平成24(ワ)10782特許発明実施料支払請求事件
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裁判所 |
請求棄却 東京地方裁判所
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裁判年月日 |
平成25年10月17日 |
事件種別 |
民事 |
当事者 |
被告株式会社アートネイチャー古城春実 原告株式会社ライツフォル藤沢彩乃
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対象物 |
かつらの製造方法 |
法令 |
特許権
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キーワード |
実施15回 特許権6回 許諾2回
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主文 |
原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。 |
事件の概要 |
本件は,かつらの製造方法に関する特許権を有する原告が,通常実施権を許
諾した被告に対し,かつら●(省略)●台に相当する実施料合計●(省略)●
円の未払があるとして,そのうちの1000万円及びこれに対する訴状送達の
日の翌日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支
払を求める事案である。 |
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判決文
平成25年10月17日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
平成24年(ワ)第10782号 特許発明実施料支払請求事件
口頭弁論の終結の日 平成25年8月30日
判 決
東京都新宿区<以下略>
原 告 株 式 会 社 ラ イ ツ フ ォ ル
同訴訟代理人弁護士 長 坂 省
藤 沢 彩 乃
中 城 由 貴
東京都渋谷区<以下略>
被 告 株式会社アートネイチャー
同訴訟代理人弁護士 相 澤 光 江
古 城 春 実
衛 藤 佳 樹
主 文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
被告は,原告に対し,1000万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日か
ら支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
本件は,かつらの製造方法に関する特許権を有する原告が,通常実施権を許
諾した被告に対し,かつら●(省略)●台に相当する実施料合計●(省略)●
円の未払があるとして,そのうちの1000万円及びこれに対する訴状送達の
日の翌日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支
払を求める事案である。
1 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに各項末尾掲記の証拠及び弁論の
全趣旨により認められる事実)
(1) 原告は,かつら及びヘアーアクセサリーの製造及び販売等を目的とする株
式会社であり,被告は,毛髪製品の製造及び販売等を目的とする株式会社で
ある。
(2) 本件特許権
原告は,発明の名称を「かつらの製造方法」とする特許権(特許番号第4
387986号。以下「本件特許権」という。)の特許権者であり,その特許
出願の願書に添付された特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおりで
ある(以下,この請求項1に係る発明を「本件発明」という。 。
)
「第1かつらベースに毛髪を植毛し,該第1かつらベース上の第2かつらベ
ースに前記毛髪を挿通させるかつらの製造方法であって,
前記毛髪をかつら装着時の内側方向に向けて前記第1かつらベースに植毛
し,
前記第1かつらベースの植毛位置の法線に対して前記毛髪が前記第1かつ
らベース及び前記第2かつらベース間で傾くように,前記毛髪の傾き角度
を少なくとも分け目部で調整して前記毛髪を前記第1かつらベース及び前
記第2かつらベースを通してかつら装着時の外側方向に引き抜く,
ことを特徴とするかつらの製造方法。」
(甲3)
(3) 原告は,平成23年7月15日,被告に対し,本件特許権について通常
実施権を許諾した。これにつき作成された合意書(甲4)には,原告を甲と
し,被告を乙として,4条(実施料)に次の記載がある。
●(省略)●
(4) 被告は,原告に対し,平成23年8月31日に●(省略)●円を支払い,
さらに,次のとおり,四半期末日締めで集計した報告書を提出して,同年9
月30日に●(省略)●円,同年12月29日に●(省略)●円,平成24
年3月30日に●(省略)●円をそれぞれ支払った。
