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平成12(行ケ)161行政訴訟 商標権

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裁判所 東京高等裁判所
裁判年月日 平成13年2月28日
事件種別 民事
法令 商標権
商標法50条1項2回
商標法50条1回
商標法50条2項1回
民事訴訟法61条1回
キーワード 審決15回
許諾3回
商標権2回
主文
事件の概要

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判決文

平成12年(行ケ)第161号 審決取消請求事件(平成13年1月29日口頭弁
論終結)
          判         決
       原      告   A
       訴訟代理人弁護士   及 川 昭 二
       被      告   株式会社太郎庵
       代表者代表取締役   B
       訴訟代理人弁理士   米 屋 武 志
          主         文
      原告の請求を棄却する。
      訴訟費用は原告の負担とする。
          事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
 1 原告
   特許庁が平成10年審判第30066号事件について、平成12年3月28
日にした審決を取り消す。
   訴訟費用は被告の負担とする。
 2 被告
   主文と同旨
第2 当事者間に争いのない事実
 1 特許庁における手続の経緯
   原告は、別紙表示の構成より成り、旧商標法施行規則(大正10年農商務省
令第36号)15条所定の商品類別による第43類「菓子の類」を指定商品とする
登録第0524308号商標(昭和31年1月4日登録出願、昭和33年2月19
日出願公告、同年7月24日設定登録、昭和54年4月18日、昭和63年6月2
2日及び平成10年3月17日各存続期間の更新登録、以下「本件商標」とい
う。)の商標権者である。
   被告は、平成10年1月20日、原告を審判被請求人として、本件商標につ
き、指定商品中の「菓子」について不使用に基づく登録取消しの審判の請求をし、
同年2月18日、その予告登録がされた。
   特許庁は、同請求を平成10年審判第30066号事件として審理した上、
平成12年3月28日、「登録第0524308号商標の指定商品中『菓子』につ
いては、その登録は取り消す。」との審決をし、その謄本は同年4月17日に原告
に送達された。
 2 審決の理由
   審決は、別添審決謄本写し記載のとおり、本件商標につき被請求人(注、原
告)が株式会社会津葵(以下「会津葵」という。)に対し通常使用権を許諾してい
たことを認めることができるにしても、本件商標は、予告登録前3年以内に日本国
内において、審判請求に係る商品「菓子」について使用をされていなかったものと
いわざるを得ないから、本件商標の登録は、商標法50条の規定により、指定商品
中の「菓子」について取り消すべきものとした。
第3 原告主張の審決取消事由
 1 審決は、事実誤認により本件商標が予告登録前3年以内に日本国内において
商品「菓子」について使用をされていなかった旨誤った判断をしたものであるから
(取消事由)、違法として取り消されるべきである。
 2 取消事由
   審決は、「被請求人(注、原告)は株式会社会津葵の代表取締役であり、同
社の目的が和菓子の製造販売等であること、そして、・・・被請求人は株式会社会
津葵に通常使用権を許諾していたことを認めることができるにしても、・・・乙第
3号証(注、本訴甲第10号証)の写真によれば、シルクロード文明館の前に
『會』の文字が染め抜かれたのぼりが立てられていることを認めることができる
が、本件商標は、のぼりを描いた図形商標と認められるものであるから、のぼり自
体が本件商標と同一の商標とはいえないとみるのが相当である。仮に、本件商標と
同一のものであるとしても、該のぼりは『会津祭り』の際に立てられたものであっ
て、取消し請求に係る指定商品である『菓子』との関連を示すものとは認められな
いから、この使用態様をもって『菓子』についての広告宣伝をしているものとは認
め難く、乙第3号証をもってしては、本件商標を『菓子』について使用していると
はいえない。」(審決謄本3頁14行目~28行目)と認定判断した。
