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平成24(行ケ)10368審決取消請求事件

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裁判所 請求棄却 知的財産高等裁判所
裁判年月日 平成25年10月30日
事件種別 民事
当事者 被告特許庁長官
原告三星ディスプレイ株式社
対象物 有機発光表示装置及びその駆動方法
法令 特許権
特許法29条2項1回
キーワード 審決22回
刊行物18回
実施9回
分割1回
優先権1回
進歩性1回
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
3 この判決に対する上告及び上告受理の申立てのための付加期間を30日と定める。
事件の概要 1 特許庁における手続の経緯等(証拠を掲記しない事実は争いがないか記録上 明らかである。) 三星エスディアイ株式會社は,発明の名称を「有機発光表示装置及びその 駆動方法」とする発明につき,平成17年11月25日を出願日とする特許出 願(特願2005-340896号。パリ条約に基づく優先権主張・2005 年4月28日,大韓民国。以下「本願」という。)をした。三星モバイルディ スプレイ株式社(2008年(平成20年)9月5日付け会社分割により 三星エスディアイ株式社から本願に係る権利を承継した(甲24)。)は,平 成21年10月29日付けで拒絶の査定を受け,平成22年3月2日,拒絶査 定に対する不服の審判(不服2010-4598号)を請求するとともに,同 日付け手続補正書(甲7)により明細書の特許請求の範囲についての補正をし た。三星モバイルディスプレイ株式社は,平成23年12月13日付けで拒 絶理由の通知を受けたので,平成24年3月19日付け手続補正書(甲18) により明細書の特許請求の範囲についての補正をするとともに(以下「本件補 正」という。また,本件補正後の本願の明細書と図面をまとめて「本件明細

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判決文

平成25年10月30日判決言渡
平成24年(行ケ)第10368号 審決取消請求事件
口頭弁論終結日 平成25年9月30日
判 決


原 告 三星ディスプレイ株式社
(審決時の商号・三星モバイルディスプレイ株式社)

訴訟代理人弁理士 亀 谷 美 明
同 松 本 一 騎
同 平 山 淳
同 伊 藤 学

被 告 特 許 庁 長 官
指 定 代 理 人 小 林 紀 史
同 飯 野 茂
同 樋 口 信 宏
同 大 橋 信 彦
主 文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
3 この判決に対する上告及び上告受理の申立てのための付加期間を30日と定
める。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
特許庁が不服2010-4598号事件について平成24年6月11日にし
た審決を取り消す。
第2 事案の概要
1 特許庁における手続の経緯等(証拠を掲記しない事実は争いがないか記録上
明らかである。)
三星エスディアイ株式會社は,発明の名称を「有機発光表示装置及びその
駆動方法」とする発明につき,平成17年11月25日を出願日とする特許出
願(特願2005-340896号。パリ条約に基づく優先権主張・2005
年4月28日,大韓民国。以下「本願」という。)をした。三星モバイルディ
スプレイ株式社(2008年(平成20年)9月5日付け会社分割により
三星エスディアイ株式社から本願に係る権利を承継した(甲24))は,平

成21年10月29日付けで拒絶の査定を受け,平成22年3月2日,拒絶査
定に対する不服の審判(不服2010-4598号)を請求するとともに,同
日付け手続補正書(甲7)により明細書の特許請求の範囲についての補正をし
た。三星モバイルディスプレイ株式社は,平成23年12月13日付けで拒
絶理由の通知を受けたので,平成24年3月19日付け手続補正書(甲18)
により明細書の特許請求の範囲についての補正をするとともに(以下「本件補
正」という。また,本件補正後の本願の明細書と図面をまとめて「本件明細
書」という。,同日付け意見書を提出した。

特許庁は,平成24年6月11日,「本件審判の請求は,成り立たない。」と
の審決をし,その謄本を,同月26日,三星モバイルディスプレイ株式社に
送達した。
原告は,同年7月2日,三星モバイルディスプレイ株式社を吸収合併した。
2 本願の概要及び特許請求の範囲の記載(甲18)
本願は,使用者の要求に応じて多様に輝度を制御しながら消費電力及びメモ
リを節減するようにした有機発光表示装置を提供することを課題とするもので
ある。
本件補正後の本願の特許請求の範囲(請求項の数8)の請求項1の記載は,
次のとおりである(以下,同請求項に記載された発明を「本願発明」という。
なお,別紙【図2】は本件発明の第1実施形態による有機発光表示装置の構造
を表す図,同【図5】は上記【図2】に図示された輝度制御部の一実施形態を
表すブロック図,同【図6】は上記【図5】に図示された第1ルックアップテ
ーブルの実施形態を表す説明図,同【図7a】は,上記【図5】に図示された
第2ルックアップテーブルの第1実施形態を表す説明図である。。

「データ線に映像データに対応するデータ信号を供給するデータ駆動部と;
走査線に走査信号を順次供給し,発光制御線に発光制御信号を順次供給する
走査駆動部と;
前記データ信号,前記走査信号及び前記発光制御信号の供給を受けて映像を
表現する複数の画素を具備する画素部と;
前記画素部の輝度を制御する輝度制御部と;
を備え,
前記輝度制御部は,
一フレーム分の前記映像データに対応する前記発光制御信号の幅情報を持つ
少なくとも一つの第1データが保存される第1ルックアップテーブルと;
前記発光制御信号の幅情報が外部入力モードによって変更されるようにする
少なくとも一つの第2データが保存される第2ルックアップテーブルと;
を有し,
前記輝度制御部は,
前記一フレーム分の映像データを合算して合算データを生成し,前記合算デ
ータの最上位ビットを含む少なくとも二つのビット値を制御データとして生成
するデータ合算部と;
前記第2ルックアップテーブルから前記外部入力モードに対応する前記第2
データを抽出するモード選択部と;
前記第1ルックアップテーブルから前記制御データの値に対応する前記第1
データを抽出し,前記抽出された第1データ及び第2データを利用して前記発
光制御信号の幅情報を持つ第3データを生成する制御部と;
前記第3データに対応する輝度制御信号を生成して前記走査駆動部に伝送す
る輝度制御信号生成部と;
をさらに有し,
前記走査駆動部は,前記輝度制御信号に対応して前記発光制御信号の幅を制
御し,
前記第2データは,前記外部入力モードに対応する前記発光制御信号の幅情
報の変動値を持ち,
前記制御部は,前記第1データから前記第2データを減算して前記第3デー
タを生成することを特徴とする,有機発光表示装置。」
3 審決の理由
審決の理由は,別紙審決書写しのとおりである。要するに,本願発明は,特
開2005-55726号公報(甲1。以下「引用刊行物」という。)に記載
された発明(以下「引用発明」という。)及び周知技術に基づいて,容易に発
明をすることができたものであり,特許法29条2項により特許を受けること
ができないというものである。
審決が認定した引用発明の内容,同発明と本願発明との一致点及び本件と関
係する相違点は以下のとおりである(なお,別紙【図197】は引用発明にお
けるDutyカーブの実施例を示した図である。。

