
(2) 送受信データを一時的に蓄積するためにメモリが備えられる。すなわち,送
信のためには「メモリ入力送信」の機能が備えられ,送信原稿をセットして送信の
操作をしたとき,送信原稿から読み取ったデータをメモリに入力しながら送信する
ことができる。電話回線が使用中であったり,相手局が話し中,あるいは処理繁忙
の場合には,送信原稿がこのメモリに入力され,送信可能になってから送信され
る。
(3) 送信操作のために,操作パネルが設けられ,この操作パネルに,相手局の電
話番号を入力するためのダイヤルボタン,送信開始要求のためのスタートボタン,
送信停止のためのストップボタンなどが配置されている。送信操作は,送信原稿を
セットして相手局の電話番号を入力し,スタートボタンを操作することにより行わ
れる。したがって,メモリには,送信原稿から読み取った送信用の情報データに加
えて,相手局の電話番号データ及び送信要求の信号も送られる。
(4) メモリ入力通信機能に関連して通信予約の機能が備えられる。通信予約を管
理するために,各送信単位毎に受付順で番号が割り付けられる。コンピュータは,
自局のメモリに送信データがあるときは,受付番号の順に,相手局に対して,自局
の電話番号を付けてデータを相手局に送信する。
(5) 受信に際しては,モデムを介して受信したデータは,メモリに格納される。
記録系に障害がない場合は,受信の都度,記録用紙に記録される。用紙切れや用紙
詰まりなど,記録系に障害が生じて受信内容を用紙に記録できない状態のときは,
受信データはメモリに保持される。メモリに保持されたこの受信データは,用紙の
補給をしたり紙詰まりを除去して障害を除いた後に,記録用紙に記録されることに
なる。また,コンピュータの処理が繁忙状態の際に,相手局から更に受信したデー
タもメモリに格納され,繁忙状態解除後に,引き続き受信データを自動的に記録用
紙に出力する。
(6) このメモリにはバックアップ用の電池又は蓄電コンデンサが備えられてお
り,電源を切った状態でも所定の時間内は,メモリに蓄積されたデータが保存され
るようになった不揮発性機能のものである。
2 被告製品には,型名「NEFAXH980」及び「NEFAX980」の各フ
ァクシミリ,並びに,型名「MULTINAα1800」,「MULTINAα2
500」及び「MULTINAα3500」の各ファクシミリ,プリンタ,コピー
複合機が含まれる。
                
                 以 上
別紙
        原告物件目録(被告の認否)
1 被告製品は以下の構成を有する。すなわち,
(1) 被告製品は,コンピュータを備え,このコンピュータの制御により電話回線
を介して相手局との間で情報データの送信及び受信を行うように機能する情報伝送
機能を備えたファクシミリ装置である。電話回線への接続のためにモデムを備え,
このモデムを介して相手局とのデータ の送受信を行う。
(2) 送受信データを一時的に蓄積するためにメモリ が備えられる。すなわ
ち,送信のためには「メモリ入力送信」の機能が備えられ,送信原稿をセットして
送信の操作をしたとき,送信原稿から読み取ったデータをメモリに入力しながら送
信することができる。電話回線が使用中であったり,相手局が話し中,あるいは処
理繁忙の場合には,送信原稿がこのメモリに入力され,送信可能になってから送信
される。
(3) 送信操作のために,操作パネルが設けられ,この操作パネルに,相手局の電
話番号を入力するためのダイヤルボタン,送信開始要求のためのスタートボタン,
送信停止のためのストップボタンなどが配置されている。送信操作は,送信原稿を
セットして相手局の電話番号を入力し,スタートボタンを操作することにより行わ
れる。したがって,メモリには,送信原稿から読み取った送信用の情報データに加
えて,相手局の電話番号データ及び送信要求の信号も送られる。
(4) メモリ入力通信機能に関連して通信予約の機能が備えられる。通信予約を管
理するために,各送信単位毎に受付順で番号が割り付けられる。コンピュータは,
自局のメモリに送信データがあるときは,受付番号の順に,相手局に対して,自局
の電話番号を付けてデータを相手局に送信する。
(5) 受信に際しては,モデムを介して受信したデータ は,メモリ に
格納される。記録系に障害がない場合は,受信の都度,記録用紙に記録される。用
紙切れや用紙詰まりなど,記録系に障害が生じて受信内容を用紙に記録できない状
態のときは,受信データはメモリに格納される。メモリに格納されたこの受信デー
タは,用紙の補給をしたり紙詰まりを除去して障害を除いた後に,記録用紙に記録
されることになる。また,コンピュータの処理が繁忙状態の際に,相手局から更に
受信したデータもメモリに格納され,繁忙状態解除後に,引き続き受信データを自
動的に記録用紙に出力する。
(6) このメモリ にはバックアップ用の電池又は蓄電コンデンサが備え
られており,電源を切った状態でも所定の時間内は,メモリに蓄積されたデータが
保存されるようになった不揮発性機能のものである。
2 被告製品には,型名「NEFAXH980」及び「NEFAX980」の各フ
ァクシミリ,並びに,型名「MULTINAα1800」,「MULTINAα2
500」及び「MULTINAα3500」の各ファクシミリ,プリンタ,コピー
複合機が含まれる。
                