   しかしながら、本件商標に係る通常使用権者である会津葵は、本件審判請求
に係る予告登録前3年以内に、その各店舗の店頭に本件商標を使用したのぼりを立
てて、指定商品である菓子の広告宣伝をしており、上記甲第10号証の写真は、特
に、会津城入口に位置するシルクロード文明館店舗の西正面の目立つ場所におい
て、本件商標を使用したのぼりを立てている状況を撮影したものである。そして、
その撮影時が会津まつりの際であっても、祭りは菓子販売の広告行為を行うのに適
しており、また、同のぼりは会津まつりの日以外の日にも立てているものである。
   したがって、審決の上記認定判断は誤りであり、通常使用権者の会津葵が指
定商品中の「菓子」につき本件商標の使用をしている事実が認められるべきであ
る。
第4 被告の反論
 1 審決の認定判断は正当であり、原告主張の取消事由は理由がない。
 2 原告は、甲第10号証の写真に写されているシルクロード文明館店舗西正面
に立てられたのぼりが、菓子販売の広告行為としての本件商標の使用であると主張
する。
   しかしながら、本件商標は「會」の文字と「のぼり」の図形から成る平面商
標であるのに対し、当該写真に写されたものは、「會」の文字が染め抜かれたのぼ
りであり、こののぼりと上記構成から成る本件商標とは同一ではない。
   仮に、上記のぼり自体が本件商標と同一であるといえるとしても、そののぼ
りと指定商品中の「菓子」との間に関連を認めることができない。
   したがって、これと同旨の審決の認定判断に何ら誤りはない。
第5 当裁判所の判断
 1 取消事由について
  (1) 甲第15号証の番号(1)~(5)の写真5枚には、長い縦棒とその上端よりや
や下側でこれと一端部付近をほぼ垂直に交差させて固定した短い横棒に、縦長長方
形の白色布地を、その上部と一側部の各4か所で結び付けて固定し、かつ、その白
色布地に黒色で大きく の字を染め抜いて成る「のぼり」(以下「本件のぼり」
という。)が、「シルクロード文明館」との表示のある建物の入口付近に立てられ
ている状況について、当該建物前の道路を進行する武者行列とともに写されている
ところ、会津若松観光物産協会事務局長作成の証明書(甲第14号証)及び弁論の
全趣旨によれば、上記5枚の写真は、いずれも本件審判請求に係る予告登録前3年
以内の日である平成8年9月23日に会津若松市において行われた「会津まつり」
の際に撮影されたものであることが認められる。
    他方、原告の陳述書(甲第18号証)には、原告は本件商標に係る商標権
につき会津葵に通常使用権を許諾している旨、上記「シルクロード文明館」との表
示のある建物は会津葵の菓子販売店舗である旨、会津葵は、平成8年9月23日の
「会津まつり」の際だけでなく、本件審判請求に係る予告登録の日である平成10
年2月18日から遡って3年間は、普段から本件のぼりを上記「シルクロード文明
館」店舗の前に立てていた旨、甲第10号証の写真は、平成9年に行われた会津ま
つりの際に撮影された写真である旨(なお、甲第10号証にも撮影年月日として
「平成9年9月23日」との記載がある。)が記載されている。
    しかしながら、甲第10号証の写真は、上記のとおり平成8年9月23日
の撮影と認められる甲第15号証の番号(2)の写真と明らかに同一の写真であると認
められ、したがって、上記原告の陳述書(甲第18号証)の記載のうち、甲第10
号証の写真が平成9年に行われた会津まつりの際に撮影された写真であるとする部
分は信用することができない。また、そうすると、上記陳述書記載のその余の部
分、特に、会津葵が予告登録の日から遡って3年間は普段から本件のぼりを「シル
クロード文明館」店舗の前に立てていた旨の部分に関しても、これを裏付けるに足
りる的確な証拠の提出がない以上、直ちに採用することができない。すなわち、会
津葵が本件のぼりを「シルクロード文明館」店舗の前に立てたとの事実は、本件証
拠上、平成8年9月23日の会津まつりの際にこれを立てたという限度で認められ
るにすぎない。
  (2) 本件において、通常使用権者の会津葵による本件商標の使用の事実を主張
する原告としては、本件審判請求に係る予告登録前3年以内に、会津葵が請求に係
る指定商品「菓子」について本件商標の使用をしていることを証明しなければなら
ない(商標法50条2項)。そして、会津葵が本件のぼりを「シルクロード文明
館」店舗の前に立てたとの事実が、「菓子」に関する広告に本件商標を付して展示