(1) 引用発明の内容
「ソース信号線18に,EL素子15に流すべき,画像データに対応する
電流値を流すソースドライバ回路14と,
第1の走査線であるゲート信号線17aにON電圧及びOFF電圧を順次
印加するとともに,所定期間におけるEL素子15の点灯期間であるDut
y比を制御するオンオフ信号を,ゲート信号線17bに順次印加するゲート
ドライバ回路12と,
EL素子15に流すべき電流値及びゲート信号線17a,17bからの信
号の供給を受けて画像を表示する複数の画素16を有する表示画面50と,
表示画面50の輝度を制御する演算処理回路839と,
を備え,
1フレーム分の画像データのデータ和/最大値に対応するDuty比がD
utyカーブとしてメモリされ,
前記Dutyカーブがユーザの操作に応じて切り替えられるように複数の
Dutyカーブがメモリされ,
1フレーム分の画像データの総和を求め,該総和に基づく値であるデータ
和/最大値を生成し,
ユーザの操作に対応するDutyカーブに切り替え,
ユーザの操作に対応するDutyカーブに基づいて,データ和/最大値に
対応するDuty比を求め,
前記演算処理回路839は,Duty比制御のデータを制御データとして
ゲートドライバ回路12に送出して,
前記ゲートドライバ回路12は,前記Duty比制御データに基づいてD
uty比制御を実施する有機EL表示装置。」
(2) 一致点
「データ線に映像データに対応するデータ信号を供給するデータ駆動部
と;
走査線に走査信号を順次供給し,発光制御線に発光制御信号を順次供給す
る走査駆動部と;
前記データ信号,前記走査信号及び前記発光制御信号の供給を受けて映像
を表現する複数の画素を具備する画素部と;
前記画素部の輝度を制御する輝度制御部と;
を備える有機発光表示装置であって,
該有機発光表示装置は,
一フレーム分の前記映像データに対応する前記発光制御信号の幅情報を持
つ少なくとも一つの第1データが保存され;
発光制御信号の幅情報が外部入力モードによって変更されるように構成さ
れ;
また,前記有機発光表示装置は,
一フレーム分の映像データを合算して合算データを生成し,前記合算デー
タに基づく値を生成する処理を行う処理部と;
一フレーム分の映像データを合算した合算データに基づく値及び外部入力
モードに対応する発光制御信号の幅情報を持つ第3データを生成する制御部
と;
をさらに有し,
前記輝度制御部は,
前記第3データに対応する輝度制御信号を生成して前記走査駆動部に伝送
する輝度制御信号生成部;
を有し,
前記走査駆動部は,前記輝度制御信号に対応して前記発光制御信号の幅を
制御する有機発光表示装置。」
(3) 相違点
ア 相違点1
「一フレーム分の前記映像データに対応する前記発光制御信号の幅情報
を持つ少なくとも一つの第1データ(Duty比)の保存に関して,本願
発明においては,「第1データ」が,ルックアップテーブルの形式で「第
1のルックアップテーブル」として保存されるのに対して,引用発明にお
いては,「Duty比」が「Dutyカーブとして」メモリされているも
のの,該Dutyカーブが,どのような形式で保存されるのかが特定され
ていない点で相違している。」
イ 相違点2
「両者は,発光制御信号の幅情報を外部入力モード(ユーザの操作)に
よって変更するための構成において相違している。
すなわち,発光制御信号の幅情報を外部入力モードによって変更するた
めの構成として,本願発明においては,「少なくとも一つの第2データが
保存される第2ルックアップテーブル」を有しており,さらに,該第2デ
ータは,「前記外部入力モードに対応する前記発光制御信号の幅情報の変
動値を持」っているのに対して,引用発明においては,「複数のDuty
カーブがメモリされ」ている点で相違し,また,「外部入力モードに対応
するための処理を行うモード選択部」における処理及び「一フレーム分の
映像データを合算した合算データに基づく値及び外部入力モードに対応す
る発光制御信号の幅情報を持つ第3データを生成する制御部」における第
3データの生成の仕方に関して,本願発明においては,モード選択部にお
いて「外部入力モードに対応する第2データを抽出」し,制御部において,
「合算データに基づく値」である制御データに対応する「第1データを抽
出」し,「前記第1データから前記第2データを減算して」第3データを
生成するのに対して,引用発明においては,「ユーザの操作に対応するD
utyカーブに切り替えて」「ユーザの操作に対応するDutyカーブに

