平成13(行ケ)210行政訴訟 特許権
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裁判所 |
東京高等裁判所
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裁判年月日 |
平成13年9月26日 |
事件種別 |
民事 |
法令 |
特許権
民事訴訟法61条1回 特許法120条の41回
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キーワード |
優先権1回 特許権1回
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主文 |
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事件の概要 |
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判決文
平成13年(行ケ)第210号 特許取消決定取消請求事件(平成13年9月5日
口頭弁論終結)
判 決
原 告 ダイセル化学工業株式会社
訴訟代理人弁理士 古 谷 馨
同 溝 部 孝 彦
同 古 谷 聡
同 持 田 信 二
同 義 経 和 昌
被 告 特許庁長官 及 川 耕 造
指定代理人 祖 山 忠 彦
同 吉 國 信 雄
同 森 田 ひとみ
同 宮 川 久 成
主 文
特許庁が異議2000-73691号事件について平成13年3月2
6日にした決定を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
1 原告
主文と同旨
2 被告
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
第2 当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯
原告は、名称を「合成樹脂製食品容器」とする特許第3029612号発明
(平成11年2月4日特許出願(国内優先権主張・平成10年9月22日)、平成
12年2月4日設定登録)の特許権者である。
上記特許につき特許異議の申立てがされ、異議2000-73691号事件
として特許庁に係属したところ、原告は、平成13年2月23日に願書に添付した
明細書の記載を訂正する旨の訂正請求をした。
特許庁は、同特許異議の申立てにつき審理した上、同年3月26日、「訂正
を認める。特許第3029612号の請求項1ないし8に係る特許を取り消す。」
との決定(以下「本件決定」という。)をし、その謄本は、同年4月11日、原告
に送達された。
2 訂正請求に係る明細書(以下「訂正明細書」という。)の特許請求の範囲の
記載(以下、請求項1~8に記載された各発明を、それぞれその請求項の番号に従
い、「本件発明1」、「本件発明2」のようにいう。)
【請求項1】 (A)スチレン系樹脂40~97重量%及び(B)融点が100~3
00℃の熱可塑性樹脂60~3重量%を含有する樹脂組成物から得られる両連続相
を有するシートを成形してなる、底部の厚みが0.3~3mmで、かつ絞り比が2以
下の開口部を有する容器であり、座屈強度が1~50kgである合成樹脂製食品容
器。
【請求項2】 熱可塑性樹脂がポリプロピレン又はポリエチレンテレフタレー
トである請求項1記載の合成樹脂製食品容器。
【請求項3】 さらに、樹脂組成物中に、下記から選ばれる1種以上の相溶化
剤を含有する請求項1又は2記載の合成樹脂製食品容器。
(C-1) ビニル芳香族化合物と、共役ジエン化合物とからなる共重合体又はその
水素添加物。
(C-2) ビニル芳香族化合物と、共役ジエン化合物とからなる共重合体のエポキ
シ化物又はその水素添加物。
(C-3) (A)成分の構成単位となるスチレン系モノマーと、(B)成分の構成単位と
なるモノマーとの共重合体。
(C-4) ビニル芳香族化合物と、カルボキシル基を有する化合物又は酸無水物と
の共重合体。
【請求項4】 JIS K5400記載の光沢度(入射角60°)が10%以
上で真珠様光沢を有している請求項1~3のいずれか1記載の合成樹脂製食品容
器。
【請求項5】 請求項1~4のいずれか1記載の容器が発泡構造である合成樹
脂製食品容器。
【請求項6】 発泡倍率が1.1~3倍、単位厚さ当たりの平均気泡膜数が1
~50個/mm及び厚みが0.1~3mmから選ばれる1以上の要件を具備する請求項
5記載の合成樹脂製食品容器。
【請求項7】 請求項1~6のいずれか1記載の容器を容器本体部とし、前記
容器本体と嵌合できる蓋部とを備えた合成樹脂製食品容器。
【請求項8】 蓋部が、ヘーズが10以下で、かつJIS K7105に準拠
して測定される写像鮮明度が30%以上のものである請求項7記載の合成樹脂製容
器。
3 本件決定の理由
本件決定は、別添決定謄本写し記載のとおり、①訂正請求に係る訂正は、特
許法120条の4第2項、同条3項で準用する同法126条2項、3項の規定に適
合するので、当該訂正を認めるとし、②本件発明1~8の要旨を訂正明細書の特許
請求の範囲の請求項1~8記載のとおり認定した上、本件発明1~8は、特公平5
-75012号公報(以下「引用例1」といい、そこに記載された発明を「引用例
発明」という。)、平成10年3月24日出願公開に係る特開平10-76565
号公報(以下「引用例2」という。)、特開昭55-161837号公報(以下