ア 平成23年第1四半期(平成23年4月1日から同年6月30日まで)
販売数量 ●(省略)●台
販売価格 ●(省略)●円
実 施 料 ●(省略)●円
イ 平成23年第2四半期(平成23年7月1日から同年9月30日まで)
販売数量 ●(省略)●台
販売価格 ●(省略)●円
実 施 料 ●(省略)●円
ウ 平成23年第3四半期(平成23年10月1日から同年12月31日ま
で)
販売数量 ●(省略)●台
販売価格 ●(省略)●円
実 施 料 ●(省略)●円
2 争点及びこれについての当事者の主張
争点は,実施料の未払があるか否かであり,具体的には,被告が,原告に報
告したもののほかに本件発明を実施してオーダーメイドかつらを製造,販売し
たか否かである。
(1) 原告
被告は,平成23年第2四半期,第3四半期において,原告に報告したも
ののほかに,「HAIR FOR LIFE FRONTIER」(ヘア・フ
ォーライフ フロンティア)「SILKY
, FRONTIER」
(シルキーフ
ロンティア) 「PRO
, STAGE」(プロステージ) 「ART
, Sera」
(アートセラ)及びその他エアスキン構造を用いた一切のオーダーメイドか
つら(以下「本件かつら」という。)を少なくとも2000台ずつ製造,販売
した。これらは,いずれもエアスキン構造を用いたものであるが,エアスキ
ン構造は,かつら装着時に内側に位置するかつらベース(以下「内側ベース」
という。)に毛髪を植毛し,かつら装着時に外側に位置するかつらベース(以
下「外側ベース」という。)に毛髪を挿通させ,内側ベースに毛髪を装着時の
内側方向に向けて植毛し,内側ベースに植毛された毛髪が,外側ベースと内
側ベースととの間で傾くように,前記毛髪の角度を調整し,かつら装着時の
外側に引き抜いて製造するのであって,本件発明を実施しなければ,これを
製造することはできない。
(2) 被告
被告は,平成23年6月21日,名称を「かつらの製造方法」とする発明
について特許出願し,この特許出願は平成25年1月7日に出願公開された
が,被告は,平成23年5月1日以降,上記発明を実施してオーダーメイド
かつらを製造しているのであって,本件発明は実施していない。
第3 当裁判所の判断
1 被告が平成23年第2四半期,第3四半期において原告に報告したもののほ
かに本件かつらを製造,販売したことを認めるに足りる証拠はない。そして,
この点を措くとしても,被告が,平成23年5月1日以降,被告のオーダーメ
イドかつらにおいて毛髪を内側ベースに植毛する際に毛髪を装着時の内側方
向に向けて植毛していたことを認めるに足りる証拠はない。
2 原告は,エアスキン構造は,自毛が生えているような自然なつむじ,髪の毛
の立ち感が自然な分け目等を特徴としているところ,これを実現するためには,
毛髪をかつら装着時の内側方向に向けて内側ベースに植毛する必要があるか
ら,本件かつらは,当然に毛髪をかつら装着時の内側方向に向けて内側ベース
に植毛しているといえると主張する。確かに,証拠(甲8,10)によれば被
告の内部資料(甲8)には,エアスキン構造を用いたかつらについて,
「ヘア・
フォーライフの生え際の技術を活かし,分け目,つむじは,生えているような
毛立ちのよさを追求しました。 ,
」 「生えているような毛立ちのよさを追求しま
した。自然さを実現したコンセプト商品」 「分け目,つむじ部分は,
, 「エアス
キン」を採用し,軽く通気性に優れており生えているような自然さを演出しま
す。」との記載があり,
「ART Sera」
(アートセラ)のパンフレット(甲
10)には,「下層ベースに植毛した人工毛を上層ベースへ引き抜く二層構造
により,地肌から生えているような外観を実現。 ,
」 「渦を巻くような植毛技術
でいつでも自然な毛流れをキープ」との記載があることが認められるが,エア
スキン構造を用いたかつらにこのような特徴があるとしても,これを実現する
ために毛髪をかつら装着時の内側方向に向けて内側ベースに植毛する必要が
あることについては,何ら立証がない。そうであるから,原告の上記主張は,
採用することができない。
また,原告は,被告が製造して平成24年10月31日に販売したオーダー
メイドかつら「ヌードファイン」は,本件発明に係る原告の製品と同一である
から,本件発明の方法により製造したものと推定されると主張するが,このこ
とを認めるに足りる証拠はないから,原告の上記主張は,これを採用すること
はできない。
3 したがって,被告が,原告に報告したもののほかに本件発明を実施してオー
ダーメイドかつらを製造,販売したことは認められないから,被告が原告に支
払うべき実施料の未払はない。
4 よって,原告の請求は,理由がないから,これを棄却することとして,主文
のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 高 野 輝 久
裁判官 三 井 大 有
裁判官 藤 田 壮
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