基づいて,データ和/最大値に対応するDuty比を求め」て第3データ
を生成する点で相違する。」
ウ 相違点3
「合算データ(総和)に基づく値に関して,本願発明においては「合算
データの最上位ビットを含む少なくとも二つのビット値」であるのに対し
て,引用発明においては「データ和/最大値」である点で相違してい
る。」
エ 相違点4
「本願発明及び引用発明は,どちらも,「一フレーム分の前記映像デー
タに対応する前記発光制御信号の幅情報を持つ少なくとも一つの第1デー
タが保存」され,「発光制御信号の幅情報が外部入力モードによって変更
されるように構成」されており,さらに「一フレーム分の映像データを合
算して合算データを生成し,前記合算データに基づく値を生成する処理を
行う処理部」及び「一フレーム分の映像データを合算した合算データに基
づく値及び外部入力モードに対応する発光制御信号の幅情報を持つ第3デ
ータを生成する制御部」を備えている点で共通しているが,これらの構成
要件に関して,本願発明においては,「輝度制御部」がこれらの構成要件
を有するとしているのに対して,引用発明においては,これらの構成要件
をどこに備えているかについて具体的に特定されていない点で相違す
る。」
第3 原告主張の取消事由
以下のとおり,審決には相違点2及び3の判断についての誤りがあり,違法
として取り消されるべきものである。
1 取消事由1(相違点2の判断の誤り)
審決は,「ルックアップテーブルのような対応付けのためのデータ(以下,
「LUT等」という。)を用いた制御を行う技術分野において,複数のLUT
等を記憶することに代えて,基準となる「第1データ」が保存される第1のL
UT等と,該「第1データ」を変更するための「第2データが保存される第2
ルックアップテーブル」とを有し,抽出された「第1データ」と「第2デー
タ」を利用して「第3データ」を生成する構成を採用して,メモリ量の増大を
抑えることは,本願の優先日前において周知の技術事項(例えば,当審拒絶理
由で引用した国際公開第2005/027088号(特に,第2ページ第25
行~第3ページ第25行,第6ページ第31行~第8ページ第5行,FIG.
4A,FIG.4Bを参照。)や,同じく当審拒絶理由で引用した特開平8-
300712号公報(特に,【0007】【0015】【0018】~【00
, ,
20】を参照。)を参照。)である。」と認定し(以下,国際公開第2005/
027088号(甲3)を「甲3公報」と,特開平8-300712号公報
(甲4)を「甲4公報」と,審決が認定した上記周知の技術事項を「周知技術
1」という。 ,その上で,
) 「引用発明における,発光制御信号の幅情報を外部
入力モードによって変更するための構成において,前記周知技術1を適用して,
「複数のDutyカーブがメモリされ」ることに代えて,基準となる1つのD
utyカーブ(LUT等)と,該LUT等から得られる値(第1データ)を変
更するための「少なくとも一つの第2データが保存される第2ルックアップテ
ーブル」とを有するように構成することは,当業者であれば容易に想到し得た
ことである。」とし,さらに,前記第1データを変更するための処理として,
第1データに対する所定の倍率として第2データを乗算することも,第1デー
タの所定の変動値として第2データを加算することも,どちらも周知の技術事
項であり,引用発明において,「複数のDutyカーブがメモリされ」ること
に代えて,基準となる1つのDutyカーブと,そこから得られる第1データ
を変更するための少なくとも一つの第2データが保存される第2ルックアップ
テーブルとを有するように構成するに際して,第1データを変更するための前
記第2データとして,第1データに対する所定の倍率として乗算される第2デ
ータを採用するか,第1データの所定の変動値として加算される第2データを
採用するかは,当業者が適宜選択し得ることであると認められるから,後者を
採用して本願発明のようになすことは,当業者が適宜なし得たことである,さ
らに,「幅情報の変動値」によって第1データを変更するに当たり,加算する
か減算するかは,基準となる第1のLUT等の選び方や第2データの符号に応
じて適宜選択されることであり,本願発明において減算するとしたことによっ
て格別の効果があるとも認められないから,この点も,当業者が適宜選択し得
ることである,と判断した。しかし,審決の認定判断には,次の理由により誤
りがある。
(1) 引用発明では,ユーザーの操作とデータ和/最大値の大きさとに基づいて
一つの処理でDuty比を制御する手法を採用しているのに対し,本願発明
では,第1処理において,外部入力モードの要因を除外した状態で制御デー
タの値に対応する第1データを抽出し,第2処理において,第1データと外
部入力モードに対応する第2データとを利用して発光制御信号の幅情報を持
つ第3データを生成するという二つの処理で発光制御信号の幅を制御する手
法を採用している。このような手法を採用することにより,本願発明におい
ては,引用発明と比較して高精度かつ高速な発光制御信号に対する制御を実
現することが可能である。
具体的には,制御データの大きさに基づいて発光制御信号の幅を制御し,
制御データの大きさに基づいて制御された発光制御信号の幅から,外部入力
モードに対応する変動値を減算して発光制御信号の幅を制御することが可能
となり,一つの処理でDuty比を制御する引用発明と比較して,より緻密
な制御が可能である。
また,本願発明では,制御部によって発光制御信号の幅を抽出する処理と,
モード選択部によって変動値を抽出する処理とを並行して行うことが可能で
あり,発光制御信号の幅を算出する処理を効率良く高速に行うことができる
が,引用発明では,ユーザーの操作によってDuty比カーブa,b,cの
いずれか一つに切り換えた後に,切り換えられた一つのDuty比カーブa,
b,cカーブを用いてデータ和/最大値に対応するDuty比が出力される
ため,ユーザーの操作に応じた処理とデータ和/最大値に応じた処理とを並
行して行うことはできず,Duty比の出力を高速に行うことは困難である。
さらに,本願発明においては,第1ルックアップテーブルでは,外部入力
モードの影響を除外した状態で,制御データの値に対応する発光制御信号の
幅の特性を一つ保存するのみでよく,第2ルックアップテーブルでは,外部
入力モードに対応する発光制御信号の幅情報の変動値を保存するのみでよい
ため,複数のユーザー操作に応じた複数のDuty比カーブa,b,cをあ
らかじめ保持しておく必要がある引用発明と比較して,ルックアップテーブ
ルを保存するためのデータ量を大幅に削減することが可能である。
以上のとおり,本願発明は,引用発明とは構成が異なっており,引用発明
から得られない特有の効果を奏する。
(2) 引用発明におけるDuty比カーブa,b,cでは,引用刊行物の【図1
97】(別紙参照)に記載されているように,Duty比の差分はデータ和
/最大値が大きくなるほど広がっているほか,データ和/最大値が大きくな
るほどDuty比が低下するものである。このような引用発明のDuty比
カーブa,b,cに,甲4公報記載の「所定の値を加算する」技術を適用し
た場合,各Duty比カーブのDuty比の差分はデータ和/最大値に関わ
らず一定となるはずである。また,このような引用発明のDuty比カーブ
a,b,cに,甲3公報記載の「所定の係数の乗算を行う」技術を適用した
場合,各Duty比カーブのDuty比の差分はデータ和/最大値が大きく
なるほど狭まるはずである。
したがって,引用発明のDuty比カーブa,b,cを実現しようとする
当業者が周知技術1を適用することには動機付けとなり得るものがなく,
「引用発明において,「複数のDutyカーブがメモリされ」ることに代え
て,基準となる1つのDutyカーブと,そこから得られる第1データを変