                 以 上
別紙
           被告物件目録(一)
 下記の構成を有する装置(NEFAX980,NEFAXH980で基板1のモ
デム使用時)
1 制御回路(図1の点線で囲む範囲)を備え,この制御回路の制御により電話回
線を介して相手局との間で情報データの送信及び受信を行う情報伝送機能を備えた
ファクシミリ装置である。電話回線への接続のためにモデムを備え,このモデムを
介して相手局とのデータの送受信を行う。
2 送受信データをいったん蓄積するために画像メモリが備えられている。制御回
路のファイルコントローラが画像メモリの制御を行う。送信は「メモリ送信」の機
能により行われる。
3 送信操作のために,操作パネルが設けられ,この操作パネルに,相手局の電話
番号を入力するためのダイヤルボタン,送信開始要求のためのスタートボタンなど
が配置されている。送信操作は,送信原稿をセットして相手局の電話番号を入力
し,スタートボタンを操作することにより行われる。
 送信操作が行われると,制御回路の制御によりスキャナが送信原稿を読み取
り,その画情報データは,ファイルコントローラで蓄積用符号化方式で符号化され
て画像メモリに蓄積される。また,制御回路の制御により,相手局の電話番号デー
タを含む発呼要求のデータは管理用メモリに格納される。
 画像メモリへ送信原稿一頁分の記憶を終了すると,制御回路は,自局が回線を
使用していなければ相手局の電話番号データを管理用メモリから読み出して回線に
送出した後,相手局が回線を使用していなければ回線が接続され,ITU―Tに準
拠した規約による手順で交信する。交信の結果,相手局が受信可能な状態であるこ
とが確認できた場合,制御回路は,管理用メモリから自局の電話番号データを主メ
モリに読み出し画情報データに変換して主メモリに書き込み,さらにSRAMに書
き込む。制御回路は,画像メモリに記憶された画情報データをファイルコントロー
ラで蓄積用符号化方式で復号化して読み出しSRAMに書き込む。
 このようにしてSRAMに書き込まれた画情報データは,CODECでITU
―Tに準拠した規約に従って通信用符号化方式で符号化された後主メモリに書き込
まれ,次に主メモリを送信バッファとして利用してモデムに転送され,モデムに転
送された画情報データは制御回路の制御のもとにITU―Tに準拠した規約に従っ
て相手局に送信される。
4 送信できなかった場合,相手局の電話番号データを含む発呼要求のデータは,
管理用メモリに,送信原稿の画情報は画像メモリにそれぞれ保持される。リダイヤ
ル機能によって,各メモリに保持されたデータが主メモリに読み出されて再度送信
が行われる。
5 受信に際して,制御回路は,モデムを介して受信したデータを受信バッファと
して利用される主メモリに書き込む。主メモリから読み出されたデータは,COD
ECでITU―Tに準拠した規約に従って通信用符号化方式で復号化された後SR
AMに書き込まれる。SRAMに書き込まれたデータは,ファイルコントローラで
蓄積用符号化方式の符号化をされていったん画像メモリに格納される。
 制御回路は,画像メモリにいったん格納したデータを,記録系に障害がない場
合には,受信の都度ファイルコントローラで蓄積用符号化方式の復号化をしてプリ
ンタに出力し,プリンタはそれを記録用紙に記録する。
 用紙切れや用紙詰まりなど,記録系に障害が生じて受信内容を用紙に記録でき
ない状態のときは,受信データは画像メモリに保持される。プリンタは自身が記録
ができる状態であるか記録できない状態であるかを制御回路のメカコントローラに
表示し,制御回路はその表示を確認して,プリンタが記録できない状態であるとき
は記録動作を開始しない。画像メモリに保持されたこの受信データは,用紙の補給
をしたり紙詰まりを除去して障害を除いた後に,記録用紙に記録されることにな
る。
  なお,装置に電源が入っていない場合にメモリ受信を行うことができない。
6 主メモリおよびSRAMはバックアップされておらず,電源を切れば,データ
は失われる。画像メモリ及び管理用メモリは電池によりバックアップされており,
電源を切った状態でも所定の時間内は蓄積されたデータが保存される。
以 上
図1
別紙
            被告物件目録(二)
下記の構成を有する装置(2CPUを備えるNEFAX980,NEFAXH98
0で,基板2のモデム使用時)
1 基板1および基板2に制御回路(図の点線で囲む範囲)を備え,これらの制御
回路の制御により電話回線を介して相手局との間で情報データの送信及び受信を行
