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平成11(ワ)24980民事訴訟 不正競争

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裁判所 請求棄却 東京地方裁判所
裁判年月日 平成12年12月26日
事件種別 民事
法令 不正競争
キーワード 差止2回
許諾1回
損害賠償1回
主文 一 原告の請求をいずれも棄却する。二 訴訟費用は原告の負担とする。
事件の概要

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判決文

平成一一年(ワ)第二四九八〇号 不正競争行為差止請求事件 
(口頭弁論終結日 平成一二年一〇月一七日)
判決
   原 告      株式会社富士計器
右代表者代表取締役 【A】
右訴訟代理人弁護士 山 口 紀 洋
同 鶴 見 俊 男
 被告    株式会社総通
右代表者代表取締役 【B】
被       告 有限会社ウイズダム
右代表者代表取締役 【C】
被       告 有限会社バニスター
右代表者代表取締役 【D】
被       告 エフアイ株式会社
右代表者代表取締役 【E】
右四名訴訟代理人弁護士   飯 田 直 久
主 文
一 原告の請求をいずれも棄却する。
二 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第一 請求
一 被告らは、別紙被告商品目録記載の磁気活水器を製造、譲渡、販売又は販売
のための広告をしてはならない。
二 被告らは、別紙被告商品目録記載の磁気活水器を廃棄せよ。
三 被告らは、原告に対し、金一〇〇〇万円及びこれに対する株式会社総通、有
限会社バニスター及びエフアイ株式会社については平成一一年一一月一三日から、
有限会社ウイズダムについては平成一二年一月二六日からそれぞれ支払済みまで年
六分の割合による金員を支払え。
第二 事案の概要
  本件は、被告らが製造販売している別紙被告商品目録記載の磁気活水器の形
態が、原告の製造販売している磁気活水器の形態を模倣したもので、被告らの行為
は不正競争防止法二条一項三号に定める不正競争行為に該当すると主張して、原告
が被告らに対し、その販売等の差止め、廃棄及び損害賠償の支払を求めた事案であ
る。
一 争いのない事実等(認定事実には証拠を掲げる。)
1 原告は、平成一〇年一月六日から、別紙原告商品目録記載の磁気活水器
(以下「原告商品」という。)を「蝶々」という名称で製造販売している。
2 原告商品は、水の活性化作用を行うステンレス外包部分(別紙原告商品目
録添付図面(1))、取付具(同目録添付図面(2))及びこれを締める四つのナットか
ら構成されている(甲第一号証、検甲第一号証の一ないし三)。
3 被告株式会社総通、被告有限会社バニスター及び被告エフアイ株式会社
は、平成一一年二月ころから、共同して別紙被告商品目録記載の磁気活水器(以下
「被告商品」という。)を「天使の翼」という名称で製造販売及び販売のための広
告をしている。被告有限会社ウイズダムは、被告商品の販売に際して、同社の商号
を使用することを被告エフアイ株式会社に許諾した(弁論の全趣旨)。
4 被告商品は、水の活性化作用を行うステンレス外包部分(別紙被告商品目
録添付図面(1))、取付具(同目録添付図面(2))及びこれを締める四つのナットか
ら構成されている(甲第一号証、検甲第二号証の一ないし三)。
5 原告商品と被告商品は、ステンレス外包部分の形状及び材質が同一であり
(当事者間に争いのない事実)、四つのナットについても、口径、形状及び材質が
同一である(検甲第一、第二の各一ないし三)。
二 争点
1 被告商品の形態が、原告商品の形態を模倣したものであるか
2 損害の発生及び額
三 争点に関する当事者の主張
1 争点1について
【原告の主張】
(一) 原告商品と被告商品は、主要部分であるステンレス外包部分が同一