更するための少なくとも一つの第2データが保存される第2ルックアップテ
ーブルとを有するように構成するに際して,第1データを変更するための前
記第2データとして,第1データに対する所定の倍率として乗算される第2
データを採用するか,第1データの所定の変動値として加算される第2デー
タを採用するかは,当業者が適宜選択し得ることであると認められるから,
後者を採用して本願発明のようになすことは,当業者が適宜なし得たことで
ある。」とする審決の認定判断は,引用発明と周知技術1が異なる輝度制御
を行うものであり,引用発明の具体的処理として当業者が周知技術1を採用
することがあり得ないため,明らかな誤りである。
(3)ア 周知技術1を構成する甲4公報記載の技術の属する技術分野は「サーマ
ルプリンタ」であり,本願発明が属する技術分野である「有機EL表示装
置」とは明らかに異なっており,本願発明と引用発明との対比による相違
点2に係る構成,特に,第1データから第2データの減算に関する構成を,
引用発明の技術分野とは異なる技術分野に属する甲4公報記載の周知技術
1を適用することにより判断することは妥当ではなく,審決の判断は誤っ
ている。
イ 甲4公報【0017】を参照すると,補正データを用いた補正に関して
は,「ストローブコントロール回路5では,入力された補正データに基づ
いて,所定のパルス幅を持つストローブパルスをサーマルヘッドへ印加す
る。」と記載されているにすぎず,補正データを用いてどのようにしてパ
ルス幅を補正するかについては言及がなされていない。
一方,甲4公報【0021】を参照すれば,「従来のサーマルヘッド温
度補正データ(e)に,さらに放熱量補正データ(f)を加算(あるいは減
算)して補正できるため,パルス幅(印画濃度)の微調ができる。」と記
載されているが,サーマルヘッド温度補正データ(e)と放熱量補正デー
タ(f)との加算(あるいは減算)がパルス幅自体の補正を意味するもの
ではなく,補正データ同士の加算(あるいは減算)を意味しているのは明
らかである。
したがって,仮に引用発明に周知技術1を適用して,引用発明において,
第1のルックアックテーブルによって「データ和/最大値」による補正を
行うとともに第2のルックアックテーブルによって「ユーザーの操作」に
よる補正を行い,第1のルックアックテーブルの出力データを第2のルッ
クアックテーブルの出力データで減算補正してDuty比を得る構成を採
用し得たとしても,補正データ同士を減算することによって全体としての
補正データを得る構成にしか想到し得ず,補正データを減算することによ
ってDuty比を得る本願発明の構成には想到し得ない。
また,本願発明においては,第1ルックアップテーブルから出力される
第1データは制御データに対応するデータであり,第2ルックアップテー
ブルから出力される第2データは外部入力モードに対応するデータであり,
第1データから第2データを減算することによって第1データを変動させ
るという手法を採用している。すなわち,本願発明においては,第1デー
タは基準となるデータに相当し,第2データは第1データを変動させるた
めの変動値に相当している。他方,引用発明はDuty比自体を変動させ
るものであり,周知技術1は変動値同士を加算させるものであるため,引
用発明に周知技術1を適用したとしても,変動値同士が加算された結果と
して算出された全体としての変動値に基づいてDuty比を変動させるこ
とにしか及ばず,変動対象であるDuty比から変動値を減算することに
は想到し得ない。したがって,引用発明に甲4公報記載の周知技術1を適
用したとしても,補正データ同士が加算された結果として算出された全体
としての補正データに基づいてパルス幅を補正することにしか及ばず,パ
ルス幅から補正データを減算することには想到し得ない。
(4) 引用発明におけるDuty比カーブa,b,cでは,引用刊行物の【図1
97】に記載されているように,データ和/最大値が大きくなるほどDut
y比の差分が広がっているために,画面が明るい場合,過度に輝度を制限し
てしまう。これに対し,本願発明においては,第1データと第3データとの
差分は一定に維持されるため,画面が明るい場合であっても,過度に輝度を
制限してしまうことを抑止することが可能である。したがって,本願発明に
よれば,適正な輝度で表示を行うことが可能であるという格別な効果を奏す
る。
また,引用発明におけるDuty比カーブa,b,cでは,引用刊行物の
【図197】に記載されているように,データ和/最大値が小さくなるほど
Duty比の差分が狭まっているために,画面が暗い場合,消費電力の低減
が制限されてしまう。一方,本願発明においては,第1データと第3データ
との差分は一定に維持されるため,画面が暗い場合であっても,消費電力を
一定以上低減させることができるという優れた効果を奏する。
そして,以上の効果は,引用発明並びに甲3公報及び甲4公報記載の周知
技術1の奏するはずのない異質な効果である。
したがって,いかなる当業者であっても,引用発明と,周知技術1とを組
み合わせることによって,かかる格別な効果を奏する本願発明に想到するこ
とはあり得ない。
2 取消事由2(相違点3の判断の誤り)
審決は,画像データの総和に基づく値として,画像データの総和に対してビ
ットシフト演算で除算を行うことは,本件出願の優先日前において周知の技術
事項(例えば特開2003-255884号公報(甲5。以下「甲5公報」と
いう。)の第0249段落を参照。)であり,上記ビットシフト演算で除算を行
うことが,最上位ビットを含む上位のビット値を抽出することと実質的に同じ
意味であることは,当業者にとって自明な事項であるとした上で,引用発明に
おいて,「データ和/最大値」は,「画面の消費電流量を予測」するための値の
一例であって,「データ和」がどの程度の大きさであるのかが分かればよく,
固定値としての「最大値」で除することに特段の技術的意義があるものではな
いので,「データ和(画像データの総和)」に対して「最大値」で除算を行うこ
とに代えて,上記周知の技術事項である,画像データの総和に対してビットシ
フト演算で除算を行うことを採用して,「画像データの総和(本願発明におけ
る「合算データ」に相当する。)の最上位ビットを含む少なくとも二つのビッ
ト値」を求めるようにすることは,当業者が適宜なし得た設計的な事項である,
と判断した。
しかし,本願発明は,「前記輝度制御部は,前記一フレーム分の映像データ
を合算して合算データを生成し,前記合算データの最上位ビットを含む少なく
とも二つのビット値を制御データとして生成するデータ合算部と;・・・前記第
1ルックアップテーブルから前記制御データの値に対応する前記第1データを
抽出し,前記抽出された第1データ及び第2データを利用して前記発光制御信
号の幅情報を持つ第3データを生成する制御部と;・・・」との構成を有し「合
算データの最上位ビットを含む少なくとも二つのビット値」を「制御データ」
としている。このため,合算データが所定値以下の場合には,合算データは下
位ビット(最上位ビットを含む少なくとも二つのビット以外のビット)の値の
みによって表され,合算データの値は制御データの値(最上位ビットを含む少
なくとも二つのビット値)に何ら影響を与えることがなく,制御データの値は
「0」となる。
そうすると,第1ルックアップテーブルは,制御データの値に対応する第1
データを保存しているのであるから,制御データが「0」の場合に,制御部が
第1ルックアップテーブルから制御データの値に対応する第1データを抽出す
ると,第1データは必ず同一となる。このように,合算データが所定値以下の
区間をいわゆる不感帯として利用することができ,この区間では第1データが
常に一定に維持される。なお,被告の主張するように「最上位ビットを含む少
なくとも二つのビット値」が合算データそのものである場合,合算データその
