平成13(ネ)1432民事訴訟 不正競争
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裁判所 |
東京高等裁判所
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裁判年月日 |
平成13年6月28日 |
事件種別 |
民事 |
法令 |
不正競争
民法709条2回 不正競争防止法2条1項1号2回 不正競争防止法3条1回
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キーワード |
損害賠償4回
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主文 |
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事件の概要 |
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判決文
平成13年(ネ)第1432号 診療所名変更等請求控訴事件(原審・東京地方裁
判所平成12年(ワ)第16998号) 平成13年5月15日口頭弁論終結
判 決
控訴人(原告) A
訴訟代理人弁護士 長 岡 調 治
被控訴人(被告) B
訴訟代理人弁護士 河 野 憲 壯
主 文
本件控訴を棄却する。
控訴人の当審における予備的請求を棄却する。
控訴費用は、控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1 控訴人の求めた判決
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人は、千葉県柏市<以下略>に開設した診療所について、「柏東口皮
膚科・内科」という名称のうち、「柏東口」の部分を変更せよ。
3 被控訴人は、控訴人に対し、金100万円及びこれに対する平成12年6月
21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
1 次の2のとおり、控訴人が当審において予備的請求を追加し、また、3、4
のとおり、当審における当事者の主張の要点を付加するほか、原判決の「第2 事
案の概要」のとおりである。
控訴人は、控訴人の診療所の名称である「柏皮膚科」が周知な営業表示であり、
被控訴人の診療所の名称である「柏東口皮膚科・内科」が、控訴人の営業表示と類
似し、そのため混同が生じていると主張して、被控訴人に対して、不正競争防止法
2条1項1号、3条、4条に基づき、被控訴人の診療所の名称の変更、並びに損害
賠償金100万円及びこれに対する本件訴状送達の日の翌日から民法所定の遅延損
害金の各支払を求めた。
これに対して、原判決は、控訴人の営業表示である「柏皮膚科」と、被控訴人の
営業表示である「柏東口皮膚科・内科」とを対比すると、両者は、全体として、外
観、称呼、観念のいずれにおいても類似しないものと判断して、控訴人の本訴請求
をいずれも棄却した。
2 控訴人の当審における予備的請求
控訴人は、仮に、被控訴人がその開設する診療所に「柏東口皮膚科・内科」との
営業表示を使用する行為が、不正競争行為に当たらないとしても、被控訴人の上記
行為は、不法行為に該当するとして、被控訴人に対して、民法709条に基づく損
害賠償として同額の金員の請求を予備的に追加した。
3 当審における控訴人の主張の要点
(1) 原判決は、控訴人の営業表示と被控訴人の営業表示とを類似しないもの
と判断しているが、その事実認識には誤りがある。すなわち、控訴人は、何人かの
患者から、柏駅の傍らにも分院でも出されたのかと尋ねられており、大変迷惑して
いるのであり、原判決は、この点を無視している。
(2) 原判決は、上記判断の理由として、柏駅周辺には、「柏」の文字を入れ
た診療所が幾つかあることを挙げているが、これらの診療所は、皮膚科を専門とし
ている診療所ではなく、原判決の判断は、この点の配慮を欠いている。
(3) 仮に、不正競争防止法に基づく本訴請求が法解釈上、困難であるなら
ば、控訴人は、被控訴人に対して、予備的に、不法行為に基づき、精神的及び経済
的な損害の賠償を求める。
4 当審における被控訴人の主張の要点
(1) 原判決が説示するとおり、控訴人の営業表示と被控訴人の営業表示とは
類似していないのであるから、それにもかかわらず両者を混同する者がいるとは通
常人の判断からは考えられないし、仮にそのような者がいたとしても、類似性のな
い営業表示の混同については、法の保護の対象ではない。
(2) 被控訴人の営業表示は、「皮膚科・内科」であり、皮膚科専門医の表示
ではなく、控訴人の上記(2)の主張は、前提を欠いている。
(3) 控訴人の上記(3)の不法行為の主張は争う。
第3 当裁判所の判断
1 当裁判所も、控訴人の営業表示である「柏皮膚科」と被控訴人の営業表示で
ある「柏東口皮膚科・内科」とは類似しておらず、被控訴人がその開設する診療所
に「柏東口皮膚科・内科」との名称を付する行為は、不正競争防止法2条1項1号
所定の不正競争に該当しないと判断するが、その理由は、原判決が「第3 争点に
対する判断」として説示するとおりである。
控訴人の当審における主張及び立証は、いずれも上記判断を左右するに足りる
ものではなく、控訴人の被控訴人に対する不正競争防止法3条及び4条に基づく本
訴請求は理由がない。
2 控訴人は、当審における予備的請求として、民法709条の不法行為に基づ
く損害賠償を請求するが、上記のとおり、被控訴人がその開設する診療所に「柏東
口皮膚科・内科」との名称を付する行為は、控訴人との関係において、不正な競争
行為には該当しないのであり、そのほか、被控訴人の上記行為が不法行為を構成す
る違法な行為であることを首肯するに足りる主張及び立証はない。
したがって、控訴人の被控訴人に対する不法行為に基づく損害賠償請求も理由が
ない。
第4 結論
以上によれば、原判決は相当であり、本件控訴は理由がなく、控訴人の当審にお
ける予備的請求も理由がないから、いずれも棄却することとして、主文のとおり判
決する。
東京高等裁判所第18民事部
裁判長裁判官 永 井 紀 昭
裁判官 古 城 春 実
裁判官 橋 本 英 史
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