で、付属的な部分である取付具の形状がわずかに異なるのみであり、商品全体の形
態としては酷似している。殊に、双方の商品を蛇口に取り付けて使用している状態
では、その形態の差異はほとんど認識できない。
(二) 原告商品の取付具の特徴は次のとおりである。
① 全体に曲線で構成され、中央上部に頭をイメージした凸部があり、左
右両肩部が曲線で張り出し、下部も左右に燕尾服様に分かれていること
② 取付具の中央部分に、片翼二本ずつ、合計四本の斜めの孔が平行に設
けられていること
  ③ 幅一〇㎝以内、高さ七ないし八㎝のステンレスの板であること
一方、被告商品の取付具は、前記①ないし③の特徴をすべて有してお
り、ステンレスの金属光沢や厚みまで原告商品と同一である。
したがって、原告商品と被告商品の取付具の類似性は顕著である。
(三) 被告らは、原告商品を熟知した上で、付属的な部分にすぎない取付具
の形をわずかに変えるだけで被告商品の形態を決定しており、模倣性は明らかであ
る。
【被告らの主張】
(一) 不正競争防止法二条一項三号にいう「模倣」とは、双方の商品の「形
態」が同一であるか、実質的に同一といえる程に酷似していることを意味する。ま
た、形態が同一又は実質的に同一かどうかの判断は、商品の一部ではなく全体で判
断すべきである。
(二) 原告商品と被告商品の形態上の特徴は、商品名にもなっているとお
り、取付具の形状にある。右取付具は、商品の中央部分に位置し、商品全体を覆う
ほどの大きさがあって非常に目立つのに対し、ステンレス外包部分は隠れて見えな
いのであるから、形態の同一性の判断に当たっては取付具の形状こそが重要であ
る。
この取付具の形状は、原告商品では「蝶々」をかたちどったものである
のに対し、被告商品では「翼」をかたちどったものであって、全く異なる。
また、水道管を挟み込む形の商品で、取付具を使用して取り付ける場合
に、取付具に水道管の太さに対応してボルト部分をスライドできるように斜めの孔
を平行に設けることは、機能から必然的に生じる形態である。
(三) ステンレス外包部分は、水道管を挟み込む形の他の同種商品と区別の
つくような特別の形状ではなく、デザイン上の工夫もされていない単なるステンレ
ス製の箱であるから、「他人の商品と同種の商品が通常有する形態」というべきで
ある。
原告としても、右ステンレス外包部分の形状の開発に資金と労力を投下
したとは考えられない。
(四) そもそも被告商品は、被告有限会社バニスターが原告からOEM契約
に基づいて供給を受けるに際して、原告商品と識別できるような新たなデザインを
行い、そのデザインについて原告の了解を得たものである。
(五) したがって、被告商品の形態は、全体としてみると、原告商品の形態
と同一又は実質的に同一ではないから、原告商品の形態を模倣したものとはいえな
い。
2 争点2について
【原告の主張】
(一) 原告は、被告らの不正競争行為により、次の損害を被った。
(1) 逸失利益  合計四〇〇〇万円
    原告は、被告らによる被告商品の販売行為によって、被告らが販売を
開始した平成一一年二月から同年九月までの八か月間に、一か月に一〇〇〇個以上
の割合で、原告商品の売上げが減少した。
 原告商品一個当たりの利益額は五〇〇〇円以上であるから、原告が被
告らの販売行為によって被った損害額は、一か月当たり五〇〇万円、合計四〇〇〇
万円を下らない。
 (2) 信用毀損による損害 一〇〇〇万円
(3) 調査費用 五〇〇万円
(4) 弁護士費用 三〇〇万円
(二) 原告は被告らに対し、前記損害額合計五八〇〇万円の内金一〇〇〇万
円及びこれに対する株式会社総通、有限会社バニスター及びエフアイ株式会社につ
いては平成一一年一一月一三日から、有限会社ウイズダムについては平成一二年一
月二六日から支払済みまで商事法定利率である年六分の割合による遅延損害金の支
払を求める。
【被告らの主張】
原告の主張を争う。
第三 当裁判所の判断
一 争点1について
1 不正競争防止法二条一項三号にいう「模倣」とは、他人の商品の形態をま