ものは逐次変化するので,合算データの値が所定値以下に設定される場合に第
1発光制御信号の幅を一定に維持する制御は実現不可能である。したがって,
「前記合算データの最上位ビットを含む少なくとも二つのビット値」は,被告
の主張するように合算データそのものではない。
かかる構成を有することにより,本願発明は,暗い画像を表示する場合に,
明暗比を向上させ,コントラストを高めた画像を表示することができるという
優れた効果を奏する。また,本願発明は,暗い画像を表示する場合に,省電力
を達成することができるという優れた効果を奏する。
一方,引用発明は,データ和/最大値が所定値以下の場合に発光制御信号の
幅を一定に維持するための構成を何ら備えていない。また,甲5公報に記載さ
れた発明は,「画像データの総和に基づく値として,画像データの総和に対し
てビットシフト演算で除算を行う」ものであるが,同公報の【0249】に記
載されているように,かかる除算は「ハードウェアを簡略化」するために行わ
れるものであり,「コントラストを高めた画像を表示する」といった効果を享
受することを期待したものではない。
したがって,審決の上記判断は誤っている。
第4 被告の反論
1 取消事由1(相違点2の判断の誤り)について
(1) 原告の主張する① より緻密な制御が可能であるとの効果,② 並列処理
による効率化・高速化が可能であるとの効果及び③ データ量を大幅に削減
可能という効果は,いずれも,引用発明に周知技術1を適用することにより
得られる効果として自明であり,格別な効果とはいえない。また,①及び②
の効果は,本願の明細書に記載されたものではなく,②の効果は,特許請求
の範囲に基づかない主張でもある。さらに,①及び②をより可能とするのは
引用発明の方であり,原告の主張は技術的にみても根拠がない。
また,本件明細書【0037】及び【0038】に記載された本願発明の
効果についても,引用発明も,引用発明の構成を採用することによって同様
の効果を奏するし,そのうちメモリを過度に消費しないという効果は,引用
発明に周知技術1を適用することにより得られる効果として自明であり,格
別な効果とはいえない。
(2) 引用刊行物【1303】の記載によれば,引用発明におけるDuty比カ
ーブは図示されたものに限定されず,ユーザーの操作に応じてデータ和/最
大値とDuty比との関係を適宜設定できる。さらに,引用刊行物【130
1】及び【1306】の記載にも照らすと,ユーザーの操作に応じて輝度制
御をどのような演算で行うかは当業者が適宜決定し得る設計事項にすぎな
い 。
(3)ア 引用発明のコントロールICによる画像処理の制御方法を具体化するに
際し,当業者が,関連技術分野におけるルックアップテーブルによるデー
タ変換技術,特に,データ変換の目的課題ないし機能が画像処理であるプ
リンタの画像処理におけるルックアップテーブルによるデータ変換技術を
自らの知識とすることは,その技術が技術水準を示す周知技術である以上
当然である。さらに,ルックアップテーブルによるデータ変換技術は,製
品が「表示装置」であるか「プリンタ」であるかの点で相違するにもかか
わらず,その画像処理におけるデータ変換のために周知慣用されている。
したがって,引用発明に接した当業者が,プリンタの画像処理における
技術水準である甲4公報記載のルックアップテーブルによるデータ変換の
周知技術1を参照して引用発明と組み合わせることは,当業者が適宜なし
得る設計事項にすぎない。
イ 甲4公報記載の周知技術1を知悉した当業者ならば,引用発明において,
第1のルックアップテーブルによって「データ和/最大値」による補正を
行うとともに第2のルックアップテーブルによって「ユーザーの操作」に
よる補正を行い,第1のルックアップテーブルの出力データを第2のルッ
クアップテーブルの出力データで減算補正してDuty比を得る構成を採
用することによって,ルックアップテーブルの数は増えるが「データ和/
最大値」による補正と「ユーザーの操作」による補正とを二つのルックア
ップテーブルにてそれぞれ独立にでき,補正に用いるパラメータを減らせ
るため,ルックアップテーブルの容量を減らし,大容量のルックアップテ
ーブルを用いることなく高精度の補正を行うという目的効果を達すること
を容易に想到する。なお,引用刊行物にも甲4公報にも,「変動対象」や
「変動値」といった記載は存在せず,原告の主張はそもそも根拠がない。
(4) 審決が判断したとおり,引用発明に周知技術1を適用して基準となる一つ
のDutyカーブ(LUT等)と,該LUT等から得られる値(第1デー
タ)を変更するための「少なくとも一つの第2データが保存される第2ルッ
クアップテーブル」とを有するようにし,さらに,上記第1データを変更す
るための上記第2データとして,第1データの所定の変動値として減算され
る第2データを採用することは当業者が容易に推考できたものである。そし
て,このようなものは,ユーザーの操作に応じた輝度制御が減算により行わ
れて差分が一定に維持され,本願発明と同じ効果を奏するから,原告が主張
する効果は格別なものではない。そもそも,本件明細書には,「第1データ
と第3データとの差分が一定に維持されること」と「画面が明るい場合でも
輝度を過度に制限することを防止する」ことを関連付ける記載はなく,原告
の主張は発明の詳細な説明の記載に基づくものではない。
2 取消事由2(相違点3の判断の誤り)について
審決が判断したとおり,引用発明に周知の技術事項である,画像データの総
和に対してビットシフト演算で除算を行うことを採用して,データ和の最上位
ビットを含む少なくとも二つのビット値を求めるようにすることは,当業者が
適宜なし得た設計的事項である。そして,このようなものは,データ和が所定
値以下の場合はDuty比が1となり,いわゆる不感帯となるから,原告が主
張する効果を自明なものとして奏する 。
そもそも,本願発明における「制御データ」は,「合算データの最上位ビッ
トを含む少なくとも二つのビット値」であるから,「合算データの最上位ビッ
トを含むすべてのビット値」,すなわち,合算データそのものであってもよい。
この場合,合算データが変化すると必ず制御データも変化するから,第1デー
タが必ず同一の値になるとは限らない。したがって,不感帯の存在を前提とす
る原告の主張は,請求項1に記載された事項に基づくものではない。
第5 当裁判所の判断
当裁判所は,原告の取消事由の主張には理由がなく,その他,審決にはこれ
を取り消すべき違法はないものと判断する。その理由は,以下のとおりである。
1 取消事由1(相違点2の判断の誤り)について
(1) 引用刊行物について
引用刊行物には,前記第2の3(1)の内容の発明が記載されているものと
認められる(甲1)。
そして,引用刊行物の記載(甲1【1301】 【図197】
, )に照らすと,
引用発明は,前記第2の3(1)の構成を採用することにより,「データ和/最
大値とDUTY比の関係は,画像データの内容,・・・に合わせて設定す
る・・・また,ユーザーが自由に設定あるいは調整できるように構成する」
(【1301】)ようにしたもので,具体的には,周辺が明るい屋外ではDu
ty比を大きくすることで表示輝度を高くし,周辺が暗い屋内ではDuty
比を小さくすることで表示輝度を低くした(【図197】)ものと認められる。
また,引用刊行物【1303】には,引用発明においては,「外部のマイ
コンなどにより,Duty比カーブ,傾きなどを書き換えるように構成する
こと」が好ましい旨記載されている。
(2) 周知技術等について
ア 表示装置の分野において,発光時間(デューティ比)を得るためのカー
ブをルックアップテーブルの形式で記憶することは,特開2003-22
8331号公報(甲2)にみられるように本願の優先日前において慣用的
な技術である(原告もこの点につき争っていない。。