「引用例3」という。)、特公平4-11582号公報(以下「引用例4」とい
う。)及び特開平9-249242号公報(以下「引用例5」という。)にそれぞ
れ記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるか
ら、その特許は、同法29条2項の規定に違反してされたものであり、同法113
条2号に該当し、取り消されるべきものであるとした。
第3 当事者の主張
1 原告
(1) 本件決定の理由中、訂正請求の許否についての判断、本件発明1~8の要
旨の認定、引用例1~5の各記載事項の認定は認める。
本件決定は、本件発明1~8と引用例発明との一致点の認定を誤った結
果、本件発明1~8が引用例1~5に記載された発明に基づき、当業者が容易に発
明をすることができたとの誤った結論に至ったものであるから、違法として取り消
されるべきである。
(2) 本件決定取消事由(一致点の認定の誤り)
本件決定は、本件発明1と引用例発明との対比に当たり、訂正明細書(甲
第10号証)の「原料となる樹脂組成物に含有される(A)成分のスチレン系樹脂
と(B)成分の熱可塑性樹脂が両連続相を形成していること。ここで『シートにおい
て(A)成分と(B)成分が両連続相を形成している』とは、シートのMD方向及びTD
方向のいずれの方向においても、(A)成分の樹脂相と(B)成分の樹脂相が、粒子や繊
維状のような互いに独立した状態で存在しているのではなく、両相が網目状に互い
に連なった状態で混在した相構造を形成していることを意味するものである」
(【0024】項)との記載を引用した(決定謄本7頁35行目~8頁4行目)上、
「この両連続相が形成された状態とは、単にブレンドした状態ではなく、両相の界
面張力が減少し微細分散した状態、すなわちポリマーが相溶化した状態を指すもの
と理解できる・・・そうすると、引用例1記載の混合物も相分離を起こさず二種の
樹脂が良く混じりあった状態であると解される・・・から、両者における二種の樹
脂の混合状態は同様の状態にあるということができる」(同8頁4行目~9行目)
と認定し、この認定を前提として、本件発明1と引用例発明とが「スチレン系樹脂
及び融点が100~300℃の熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物から得られる両
連続相を有するシートを成形してなる合成樹脂製食品容器」(同頁21行目~23
行目)である点で一致すると認定した。
また、本件発明2に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項2は本件発
明1に係る同請求項1の記載を、本件発明3に係る同請求項3は同請求項1又は2
を、本件発明4に係る同請求項4は同請求項1~3のいずれか一つを、本件発明5
に係る同請求項5は同請求項1~4のいずれか一つを、本件発明6に係る同請求項
6は同請求項5を、本件発明7に係る同請求項7は同請求項1~6のいずれか一つ
を、本件発明8に係る同請求項8は同請求項7を、それぞれ引用するところ、本件
決定は、本件発明2~8と引用例発明とが、それぞれ、上記本件発明1と引用例発
明との一致点と同一の点において一致すると認定した。
しかしながら、本件決定が、引用例発明における二種の樹脂の混合状態は
本件発明1における二種の樹脂の混合状態と同様の状態であると認定したことは誤
りであり、この認定を前提とする上記本件発明1と引用例発明との一致点の認定も
誤りである。さらに、本件決定がした本件発明2~8と引用例発明との各一致点の
認定についても、これと同様の誤りがある。
上記のとおり本件発明1~8と引用例発明との各一致点の認定を誤った瑕
疵が、本件決定の結論に影響を及ぼすことは明らかである。
2 被告
本件決定が、引用例発明における二種の樹脂の混合状態は本件発明1におけ
る二種の樹脂の混合状態と同様の状態であると認定したことが誤りであり、この事
実誤認の結果、本件発明1と引用例発明との上記一致点の認定を誤ったこと、本件
決定の本件発明2~8と引用例発明との各一致点の認定についても同様の誤りがあ
ることは認める。
第4 当裁判所の判断
1 本件決定取消事由(一致点の認定の誤り)について
引用例発明における二種の樹脂の混合状態が本件発明1における二種の樹脂
の混合状態と同様の状態であるとした本件決定の認定が誤りであって、その結果、
本件決定がした、本件発明1と引用例発明とが「スチレン系樹脂及び融点が100
~300℃の熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物から得られる両連続相を有するシ
ートを成形してなる合成樹脂製食品容器」(決定謄本8頁21行目~23行目)で
ある点で一致するとした認定も誤りであること、また、本件発明2~8と引用例発
明との各一致点の認定についても同様の誤りがあることは当事者間に争いがない。
そして、この誤りが、本件決定の結論に影響を及ぼすことは明らかであるから、本
件決定は、瑕疵があるものとして、取消しを免れない。
2 よって、原告の請求は理由があるから認容し、訴訟費用の負担につき行政事
件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第13民事部
裁判長裁判官 篠 原 勝 美
裁判官 石 原 直 樹
裁判官 宮 坂 昌 利
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