う情報伝送機能を備えたファクシミリ装置である。電話回線への接続のためにモデ
ムを備え,このモデムを介して相手局とのデータの送受信を行う。
2 送受信データをいったん蓄積するために画像メモリが備えられている。基板1
の制御回路は,ファイルコントローラを介して画像メモリの制御を行う。送信は
「メモリ送信」の機能により行われる。
3 送信操作のために,操作パネルが設けられ,この操作パネルに,相手局の電話
番号を入力するためのダイヤルボタン,送信開始要求のためのスタートボタンなど
が配置されている。送信操作は,送信原稿をセットして相手局の電話番号を入力
し,スタートボタンを操作することにより行われる。
 送信操作が行われると,基板1の制御回路の制御によりスキャナが送信原稿を
読み取り,その画情報データは,ファイルコントローラで蓄積用符号化方式で符号
化されて画像メモリに蓄積される。また,基板1の制御回路の制御により,相手局
の電話番号データを含む発呼要求のデータは管理用メモリに格納される。
 画像メモリへ送信原稿一頁分の記憶を終了すると,基板1の制御回路は,基板
2の制御回路により書き込まれた状態データをデュアルポートRAMから読み出し
て状態を確認し,その結果自局が回線を使用していなければ相手局の電話番号デー
タを管理用メモリから読み出しデュアルポートRAMへ書き込む。基板2の制御回
路は,デュアルポートRAMに書き込まれた相手局の電話番号データを読み出し,
基板2の主メモリを介して回線に送出した後,相手局が回線を使用していなければ
回線が接続され,ITU―Tに準拠した規約による手順で交信する。交信の結果,
相手局が受信可能な状態であることが確認できた場合,基板1の制御回路は,管理
用メモリから自局の電話番号データを基板1の主メモリを介してデュアルポートR
AMに書き込む。基板2の制御回路は自局の電話番号データをデュアルポートRA
Mから基板2の主メモリに読み出し画情報データに変換して基板2の主メモリに書
き込み,さらに基板2のSRAMに書き込む。基板1の制御回路は,画像メモリに
記憶された画情報データをファイルコントローラで蓄積用符号化方式で復号化して
読み出し基板2のSRAMに書き込む。
 このようにして基板2のSRAMに書き込まれた画情報データは,基板2のC
ODECでITU―Tに準拠した規約に従って通信用符号化方式で符号化された後
基板2の主メモリに書き込まれ,次に基板2の主メモリを送信バッファとして利用
してモデムに転送され,モデムに転送された画情報データは基板2の制御回路の制
御のもとにITU―Tに準拠した規約に従って相手局に送信される。
4 送信できなかった場合,相手局の電話番号データを含む発呼要求のデータは,
管理用メモリに,送信原稿の画情報は画像メモリにそれぞれ保持される。リダイヤ
ル機能によって,各メモリに保持されたデータが基板2の主メモリに読み出されて
再度送信が行われる。
5 受信に際して,基板2の制御回路は,モデムを介して受信したデータを受信バ
ッファとして利用される基板2の主メモリに書き込む。基板2の主メモリから読み
出されたデータは,基板2のCODECでITU―Tに準拠した規約に従って通信
用符号化方式で復号化された後基板2のSRAMに書き込まれる。基板2のSRA
Mに書き込まれたデータは,基板1の制御回路の制御により,ファイルコントロー
ラで蓄積用符号化方式の符号化をされていったん画像メモリに格納される。
 基板1の制御回路は,画像メモリにいったん格納したデータを,記録系に障害
がない場合には,受信の都度ファイルコントローラで蓄積用符号化方式の復号化を
してプリンタに出力し,プリンタはそれを記録用紙に記録する。
 用紙切れや用紙詰まりなど,記録系に障害が生じて受信内容を用紙に記録でき
ない状態のときは,受信データは画像メモリに保持される。プリンタは自身が記録
ができる状態であるか記録できない状態であるかを基板1の制御回路のメカコント
ローラに表示し,基板1の制御回路はその表示を確認して,プリンタが記録できな
い状態であるときは記録動作を開始しない。画像メモリに保持されたこの受信デー
タは,用紙の補給をしたり紙詰まりを除去して障害を除いた後に,記録用紙に記録
されることになる。
  なお,装置に電源が入っていない場合にメモリ受信を行うことができない。
6 基板1の主メモリ,基板2の主メモリおよびSRAMはバックアップされてお
らず,電源を切れば,データは失われる。画像メモリ及び管理用メモリは電池によ
りバックアップされており,電源を切った状態でも所定の時間内は蓄積されたデー
タが保存される。
以 上