イ(ア) 甲3公報は発明の名称を「参照テーブル(LOOK-UP-TABL
E)メモリを低減された電気泳動ディスプレイ」とする発明に関するも
のであるが,同公報には以下の記載がある(甲3。特表2007―50
6133号公報に記載された訳文のみ記載する。(以下,下線は裁判所

において付した。。

a 特許請求の範囲
「請求項1
流体中で荷電粒子を有する電気泳動物質を有する表示素子;
該表示素子に結合された第1の電極及び第2の電極;
前記表示素子へ電位差の列を供給するよう配置された駆動手段;
当該ディスプレイの基準温度において当該ディスプレイへの画像情
報の伝送に対して決定される電位差の少なくとも1つの参照列を表す
データを受け取る第1のメモリ;
当該ディスプレイの少なくとも1つの温度を表すスケーリング係数
を受け取って記憶する第2のメモリ;及び
制御部;
を有し,
該制御部は,当該ディスプレイの前記少なくとも1つの温度を表す
温度読み込みを受け取り,前記第2のメモリから前記スケーリング係
数を読み出し,前記第1のメモリから前記少なくとも1つの参照列を
読み出し,前記温度読み込みに対して電位差の調整された列を決定す
るよう前記少なくとも1つの参照列へ前記スケーリング係数を適用す
るように,構成され,
前記電位差の調整された列は,前記表示素子の光学状態の所望の変
化に対して前記第1の電極及び前記第2の電極へ印加されることが可
能である,
ことを特徴とするディスプレイ。」
b 「図3は,本発明に従う実施例を略ブロック図で表す。駆動手段3
00は,電位差又はパルスをディスプレイ301の表示素子及びメモ
リ314へ印加する制御部315を有する。夫々,ディスプレイの温
度を測定して,伝送する温度センサ325及び変換器326も設けら
れている。
例えばROM又はRAMを含むメモリ314は,ディスプレイの任
意の基準温度においてディスプレイ301にとって最適である基準波
形のデータを有するLUT(参照テーブル)を有する。メモリは,別
個の外付けの記憶装置として存在しても良いが,代替的には,制御部
315又はより大きなメモリ若しくは駆動システムの一部を形成して
も良い。メモリは,基準波形が制御部からの要求で制御部315へ送
られるようにプログラムされている。」(甲3公報の5頁28行~6
頁7行に相当。)
c 「図4Aは,スケーリング係数の例となるグラフを示す。図4B
は,表形式でスケーリング係数を示す。グラフのx軸430及び表の
第1の列431の値は,摂氏温度(℃)である。グラフのy軸432
及び表の第2の列433の値は,スケーリング係数である。スケーリ
ング係数は,特定のディスプレイ設計に 対して実験的に決定され
る。・・・スケーリングは,電位差の列に対して選択されており,これ
は,25℃の温度に対して最適である。25℃に対して最適な基本列
は,20℃に対して150%のスケーリング係数により調整され,3
0℃に対してはスケーリング係数70%で調整される。」(甲3公報
の6頁15行~同頁24行に相当。)
d 「上記解決法が調整の基礎として単一のLUTの使用を検討する一
方で,温度の極限において,このような温度での調整の基礎として使
用されるべき1つ又はそれ以上の更なるLUTを発生させることが必
要とされても良いことが明らかに可能である。2又は3のLUT(4
5の代わり)しか必要としないディスプレイは,また,大幅なコスト
削減を実現する。」(甲3公報の10頁1行~同頁23行に相当。)
(イ) 甲4公報は発明の名称を「サーマルプリンタ」とする発明に関するも
のであるが,同公報には以下の記載がある(甲4)。
a 「【0005】図2に従来のサーマルプリンタに用いられる階調補
正部分を示す。また,各信号に,()内に小文字のアルファベットを
用いた符号を付してある。図2は,サーマルヘッドの温度のみを検出
して補正する場合の階調補正部分を示してある。サーマルヘッドの温
度をサーミスタなどにより検出し,検出された温度(h)に応じて,
ストローブパルス(サーマルヘッドを通電する期間を決定するパル
ス)を補正するようにしてある。補正はルックアップテーブル(以
下,LUTという)10を参照することにより行われ,LUT10か
らの信号(サーマルヘッド温度補正データ(i))に基づいて,スト
ローブコントロール回路11からストローブパルスが出力される。な
お,階調数に応じてストローブパルスの幅を決定できるように階調数
のデータ(g)もLUT10に入力されている。」
b 「【0014】【実施例】図1は本発明のサーマルプリンタの一実
施例を示すブロック図である。・・・
【0015】サーマルヘッドの温度上昇は,サーミスタによって検
出され,この温度データ(b)は,LUT1へ供給される。LUT1
には,階調数のデータ(a)も供給されており,階調数(a)と温度
データ(b)からこれに対応するデータ (ヘッド温度補正データ
(e))を出力する。さらに,もう一つのLUT2では,温度検出器
(たとえば,熱電対あるいはサーミスタなどの温度センサ)により検
出された外気温(c)とサーマルヘッドの温度(b)との温度差(減
算部3の出力信号d)からこれに対応するデータ(放熱量補正データ
f)を出力する。これらのデータ(e),(f)を加算部4にて加算
し,加算されたデータをストローブコン トロール回路5へ供給す
る。」
c 「【0017】ストローブコントロール回路5では,入力された補
正データに基づいて,所定のパルス幅を持つストローブパルスをサー
マルヘッドへ印加する。」
d 「【0021】このような構成にすることにより,サーマルヘッド
の温度および放熱量に対する補正を,それぞれ独立に行えるため,補
正に必要なパラメータを減らせ,LUT1,2の容量を減らすことが
できる。また,従来のサーマルヘッド温度補正データ(e)に,さら
に放熱量補正データ(f)を加算(あるいは減算)して補正できるた
め,パルス幅(印画濃度)の微調ができる。」
(ウ) 上記(ア)及び(イ)において認定したところに照らすと,ルックアップテ
ーブルのような対応付けのためのデータ(以下「LUT等」という。)
を用いた制御を行う技術分野において,複数のLUT等を記憶すること
に代えて,基準となる「第1データ」が保存される第1のLUT等と,
該「第1データ」を変更するための「第2データが保存される第2ルッ
クアップテーブル」とを有し,抽出された「第1データ」と「第2デー
タ」を利用して「第3データ」を生成する構成を採用して,メモリ量の
増大を抑えることは,本願の優先日前において周知の技術であると認め
られる(周知技術1。上記技術事項が周知技術であること自体は原告も
争っていない。。

ウ(ア) 特開昭63-116855号公報は,発明の名称を「カラープリン
タ」とする発明に関するものであるが,同公報1頁右下欄15行目~2
頁左上欄8行目には,「第6図は従来のカラープリンタ20で,ホスト
側機器10の画像データPSを記録する場合の構成例を示しており,ホ
スト側機器10は画像データPSのカラーコードをCRT等の表示装置
12で表示するためのRGB画像信号DSに変換するルックアップテー
ブル11を有しており,RGB画像信号DSは表示装置12に入力され
て画像表示されるようになっている。そして,ホスト側機器10の画像
データPSを端末のカラープリンタ20に伝送して画像記録を行なう場
合には,カラープリンタ20内に設けられている記録変換用のルックア
ップテーブル21に画像データPSを入力し,変換された画像記録信号
PRをプリント部22に送って記録を行うようにしている。」との記載
がある(乙6)。
(イ) 特開平10-31728号公報は,発明の名称を「画像情報の処理方
法および処理装置」とする発明に関するものであるが,同公報【000
2】には,【従来の技術】赤外線やX線などを含む各種のテレビカメラ

で撮影された電子画像データを,1画素ずつLUT(ルックアップテー
ブル)変換して画質を調整し,ディスプレイやプリンタに表示する方法
が知られている。」との記載がある(乙7)。
(ウ) 特開2003-244457号公報は,発明の名称を「色変換装置,
および色変換方法」とする発明に関するものであるが,同公報には,
「【0002】【従来の技術】画像表示装置においては,入力された色デ
ータを表示する際に,使用条件等に合わせ所望の色再現を行うために色
変換処理が行われている。また,プリンタ装置においても,インクが純
色でないことによる混色性や,非線形な入出力特性により発生する画質
劣化を補正し,良好な色再現を行うための色変換処理が行われている。
【0003】代表的な色変換方法として,テーブル変換方式とマトリ
クス演算方式の2種類がある。テーブル変換方式は,R,G,Bの各色
を表す入力色データに対応する変換係数をROMなどのメモリに予め記
憶し,記憶された変換係数に基づいて色変換を行う方法であり,任意の
変換特性に基づき色変換を行うことができる。」との記載がある(乙8)。
(エ) 上記(ア)~(ウ)において認定したところに照らすと,ルックアップテー
ブルにより画像データを変換することは,本願の優先日前において,表
示装置及びプリンタの両方において,画像処理におけるデータ変換技術
として,当業者により普通に採用されていたものと認められる。
(3) 容易想到性の判断について
ア 上記(2)アにおいて認定したところに照らすと,引用発明においてDu
ty比カーブをメモリするに当たり,上記(2)ア記載の慣用的な技術を採
用し,ルックアップテーブルの形式でメモリして,第1ルックアップテー
ブルを有するようにすることは,当業者が適宜なし得た事項であるものと
認められる(原告もこの点につき争っていない。。

