平成12(行ケ)213行政訴訟 特許権
判決文PDF
▶ 最新の判決一覧に戻る
裁判所 |
東京高等裁判所
|
裁判年月日 |
平成12年12月26日 |
事件種別 |
民事 |
法令 |
特許権
民事訴訟法62条1回 特許法29条1回 特許法29条1項3号1回
|
キーワード |
審決6回 刊行物1回 特許権1回 進歩性1回
|
主文 |
特許庁が平成10年異議第75818号事件について平成12年4月26日にした決定を取り消す。 訴訟費用は原告の負担とする。 |
事件の概要 |
|
▶ 前の判決 ▶ 次の判決 ▶ 特許権に関する裁判例
本サービスは判決文を自動処理して掲載しており、完全な正確性を保証するものではありません。正式な情報は裁判所公表の判決文(本ページ右上の[判決文PDF])を必ずご確認ください。
判決文
平成12年(行ケ)第213号 特許取消決定取消請求事件
平成12年12月26日口頭弁論終結
判 決
原 告 株式会社河合楽器製作所
代表者代表取締役 A
訴訟代理人弁理士 若 原 誠 一
同弁護士 野 上 邦 五 郎
同 杉 本 進 介
同 冨 永 博 之
被 告 特許庁長官 B
指定代理人 C
同 D
同 E
同 F
主 文
特許庁が平成10年異議第75818号事件について平成12年4月26日にし
た決定を取り消す。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
1 原告の請求
特許庁が平成10年異議第75818号事件について平成12年4月26日にし
た決定を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
2 原告の主張
(1) 特許庁における手続の経緯
原告は、発明の名称を「楽音に関する波形データの生成装置及び生成方法」
とする特許第2760436号の特許(平成1年4月24日出願、平成10年3月
20日設定登録。以下「本件特許」という。)の特許権者である。
特許庁は、平成10年11月30日、本件特許に対する特許異議の申立てを受け
これを平成10年異議第75818号事件として審理した結果、平成12年4月2
6日、「特許第2760436号の請求項1ないし4に係る特許を取り消す。」と
の決定をし、同年5月25日にその謄本を原告に送達した。
(2) 本件決定の理由の要旨
本件決定の理由は、要するに、本件特許に係る請求項1、2及び4の発明は
公知刊行物に記載された発明であるから、上記各発明に係る特許は特許法29条1
項3号に該当し、請求項3の発明は進歩性がないから、同発明に係る特許は特許法
29条2項に該当する、というものである。
(3) 原告は、本訴係属中の平成12年8月29日、明細書の訂正をすることにつ
いて審判を請求し、特許庁は、これを訂正2000-39096号事件として審理
した結果、同年11月6日に上記訂正をすべき旨の審決(以下「本件訂正審決」と
いう。)をし、これが確定した。
(4) 本件訂正審決による訂正の内容
(イ) 本件訂正審決による訂正前の特許請求の範囲は、次のとおりである。
【請求項1】楽音に関する波形データを保持する手段と、
この保持された楽音に関する波形データの繰り返しセクションの先頭と末尾を示す
任意に指定可能な複数の異なるセクションデータと、この繰り返しの時間を示す時
間データとを発生する手段と、
この発生されたセクションデータに基づいて、上記保持された楽音に関する波形デ
ータの一部又は全部につき、繰り返し生成を行う手段と、
この楽音に関する波形データの繰り返し生成の時間が、上記発生された時間デー
タに達したか否かを判別する手段と、
この判別結果に応じて、上記繰り返し生成を終了する手段と、
この繰り返し生成の終了の後、上記発生された別のセクションデータ及び上記発
生された時間データに基づいて、楽音に関する波形データの別の異なるセクション
の繰り返し生成に移行する手段とを備えたことを特徴とする楽音に関する波形デー
タの生成装置。
【請求項2】楽音に関する波形データを保持する手段と、
この保持された楽音に関する波形データの一部又は全部につき、繰り返し生成を
行う手段と、
この楽音に関する波形データの繰り返し生成の時間が、予め定められた繰り返し
生成のための所定時間に達したか否かを判別する手段と、
上記楽音に関する波形データの繰り返し生成が、繰り返しセクションの末尾に達
したか否かを判別する手段と、
これら両判別結果に応じて、上記繰り返し生成を終了する手段とを備えたことを
特徴とする楽音に関する波形データの生成装置。
【請求項3】上記判別される時間、または上記判別される所定時間は、音色、音
域、エフェクト、発音操作の強弱又は遅速によって変化するものであることを特徴
とする請求項1または2記載の楽音に関する波形データの生成装置。
【請求項4】楽音に関する波形データを保持させ、
この保持された楽音に関する波形データの一部又は全部につき、繰り返し生成を
行わせ、
この楽音に関する波形データの繰り返し生成の時間が、予め定められた繰り返し