ねて、その商品と同一又は実質的に同一の形態の商品を作り出すことをいい、双方
の商品を対比して観察したときに、形態が同一であるか又は実質的に同一といえる
程に酷似していることを要する。すなわち、同号は、他人の商品の形態をそのまま
模倣するような行為を禁止することによって商品開発のために資金や労力を投下し
た者を保護する一方で、模倣一般を禁止したのでは、自由な競争や産業の健全な発
展を阻害することにもなりかねないため、他人が資本や労力を投下した成果を他に
選択肢があるにもかかわらず、ことさら模倣する、いわゆるデッドコピーに限って
不正競争行為としたものと解される。
2 原告商品と被告商品が、全く同一でないことは明らかであるから、原告商
品と被告商品が実質的に同一といえる程に酷似しているか否かについて以下検討す
る。
(一) 前記第二の一の事実(争いのない事実等)に証拠(甲第一、第四、第
六、第一〇、第一六号証、乙第一号証、検甲第一号証の一ないし三)を総合する
と、原告商品の形態は以下のとおりであると認められる。
(1) 原告商品は、水道管又は蛇口(以下「蛇口等」という。)を挟み込む
ステンレス外包部分(別紙原告商品目録添付図面(1))並びに二つの外包部分を連結
する取付具(同目録添付図面(2))及びこれをねじ留めする四つのナットから構成さ
れている。
(2) ステンレス外包部分は、角部分を面取りしたステンレス製の略直方体
(六・六㎝×六・六㎝×約二・四㎝)の箱体二個からなり、各箱体の一方の側面か
らそれぞれ二本の雄ねじが出ており、二個の箱体はねじ留め位置によって可変的な
間隔を隔てて対峙している。
(3) 取付具は、蝶々をかたちどった曲線で外縁部が構成された最長縦六・
五㎝、横一〇㎝、厚さ約三㎜からなるステンレス製の板材である。中央上部に頭様
の半円状の凸部があり、中央下部は大きく凹んでいる。両肩部は大きく張り出して
横幅が最長となり、左右対称の羽根部分は下端から約三分の一の辺りで一旦括れ、
下部は上部の羽根より膨らみが小さくなっている。
左右の羽根部分には、それぞれ二本ずつ、合計四本の平行な長穴が斜
めに設けられている。
(4) 外包部分の箱体から突出する雄ねじは、取付具の裏面側から前記長穴
部を貫通させ、取付具の表面側から四個の同一口径のナット(雌ねじ)でねじ留め
するようになっている。
(二) 前記第二の一の事実(争いのない事実等)に証拠(甲第一、第七、第
九、第一三ないし第一五、第一七号証、乙第一号証、検甲第二号証の一ないし三)
を総合すると、被告商品の形態は以下のとおりであると認められる。
(1) 被告商品は、蛇口等を挟み込むステンレス外包部分(別紙被告商品目
録添付図面(1))並びに二つの外包部分を連結する取付具(同目録添付図面(2))及
びこれをねじ留めする四つのナットから構成されている。
(2) ステンレス外包部分は、角部分を面取りしたステンレス製の略直方体
(六・六㎝×六・六㎝×約二・四㎝)の箱体二個からなり、各箱体の一方の側面か
らそれぞれ二本の雄ねじが出ており、二個の箱体はねじ留め位置によって可変的な
間隔を隔てて対峙している。
(3) 取付具は、天使の翼をかたちどった曲線で外縁部が構成された最長縦
六・四㎝、横八・八㎝、厚さ約二㎜からなるステンレス製の板材である。中央上部
に頭様のなだらかな凸部があり、中央下部は大きく凹んでいる。両肩部は若干張り
出しているが、左右対称の翼部分は、括れることなく凹み気味に下に向かって広が
り、下端で横幅が最長になり、下部が波状に左右それぞれ三つの山を形作ってい
る。
左右の翼部分には、それぞれ二本ずつ、合計四本の平行な長穴が斜め
に設けられている。
(4) 外包部分の箱体から突出する雄ねじは、取付具の裏面側から前記長穴
部を貫通させ、取付具の表面側から四個の同一口径のナット(雌ねじ)でねじ留め
するようになっている。
(三) 右(一)、(二)認定の事実に前記第二の一の事実(争いのない事実等)
を総合すると、原告商品と被告商品について次のようにいうことができる。 
 (1) 原告商品と被告商品とは、ステンレス外包部分、取付具及び四つのナ