イ ルックアップテーブルにより画像データを変換することは,本願の優先
日前において,表示装置及びプリンタの両方において,画像処理における
データ変換技術として,当業者により普通に採用されていたものであるの
で(上記(2)ウ),EL表示装置に関する引用発明にサーマルプリンタない
しは電気泳動ディスプレイに関する周知技術1(上記(2)イ)を適用するこ
とは,当業者が容易に想到し得たものと認められる。
そうすると,引用発明においてDuty比カーブをルックアップテーブ
ルの形式でメモリする際に,複数のDuty比カーブがメモリされること
に代えて,基準となる1つのDuty比カーブ(LUT等)と,該LUT
等から得られる値(第1データ)を変更するための「少なくとも一つの第
2データが保存される第2ルックアップテーブル」とを有するように構成
することは,周知技術1を適用することにより,当業者であれば容易にな
し得たものであると認められる。
ウ そして,甲3公報には,第1のメモリから読み出された参照列に所定の
スケーリング係数の乗算を行うことが(上記(2)イ(ア)a及びc),甲4公報
には,サーマルヘッド温度補正データに,さらに放熱量補正データを加算
又は減算して補正することが(上記(2)イ(イ)d)それぞれ記載されている。
また,前記(1)認定のとおり,引用刊行物に「また,外部のマイコンな
どにより,Duty比カーブ,傾きなどを書き換えるように構成すること
が好ましい。(
」【1303】)と記載されているので,同記載に接した当業
者であれば,引用発明におけるDuty比カーブは,引用刊行物に図示さ
れたものに限定されず,周辺の明るさに応じたデータ和/最大値とDut
y比との関係を適宜設定できることを理解できるものと認められる。
そうすると,引用発明に周知技術1を適用し,基準となる一つのDut
y比カーブ(LUT等)と,該LUT等から得られる値(第1データ)を
変更するための「少なくとも一つの第2データが保存される第2ルックア
ップテーブル」とを有するように構成する際に,上記第2データとして,
第1データの所定の変動値として減算される第2データを採用することは,
当業者が適宜選択し得るものであると認められる。
エ 以上によれば,相違点2に係る構成は,引用発明に周知技術を適用する
ことにより,当業者が容易に想到し得たものということができ,審決の判
断に誤りはない。
(4) 原告の主張について
ア 原告は,本願発明は,引用発明とは構成が異なっており,引用発明から
得られない種々の特有の効果を奏する旨主張する。
しかし,引用発明に周知技術1を適用することによって,基準となる一
つのDuty比カーブ(LUT等)と,該LUT等から得られる値(第1
データ)を変更するための「少なくとも一つの第2データが保存される第
2ルックアップテーブル」とを有するように構成することで,ルックアッ
プテーブルを保存するためのデータ量を削減することができるとの作用効
果を奏することは,当業者には自明であると認められ,格別な効果である
とはいえない。また,上記構成により,一つの処理でDuty比を制御す
る引用発明と比較して,より緻密な制御が可能であるとの作用効果,及び
制御部によって発光制御信号の幅を抽出する処理とモード選択部によって
変動値を抽出する処理とを並行して行うことが可能であるとの作用効果が
得られることは,当業者には自明であると認められる。
以上によれば,原告の主張する本願発明の作用効果は,引用発明に周知
技術1を適用することにより,当業者が容易に予測し得た作用効果である
にすぎず,引用発明に周知技術1を適用し,本願発明との相違点2に係る
構成に至ることが容易である以上,本願発明の進歩性を基礎付ける理由と
はならない。
よって,原告の上記主張を採用することはできない。
イ 原告は,引用発明におけるDuty比カーブa,b,cでは,引用刊行
物の【図197】に記載されているように,Duty比の差分はデータ和
/最大値が大きくなるほど広がっているほか,データ和/最大値が大きく
なるほどDuty比が低下するものであり,これに甲4公報記載の「所定
の値を加算する」技術を適用した場合,各Duty比カーブのDuty比
の差分はデータ和/最大値に関わらず一定となるはずであるし,引用発明
のDuty比カーブa,b,cに,甲3公報記載の「所定の係数の乗算を
行う」技術を適用した場合,各Duty比カーブのDuty比の差分はデ
ータ和/最大値が大きくなるほど狭まるはずであるので,引用発明と周知
技術1を組み合わせることには,いかなる当業者であっても想到し得ない
旨主張する。
しかし,前記(2)ウ認定のとおり,引用発明におけるDuty比カーブ
は,周辺の明るさに応じたデータ和/最大値とDuty比との関係を適宜
設定できるものであり,引用発明に周知技術1を適用し,データ和/最大
値に基づいて生成したデータを,ルックアップテーブルを参照して設定し
たユーザーの操作に応じたデータで補正する際に,データ和/最大値に基
づいて生成したデータからユーザーの操作に応じたデータを減算すること
は,引用刊行物の上記記載に基づいて,ユーザーの操作に応じたデータ和
/最大値とDuty比との関係を設定するに当たり,当業者が適宜選択し
得るものであるので,原告の上記主張を採用することはできない。
ウ(ア) 原告は,引用発明と甲4公報記載の周知技術1とでは技術分野が異な
るので引用発明に甲4公報記載の周知技術1を適用することはできない
旨主張するが,上記(3)イにおいて認定したところに照らすと,原告の
上記主張を採用することはできない。
(イ) 原告は,仮に引用発明に周知技術1を適用しても,補正データ同士を
減算することによって全体としての補正データを得る構成にしか想到し
得ず,補正データを減算することによってDuty比を得る本願発明の
構成には想到し得ないとか,本願発明においては,第1データは基準と
なるデータに相当し,第2データは第1データを変動させるための変動
値に相当している一方,引用発明はDuty比自体を変動させるもので
あり,周知技術1は変動値同士を加算させるものであるため,引用発明
に周知技術1を適用したとしても,補正データ同士が加算された結果と
して算出された全体としての補正データに基づいてパルス幅を補正する
ことにしか及ばず,パルス幅から補正データを減算することには想到し
得ないなどと主張する。
しかし,前記(2)イ(イ)認定のとおり,甲4公報には,従来技術では,
階調数のデータ及びサーマルヘッドの温度のデータをLUT(ルックア
ップテーブル)に入力し,LUTからの信号(サーマルヘッド温度補正
データ)を,ストローブコントロール回路に供給することで,サーマル
ヘッドに印加されるストローブパルスが出力されていたところ,甲4公
報記載の発明においては,二つのルックアップテーブルLUT1及びL
UT2を用い,LUT1に階調数と温度データが供給され,これに対応
するデータ(サーマルヘッド温度補正データ)を出力し,また,LUT
2に外気温とサーマルヘッドの温度との温度差のデータを供給し,これ
に対応するデータ(放熱量補正データ)を出力し,サーマルヘッド温度
補正データと放熱量補正データとを加算部にて加算又は減算し,加算又
は減算されたデータをストローブコントロール回路へ供給するようにし
たこと,上記構成により,上記LUT1及びLUT2の容量を減らし,
従来のサーマルヘッド温度補正データに,さらに放熱量補正データを加
算又は減算して補正することで,パルス幅(印画濃度)の微調ができる
ことがそれぞれ記載されている。
以上の甲4公報の記載に照らすと,甲4公報記載の発明は,補正デー
タ同士を加算又は減算するものではなく,むしろ基準となるサーマルヘ
ッド温度補正データに対し,放熱量補正データを用いて補正を加えるも
のと認められる。
なお,前記(2)イ(ア)認定の甲3公報の記載に照らすと,甲3公報記載
の発明においても,基準となる参照列に対してスケーリング係数を用い
て補正がなされることが明らかである。
以上によれば,原告の上記主張を採用することはできない。
エ 原告は,引用発明におけるDuty比カーブa,b,cでは,引用刊行
物の【図197】に記載されているように,データ和/最大値が大きくな
るほどDuty比の差分が広がっているために,画面が明るい場合,過度
に輝度を制限してしまう一方,本願発明においては,第1データと第3デ