別紙
           被告物件目録(三)
 下記の構成を有する装置(MULTINAα1800,2500,3500)
1 制御回路(図2の点線で囲む範囲)を備え,この制御回路の制御により電話回
線を介して相手局との間で情報データの送信及び受信を行う情報伝送機能を備えた
ファクシミリ装置である。電話回線への接続のためにモデムを備え,このモデムを
介して相手局とのデータの送受信を行う。
2 送受信データをいったん蓄積するために画像メモリが備えられている。制御回
路のファイルコントローラが画像メモリの制御を行う。送信は「メモリ送信」の機
能により行われる。
3 送信操作のために,操作パネルが設けられ,この操作パネルに,相手局の電話
番号を入力するためのダイヤルボタン,送信開始要求のためのスタートボタンなど
が配置されている。送信操作は,送信原稿をセットして相手局の電話番号を入力
し,スタートボタンを操作することにより行われる。
 送信操作が行われると,制御回路の制御によりスキャナが送信原稿を読み取
り,その画情報データは,ファイルコントローラで蓄積用符号化方式で符号化され
て画像メモリに蓄積される。また,制御回路の制御により,相手局の電話番号デー
タを含む発呼要求のデータは管理用メモリに格納される。
 画像メモリへ送信原稿一頁分の記憶を終了すると,制御回路は,自局が回線を
使用していなければ相手局の電話番号データを管理用メモリから読み出して回線に
送出した後,相手局が回線を使用していなければ回線が接続され,ITU―Tに準
拠した規約による手順で交信する。交信の結果,相手局が受信可能な状態であるこ
とが確認できた場合,制御回路は,管理用メモリから自局の電話番号データを主メ
モリに読み出し画情報データに変換して主メモリに書き込む。制御回路は,画像メ
モリに記憶された画情報データをファイルコントローラで蓄積用符号化方式で復号
化して読み出し主メモリに書き込む。
 このようにして主メモリに書き込まれた画情報データは,制御回路でITU―
Tに準拠した規約に従って通信用符号化方式で符号化された後再び主メモリに書き
込まれる。次に主メモリを送信バッファとして利用してモデムに転送され,モデム
に転送された画情報データは制御回路の制御のもとにITU―Tに準拠した規約に
従って相手局に送信される。
4 送信できなかった場合,相手局の電話番号データを含む発呼要求のデータは,
管理用メモリに,送信原稿の画情報は画像メモリにそれぞれ保持される。リダイヤ
ル機能によって,各メモリに保持されたデータが主メモリに読み出されて再度送信
が行われる。
5 受信に際して,制御回路は,モデムを介して受信したデータを受信バッファと
して利用される主メモリに書き込む。主メモリから読み出されたデータは,制御回
路でITU―Tに準拠した規約に従って通信用符号化方式で復号化された後再び主
メモリに書き込まれる。主メモリに書き込まれたデータは,ファイルコントローラ
で蓄積用符号化方式の符号化をされていったん画像メモリに格納される。
 制御回路は,画像メモリにいったん格納したデータを,記録系に障害がない場
合には,受信の都度ファイルコントローラで蓄積用符号化方式の復号化をしてプリ
ンタに出力し,プリンタはそれを記録用紙に記録する。
 用紙切れや用紙詰まりなど,記録系に障害が生じて受信内容を用紙に記録でき
ない状態のときは,受信データは画像メモリに保持される。プリンタは自身が記録
ができる状態であるか記録できない状態であるかを制御回路のファイルコントロー
ラに表示し,制御回路はその表示を確認して,プリンタが記録できない状態である
ときは記録動作を開始しない。画像メモリに保持されたこの受信データは,用紙の
補給をしたり紙詰まりを除去して障害を除いた後に,記録用紙に記録されることに
なる。
  なお,装置に電源が入っていない場合にメモリ受信を行うことができない。
6 主メモリはバックアップされておらず,電源を切れば,データは失われる。画
像メモリ及び管理用メモリは電池によりバックアップされており,電源を切った状
態でも所定の時間内は蓄積されたデータが保存される。
   以 上