ットから構成されていること、ステンレス外包部分の形状、取付具の長穴部を通じ
て四個の同一口径のナット(雌ねじ)でねじ留めすることがいずれも共通してい
る。
(2) また、取付具についても、外縁部が曲線で構成されたステンレス製の
板材であること、中央上部に凸部があり、中央下部は大きく凹んでいること、羽根
ないしは翼部分にそれぞれ二本ずつ、合計四本の平行な長穴が斜めに設けられてい
る限度においては共通している。
(3) しかし、取付具の中央上部の凸部の形状、羽根ないし翼部分の形状は
異なっており、特に、原告商品では蝶の羽根様に両肩部が大きく張り出して一旦括
れ、下部は上部の羽根より膨らみが小さくなっているのに対し、被告商品では翼様
に両肩部の張り出しはさほど大きくなく、括れることなく凹み気味に下に向かって
広がり、下部が波状に三つの山を形作っていることから、取付具全体の形状が与え
る印象は相当に異なったものとなっている。
(四) 証拠(甲第一、第四、第六、第七、第九ないし第一七号証、乙第一号
証、検甲第一及び第二号証の各一ないし三)と弁論の全趣旨によると、強力な磁石
等を通すことにより、水道水を磁気等で活性化する活水器は、原告商品及び被告商
品以外にも存するが、原告商品及び被告商品以外の商品は、磁石等を内包する部分
自体を蛇口等を覆うようにして取付具を用いずに取り付けるものであって、磁石等
を内包する部分を取付具を介して蛇口等に固定する商品は、原告商品及び被告商品
のみであることが認められるから、原告商品及び被告商品にみられる、磁石等を内
包する部分を取付具を介して蛇口等に固定する形態は、他に似たもののない形態で
あるということができ、原告商品と被告商品は、そのような形態が共通するものと
認められる。
  しかしながら、原告商品及び被告商品における取付具は、いずれも商品
の中央部分に位置し、ステンレス外包部分を覆うほどの大きさがあるうえ、右
(一)、(二)で認定したとおり、蝶々又は天使の翼をかたちどった特徴的な形をして
いる(これに対し、ステンレス外包部分は、ステンレス製の略直方体の箱体であっ
て、それ自体は特徴的な形態ということができない)のであるから、取付具の形状
は、看者に強い印象を与えるということができるところ、右認定のとおり、原告商
品と被告商品では、取付具全体の形状が与える印象は相当に異なったものとなって
いる。
 そうすると、原告商品と被告商品は、磁石等を内包する部分を取付具を
介して蛇口等に固定する形態が共通であるものの、取付具全体の形状が与える印象
が相当に異なったものである以上、実質的に同一といえる程に酷似しているとまで
は認められない。
3 よって、その余の点について検討するまでもなく、被告商品は、原告商品
の形態を模倣したものと認めることはできない。
二 以上の次第で、原告の本訴請求は、いずれも理由がないから、これらを棄却
することとし、主文のとおり判決する。
   東京地方裁判所民事第四七部
   裁判長裁判官 森  義 之
   裁判官 岡 口 基 一
   裁判官 男 澤 聡 子
別紙
          被 告 商 品 目 録
 一 商   品  水道蛇口取付式活水器
二 商 品 名  天使の翼
三 形   態  添付図面(1)及び(2)記載のとおり
四 寸   法  一〇〇㎜×七四・五㎜×七八㎜
五 重   量 約四八〇グラム
六 本体材質 ステンレス製
七 活水化方法  不明
添付 図面(1) 図面(2)
別紙
          原 告 商 品 目 録
 一 商   品  水道蛇口取付式活水器
二 商 品 名  蝶々
三 形   態  添付図面(1)及び(2)記載のとおり
四 寸   法  一〇〇㎜×七四・五㎜×七八㎜
五 重   量 約五六〇グラム
六 本体材質 ステンレス製
七 活水化方法  磁気と遠赤外線の相乗効果による水分子自体の活性化
添付 図面(1)図面(2)

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