ータとの差分は一定に維持されるため,画面が明るい場合であっても,過
度に輝度を制限してしまうことを抑止することが可能であり,本願発明に
よれば,適正な輝度で表示を行うことが可能であるという格別な効果を奏
する,また,引用発明におけるDuty比カーブa,b,cでは,データ
和/最大値が小さくなるほどDuty比の差分が狭まっているために,画
面が暗い場合,消費電力の低減が制限されてしまうのに対し,本願発明に
おいては,第1データと第3データとの差分は一定に維持されるため,画
面が暗い場合であっても,消費電力を一定以上低減させることができると
いう優れた効果を奏するのであって,これらの効果は,引用発明及び周知
技術1が奏するはずのない異質な効果である旨主張する。
しかし,引用発明に周知技術1を適用し,基準となる一つのDuty比
カーブ(LUT等)と,該LUT等から得られる値(第1データ)を変更
するための「少なくとも一つの第2データが保存される第2ルックアップ
テーブル」とを有するように構成する際に,上記第2データとして,第1
データの所定の変動値として減算される第2データを採用することにより
原告の主張する上記の各作用効果が得られることは,当業者が容易に予測
し得るものであり,格別なものとはいえない。
よって,原告の上記主張を採用することはできない。
2 取消事由2(相違点3の判断の誤り)について
(1) 引用刊行物について
引用刊行物には,画面の消費電流量を予測できる値を求め,この値により,
Duty比制御を行うこと(【1212】),「データ和/最大値」は,映像
データの和から求められ,処理を行う画面の画像データの最大値に対する割
合であるが,データ和,最大値とも1画面のデータを正確に加算することを
必要としないこと(【1255】,【1292】【1293】,Duty比
, )
カーブに基づいて,「データ和/最大値」に対応するDuty比を求めるこ
とにより,Duty比制御を行うこと(【1295】~【1297】,【図
197】)がそれぞれ記載されていることが認められる(甲1)。
そして,上記記載に照らすと,引用発明における「データ和/最大値」は,
画面の消費電流量を予測するための値の一例であり,「データ和/最大値」
に限らず,1フレーム分の画像データの総和に基づく値であれば他の値も使
用できることは,上記記載に接した当業者において容易に理解し得るもので
あるものと認められる。
(2) 周知技術について
ア 発明の名称を「表示装置及びその画像信号処理装置及び駆動制御装置」
とする発明に関する甲5公報には,以下の記載がある(甲5)。
「【0247】(平均輝度レベル検出手段)輝度情報を検出するための
平均輝度レベル検出手段221は,逆γ変換後の画像データRa,Ga,
Baを参照してフレームごとの平均輝度を検出するための手段である。同
手段はRa,Ga,Baの画像データをフレームごとに加算してフレーム
単位の画像データの総和を算出するとともに,フレーム単位の画像データ
の総和を画面の画素数で除算して平均輝度レベルを検出する。
【0248】本発明に用いられる輝度情報の検出は,この方法に限定さ
れるものではなく,平均輝度レベルに対応する値を検出できるものであれ
ば前述したような他の手段を用いてもよい。
【0249】平均輝度レベルに対応する値は,画面の画素数ではなく適
当な固定値で画像データの総和を除算することにより算出してもよい。こ
の場合,固定値として2のべき乗の値を用いれば,ビットシフト演算で除
算を行うことができ,ハードウエアを簡略化できる。」
イ 上記記載及び弁論の全趣旨に照らすと,表示装置において,1フレーム
分の画像データの総和を,固定値で除算して,1フレーム分の画像データ
の総和に基づく値を得ること,及び固定値として2のべき乗の値で除算す
ることにより,ビットシフト演算で除算を行うことができることは,本願
の優先日前において周知の技術(以下「周知技術2」という。)であるこ
とが認められる。
そして,ビットシフト演算で除算を行うことが,最上位ビットを含む上
位のビット値を抽出することと等価な処理であることは,表示装置の技術
分野では技術常識であると解される。
(3) 容易想到性の判断について
上記(1)及び(2)において認定したところに照らすと,引用発明において,
Duty比カーブに基づいて,「データ和/最大値」に対応するDuty比
を求めるに当たり,1フレーム分の画像データの総和に基づく値として,
「データ和(画像データの総和)」を固定値である2のべき乗の値で除算し
た値,すなわち,「データ和(画像データの総和)」に対してビットシフト
演算で除算した値を採用し,この値に対応するDuty比を求めるようにす
ることは,周知技術2に基づいて当業者が容易に想到し得たものであるもの
と認められる。
そして,引用発明に周知技術2を適用し,「データ和」(画像データの総
和)に対してビットシフト演算で除算すると,「データ和」(画像データの総
和)(本願発明における合算データに相当するものと認められる。)の最上位
ビットを含む上位のビット値が抽出されることは当業者においては自明のこ
とであると認められ,さらに,本願発明におけるように「合算データの最上
位ビットを含む少なくとも二つのビット値」を求めるようにすることは,引
用発明に周知技術2を適用する際に,当業者が適宜なし得たものと認められ
る。
以上によれば,相違点3に係る構成は,引用発明に周知技術2を適用する
ことにより,当業者が容易に想到し得たものということができ,審決の判断
に誤りはない。
(4) 原告の主張について
原告は,本願発明では,「合算データの最上位ビットを含む少なくとも二
つのビット値」を「制御データ」としており,合算データが所定値以下の場
合には,合算データは下位ビット(最上位ビットを含む少なくとも二つのビ
ット以外のビット)の値のみによって表され,合算データの値は制御データ
の値(最上位ビットを含む少なくとも二つのビット値)に何ら影響を与える
ことがなく,制御データの値は「0」となるから,本願発明は,暗い画像を
表示する場合に,明暗比を向上させ,コントラストを高めた画像を表示する
ことができる,及び暗い画像を表示する場合に,省電力を達成することがで
きるとの優れた効果を奏するものであり,相違点3に係る構成は,引用発明
に基づいて当業者が容易に想到し得たものではない旨主張する。
しかし,引用発明に周知技術2を適用して,「データ和(画像データの総
和)」に対してビットシフト演算で除算を行い,「データ和(画像データの総
和)」の最上位ビットを含む上位のビット値が抽出されることにより,「デー
タ和(画像データの総和)」が所定値以下の区間ではデータの値が同一とな
り,「合算データが所定値以下の場合には,制御データの値に対応する第1
データを同一とすることができる。」との本願発明と同様の作用効果を奏す
ることとなる。また,本願発明の作用効果が引用発明と周知技術2の組合せ
から予測できないような顕著なものであるともいえない。
しかも,本願の特許請求の範囲の請求項1における「前記一フレーム分の
映像データを合算して合算データを生成し,前記合算データの最上位ビット
を含む少なくとも二つのビット値を制御データとして生成するデータ合算
部」との発明特定事項には,その文言上,一フレーム分のデータを合算して
生成した合算データの全てのビット値を「制御データ」として伝送する場合
が含まれるものと解されるところ,この場合には,「合算データが所定値以
下の場合には,制御データの値に対応する第1データを同一とすることがで
きる。」との作用効果を奏するとはいえない。そうすると,そもそも本願発
明は,必ずしも原告主張の上記の作用効果を奏するとは認められない。
よって,原告の上記主張を採用することはできない。
3 まとめ
以上のとおり,原告主張の各取消事由はいずれも理由がない。また,他に審
決に取り消すべき違法もない。
第6 結論
よって,原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとお
り判決する。

知的財産高等裁判所第3部


裁判長裁判官 設 樂  一


裁判官 西 理 香


裁判官 神 谷 厚 毅
別紙
【図2】


【図5】
【図6】
【図7a】


【図197】

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