別紙
被告製品における情報の流れにかかる説明書(1CPU)
一1 受信の際,被告製品において,画像データ等の情報は次の通り流れる(本説
明書添付の受信図①ないし④。)。
① 受信の際,NCU(全体ブロック図にのみ図示),モデムを介して受信した
画像データは,CPU1の制御により,メインコントロールRAM14に書き込ま
れる。
(上記のCPU1及びメインコントロールRAM14は,明細書に記載された
コンピュータの主業務(ユーザーが入力しているデータの処理,ディスプレイへの
表示・プリントアウト等のデータの出力処理。以下「前記主業務」という。)を担
っておらず,情報の伝送を制御するための機能(以下「伝送制御機能」という。)
を担っている。)
② メインコントロールRAM14に書き込まれた画像データはCPU1の制御
により,蓄積用符合化方式の符合化をされて,セミカスタムLSI11(D656
58GDE44,全体ブロック図にのみ図示)を介して,不揮発RAM8(画像
用)に格納される。
(上記のCPU1,メインコントロールRAM14は,前記主業務を担ってお
らず,伝送制御機能を担っている。)
③ 不揮発RAM8(画像用)に格納された画像データは,CPU1の制御によ
り,セミカスタムLSI11(D65658GDE44)を介して,メインコント
ロールRAM14に再度読み出される。
(なお,この時点におけるCPU1,メインコントロールRAM14は,明細
書に記載されたコンピュータの主業務を担っている。)
④ メインコントロールRAM14の画像データは,CPU1の制御により,プ
リントコントローラを通じてプリンタに出力され,プリンタはそれを記録用紙に記
録する。
(上記のCPU1及びメインコントロールRAM14,前記主業務を担ってい
る。)
2 以上のように,受信時に,モデムを介して受信した画像データは,伝送制御
の機能を担うメインコントロールRAM14,不揮発RAM8(画像用),前記主
業務を担うメインコントロールRAM14,プリントコントローラと流れ,プリン
トアウトされる。
二1 送信の際,被告製品において,画像データ等の情報は次の通り流れる(本説
明書添付の送信図①ないし⑦)。
① 送信操作が行われると,CPU1の制御により,スキャナが送信原稿を読
み取り,その画像データは,セルベースゲートアレイ(全体ブロック図にのみ図
示)を介して,メインコントロールRAM14に読み出される。
(上記のCPU1及びメインコントロールRAM14は,前記主業務を担って
いる。)
② メインコントロールRAM14の画像データは,CPU1の制御により,
セミカスタムLSI11(D65658GDE44)を介して,不揮発RAM8
(画像用)に蓄積される。
(上記のCPU1及びメインコントロールRAM14は,前記主業務を担って
いる。)
③ 送信操作の際に入力された相手局の電話番号データを含む発呼要求のデー
タは,CPU1の制御により,メインコントロールRAM14に読み出される。
(上記のCPU1及びメインコントロールRAM14は,前記主業務を担って
いる。)
④ メインコントロールRAM14に読み出された相手局の電話番号データを
含む発呼要求のデータは,CPU1の制御により,不揮発RAM(管理用)のメモ
リに格納される。
(上記のCPU1及びメインコントロールRAM14は,前記主業務を担って
いる。)
⑤ CPU1の制御により,自局の電話番号データは,不揮発RAM6(管理
用)からメインコントロールRAM14に読み出され,画像データに変換されてメ
インコントロールRAM14に書き込み,相手局が受信可能な状態であることを確
認する。
(上記のCPU1及びメインコントロールRAM14は,前記主業務を担って
おらず,伝送制御機能を担っている。)
⑥ 不揮発RAM8(画像用)に記憶された画像データは,CPU1の制御に
より,セミカスタムLSI11(D65658GDE44)を介して,メインコン
トロールRAM14に書き込まれる。
(上記のCPU1及びメインコントロールRAM14は,前記主業務を担って
おらず,伝送制御機能を担っている。)
⑦ メインコントロールRAM14に書き込まれた画像データは,CPU1の
制御により,デュアルポートRAM(全体ブロック図にのみ図示)を介して,モデ
ムに転送され,NCU(全体ブロック図にのみ図示)を介して,相手局に送信され
る。
(上記のCPU1及びメインコントロールRAM14は,前記主業務を担って
おらず,伝送制御機能を担っている。)
2 以上のように,送信時にスキャナから読み取られた画像データは,前記主業
務を担うコントロールRAM14,不揮発RAM8,伝送制御のための機能を担う
メインコントロールRAM14と流れ,モデムから送信される。
以 上
原告ブロック図(送信) 原告ブロック図(受信)
別紙
被告製品における情報の流れにかかる説明書(2CPU)