する行為に当たるものとすれば、それは、指定商品「菓子」について本件商標の使
用をする行為であるということができる(同法2条3項7号)。
    そこで、本件のぼりを立てることが、「菓子」に関する広告に本件商標
(なお、同法50条1項括弧書き所定の社会通念上同一と認められる商標を含
む。)を付して展示する行為に当たるか否かについて検討する。
    まず、前示認定に係る本件のぼりが全体として立体的形状をしていること
は明らかであるのに対し、本件商標は、のぼりを表した図形中に の文字を配し
た構成態様の、図形と文字とから成る平面商標であるから、本件のぼりが、商品に
関する広告を本件商標の形状とした場合(同法2条4項)に当たるものということ
はできない。
    また、前示認定に係る本件のぼりを、交差させた縦棒と横棒に縦長長方形
の白色布地を固定して成る部分( の文字を除く部分)が商標を付すための広告
媒体であり、上記白色布地に染め抜かれた の文字の部分がそれに付された平面
商標としてとらえることができるとしても、本件のぼりに付された商標は、 の
文字のみから成る構成態様であるのに対し、本件商標は、上記のとおり、のぼりを
表した図形中に の文字を配した構成態様の、図形と文字とから成る商標であっ
て、両者は、商標法50条1項括弧書き中に例示された各場合に当たらないことは
もとより、社会通念上同一と認められる商標にも当たらないといわざるを得ない。
    そうすると、本件のぼり自体が、広告に本件商標(商標法50条1項括弧
書き所定の社会通念上同一と認められる商標を含む。)を付したものに当たるとい
うことはできない。
    のみならず、上記(1)のとおり、会津葵は、本件のぼりを平成8年9月23
日の会津まつりの際に「シルクロード文明館」店舗の前に立てたことが認められる
にすぎないところ、このことに、前示認定に係る本件のぼりの態様を併せ考えれ
ば、本件のぼりを立てたのが会津葵の菓子店舗前であるとはいえ、本件のぼりと請
求に係る指定商品「菓子」との間に関連性が存在することを認めることができない
から、本件のぼりを立てたことが、「菓子」に関する広告に商標を付して展示した
ことに当たるということもできない。
    したがって、会津葵が本件のぼりを「シルクロード文明館」店舗の前に立
てたとの上記認定事実は、「菓子」に関する広告に本件商標を付して展示する行為
に当たるとはいえないから、指定商品「菓子」について本件商標の使用をする行為
であるということはできない。
  (3) なお、差出人名義を「菓匠 会津葵 A」とする菓子の広告を兼ねた暑中
見舞いはがき(甲第16号証)には、本件商標と社会通念上同一と認められる商標
が表わされているところ、会津葵又は原告がこの暑中見舞いはがきを相当数配布
し、それが指定商品の「菓子」に関する広告に本件商標を付して頒布する行為とし
て、本件商標の使用をする行為に当たるとしても、上記暑中見舞いはがきに差出日
付として「一九六一年盛夏」との記載があることに照らして、その配布時期は昭和
36年夏ころと推認されるから、本件審判請求に係る予告登録の日(平成10年2
月18日)前3年以内における本件商標の使用には当たらない。
    また、平成10年4月24日付け福島民友(甲第17号証)には、本件商
標と社会通念上同一と認められる商標を付した会津葵の広告が掲載されているが、
これが本件審判請求に係る予告登録の日(同年2月18日)前3年以内における本
件商標の使用に当たらないことも明白である。
    他に、本件審判請求に係る予告登録前3年以内に、原告又は会津葵若しく
はその他の使用権者が、指定商品「菓子」について本件商標の使用をしたことを証
明するに足りる的確な証拠はない。
 2 以上によれば、原告主張の審決取消事由は理由がなく、他に審決を取り消す
べき瑕疵は見当たらない。
   よって、原告の請求を棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴
訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。
  東京高等裁判所第13民事部
    裁判長裁判官  篠   原   勝   美
    裁判官  石   原   直   樹
    裁判官   宮   坂   昌   利
別紙 本件商標

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