生成のための所定時間に達したか否かを判別させ、
上記楽音に関する波形データの繰り返し生成が、繰り返しセクションの末尾に達
したか否かを判別させ、
これら両判別結果に応じて、上記繰り返し生成を終了させることを特徴とする楽
音に関する波形データの生成方法。
(ロ) 本件訂正審決による訂正後の特許請求の範囲は、次のとおりである(下
線部が訂正された箇所である。)。
1.楽音に関する波形データを保持する手段と、
この保持された楽音に関する波形データの繰り返しセクションの先頭と末尾を示
す任意に指定可能な複数の異なるセクションデータと、この繰り返しの時間を示す
時間データとを発生する手段と、
この発生されたセクションデータに基づいて、上記保持された楽音に関する波形
データの一部又は全部につき、繰り返し生成を行う手段と、
この楽音に関する波形データの繰り返し生成の時間を計測する手段と、
この計測された時間が、上記発生された時間データに達したか否かを判別する手
段と、
この判別結果に応じて、上記繰り返し生成を終了する手段と、
この繰り返し生成の終了の後、上記発生された次の別のセクションデータ及び上
記発生された時間データに基づいて、楽音に関する波形データの次の別の異なるセ
クションの繰り返し生成に移行する手段と、
少なくとも上記セクションデータ及び時間データと次の別のセクションデータ及
び時間データとを記憶する手段であって、このセクションデータ及び時間データを
読み出して上記波形データの繰り返し生成を行う手段に供給する間に、上記次の別
のセクションデータ及び時間データが書き込まれ、上記次の別の異なるセクション
の繰り返し生成への移行に基づき、この書き込まれた次の別のセクションデータ及
び時間データを読み出して上記波形データの繰り返し生成を行う手段に供給する手
段とを備えたことを特徴とする楽音に関する波形データの生成装置。
2.楽音に関する波形データを保持する手段と、
この保持された楽音に関する波形データの一部又は全部につき、繰り返し生成を
行う手段と、
この楽音に関する波形データの繰り返し生成の時間を計測する手段と、
この計測された時間が、予め定められた繰り返し生成のための所定時間に達した
か否かを判別する手段と、
上記楽音に関する波形データの繰り返し生成が、繰り返しセクションの末尾に達
したか否かを判別する手段と、
これら両判別結果に応じて、上記繰り返し生成を終了する手段と、
少なくとも上記所定時間と次の別の所定時間とを記憶する手段であって、この所
定時間を読み出して上記所定時聞に達したか否かの判別に使用させる間に、上記次
の別の所定時間が書き込まれ、上記繰り返し生成の終了に基づき、この書き込まれ
た次の別の所定時間を読み出して上記所定時間に達したか否かの判別に使用させる
手段とを備えたことを特徴とする楽音に関する波形データの生成装置。
3.上記判別される時間、または上記判別される所定時間は、音色、音域、エフ
ェクト、発音操作の強弱又は遅速によって変化するものであることを特徴とする請
求項1または2記載の楽音に関する波形デー夕の生成装置。
4.楽音に関する波形データを保持させ、
この保持された楽音に関する波形データの一部又は全部につき、繰り返し生成を
行わせ、
この楽音に関する波形データの繰り返し生成の時間を計測させ、
この計測された時間が、予め定められた繰り返し生成のための所定時間に達した
か否かを判別させ、
上記楽音に関する波形データの繰り返し生成が、繰り返しセクションの末尾に達
したか否かを判別させ、
これら両判別結果に応じて、上記繰り返し生成を終了させ、
少なくとも上記所定時間と次の別の所定時間とを記憶させ、この所定時間を読み
出しさせて上記所定時間に達したか否かの判別に使用させる間に、次の別の所定時
間を書き込ませ、上記繰り返し生成の終了に基づき、この書き込まれた次の別の所
定時間を読み出しさせて上記所定時間に達したか否かの判別に使用させることを特
徴とする楽音に関する波形デー夕の生成方法。
(5) 特許法29条の規定に違反してなされた特許であることを理由に特許を取り
消した決定の取消しを求める訴訟の係属中に、当該特許に係る特許請求の範囲の減
縮を目的とする訂正審決が確定したので、本件決定は、結果として、判断の対象と
なるべき発明の要旨の認定を誤ったものであり、この誤りが本件決定の結論に影響
を及ぼすことは明らかであるから、本件決定は、取消しを免れない。
3 原告の主張に対する被告の認否
(1)ないし(4)は認める。
4 上記争いのない事実によれば、本訴請求は理由があるから、これを認容し、訴
訟費用については、上記事情に鑑みれば原告に負担させるのが相当であるから、行
政事件訴訟法7条、民事訴訟法62条を適用して、主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第6民事部
裁判長裁判官 山 下 和 明
裁判官 宍 戸 充
裁判官 阿 部 正 幸
最新の判決一覧に戻る