(2CPUの場合には,1CPUの場合と比べて二つの電話回線と接続できるよ
うになっている。一つの電話回線と接続する場合には,1CPUの場合と情報の流
れは全く同一であるから,ここでは省略し,他方の電話回線と接続する場合の情報
の流れのみをここで説明する。)
一1 受信の際,被告製品において,画像データ等の情報は次の通り流れる(本説
明書添付の受信図①ないし④)。
① 受信の際,NCU(全体ブロック図にのみ図示),モデムを介して受信した
画像データは,サブCPU2の制御により,サブコントロールRAM(全体ブロッ
ク図の「ワーク用RAM」)に書き込まれる。
(上記のサブCPU2,サブコントロールRAMは,明細書に記載されたコンピュ
ータの主業務(ユーザーが入力しているデータの処理,ディスプレイへの表示・プ
リントアウト等のデータの出力処理。以下「前記主業務」という。)を担っておら
ず,伝送を制御する機能(以下「伝送制御機能」という。)を担っている。)
 ② サブコントロールRAMに書き込まれた画像データはサブCPU2の制御に
より,蓄積用符合化方式の符合化をされて,セミカスタムLSI11(D6565
8GDE44,全体ブロック図にのみ図示)不揮発RAM8(画像用)に格納され
る。
(上記のサブCPU2,サブコントロールRAMは,前記主業務を担っておらず,
伝送制御機能を担っている。)
 ③ 不揮発RAM8(画像用)に格納された画像データは,CPU1の制御によ
り,前記セミカスタムLSI11(D65658GDE44を介してメインコント
ロールRAM14に再度読み出される。
(上記のCPU1,メインコントロールRAM14は,前記主業務を担ってい
る。)
④ メインコントロールRAM14の画像データは,CPU1の制御により,プ
リンタコントローラを通じてプリンタに出力され,プリンタコントローラはそれを
記録用紙に記録する。
(上記のCPU1,メインコントロールRAM14,プリンタコントローラは,前
記主業務を担っている。)
 2 以上のように,受信時に,モデムを介して受信した画像データは,サブコン
トロールRAM,不揮発RAM8(画像用),メインコントロールRAM14,プ
リンタコントローラと流れ,プリントアウトされる。
二1 送信の際,被告製品において,画像データ等の情報は次の通り流れる(本説
明書添付の送信図①ないし⑦)。
① 送信操作が行われると,CPU1の制御により,スキャナが送信原稿を読み
取り,その画像データは,セルスベースゲートアレイ(全体ブロック図にのみ図
示)を介して,メインコントロールRAM14に読み出される。
(上記のCPU1,メインコントロールRAM14は,前記主業務を担ってい
る。)
② メインコントロールRAM14の画像データは,CPU1の制御により,セ
ミカスタムLSI11(D65658GDE44)を介して,不揮発RAM8(画
像用)に蓄積される。
(上記のCPU1,メインコントロールRAM14は,前記主業務を担ってい
る。)
③ 送信操作の際に入力された相手局の電話番号データを含む発呼要求のデータ
は,CPU1の制御により,メインコントロールRAM14に読み出される。
(上記のCPU1,メインコントロールRAM14は,前記主業務を担ってい
る。)
④ メインコントロールRAM14に読み出された相手局の電話番号データを含
む発呼要求のデータは,CPU1の制御により,不揮発RAM6(管理用)のメモ
リに格納される。
(上記のCPU1,メインコントロールRAM14は,前記主業務を担ってい
る。)
⑤ サブCPU2の制御により,自局の電話番号データは,不揮発RAM6(管
理用)からサブコントロールRAMに読み出され,画像データに変換されてサブコ
ントロールRAMに書き込み,相手局が受信可能な状態であることが確認する。
(上記のサブCPU2及びサブコントロールRAMは,前記主業務を担っておら
ず,伝送制御機能を担っている。)
⑥ 不揮発RAM8(画像用)に記憶された画像データは,サブCPU2の制御
により,セミカスタムLSI11(D65658GDE44),ドュアルポートR
AM(全体ブロック図にのみ図示)を介して,サブコントロールRAMに書き込ま
れる。
(上記のサブCPU2及びサブコントロールRAMは,前記主業務を担っておら
ず,伝送制御機能を担っている。)
⑦ サブコントロールRAMに書き込まれた画像データは,サブCPU2の制御
により,モデムに転送され,相手局に送信される。
(上記のサブCPU2,サブコントロールRAMは,前記主業務を担っておらず,
伝送制御機能を担っている。)
 2 以上のように,送信時にスキャナから読み取られた画像データは,メインコ
ントロールRAM14,不揮発RAM8(画像用),サブコントロールRAMと流
れ,モデムから送信される。
               
                 以 上
原告ブロック図(送信)図  原告ブロック図(受信)
別紙  全体ブロック図 

最新の判決一覧に戻る

法域

特許裁判例 実用新案裁判例
意匠裁判例 商標裁判例
不正競争裁判例 著作権裁判例

最高裁判例

特許判例 実用新案判例
意匠判例 商標判例
不正競争判例 著作権判例

特許事務所の求人知財の求人一覧

青山学院大学

神奈川県相模原市中央区淵野辺

今週の知財セミナー (11月18日~11月24日)

来週の知財セミナー (11月25日~12月1日)

11月25日(月) - 岐阜 各務原市

オープンイノベーションマッチング in 岐阜

11月26日(火) - 東京 港区

企業における侵害予防調査

11月27日(水) - 東京 港区

他社特許対策の基本と実践

11月28日(木) - 東京 港区

特許拒絶理由通知対応の基本(化学)

11月28日(木) - 島根 松江市

つながる特許庁in松江

11月29日(金) - 東京 港区

中国の知的財産政策の現状とその影響

11月29日(金) - 茨城 ひたちなか市

あなたもできる!  ネーミングトラブル回避術

特許事務所紹介 IP Force 特許事務所紹介

商標登録・特許事務所富士山会

大阪府大阪市北区西天満3丁目5-10 オフィスポート大阪801号 特許・実用新案 意匠 商標 訴訟 コンサルティング 

吉川国際特許事務所

【大阪本社】 〒534-0024 大阪府大阪市都島区東野田町1-20-5  大阪京橋ビル4階 【東京支部】   〒150-0013 東京都港区浜松町2丁目2番15号 浜松町ダイヤビル2F 特許・実用新案 意匠 商標 外国特許 外国商標 訴訟 

栄セントラル国際特許事務所

愛知県名古屋市中区栄3-2-3 名古屋日興證券ビル4階 特許・実用新案 意匠 商標 外国特許 外国意匠 外国商標 訴訟 鑑定 コンサルティング